説明

調理補助具

【課題】 まな板機能と笊機能の両者を備えた一体型の調理補助具を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する樹脂板1で構成される調理補助具。樹脂板1の一縁11から樹脂板1の内方へ向けて延びるように形成された切離部14、切離部14の両側近傍に設けられた一対の係止部15,16、切離部14の樹脂板1の内方側の端部142の周囲に形成された複数の貫通孔17,17,を有する。切離部14の両側の樹脂板101,102を重ねて係止部15,16にて係止することにより複数の貫通孔17,17,の形成部位107が円錐面形状を保持し、笊として使用可能。円錐面形状の解除状態では樹脂板1の一部108をまな板として使用可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まな板機能と笊(ざる)機能を備えた、携帯型の調理補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
キャンプ等でのアウトドア料理の普及に伴い、携行に便利な各種の調理器具や調理補助具が提供され、或いは、提案されている。
例えば、薄い板状のまな板(特開平11−018970号公報)や、折り畳み可能なまな板(特開2007−037846号公報)が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−018970号公報
【特許文献2】特開2007−037846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家庭内であれば、まな板も笊も有るため、野菜等の食材をまな板の上で処理した後、笊に移しかえて、水切りすることができる。
しかし、キャンプ場等のアウトドアでは、まな板と笊の両者を携行することは、荷物が増えて嵩張るため、避けたいことである。
本発明は、アウトドアでの上記の要望に鑑みたものであり、まな板機能と笊機能の両者を備えた一体型の調理補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成を、下記[1]〜[5]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0006】
[1]構成1
可撓性を有する樹脂板1で構成され、
前記樹脂板1の一縁11から樹脂板1内方へ向けて延びるように形成された切離部14と、
前記切離部14の両側近傍に設けられた一対の係止部15,16と、
前記切離部14の樹脂板1内方側の端部142の周囲に形成された複数の貫通孔17,17,,,とを有し、
前記切離部14両側の樹脂板101,102を重ねて前記一対の係止部15,16にて係止することにより前記複数の貫通孔17,17,,,の形成部位107が円錐面形状を保持し、
前記一対の係止部15,16の係止状態で前記円錐面形状の部位107を笊として使用可能であり、前記円錐面形状の解除状態で樹脂板1の一部108をまな板として使用可能である、
ことを特徴とする調理補助具。
[2]構成2
構成1に於いて、
前記一対の係止部15,16は、前記切離部14の両側近傍の対応部位にそれぞれ切込を入れて樹脂板1の外方を向くように形成された一対の舌片部15,16である、
ことを特徴とする調理補助具。
[3]構成3
構成1又は構成2に於いて、
前記樹脂板1は略長方形状を成し、前記切離部14は一方の短辺11の略中央から他方の短辺12へ向けて長辺13の長さPの略1/4の長さQに形成された切離線部14又は切離帯部14a又は切離切欠部14bである、
ことを特徴とする調理補助具。
[4]構成4
構成3に於いて、
前記切離部14が開始される一方の短辺11は辺中央部110が外方へ突出する弧状を成す、
ことを特徴とする調理補助具。
[5]構成5
構成1〜構成4の何れかに於いて、
前記複数の貫通孔17,17,,,は、前記切離部14の樹脂板内方側の端部142を中心とする同心円上に配置されている、
ことを特徴とする調理補助具。
【発明の効果】
【0007】
構成1は、可撓性を有する樹脂板1で構成され、前記樹脂板1の一縁11から樹脂板1内方へ向けて延びるように形成された切離部14と、前記切離部14の両側近傍に設けられた一対の係止部15,16と、前記切離部14の樹脂板1内方側の端部142の周囲に形成された複数の貫通孔17,17,,,とを有し、前記切離部14両側の樹脂板101,102を重ねて前記一対の係止部15,16にて係止することにより前記複数の貫通孔17,17,,,の形成部位107が円錐面形状を保持し、前記一対の係止部15,16の係止状態で前記円錐面形状の部位107を笊として使用可能であり、前記円錐面形状の解除状態で樹脂板1の一部108をまな板として使用可能であることを特徴とする調理補助具であるため、まな板機能と笊機能の両者を備えた一体型の調理補助具を提供することができる。
