説明

調理加工パスタの製造方法

【課題】 調理加工パスタの製造方法に関する。
【解決手段】 未加熱の生パスタを100〜300℃の過熱水蒸気で5〜20分間加熱する第1の加熱工程と、加熱されたパスタの表面温度が10〜20℃になるように5〜10分間冷却する第1の冷却工程と、第1の冷却工程で冷却されたパスタに40〜70℃のソースを注入するソース注入工程と、ソース注入工程でソースが注入されたパスタを150〜300℃の過熱水蒸気で5〜20分間加熱する第2の加熱工程と、第2の加熱工程で加熱されたパスタの芯温度が10〜20℃になるように20〜40分間冷却する第2の冷却工程と、第2冷却工程で冷却されたパスタを裏返しして、10〜20℃のソースを注入する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理加工パスタの製造方法に関する。詳しくは、飲食店、学校給食、外食産業あるいは量販惣菜向け業務用調理加工パスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、調理加工されたパスタは、冷凍調理加工食品として、スーパーマーケットやコンビニエンストアで市販されている。その市販されている冷凍パスタは、半茹で状態の麺を除熱せずにそのまま密閉包装した半調理麺や、生麺や乾麺を予め茹でて茹で麺として冷蔵、冷凍保存させた麺である。
【0003】
しかしながら、半調理麺や茹で麺は、予め茹でてあるので、麺自体が柔らかくてコシがなく、もちっとした食感がなかった。また、茹で麺は、多くの水分を含有しているので、チルド冷蔵での保存性が悪く、長期の保存で食味が低下することがあった。
【0004】
一般に、業務や家庭におけるパスタの調理方法としては、沸騰したお湯が入った鍋に水量の1〜1.5%の塩を加え、その鍋に乾燥パスタまたは生パスタを入れてほぐしながら、パスタを所望する硬さになるまでボイルする調理方法が用いられている。
【0005】
その他の食品の加熱調理には、過熱水蒸気による加熱調理があり、通常のガスなどの加熱と比べ、伝熱速度が速く、短時間で調理が行えるので、焼成、脱脂、減塩、殺菌、乾燥といった加工処理に適する特性があった。
【0006】
また、過熱水蒸気による加熱調理は、熱効率が高く、空気を遮断して低酸素状態にできることにより、食品の酸化等による品質劣化が少なく、しかも、加熱初期における食品表面への水蒸気の凝縮水の付着により、脱脂、減塩が行われ、さらに、食品の水分減少が抑制されるという従来にない優れた調理方法として、注目されている。
【0007】
近年、家庭用の食品調理装置として、過熱水蒸気を用いた電子レンジが販売されている。しかしながら、この装置は、処理能力の点で多量生産の業務用食品には不向きであった。
【0008】
また、過熱水蒸気を利用した多量生産の業務用食品の調理装置においては、過熱水蒸気の流量及び圧力の制御が十分でなく、温度精度及び温度変更等の温度制御が困難であった。
【0009】
多量生産の業務用食品の調理装置において、例えば、過熱水蒸気の配管距離を長くすると加熱後に温度ドロップが生じてしまうという欠点がある上、水蒸気発生装置が過熱仕様であったり、常圧仕様のものでも、熱効率や設定温度までの立ち上がりが遅いなどの問題があり、充分な再現性を得ることが難しいことから、幅広く実用化されていなかった。
【0010】
調理加工パスタの製造方法として、次の特許が開示されている。
【0011】
特許文献1には、乾燥麺を水分率が45〜60%の半茹で状態に茹でる工程と、ほぼ飽和水蒸気状態にする工程と、麺を徐冷し、水分を麺の芯まで浸潤させる工程と、冷凍又は冷蔵保存する工程とからなる半茹で冷凍又は冷蔵麺の製造方法が開示されている。
【0012】
また、特許文献2には、カップ状容器に、冷凍ソースと冷凍パスタを一体的に入れ、しかも電子レンジでの解凍時間を短縮する冷凍パスタの解凍容器と解凍方法が開示されている。
【0013】
さらに、特許文献3には、炊飯した米飯粒や茹で上げたパスタのような主材料の表面に水分移動防止層で被覆し、水分移動防止層の外面をソース層で被覆した状態で凍結した凍結パスタ及びその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3722431号公報(段落0006)
【特許文献2】特開平9−299052号公報(段落0005、図1)
【特許文献3】国際公開01−085089号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1は、食するときに半茹で冷凍又は冷蔵麺を短時間の加熱で調理できるように、乾燥麺を予め半茹で状態に茹でて、密閉状態に保持した麺で、予め半茹で状態にしてあるので、茹であげ直後のアルデンテ状態のコシがあって、歯ごたえのある食感は得られなかった。
【0015】
