説明

調湿容器

【課題】湿度条件を一定に維持する必要があるフィルム、電子・電気・光学部品および製品、美術品、楽器、食品・飲料・香料、花卉等の物品を、簡易な構成で、良好な環境条件に安定かつ確実に維持して運用、保存ないし運搬することができる調湿容器を提供する。
【解決手段】密閉ないしは半密閉できる容器と、該容器内に存置された下記(1)及び(2)の条件を満たす調湿剤とを有する調湿容器。
(1)15〜30℃の範囲内の温度T℃、相対湿度50%の環境条件1で恒量化させたときの調湿剤の到達重量をW1、環境条件1から同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの調湿剤の到達重量をW2とした場合、W2≧1.1×W1
(2)15〜30℃の範囲内の温度T℃、相対湿度95%の環境条件2で恒量化させたときの調湿剤の到達重量をW3、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの調湿剤の到達重量をW4とした場合、W3≧1.1×W4

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、電子・電気・光学部品および製品、美術品、楽器、食品・飲料・香料、花卉類等の物品を、簡易な構成で良好な調湿環境に維持して運用、保存ないし運搬することができる調湿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
絵画や漆器等の美術品は、湿度等の環境条件の変化で、黄変、カビ発生、ひび割れ、剥離といった劣化、損傷を起こすことから、物品毎に適切な環境条件に安定に保管する必要がある。
【0003】
しかしながら、美術品の保存環境を適切に維持するためには、美術品を保管する部屋全体の保存環境を整えたり、大がかりな保存装置を準備しておく必要がある。例えば、気密容器内に調湿剤と湿度センサーを設けた保存装置も提案されているが(特許文献1)、その構造は簡易なものではない。そのため、現状では、美術品等の保存を簡易かつ良好に行うことは困難である。
【0004】
フィルムは一般的にロール状に巻回して保存、運搬されているが、高温度ないし高湿度下に長時間さらされると、フィルムロールの巻きズレが起こり、特に保管や輸送時にロールフィルムが傾斜状態にされた場合に、ロール端部分のフィルムの一部が一方の側に山状に突出したりして、フィルムの劣化を招いてしまう。
【0005】
そこで、フィルムロールを水蒸気バリヤー性樹脂包装フィルムやアルミニウム素材からなる包装フィルムで包装し、更に段ボール等のカートンに収納して保管ないし輸送する方法が提案されているが(特許文献2)、この方法は、包装にコストと時間を要するため、より有利な保管・輸送のための改良が求められている。
【0006】
上述のように、複数の製品分野において、ある区切られた空間内の大きな湿度変動ないしは結露発生によって問題が生じることが知られている。それらの対策も上述のとおり加熱、空調設備設置、機密性向上などさまざまであるが、いずれの対策にも欠点がある。こうした欠点を克服するため、もしくはこうした欠点を補うため、調湿剤を空間内に存置させる方法もあるが、これも公知である。以下に調湿剤について述べる。
【0007】
調湿剤とは、その周囲の湿度変動に応じて吸湿・放湿を行い、ある区切られた空間内の湿度変動を抑制する機能を有している。具体的には調湿材周辺がより高湿度な状態に変化すると調湿剤がその周辺の水蒸気を吸湿し、該空間内の湿度を低下させるほうに働き、結果として湿度変動を抑制させることができる。逆に周辺がより低湿度な状態に変化すると調湿剤自体から水蒸気を放湿することで調湿機能を発揮する。調湿剤は、吸着、吸収、毛細管現象、浸透圧現象などの現象で水を保持することが可能であり、外部から熱などのエネルギーを与えなくても、水の濃度勾配に応じて吸放湿ひいては調湿が行われるため、上に述べた各製品分野の諸問題に関連して、外部からのエネルギー源を必要としない対策として採用されることも多い。しかしその一方で、調湿剤だけでは問題解決の効果が不充分と判断されることも少なくない。
【0008】
また一般に、調湿剤は、粒子状、繊維状、シート状であることが多く、これを容器内に存置させて調湿容器を構成しようとした場合、容器の構成部材等に直接固定できないことが多い。調湿剤をそのままの形態で調湿容器の内部に存置させた場合、調湿剤による収納物品の汚損、調湿容器からの調湿剤の脱落などの不具合が生じやすい。
【0009】
そこで、通常は調湿剤をそのまま用いるのではなく、バインダーや接着剤を用いて調湿剤同士を接着したり、調湿剤と他の基材とを接着したり、また、調湿剤を適切な保護材、例えば、織布、不織布、透湿フィルム、各種フィルタなどの、調湿剤の脱落を抑制しながら水分(水蒸気)を透過させる材料で覆ったり、調湿剤を調湿容器に固定化できるような調湿部材として用いている。
【0010】
調湿剤を調湿部材として用いる場合、吸放湿速度が高く、調湿性能に優れた調湿部材とするためには、調湿剤自体もその外表面積比を大きくして吸放湿性能を有効に発揮し得るように、例えば調湿剤が粒子であれば粒子径が小さくなるように、また、調湿剤が繊維であるならば繊維の直径が小さくなるようにするのが一般的である。しかし、その場合は、調湿部材からの調湿剤の脱落が問題になる。なお、ここでいう外表面積比とは直径50nm以下の細孔を無視した調湿剤の単位重量あたりの比表面積のことであり、通常、水銀ポロシメトリーなどによって測定される。
【0011】
さらに、調湿部材は通常シート状の形態とされ、それを切断してテープ状に加工したり、調湿容器に適切な大きさに切断して使用することが多い。この場合、調湿剤が含まれる領域の比が大きいほど調湿部材としての効率がよいが、加工時の切断面が調湿剤を含む領域にかかる場合、切断面からの調湿剤の脱落が問題となる。
このことは、先に述べたように、吸放湿速度を向上させるために調湿剤の外表面積比を大きくした場合にはさらに深刻な問題となる。
【0012】
調湿剤を島状に基材に固定化し、調湿剤を含まない領域において鋏などで切断可能にした調湿部材も考案されているが(特許文献3)、このようなものでは、調湿部材の面積あたりの調湿効果が低下する;鋏などで切断可能な領域が限られており、調湿部材の形状としての自由度にかける;などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−315723号公報
【特許文献2】特開2005−306483号公報
【特許文献3】実用新案登録第3080091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来の問題点を解決し、環境条件、特に湿度条件を一定に維持する必要があるフィルム、電子・電気・光学部品および製品、美術品、楽器、食品・飲料・香料、花卉類等の物品を、簡易な構成で、良好な環境条件に安定かつ確実に維持して運用、保存ないし運搬することができる調湿容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の機能を有する調湿剤、特にこの調湿剤の調湿性能を充分に維持した上でシート状とした調湿部材を、適切な方法にて加工し、密閉ないしは半密閉できる容器内に存置させることにより、従来にない優れた調湿容器を実現できることを見出した。さらに容器内が飽和に近い水蒸気圧になるのを抑制することで、結果的に防曇効果も発現することから、上述の諸問題に対して幅広い解決策を提供できることも見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0016】
[1] 密閉ないしは半密閉できる容器と、該容器内に存置された下記(1)及び(2)の条件を満たす調湿剤とを有し、該容器内の吸放湿量が下記式(α)を満たすことを特徴とする調湿容器。
W2−W1≧0.5×WA …(α)
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1,W2は、下記条件(1)に記載される該調湿剤の到達重量である。)
(1)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW1、また、環境条件1で恒量化させた該調湿剤を、環境条件1から、同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW2とした場合、W2≧1.1×W1となる。
(2)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW3、また、環境条件2で恒量化させた該調湿剤を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW4とした場合、W3≧1.1×W4となる。
【0017】
[2] [1]において、該調湿剤が下記条件(3)及び(4)を満たすことを特徴とする調湿容器。
(3)条件(1)における環境条件1から環境条件2に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW1からW2へ重量変化する際に、全重量変化量(W2−W1)の1/3の重量W(2−1)/3(=W1+(W2−W1)/3)に60分以内で到達する。
(4)条件(2)における環境条件2から環境条件1に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW3からW4へ重量変化する際に、全重量変化量(W3−W4)の1/3の重量W(3−4)/3(=W3−(W3−W4)/3)に60分以内で到達する。
【0018】
[3] 密閉ないしは半密閉できる容器と、該容器内に存置された調湿剤とを有する調湿容器であって、該調湿剤は、下記条件(5)及び(6)を満たす調湿部材として前記容器内に在置されており、該容器内の吸放湿量が下記式(β)を満たすことを特徴とする調湿容器。
W2’−W1’≧0.5×WA …(β)
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1’,W2’は、下記条件(5)に記載される該調湿部材の到達重量である。)
(5)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW1’、また、環境条件1で恒量化させた該調湿部材を、環境条件1から同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW2’とした場合、W2’≧1.05×W1’となる。
(6)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW3’、また、環境条件2で恒量化させた該調湿部材を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW4’とした場合、W3’≧1.05×W4’となる。
【0019】
[4] [3]において、該調湿部材が下記条件(7)及び(8)を満たすことを特徴とする調湿容器。
(7)条件(5)における環境条件1から環境条件2に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW1’からW2’へ重量変化する際に、全重量変化量(W2’−W1’)の1/3の重量W(2’−1’)/3(=W1’+(W2’−W1’)/3)に60分以内で到達する。
(8)条件(6)における環境条件2から環境条件1に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW3’からW4’へ重量変化する際に、全重量変化量(W3’−W4’)の1/3の重量W(3’−4’)/3(=W3’−(W3’−W4’)/3)に60分以内で到達する。
【0020】
[5] [1]又は[2]において、前記調湿剤が、シート状又はシートを加工した形態の調湿部材として前記容器内に存置されていることを特徴とする調湿容器。
【0021】
[6] [3]又は[4]において、該調湿部材がシート状またはシートを加工したものであることを特徴とする調湿容器。
【0022】
[7] [5]又は[6]において、該調湿部材は、70〜400℃の部分的な加熱処理を経て加工されたものであることを特徴とする調湿容器。
【0023】
[8] [1]ないし[7]のいずれかにおいて、該調湿剤がケイ素を含有することを特徴とする調湿容器。
【発明の効果】
【0024】
本発明の調湿容器は、密閉ないしは半密閉できる容器内に、特定の条件を満たす、調湿性能に優れた調湿剤、或いはこの調湿剤を含む調湿部材を在置させることにより、優れた調湿機能を発揮し、大掛かりな調湿構造や包装形態を採用することなく、簡易な構成でフィルム、電子・電気・光学部品および製品、美術品、楽器、食品・飲料・香料、花卉類等の物品を容易にかつ確実に良好な状態に保つことができ、運用、保存ないし運搬中のこれらの物品の劣化や損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る調湿シートの実施の形態を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係る調湿シートの他の実施の形態を示す模式的な断面図である。
【図3】加熱ローラー式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す模式的な構成図である。
【図4】加熱ベルト式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す模式的な構成図である。
【図5】調湿実施例1及び調湿比較例1における、容器周辺温度と容器内の湿度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の調湿容器の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
本発明の調湿容器は、密閉ないしは半密閉できる容器内に特定の条件を満たす調湿剤を、好ましくは調湿部材の形態で在置させたものである。
【0028】
[容器]
本発明で用いる容器は、密閉ないしは半密閉できる容器であれば良く、その形状、寸法、材質等には特に制限はない。
【0029】
なお、ここで「密閉」とは、容器内から容器外へ、また容器外から容器内への空気の流通が全く生じない状態をさす。「半密閉」とは以下の条件(9)、(10)のいずれかを満たす状態を示す。特に、条件(10)においては、調湿剤がなくても下記記載のエネルギー源によって調湿機能を発現するが、エネルギー源を用いる調湿機能にかかる湿度変動における極小値と極大値の差を少なくすることが、調湿剤によって可能となる。
【0030】
(9)容器内部と容器外部のガス圧力差及びガス温度差がなく、かつ、容器内部と容器外部のガス組成が同等で、かつ、強制的なガス交換が行われない条件において、容器の保管空間内部のガスが拡散によって外部のガスに50%置換されるのに3時間以上かかる、あるいは、3時間以上かかると予想される。
(10)容器外部と容器内部のガス交換が可能だが、電力や内燃機関、外燃機関、太陽光、化学エネルギーなどのエネルギーを用いて容器内部を調湿する機能を具備している。
【0031】
なお、一つの容器が二つ以上の空間に分割されており、分割された空間内で調湿剤と保管すべき物品の両方が在置されている場合、それら全ての空間が本発明の対象となる。
【0032】
また容器への物品の出し入れ、メンテナンス、内部の観察や状態の計測を目的とした開閉可能な、扉、蓋、ハッチ、スリット、シャッター、ファスナー、接着剤を塗布した面など(以下、扉類と称す)がひとつないしは複数個設置されていてもよい。扉類を開放した場合、密閉ないしは半密閉という上述の条件に該当しなくても、以下に述べる常用使用環境において密閉ないしは半密閉の条件を満たせば、該容器は本発明の対象となりうる。
【0033】
容器の材質としては、上述のように特に制限はないが、一般的にはガラス、セラミック、無機塩類、コンクリート、金属、金属酸化物、合金類、炭素材料などの無機材料、樹脂類、ゴム類、紙、木材、織布ならびに不織布などの有機材料、あるいはこれらの複合材料であることが好ましい。
【0034】
特に容器の内外で光の入出力もしくは内部観察を目的として、容器材質の一部に無機塩類、ガラスなどに代表される無機系の材料、ポリオレフィン類、ポリカーボネート類、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレン類、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ゼラチンなどに代表される有機系の材料、あるいはそれらの複合材料など、光透過性のある材料が容器の一部または全体に用いられる場合、調湿によって得られる防曇効果はこれらの用途で大きな機能改善をもたらすことが可能となる。
【0035】
また、容器の形状についても任意であり、通常は箱状、袋状、筒状等であるが、保存、運搬、運用に適したその他の形状を選択することもできる。
【0036】
[常用使用環境]
以下に調湿剤および調湿部材に関して詳述するが、その中で「該容器の常用使用環境」とは、該容器をその目的に沿って使用する際の常態の環境を指す。よって以下の(a)から(d)に代表されるような環境は含まない。
(a)該容器製造時の環境。
(b)該容器使用開始時、使用終了時の、常態とは異なる環境。
(c)該容器に物品を出し入れしたり、メンテナンスや内部観察・状態計測などを目的として、概容器付属の扉類が少なくともひとつ開放されている状態。
(d)その他、該容器使用中などに不測の事態が生じた際の、常態とは異なる環境。
【0037】
[調湿剤の定義]
本発明でいう調湿剤とは、水分の吸放湿に直接かかる材料のことであり、それらを結着あるいは固定化するために用いられるバインダー、接着剤、保護材、あるいは調湿剤に対する被固定化材である基材、容器の構成材料など、実質的に吸放湿しない材料を含まない。ただしこれらの材料が実質的に吸放湿する場合はこの限りではない。また、調湿剤が単独のものである必要性は必ずしもなく、複数種類の調湿剤を同時に用いてもよい。
【0038】
[調湿剤の調湿性能]
本発明で用いる調湿剤は下記条件(1)及び(2)を満たし、好ましくは更に下記条件(3)及び(4)を満たす。
【0039】
(1)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW1、また、環境条件1で恒量化させた該調湿剤を、環境条件1から、同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW2とした場合、W2≧1.1×W1となる。
【0040】
(2)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW3、また、環境条件2で恒量化させた該調湿剤を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW4とした場合、W3≧1.1×W4となる。
【0041】
(3)条件(1)における環境条件1から環境条件2に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW1からW2へ重量変化する際に、全重量変化量(W2−W1)の1/3の重量W(2−1)/3(=W1+(W2−W1)/3)に60分以内で到達する(以下、この重量W(2−1)/3に到達する時間を「W(2−1)/3到達時間」と称す場合がある)。
