説明

調理販売ユニット

【課題】調理しながら前方を見渡すことができる調理販売ユニットを提供する。
【解決手段】調理販売ユニット1は、一般的な成人Pの背丈程度の高さの調理販売ユニットであって、上部に配置されたショーケースユニット10と、ショーケースユニット10の下で、この調理販売ユニット1の中間の高さ近傍に配置された空調ユニット20と、空調ユニット20の下に配置された収納ユニット30と、収納ユニット30の上方で、空調ユニット20の後方に配置されたワーキングテーブル51とを有する。ショーケースユニット10は、前壁61および後壁71が透光性である。後壁71は、扉である。空調ユニット20は、ショーケースユニット10の内部の環境条件を制御する。収納ユニット30は、後方からアクセスされる収納スペースを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵食品あるいは冷凍食品などを調理して販売するのに適したユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアなどにおいて、店頭で調理された食品を販売するケースが増加している。例えば、冷凍あるいは冷蔵された食品を店頭で加熱処理し、高温に保たれたショーケースに入れて販売する。
【0003】
特許文献1には、加熱調理品を収納して一定温度及び一定湿度で保管するドライ室とウェット室とが仕切られて併設され、少なくとも一方の室内に加温風を循環させて他方の室内への伝熱を行ってドライ室及びウェット室の保温及び保湿を行うことを特徴とする収納装置について記載されている。
【特許文献1】特開2005−111251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンビニエンスストアなどのカウンタに立つ店員にとって、カウンタの内側から店内の方向(以降では前方)を見渡せることは種々の点で重要である。例えば、カウンタの内側から前方を向いて、顧客の様子を観察し、顧客が品物を購入するためにカウンタに近づいてきたことをいち早く察知することは、顧客サービスとして、また、売り上げ増加のために重要である。また、カウンタの内部から前方を見て、店内における不審な動きをいち早く察知することは、盗難などのトラブルを未然に防止し、さらに、店員自身の安全を確保するためにも重要である。したがって、カウンタの上方は基本的にオープンスペースである。
【0005】
店員がカウンタの上で調理することは幾つかの問題がある。例えば、調理中に油、ソースなどが飛ぶことは茶飯事であり、カウンタの上を汚染したり、商品を汚染したり、さらには顧客の衣類を汚染する可能性がある。調理する際に包丁、ナイフなどの危険物を使用することは多く、それらにより顧客が傷ついたり、カウンタの上のこれらの刃物を武器として店員が恐喝される可能性もある。
【0006】
一方、カウンタから離れた場所で調理すると、店内の観察は疎かになりやすい。カウンタの後方に調理器具を並べることにより、店員がカウンタを離れずに調理できるかもしれない。しかしながら、店員が後方を向くことにより、店内の観察が疎かになることには変わりなく、顧客サービスの低下の要因となり、盗難などのトラブルを未然に防止することが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一般的な成人の背丈程度の高さの調理販売ユニットである。この調理販売ユニットは、上部に配置されたショーケースユニットであって、少なくとも前壁および後壁が透光性で、後壁の少なくとも一部が扉となったショーケースユニットと、ショーケースユニットの下で、当該調理販売ユニットの中間の高さ近傍に配置された空調ユニットであって、ショーケースユニットの内部の環境条件を制御するための空調ユニットと、空調ユニットの下に配置された収納ユニットであって、後方からアクセスされる収納スペースを備えた収納ユニットと、収納ユニットの上方で、空調ユニットの後方に配置されたワーキングテーブルとを有する。
【0008】
この調理販売ユニットは、コンビニエンスストアなどで商品の清算などを行なうためのカウンタの一部として、あるいは、カウンタに隣接して設置するのに適したユニットである。この調理販売ユニットは、上部が、少なくとも前壁および後壁が透光性のショーケースユニットであり、このショーケースユニットを通して、店員は、後方のカウンタ内部から前方の店内を見ることができる。
