説明

調理台家具

【課題】キャビネットの構成部材の加工コストを低減しつつ蹴込み空間の機能を得る調理台家具を提供する。
【解決手段】調理台家具Aは、キャビネット10A,10B,10Cの側面視が矩形状とされ、該キャビネットの前面収納開口を覆う扉体24の床面直上の端部に、下方に向かうに従って後退する断面形状とされた後退部26を備え、かつ、概ね腰高さ位置の前面8a,18a,8Baから前方に突出する突出体9,19,3cを設け、この突出体の突出分に相当する下端部前方空間と、前記後退部とによって、下端部前方に蹴込み空間29を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理台家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調理台家具では、箱状のキャビネットの側面を構成する側板の前方下端に切欠を形成し、この切欠の前面と家具の扉表面などの前面との間の寸法によって蹴込み空間を形成していた(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3501061号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような調理台家具では、側板の前方下端に蹴込み空間を形成するための切欠を形成する必要があるため、加工コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、キャビネットの構成部材の加工コストを低減しつつ蹴込み空間の機能を得る調理台家具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る調理台家具は、キャビネットの側面視が矩形状とされ、該キャビネットの前面収納開口を覆う扉体の床面直上の端部に、下方に向かうに従って後退する断面形状とされた後退部を備え、かつ、概ね腰高さ位置の前面から前方に突出する突出体を設け、この突出体の突出分に相当する下端部前方空間と、前記後退部とによって、下端部前方に蹴込み空間を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記構成とされた調理台家具は、従来の側板の前方下端の切欠加工により形成された蹴込み空間に替えて、扉体の後退部と、概ね腰高さ位置の前面から前方に突出する突出体とによって蹴込み空間を構成し、キャビネットの側面つまり側板の前方下端に切欠加工を設けることなく、矩形状としている。従って、上記扉体の端部に設けられた後退部により形成される空間と、突出体の突出分に相当する当該調理台家具の下端部前方空間、つまり、突出体の前端から、当該調理台家具の概ね腰高さ位置の前面までの空間で、当該調理台家具の下端部前方空間を、蹴込み空間として利用することができ、側板部材の加工を簡素化し、加工コストを低減することができる。
【0008】
本発明においては、前記後退部の少なくとも下端部を、弾性材料で形成してもよい。
このような構成とすれば、足先や掃除器具等が扉体の床面直上の端部に衝突した際に衝撃を低減することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記突出体を、前記キャビネットの上面を覆うカウンターの前端部直下に設けられた機器操作部としてもよい。
このような構成とすれば、機器操作部の前端から、カウンターの前端部直下の前面までの空間で、当該調理台家具の下端部前方空間を、蹴込み空間として利用することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記突出体を、前記キャビネットの上面を覆うカウンターの前端部直下に配された扉体の前面に設けられた把手としてもよい。
このような構成とすれば、把手の前端から、カウンターの前端部直下に配された扉体の前面までの空間で、当該調理台家具の下端部前方空間を、蹴込み空間として利用することができる。
【0011】
また、本発明においては、当該調理台家具の前面を、上下に複数段に区画し、前記突出体を設けた上段部の下段側に配された扉体の把手が、その前端を、当該扉体の前面と前後位置を概ね一致させた掘り込み状とされたものとしてもよい。この場合、調理台家具の収納部を複数に区画し、これら複数の収納部に対応させた扉体によって、当該調理台家具の前面を、上下に複数段に区画するようにしてもよい。
このような構成とすれば、当該調理台家具に向かって作業する作業者の大腿部や膝付近等において、下段側の扉体の把手が邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る調理台家具は、上述のような構成としたことで、キャビネットの構成部材の加工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る調理台家具を模式的に示す概略斜視図である。