【0042】
(4)条件(2)における環境条件2から環境条件1に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW3からW4へ重量変化する際に、全重量変化量(W3−W4)の1/3の重量W(3−4)/3(=W3−(W3−W4)/3)に60分以内で到達する(以下、この重量W(3−4)/3に達する時間を「W(3−4)/3到達時間」と称す場合がある。)。
【0043】
ここで、環境条件1,2の温度T℃とは、15〜30℃の範囲の任意の温度であり、本発明で用いる調湿剤は、15〜30℃の範囲の少なくともある1点の温度において、上記(1),(2)の条件、更には上記(3),(4)の条件を満たせば良いが、上記(1),(2)の条件、更には上記(3),(4)の条件を満たす温度範囲が広ければ広いほど好ましい。
【0044】
なお、条件(1)、(2)は調湿剤の単位重量あたりの吸放湿容量の多さを評価するものであり、条件(1)において、W2<1.1×W1であったり、条件(2)においてW3<1.1×W4であったりすると、調湿剤重量あたりの吸放湿容量が充分でなく、調湿容器として必要とする調湿性能を得るために容器内に存置させる調湿剤の量が多くなり、本来保管すべき物品の使用可能な容積が減少したり、容器の重量が大きく増加するといった不具合を生じる。
よって、条件(1)において、W2≧1.1×W1、条件(2)において、W3≧1.1×W4であり、特に好ましくは、条件(1)において、W2≧1.15×W1、条件(2)において、W3≧1.15×W4であり、もっとも好ましくは条件(1)において、W2≧1.2×W1、条件(2)において、W3≧1.2×W4である。
【0045】
調湿剤をまず条件(1)の記載のとおり、環境条件1の状態にしてW1を計測し、次に環境条件2の状態にしてW2を計測し、その次に条件(2)の記載のとおり、環境条件1の状態にしてW3を計測し、最後に環境条件2の状態にしてW4を計測した場合、本質的にW2とW3はほぼ等しくなる。しかし、調湿剤の種類によっては必ずしもW1とW4がほぼ等しくなるとは限らない。特に吸水性高分子などを調湿剤として用いている場合、いったん吸収・吸着した水は再放出しにくいことが多く、その場合、W1<W4となる。すると、W2−W1>W3−W4となるため、条件(1)を満たす調湿剤でも条件(2)を満たさないことが起こりうる。水の再放出が起こりにくいということは、吸湿するごとに、該調湿剤中に調湿に寄与しない水が増加するということであり、結果として吸放湿を繰り返すという該調湿剤の長期使用に伴って、該調湿剤の吸放湿量が低下していくことを意味し、本発明の調湿容器としての機能を提供できなくなってくる可能性を示唆する。そうした調湿剤の再放湿特性を考慮した本発明の調湿容器の機能発現のための判断基準が条件(2)であり、これが本発明の調湿容器が条件(1)と条件(2)の両方を同時に満たさなければならない事由である。
【0046】
また、条件(3),(4)は、調湿剤の吸放湿速度の速さを評価するものであり、条件(3)において、W(2−1)/3到達時間が60分を超えたり、条件(4)においてW(3−4)/3到達時間が60分を超えたりすると、吸放湿速度が遅いことにより、十分な調湿性能を得ることができないおそれがある。
より好ましくは、条件(3)においてW(2−1)/3到達時間が40分以下、条件(4)においてW(3−4)/3到達時間が40分以下であり、特に好ましくは、条件(3)においてW(2−1)/3到達時間が30分以下、条件(4)においてW(3−4)/3到達時間が30分以下である。なお、W(2−1)/3到達時間,W(3−4)/3到達時間の下限は特に定めないが、通常W(2−1)/3到達時間は30秒以上、W(3−4)/3到達時間は30秒以上である。
【0047】
[容器の吸放湿量]
本発明において、該容器の吸放湿量は、下記式(α)を満たすことを特徴とし、その吸放湿量を実現する量の調湿材を該容器に存置させることを特徴とする。
W2−W1≧0.5×WA …(α)
【0048】
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1,W2は、条件(1)に記載される該調湿剤の到達重量である。)
【0049】
調湿剤の単位重量あたりの吸放湿量が大きい場合でも、調湿剤を使用する量そのものが、該容器の容積に比べて少ない場合、具体的には上記条件(1)に記載される環境条件1及び環境条件2での該調湿剤の到達重量の差分W2−W1が0.5×WA未満であると、容器内に在置された調湿剤の吸放湿総量が少なすぎ、充分な調湿効果を発揮することができない。よって、W2−W1は、0.5×WA以上とし、好ましくは0.6×WA以上、より好ましくは0.7×WA以上とする。
【0050】
なお、ここで、容器の実効内容積は以下のように定義される。
(i) 該容器が密閉できる容器の場合:保管すべき物品と調湿剤を同時に在置させてある空間の内容積。ただし内部に保管する物品がない状態の該容器の全内容積から、内部に保管する物品の体積を差し引いて算出される体積を内容積とする。
(ii)該容器が半密閉できる容器の場合:保管すべき物品と調湿剤を同時に在置させてある空間が、織布、不織布、透湿フィルム、各種フィルタなどの通気性のある構造体を介して空間外と繋がっている場合は、それら通気性のある構造体を通気性のない構造体と見なして算出される(i)の定義に順ずる内容積。また、容器に穴、スリット、容器基材の隙間などがある場合、それらがないと仮定して算出される(i)の定義に順ずる内容積。
(iii)該容器が該容器内部と該容器外部とのガス交換が可能、かつ、電力等のエネルギー源を用いて該容器内部を調湿する機能を具備している場合:保管すべき物品と調湿剤を同時に在置させてある空間を、該調湿剤以外で調湿機能を有する装置、例えば加湿器等を通気性のない構造体と見なして算出される(i)の定義に順ずる内容積。
【0051】
また、ガスとは、該容器内のガスであり、通常、空気ないしは窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスであるが、必要に応じてその他のガスを使用してもよい。
【0052】
[調湿容器に関連する装置類]
本発明にかかる調湿容器はその内部に該調湿剤もしくは該調湿を存置させるだけで、さまざまな用途で要求される調湿機能を発揮することができる。しかしながら、該調湿剤もしくは該調湿部材の存置に加えて、該容器内部もしくは外部にファンなどの空気の流れを発生させる装置を設置し、それを稼動させて該容器内にて空気の流れを発生させることで、該調湿剤もしくは該調湿部材と該調湿容器内との空気中の水蒸気の交換を、空気の流れがない場合に比べてより迅速にし、より速い調湿性能を実現させることができる。
【0053】
また、容器内の空気の加湿、除湿、調湿、加熱、冷却、温度調整を目的とする装置、たとえば加湿器、除湿機、調湿装置、圧縮機、加熱機、冷却機、温度調整装置、熱交換器などのうち、少なくともひとつを該容器の内部もしくは外部に具備する容器に対して、その内部に該調湿剤もしくは該調湿部材を存置させることによって本発明における調湿容器を構成することで、以下のような効果を得ることもできる。
・該容器内の水蒸気の発生と消失に伴う湿度変動に対して、該調湿剤もしくは該調湿部材の調湿効果によって、該容器内部の湿度変動を少なくしたり、平均湿度を高くもしくは低く保ったり、結露を防止したりすることができる。
・該容器内の温度変動に伴う相対湿度変動に対して該調湿剤もしくは該調湿部材の調湿効果によって、該容器内部の相対湿度変動を少なくしたり、平均相対湿度を高くもしくは低く保ったり、結露を防止したりすることができる。
【0054】
以上の調湿容器に関連する装置類は、該調湿容器に対していずれかひとつが具備されていても、複数のものが具備されていてもよい。
【0055】
[調湿部材の調湿性能]
上述の調湿剤は、下記条件(5)及び(6)を満たし、好ましくは更に下記条件(7)及び(8)を満たす調湿部材として、容器内に設けられることが好ましい。
【0056】
(5)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW1’、また、環境条件1で恒量化させた該調湿部材を、環境条件1から同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW2’とした場合、W2’≧1.05×W1’となる。
【0057】
(6)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW3’、また、環境条件2で恒量化させた該調湿部材を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW4’とした場合、W3’≧1.05×W4’となる。
【0058】
(7)条件(5)における環境条件1から環境条件2に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW1’からW2’へ重量変化する際に、全重量変化量(W2’−W1’)の1/3の重量W(2’−1’)/3(=W1’+(W2’−W1’)/3)に60分以内で到達する(以下、この重量W(2’−1’)/3に達する時間を「W(2’−1’)/3到達時間」称す場合がある。)。
【0059】
(8)条件(6)における環境条件2から環境条件1に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW3’からW4’へ重量変化する際に、全重量変化量(W3’−W4’)の1/3の重量W(3’−4’)/3(=W3’−(W3’−W4’)/3)に60分以内で到達する(以下、この重量W(3’−4’)/3に達する時間を「W(3’−4’)/3到達時間」称す場合がある。)。
【0060】
ここで、環境条件1,2の温度T℃とは、前述の如く、15〜30℃の範囲の任意の温度であり、本発明で用いる調湿部材は、15〜30℃の範囲の少なくともある1点の温度において、上記(5),(6)の条件、更には上記(7),(8)の条件を満たすことが好ましいが、上記(5),(6)の条件、更には上記(7),(8)の条件を満たす温度範囲が広ければ広いほど好ましい。
【0061】
なお、条件(5)、(6)は、調湿剤を調湿部材として構成した場合、調湿剤を固定化するために用いるバインダー、接着剤、保護材などが該調湿剤の細孔を閉塞させる、表面を被覆するなどの現象により、調湿剤の吸放湿容量が減少することのない特性を有するか否かを評価するものであり、条件(5)において、W2’<1.05×W1’であったり、条件(6)においてW3’<1.05×W4’であったりすると調湿部材重量あたりの吸放湿容量が充分でなく、調湿容器として必要な調湿性能を得るために容器内に存置させる調湿部材の量が多くなり、本来保管すべき物品の使用可能な容積が減少したり、容器の重量が大きく増加するといった不具合を生じる。
よって、好ましくは条件(5)において、W2’≧1.05×W1’、条件(6)において、W3’≧1.05×W4’であり、特に好ましくは、条件(5)において、W2’≧1.10×W1’、条件(6)において、W3’≧1.10×W4’、もっとも好ましくは、条件(5)において、W2’≧1.15×W1’、条件(6)において、W3’≧1.15×W4’である。
ここで条件(5)と(6)の関係は、前述の調湿剤に関する条件(1)と(2)の関係にほぼ等しく、条件(6)は該調湿部材の再放湿特性にかかる規定であるため、本発明を構成する調湿部材としては条件(5)と(6)が同時に満たされることが要求される。
なお、条件(5),(6)を満たす調湿部材に含まれる調湿剤は、通常、条件(1),(2)を満たすものである。
【0062】
また、条件(7),(8)は調湿部材の吸放湿速度の速さを評価するものであり、条件(7)において、W(2’−1’)/3到達時間が60分を超えたり、条件(8)においてW(3’−4’)/3到達時間が60分を超えたりすると、吸放湿速度が遅いことにより充分な調湿性能を得ることができないおそれがある。
より好ましくは、条件(7)においてW(2’−1’)/3到達時間が40分以下であり、条件(8)においてW(3’−4’)/3到達時間が40分以下であり、特に好ましくは条件(7)においてW(2’−1’)/3到達時間が30分以下であり、条件(8)においてW(3’−4’)/3到達時間が30分以下である。なお、W(2’−1’)/3到達時間、W(3’−4’)/3到達時間の下限は特に定めないが、通常は調湿剤におけるW(2−1)/3到達時間、及びW(3−4)/3到達時間を下回ることはなく、W(3−4)/3到達時間は30秒以上、W(3−4)/3到達時間は30秒以上である。
なお、条件(7),(8)を満たす調湿部材に含まれる調湿剤は、通常、条件(3),(4)を満たすものである。
【0063】
[容器の吸放湿量]
本発明において、該容器の吸放湿量は、下記式(β)を満たすことを特徴とし、その吸放湿量を実現する量の調湿部材を該容器に存置させることを特徴とする。
【0064】
W2’−W1’≧0.5×WA …(β)
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1’,W2’は、条件(5)に記載される該調湿部材の到達重量である。)
【0065】
調湿部材の単位重量あたりの吸放湿量が大きい場合でも、調湿部材を使用する量そのものが、該容器の容積に比べて少ない場合、具体的には上記条件(5)に記載される環境条件1及び環境条件2での該調湿部材の到達重量の差分W2’−W1’が0.5×WA未満であると、容器内に在置された調湿部材の吸放湿総量が少なすぎ、充分な調湿効果を発揮することができない。よって、W2’−W1’は、0.5×WA以上とし、好ましくは0.6×WA以上、より好ましくは0.7×WA以上とする。
【0066】
なお、内部に保管する物品がない状態で算出される該容器の全内容積は、上述の定義の該容器の実効内容積よりも大きくなる。よって内部に保管する物品がない状態で算出される調湿剤もしくは調湿部材の使用量は、本発明にかかる調湿剤もしくは調湿部材の使用量より多くなる。本発明の調湿容器の内部に保管する物品の容積が不明もしくは不定の場合、内部に保管する物品がない状態で算出される該容器の全内容積を実効容積とみなせば、必要な調湿性能を確保することが可能となる。
【0067】
以上、調湿剤および調湿部材の使用量と調湿性能に関して述べたが、使用量と調湿性能は互いにある程度補い合うことができる関係にある。つまり、調湿剤もしくは調湿部材の調湿性能が本発明に属する範囲でやや劣る場合でも、使用量を増やすことによって調湿容器としての性能を向上させることは可能である。逆に調湿性能が優れた調湿剤もしくは調湿部材を用いることによって、本発明の範囲の比較的少ない使用量を用いたとしても良好な調湿性能を提供することができる。本発明の調湿剤および調湿部材の使用量は、それらの調湿性能で補うことのできない最低限必要な量を規定し、本発明の調湿剤および調湿部材の調湿性能は、それらの使用量で補うことができない最低限必要な性能を規定している。
【0068】
[調湿部材の加工方法]
本発明において、調湿部材の好適な加工方法は以下の通りである。
前述の背景技術の項で述べた、調湿部材の単位面積あたりの調湿効果を高めつつ、調湿剤の外表面積比を大きく保ち、かつ、調湿剤の脱落を抑制するという、相反する課題は、用いる容器に適した調湿部材を得るために、調湿部材の切断、穿孔など、形状の変更を伴う加工を、調湿剤を含む領域にて行う場合において、調湿部材が部分的に70℃以上400℃以下の温度になる加工法を用いることで解決される。即ち、部分的に調湿部材を70℃以上400℃に加熱することにより、バインダー、接着剤、保護材、基材などの部分的軟化、溶解が生じ、加工が調湿剤を含む領域で行われても加工終了後には、バインダー、接着剤、保護材、基材などが再度硬化し、調湿剤の脱落が十分に抑制される。また、それら調湿剤以外の調湿部材の構成要素が部分的に軟化、溶解の後に再度硬化することにより、その近傍にある調湿剤は充分な調湿効果を発揮できないような周辺環境に存在することになるが、加工による加熱が部分的に行われることで、調湿部材全体としての調湿効果の減少という影響は十分に小さいものに抑制できる
【0069】
かかる加工を行う際の加熱温度(上記のとおり調湿部材が加工時に実際に到達する温度を意味する)は、好ましくは70℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは100℃以上である。また、加工時の加熱温度が高すぎると、調湿剤ないし調湿部材の燃焼、焦げ付き、調湿剤の変性による調湿効果の低下が生じるため、加工時の加熱温度は好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下である。
【0070】
また、シート状の調湿部材を上述のような熱溶断などを行い、テープ状に加工することもできる。あるいは適当な大きさに加工した調湿部材をさらに折り曲げ、接着、穿孔、縫合、他の部材との組み合わせなどの加工を行うことにより、プリーツ状、ハニカム状、段ボール状など、シートを加工した構造体にすることもできる。これらシートを加工した構造体を用いると、該容器内での調湿部材設置面積を小さくすることもできる。
【0071】
[調湿部材の設置位置]
調湿容器内における調湿部材の設置位置に特に制限はない。例えば、半密閉の容器の場合、外部と内部のガスが流通、交換されうる、通気性のある構造体、穴、スリット、隙間などの付近、ないしはそれらを覆う形で調湿部材を設置することもできる。また、調湿容器内の保管すべき物品に近い場所に設置することもできる。
【0072】
[調湿容器の使用環境]
本発明の調湿容器の使用環境に関しては特に制限はない。ただし調湿容器内に存置される調湿剤および調湿部材が、調湿容器使用開始直後にそれらの吸湿量の上限に近い状態まで吸湿した状態にあり、かつ、調湿容器使用開始から調湿容器内の相対湿度がさらに上がる場合では、調湿効果もしくは防曇効果が充分に発揮されないことがある。また、調湿剤および調湿部材が、調湿容器使用開始直後にほとんど絶乾状態にあり、かつ、調湿容器使用開始から調湿容器内の相対湿度がさらに下がる場合では、調湿効果が充分に発揮されないことがある。
一方で、調湿剤および調湿部材がほぼ飽和に近い状態まで吸湿した状態であっても、調湿容器が密閉され、かつ使用開始から使用環境の温度が増加する場合は、使用環境温度での飽和水蒸気圧が上昇するため、該調湿剤および該調湿部材から放湿することによって調湿容器内の調湿効果が期待できるようになる。
よって、本発明の調湿容器が充分に機能を発揮する特定の条件を規定するのは困難であるが、必要に応じて調湿容器の使用環境を考慮して、使用前の調湿剤および調湿部材の状態を調整するのが好ましい。
【0073】
[調湿剤及び調湿部材の具体的態様]
本発明において、調湿剤としては、水分(水蒸気)を可逆的に吸放湿する調湿粒子を用いることが好ましく、調湿部材としては、このような調湿粒子を熱可塑性樹脂粉体により互いに接着してシート状に成形した調湿シートを用いることが好ましい。
【0074】
以下にこのような調湿シートの実施の形態について、図1,2を参照して説明する。
【0075】
なお、以下の説明において、熱可塑性樹脂の吸水率及びMFR、並びに調湿層の空隙率は、以下のようにして測定されたものである。