また、特許文献2は、カップ状容器内に冷凍ソースと冷凍パスタとゼラチンが別々に入っており、消費者が食するときにカップ状容器を電子レンジで解凍して、パスタとソースを絡めて均一に混ぜる手間があった。
【0016】
さらに、特許文献3は、米飯あるいはパスタの主材料と、一次ソース及び二次ソースの補助材料との混合で、主材料とソースを混合する工程と凍結工程を2回行う必要性があり、製造コストを低減できないという問題があった。
【0017】
本発明の製造方法は、過熱水蒸気の特性(焼成、脱脂、減塩、殺菌、乾燥)を利用した加熱処理に緩慢冷却処理を併せて施すことにより、調理加工パスタの加熱のみならず、過熱水蒸気の特性を長時間維持することができた。また、保存性が良好で、歩留まりが向上し、調理後の食味や食感に優れた調理加工パスタを効率良く製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、過熱水蒸気の加熱処理に加えて、緩慢冷却することにより、過熱水蒸気の特性を長時間維持することができた。また、パスタは、保存性が良好で、歩留まりが向上し、調理後の優れた食味や食感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1発明の構成は、過熱水蒸気を用いて加熱調理する調理加工パスタの製造方法であって、調理加工パスタを過熱水蒸気で加熱する第1の加熱工程と、調理加工パスタを緩慢冷却する第1の冷却工程と、調理加工パスタを過熱水蒸気で加熱する第2の加熱工程と、調理加工パスタを緩慢冷却する第2の冷却工程とを有することを特徴とする。
【0020】
第2発明の構成は、第1発明の構成において、第1の加熱工程で加熱する温度が100〜300℃であることを特徴とする。
【0021】
第3発明の構成は、第1または第2発明の構成において、第1の冷却工程で調理加工パスタの表面温度が10〜20℃であることを特徴とする。
【0022】
第4発明の構成は、第1〜3発明のいずれかの発明の構成において、第2の加熱工程で加熱する温度が150〜300℃であることを特徴とする。
【0023】
第5発明の構成は、第1〜4発明のいずれかの発明の構成において、第2の冷却工程で調理加工パスタの芯温度が10〜20℃であることを特徴とする。
【0024】
本発明における調理加工パスタとは、食材と具材あるいは調味料を組み合わせて調理した後に凍結し、冷凍した状態で流通するパスタである。
【0025】
本発明における調理加工パスタは、具体的には、スパゲッティ、マカロニ、ラザニア等が挙げられる。また、惣菜としては、肉、魚介、野菜、きのこ類等の素材にソースや醤油等の調味料をかけたり、からめたりして食する肉料理、魚料理、野菜料理等もすべて含む。
【0026】
本発明において、パスタ、具材に組み合わせるソースとしては、クリームソース、ポモドーロソース、ミートソース、ポリチーニソース、カレーソース、和風ソース(醤油味、味噌味)、クリームソース(チーズ味)、ペペロンチーノ等から適宜使用することができる。使用するソースの塩度は、製造工程でエマルジョンの解除が行われるように塩度を0.4〜0.8%にすることが望ましい。
【0027】
また、本発明において、使用する具材としては、過熱水蒸気により加熱調理された野菜類、シーフード類、茸類、肉類等から適宜使用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法によれば、過熱水蒸気の特性を利用した加熱処理に緩慢冷却処理を併せて施すことにより、調理加工パスタの調理のみならず、過熱水蒸気の特性を長時間維持することができた。また、保存性が良好で、歩留まりが向上し、調理後の食味や食感に優れたパスタの製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明において、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気を常圧で加熱することにより、得られる100℃以上の高温水蒸気をいう。
【0030】
本発明において、芯温とは、パスタの中心温度を云い、パスタの表面温度よりもパスタ自体の中心温度を測定することにより、的確にパスタの変色する温度を把握することができる。
【実施例】
【0031】
以下に示す実施例をあげて、本発明の調理加工パスタの製造方法について、更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0032】
図1は、本発明の調理加工パスタの製造方法を示す工程図であり、工程ごとに説明する。
【0033】
(実施例1)
(パスタ原料の計量工程)
パスタ原料であるデュラムセモリナ粉、卵白粉、荒塩、酵母エキス、水を自動計量装置で計量する。
【0034】
(混合工程)