【図2】同調理台家具を模式的に示す概略平面図である。
【図3】図1におけるX1−X1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図4】図1におけるX2−X2線矢視に対応させた概略縦断面図である。
【図5】図3におけるY部に対応させた概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、第1実施形態に係る調理台家具を示している。
なお、以下の実施形態において指す調理台家具の前後方向は、調理台家具の正面(引き出し操作の可能な側)に対面した使用者側を調理台家具の前方、その逆側を後方とし、その前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。
また、以下の実施形態において指す前後方向の位置関係は、調理台家具が備える扉体を閉止させた状態を基準として説明する。
【0015】
本実施形態に係る調理台家具Aは、図1に示すように、調理台の収納部を構成する複数の家具本体1A,1B,1Cと、これら複数の家具本体1A,1B,1Cの上面を覆う調理台天板としてのカウンター30とを備えている。カウンター30には、水槽(シンク)2a及び加熱機器としてのコンロ3aが組み込まれている。
本実施形態では、調理台家具Aとして、流し台部2と、作業台部4と、コンロ付調理台部3とを備えた厨房装置を例示している。
また、調理台家具Aの各家具本体1A,1B,1Cは、上下に複数段に区画されており、図例では、上段部5と、中段部6と、下段部7とに区画されている。
【0016】
カウンター30は、図1及び図2に示すように、平面視にて略矩形状で、平板状に形成されており、その前端部には、前垂れ部31が左右方向に連続して一体的に形成されている。シンク2aは、カウンター30に開設されたシンク開口に嵌め込まれ、接着等によって固定されている。コンロ3aは、カウンター30に開設されたコンロ開口に、嵌め込み設置(いわゆるビルトイン)されている。
【0017】
複数の家具本体1A,1B,1Cは、本実施形態では、図1及び図2に示すように、流し台部2の家具本体1Aと、作業台部4の家具本体1Cと、コンロ付調理台部3の家具本体1Bとを、横並びに配置した例を示している。
これら各家具本体1A,1B,1Cのキャビネット10A,10B,10Cのいずれもが、側面視が矩形状、つまり、各キャビネットを構成する側板11が単一矩形板とされている。
【0018】
流し台部2の家具本体1Aのシンク下キャビネット10Aは、図2及び図3に示すように、左右に配された側板11,11と、底板12と、背板13とを備えている。また、その上部は、カウンター30が載置されて閉塞されて、前方に開口する箱状とされており、その内方空間が収納空間14とされている。
収納空間14の上側領域には、シンク2aが収容されており、その下側領域には、中段引出20及び下段引出23が前後方向に出し入れ自在に収容されている。
これら中段引出20及び下段引出23は、シンク下キャビネット10Aの両側板11,11の対向面のそれぞれに設けられたレール部材15,15によってスライド自在に支持されている。
【0019】
シンク下キャビネット10Aの前面収納開口は、シンク2aの前方に配された化粧前板8、中段引出20の扉体(中段扉体)21、及び下段引出23の扉体(下段扉体)24によって覆われている。
これら化粧前板8、中段扉体21、及び下段扉体24の各前面8a,21a,24aは、前後位置を互いに一致させて配置されており、また、カウンター30の前垂れ部31の前面と前後位置を概ね一致させている。
なお、図例では、化粧前板8、中段扉体21、及び下段扉体24の各前面8a,21a,24aを、前垂れ部31の前面よりも前垂れ部31の厚さ寸法、後方位置に配設しているが、これら各前面8a,21a,24aを前垂れ部31の前面と略同一平面となるように位置させるようにしてもよい。
【0020】
中段引出20は、中段扉体21、底板20a、両側板20b(図3では、一枚のみを図示している。)、及び背板20cによって上方に開口する箱状とされ、物品の収納が可能とされている。
中段扉体21の上端部には、前方に開口する断面略コ字状とされた掘り込み状の掘り込み把手22が設けられており、この掘り込み把手22の手掛部22a及び前端22bは、当該中段扉体21の前面21aと前後位置を概ね一致させた位置となるように設けられている。
下段引出23は、下段扉体24、底板23a、両側板23b(図3では、一枚のみを図示している。)、及び背板23cによって上方に開口する箱状とされ、物品の収納が可能とされている。