【0076】
<熱可塑性樹脂の吸水率>
ポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔上に熱可塑性樹脂粉体を均一に散布した後、この上にポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔を重ね合わせて熱可塑性樹脂粉体を挟持させ、次いでこの積層体をホットプレスにより、熱可塑性樹脂粉体の融点よりも10℃高い温度にて0.5MPaで2分間処理し、その後、剥離フィルム又はアルミ箔を剥がし取り、吸水率測定用フィルム(厚さ約1mm)を作成する。このフィルムを25℃の水に3時間浸漬した後引き上げ、吸水性の良い紙にはさみ込んで表面の水滴を取り去った後、重量を測定し、重量増加分から吸水率(=重量増加分/吸水前の重量 ×100)を算出する。
【0077】
<熱可塑性樹脂のMFR>
JISK6760に従って、190℃、2.16kg荷重で測定する。
【0078】
<調湿層の空隙率>
調湿層の空隙率とは、調湿層の両面に表面平滑なシートを積層したときに、そのシート間に形成される体積のうち、空隙(ただし、調湿粒子の細孔容積は含まない)が占める割合(百分率)をさし、調湿層を構成する材料の比重及び使用重量から求めた調湿層に占める構成材料の体積と、調湿層の見掛け体積(上述のシート間に形成される体積)から計算によって求められる。
具体的には、12cm×12cm(面積)の調湿層について、次のような方法で算出される。
調湿層体積[cm]=12×12×(調湿層厚さ)
調湿粒子体積[cm]=(調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の調湿粒子
重量割合)/(調湿粒子真比重)
調湿粒子細孔容積[cm]=(調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の調湿粒子
重量割合)×(調湿粒子の細孔容積[cm/g])
熱可塑性樹脂粉体体積[cm]=(調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の熱可塑性
樹脂粉体重量割合)/(熱可塑性樹脂粉体密度)
空隙容積[cm]=(調湿層体積[cm]−調湿粒子体積[cm]−調湿粒子
細孔容積[cm]−熱可塑性樹脂粉体体積[cm])
調湿層空隙率[%]=(空隙容積[cm])/(調湿層体積[cm])×100
【0079】
図1,2は、本発明の調湿容器の容器内に在置させる調湿部材として好適な調湿シートの実施の形態を示す模式的な断面図である。
【0080】
図1の調湿シート10は、2枚の基材シート1,2の間に、調湿粒子3を熱可塑性樹脂粉体4で互いに接着してシート状に成形した調湿層7を形成した積層調湿シートであり、図2の調湿シート10Aは、この図1に示す調湿シート10において、更に一方の基材シート2の調湿層7と反対側の面に粘着剤層5を形成し、この粘着剤層5に剥離シート6を積層した積層調湿シートである。図1,2において、8は調湿粒子3間に形成された空隙を示す。
【0081】
本発明に係る調湿シートに用いられる調湿粒子3としては特に制限はないが、少なくとも1種のケイ素化合物を含むことが好ましい。この場合、ケイ素化合物の例としては、シリカ、ゼオライト、多孔質ガラス、珪藻土、カオリナイト、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土、シリカ−アルミナ複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物、シリカ−ジルコニア、シリカ−酸化マグネシウム、シリカ−酸化ランタン、シリカ−酸化バリウム、シリカ−酸化ストロンチウムなどの複合金属酸化物等が挙げられ、中でも、ケイ素化合物としては、シリカ、セピオライト、ゼオライト、イモゴライト等が好ましい。
ケイ素化合物以外の調湿粒子の材料の例としては、活性炭、アルミナ、チタニア、ジルコニア、アパタイト等が挙げられ、中でも、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が好ましい。
これらの調湿粒子の材料は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0082】
なお、本発明に係る調湿シートにおいては、調湿粒子として少なくともケイ素化合物を使用することが好ましく、以下に説明する特定の物性を備えたシリカ(これを適宜「本発明のシリカ」という。)を使用することがとりわけ好ましい。
【0083】
本発明に係る調湿シートに用いる調湿粒子の平均粒径は、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常1500μm以下、中でも1200μm以下、特に1000μm以下であることが好ましい。調湿シートにおいて、調湿粒子の平均粒径が小さ過ぎると、調湿層における調湿粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる場合がある。一方、調湿粒子の平均粒径が大き過ぎると、調湿層における調湿粒子の充填率が低下し、粒子間空隙が増加するものの、調湿層表面の空隙開口部の大きさが大きく、保水することが困難となるため、保水量の低下を生じる場合がある。また、熱可塑性樹脂と調湿粒子との接点が少ないため、調湿層から調湿粒子が脱離し易く、耐擦傷性・耐候性の低下が生じ易くなる。
なお、調湿粒子の平均粒径は、例えば、後出の<シリカの特徴>に記載の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いた手法等により求めることができる。
【0084】
また、本発明に係る調湿シートに用いる調湿粒子の細孔最頻直径は、通常2nm以上、好ましくは3nm以上で、通常20nm以下、更には18nm以下であることが好ましい。調湿粒子の細孔最頻直径をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、得られる調湿シートの吸湿領域を変化させることができる。
なお、調湿粒子の細孔最頻直径は、例えば、後出の<シリカの特徴>に記載の、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線からBJH法により算出される細孔分布曲線を用いた手法等により求めることができる。
【0085】
<シリカの特徴>
以下に、本発明に係る調湿シートに用いる調湿粒子として好適なシリカ(以下「本発明のシリカ」と称す。)の特徴について説明する。
【0086】
(a)非晶質であること:
本発明のシリカは、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことが好ましい。このことは、本発明のシリカをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において非晶質のシリカとは、X線回折パターンで0.6ナノメートル(nm Units d-spacing)を越えた位置に、結晶構造のピーク(結晶性ピーク)が一つも観察されないものを指す。このようなシリカの例としては有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非晶質のシリカは、結晶性のシリカに較べて、極めて生産性に優れている。
【0087】
(b)比表面積:
本発明のシリカは、その比表面積の値が、通常200m/g以上、好ましくは250m/g以上、また、通常1000m/g以下、好ましくは900m/g以下の範囲である。本発明のシリカがこの様に大きな比表面積を有していることによって、本発明に係る調湿シートの調湿層において、シリカの細孔内に吸着される吸着物質(水分)とシリカとの相互作用面積を大きくすることができ、また、シリカの細孔の表面状態を変えることで、物質との相互作用を大きく調整することが可能となる。なお、シリカの比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0088】
(c)細孔容積:
本発明のシリカの単位重量当たりの細孔容積(本明細書ではこの「細孔容積/重量」で表される量を、特に断り書きの無い限り単に「細孔容積」という。一方、容積の絶対値としての細孔容積を指す場合には「総細孔容積」といい、両者を区別するものとする)は、通常0.3mL/g以上、好ましくは0.35mL/g以上である。本発明のシリカがこの様に大きな細孔容積を有していることによって、本発明に係る調湿シートの調湿層は、高い水蒸気の吸放出性能を発揮することができる。細孔容積の上限は特に制限されないが、通常3.0mL/g以下、更には2.5mL/g以下であることが好ましい。なお、シリカの細孔容積は、吸着等温線の相対圧0.98における窒素ガスの吸着量から求めることができる。
【0089】
(d)細孔最頻直径:
本発明のシリカは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.H.Haklenda,J.Am.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上で求められる細孔の最頻直径(Dmax)が、通常2nm以上、好ましくは2.3nm以上、また、通常20nm以下、好ましくは18nm以下の範囲である。本発明では、シリカ細孔の最頻直径(Dmax)をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、本発明に係る調湿シートの調湿層の水蒸気の吸湿領域を変化させることができる。従って、本発明のシリカは、その細孔分布曲線において、細孔の最頻直径(Dmax)を表す最大ピークがシャープである必要はない。一方、十分な吸湿量を得るためには、上述したように、シリカの細孔容積が前記(c)の範囲内であることが重要である。
【0090】
なお、後述するように、本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができるが、その製造方法によっては、細孔直径を任意に調整することができる。本発明に係る調湿シートが発揮する水蒸気吸放出性能の中には、この細孔直径に応じてその性能を発揮するものがあるため、用いるシリカの細孔直径は用途に応じて適宜設定することが望ましい。即ち、シリカの吸放湿性能により調整される湿度は、一般にその細孔直径に応じたものとなる。
【0091】
(e)平均粒径:
本発明のシリカは、その平均粒径が、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常1500μm以下、中でも1200μm以下、特に1000μm以下であることが好ましい。シリカの平均粒径が小さ過ぎると、粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる。一方、シリカの平均粒径が大き過ぎると、粒子間空隙が増加するものの、保水することができないため、保水量の低下を生じる。そのため、シリカの平均粒径が小さ過ぎても大き過ぎても適さず、上記範囲内であることが重要である。なお、シリカの平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等によって粒度分布を測定し、その結果から求めることができる。
【0092】
(f)シラノール量:
本発明のシリカは、そのシラノール量が、通常2個/nm以上、好ましくは2.5個/nm以上、より好ましくは3個/nm以上、また、通常10個/nm以下、好ましくは8.5個/nm以下、より好ましくは7個/nm以下の範囲である。シラノール量が少な過ぎると、疎水性で湿度感受性が悪化し、吸湿性が低下する。一方、シラノール量が多過ぎると、熱可塑性樹脂粉体との密着性が悪化し、耐久性の低下、調湿層の不良を生じるため、上記範囲内であることが好ましい。なお、シリカのシラノール量は、例えば以下に説明する、熱重量測定による重量変化に基づく手法によって算出することができる。
【0093】
<シラノール量の算出方法>
まず、シリカの吸着水を除去するため、160℃に加熱して2時間保持した後、1000℃に昇温して更に1時間保持し、その過程におけるシリカの重量変化を測定する。シラノール由来の水分量は、昇温時の重量変化(即ち、160℃から1000℃での減少重量)から、水熱処理時のアルコール由来のCO重量を除いた値に相当する。具体的には、以下の式<1>を用いて算出することができる。
シラノール由来の水分量(g)=160℃から1000℃での減少重量(g)
−アルコール由来のCO重量(g) …<1>
【0094】
ここで、シラノール分子2個からHO分子1個が形成されるとすると、シリカのシラノール数及びシラノール量は、それぞれ以下の式<2>,<3>に基づいて算出することができる。
シラノール数(個)=〔シラノール由来の水分量(g)×アボガドロ定数6.02×
1023(個/mol)×2〕/HO分子量(g/mol)
…<2>
シラノール量(個/nm)=シラノール数(個)/表面積(nm) …<3>
【0095】
(g)その他の特徴:
本発明のシリカは、上述の(a)〜(f)の特徴を満たしていれば、その他は特に制限されないが、更に以下の特徴を満たしていることが好ましい。
【0096】
粒子形状及び粒度分布:
シリカの粒子形状については、特開2003−220657号公報に、球状粒子を用いることで無機多孔体の充填率が増し、吸放湿性能を向上させることができると言う記載がある。しかしながら、本発明のシリカの粒子形状は、球状及び破砕状のどちらでもよい。破砕状の方が、粒子間空隙が多くなるため、より好ましい。一方、微粉凝集体が多いと、細孔の利用効率が低下する、更なる凝集を生じて調湿層の均一性を低下させ、熱可塑性樹脂との密着性が低下することによって、粒子の脱落が生じる場合がある。よって、粒度分布が狭い方がより好ましい。なお、シリカの粒子形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)等の手法により確認することができる。また、シリカの粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等の手法により測定することができる。
【0097】
耐水熱試験に関する特徴:
本発明のシリカは、水中での加熱処理(耐水熱試験)を施されても、細孔特性の変化が少ないことが好ましい。耐水熱試験後におけるシリカの細孔特性の変化は、例えば比表面積、細孔容積、細孔径分布などの多孔性に関する物性の変化として観察される。例えば、本発明のシリカにおいては、200℃、6時間の耐水熱試験をした際、該試験後の比表面積が該試験前の比表面積に対して20%以上(比表面積残存率が20%以上)であることが好ましい。この様な特性を有する本発明のシリカは、長時間の厳しい使用条件下においても、多孔性の特徴が失われないので好ましい。また、この比表面積の残存率は、中でも35%以上、特に50%以上であることが好ましい。
【0098】
なお、本発明における耐水熱試験とは、密閉系内において、特定温度(200℃)の水とシリカとを一定時間(6時間)接触させることであり、シリカの全てが水中に存在するのであれば、密閉系内が全て水で満たされていても、また、系内の一部が加圧下の気相部を有し、この気相部に水蒸気があってもよい。この場合の気相部の圧力は、例えば60000hPa以上、好ましくは63000hPa以上であればよい。なお、特定温度の誤差は通常±5℃以内、中でも±3℃以内、特に±1℃以内とするのが好ましい。
【0099】
固体Si−NMR測定に関する特徴:
本発明のシリカの構造に関しては、固体Si−NMR(nuclear magnetic resonance:核磁気共鳴)測定による分析において、以下の結果が得られることが好ましい。
【0100】
シリカは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO・nHOの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CHなど)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q)等が存在する(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表している)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQピーク、Qピーク、・・・と呼ばれる。
【0101】
【化1】

【0102】
本発明のシリカにおいては、固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q)と−OSiが4個結合したSi(Q)とのモル比を示すQ/Qの値が、通常1.2以上、中でも1.3以上、更には1.4以上、特に1.5以上であることが好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、通常は10以下である。
【0103】
一般に、この値が高い程、シリカの熱安定性が高いことが知られている。本発明の調湿容器は高温環境下で使用されることもあり、本発明のシリカのような熱安定性に優れたシリカを用いることにより、長期間にわたって安定した性能を発揮することが可能となる。これに対して、結晶性のミセルテンプレートシリカの中には、Q/Qの値が1.2を下回るものがあり、熱安定性、特に水熱安定性などが低い。
【0104】
加えて、本発明のシリカは、骨格を形成するシロキサン結合の結合角に歪みが少ないことが望ましい。ここで、シリカの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQピークのケミカルシフトの値によって表すことができる。
【0105】
上記の、シリカの構造的な歪みと、前記のQピークのケミカルシフトの値との関連の点から、本発明のシリカは、上記のQピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式<4>を満足することが望ましい。
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ …<4>
即ち、δの値が上記式<4>の左辺で表される値(−0.0705×(Dmax)−110.36)よりも小さく、よりマイナス側に存在することが望ましい
【0106】
従来のシリカでは、上記のQピークのケミカルシフトの値δは、上記式<4>の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる(よりプラス側に存在する)。よって、本発明のシリカは、従来のシリカに比べて、Qピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明のシリカにおいて、Qピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
【0107】
本発明のシリカにおいて、Qピークのケミカルシフトδは、上記式<4>の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQピークの最小値は−113ppmである。
【0108】