計量したパスタ原料を混合機で2〜10分間混合する。
【0035】
(湯温調整工程)
混合したパスタ原料を湯温30〜80℃で湯温調整する。
【0036】
(混合仕上げ工程)
さらに、水分とその他の原料を5〜10分間混合して、パスタ生地の状態に仕上げる。
【0037】
(押出工程)
仕上げたパスタ生地を圧力20〜30MPaのステンレス製押出機で押出して、直径1.8〜2mmの生パスタ麺帯を成形する。
【0038】
(冷却工程)
生パスタ麺帯を温度8〜15℃、湿度60〜80%に設定された冷却庫に入れて、パスタ表面温度を10〜15℃に冷却する。
【0039】
(カット工程)
生パスタ麺帯を所定の長さにカットする。
【0040】
(計量工程)
ウエイトチェッカーで生パスタを自動計量して、不良品を自動的に除去する。
【0041】
(皿に投入工程)
生パスタの麺40〜150gがバラバラ状態になるようにほぐしながら皿内に投入する。
【0042】
(食用油噴霧工程)
バラバラになった生パスタの表面全体に食用油を3〜10cc噴霧する(生パスタ加熱後のクッキを防止するため)。食用油は、食用になるものなら特に限定されることなく、使用できる。例えば、サラダ油、菜種油、胡麻油、紅花油、綿実油、オリーブ油、動物油(ラード、牛脂等)、魚油、肝油等を使用することができる。好ましくは、粘性の少ない無色無臭食用油を使用することが望ましい。
【0043】
(第1の加熱工程)
第1の加熱工程において、蒸気圧0.055MPa、蒸気流量12.5〜17kg/5〜7分、ファンダンバー開度上下各50%、過熱水蒸気の加熱温度135℃、加熱時間5分間に設定された調理機(アサヒ装設(株)製ハイコック ディブクッキングシステム)内にパスタが入った皿を投入して、パスタの表面温度が70〜80℃になるように加熱した。過熱水蒸気の加熱温度を135℃、加熱時間を5分間加熱することにより、パスタを熱膨張させることができ、仕上げ後のパスタが冷えてもくっつかなかった。好ましくは、第1の加熱工程における過熱水蒸気の加熱温度は、100〜300℃で、加熱時間は、5〜20分間にすることが望ましい。過熱水蒸気の加熱温度が100℃未満、加熱時間が5分間未満の加熱では、パスタのα化や風味及び優れた食感が得られない。また、加熱温度が300℃、加熱時間が20分間を超えて加熱した場合には、パスタは、乾燥が進み、硬さができてしまう。
【0044】
(第1の冷却工程)
第1の冷却工程において、第1の加熱工程後のパスタの表面温度が15℃になるように8分間緩慢冷却した。パスタの表面温度を15℃、冷却時間を8分間緩慢冷却させることにより、凝縮によって生じた凝縮水の一部がパスタに吸収され、もちっとした食感を維持することができた。好ましくは、第1の冷却工程におけるパスタの表面温度は10〜20℃で、冷却時間は5〜10分間冷却することが望ましい。パスタの表面温度が10℃未満、冷却時間が5分間未満の冷却では、生パスタの乾燥したサラサラ感がなく、優れた食感が得られない。また、パスタの表面温度が20℃、冷却時間が10分間を超えて冷却した場合には、パスタは、乾燥が進み、硬さや半生状態ができてしまう。
【0045】
(皿にソース注入工程)
パスタが入った皿内に温度が50℃のソースを所定量の半分注入して混合する。好ましくは、注入されるソースの温度は、40〜70℃であることが望ましい。ソースの温度が40℃未満の冷却では、パスタのα化が不十分で美味しさが得られない。また、ソースの温度が70℃を超えた場合には、パスタのα化が進みすぎて、パスタが柔らかくなってしまう。
【0046】
(第2の加熱工程)
第2の加熱工程において、パスタとソースが混合された皿を過熱水蒸気の加熱温度150℃、加熱時間5分間に設定された前記調理機に入れて再加熱した。過熱水蒸気の加熱温度を150℃、加熱時間を5分間にすることにより、パスタの内部がα化され、ソースからの水分の吸収を極力抑えられた。好ましくは、第2の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度は150〜300℃で、加熱時間は5〜20分間にすることが望ましい。過熱水蒸気の加熱温度が150℃未満、加熱時間が5分間未満の加熱では、生パスタのサラサラ感、風味、優れた食感が得られない。また、加熱温度が300℃、加熱時間が20分間を超えて加熱した場合には、パスタは、乾燥が進み、硬さができてしまう。
【0047】
(第2の冷却工程)
第2の冷却工程において、第2の加熱工程で加熱されたパスタの芯温度が15℃になるように25分間緩慢冷却した。パスタの芯温度を15℃、冷却時間を25分間緩慢冷却させることにより、パスタの熱膨張した状態を安定させ、パスタの味、食感も優れ、パスタのクッキ防止及び劣化防止を図ることが長時間維持することができた。好ましくは、第2の冷却工程でパスタの芯温度は10〜20℃で、冷却時間は20〜40分間にすることが望ましい。パスタの芯温度が10℃未満、冷却時間が20分間未満の冷却では、パスタは、凝固が進み、パスタ内部のα化が得られない。また、パスタの芯温度が20℃、冷却時間が40分間を超えて冷却した場合には、パスタは、乾燥が進み、硬さができてしまう。
