説明

調理容器用片手ハンドル

【課題】調理容器に対する取付強度が大幅に向上するとともに簡単に着脱することができる調理容器用片手ハンドルを提供する。
【解決手段】上端縁から外方に水平方向に突出する板状の突出保持部を備え、突出保持部には厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された調理容器に着脱可能に取り付けられる調理容器用片手ハンドルであって、調理者が手で握るための握り部本体10と、握り部本体と一体に連続して設けられ、調理容器の突出保持部に取り付けて固定するための取付部11と、取付部に設けられ、突出保持部が挿入可能な取付スロット112と、取付スロットの下面側に形成され、突出保持部の輪郭形状に合致した形状の保持凹部113と、保持凹部に形成され、貫通孔に係合する係合凸部114と、突出保持部を保持凹部に対して押圧し貫通孔に係合凸部を係合させて突出保持部を固定する保持固定部115とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に電磁誘導加熱調理器とともに使用して調理物を加熱調理する調理容器に着脱可能に取り付けられる調理容器用片手ハンドルに関するものであり、さらに詳しくは、調理容器に対する取付強度が大幅に向上するとともに簡単に着脱することができ、調理容器を片手用として使用可能とする調理容器用片手ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱調理器は燃焼炎を使用しない安全かつ高効率の加熱調理器として急速に普及が拡大している。このような電磁誘導加熱調理器とともに使用するための調理容器としても種々の形態のものが製造されている。また、調理容器に取り付けおよび取り外し可能に固定される把持具も公知である。例えば、下記の特許文献1に記載されたようなものが公知である。特許文献1には、取っ手を備えていない調理容器の周壁に取り付け可能とした把持具が記載されている。この把持具は、支持片によって調理容器の周壁を挟持することにより、摩擦力で調理容器に固定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−224514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の着脱可能な把持具は、特許文献1のように、調理容器と把持具との接続固定を摩擦力によって行っていた。このため、調理容器と把持具の接続強度には限界があり、把持具を持って調理容器に大きな加速度を生じさせるような動作を行うと、調理容器が把持具から脱落してしまう恐れもあった。また、取っ手と調理容器の接続強度を向上させるには、接続部にねじ固定を利用することも考えられるが、ねじ固定では取っ手の着脱作業に時間がかかり、またねじを回すための工具も必要になる等の不具合が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、調理容器に着脱可能に取り付けられる調理容器用片手ハンドルであって、調理容器に対する取付強度が大幅に向上するとともに簡単に着脱することができる調理容器用片手ハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の調理容器用片手ハンドルは、上端縁から外方に水平方向に突出する板状の突出保持部を備え、前記突出保持部には厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された調理容器に着脱可能に取り付けられる調理容器用片手ハンドルであって、調理者が手で握るための握り部本体と、前記握り部本体と一体に連続して設けられ、前記調理容器の前記突出保持部に取り付けて固定するための取付部と、前記取付部に設けられ、前記突出保持部が挿入可能な取付スロットと、前記取付スロットの下面側に形成され、前記突出保持部の輪郭形状に合致した形状の保持凹部と、前記保持凹部に形成され、前記貫通孔に係合する係合凸部と、前記取付部に設けられ、前記突出保持部を前記保持凹部に対して押圧し前記貫通孔に前記係合凸部を係合させて前記突出保持部を固定することが可能であるとともに、前記突出保持部の押圧を解除して固定を解放することが可能である保持固定部とを有するものである。
【0007】
また、上記の調理容器用片手ハンドルにおいて、前記取付スロットは、その内部で前記突出保持部が相対的に傾斜可能なものであり、前記保持固定部は、前記固定位置では前記突出保持部を前記取付スロット内で相対的に傾斜させ、前記貫通孔に前記係合凸部を係合させるものであることが好ましい。
【0008】
また、上記の調理容器用片手ハンドルにおいて、前記保持固定部は、回動するカム部材によって前記突出保持部を押圧するものであることが好ましい。
【0009】
また、上記の調理容器用片手ハンドルにおいて、前記握り部本体は、断熱性材料によって形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0011】
本発明の調理容器用片手ハンドルは、鍋に対する取り付け取り外しを非常に簡単に行うことができる。しかも、片手ハンドルの調理容器に対する取付強度は、従来のものに比べて大幅に向上している。また、片手ハンドルの着脱のための機構が簡素であり、故障が少なく信頼性が高いのと同時に、製造コストを低減させることができる。