本発明のシリカは、優れた耐熱性や耐水性等を有しており、また、物性変化し難い。従って、高温・高湿度下でも長期間調湿機能が持続される。このような点と、上記の様な構造的歪みとの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性等が発現されるものと考えられる。なお、Q以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカの構造的な歪みが現れ難い。
【0109】
なお、シリカのQ/Q及びQピークのケミカルシフトの値は、固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基いて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0110】
金属不純物の含有量:
本発明のシリカは、シリカの骨格を構成するケイ素を除いた金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、中でも100ppm以下、更には50ppm以下、特に30ppm以下と、非常に高純度であることが好ましい。このように不純物の影響が少なければ、耐久性、耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現できる。また、金属不純物が少ないことにより、これを含む本発明に係る調湿シートの調湿層において、バインダ樹脂となる熱可塑性樹脂と金属不純物とが接触することによる光劣化、熱劣化、経時劣化などを抑制することができ、その結果、本発明に係る調湿シートは長期にわたって安定して使用することが可能となる。なお、シリカの金属不純物含有量は、ICP発光分光分析法等の各種の元素分析法を用いて測定することができる。
【0111】
但し、後述するように、本発明のシリカは、その用途等に応じて、特定の原子や原子団などの他の成分を意図的に含有させることにより、有利な機能を獲得することができる場合もある。従って、本発明のシリカにシリカ以外の成分を含有させるか否かは、その用途等に応じて選択するべきである。
【0112】
本発明において、これらの調湿粒子は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。また、有機系、無機系を問わず、これら以外の調湿材、乾燥剤と混合して使用することもできる。
【0113】
調湿粒子3の粒径については、調湿シートの寸法や用途、後述の熱可塑性樹脂粉体の粒径との関係もあり、一概に決定することはできないが、過度に小さいと、調湿粒子間に有効な空隙を形成し得ず、また、熱可塑性樹脂粉体との均一な混合が困難であり、逆に過度に大きいと、調湿粒子内部の調湿機能を有効に使うことができない上に、調湿シートが厚くなり、好ましくない。従って、調湿粒子3は平均粒径5〜1500μm、中でも10〜1200μm、特に10〜1000μmであることが好ましい。
【0114】
なお、本発明において、調湿粒子3の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(水分散湿式法)により求められた値である。
【0115】
一方、熱可塑性樹脂粉体4の材質としては、調湿粒子3同士を熱融着により接着することができるものであれば良く、好ましくは以下に記載する吸水率及びMFRを満足するものであり、特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂、及びこれらの変性物など、好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂、及びこれらの変性物などを用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0116】
本発明において、熱可塑性樹脂粉体4の熱可塑性樹脂は、吸水率が0.2%以上であることが好ましい。吸水率が0.2%未満の熱可塑性樹脂粉体では、疎水性が強く、調湿層7において、調湿粒子3間の空隙8に表出した熱可塑性樹脂粉体4が水をはじくことによって、調湿シートの吸放湿性、特に吸水性が劣るものとなる場合がある。熱可塑性樹脂の吸水率は高い程好ましく、特に0.5%以上であることが好ましい。ただし、熱可塑性樹脂の吸水率の上限としては、通常10%以下である。
【0117】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の吸水率は、熱可塑性樹脂の親水性の指標として用いているが、熱可塑性樹脂の親水性は、水接触角によっても表すことができる。本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体の熱可塑性樹脂は、これを前述の吸水率測定用フィルムと同様の方法でフィルム状とし、このフィルム面に対してθ/2法により測定した水接触角が95°以下、特に85°以下であることが好ましい。ただし、前述の吸水率とこの水接触角とは必ずしも対応しておらず、水接触角が小さくても吸水率が低い熱可塑性樹脂や、吸水率が大きくても水接触角が大きい熱可塑性樹脂もある。これら両方の特性の指標とした場合、吸水率が大きくかつ水接触角が小さいものが最も好ましいが、吸水率が0.2%に近く、比較的小さくても水接触角が小さいものであれば本発明に有効であると言える。
【0118】
本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体4の熱可塑性樹脂はまた、MFRが55g/10min以下であることが好ましい。MFRが55g/10minを超えるような流動性の大きいものでは、熱融着時の流動で、調湿粒子3の表面を広く覆うこととなり、調湿粒子3の表出面積を低減し、また、調湿粒子3の細孔をふさいでしまい、調湿粒子本来の調湿機能を有効に発揮し得なくなる場合がある。熱可塑性樹脂のMFRは小さいほうが好ましいが、MFRが過度に小さいものは熱溶融時の流動性が小さ過ぎて、調湿粒子3同士を十分に接着することができない。従って、熱可塑性樹脂のMFRは1〜55g/10min、特に5〜50g/10minであることが好ましい。
【0119】
なお、熱可塑性樹脂の融点について特に制限はないが、50〜250℃の範囲内にあること、特に80〜150℃の範囲内にあることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点が50℃未満の場合は、常温での使用において熱変形しやすいという問題があり、逆に、250℃を超えると調湿層の加熱溶融成形時に、後述の基材シートを熱変形させてしまうおそれがある。
【0120】
また、本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体4には、調湿粒子3の粒径との関係において、好適な粒径が存在する。即ち、調湿粒子3の粒径に対して、熱可塑性樹脂粉体4の粒径が過度に大きいと、調湿粒子3間に良好な空隙8を形成し得ず、また、成形時に熱可塑性樹脂粉体中に調湿粒子が埋没してしまい、十分な調湿機能を発揮することができない。逆に、熱可塑性樹脂粉体4の粒径が過度に小さくても、調湿粒子3同士が密接し、調湿層7の空隙率が小さくなってしまう。また、粒径が過度に小さい熱可塑性樹脂粉体は市販品として入手し難く、また調湿粒子との均一混合性にも劣るという欠点がある。
【0121】
従って、熱可塑性樹脂粉体4の平均粒径は、調湿粒子3の平均粒径に対して、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径/調湿粒子の平均粒径=1/8〜15/1、特に1/7〜8/1の範囲であることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径自体は、上記平均粒径比を満たす範囲において任意であるが、入手し易さ、取り扱い性等の面から5〜900μm程度であることが好ましい。
【0122】
なお、本発明において熱可塑性樹脂粉体の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(水分散湿式法)により求められた値である。
【0123】
また、本発明において、調湿層7を構成する熱可塑性樹脂粉体4と調湿粒子3との重量比は1/4〜4/1、特に1/3〜3/1であることが好ましい。この範囲よりも熱可塑性樹脂粉体が少ないと、調湿粒子同士の接着性・成形性が悪く、シート状の調湿層を形成しにくい。一方、この範囲よりも熱可塑性樹脂粉体が多いと、成形時に溶融した樹脂が粒子間の空隙を埋めやすくなり、空隙率の低下を生じる。さらに、調湿粒子の細孔内に樹脂が入ったり、細孔を覆うことによって、吸放湿性能が低下してしまい、吸放湿性能に優れた調湿シートを得ることができない。
【0124】
本発明において、調湿層7には、調湿粒子3と接着剤としての熱可塑性樹脂粉体4の他、抗菌剤や防カビ剤の1種又は2種以上を混合して用いても良く、これにより調湿層7に吸湿した水分によるカビの発生や細菌の増殖を防止して、調湿シートを衛生的に保つことができる。
【0125】
ここで用いられる抗菌・防カビ剤は無機系及び有機系の2種に大別され、無機系抗菌・防カビ剤は金属(銀、銅、亜鉛)及びその化合物系、無機/有機複合系、酸化物光触媒系から成る。有機系抗菌・防カビ剤は合成系、天然系から成る。
【0126】
具体的な無機系抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛などの金属単体、及びこれらの少なくとも1種の金属をリン酸塩(リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト)、又はケイ酸塩(ゼオライト、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、粘土鉱物)、又は溶融性ガラス、又は活性炭に担持させた化合物が挙げられる。更には、無機/有機複合系としては層状リン酸塩の層間に存在する水素イオンをイオン交換反応で四級アンモニウム塩に置き換えたもの、酸化物光触媒系としては酸化チタンなどがある。
【0127】
具体的な有機系抗菌剤としては、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、2−メチルカルボニルアミノベンツイミダゾールなどのイミダゾール系、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンツチアゾールなどのチアゾール系、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾリン系、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホン)ピリジン、ビス[ピリジン−2−チオール−1−オキシド]亜鉛酸、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム塩、2,2’−ジチオビス[ピリジン−1−オキシド]などのピリジン系、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス[2−ヒドロキシエチル]−S−トリアジンなどのトリアジン系、α−ブロモシンナムアルデヒド、ホルマリンなどのアルデヒド系、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、石炭酸などのフェノール系、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系、3−ヨード−2−プロピルチオカルバメートなどのハロゲン系、トリクロロカルバニリドなどのアニリド系、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド系、ソジウムN−メチルジチオカルバメートなどのチオカルバメート系、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシプロピル)アンモニウムクロライドなどの有機ケイ酸塩系、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩系、10,10’−オキシビスフェノキシアルシンなどの有機金属系、エタノール、プロパノールなどのアルコール系、プロピオン酸などのカルボン酸系、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル系、及びヒノキチオール、キトサン、カラシ抽出物、ユーカリ抽出物などの天然有機物系がある。
【0128】
これらは1種を単独で、若しくは2種以上を混合して使用することができる。
【0129】
本発明においては、持続性効果の高い無機系抗菌剤を使用することが望ましい。より高度な抗菌・防カビ性効果を得るためには、銅、亜鉛よりも銀を使用することが更に望ましく、また、抗菌・防カビ効果を長期間維持するためには、金属単体で使用するよりも、これらの金属をゼオライトに担持させて用いた方が更に効果的である。本発明では、銀をゼオライトに担持させたもの(銀ゼオライト)が、効力が高く、かつ持続性のある抗菌・防カビ剤として最も好ましい。
【0130】
このような抗菌剤や防カビ剤の使用量は、少な過ぎると、これを用いたことによる抗菌、防カビ効果を十分に得ることができず、多過ぎると抗菌・防カビ剤により調湿粒子の表面が覆われることにより調湿性能が損なわれることから、調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体との合計100重量部に対して0.5〜10重量部程度とすることが好ましい。
【0131】
調湿層7には、その他、空隙を形成しやすくするために嵩高い繊維状又は板状フィラー;断熱性を付与するために中空フィラー;を添加することもできる。また、耐光性を向上させるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、遮蔽性フィラー;消臭性を付与するために活性炭;意匠性を付与するために顔料;などを含有させてもよい。他にもウイルス吸着剤、ウイルス分解剤、導電剤、制電剤などの機能性フィラーを含有させてもよい。また、これらはいずれも組み合わせて使用することができる。
【0132】
本発明において、調湿層7は、空隙率が5%以上であることが好ましい。調湿層7の空隙率が5%未満では調湿粒子3による優れた調湿性能を十分に得ることができないおそれがあり、また、調湿層7の空隙8を調湿のための特に保水スペースとして有効利用して、調湿性能の向上を図ることができないおそれがある。空隙率は5%以上である程度高いことが好ましいが、過度に高いと相対的に調湿粒子の割合が減ることにより調湿性能が低下し、また、調湿粒子や熱可塑性樹脂粉体が少ないことにより調湿層の成形性、形状保持性が劣るものとなる。従って、調湿層7の空隙率は特に5〜75%、とりわけ6〜50%であることが好ましい。
【0133】
本発明に係る調湿シートの調湿層7の厚さには特に制限はなく、用途、即ち、適用対象に応じて適宜決定されるが、十分量の調湿粒子を含有させるためにはある程度の厚さが必要であり、また、狭い場所への適用のためには薄肉化が要求されるなどの観点から、5〜3000μm程度、特に10〜2500μm程度であることが好ましい。
【0134】
本発明で用いる基材シート1,2としては、不織布、織布、和紙、洋紙、ネット、スポンジ、多孔質フィルムのような通気性を有するものの他、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンサルファイドフィルム、ポリエーテルサルファイドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム、更にはアルミニウム、鉄などの金属箔などを用いることができる。これらの基材シートは複数層積層して用いても良く、例えば、アルミニウム蒸着樹脂フィルム、アルミニウム蒸着紙などとして用いることもできる。
【0135】
本発明において、図1に示す如く、調湿層7の両面にそれぞれ基材シート1,2を設ける場合、少なくとも一方の基材シートは通気性を有する材料で構成されている必要がある。図2に示す如く、一方の基材シート2に粘着剤層5を形成する場合、基材シート2は必ずしも通気性である必要はないが、基材シート1については通気性である必要がある。材料自体に通気性が乏しい樹脂フィルムや金属箔などを用いる場合、必要に応じて微細な穴やスリットを開けて使用することも可能である。
【0136】
ここで基材シートに用いる不織布又は織布としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維のような合成繊維、アセテート繊維のような半合成繊維などを1種以上、組み合わせたものを挙げることができる。
ここでの不織布の目付け量は20〜100g/mの範囲であることが、十分な通気度を有することができるので、好ましい。
このような繊維から成る不織布や織布は表面に数μmの繊維の毛羽立ちがあるため、樹脂との密着性がよく、より強度のある調湿シートを得ることができる。
【0137】
また、本発明で用いる基材シートは、JIS L 1096 6.27.1 A法(フラジール法)に準じて測定した通気度が50〜250cc/cm・secであることが好ましく、70〜200cc/cm・secであることがより好ましい。基材シートの通気度が小さいと、調湿層内と外部との水蒸気の拡散が律速となり調湿粒子の吸放湿性能が十分に発揮されない。
【0138】
基材シート1,2の厚さとしては特に制限はないが、強度と薄肉化の観点から通常10〜1000μm程度である。
【0139】
なお、この基材シート1,2には、前述の抗菌剤や防カビ剤を添着して抗菌、防カビ処理を施しても良く、また、各種の塗料を塗布して意匠性を付与したり、品番、商品名などを印刷することもできる。
【0140】
図2の調湿シート10Aにおいて、粘着剤層5の形成に用いる粘着剤としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の公知のものを用いることが可能であり、特に規定するものではない。
【0141】
また、剥離シート6としても、特に規定するものではなく、従来多用されている、剥離面がシリコーン処理された剥離紙(セパレーター)などを使用すれば良い。
【0142】
粘着剤層5を形成して剥離シート6を設けた図2の調湿シート10Aであれば、剥離シート6を取り去って粘着剤層5を表出させ、この面を施工対象面に貼着することにより、容易に施工することができる。
【0143】
またひとつの調湿シートに対して剥離シートを複数枚貼り合わせたり、剥離シートの一部にミシン目を入れたり、剥離シートの一部を切断したり、剥離シートの一部に他よりも厚さが薄い部分を導入することにより、剥離シートがはがしやすくなり、調湿容器を構成する際に便利である。
【0144】
図1,2においては、調湿層7の両面に基材シート1,2を有する調湿シートを示したが、この基材シートは調湿層7の一方の面に設けられていても良く、また、本発明に係る調湿シートは、基材シートのない調湿層のみからなるものであっても良い。
【0145】
図1,2に示す如く、調湿層7の両面に基材シート1,2を有する調湿シートは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0146】