【0009】
さらに、調理販売ユニットのショーケースユニットの下側は、空調ユニットであり、さらにその下側は収納ユニットとなり、収納ユニットの上で、空調ユニットの後方が調理台などとして使用できるワーキングテーブルとなっている。したがって、店員は、ワーキングテーブルで調理しながら、ショーケースユニットを介して前方を見ることができ、店内を見渡すことができる。ワーキングテーブルの前方には、不透明な空調ユニットが配置されているので、ワーキングテーブルの状況は顧客からは見え難く、店内に向きながら調理していても、調理の様子や、調理に使用している器具を顧客から隠すことができる。さらに、調理中に、油や、ソースなどが跳ねても、空調ユニットおよびショーケースユニットにより顧客および商品に影響が及ぶのを防止できる。
【0010】
さらに、調理販売ユニットの下方は、後方、すなわち、カウンタの方向からアクセスできる収納スペースになっているので、調理材料を収納しておくことができる。したがって、店員は店内にほとんど背を向けることなく、調理用の素材を取り出して、調理し、その調理した食品をショーケースユニットに陳列して販売できる。収納スペースは、後方からアクセスできる冷蔵あるいは冷凍庫にすることが可能であり、冷凍食品、冷蔵食品などを収納しておくことも可能となる。
【0011】
また、この調理販売ユニットは、上方が少なくとも前後方向に透明なショーケースユニットとなっているので、カウンタに並べて配置しても、カウンタの開放された雰囲気を損なうことは少ない。さらに、ショーケースユニットには調理された食品を並べて販売することができるので、ショーケースユニットがカウンタに並んで配置されることに違和感はほとんどない。その一方で、店内とカウンタ内とをショーケースユニットにより分離でき、顧客と店員との間に何らかのトラブルが発生したときは、悪意のある顧客との間にショーケースユニットを挟んで店員が対峙し、そのような顧客から店員を保護することも可能となる。
【0012】
調理した食品を陳列して販売するには、ショーケースユニットは、調理した製品を温蔵および陳列するための温蔵領域を含むことが望ましい。そして、空調ユニットは、温風を温蔵領域に供給するための温風供給ユニットを含むことが望ましい。さらに、冷蔵食品あるいは冷凍食品を収納するためには、収納ユニットは、収納スペースを冷却するための冷却ユニットを含むことが望ましい。このような構成の場合、調理販売ユニットは、さらに、冷却ユニットの高温の排気の少なくとも一部を温風供給ユニットの吸気側に導くための連通路をさらに有することが望ましい。冷却ユニットの排熱を温蔵用のエネルギーとして利用できるので、省エネになる。また、冷却ユニットからの放熱と、ショーケースユニットからの放熱などを含めた調理販売ユニットの放熱量を低減できるので、店舗の空調負荷を低減できる。
【0013】
冷却ユニットの好適な例はペルチェ素子を含むペルチェ冷却ユニットである。設置スペースが小さいので、調理販売ユニット内に冷凍食品などを収納するのに十分な容量の収納スペースを用意できる。
【0014】
さらに、ショーケースユニットの後壁に設けられた扉は、引き戸式であることが望ましい。ショーケースユニットに調理した食品を入れたり、販売するために食品を出したりする際に、ドアがカウンタの内側に突き出て、店員の作業の障害となることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に、本例の調理販売ユニットを正面図により示している。図2に、図1の調理販売ユニットを背面図により示している。図3に、図1の調理販売ユニットの概略構成を縦断面図により示している。
【0016】
本例の調理販売ユニット1は、一般的な成人Pの背丈程度の高さの調理販売ユニットであって、コンビニエンスストアなどの店舗において、加熱調理された食品を商品として陳列および販売するのに好適な装置あるいはユニットである。この陳列販売用の調理販売ユニット1は、全体が店員Pの身長程度の高さのハウジング2を有し、このハウジング2により幾つかの機能あるいは構成部分が、一体の装置あるいは家具あるいはキャビネット状のユニットになるように組み合わされ、あるいは組み立てられたものである。すなわち、この調理販売ユニット1は、調理された商品を陳列するためにハウジング2の上部に配置されたショーケースユニット10と、このショーケースユニット10の下で、調理販売ユニットの中間の高さ近傍に配置された空調ユニット20と、この空調ユニット20の下方に配置された収納ユニット30とを含む。本例の調理販売ユニット1のショーケースユニット10は、調理された商品を温蔵するタイプであり、このショーケースユニット10の内部の雰囲気(環境条件)を制御するための空調ユニットは、温風を供給する温風供給ユニット20となっている。さらに、収納ユニット30には、保冷庫31と、この保冷庫31の内部を冷却するための冷却ユニット35とが設置されている。