構成2は、構成1に於いて、前記一対の係止部15,16は、前記切離部14の両側近傍の対応部位にそれぞれ切込を入れて樹脂板1の外方を向くように形成された一対の舌片部15,16であることを特徴とする調理補助具であるため、係止部15,16として別部材を付加する必要が無く、部品点数の増加が無いという、更なる効果がある。
構成3は、構成1又は構成2に於いて、前記樹脂板1は略長方形状を成し、前記切離部14は一方の短辺11の略中央から他方の短辺12へ向けて長辺13の長さPの略1/4の長さQに形成された切離線部14又は切離帯部14a又は切離切欠部14bであることを特徴とする調理補助具であるため、樹脂板の略半分の領域を笊として用い、残り半分の領域をまな板として用いることができるという、更なる効果がある。
構成4は、構成3に於いて、前記切離部14が開始される一方の短辺11は辺中央部110が外方へ突出する弧状を成すことを特徴とする調理補助具であるため、笊としての使用時、上縁部が曲線形状を成すため見栄えが良いという更なる効果がある。
構成5は、構成1〜構成4の何れかに於いて、前記複数の貫通孔17,17,,,は、前記切離部14の樹脂板内方側の端部142を中心とする同心円上に配置されていることを特徴とする調理補助具であるため、笊としての使用時、略均等に水切りできるという更なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の調理補助具の平面図。
【図2】図1の調理補助具を笊として使用するときの状態を示す斜視図。
【図3】第2のの実施の形態の調理補助具の平面図。
【図4】第3のの実施の形態の調理補助具の平面図。
【図5】第4の実施の形態の調理補助具の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)第1の実施の形態
図1と図2を参照して、第1の実施の形態を説明する。
図示の調理補助具は、まな板として使用される部位108と、笊(ざる)として使用される部位107とを有し、これらが、可撓性を有する1枚の樹脂板1内に、一体に設けられている。
【0010】
樹脂板1は、ポリプロピレン(PP)製の平板で、厚さ0.5mm〜2mm程度であるが、これに限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等を用いてもよく、また、厚さも、可撓性を有する厚さであればよい。なお、まな板として用いるため硬質樹脂であることを要するが、その硬さは、まな板として少なくとも1回分の調理での使用に耐え得る程度でもよい。なお、複数回分の使用に耐え得る硬さであってもよい。
また、公知の抗菌処理加工が施されていてもよい。
【0011】
まな板として使用される部位108は、図1の例では樹脂板1内の略左半分として構成されており、この部位は通常の硬質樹脂板と同様である。即ち、平板状態(撓んだ状態に曲げられていない状態)で、平坦な台上に載置されて、まな板として使用される。
【0012】
笊として使用される部位107は、図1の例では樹脂板1内の略右半分として構成されており、右側の縁(請求項の「一縁」)11は、直線状ではなく、曲線状に形成されている。即ち、縁11の中央部110が樹脂板の外方へ突出する弧状に形成されている。
この部位107は、複数個の貫通孔17,17,,,と、縁11から樹脂板1の内方へ切り込み形成された切離部14と、一対の係止部15,16とを有する。
また、この部位107には、壁等に突設された掛棒(不図示)に本調理補助具を掛けるための係止孔19が設けられているが、これは、部位108内に設けてもよい。
【0013】
切離部14は、縁11の中央部110から樹脂板1の内方へ向けて、樹脂板1の長辺13と平行に、該長辺13の長さPの略1/4の長さQとなるように、切込を入れて形成された部位であり、これにより、樹脂板1が、部位101と部位102に分離される。
切離部14の長さが上記のように設定されているため、まな板として使用される部位108と、笊として使用される部位107とが、略同サイズとなる。
【0014】
切離部14により部位1010と部位102に分離される両側部分には、一対の係止部15,16が形成されている。即ち、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせたとき(=重なりを所定量としたとき)、相互に対応する(=相互に重なる)所定の部位に、係止部15(部位101側)と、係止部16(部位102側)とが形成されている。