【0048】
(ソース注入工程)
皿内で冷却されたパスタを裏返しして、温度が15℃のソースの残り半分を皿に注入して混合する。好ましくは、注入されるソースの温度は、10〜20℃であることが望ましい。ソースの温度が10℃未満の冷却では、パスタの表面にソースを均一に注入することができない。また、ソースの温度が20℃を超えた場合には、ソースがパスタの間に沈んでしまう。
【0049】
(具材盛り付け工程)
皿内のパスタの上に予め過熱水蒸気で加工された具材を盛り付けて、蓋をかぶせて完成品とする。そして、皿をポリエチレンラミネート等の包装袋に詰めて、真空にして真空パックとする。
【0050】
(急速冷凍工程)
袋詰めした皿を−35℃の温度で急速冷凍する。
【0051】
(検査工程)
金属探知機で皿の中に金属が混入していないかをチェックする。
【0052】
(包装工程)
皿に貼付した包装材に品名、重量、製造年月日、賞味期限、使用食材、保存方法等の必要事項が記載されているかをチェックする。
【0053】
(ピッキング工程)
皿をカルトンケースに詰め梱包する。
【0054】
(冷凍保管工程)
カルトンケースを−20℃の温度に設定された冷凍庫に保管する。
【0055】
上記の製造工程で作製した皿から冷凍パスタを取り出して、フライパンに入れて30〜100ccの水を加え、強火で約4〜7分間加熱したパスタを実施例1のサンプルとした。
【0056】
(実施例2)
実施例1の製造工程のうち、第1の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を110℃、加熱時間を5分間、第2の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を135℃、加熱時間を5分間、に設定された実施例1と同一の調理機内にパスタ100gを投入し、加熱した。そして、第1の冷却工程で冷却温度を15℃、冷却時間を25分間、第2の冷却工程で冷却温度を15℃、冷却時間を40分間緩慢冷却した冷凍パスタを作製した。さらに、冷凍パスタをお湯の入った鍋に入れ、4〜7分間加熱したパスタを実施例2のサンプルとした。
【0057】
(実施例3)
実施例1の製造工程のうち、第1の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を140℃、加熱時間を5分間、第2の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を140℃、加熱時間を5分間、に設定された実施例1と同一の調理機内にパスタ100gを投入し、加熱した。そして、第1の冷却工程で冷却温度を15℃、冷却時間を25分間、第2の冷却工程で冷却温度を15℃、冷却時間を40分間緩慢冷却した冷凍パスタを作製した。さらに、冷凍パスタを電子レンジを用いて、出力700Wで7分間加熱したパスタを実施例3のサンプルとした。
【0058】
(比較例1)
製造工程で予め茹でたパスタとソースを混ぜ合わせたタイプの市販の冷凍パスタ(ソース混合品)を電子レンジを用いて、出力700Wで7分間加熱したパスタを比較例1のサンプルとした。
【0059】
(比較例2)
予め茹でたパスタとソースを別々に解凍して混ぜ合わせるタイプの市販の冷凍パスタ(ソース別添品)とソースをお湯の入った鍋に入れ、7分間加熱したパスタを比較例2のサンプルとした。
【0060】
(比較例3)
実施例1の製造工程のうち、第1の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を135℃、加熱時間を5分間、第2の加熱工程で過熱水蒸気の加熱温度を135℃、加熱時間を5分間に設定された実施例1と同一の調理機内にパスタ100gを投入し、実施例1の工程で緩慢冷却工程を除いて同一条件で作製したパスタを比較例3のサンプルとした。
【0061】
上記過熱水蒸気の加熱温度、加熱時間、冷却温度、冷却時間、調理機等の異なる条件でパスタを調理してサンプルを作製し、パネラー10名による緩慢冷却後の歩留まり、変色、保存日数等の評価と官能テストを実施した。ただし、色の評価については、色調計及びグアヤコール法を用いて参考にした。
【0062】
実施例1〜3と比較例1〜3のパスタの評価と官能テストの結果を、表1に示した。
【0063】
表1中の数値は、5点満点による官能テストの平均値である。
(1)食感の評価
5:美味しい。
4:やや美味しい。
3:普通。
2:やや美味しくない。
1:美味しくない。
(2)味の評価
5:美味しい。