【0017】
調理販売ユニット1のハウジング2は、全体が垂直方向に長い箱型であり、店舗内に設置したときに店舗の天井に向く上壁3と、店舗の床に向く下壁4と、それら3および4の間に配置された第1の隔壁5および第2の隔壁6とを有する。そして、調理販売ユニット1は、大まかには、4つの機能の区画A1、A2、A3およびA4を備えている。上壁3と第1の隔壁5との間がショーケースユニット10の区画A1であり、調理された食品を保温した状態で陳列できる。このショーケースユニット10の下方であって、第1の隔壁5と第2の隔壁6との間が、ショーケースユニット10に温風を供給するための温風供給ユニット20の区画A2である。この区画A2の下方であって、第2の隔壁6と下壁4との間が、収納ユニット30の区画A3であり、冷蔵庫31と冷却ユニット35とが収納されている。この区画A3は、後方からアクセスされる収納スペースとなる。さらに、調理販売ユニット1は、第2の隔壁6の上で、温風供給ユニット20の後方の区画A4が調理空間50であり、その部分の第2の隔壁6の上面が調理台などとして使用できるワーキングテーブル51となっている。ワーキングテーブル51の上には、ホットプレートなどの調理器具100を載置したり、その他、商品を加工・調理するために必要な器具を搭載できる。ワーキングテーブル51の高さは、店員の腰近くで、店員が無理なく手を伸ばせる位置であることが望ましい。
【0018】
この調理販売ユニット1は、コンビニエンスストアなどにおいて清算を行なうためのカウンタの一部として、あるいは、カウンタに隣接して設置するのに適したユニットである。この調理販売ユニット1は、ワーキングテーブル51がカウンタの内側となるように設置され、店員が前を向いて、店内を見ながらワーキングテーブル51の調理器具100を用いて調理し、調理した品物をショーケースユニット10に陳列できる。したがって、本明細書において、調理販売ユニット1の前側あるいは前方とは、店舗あるいは店内を向いた方向を示し、後側あるいは後方とは、カウンタの内側を向いた方向を示す。
【0019】
ショーケースユニット10は、第1の収納室11と、その中に収納された第2の収納室12とを備えている。第1の収納室11は、加熱調理された商品のうち、たとえばアメリカンドッグなどの「パリッ」とした食感が好まれる商品(高温低湿で保存することが望ましい商品)を陳列するための第1の閉じられた空間S1を形成するためのものである。第1の空間S1は、温風供給ユニット20から供給される低湿度の温風により、湿度20%〜30%程度、温度65℃〜70℃程度に調整されている。
【0020】
第1の収納室(以下、乾燥室と称することもある)11は、ハウジング2の上部前壁を兼ねる透光性の第1の前壁61と、第1の収納室11を開閉するための透光性の第1のドア71とを備えている。第1の前壁61および第1のドア71は、たとえば、透明アクリル樹脂などにより形成されている。ショーケースユニット10の後壁となる第1のドア71は引き戸(スライドドア)タイプであり、左右に配置された複数、例えば、2枚の戸71aおよび71bを備えている。これらの戸71aおよび71bには、それぞれの外面に取手79が取り付けられている。これらの戸71aおよび71bは、それぞれ、上壁3の下面に設けられた溝と、隔壁5の上面に設けられた溝に摺動自在に嵌め込まれている。乾燥室11は、第1の前壁61と、第1のドア71と、ハウジング2の上壁3と、第1の隔壁5と、ハウジング2の左右の側壁8および9の上部とにより構成され、これらにより囲まれ、閉じられた第1の空間S1を形成している。第1の収納室11の空間S1には、第1の陳列棚(食品トレイ)18が設置されている。さらに、第1の収納室11の下方には第2の収納室12が収納されている。
【0021】