下段扉体24の上端部には、上記同様の掘り込み状の掘り込み把手25が設けられている。この掘り込み把手25の手掛部25a及び前端25bは、当該下段扉体24の前面24aと前後位置を概ね一致させた位置となるように設けられている。
【0021】
作業台部4の家具本体1Cの作業台下キャビネット10Cは、シンク下キャビネット10Aと概ね同様の構成であり、図1に示すように、化粧前板8に替えて、上段引出17の扉体(上段扉体)18と、上記同様の中段扉体21及び下段扉体24とによって、その前面収納開口が覆われている。
上段引出17は、上記各引出と同様、上方に開口する箱状とされ、物品の収納が可能とされている。
なお、作業台部4の他の構成について、流し台部2と概ね同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略または簡略に説明する。
【0022】
コンロ付調理台部3の家具本体1Bのコンロ下キャビネット10Bは、シンク下キャビネット10Aと概ね同様の構成であり、図1及び図4に示すように、収納空間14の上側領域に、加熱機器としてのコンロ3aの機器本体3bを収容している。また、この上側領域の前面開口は、化粧前板8に替えて、機器本体3bの前方で、かつカウンター30の前垂れ部31の直下に配された機器操作部3cと、この機器操作部3cの両側に配された幕板8B,8Bと、これら機器操作部3c及び幕板8B,8Bの直下に設けられた化粧前板8Aとによって覆われている。この機器操作部3cの詳細については後述する。
なお、コンロ付調理台部3の他の構成について、流し台部2と概ね同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略または簡略に説明する。
また、当該コンロ下キャビネット10B及び上記したシンク下キャビネット10Aの前面収納開口の上側領域を化粧前板8,8Aによって図例のように閉塞する態様に代えて、当該部位を、小引出や小収納空間としてもよい。
【0023】
また、調理台家具Aは、図3〜図5に示すように、当該調理台家具Aの下端部前方に、当該調理台家具Aに向かって作業する作業者の足先の逃げ部としての蹴込み空間29を形成している。
この蹴込み空間29は、調理台家具Aの各家具本体1A,1B,1Cのそれぞれの概ね腰高さ位置の前面から、前方に突出させた突出体9,19,3c(図1参照)と、下段扉体24の下端部に設けられ、下方に向かうに従って後退する断面形状とされた後退部26とによって形成されている。
具体的には、後退部26の前面と、この前面に連なるように位置する当該調理台家具Aの下端部前面(図例では、側板11及び底板12の前端面)16と、この下端部前面16から、各扉体の厚さ寸法及び概ね腰高さ位置の前面からの突出体9,19,3cの突出寸法に相当する奥行寸法Lまでの床面と、この床面に交差し、突出体9,19,3cの前端9b,19b,3dと同一平面となる鉛直面と、この鉛直面に交差し、床面から後退部26の後退始点(下段扉体24の平板部位の前面24aからの後退開始点)までの高さ寸法Hの水平面とによって区画された空間が蹴込み空間29となる。
【0024】
この蹴込み空間29は、図3に示すように、当該調理台家具Aに向かって作業する作業者が、腰付近を突出体9,19,3c(図4参照)の前端9b,19b、3d(図4参照)に寄せて作業する状態において、その作業者の足先が納まる程度の空間であればよい。つまり、作業者の足の大小や、スリッパ等の履物の着用有無、作業時における足の上げ下げなどを考慮して、作業者の足先が後退部26の前面及び下端部前面16に当接しないよう、後退部26の前面形状、上記奥行寸法L及び高さ寸法Hを人間工学的に設定するようにすればよい。
【0025】
例えば、突出体9,19,3cの前端9b,19b,3dから、当該調理台家具Aの下端部前面16までの奥行寸法Lを、成人の足先長さ程度とし、床面から、後退部26の後退始点となる上端前縁までの高さ寸法Hを、成人の足先から甲にかけての厚さとすればよい。
奥行寸法Lとしては、作業者の大腿もしくは腰前面から足先までの寸法として、50mm前後、好ましくは、50mm〜70mm程度としてもよい。この場合、概ね腰高さ位置の前面から前方に突出させる突出体9,19,3cの突出寸法としては、各扉体の厚さ寸法に応じて、適宜、設定可能であるが、例えば、各扉体の厚さ寸法が20mm〜30mm程度であれば、奥行寸法Lが50mm〜70mm程度となるように、各突出体9,19,3cを、概ね腰高さ位置の前面よりも20mm〜40mm程度、前方に突出させるようにしてもよい。
また、高さ寸法Hとしては、50mm〜100mm程度としてもよい。
【0026】