まず、調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体、更に必要に応じて添加される抗菌剤、防カビ剤等を一方の基材シート上に散布した後、他方の基材シートをこの上に積層する。散布に当たり、調湿粒子及び熱可塑性樹脂粉体等は予め混合して混合物として散布しても良く、これらを別々に散布しても良いが、調湿性に影響がなければ、予め混合して混合物として散布することが好ましい。散布の方法としては、ホッパーの下部からの自由落下による散布、グラビアロールなど凹部を有するロールに連続供給して基材シート上に供給する方法、空気中に分散した送風による散布などを採用することができる。この他、粉体をより均一に混合したい場合は、混合粉体を水や溶剤などの媒体に分散させた後、基材シート上にスプレーコーティングやダイコーティングし、その後、乾燥させる方法もある。ただし、この液状物コーティングの場合は、厚塗りが困難なこと、加えて乾燥工程が必要でエネルギー的に不利であることから、混合粉体の乾式散布による方法が好ましい。
【0147】
このようにして、一方の基材シート上に調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体、その他の添加剤を散布した後は、その上に他方の基材シートを積層し、この積層体を加熱又は、加熱しながら加圧することにより調湿粒子同士を熱可塑性樹脂粉体で接着すると共に、この調湿層に基材シートを接着する。
【0148】
このときの加熱方法は特に限定されるものではないが、ホットプレス、加熱ロール、加熱ベルトなどによる接触式の熱伝導による加熱、又は赤外線ヒーターやガスバーナーヒーターのような非接触式の放射熱による加熱などがある。本発明では、熱伝導による加熱方法が好ましい。加熱温度は、用いた熱可塑性樹脂粉体に応じて、熱可塑性樹脂の溶融で調湿粒子同士及び調湿粒子と基材シートとを接着一体化できる程度であれば良い。
【0149】
また、加圧方法としては、例えばホットプレスによる方法、又は加圧したロール間を通す方法などを採用することができる。加圧の程度は、接着強度、調湿粒子の潰れ、空隙率の確保、通気性への影響などを考慮して、適宜設定すれば良い。
【0150】
上述の調湿シートの成形加工は以下に示すパウダーラミネート法によって効率的に実施することもできる。この方法を採用することにより、本発明に係る調湿シートを連続的に製造することが可能となる。
【0151】
図3に加熱ローラー式パウダーラミネート装置の製造ラインを簡略化したものを示す。製造ラインの上流側には上側シート37を繰り出す上側シート用ローラー36と下側シート32を繰り出す下側シート用ローラー31が回転可能に支持されている。下側シート用ローラー31の下流側には同ローラーから繰り出される下側シート32の搬送経路の上方に位置するように混合粉体フィードホッパー34が設けられており、このホッパー34内において少なくとも調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体とが一定比率をもって混合して貯蓄されているとともに、混合粉体フィードホッパー34の下方を下側シート32が通過する際に前記混合粉体が散布されるようになっている。このようにして、上下2枚のシート間に狭持された混合粉体は回転可能に支持された上側加熱ローラー39及び回転可能に支持された下側シリコーンゴム製ローラー40間を通過する際に熱可塑性樹脂粉体が加熱されて溶融し、調湿粒子及び上下のシート間が接着される。なお、下側シリコーンゴム製ローラー40は、その内部を温水、スチームなどで加熱して使用することもできる。その後、製造ラインの下流側の巻き取りローラーにより、本発明における調湿シート41を連続的に生産することができる。
【0152】
図4には加熱ベルト式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す。図4において図3と同一部材には同一符号が付してある。40Aは下側加熱ベルトである。図4の装置の基本構成は図3の装置とほぼ同様であるが、混合粉体散布後の熱圧着工程が異なる。図4の装置は加熱ベルト式のため長時間加熱が可能である。そのため、図3の装置よりも混合粉体中の熱可塑性樹脂粉体をより均一に低温で加熱溶融させることができて、厚物シートの連続成形も可能となる。従って、本発明に係る調湿シートを連続成形する際には、図3の加熱ローラー式パウダーラミネート装置よりも、図4の加熱ベルト式パウダーラミネート装置のほうが望ましい。
【0153】
基材シートに抗菌、防カビ処理を施す場合には、この熱融着処理後に薬剤の噴霧、燻蒸処理等を行えば良い。また、粘着剤層5を形成する場合は、この後に粘着剤層5及び剥離シート6の積層を行えば良い。
【0154】
前述した調湿層の一方の面にのみ基材シートを有する積層調湿シートや、調湿層のみの調湿シートを製造する場合には、上述した製造方法において、基材シートとして剥離性のものを用い、熱融着処理後に一方又は双方の基材シートを取り去れば良い。
【0155】
このようにして得られる調湿シート又は積層調湿シートを、調湿容器に適した調湿部材となるために、これらのシートの切断、穿孔など形状の変更を伴う加工を行う場合、前述したような部分的に調湿部材を加熱するような方法を用いるのが好適である。その方法としては、例えば、高周波ウェルダー、熱エンボス、加熱した刃を用いた切断、超音波照射、レーザー照射による方法が挙げられる。
【0156】
以上、本発明の調湿容器および調湿剤および調湿部材の具体的態様に関して説明したが、上述したようにこれはあくまでも本発明の調湿容器およびそれにかかる調湿剤および調湿部材の具体的態様の一例に過ぎず、その態様は本発明の範囲において実質的に制限されるべきではない。
【0157】
[シリカの製造方法]
前述の如く、本発明において、調湿粒子としては、少なくとも1種のケイ素化合物が好ましく、なかでもシリカが好ましい。
以下に、前述の本発明のシリカの製造方法について説明する。
本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができる。シリカの製造方法としてよく用いられる方法の例としては、次のような方法が挙げられる。
i.水ガラスを硫酸等の酸により中和してからゲル化する方法。
ii.アルコキシシランを加水分解してからゲル化する方法。
iii.アルコキシシラン又は水ガラスを原料とし、界面活性剤を有機テンプレートとして細孔形成を行なう方法(いわゆる、ミセルテンプレート法)。
【0158】
以下、本発明のシリカを製造する方法の一例について説明するが、これはあくまでも例であって、本発明のシリカの製造方法は以下の例に制限されるものではない。
【0159】
この方法は、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシド又はケイ酸アルカリ塩(好ましくはシリコンアルコキシド)を加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法である。
【0160】
本発明のシリカの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられる。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、特にテトラメトキシシランやそのオリゴマーを用いると、良好な細孔特性を有するシリカが得られるので好ましい。その主な理由としては、シリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し、高純度品が得られるので、高純度のシリカの原料として好適であることが挙げられる。シリコンアルコキシド中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する金属元素(金属不純物)の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には10ppm以下、特に1ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカ中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0161】
本発明では、先ず、加水分解・縮合工程において、触媒の不存在下にシリコンアルコキシドを加水分解すると共に得られたシリカヒドロゾルを縮合してシリカヒドロゲルを形成する。
【0162】
シリコンアルコキシドの加水分解に用いる水の量は任意であるが、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2モル倍以上、好ましくは3モル倍以上、特に好ましくは4モル倍以上、また、通常20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、特に好ましくは8モル倍以下の水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成し、生成したシリカヒドロゾルは逐次縮合してシリカヒドロゲルとなる。
【0163】
また、加水分解時の温度も任意であるが、通常室温以上、100℃以下であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。加水分解に要する反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。この反応時間は、本発明のシリカのように細孔特性に優れたシリカを得る為には、ヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間であることが好ましい。
【0164】
なお、この加水分解反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを共存させることで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる触媒の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のシリカの製造においてはあまり好ましいことではない。
【0165】
上述したシリコンアルコキシドの加水分解に際しては、攪拌を充分に行なうことが重要となる。例えば、回転軸に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いた場合、その攪拌速度(回転軸の回転数)としては、攪拌翼の形状・枚数・液との接触面積等にもよるが、通常は30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。
【0166】
また、この攪拌速度は、一般的に速過ぎると、槽内で生じた飛沫が各種のガスラインを閉塞させたり、また反応器内壁に付着して熱伝導を悪化させ、物性制御に重要な温度管理に影響を及ぼしたりする場合がある。更に、この内壁の付着物が剥離し、製品に混入して品質を悪化させる場合もある。この様な理由から、攪拌速度は2000rpm以下、中でも1000rpm以下であることが好ましい。
【0167】
本発明において、分液している二液相(水相及びシリコンアルコキシド相)の攪拌方法は、反応を促進させる方法であれば任意の攪拌方法を用いることができる。中でも、この二液相をより混合させるような装置としては、例えば以下の(iv)、(v)が挙げられる。
【0168】
(iv):回転軸が液面に対し垂直又は僅かに角度を持って挿入され、上下に液の流動が生じる攪拌翼を有する装置。
(v):回転軸方向を二液相の界面と略平行に設け、二液相間に攪拌を生じさせる攪拌翼を有する攪拌装置。
【0169】
上述した(iv)、(v)の様な装置を用いた際の攪拌翼の回転速度は、攪拌翼の周速度(攪拌翼先端速度)で、通常0.05m/sec以上、中でも0.1m/sec以上、また、通常10m/sec以下、中でも5m/sec以下、更には3m/sec以下であることが好ましい。
【0170】
攪拌翼の形状や長さ等は任意であり、攪拌翼としては例えばプロペラ型、平羽根型、角度付平羽根型、ピッチ付平羽根型、平羽根ディスクタービン型、湾曲羽根型、ファウドラー型、ブルマージン型等が挙げられる。
【0171】
翼の幅、枚数、傾斜角等は反応器の形状、大きさ、目的とする攪拌動力に応じて適宜選定すればよい。例えば、反応器の槽内径(回転軸方向に対して垂直面を形成する液相面の最長径:D)に対する翼幅(回転軸方向の翼の長さ:b)の比率(b/D)が0.05〜0.2で、傾斜角(θ)90゜±10゜、翼枚数3〜10枚の攪拌装置が好適な例として挙げられる。
【0172】
中でも、上述の回転軸を反応容器内の液面よりも上に設け、この回転軸から伸ばした軸の先端部分に攪拌翼を設ける構造が、攪拌効率及び設備メンテナンスの観点から好適に使用される。
【0173】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリカヒドロゾルが生成するが、引き続いて該シリカヒドロゾルの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。
【0174】
次いで、本発明では、物性調節工程として、上記の加水分解により生成したシリカヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、シリカヒドロゲルの水熱処理を行なう。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカヒドロゲルが生成する。なお、このヒドロゲルの物性を安定させるべく、熟成、或いは乾燥させ、次いで水熱処理を施すという方法では、本発明のシリカを製造することは通常、困難である。
【0175】
上記にある、加水分解により生成したシリカヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するようにするということを意味する。
【0176】
具体的には、シリカヒドロゲルが生成した時点から、通常10時間以内、中でも8時間以内、更には6時間以内、特に4時間以内にシリカヒドロゲルを水熱処理することが好ましい。
【0177】
また、工業用プラント等においては、大量に生成したシリカヒドロゲルを一旦サイロ等に貯蔵し、その後水熱処理を行なう場合が考えられる。この様な場合、シリカヒドロゲルが生成してから水熱処理に供されるまでの時間、いわゆる放置時間が、上述の範囲を超える場合が考えられる。この様な場合には、熟成が実質的に生じないように、サイロ内での静置中に、例えばシリカヒドロゲル中の液体成分が乾燥しないようにすればよい。
【0178】
具体的には、例えば、サイロ内を密閉したり、湿度を調節したりすればよい。また、水やその他の溶媒にシリカヒドロゲルを浸した状態で、シリカヒドロゲルを静置してもよい。
【0179】
静置の際の温度は、できるだけ低くすることが好ましく、例えば50℃以下、中でも35℃以下、特に30℃以下で静置することが好ましい。
【0180】
また、熟成が実質的に生じないようにする別の方法としては、シリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御してシリカヒドロゲルを調製する方法が挙げられる。
【0181】
シリカヒドロゲルを実質的に熟成せずに水熱処理することにより奏する効果と、この効果が得られる理由を考察すると、以下のことが考えられる。
【0182】
まず、シリカヒドロゲルを熟成させると、−Si−O−Si−結合によるマクロ的網目構造が、シリカヒドロゲル全体に形成されると考えられる。この網目構造がシリカヒドロゲル全体に有ることで、水熱処理の際、この網目構造が障害となり、メソポーラスの形成が困難となることが考えられる。またシリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御して得られたシリカヒドロゲルは、静置中に生ずるシリカヒドロゲルにおける架橋の進行を抑制できる。その為、シリカヒドロゲルが熟成しないと考える。
【0183】
よって、このシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルを熟成することなく、水熱処理を行なうことが重要である。
【0184】
シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を混合すること、又は加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させる場合もある。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけないことが好ましい。
【0185】
更に、シリコンアルコキシドの加水分解で得られたシリカヒドロゲルは、水熱処理を行なう前に、これを平均粒径が通常10mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下、特に0.5mm以下となるよう、粉砕処理等を施すことが好ましい。
【0186】
上述の通り、この本発明のシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルの生成の直後に、直ちにこれを水熱処理する方法が重要である。但し、この本発明のシリカの製造方法においては、水熱処理するシリカヒドロゲルが熟成していなければよいので、例えば暫時低温下で静置した後に水熱処理するなど、必ずしもシリカヒドロゲルの生成直後、直ちにこれを水熱処理することを必要としない。
【0187】
このように、シリカヒドロゲルの生成の直後、直ちにこれを水熱処理しない場合には、例えばシリカヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認してから水熱処理を行なえばよい。ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段は任意であるが、例えば、ヒドロゲルの硬度を参考にする方法が挙げられる。即ち、先述した通り、この破壊応力が通常6MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカを得ることができる。この破壊応力は、中でも3MPa以下であることが好ましく、特に2MPa以下であることが好ましい。
【0188】
この水熱処理の条件は任意であり、水の状態が液体、気体の何れでもよいが、中でも、液体の水を使い、シリカヒドロゲルに加えてスラリー状として、水熱処理を行なうことが好ましい。また、水熱処理においては、まず、処理するシリカヒドロゲルに、シリカヒドロゲルの重量に対して通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、また、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍以下の水を加えてスラリー状とする。そしてこのスラリーを、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは220℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは10時間以下にわたって、水熱処理を行なう。水熱処理の温度が低過ぎると、細孔容積を大きくすることが困難となる場合がある。
【0189】