第2の収納室12は、第1の収納室11の床面(第1の隔壁5の上面)に配置された状態で、第1の収納室11に収納されている。第2の収納室12もショーケースユニット10の一部であるが、第1の前壁61と対峙する位置に設けられた透光性の第2の前壁62と、第1のドア71と対峙する位置に設けられた透光性の第2のドア72と、乾燥空間S1の第2の陳列棚(食品トレイ)を兼ねる上壁15と、左右の側壁16および17とを備えており、これら15、16および17と床を構成する第1の隔壁(下壁)5とにより、乾燥空間S1の内部に閉じられた空間S2を構成できるようになっている。したがって、この第2の空間S2は、温風供給ユニット20により供給される温風により周囲から間接的に加熱され、温度65℃〜70℃程度に調整されている。しかしながら、低湿の温風は第2の空間S2には入らないので、第2の空間S2は、第1の空間S1とは異なり、低湿度になるようには湿度調整されない。したがって、第2の空間S2は、湿度的には第1の空間S1とは独立した制御が可能であり、第2の空間S2の湿度は、陳列される商品から放出される水分に依存して制御することができる。したがって、「しっとり」した食感が好まれる商品、すなわち、水分を比較的多く含んだ商品を陳列することにより、商品から放出される湿分により、湿度が70%程度といった比較的多湿な雰囲気に第2の空間S2の内部をすることができる。このため、第2の収納室12は、加熱調理された商品のうち、たとえば焼き鳥などの「しっとり」した食感が好まれる商品(高温高湿で保存することが望ましい商品)を陳列するために使用できる。
【0022】
第2の収納室12の、第2の前壁62および第2のドア72は引き戸タイプであり、たとえば、透明アクリル樹脂などにより形成されている。第2のドア72は、2枚の戸72aおよび72bを備えている。これらの戸72aおよび72bは、それぞれ、第2の陳列棚15の下面に設けられた溝と第1の隔壁5の上面に設けられた溝に摺動自在に嵌め込まれている。この第2のドア72は、ヒンジにより扉が旋回するスイングドアであっても良い。スイングドアは、一枚構成でも複数枚構成でも良く、また、左右に限らず、上下に旋回するタイプのドアであっても良い。高湿度室12には、第3の陳列棚(食品トレイ)19が収納されている。
【0023】
ショーケースユニット10は、第1の収納室11の下部に、第2の収納室12が収納された状態になっており、第1の収納室11の上部が陳列棚18および15が並んで高温低湿で保存するのに適した商品の陳列空間S1となり、第1の収納室11の下部の第2の収納室12の内部が高温多湿で保存するのに適した商品の陳列空間S2となっている。第1の前壁61と第2の前壁62との間には、空隙S3が設けられており、この空隙S3は、ショーケースユニット10の下側に配置された温風供給ユニット20から高温低湿の温風をショーケースユニット10の上部の収納空間S1に循環させるための経路の一部となる。また、第1のドア71と第2のドア72との間にも、空隙S4が設けられている。この空隙S4もまた、温風を循環させるための経路の一部となる。
【0024】
このショーケースユニット10は、前壁61および62が透光性であり、また、後壁を構成するドア71および72も透光性である。したがって、店員は、カウンタの内部からショーケースユニット10を通して店内を見渡すことができる。
【0025】
温風供給ユニット20は、第1の隔壁5を挟んで、ショーケースユニット10の下方に配置されている。第1の隔壁5には、第1のドア71と第2のドア72との間の空隙S4に対応する位置と、第1の前壁61と第2の前壁62との間の空隙S3に対応する位置と、第2の収納室12に対応する位置の3箇所に開口81、82および83が設けられている。温風供給ユニット20は、温風をショーケースユニット10に供給するためのファン21と、そのファン21の出口側に配置されたヒータ22とを備えている。このシステムでは、ドア71からある程度の空気が第1の収納室11から外界へ漏れ出させ、収納ユニット30の方向からフレッシュエアーを入れ、そのフレッシュエアーの温度をヒータ22により上昇することにより、相対湿度の低い乾燥した温風を生成するようにしている。第1の収納室11から回収される空気に含まれる湿分を除去するために、シリカゲルあるいは活性炭などを含む除湿剤を用いたり、小規模な冷却ユニットなどを用いた除湿装置を設置することも可能である。このような除湿装置に脱臭機能を付け加えても良い。
【0026】