本実施形態では、流し台部2に設けられた突出体は、上段部5の前面を構成し、カウンター30の前垂れ部31の直下に配された化粧前板8の前面8aに設けられた前突出型の把手9とされている。
この把手9は、化粧前板8の前面8aにおいて、左右方向に長尺に形成され、図2に示すように、当該前面8aの左右方向の大半部分に亘って設けられており、図例では、左右方向の概ね全体に亘って設けられている。この把手9は、左右方向に延びる棒状体の左右端部のそれぞれを後方側に屈曲させた形状とされ、その左右端部に設けられた取付部に対して、化粧前板8の後面側から木ねじ等の固定止具が止着され、化粧前板8に固定されている(図3参照)。また、この棒状体の後面側が、手掛部9aとされる。
この把手9は、図3に示すように、化粧前板8の前面8aから、その前端9bまでが、上記所定の突出寸法となるよう前方に突出している。
【0027】
作業台部4に設けられた突出体は、上段部5の前面を構成し、カウンター30の前垂れ部31の直下に配された上段扉体18の前面18aに設けられ、化粧前板8に設けられた把手9と概ね同様の前突出型の把手19とされている。
この把手19は、上段扉体18の前面18aにおいて、左右方向に長尺に形成され、図2に示すように、当該前面18aの左右方向の大半部分に亘って設けられており、図例では、左右方向の概ね全体に亘って設けられている。なお、この把手19の上段扉体18への固定態様及び手掛部19aは、図3において、参照符号で示すように、化粧前板8に設けられた把手9と同様である。
この把手19は、図3に示すように、上段扉体18の前面18aから、その前端19bまでが、上記所定の突出寸法となるよう前方に突出している。
【0028】
コンロ付調理台部3に設けられた突出体は、上記した機器操作部3cとされている。
この機器操作部3cは、左右方向に長尺かつ薄手の直方体に形成され、上面が操作面とされており、コンロ付調理台部3におけるカウンター30の前垂れ部31の直下において、図2に示すように、当該部位の左右方向の大半部分に亘って設けられている。
この機器操作部3cは、図4に示すように、幕板8Bの前面8Baから、その前端3dまでが、上記所定の突出寸法となるよう前方に突出している。
なお、この機器操作部3cは、前後方向に出没自在とされており、図例のように突出した状態において、前端3dを後方に向かって、幕板8Bの前面8Baと略面一状となる位置まで押し込めば、収納空間14に設けられた操作部の収納部に収納される。一方、収納状態の機器操作部3cの前端3dを、後方に向けて少許押し込めば、突出状態となる突出機構(プッシュオープン機構、不図示)が設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、図1に示すように、後退部26は、調理台家具Aの各家具本体1A,1B,1Cの各下段扉体24の下端部、つまり、前面収納開口を覆う扉体の床面直上に位置する端部に設けられており、各下段扉体24の左右方向の全長に亘って設けられている。
この後退部26は、図5に示すように、その前面が、下段扉体24の平板部位の前面24aから、当該調理台家具Aの下端部前面16側に向けて傾斜する傾斜面とされている。この傾斜面の上端前縁から床面までの高さが上記高さ寸法Hとされている。
図例では、後退部26は、下段扉体24を構成する化粧板の下端部に固着されており、断面略逆直角三角形の先端を切除したような形状の上側部27と、この上側部27に連なるように設けられた下側部28とによって、断面略逆直角三角形状とされている。
また、この後退部26の下端は、床面上に敷物等が敷かれる場合があるため、敷物等との接触を防止すべく、床面から10mm〜30mm程度の高さに位置している。
【0030】
上側部27は、アルミニウム等の金属系材料や木質系材料で形成されており、この上側部27の下端面には、下方に向けて開口する係合凹溝27aが設けられている。
下側部28は、弾性材料で形成されており、この下側部28の上端面には、上方に向けて突出し、上側部27の係合凹溝27aに嵌め入れられる係合突条28aが設けられている。この下側部28は、係合突条28aを上側部27の係合凹溝27aに嵌め入れることで、上側部27に対して固定されている。
また、下側部28の後面側には、下段扉体24が閉止された状態で、調理台家具Aの下端部前面16を構成する側板11の下端部及び底板12の前端面に、当接乃至は弾接して、前面収納開口の下端部領域を封止するパッキン28bが設けられている。
【0031】
下側部28の形成に用いられる上記弾性材料としては、天然ゴムや合成ゴム、合成樹脂エラストマーなどのエラストマー系材料、またはウレタンフォームなどの発泡系材料など、当該下側部28に足先等が衝突した際における衝撃を低減し得るものであればよい。