なお、水熱処理に使用される水には、有機溶媒が含まれていてもよい。有機溶媒の具体例としては、低級アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。この溶媒は、例えばアルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、その原料であるアルコキシシランに由来するアルコール類であってもよい。
【0190】
熱処理に用いる水における、この様な溶媒の含有量は任意であるが、少ない方が好ましい。例えば、上述した様な、アルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、このシリカヒドロゲルを水洗し、水洗されたものを水熱反応に供することにより、150℃程度まで温度を下げて水熱処理を行なった場合でも、細孔特性に優れ且つ細孔容積の大きいシリカを製造することができる。また、溶媒を含んでいる水で水熱処理を行なっても、200℃程度の温度での水熱処理を行なうことで、本発明のシリカを容易に得ることができる。
【0191】
以上の水熱処理の条件において、温度を高くすると、得られるシリカの径、細孔容積が大きくなる傾向がある。また、処理時間とともに、得られるシリカの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択することが好ましい。例えば、調湿性能に注目すれば、高度な調湿性能を発揮するシリカを製造する場合には、水熱処理温度は、100℃〜200℃の範囲であることが好ましい。水熱処理は、シリカの物性を変化させることが目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0192】
なお、ミクロ構造的な均質性に優れるシリカを製造するためには、水熱処理の際に、反応系内の温度が5時間以内に目的温度に達する様に、速い昇温速度条件とすることが好ましい。具体的には、槽に充填して処理される場合、昇温開始から目標温度到達までの平均昇温速度として、通常0.1℃/min以上、好ましくは0.2℃/min以上、また、通常100℃/min以下、好ましくは30℃/min以下、更に好ましくは10℃/min以下の範囲の値を採用するのが好ましい。
【0193】
熱交換器などを利用した昇温方法や、あらかじめ作っておいた熱水を仕込む昇温方法なども、昇温時間を短縮することができて好ましい。また、昇温速度が上記範囲であれば、段階的に昇温を行なってもよい。反応系内の温度が目的温度に達するまでに長時間を要した場合には、昇温中にシリカヒドロゲルの熟成が進み、ミクロ構造的な均質性が低下する場合がある。
【0194】
上記の目的温度に達するまでの昇温時間は、好ましくは4時間以内、更に好ましくは3時間以内である。昇温時間の短縮化のため、水熱処理に使用する水を予熱することもできる。
【0195】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明のシリカを得ることが困難となる場合がある。例えば、水熱処理の温度が高過ぎると、シリカの細孔径、細孔容積が大きくなり過ぎ、また、細孔分布も広がる場合がある。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ/Q値が極端に小さくなったりする場合がある。
【0196】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、アンモニアを含まない水を用いた水熱処理と比較して、最終的に得られるシリカは一般に疎水性となる。この際、水熱処理の温度を通常30℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温とすると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、また、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0197】
得られた本発明のシリカは適当な条件下で乾燥させる。乾燥時の条件は任意であるが、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。中でも、真空乾燥を行なうことは、乾燥が迅速に行なえるのみならず、得られるシリカの細孔容積、比表面積が大きくなるので好ましい。
【0198】
必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃〜600℃で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため最高900℃の温度で焼成することもある。更に、シランカップリング剤や無機塩,各種有機化合物などにより親疎水性を調節するための表面処理を行なってもよい。なお、この表面処理で用いるシランカップリング剤の種類は任意であるが、例えば、有機基導入に用いるものとして以下のようなシランカップリング剤を用いることができる。
【0199】
更に、得られたシリカを、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のシリカを得る。
【0200】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤とは、ケイ素原子に有機基が直結しているものの総称であり、具体的には、以下の式(I)〜(IV)で表される化合物である。
【0201】
SiR (I)
式(I)において、Xはそれぞれ独立に、水溶液中、空気中の水分又は無機質表面に吸着された水分などにより加水分解されて、反応性に富むシラノール基を生成する加水分解性官能基を表す。その具体的な種類に制限は無く、従来公知のものを任意に使用することができる。例えば、炭素数が通常1以上4以下の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられる。なお、これらの加水分解性官能基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、Rは上記の有機基のうち、1価のものを表す。
【0202】
式(I)で表されるシランカップリング剤は最も汎用であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス[2−メトキシエトキシ]シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0203】
SiR (II)
式(II)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性官能基を表す。
また、R及びRは、それぞれ式(I)のRと同様、1価の有機基を表す。なお、R及びRはそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0204】
式(II)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等を挙げることができる。
【0205】
XSiR (III)
式(III)において、Xは式(I)のXと同様の加水分解性官能基を表す。
また、R,R,Rは、それぞれ式(I)のRと同様、1価の有機基を表す。なお、R,R,Rはそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0206】
式(III)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等を挙げることができる。
【0207】
(XSi) (IV)
式(IV)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性官能基を表す。
また、Rはm価の有機基を表す。なお、mは2以上の整数を表す。
【0208】
式(IV)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性官能基が複数結合しているものなどが挙げられる。
【0209】
これら式(I)〜式(IV)に具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のシランカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」第9章のカップリング剤及び関連製品一覧表に記載されている。
また、当然のことながら、本発明に使用できるシランカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
【0210】
なお、上記の水熱処理の後に、シリカに含まれる水を親水性有機溶媒と置換してから乾燥を行なうことが好ましい。これによって、乾燥工程におけるシリカの収縮を抑制し、シリカの細孔容積を大きく維持でき、細孔特性に優れ、且つ細孔容積の大きいシリカを得ることができる。この理由は定かではないが、以下のような現象によるものと考えられる。
【0211】
水熱処理後のシリカスラリー中における液体成分の多くは水である。この水は、シリカと互いに強く相互作用し合っている為に、シリカから完全に水を除去するには大きなエネルギーが必要であると考えられる。
【0212】
多量の水分が存在する条件下で乾燥過程(例えば加熱乾燥)を行なうと、熱エネルギーを受けた水が未反応のシラノール基と反応し、本発明のシリカの構造が変化する。この構造変化のうち最も顕著な変化はシリカ骨格の縮合であり、縮合によってシリカが局所的に高密度化することが考えられる。シリカ骨格は3次元的構造を有するので、骨格の局所的な縮合(シリカ骨格の高密度化)はシリカ骨格により構成されているシリカ粒子全体の細孔特性に影響を及ぼし、結果的に粒子が収縮して、細孔容積や細孔径が収縮すると考えられる。
【0213】
そこで、例えばシリカスラリー中の(水を多量に含む)液体成分を親水性有機溶媒で置換することで、このシリカスラリー中の水を除去し、上述したようなシリカの収縮を抑えることが可能となる。
【0214】
ここで用いる親水性有機溶媒とは、上述した考えに基づき、水を多く溶かすものであればよい。中でも、分子内分極の大きいものが好ましい。更に好ましくは、比誘電率が15以上のものがよい。
【0215】
また、ここで説明した本発明のシリカの製造方法においては、純度の高いシリカを得るために、親水性有機溶媒にて水を除去した後の乾燥工程で、この親水性有機溶媒を除去することが好ましい。よって、親水性有機溶媒としては、乾燥(例えば加熱乾燥や真空・減圧乾燥等)により容易に除去可能な低沸点のものが好ましい。親水性有機溶媒の沸点としては、通常150℃以下、中でも120℃以下、特に100℃以下のものが好ましい。
【0216】
具体的な親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、アミド類、アルデヒド類、エーテル類等が挙げられる。中でも、アルコール類やケトン類が好ましく、特に、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類やアセトンが好ましい。本発明のシリカの製造時には、これら例示の親水性有機溶媒のうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び任意の割合で混合して使用してもよい。
【0217】
なお、水の除去が可能であれば、使用する親水性有機溶媒中に水が含まれていてもよい。もっとも、親水性有機溶媒における水分含有量は当然少ない方が好ましく、通常20重量%以下、中でも15重量%以下、更には10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。
【0218】
本発明のシリカの製造において、上述の親水性有機溶媒による置換処理時の温度及び圧力は任意である。処理温度は任意であるが、通常0℃以上、中でも10℃以上、また、通常100℃以下、中でも60℃以下とすることが好ましい。処理時の圧力は常圧、加圧、減圧の何れでもよい。
【0219】
シリカスラリーと接触させる親水性有機溶媒の量も任意である。但し、用いる親水性有機溶媒の量が少な過ぎると水との置換進行速度が充分でなく、逆に多過ぎると水との置換効率は高まるが、親水性有機溶媒の使用量増加に見合う効果が頭打ちとなり、経済的に不利となる場合がある。よって、用いる親水性有機溶媒の量は、シリカの嵩体積に対して通常0.5〜10容量倍である。この親水性有機溶媒による置換操作は、複数回繰り返して行なうと、水の置換がより確実となるので好ましい。
【0220】
親水性有機溶媒とシリカスラリーとの接触方法は任意であり、例えば攪拌槽でシリカスラリーを攪拌しながら親水性有機溶媒を添加する方法や、シリカスラリーから濾別したシリカを充填塔に詰めて、この充填塔に親水性有機溶媒を通液する方法、また、親水性有機溶媒中にシリカを入れて浸漬し、静置する方法などが挙げられる。
【0221】
親水性有機溶媒による置換操作の終了は、シリカスラリーの液体成分中の水分測定を行なって決定すればよい。例えば、定期的にシリカスラリーをサンプリングして水分測定を行ない、水分含有量が通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下となった点を終点とすればよい。水分の測定方法は任意であり、例えばカールフィッシャー法が挙げられる。
【0222】
親水性有機溶媒による置換操作の後、シリカと親水性有機溶媒とを分離し、乾燥することで、本発明のシリカを製造することができる。この際の分離法としては、従来公知の任意の固液分離方法を用いればよい。即ち、シリカ粒子のサイズに応じて、例えばデカンテーション、遠心分離、濾過等の方法を選択して固液分離すればよい。これらの分離方法は、一種を単独で用いてもよく、また二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
【0223】
ところで、上述したように製造されたシリカは、通常、粉砕、分級などして造粒し、粒子状のシリカとして用いられる。この際製造されるシリカの粒子の形状は限定されず任意であるが、例えば、球状であってもよいし、形の規定されないその他の塊状であってもよいし、破砕して細かな形状(破砕状)としてもよいし、更には、破砕状のものを集めて造粒したものであってもよい。コスト的には、粒径の制御が容易な破砕状又はこれを造粒したものが好ましい。更に、シリカをハニカム状に成形するなどしてもよい。また、シリカの粒径は、その使用条件によって適宜設定されるものである。
【0224】
更に、シリカの粉砕、分級の方法は、それぞれ任意である。
具体例を挙げると、シリカの分級は、例えば篩、重力分級機、遠心分級機などを使用して行なわれる。
【0225】
また、シリカの粉砕は、例えば、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用いることができる。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法があり、何れも採用可能であるが、シリカを比較的に小さな径とする場合には湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用いても、また2種以上の混合溶媒としてもよく、目的に応じて使い分ける。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ続けることは、シリカの細孔特性を損なう場合がある。
【0226】
なお、上述したように製造されたシリカが粉砕等されることで粒子状となっている場合、粉砕されたシリカの粒子(一次粒子)を公知の方法により造粒し、粒状(例えば球状)等の二次粒子としてもよい。シリカは一般に一次粒子径2μm以下の場合、特にバインダ樹脂を混合しなくても水スラリーとしてこれを乾燥するだけで二次粒子を得ることができるが、2μmを越える粒子の場合、二次粒子を形成させるためにはバインダ樹脂が必要であることが多い。
【0227】
二次粒子を製造する場合にバインダ樹脂として用いることができる物質は任意であるが、例えば水に溶解する場合は砂糖、デキストロース、コーンシロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他の水溶性高分子、水ガラス、シリコンアルコキシド加水分解液(これは溶媒系にも使用可)などを用いることができ、溶媒に溶解して用いる場合には各種ワックス、ラッカー、シラック、油溶性高分子等を用いることができる。なお、この際のバインダ樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、シリカの多孔質性能を損なわずに二次粒子とするためには、バインダ樹脂を使用しないことが望ましく、やむを得ず使用する場合には最低限の使用量とし、シリカの物性変化を誘起するような金属不純物量の少ない高純度なものを用いることが好ましい。
【0228】
ところで、上記のように、シリカの造粒方法(粉砕方法)は公知の何れの方法を用いてもよいが、代表的な方法として、転動法、流動層法、攪拌法、解砕法、圧縮法、押し出し法、噴射法等が挙げられる。このうち、本発明の制御された細孔特性のシリカの粒子を得るためには、バインダ樹脂の種類及び使用量、純度の選択に注意を払い、シリカを造粒する際に不要な圧力をかけないこと等が重要である。
【0229】
以上、本発明のシリカの製造方法の具体例について説明したが、上述したようにこれはあくまでも本発明のシリカの製造方法の一例に過ぎず、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
【0230】
[調湿容器の用途]
本発明の調湿容器が適応可能な用途に関しては、前述の「背景技術」の項で具体的に述べたが、本発明が適応可能な用途は、これらにとどまらず幅広い分野にわたって多数存在する。「背景技術」で述べた用途の他、本発明が適応できる分野に関して、現状と問題点、本発明の調湿容器の適応方法に関して以下にそれぞれ述べる。
【0231】
(あ)光学部材および製品類:
「背景技術」で述べたフィルム以外にも、偏光板やレンズなどの保管・輸送中にも、湿度が大きく変動すると、反りや割れ、剥がれ、変形が生じたりする問題が生じる。特に物品が積層構造になっている場合にその傾向が強い。また湿度が上昇しすぎて結露が発生し、液体状の水が物品に付着する場合は、品質低下の問題がより深刻になる。もちろんこうした問題は部材のみならず、部材を用いた半製品・製品においてもおこりうる。
【0232】
そこでこうした湿度変動を抑制するために、通常、空調設備を用いて保管、輸送したり、アルミニウムを蒸着させたラミネートバッグに密閉して保管、運用するといった対策が採られることが多いが、高コストであったり、動力を必要としたり、温度変動に伴う湿度変動には対応しきれない場合があるなどの問題がある。本発明の調湿容器をこれらの物品の保管・運用に用いることによって、低コストで品質低下を抑制することができる。また停電による空調設備の停止といった不測の事態や、荷役作業時の温度変動を予見して、空調設備やラミネートバッグと本発明の調湿容器を併用し、物品をより高度なレベルで品質保証するという運用も可能である。
【0233】
(い)半導体、センサー、MEMS類:
また(あ)の光学部材および製品と同様、半導体やセンサー、MEMS類などの保管・輸送中にも湿度変動および結露によってそれらの性能や品質が低下するという問題がある。これらの問題に対する現状の対策と、本発明による調湿容器を用いた改善策は、(あ)と同様である。
【0234】
(う)照明類:
照明類、特に街灯、非常灯、道路および線路照明灯、橋梁・橋脚灯、交通管制用の各種灯火類、航路標識、各種信号機、標識灯、商業および公共施設用照明、地中埋設照明、トンネルおよび地下照明といった屋外設置照明、または屋内プール、浴場、食品工場、製紙工場、水処理場などに代表される水蒸気分圧の高い環境に設置される屋内照明、景観用の水中灯、映像撮影用の水中照明などは、それらの内部の湿度が上昇しやすく、湿度上昇が極端な場合にはそれらの内部に結露が発生してしまうことがある。特に結露が発生した場合、電気・電子部品の不具合発生、各種部材のさび発生や腐食、反射鏡や透明材料上の液滴により照度が低下する、光の指向性が変動する、美観が損なわれるなどの問題が生じる。
【0235】
こうした問題に対処すべく、前述照明類にはパッキンなどを用いて密閉化を行ったり、内部に換気装置を設けたり、透明材料に界面活性剤などを塗布するといった対策が採られることがある。しかし、パッキンは長期的にはその防湿性能が低下する、換気装置の設置は装置自体の複雑化をまねき、かつ、継続的な動力供給やメンテナンスを必要とする、界面活性剤は耐久性に問題があったり干渉縞によって美観を損ねるなど、いずれの対策にも欠点がある。
【0236】
これら照明類も、後述の(お)盤類と同様、照明を構成する容器の内部に調湿剤もしくは調湿部材を存置させて本発明の調湿容器を構成することで、照明類内部の湿度変動を抑制し、結果的に結露発生も防止することで、照明類における前述の諸問題を解決することが可能となりうる。調湿剤もしくは調湿部材の設置位置については特に制限はないが、通常、調湿剤もしくは調湿部材の光透過性と照明の構造を考慮して、光の出力に影響を及ぼさないもしくは及ぼしにくい形態で設置されることが好ましい。
【0237】
(え)照明を除く光の入出力にかかる装置類:
浴室、浴場、プール、屋外などに設置されるテレビなどの映像装置、または監視カメラは、周辺環境の水蒸気量が多くなることがあり、通常はパッキンなどを用いて防湿を行っているが、パッキン自体の水蒸気透過性能、密閉性低下や、換気・均圧化を目的とした外部との経路を通じて映像装置や監視カメラ内部に湿気が侵入し、湿度上昇や結露発生によって電気・電子回路の不具合が発生したり、映像装置がつくる映像や監視カメラの撮影画像が乱れたりするという問題が起こりうる。
【0238】
これらの映像装置や監視カメラの内部に調湿剤もしくは調湿部材を存置させて本発明の調湿容器を構成することで、前述の問題を解決することが可能となる。なお、該調湿剤もしくは調湿部材を存置させる位置に特に制限はないが、映像装置や監視カメラの本来の機能を維持できる部位に設置するのが好ましい。
【0239】
水中に持ち込むことを目的とするカメラもしくはビデオカメラなどを内蔵するハウジングは、空気中から水中に持ち込む際に大きな温度変化を受ける。その温度変化は通常低下する変化であり、その結果、ハウジング内の密閉された空気も温度低下することによって相対湿度が上昇し、ハウジング内面に結露が発生することがある。カメラもしくはビデオカメラのレンズ装置近傍の、映像を取り込む部位の内面に結露が発生した場合、本来の映像取り込みが充分に機能しない。また取り込んだ映像を確認したり、状態を確認するためのカメラもしくはビデオカメラのモニター装置などの近傍の内面に結露が発生した場合も、カメラおよびビデオカメラからその使用者への各種情報伝達が充分に行われないという問題が生じる。前述の部位の他でも、湿度上昇とそれに伴う結露発生により、映像が乱れる、ユーザーの操作に困難を生じる、電気・電子回路の不具合発生など問題が生じやすい。
【0240】
これら水中に持ち込むことを目的とするカメラもしくはビデオカメラなどを内蔵するハウジングに、調湿剤もしくは調湿部材を内包させて本発明の調湿容器を構成することによって、前述のような問題を解決することが可能となる。調湿もしくは防曇の機能を発現させるためには調湿剤、調湿部材のいずれを存置させてもよいが、ハウジング内での調湿剤の移動やそれに伴う音の発生を防ぐため、通常は調湿部材を存置させることが好ましい。
【0241】
(お)盤類:
エネルギー伝達、情報伝達、情報取得、制御、監視、保安などを目的とした、ケーブル類、受電装置、開閉器、漏電遮断機、ブレーカー、コンデンサ、情報通信機器、制御装置、警報装置、監視装置、信号装置、音声入出力装置、防犯装置などの機器類は、それらを一定の形状を有するキャビネットなどの内部にまとめ、受電盤、キュービクル、配電盤、分電盤、スイッチボックス、コンデンサ盤、中継盤、LAN盤、センサーボックス、制御盤、警報盤、保安盤、インターホンなど(以下、盤類と称す)に構成されることが多い。こうした盤類は内部の湿度が上昇することで、金属部品にさびが生じたり、樹脂類が劣化したり、絶縁抵抗の低下、リレー、スイッチ、センサーなどの動作不良、カビの発生など、盤類内部構成物の信頼性低下を招く。湿度が上昇しすぎて盤類内部に結露が発生した場合はこのような問題はさらに深刻になり、前述の問題だけでなく、窓を含む光学部品の不具合や、最悪の場合、全体もしくは部分的な機能低下もしくは不全に陥ることがある。こうした問題は、周辺環境が変化しやすい屋外設置の盤類や、高湿度になりやすいトンネル内や地下、地中の盤類において顕著に起こりやすいが、屋内設置の盤類でも空調設備がない場合、空調設備の稼動・非稼動にかかわらずその効果が充分でない場合、屋内存置の物体・配管・機器・槽類などから蒸気が発生している場合、屋内の温度を低下させる物体・配管・機器などが存置されていてそれにより少なくとも部分的に室内の温度が降下している場合、そのほか気象現象を含めたなんらかの要因で温度分布と湿度分布にむらが生じる場合などでも充分に起こりうる。
【0242】
こうした問題を解決するために、盤類内部に換気ファンやヒーターを設置したり、乾燥空気などを送気して盤類内部を陽圧化したり、パッキンなどで盤類の密閉性を向上させたり、盤類内部から盤類外部へ結露水を排除するための流路を設けたりする対策がとられることがある。しかし、換気ファンやヒーターや乾燥空気は運用コストが高く定期的なメンテナンスが必要、パッキンはそれ自体の水蒸気透過率や経年劣化および扉類の開閉により長期間にわたった密閉状態を維持できない、流路設置は逆に外部からの水蒸気進入を招いたり湿度低下には寄与しないなど、いずれの対策にも欠点がある。
【0243】
以上述べたような盤類内部に本発明の調湿剤もしくは調湿部材を設置することにより、盤全体として本発明の調湿容器を構成することで、盤類内部の湿度変動を抑制し、結果的に結露発生も防止することで、盤類の信頼性向上に与することができる。調湿剤もしくは調湿部材の設置位置は任意であるが、盤類に付属する扉類の内側、盤類内蔵の機器類の近傍、盤類内部の機器類上部、つまり天井面に該当する部分、盤類に接続されるダクトや配管の内側などが例として挙げられる。
【0244】
(か)食品類:
食品・飲料・香料(以下、食品類と称す)の保管、運搬時に極端な湿度変動が生じたり、適さない湿度領域で存置される状態が長時間にわたって続くと、味・食感・香りの変化や消失、栄養価の低下、細菌・カビなどが繁殖するといった問題が生じる。これらの傾向は、穀物、豆類、ナッツ、コーヒー豆、茶葉、青果物などで顕著であり、酒類を含む飲料、香料などでも同様の現象は生じる。また温度変化などの要因により湿度が上昇しすぎると、結露が発生する。結露水のような液体状の水が食品類に付着すると、さらにその品質を低下させることがある。
【0245】
そこでそうした問題を防ぐため、加湿・除湿などの機能を付加した空調設備を稼動させて、湿度一定の条件で食品類を保管したり、防湿性能を有するフィルムで食品類をラミネートするなどの対策が採られることが多いが、そうした対策は、実施するためのコスト・手間がかかる、使用後に再生困難な廃棄物が生じるといった容易には解決しがたい問題を有している。また加湿・除湿などの機能を付加した空調設備を稼動させても、実際には略周期的な低湿度と高湿度の状態を繰り返す湿度変動があり、食品類の保管に必ずしも理想的な環境を提供しているとはいえない場合もある。こうした問題は冷蔵庫などで起こりうる。
【0246】
冷蔵庫を含む食品類保管庫、食品類保管容器、食品類運搬容器に調湿剤もしくは調湿部材を存置させ、本発明の調湿容器を構成することで、前述の問題を解決もしくは改善することが可能となる。その実施形態に制限はないが、たとえば以下のような実施形態を例示できる。
・冷蔵庫内に調湿剤もしくは調湿部材を設置して調湿容器を構成する。これにより、主として青果物の保管に必要な湿度変動が少ない環境や平均湿度が高い環境を提供できる。
・アルミ蒸着ラミネート袋内に食品類とともに調湿剤もしくは調湿部材を封入して調湿容器を構成する。これにより食品類の乾燥を防いだり、温度が変化した場合の相対湿度上昇や結露発生を抑制することができる。
【0247】
(き)花卉類:
花卉類は、その保存性から高湿度条件で保管、運搬、展示するのが好適であるが、高湿度条件ではわずかな温度変動や、水蒸気量増加によって結露が生じやすい。花卉類そのものに結露が発生したり、保管している容器内壁や構造材、天井面などに生じた結露水が、花卉類に付着すると、しみや変色、カビ発生や腐敗、病気、着臭の原因になり得、商品価値を招く可能性がある。
【0248】
そのため空調設備を利用して商品価値の維持を実現させることもあるが、運用コストに問題があったり、荷役作業時の温度環境変化などで問題が解決しないことも多い。
【0249】
そこで通気孔ないしは換気できる装置を設け、半密閉状態で内部に調湿剤ないしは調湿部材を存置させて本発明の調湿容器を構成すると、花卉類の商品価値を低下させる諸問題を低減させることが可能となる。なお、温度調整機能ないし/かつ湿度調整機能を有する空調装置を、花卉類を保管、運搬する容器の内部または外部に具備していても、調湿剤もしくは調湿部材をその内部に存置させることによって、略周期的な湿度変動を抑制したり、内部の部分的な温度ないし/かつ湿度のむらに起因する結露発生を抑制したり、停電などの要因で発生する不測の湿度変動や結露発生を抑制させることが可能であり、花卉類の商品価値の維持に貢献することが可能である。
【0250】
(く)コンテナ類:
車輌、鉄道、船舶、航空機などの輸送機械に搭載可能なコンテナ類は、その保管、運搬、荷役の過程で環境温度の変動などが原因で、内部の湿度が大きく変動することがある。その結果、内部に保管している物品に適さない湿度領域に内部環境が変化したり、著しく湿度上昇した場合には内部に結露が発生することがあり、これにより、内部に保管している物品の品質が低下する可能性がある。そのため、内部に保管する物品を防湿フィルムで梱包したり、定温状態に保つ空調装置を付属させて稼動させたりといった対策が採られることがある。
【0251】
しかし防湿フィルムを用いた梱包は梱包の手間がかかり、物品取り出し時には廃棄物が生じるなどの問題がある。空調装置の付属と稼動は高コストであり、メンテナンスが必要、運搬時に大きな重量増加を招くなどの問題がある。
【0252】
そこでコンテナ類の内部に、調湿剤もしくは調湿部材を設置して本発明の調湿容器を構成することにより、コンテナ類の内部の物品の商品価値の低下を抑制することが可能となる。調湿剤もしくは調湿部材の具体的な設置位置に特に制限はないが、コンテナ類の内壁、天井面、床面などの近傍、あるいは該物品の近傍などがそれらの設置位置として挙げられる。特に天井面近傍に調湿剤もしくは調湿部材を存置させると、コンテナ類内面に発生した結露水が該物品類に付着しにくくなるという利点がある。
【0253】
以上のように、さまざまな分野に本発明の調湿容器は適応可能である。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以上に掲げた例に限られず適応が可能である。
【実施例】
【0254】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0255】
[使用材料]
以下の実施例及び比較例で用いた調湿粒子、熱可塑性樹脂粉体、基材シート、その他の使用材料ならびに市販調湿部材は次の通りである。
【0256】
<調湿粒子>
シリカ:最頻細孔径9nm,平均粒径300μm
【0257】
<熱可塑性樹脂粉体>
EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)粉体:吸水率0.09%,水接触角91°、MFR70g/10min,融点97℃、平均粒径40μm
【0258】
<抗菌剤>
銀ゼオライト:株式会社シナネンゼオミック製「ゼオミックLB10N」平均粒径7μm
【0259】
<基材シート>
下層シート:ポリエステル(PET)製スパンボンド不織布(旭化成せんい株式会社製「エルタス エステル E1040」目付量40g/m、厚さ240μm)
上層シート:ポリエステル(PET)製平織織布(テキスタイル)(トロピカル「T5000」目付量100g/m、厚さ300μm)
【0260】
<粘着剤>
アクリル系粘着剤:綜研化学株式会社製「SKダイン1720」固形分46〜48%
【0261】
<剥離シート>
半晒クラフト紙よりなるベースシートの片面にシリコーンコートの剥離層を形成したもの:株式会社サンエー化研製「N−80HS」
【0262】
<市販調湿部材1>
株式会社岩田鉄工所製:「除湿シートあうん」
【0263】
<市販調湿部材2>
古河電気工業株式会社製:湿度調湿シート「ドライキーパー(登録商標)」
【0264】
[実施例1]
調湿剤としてシリカを含有する調湿部材(シリカ調湿シート)を以下の(1)〜(3)の手順で作製した。
(1) シリカとEVA粉体とを1:1の重量比で均一混合し、この混合物に対して抗菌剤を3重量%添加し、さらに均一混合して混合粉体を得た。
(2) シリカ調湿シートの下層シートとしてのPET不織布シートの上に200g/mになるよう、(1)の混合粉体を均一散布した。さらに上層シートとしてPETテキスタイルシートを被せた。
(3) (2)で得たシート積層体を、耐熱シートを介してSUS製の鏡板で挟み、120℃、0.5MPaで2分間、ホットプレス機にて熱圧着して厚さ800μmのシリカ調湿シートを得た。
【0265】
原料である調湿粒子と得られたシリカ調湿シートについて、以下の吸放湿試験(A)〜(D)を行った。
【0266】
(A)恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿剤として用いたシリカを1g、シャーレに入れて、温度20℃、相対湿度50%の環境条件1でシリカを恒量化させた。このときのシリカの重量をW1とした。また、環境条件1で恒量化させたシリカを恒温恒湿装置内で環境条件1から同じ温度20℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して、恒量化させた。このときのシリカの重量をW2とし、環境条件1から環境条件2に移したときから60分経過したときのシリカの重量をW60(1→2)とした。
【0267】
(B)恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてヒートカッターで10cm×10cmに熱溶断したシリカ調湿シートを入れて、温度20℃、相対湿度50%の環境条件1でシリカ調湿シートを恒量化させた。このときのシリカ調湿シートの重量をW1’とした。また、環境条件1で恒量化させたシリカ調湿シートを恒温恒湿装置内で環境条件1から同じ温度20℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して、恒量化させた。このときのシリカ調湿シートの重量をW2’とし、環境条件1から環境条件2に移したときから60分経過したときのシリカ調湿シートの重量をW60’(1→2)とした。
【0268】
結果は下記の通りであった。
W1=1.24g,W1’=3.12g
W2=2.01g,W2’=3.74g
W2=1.62×W1>1.1×W1
W2’=1.20×W1’>1.05×W1’
W60(1→2)=1.99(g)>W(2−1)/3
W60’(1→2)=3.72g>W(2−1)/3’
【0269】
(C)(A)と同様に、恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿剤として用いたシリカを1g、シャーレに入れて、温度20℃、相対湿度95%の環境条件2でシリカを恒量化させた。このときのシリカの重量をW3とした。また、環境条件2で恒量化させたシリカを恒温恒湿装置内で環境条件2から同じ温度20℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して、恒量化させた。このときのシリカの重量をW4とし、環境条件2から環境条件1に移したときから60分経過したときのシリカの重量をW60(3→4)とした。
【0270】
(D)(B)と同様に、恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてヒートカッターで10cm×10cmに熱溶断したシリカ調湿シートを入れて、温度20℃、相対湿度95%の環境条件2でシリカ調湿シートを恒量化させた。このときのシリカ調湿シートの重量をW3’とした。また、環境条件2で恒量化させたシリカ調湿シートを恒温恒湿装置内で環境条件2から同じ温度20℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して、恒量化させた。このときのシリカ調湿シートの重量をW4’とし、環境条件2から環境条件1に移したときから60分経過したときのシリカ調湿シートの重量をW60’(3→4)とした。
【0271】
結果は下記の通りであった。
W3=2.01g、 W3’=3.74g
W4=1.24g、 W4’=3.12g
W3=1.62×W4>1.1×W4
W3’=1.20×W4’>1.05×W4’
W60(3→4)=1.24g<W(3−4)/3
W60’(3→4)=3.12g<W(3−4)/3’
【0272】
なお、10cm×10cmの大きさに熱溶断した該シリカ調湿シートに含まれるシリカの量は、その製造過程から1gであると見積もられる。
【0273】
以上の結果より、このシリカ調湿シートに含まれる調湿剤であるシリカが条件(1)〜(4)を満たし、また、シリカ調湿シートも条件(5)〜(8)を満たすことが分かる。
【0274】
さらに(3)で得られたシリカ調湿シートの粘着加工を下記の通り行った。
剥離シートである半晒クラフト紙のシリコーンコート側にアクリル系粘着剤を70g/mとなるように均一に塗工して、十分に乾燥させ片面粘着シートを得た。更に、この粘着剤層面と上記(3)で作製したシリカ調湿シートの片面とを張り合わせた。
【0275】
なお、粘着加工シリカ調湿シートの裁断に際しては、熱溶断することによって、端面からの粉落ちを防止することができ、より強度のある調湿部材を得ることができた。
【0276】
[実施例2]
(B−2)恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてシート面積88cmの市販調湿部材1を入れて、温度20℃、相対湿度50%の環境条件1で該シートを恒量化させた。このときの該シートの重量をV1’とした。また、環境条件1で恒量化させた該シートを恒温恒湿装置内で環境条件1から同じ温度20℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して、恒量化させた。このときの該シートの重量をV2’とし、環境条件1から環境条件2に移したときから60分経過したときの該シートの重量をV60’(1→2)とした。