温風供給ユニット20においては、ヒータ22は、第1の隔壁5に設けられた3つの開口81、82および83のうちの最も後側に設けられた、第1のドア71と第2のドア72との間の空隙S4に対応する第1の開口81の近傍に設けられている。ファン21は、温風供給ユニット収納室A2の略中央部に設けられており、第1の前壁61と第2の前壁62との間の空隙S3に対応する第2の開口82と、第2の収納室12に対応する第3の開口83とから吸気して、ヒータ22側に向けて送風するように配置されている。したがって、第1の開口81は、温風吹き出し口、第2の開口82は、温風吸い込み口となる。第3の開口83には、第2の収納室12内に設置された湿度センサに連動して開閉するダンパ84が設けられている。第2の収納室12内の空間S2の湿度が高くなりすぎると、ダンパ84が開いて吸気し、第2の収納室12内の圧力を下げ、乾燥空間S1の第2の陳列棚(食品トレイ)を兼ねる上壁15に設けられた通気孔(不図示)を介して乾燥した温風が第2の空間S2に引込まれるようになっている。したがって、例えば、第3の開口83のダンパ84をフルオープンにして、第2のドア72を開けて置くことにより、第2の収納室12の内部をドライ雰囲気にすることも可能である。この温風供給ユニット20が収納された区画A2は、前後の壁28および29を含めて不透明になっており、少なくとも前方からは内部の機器が見えないようになっている。
【0027】
通常の運用状態では、まず、温風供給ユニット20のヒータ22およびファン21を稼動させると、加熱され、相対湿度が低下した比較的低湿度の温風は、図3に実線矢印で示すように、第1の開口81から第1の収納室11の内部に吹き出される。第1の収納室11内においては、まず、第1のドア71と第2のドア72との間の空隙S4を通過し、第2の収納室12の上方の陳列棚15が配置された空間S1に達する。さらに、第1の前壁61と第2の前壁62との間の空隙S3を通過し、第2の開口82から温風供給ユニット20に吸い込まれ、回収される。
【0028】
このような低湿度の温風の循環により、乾燥空間S1に陳列された商品は加温されるとともに、自身が放出した湿分は持ち運ばれる。したがって、乾燥空間S1の雰囲気は、高温低湿で維持され、高温低湿で保存することが望ましい商品を陳列するのに適した空間(湿度20%〜30%程度、温度65℃〜70℃程度の空間)となる。
【0029】
一方、第2の収納室12の内部の空間S2は、乾燥空間S1内を循環する温風により間接的に加温されるため、乾燥空間S1と同程度の温度に維持される。一方、温風は第2の収納室12の内部には基本的には入り込まないので、陳列された商品から放出された湿分は、持ち運ばれない。したがって、第2の収納室12内の空間S2の湿度は、その空間に陳列される商品から放出される湿分に依存して決まる。多くの場合、調理された商品からは多量の湿分が放出されるので、調理された商品から放出される湿分により空間S2は、多湿な雰囲気になる。
【0030】
空間S2の湿度が所望の値よりも高くなると、ダンパ84の開口度を制御することにより湿度を下げることが可能である。相対湿度が90%あるいはその近傍になると、条件によって結露が発生しやすくなり、ショーケースとしては好ましくない。したがって、第2の収納室12の内部の空間S2の雰囲気は多湿であることが好ましいとしても、相対湿度が70〜80%程度を上限に制御することが好ましい。
【0031】
空間S2の湿度が設定値よりも高くなった場合、図3に破線で示すように、ダンパ84を所定の開口度で開き、第3の開口83を開放する。これにより、乾燥空間S1内の低湿の温風は、図3に破線矢印で示すように、上壁15の孔、第2のドア72の隙間などから、空間S2に流れ込み、湿度を減らすことができる。これにより、空間S2は、高温多湿で保存することが望ましい商品を陳列するのに適した条件(湿度70%程度、温度65℃〜70℃の空間)に維持される。
【0032】