【0012】
取付スロット内で突出保持部を相対的に傾斜させて、片手ハンドルを調理容器に固定するようにしたので、片手ハンドルを取り付け固定するための機構が可動部の少ない簡素なものとなり、信頼性を向上させるとともに製造コストを低減させることができる。
【0013】
保持固定部を回動するカム部材としたので、片手ハンドルを取り付け固定するための機構がさらに簡素なものとなり、信頼性を向上させるとともに製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の調理容器用片手ハンドルを適用する調理容器(鍋9)を上方から見た平面図である。
【図2】図2は、鍋9を正面から見た断面図である。
【図3】図3は、本発明の片手ハンドル1を鍋9に取り付けた状態を示す図である。
【図4】図4は、片手ハンドル1を正面から見た断面図である。
【図5】図5は、片手ハンドル1を上方から見た平面図である。
【図6】図6は、取付部11の動作を示す拡大断面図である。
【図7】図7は、片手ハンドル1固定時の取付部11の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の調理容器用片手ハンドルを適用する調理容器の構成を示す図である。図1は調理容器としての鍋9を上方から見た平面図であり、図2は鍋9を正面から見た断面図である。この鍋9の中に調理物等を収容して電磁誘導加熱調理器やガスコンロなどの上に載置し、内部の調理物等を加熱調理することができる。鍋9は、JIS規格におけるSUS430等のステンレス綱板材を加工して容器としたものである。板材の板厚は0.8〜3mm程度が適当である。電磁誘導加熱調理器に使用する場合、板材の材料は加熱性の点からSUS430が適している。
【0016】
鍋9の上端縁には、鍋本体から外方に水平方向に突出する板状の突出保持部91が設けられている。また、突出保持部91の対向位置には、突出保持部91と同様の第2突出保持部92が設けられている。突出保持部91には、厚さ方向に貫通する貫通孔911が形成されている。第2突出保持部92はその突出量が突出保持部91よりもいくぶん小さくなっており、また、第2突出保持部92には貫通孔は設けられていない。
【0017】
鍋9は、突出保持部91に本発明の片手ハンドル1を取り付けて、片手鍋として使用することができる。また、片手ハンドル1を取り外して、突出保持部91および第2突出保持部92によって両手で鍋9を持つこともできる。鍋9の加熱時には、突出保持部91および第2突出保持部92に断熱材からなるカバーを取り付けて、それらのカバーを介して鍋9を両手で持つこともできる。このように鍋9は、片手鍋としても両手鍋としても使用することができる。
【0018】
図3は、本発明の片手ハンドル1を鍋9に取り付けた状態を示す図である。鍋9の部分は断面で示している。片手ハンドル1はほぼ全体が断熱性材料によって形成されている。図示のように、片手ハンドル1を突出保持部91に簡単に取り付けることができる。突出保持部91から片手ハンドル1を取り外すことも簡単にできる。片手ハンドル1の構成と、片手ハンドル1の取り付け取り外し手順について、以下に詳しく説明する。
【0019】
図4は、片手ハンドル1を正面から見た断面図である。また、図5は、片手ハンドル1を上方から見た平面図である。片手ハンドル1は、手で握るための握り部本体10と、鍋9の突出保持部91に取り付けるための取付部11とからなっている。片手ハンドル1の握り部本体10をはじめとする主要部分は、断熱性材料によって形成されている。取付部11には、突出保持部91を挿入可能な取付スロット112が設けられている。握り部本体10と一体の上部部材と、下部部材12とが3個所のボルト13によって互いに固定されており、それらの両部材の間に取付スロット112が形成されている。
【0020】
取付スロット112の下面は、突出保持部91の輪郭形状に合致した形状の保持凹部113となっている。この保持凹部113に突出保持部91がちょうどぴったり収納できるようになっている。保持凹部113における突出保持部91の貫通孔911に対応する位置には、貫通孔911の形状に合致し、この貫通孔911に係合する係合凸部114が設けられている。保持凹部113に突出保持部91が収納されたときには、係合凸部114が貫通孔911に係合し、突出保持部91に対して片手ハンドル1を強固に固定することができる。
【0021】
握り部本体10と一体の上部部材には、カム部材115が矢印で示すように回動可能に設けられている。このカム部材115が片手ハンドル1を突出保持部91に固定するための保持固定部として機能する。カム部材115は上部部材に設置された支軸116によって軸支されている。取付スロット112の開口側を前方とすると、カム部材115は前方に倒した固定位置(実線で示した位置)と後方に起こした解放位置(二点鎖線で示した位置)との間で回動させることができる。
【0022】
固定位置は片手ハンドル1を突出保持部91に固定するための位置であり、解放位置は片手ハンドル1を突出保持部91から解放するための位置である。固定位置側にはカム部材115の固定位置を規定するためのストッパ117が設けられている。ストッパ117は上部部材と一体に形成されている。