このように、後退部26の少なくとも下端部を、弾性材料で形成することで、足先や掃除器具等が下段扉体24の後退部26に衝突した際に衝撃を低減することができる。
なお、図5では、シンク下キャビネット10Aの前面に設けられた下段扉体24の後退部26を示しているが、作業台下キャビネット10C及びコンロ下キャビネット10Bの各前面に設けられた下段扉体24の後退部26についても同様の構成である。
【0032】
上記構成とされた流し台部2、作業台部4及びコンロ付調理台部3を備えた調理台家具Aは、図1に示すように、上段部5に配された化粧前板8、上段扉体18、及び化粧前板8Aの前面が、略同高さ位置で、整列するように配置されている。
また、この上段部5のそれぞれに設けられた把手9、把手19及び機器操作部3cも同様、概ね同高さ位置で、整列するように配置されている。また、これら把手9、把手19及び機器操作部3cによって、概ね腰高さ位置の前面には、図1及び図2に示すように、当該調理台家具Aの左右方向の大半部分に亘って、各家具本体1A,1B,1Cの前面と概ね前後位置を一致させたカウンター30の前垂れ部31よりも前方に突出する突出体が構成される。
また、中段部6及び下段部7のそれぞれに配された中段扉体21及び下段扉体24も同様、各段において、略同高さ位置で、整列するように配置されている。また、これら中段扉体21及び下段扉体24のそれぞれに設けられた掘り込み把手22,25も同様、各段において、略同高さ位置で、整列するように配置されている。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る調理台家具Aでは、当該調理台家具Aに向かって作業する作業者は、足先を蹴込み空間29に納め、腰付近を各突出体9,19,3cに寄せて作業することができる。
また、従来の側板の前方下端の切欠加工により形成された蹴込み空間に替えて、下段扉体24の後退部26と、各突出体9,19,3cとによって蹴込み空間29を構成し、各キャビネット10A,10B,10Cの側面つまり側板11の前方下端に切欠加工を設けることなく、矩形状としている。従って、側板11の加工を簡素化し、加工コストを低減することができる。
さらに、本実施形態では、調理台家具Aの左右方向の大半部分に亘って、カウンター30の前垂れ部31よりも前方に突出する突出体9,19,3cを設けているので、当該調理台家具Aに向かって左右に移動しながら各台部2,3,4において作業する作業者の足先を、いずれの位置においても蹴込み空間29に納めて作業することができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、各突出体9,19,3cを設けた上段部5の下段側に配された中段扉体21及び下段扉体24を、これら各扉体21,24の各前面21a,24aと、前後位置を概ね一致させた位置に前端22b,25bを設けた掘り込み把手22,25をそれぞれに備えたものとしている。従って、当該調理台家具に向かって作業する作業者の大腿部や膝付近等において、下段側の各扉体21,24の掘り込み把手22,25が邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態では、調理台家具として、複数の家具本体の上部に一枚のカウンターを載置して、流し台部、作業台部、及びコンロ付調理台部を備えた厨房装置を例示しているが、これらのうち、いずれか一つ以上の台部を備えたものとしてもよい。つまり、本発明に係る調理台家具としては、流し台、作業台、及びコンロ付調理台としてもよく、または、これらのうちの二種以上を組み合わせたものとしてもよい。
また、本実施形態では、調理台家具の前面を、上段部、中段部及び下段部の3段に区画した例を示しているが、1段のみのもの、または2段以上に区画したものとしてもよい。
さらに、本実施形態では、各台部を構成する各キャビネットを単一のキャビネットで構成した例を示しているが、側面視が矩形状とされた複数のキャビネットを上下に重ね合わせて設置してもよい。本発明に係る調理台家具では、側面視が矩形状のキャビネットのみで構成でき、従来よりも製造または製品選択性の観点からも共用性が高く好適である。
【0036】