ショーケースユニット10は、第1の収納室11により構成される乾燥空間の内部に、第2の収納室12が収納され、第2の収納室12が直に外界に面することはなく、外界に面した側は、高温低湿な雰囲気となる。したがって、ショーケースユニット10の表面が、調理販売ユニット1が設置されている店舗の空調の冷風に晒されて急激に温度が低下したとしても、ショーケースユニット10の内部で結露が発生する可能性は小さい。特に、第1の前壁61と第2の前壁62との間の空隙S3が、温風が循環するための経路の一部となっているため、低湿の温風がこれらの壁61および62の間を強制的に換気する。したがって、第1の前壁61と第2の前壁62との間S3を狭くしても、湿分が溜まることは殆どなく、結露は発生し難い。さらに、第1の前壁61と第2の前壁62との間S3を狭くしても、外界、すなわち、店舗内の空調の冷風による温度低下が、第2の前壁62あるいはその内側に及びにくい。したがって、内側が高温多湿の雰囲気になる第2の前壁62を第1の前壁61に近づけても、第2の前壁62の内側で結露は発生しにくい。このため、結露が発生する可能性を増加させることなく透光性の第2の前壁62を、透光性の第1の前壁61の方向に前進させることができ、これらの間S3を近づけることにより、第1の前壁61の外側から、第2の前壁62の内側の空間S2に陳列された商品が見易い調理販売ユニットを提供できる。
【0033】
したがって、店内から、顧客が第1および第2の空間S1およびS2に陳列された商品を前側から良好に視認でき、売り上げの向上に寄与する。さらに、前壁61および62を通して、店員は、ショーケースユニット10の後方から、店内を確実に観察することができる。
【0034】
ショーケースユニット10においては、第1のドア71を開けることにより、第1の空間S1を後方の店員に向けて開放できる。さらに、第2のドア72を開けることにより、第2の空間S2を後方の店員側に向けて開放することができる。したがって、第1の空間S1および第2の空間S2に陳列された商品を後側から容易に出し入れできる。
【0035】
密閉性の高いドアを使用しても、ショーケースユニット内の空気が漏れ出す可能性は常にある。特に、商品を出し入れする際には、ショーケースユニットの空気が漏れ出すことを止めることはできない。この調理販売ユニット1では、第1の収納室11に商品を出し入れする際に外界に漏れ出す空気は、低湿の温風であり、漏れだしても結露が発生する可能性は小さい。逆に、第1の収納室11からはある程度の空気を常に外界に放出し、加熱して相対湿度の下がったフレッシュエアーを第1の収納室11に供給することにより、第1の収納室11の内部空間S1の雰囲気を高温低湿に保つことができる。
【0036】
第2の収納室12に商品を出し入れする際は、第2の収納室12から高湿の空気が漏れ出すが、漏れ出す先は、低湿高温の雰囲気の乾燥空間S1である。このため、この場合も、結露が発生する可能性は小さい。さらに、第1のドア71と第2のドア72との間には、第1の開口81から上方に向けて低湿の温風が吹き出すようになっている。したがって、第2のドア72を開けた状態で、第2のドア72の外側の方が、高湿になっている第2のドア72の内側よりも圧力が高く、高湿の空気が漏れ出す量は小さい。さらに、漏れ出した高湿の空気は、低湿の温風により混合されて上方に運ばれ、結露の要因になる可能性は小さい。
【0037】
したがって、本例の調理販売ユニット1のように、温風を後方のドア71とドア72の間S4に吹き上げ、前壁61および62同士の間S3から吸い込むような循環経路は、好適な一つの例である。特に、高湿の空気の漏れ出し量が大きい可能性があるドアの部分に大量な温風を高速で吹き出すようにすることにより、結露の発生を防止しやすい。また、前壁61および62同士の間の隙間S3は小さくなり圧力損失が発生する部分となるので、この部分を吸い込み側にすることより、ファン効率の低下を防止でき、騒音、振動などの発生も抑止しやすい。
【0038】
このように、この調理販売ユニット1によれば、気密性の低い引き戸のようなドアを第1の収納室11を開け閉めするドアとして採用でき、結露が生じる可能性が少ない。このため、ショーケースユニット10の後方の壁が結露などにより曇ることもなく、店員はカウンタの後方から、ショーケースユニット10を通して良好な視界を確保できる。
【0039】
ショーケースユニット10を開閉するドアは、スイングタイプのドアであっても良いが、ショーケースユニット10の後方にドアがスイングするスペースが必要になる。第1のドア71を引き戸タイプにしてショーケースユニット10を開閉するように構成した本例の調理販売ユニット1によれば、ショーケースユニット10に陳列された商品を後側から出し入れする際に、ドアを開け閉めするためのスペースを殆ど要しない。さらに、そして、ドア71を開いた状態で、調理空間50を用いて調理しながら、ショーケースユニット10に商品を出し入れすることが可能である。