【0015】
係止部15と係止部16は、樹脂板1の上述の対応部位に、それぞれ、切込(切込線150,切込線160;参照)を入れて、舌片状に形成された部位(舌片部)であり、舌の先端は、それぞれ、樹脂板1の外方に向けられている。即ち、舌片部15の舌の先端は図1内で左上方に向けられ、舌片部16の舌の先端は図1内で左下方に向けられている。このような向きに形成されているため、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせたとき(=重なりを所定量としたとき)、舌片部(係止部)15と舌片部(係止部)16とを相互に係止することが可能となる(図2参照)。また、このように切込(切込線150,切込線160;参照)を入れて形成されているため、係止部構成用の別部材を付加する必要がなく、コストを低減できる。
【0016】
舌片部(係止部)15の切込線150の両端には、係止時の撓みにより舌片部15の根元付近に加わる力を逃がして損傷を防止するための逃げ孔151,151が形成されている。また、舌片部(係止部)16の切込線160の両端と中央には、係止時の舌片部15の舌の先端の挿入を容易にするべく切込線160の孔を拡げるための逃げ線161,161,161が形成されている。
【0017】
切離部14の樹脂板内方側の端部142には、中央貫通孔170が形成されており、その周囲には、図1内に一点鎖線で示す同心円上に、複数個の貫通孔17,17,,,が形成されている。
中央貫通孔170は、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせて(=重なりを所定量として)、舌片部(係止部)15と舌片部(係止部)16とを相互に係止するときに、その撓みを容易にするとともに、撓みによる端部142の損傷を防止する作用を奏する。このため、中央貫通孔170には、その作用を更に高めるための逃げ線1701が四方に形成されている。
【0018】
複数個の貫通孔17,17,,,は、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせて(=重なりを所定量として)、舌片部(係止部)15と舌片部(係止部)16とを相互に係止して、部位107を円錐面形状としたとき、言い換えれば、部位107を笊として構成したときに、笊の水切孔としての作用を奏する。なお、前記中央貫通孔170も、同様に、水切孔としての作用を奏する。
図1の例では、貫通孔17,17,,,は同心円上に放射状に設けられているが、同心円上でなくてもよく、放射状でなくてもよい。また、貫通孔の数や配置間隔や各貫通孔のサイズは、水切能力や本調理補助具の強度を考慮して、適宜に設定することができる。
【0019】
このように、第1の実施の形態の調理補助具は、まな板として機能する部位108と笊として機能する部位107とを単一の樹脂板1を用いて構成しているため、アウトドアでの携行に便利である。また、まな板上での処理の後、別の笊に移しかえることなく、速やかに水切りを行うことができる。
【0020】
(2)第2の実施の形態
図3を参照して、第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態では、切離部14が、切離帯部14aとして構成されている。このように構成されているため、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせる(=重なりを所定量とする)とき、部位101側の縁と部位102側の縁とが擦れることがなく、作業が容易である。即ち、笊を構成する作業が容易である。
第2の実施の形態では、切離帯部14a以外の構成は第1の実施の形態と同じであるため、同じ部位に同じ符号を付して示し、説明は省略する。
【0021】
(3)第3の実施の形態
図4を参照して、第3の実施の形態を説明する。
第3の実施の形態では、切離部14が、切離切欠部14bとして構成されている。このように構成されているため、樹脂板1を撓ませて部位101と部位102の所定領域を重ね合わせる(=重なりを所定量とする)とき、部位101側の縁と部位102側の縁とが擦れることがなく、作業が容易である。即ち、笊を構成する作業が容易である。
第3の実施の形態では、切離切欠部14b以外の構成は第1や第2の実施の形態と同じであるため、同じ部位に同じ符号を付して示し、説明は省略する。
【0022】
(4)第4の実施の形態