さらにまた、本実施形態では、各キャビネットの前面収納開口を開閉自在に覆う扉体として、引出の扉体を例示しているが、ヒンジ等でキャビネットの側板に対して開閉自在に連結された開き戸を、前面収納開口を覆う扉体としてもよい。または、引き違い戸を扉体としてもよい。このような引き違い戸としては、閉止させた際に、隣接する戸の前面同士が、略フラット面となるようなものとしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、概ね腰高さ位置の前面から前方に突出させた突出体として、カウンターの前端部直下に設けた機器操作部、及び上段部の前面に設けた把手を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、概ね腰高さ位置の前面に、前方に向けて突出し、かつ左右方向に長尺とされ、腰付近等を凭せ掛けるサポートバーを突出体として設けるようにしてもよい。または、タオル等の吊り下げ用の吊り下げバーを突出体として設けるようにしてもよい。
これら各態様によっても、サポートバーまたは吊り下げバーの突出分に相当する当該調理台家具の下端部前方空間、つまり、これらの前端から、当該調理台家具の概ね腰高さ位置の前面までの空間で、当該調理台家具の下端部前方空間を、蹴込み空間として利用することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、前面が下方に向かうに従って後方に傾斜する傾斜面とされた形状の後退部を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、前面が凹湾曲面や凸湾曲面等の湾曲面とされた後退部としてもよく、断面形状が階段状の形状とされた後退部としてもよい。または、これらの形状を組み合わせた形状の後退部としてもよい。
さらに、本実施形態では、上側部と下側部とが別材料から形成された後退部を例示しているが、当該後退部が同一材料で一体的に形成されたものとしてもよい。この場合は、後退部の全体を弾性材料で形成したものとしてもよい。
または、本実施形態では、下段扉体を構成する化粧板の下端部に、別部材とされた後退部を固着させた例を示しているが、後退部を化粧板の下端部に一体的に形成するような態様としてもよい。
【0039】
また、本発明に係る調理台家具は、調理作業を含め、その他の家事作業の際に用いられる家事作業台家具としても適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
3c 機器操作部(突出体)
8a 化粧前板の前面(概ね腰高さ位置の前面)
8Ba 幕板の前面(概ね腰高さ位置の前面)
9 把手(突出体)
10A シンク下キャビネット(キャビネット)
10B コンロ下キャビネット(キャビネット)
10C 作業台下キャビネット(キャビネット)
18 上段扉体(カウンターの前端部直下に配された扉体)
18a 上段扉体の前面(概ね腰高さ位置の前面)
19 上段扉体の把手(突出体)
21 中段扉体(下段側の扉体)
21a 中段扉体の前面
22 中段扉体の掘り込み把手
22b 中段扉体の把手の前端
24 下段扉体(下段側の扉体)
24a 下段扉体の前面
25 下段扉体の掘り込み把手
25b 下段扉体の把手の前端
26 後退部
28 後退部の下側部(後退部の下端部)
29 蹴込み空間
30 カウンター
31 前垂れ部(カウンターの前端部)
A 調理台家具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの側面視が矩形状とされ、該キャビネットの前面収納開口を覆う扉体の床面直上の端部に、下方に向かうに従って後退する断面形状とされた後退部を備え、かつ、概ね腰高さ位置の前面から前方に突出する突出体を設け、
この突出体の突出分に相当する下端部前方空間と、前記後退部とによって、下端部前方に蹴込み空間を形成したことを特徴とする調理台家具。
【請求項2】
請求項1において、
前記後退部の少なくとも下端部は、弾性材料で形成されていることを特徴とする調理台家具。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記突出体は、前記キャビネットの上面を覆うカウンターの前端部直下に設けられた機器操作部であることを特徴とする調理台家具。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記突出体は、前記キャビネットの上面を覆うカウンターの前端部直下に配された扉体の前面に設けられた把手であることを特徴とする調理台家具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
当該調理台家具の前面は、上下に複数段に区画されており、
前記突出体を設けた上段部の下段側に配された扉体に設けられた把手は、その前端を、当該扉体の前面と前後位置を概ね一致させた掘り込み状とされていることを特徴とする調理台家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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