【0277】
結果は下記の通りであった。
V1’=6.38g
V2’=9.04g
V2’=1.42×V1’>1.05×V1’
V60’(1→2)=7.37g>V(2−1)/3’
【0278】
(D−2)(B−2)と同様に、恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてシート面積88cmの市販調湿部材1を入れて、温度20℃、相対湿度95%の環境条件2で該シートを恒量化させた。このときの該シートの重量をV3’とした。また、環境条件2で恒量化させた該シートを恒温恒湿装置内で環境条件2から同じ温度20℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して、恒量化させた。このときの該シートの重量をV4’とし、環境条件2から環境条件1に移したときから60分経過したときの該シートの重量をV60’(3→4)とした。
【0279】
結果は下記の通りであった。
V3’=9.04g
V4’=6.38g
V3’=1.42×V4’>1.05×V4’
V60’(3→4)=8.10g<V(3−4)/3’
【0280】
以上の結果より、この市販調湿部材1は条件(5)〜(8)のすべてを満たすことが分かる。
【0281】
[実施例3]
(B−3)恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてシート面積45cmの市販調湿部材2を入れて、温度20℃、相対湿度50%の環境条件1で該シートを恒量化させた。このときの該シートの重量をX1’とした。また、環境条件1で恒量化させた該シートを恒温恒湿装置内で環境条件1から同じ温度20℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して、恒量化させた。このときの該シートの重量をX2’とし、環境条件1から環境条件2に移したときから60分経過したときの該シートの重量をX60’(1→2)とした。
【0282】
結果は下記の通りであった。
X1’=12.7g
X2’=23.2g
X2’=1.83×X1’>1.05×X1’
X60’(1→2)=13.1g<X(2−1)/3’
【0283】
(D−3)(B−3)と同様に、恒温恒湿装置を用い、この装置内に調湿部材としてシート面積45cmの市販調湿部材2を入れて、温度20℃、相対湿度95%の環境条件2で該シートを恒量化させた。このときの該シートの重量をX3’とした。また、環境条件2で恒量化させた該シートを恒温恒湿装置内で環境条件2から同じ温度20℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して、恒量化させた。このときの該シートの重量をX4’とし、環境条件2から環境条件1に移したときから60分経過したときの該シートの重量をX60’(3→4)とした。
【0284】
結果は下記の通りであった。
X3’=23.2g
X4’=12.9g
X3’=1.80×X4’>1.05×X4’
X60’(3→4)=22.8g>X(3−4)/3’
【0285】
以上の結果より、この市販調湿部材2は、条件(5)および(6)のいずれも満たすものの、条件(7)、(8)はいずれも満たさないことが分かる。
【0286】
[調湿実施例1]
実施例1で得られた粘着加工シリカ調湿シートをヒートカッターで10cm×8cmに熱溶断して、その粘着剤層側をガラス製の密閉容器(20℃、50%RH)の内壁に貼り付け、調湿容器を構成した。この容器を密閉して容器周辺の温度を変化させたときの容器内の湿度変化を調べ、結果を図5に示した。
【0287】
[調湿比較例1]
粘着加工シリカ調湿シートを用いなかったガラス製の容器(20℃、50%RH)について、調湿実施例1と同様にして容器内の湿度変化を調べ、図5に示した。
【0288】
図5より次のことが分かる。
容器内にシリカ調湿シートを存置しない調湿比較例1の場合、外部の温度を20℃から8℃、22℃、15℃と0.2℃/分で変化させたときに、容器内の温度変化とともに、容器内の湿度が50%RHから81%RH、39%RH、58%RHへと大きく変化する。これに対して、調湿実施例1のように容器内にシリカ調湿シートを存置した場合は、外部の温度変化に対して、48%RHから49%RH、50%RH、47%RHと湿度の変動を抑制することができる。
【0289】
なお、調湿実施例1、調湿比較例1で用いたガラス製容器の実効内容積は3000cmであって、その想定される使用環境の最高温度は22℃であり、その場合、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガス(この場合は空気)が含みうる水蒸気の総重量WAは0.06gである。
【0290】
一方、上記の吸放湿試験(A),(B)の結果から算出される調湿実施例1の環境条件1及び2におけるシリカの到達重量差ならびにシリカ調湿シートの到達重量差は以下の通りである。
W2−W1=1.61g−0.99g=0.62g
W2’−W1’=2.99g−2.50g=0.49g
【0291】
前述の通り、用いたガラス製容器内の空気が、該容器の使用環境下で含みうる水蒸気の総重量WAは0.06gであるので、
W2−W1=0.62g≒10×WA
W2’−W1’=0.49g≒8×WA
であり、この調湿容器は、前記式(α),(β)を満たすものである。
【0292】
[調湿実施例2〜5および調湿比較例2]
調湿部材として、それぞれ以下のものを用い(ただし、調湿比較例2では使用せず)、以下の条件で調湿効果を検討した。
【0293】
調湿実施例2:実施例1で作成したシリカ調湿シートを46.6cm用いた。
調湿実施例3:実施例1で作成したシリカ調湿シートを11.2cm用いた。
調湿実施例4:市販調湿部材1を11.0cm用いた。
調湿実施例5:市販調湿部材2を11.8cm用いた。
調湿比較例2:調湿剤および調湿部材を用いなかった。
【0294】
<調湿実施例2〜5および調湿比較例2の共通条件>
内容積2.58Lのガラス製デシケーターを容器として使用。内部に以下に述べる各種調湿部材(調湿比較例2ではなし)と、温度および湿度を記録する装置を存置させ、これを常圧下、内部を温度20℃、相対湿度42%の空気で充分に養生した後に、シリコーングリースを塗布した蓋をして調湿容器を構成した。この調湿容器を恒温恒湿装置内に入れ、装置内温度20℃から開始して0.25℃/分で5℃まで温度を降下させ、5℃で10分保持した後に、0.25℃/分で30℃まで温度を上昇させた。さらに30℃で10分保持した後に、0.25℃/分で20℃まで温度を降下させた。これらの実験条件および調湿容器内の湿度変動の概要を表1に示す。
【0295】
なお、表1中の「吸放湿量にかかるファクターf」は以下のようにして求めた。
調湿実施例2〜5および調湿比較例2での調湿容器の最高使用温度は30℃である。内容積2.58Lの調湿容器中に、合計980hPaの空気および水蒸気が含まれると仮定すると、最高使用温度30℃での飽和水蒸気量は0.078gとなる(WAに相当する)。これを分母とし、W2’−W1’に代表される条件(5)の調湿容器の吸湿量を分子として計算したのが「吸放湿量にかかるファクターf」である。すなわちf≧0.5であれば、前記式(β)を満たすことになる。
【0296】
【表1】

【0297】
表1から以下のことがわかる。
調湿部材を存置させない場合は(調湿比較例2=空試験)、温度降下により最高86%RHまで相対湿度が上昇するが、実施例1のシリカ調湿シート46.6cmを存置させることで降温時の最高到達湿度を54%にまで抑制することが可能となった(調湿実施例2)。実施例1のシリカ調湿シートは11.2cm(f=1.1相当)に減らしても最高到達湿度は66%RHであり(調湿実施例3)、有意の調湿効果が見られた。また市販調湿部材1を11.0cm使用しても(調湿実施例4)同様の調湿効果が見られた。一方で、調湿部材にかかる条件(7)、(8)のいずれも満たさない市販調湿部材2を用いても(調湿実施例5)、降温時最高到達湿度は74%であって、調湿比較例2と比較して調湿効果が得られることがわかる。
【0298】
[調湿実施例6]
天井面がパッキン付きのガラス板、側面および底面が主としてアルミニウム板からなる地中埋設照明の円筒形の照明ケースに、調湿部材として実施例1で作成したシリカ調湿シート約4000cmを入れ、パッキン付きのガラス板を取り付けて調湿容器を構成した。これを地中に埋設して、平均気温が6〜13℃の時期に二週間、夜間該照明を点灯し、日中照明を消灯するという操作を繰り返した。その結果、ガラス板に結露発生が見られなかった。
【0299】
なお、用いた地中埋設照明の照明ケースの実効内容積は約24000cmであって、その想定される使用環境の最高温度は100℃であり、その温度かつ常圧で、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガス中の水蒸気の総重量WAは約14gである。
一方、上記の吸放湿試験(A)、(B)の結果から算出される環境条件1及び2における該容器に用いているシリカの到達重量差ならびにシリカ調湿シートの到達重量差は以下の通りである。
W2−W1=80.4g−49.6g=30.8g
W2’−W1’=149.6g−124.8g=24.8g
【0300】
前述の通り、用いた地中埋設照明の照明ケース内の空気が、該容器の使用環境下で含みうる水蒸気の総重量WAは約14gであるので、
W2−W1=30.8g≒2.2×WA
W2’−W1’=24.8g≒1.8×WA
であり、この調湿容器は、前記式(α),(β)を満たすものである。
【0301】
[調湿比較例3]
調湿実施例6と同じ地中埋設照明を用い、調湿剤も調湿部材も入れずに、調湿実施例6と同じ場所、同じ時期に埋設し、同様な点灯・消灯操作を繰り返した。その結果、日中にガラス板に結露が発生しているのが確認された。
【0302】
[調湿実施例7]
<容器の作成>
ダンボールプラスチックを用い、幅20cm、奥行き15cm、高さ5cmで、上面が開口部となっている受器を作成した。また同じダンボールプラスチックで幅20cm、奥行き15cmの被せ蓋も作成し、前述の受器とあわせて半密閉性のある容器を作成した。
【0303】
<調湿容器の構成>
前述のダンボールプラスチック製容器のうち、受器に実施例1のシリカ調湿シートを合計140cm貼付し、さらに被せ蓋に該シート63cmを貼付した。容器内部に温度および湿度が記録できる装置も存置させて調湿容器を構成した。
【0304】
<調湿実験>
常圧下、恒温恒湿装置で20℃、相対湿度40%RHの環境を作り、その中に前述の調湿容器を入れて30分以上養生した。その後、受器に被せ蓋をしてゴムバンドで全体を縛り、さらに10分以上同じ環境で養生した(過程1)。その後すぐに−28℃設定の冷凍庫に該調湿容器を投入し、60分放置した(過程2)。さらに再び20℃、40%の恒温恒湿装置内に該調湿容器を戻し、1時間養生した(過程3)。実験終了後に該調湿容器内に設置した温度および湿度が記録できる装置を回収し、内部の温度変動および相対湿度変動を確認したところ、過程3の20℃、50%RH環境への再投入後、相対湿度が73%まで上昇して、その後徐々に40%RHまで減少しているのが確認された。
【0305】
なお、用いたダンボールプラスチック製容器の実効内容積は約1500cmであって、その想定される使用環境の最高温度は20℃であり、その場合、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガス(この場合は空気)が含みうる水蒸気の総重量WAは0.026gである。
一方、上記の吸放湿試験(A),(B)の結果から算出される環境条件1及び2におけるシリカの到達重量差ならびにシリカ調湿シートの到達重量差は以下の通りである。
W2−W1=4.08g−2.52g=1.56g
W2’−W1’=7.59g−6.33g=1.26g
前述の通り、用いたガラス製容器内の空気が、該容器の使用環境下で含みうる水蒸気の総重量WAは0.026gであるので、
W2−W1=1.56g≒60×WA
W2’−W1’=1.26g≒48×WA
であり、この調湿容器は、前記式(α),(β)を満たすものである。
【0306】
[調湿比較例4]
調湿実施例7と同様の容器を用い、内部に調湿剤および調湿部材を設置せずに、調湿実施例7と同様の調湿実験を行った。その結果、過程3の20℃、50%RH環境への再投入後、相対湿度が89%まで上昇して、その後徐々に40%RHまで減少しているのが確認された。
【0307】
以上の調湿実施例7と調湿比較例4の結果から、実施例1の調湿部材を用いて調湿容器を構成することにより、約10分で容器内温度が35℃上昇するような急激な温度変化に際し、温湿潤な空気の容器内部への侵入による相対湿度上昇を89%RHから73%RHに抑制・調湿することが可能となった。これは、たとえば−20℃以下の冷凍庫内環境から、20℃前後の常温に物品を移動させる際に生じる急激な湿度変動を、ある程度抑制可能になることを表すものである。
【産業上の利用可能性】
【0308】
本発明に係る調湿容器は、例えば、フィルム、電子・電気・光学部品および製品、楽器、人形、その他の手芸品や工芸品、漆器、絵画、掛軸等の美術品、木工品、書籍等の紙製品、食品・飲料・香料、花卉類等の、湿度環境を適切な状態で維持する必要のある物品の運用、保存ないし運搬を目的とする容器として有用である。
【符号の説明】
【0309】
1,2 基材シート
3 調湿粒子
4 熱可塑性樹脂粉体
5 粘着剤層
6 剥離シート
7 調湿層
8 空隙
10,10A 調湿シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ないしは半密閉できる容器と、該容器内に存置された下記(1)及び(2)の条件を満たす調湿剤とを有し、該容器内の吸放湿量が下記式(α)を満たすことを特徴とする調湿容器。
W2−W1≧0.5×WA …(α)
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1,W2は、下記条件(1)に記載される該調湿剤の到達重量である。)
(1)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW1、また、環境条件1で恒量化させた該調湿剤を、環境条件1から、同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW2とした場合、W2≧1.1×W1となる。
(2)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿剤を恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW3、また、環境条件2で恒量化させた該調湿剤を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿剤の到達重量をW4とした場合、W3≧1.1×W4となる。
【請求項2】
請求項1において、該調湿剤が下記条件(3)及び(4)を満たすことを特徴とする調湿容器。
(3)条件(1)における環境条件1から環境条件2に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW1からW2へ重量変化する際に、全重量変化量(W2−W1)の1/3の重量W(2−1)/3(=W1+(W2−W1)/3)に60分以内で到達する。
(4)条件(2)における環境条件2から環境条件1に該調湿剤を移したときに、該調湿剤がW3からW4へ重量変化する際に、全重量変化量(W3−W4)の1/3の重量W(3−4)/3(=W3−(W3−W4)/3)に60分以内で到達する。
【請求項3】
密閉ないしは半密閉できる容器と、該容器内に存置された調湿剤とを有する調湿容器であって、該調湿剤は、下記条件(5)及び(6)を満たす調湿部材として前記容器内に在置されており、該容器内の吸放湿量が下記式(β)を満たすことを特徴とする調湿容器。
W2’−W1’≧0.5×WA …(β)
(ただし、WAは、該容器の常用使用環境における最高温度あるいは100℃のいずれか低いほうの温度において、相対湿度100%かつ当該容器の実効内容積に等しい容器内のガスが含みうる水蒸気の総重量であり、W1’,W2’は、下記条件(5)に記載される該調湿部材の到達重量である。)
(5)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度50%の環境条件1で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW1’、また、環境条件1で恒量化させた該調湿部材を、環境条件1から同じ温度T℃かつ相対湿度95%の環境条件2に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW2’とした場合、W2’≧1.05×W1’となる。
(6)温度T℃(ただし、T℃は15〜30℃の範囲内の温度である。)、相対湿度95%の環境条件2で該調湿部材を恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW3’、また、環境条件2で恒量化させた該調湿部材を、環境条件2から同じ温度T℃かつ相対湿度50%の環境条件1に移して恒量化させたときの該調湿部材の到達重量をW4’とした場合、W3’≧1.05×W4’となる。
【請求項4】
請求項3において、該調湿部材が下記条件(7)及び(8)を満たすことを特徴とする調湿容器。
(7)条件(5)における環境条件1から環境条件2に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW1’からW2’へ重量変化する際に、全重量変化量(W2’−W1’)の1/3の重量W(2’−1’)/3(=W1’+(W2’−W1’)/3)に60分以内で到達する。
(8)条件(6)における環境条件2から環境条件1に該調湿部材を移したときに、該調湿部材がW3’からW4’へ重量変化する際に、全重量変化量(W3’−W4’)の1/3の重量W(3’−4’)/3(=W3’−(W3’−W4’)/3)に60分以内で到達する。
【請求項5】
請求項1又は2において、前記調湿剤が、シート状又はシートを加工した形態の調湿部材として前記容器内に存置されていることを特徴とする調湿容器。
【請求項6】
請求項3又は4において、該調湿部材がシート状またはシートを加工したものであることを特徴とする調湿容器。
【請求項7】
請求項5又は6において、該調湿部材は、70〜400℃の部分的な加熱処理を経て加工されたものであることを特徴とする調湿容器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、該調湿剤がケイ素を含有することを特徴とする調湿容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−291781(P2009−291781A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110368(P2009−110368)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】