図5を参照して、第4の実施の形態を説明する。
第4の実施の形態では、まな板として使用される部位108aと、笊(ざる)として使用される部位107aとが、重複して設定されている。
つまり、樹脂板を平板状として平坦な台上に載置したときには、その略全域(但し、図示の例では主として左寄りの領域108a)を、まな板として使用する。
また、樹脂板を撓ませて、部位101と部位102の所定領域を重ね合わせ(=重なりを所定量とし)、舌片部(係止部)15と舌片部(係止部)16とを係止して、部位107aを円錐面形状に保持したとき、言い換えれば、笊として構成したときには、その略全域(但し、図示の例では主として右寄りの領域107a)を、笊として使用する。
【0023】
このように構成される第4の実施の形態では、まな板としての使用時に食材が貫通孔に入り込んで目詰まり等を生じないように、まな板として使用され易い左寄りの領域108aの貫通孔17aのサイズが、まな板としては使用され難い右寄りの領域107aの貫通孔17のサイズよりも、小さく設定されている。
第4の実施の形態では、まな板として使用される部位108aと笊(ざる)として使用される部位107aとが重複して設定されていること、及び、それから派生される構成以外は、第1や第2や第3の実施の形態と同じであるため、同じ部位に同じ符号若しくは対応する符号を付して示し、説明は省略する。
【符号の説明】
【0024】
1 樹脂板
101 樹脂板内の切離部近傍の一方の部位(重ねられる部位)
102 樹脂板内の切離部近傍の他方の部位(重ねられる部位)
107 樹脂板内の貫通孔の形成部位(円錐面形状となる部位)
107a 樹脂板内の貫通孔の形成部位(円錐面形状となる部位)
108 樹脂板内のまな板として使用可能な部位
108a 樹脂板内のまな板として使用可能な部位
11 樹脂板の一縁/一方の短辺
11a 樹脂板の一縁/一方の短辺
110 樹脂板の一方の縁の中央部/短辺の中央部
12 他方の短辺
12a 他方の短辺
13 長辺
14 切離部/切離線部
14a 切離部/切離帯部
14b 切離部/切離切欠部
142 切離部の樹脂板内方側の端部
15 係止部/舌片部
150 切込線
151 逃げ孔
16 係止部/舌片部
160 切込線
161 逃げ線
17 貫通孔
17a 貫通孔
170 中央貫通孔
1701 中央貫通孔の逃げ線
19 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂板で構成され、
前記樹脂板の一縁から樹脂板内方へ向けて延びるように形成された切離部と、
前記切離部の両側近傍に設けられた一対の係止部と、
前記切離部の樹脂板内方側の端部の周囲に形成された複数の貫通孔とを有し、
前記切離部両側の樹脂板を重ねて前記一対の係止部にて係止することにより前記複数の貫通孔の形成部位が円錐面形状を保持し、
前記一対の係止部の係止状態で前記円錐面形状の部位を笊として使用可能であり、前記円錐面形状の解除状態で樹脂板の一部をまな板として使用可能である、
ことを特徴とする調理補助具。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記一対の係止部は、前記切離部の両側近傍の対応部位にそれぞれ切込を入れて樹脂板の外方を向くように形成された一対の舌片部である、
ことを特徴とする調理補助具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、
前記樹脂板は略長方形状を成し、前記切離部は一方の短辺の略中央から他方の短辺へ向けて長辺の長さの略1/4の長さに形成された切離線部又は切離帯部又は切離切欠部である、
ことを特徴とする調理補助具。
【請求項4】
請求項3に於いて、
前記切離部が開始される一方の短辺は辺中央部が外方へ突出する弧状を成す、
ことを特徴とする調理補助具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
前記複数の貫通孔は、前記切離部の樹脂板内方側の端部を中心とする同心円上に配置されている、
ことを特徴とする調理補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40096(P2012−40096A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182398(P2010−182398)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(596071154)森松株式会社 (3)
【Fターム(参考)】