【0040】
調理販売ユニット1の第2の隔壁6の下側は、すなわち、ハウジング2の下側は、後方のカウンタ内の店員の側からアクセスできる収納ユニット30となっている。したがって、ハウジング2の前方下側は不透明な壁37となっている。この収納ユニット30には、後方からアクセスできる蓋32を備えた冷蔵庫31が収納され、その奥に冷蔵庫31の内部を冷却するための冷却ユニット35が収納されている。冷蔵庫31の上下には、冷却ユニット35から放熱するための排気経路38および39のスペースが確保されている。冷却ユニット35は、ペルチェ素子34を含み、冷蔵庫31の内部から吸熱し、排気経路39に排熱する。
【0041】
第2の隔壁6は、高温の排気が放出される上方の排気経路39と、温風供給ユニット20のファン21の吸気側とを接続する開口(連通孔)40を有する。したがって、冷却ユニット35により排熱するために加熱され、温度が高くなった排気が、フレッシュエアーとして温風供給ユニット20に供給され、ファン21により加圧され、さらに、ヒータ22により所望の温度まで加熱されて第1の収納室11に吹き出される。
【0042】
第1の収納室11においても、調理品から水分が放出されるので、温風を循環させるだけでは、乾燥状態を維持することは難しい。高温低湿の温風を生成する方法の1つは、外気を加熱して相対湿度の低い温風を生成することである。しかしながら、外気(フレッシュエアー)を入れるためには、高温になった空気を放出する必要があり、低温の外気を加熱するためにエネルギーを消費する。この調理販売ユニットにおいては、フレッシュエアーを加熱するために、冷蔵庫31の冷却ユニット35の排熱を利用することにより、エネルギー消費を低減することができる。
【0043】
この調理販売ユニット1は、ショーケースユニット10の後方で、温風供給ユニット20の後方になる部分に調理台として機能するワーキングテーブル51を設け、調理しながら、その調理した商品をショーケースユニット10に並べて販売できるものである。上述したように、ショーケースユニット10を通して良好な視界を確保できるので、店員は前方を向き、カウンタの内側から店舗内を見渡しながら調理することが可能であり、調理しながら顧客の動向を観察できる。
【0044】
さらに、ワーキングテーブル51の前方には、不透明な温風供給ユニット20が配置されているので、ワーキングテーブル51の上の状況は顧客からは見え難い。したがって、店員が、店内に向きながら調理していても、調理の様子や、調理に使用している器具を顧客から隠すことができる。さらに、調理中に、油や、ソースなどが跳ねても、温風供給ユニット20およびショーケースユニット10により顧客および商品に影響が及ぶのを防止できる。また、包丁やナイフなどを使用して調理する場合も、それらにより顧客を傷つけたりする心配は少ない。さらに、そのような危険物に、カウンタの外側から手が届くこともなく、子供がいたずらに手を伸ばして傷ついたり、暴漢が武器として使用したりする事態が発生することを未然に防止できる。
【0045】
また、調理に要する素材を冷蔵庫31に収納しておくことが可能であり、冷蔵庫31へも、カウンタの内側から、店員が前方を向いた状態でアクセスできる。したがって、冷凍食品を取りだし、調理し、それを陳列する一連の作業を、店員は、基本的には店内の方向を見ながら行なうことができる。このため、店員が顧客に背を向ける機会を減らすことができるので、顧客に対するサービスを向上できる。また、店内の様子を観察できる機会が増えるので、盗難の防止にも効果がある。
【0046】
さらに、店員が後を向く機会を減らすことができるので、暴漢などの店員に対して危険が及ぶ可能性がある事態にも即座に対応することが可能となる。さらに、強盗、暴漢などが現れたときに、店員は、速やかにこの調理販売ユニット1の後側に移動することにより、暴漢と店員との間にショーケースユニット10が入るようにすることができる。したがって、万一の事態が発生しても、店員に危害が及ぶ可能性を低くすることができる。
【0047】
カウンタと店内との間に障壁となるようなものを設置することは、顧客に対して店員がフレンドリーに接するオープンな雰囲気を低下させるものである。しかしながら、本例の調理販売ユニット1においては、顧客に対して展示販売するための透過性あるいは透光性のショーケースユニット10をバリアーとして利用する。そのようなショーケースユニットであれば、全体が略透明であるために、カウンタ内あるいはカウンタに隣接して配置しても、オープンな雰囲気をそれほど低下させることはない。また、ショーケースユニット10は顧客に対して販売するためのものであり、カウンタ内あるいはカウンタに隣接して配置しても、顧客の気分を害する心配は少ない。したがって、店舗内の雰囲気を損なわずに、店員の安全を向上することができる。