【0023】
図6および図7は、取付部11の動作を示す拡大断面図である。片手ハンドル1を鍋9の突出保持部91に固定する場合は、まず、カム部材115を図6に示すような解放位置とした後、突出保持部91を図示のように取付スロット112の最奥部まで挿入する。そして、矢印で示すようにカム部材115を前方に倒して固定位置とする。図7がカム部材115を固定位置として片手ハンドル1を固定した状態を示している。
【0024】
カム部材115を固定位置まで回動させる際に、カム部材115によって突出保持部91を保持凹部113に向けて押圧し、突出保持部91を取付スロット112内で相対的に傾斜させて保持凹部113に全体を嵌入させる。それとともに係合凸部114が貫通孔911に係合する。カム部材115を固定位置とした固定状態では、突出保持部91が保持凹部113にぴったり嵌合するとともに、係合凸部114が貫通孔911に係合しており、片手ハンドル1が突出保持部91に強固に固定されている。片手ハンドル1を持って鍋9に大きな加速度を生じさせても、鍋9が脱落してしまうことはない。
【0025】
片手ハンドル1を鍋9の突出保持部91から取り外す場合には、上述の手順と逆の動作を行えばよい。カム部材115を図7に示すような固定位置から、図6に示すような解放位置まで回動させる。そして、取付スロット112から突出保持部91を引き抜けば取り外すことができる。
【0026】
以上のように、本発明の片手ハンドル1は、鍋9に対する取り付け取り外しを非常に簡単に行うことができる。しかも、片手ハンドル1の取付強度は、従来のものに比べて大幅に向上している。また、片手ハンドル1の着脱のための機構が簡素であり、故障が少なく信頼性が高いのと同時に、製造コストを低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、調理容器用片手ハンドルの調理容器に対する取付強度を大幅に向上させることができ、また、調理容器用片手ハンドルを簡単に着脱することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 片手ハンドル
9 鍋
10 握り部本体
11 取付部
12 下部部材
13 ボルト
91 突出保持部
92 第2突出保持部
112 取付スロット
113 保持凹部
114 係合凸部
115 カム部材
116 支軸
117 ストッパ
911 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端縁から外方に水平方向に突出する板状の突出保持部(91)を備え、前記突出保持部(91)には厚さ方向に貫通する貫通孔(911)が形成された調理容器(9)に着脱可能に取り付けられる調理容器用片手ハンドル(1)であって、
調理者が手で握るための握り部本体(10)と、
前記握り部本体(10)と一体に連続して設けられ、前記調理容器(9)の前記突出保持部(91)に取り付けて固定するための取付部(11)と、
前記取付部(11)に設けられ、前記突出保持部(91)が挿入可能な取付スロット(112)と、
前記取付スロット(112)の下面側に形成され、前記突出保持部(91)の輪郭形状に合致した形状の保持凹部(113)と、
前記保持凹部(113)に形成され、前記貫通孔(911)に係合する係合凸部(114)と、
前記取付部(11)に設けられ、前記突出保持部(91)を前記保持凹部(113)に対して押圧し前記貫通孔(911)に前記係合凸部(114)を係合させて前記突出保持部(91)を固定することが可能であるとともに、前記突出保持部(91)の押圧を解除して固定を解放することが可能である保持固定部(115)とを有する調理容器用片手ハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載した調理容器用片手ハンドルであって、
前記取付スロット(112)は、その内部で前記突出保持部(91)が相対的に傾斜可能なものであり、
前記保持固定部(115)は、前記固定位置では前記突出保持部(91)を前記取付スロット(112)内で相対的に傾斜させ、前記貫通孔(911)に前記係合凸部(114)を係合させるものである調理容器用片手ハンドル。
【請求項3】
請求項2に記載した調理容器用片手ハンドルであって、
前記保持固定部は、回動するカム部材(115)によって前記突出保持部(91)を押圧するものである調理容器用片手ハンドル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した調理容器用片手ハンドルであって、
前記握り部本体(10)は、断熱性材料によって形成されたものである調理容器用片手ハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80995(P2012−80995A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228391(P2010−228391)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(501469412)株式会社クリヤマ (3)