4:やや美味しい。
3:普通。
2:やや美味しくない。
1:美味しくない。
(3)風味の評価
5:優良。
4:良好。
3:普通。
2:可。
1:不可。
(4)劣化状態の評価
5:優良。
4:良好。
3:普通。
2:可。
1:不可。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1のパスタは、歩留まりが90〜100%で、変色もなく、6ヶ月冷凍保管することができた。また、パスタを食べたパネラーは、麺はコシがあり、アルデンテの状態を保ち、モチモチとした弾力性があり、歯切れの良い食感があった。セモリナの自然な香りがあり、味、風味ともに美味しかった。劣化した状態は全く見られなかった。
【0066】
実施例2のパスタは、歩留まりが100%で、変色もなく、5ヶ月冷凍保管することができた。また、パスタを食べたパネラーは、実施例1のパスタと比べて、第1及び第2の過熱水蒸気の温度がやや低く、普通の味及び食感であったが、風味が良好であった。劣化した状態は普通であった。
【0067】
実施例3のパスタは、歩留まりが100%で、変色もなく、5ヶ月冷凍保管することができた。また、パスタを食べたパネラーは、実施例1のパスタと比べて、第1及び第2の冷却時間がやや長いが、麺はコシがあり、アルデンテの状態を保ち、モチモチとした弾力性があり、歯切れの良い食感があり、風味も優れていた。劣化した状態は全く見られなかった。
【0068】
比較例1のパスタを食べたパネラーは、やや美味しい食感があったが、風味は、油脂類の酸化臭があった。味及び劣化状態は、普通であった。
【0069】
比較例2のパスタを食べたパネラーは、味は、普通であるが、パスタとソースが分離してよく絡まなかった。また、食感、風味及び劣化状態は、普通であった。
【0070】
比較例3のパスタは、歩留まりが100%であるが、過熱水蒸気の加熱処理後、緩慢冷却していないので、パスタの色が白っぽくなり、クッキが出てしまい、保存することができなかった。また、パスタを食べたパネラーは、食感及び味は、普通で、風味及び劣化状態は、やや落ちた。
【0071】
本発明の調理加工パスタは、防腐剤等の添加剤を使用しなくても、5ヶ月間冷凍保管してもパスタの食味や食感ともに変わらなかった。
【0072】
本発明である製造方法によれば、過熱水蒸気の特性を利用した加熱処理に緩慢冷却処理を併せて施すことにより、過熱水蒸気の特性を長時間維持した状態で、保存性が良好で、歩留まりが向上し、調理後の食味や食感に優れた調理加工パスタを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の調理加工パスタの製造方法を示す工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気を用いて加熱調理する調理加工パスタの製造方法であって、
前記調理加工パスタを過熱水蒸気で加熱する第1の加熱工程と、
前記調理加工パスタを緩慢冷却する第1の冷却工程と、
前記調理加工パスタを過熱水蒸気で加熱する第2の加熱工程と、
前記調理加工パスタを緩慢冷却する第2の冷却工程とを有することを特徴とする調理加工パスタの製造方法。
【請求項2】
前記第1の加熱工程で加熱する温度が100〜300℃であることを特徴とする請求項1に記載の調理加工パスタの製造方法。
【請求項3】
前記第1の冷却工程で前記調理加工パスタの表面温度が10〜20℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の調理加工パスタの製造方法。
【請求項4】
前記第2の加熱工程で加熱する温度が150〜300℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の調理加工パスタの製造方法。
【請求項5】
前記第2の冷却工程で前記調理加工パスタの芯温度が10〜20℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の調理加工パスタの製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2008−295338(P2008−295338A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143566(P2007−143566)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【特許番号】特許第4070148号(P4070148)
【特許公報発行日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(500460302)東和フードサービス株式会社 (3)
【出願人】(507178224)
【Fターム(参考)】