【0048】
なお、以上では、冷凍食品などを収納可能な収納ユニット30を下方に備えた調理販売ユニット1を例に本発明を説明しているが、収納ユニット30には、冷蔵庫の他に、温蔵庫を配置したり、調味料や、調理器具を収納するスペースを配置することも可能である。
【0049】
また、本例の調理用のワーキングテーブル51は、加熱プレート100などの簡単な調理器具を設置できる程度のものであるが、水回り、コンロなどの本格的なキッチンとしての機能を設置しても良い。
【0050】
また、ショーケースユニット10は、温蔵を目的としたものになっているが、これに隣接して、あるいは接続して、冷蔵を目的とした収納室を設けることも可能である。
【0051】
さらに、ショーケースユニット10の両側の側壁も透明あるいは透光性にすることにより、さらに、良好な視野を確保することができる。また、第1の収納室11および第2の収納室12には、それぞれの室内の照度を確保するために適当なタイプの照明Lを配置しているが、上部の壁3を透明にしたり、陳列棚18、15および19を透明にすることにより、照明Lを除き、店員にとってより店内が見やすいショーケースユニットを提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態にかかる調理販売ユニットを示す正面図。
【図2】図1の調理販売ユニットを示す背面図。
【図3】図1の調理販売ユニットを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0053】
1 調理販売ユニット、 10 ショーケースユニット
20 空調ユニット(温風供給ユニット)
30 収納ユニット、 35 冷却ユニット
34 ペルチェ素子、 40 開口(連通孔、連通路)
51 ワーキングテーブル
61 第1の前壁 62 第2の前壁
71 第1のドア、 72 第2のドア
A3 収納スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的な成人の背丈程度の高さの調理販売ユニットであって、
上部に配置されたショーケースユニットであって、少なくとも前壁および後壁が透光性で、前記後壁の少なくとも一部が扉となったショーケースユニットと、
前記ショーケースユニットの下で、当該調理販売ユニットの中間の高さ近傍に配置された空調ユニットであって、前記ショーケースユニットの内部の環境条件を制御するための空調ユニットと、
前記空調ユニットの下に配置された収納ユニットであって、後方からアクセスされる収納スペースを備えた収納ユニットと、
前記収納ユニットの上方で、前記空調ユニットの後方に配置されたワーキングテーブルとを有する、調理販売ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記ショーケースユニットは、調理した製品を温蔵および陳列するための温蔵領域を含み、
前記空調ユニットは、温風を前記温蔵領域に供給するための温風供給ユニットを含み、
前記収納ユニットは、前記収納スペースを冷却するための冷却ユニットを含み、
当該調理販売ユニットは、さらに、前記冷却ユニットの高温の排気の少なくとも一部を前記温風供給ユニットの吸気側に導くための連通路をさらに有する、調理販売ユニット。
【請求項3】
請求項2において、前記冷却ユニットはペルチェ素子を含む、調理販売ユニット。
【請求項4】
請求項1において、前記ショーケースユニットの前記後壁に設けられた扉は、引き戸式である、調理販売ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−282809(P2007−282809A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112640(P2006−112640)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(591150797)GAC株式会社 (69)
【Fターム(参考)】