説明

調節可能な力学的弾性率GUVを有する感光性ポリマー組成物

本発明の対象は、調節可能な力学的弾性率GUVを有する感光性ポリマー組成物含有露光済みホログラフィック媒体の製造方法である。本発明の別の対象は、本発明の方法によって得ることができる露光済みホログラフィック媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ポリマー組成物を含有する露光済みホログラフィック媒体の製造方法に関する。本発明は更に、本発明の方法によって得ることができる露光済みホログラフィック媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 2008/125229 A1は、ホログラフィック媒体の製造に使用できる感光性ポリマー組成物を記載している。開示されている感光性ポリマー組成物は、ポリウレタン系マトリックスポリマー、アクリレート系書込モノマー、および光開始剤を含んでなる。感光性ポリマー組成物を用いて得ることができるホログラフィック媒体は、高輝度により区別され、このことは、高い屈折率コントラスト(Δn)によって物理的に示されている。
【0003】
既知の方法では、Δnを実質的に一定に保ったまま、得られる露光済みホログラフィック媒体の機械的性質を変えることができない。例えば、化学組成を変えることにより機械的性質を変えると、Δn値も変わってしまう。しかしながら、屈折率コントラストの有意な変化を伴わずに、機械的性質を変えることは、多くの場合望ましい。なぜなら、使用分野に応じて、ホログラフィック媒体は、機械的性質について全く異なる要求を満たさなければならないからである。例えば、0.7MPa未満の力学的弾性率を有する媒体は、追加の接着剤を用いずに基材に貼合わせることができる。一方、外的影響による損傷に影響を受けない媒体を得ることが望ましい場合もある。このことは、媒体が15MPa以上の高い弾性率を有する場合に確実となり得る。
【0004】
また、特にホログラムを安全対策に使用する場合、Δn値の同時の有意な変化を伴わずに、随意に機械的性質を調節できることは決定的に重要である。例えば、身分証明書のような身分確認品から、破壊を伴わずに露光済みホログラフィック媒体を取り除けないことが特に望ましい場合がある。この目的には、0.7MPa未満の相応に低い弾性率を有し、軟質ゴム様コンシステンシーを有する媒体が適している。しかしながら逆に、特に破壊を伴わない交換が必要とされる場合もある。この場合、媒体は比較的高い剛性を有すべきであり、この剛性は、15MPa以上の弾性率に相当する。これらの様々な態様は、先行技術で知られている方法によって実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2008/125229 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、0.1〜160MPaの範囲の弾性率GUVおよび0.008以上のΔnを有する媒体を得ることができる、露光済みホログラフィック媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、
i)A)非晶質網状構造としてのマトリックスポリマー、
B)単官能性書込モノマーと多官能性書込モノマーとの組み合わせ、
C)光開始剤組成物、
D)任意に非光重合性成分、
E)任意に、触媒、ラジカル安定剤、溶媒、添加剤、並びに他の助剤および/または添加剤
を含んでなる感光性ポリマー組成物を供給し、
ii)感光性ポリマー組成物を媒体形状にし、
iii)ホログラムを書込むために、媒体をホログラフィック露光処理に付し、
iv)ホログラムを固定するために、媒体全体を紫外線露光する
方法であって、書込モノマーがアクリレート官能化化合物および/またはメタクリレート官能化化合物であり、感光性ポリマー組成物中の書込モノマーの総量が30重量%〜45重量%であり、未露光感光性ポリマー組成物が0.7MPa未満の弾性率Gを有し、書込モノマー総含量に対して、多官能性書込モノマーの高い相対的割合によって高い弾性率を得、単官能性書込モノマーの高い相対的割合によって低い弾性率を得るというように、書込モノマー総含量に基づいた単官能性書込モノマーの相対的割合と多官能性書込モノマーの相対的割合の比により、露光済み感光性ポリマー組成物の弾性率GUVが、意図した範囲0.1〜160MPaに調節される
方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法を用いると、紫外線露光後に0.1〜160MPaの範囲の力学的弾性率GUVを有するホログラフィック媒体を得ることができる。従って、所望の使用形態に応じて、前記範囲内の所定の弾性率を有し、屈折率コントラストΔnがほとんど異ならない、媒体を製造することができる。感光性ポリマー組成物のメーカーにとって、このことは、限られた数の適当な成分を用いて、エンドユーザーがホログラムの明るさに妥協する必要性を伴わずに力学的弾性率が決定要因となる応用および使用に関する様々な要求を満たす感光性ポリマー組成物を製造できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、λ=633nm(He−Neレーザー)でのホログラフィック媒体試験器(HMT)の配置を示す。
【図2】図2は、角度離調ΔΩに対する、結合波理論に従ったブラッグ曲線η(破線)、測定回折効率(黒丸)、および透過出力(実線)を示す。
【図3】図3は、貯蔵弾性率G’に基づく、マトリックス網状構造の硬化曲線(左側)および続くUV架橋曲線(右側)を示す。
【図4】図4は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)、Δn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)およびΔn(λ=532nmで書込んだホログラム、半黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図5】図5は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図6】図6は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図7】図7は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図8】図8は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図9】図9は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図10】図10は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図11】図11は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図12】図12は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図13】図13は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図14】図14は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図15】図15は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=532nmで書込んだホログラム、半黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図16】図16は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図17】図17は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図18】図Aは、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=532nmで書込んだホログラム、半黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図19】図Bは、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図20】図Cは、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【図21】図Dは、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)およびΔn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に、露光済みホログラフィック媒体は、0.3〜40MPa、好ましくは0.7〜15MPaの範囲の弾性率GUVを有してよい。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、2種の書込モノマーそれぞれの屈折率が、マトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位大きくなるように、またはマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位小さくなるように、書込モノマーおよびマトリックスポリマーを選択することが意図される。
【0012】
マトリックスポリマーは、好ましくはポリウレタンであってよい。ポリウレタンは特に、NCO基含有成分とNCO反応性成分との反応により調製することができ、2つの成分の少なくとも1つは200g/mol超、好ましくは350g/mol超の当量を有し、更に好ましくはポリマー主鎖に環式構造は生じない。反応した状態で−45℃未満のガラス転移温度Tを有するポリウレタンが特に好ましい。
【0013】
マトリックスポリマーA)は好ましくは、特にイソシアネート成分a)とイソシアネート反応性成分b)との反応によって得ることができるポリウレタンであってよい。
【0014】
イソシアネート成分a)は、好ましくはポリイソシアネートを包含する。使用してよいポリイソシアネートは、一分子あたり平均して2つ以上のNCO官能基を有する当業者に既知の化合物の全てまたはその混合物である。ポリイソシアネートは、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式であってよい。少ない量でなら、付随的に、不飽和基を有するモノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを使用することもできる。
【0015】
例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよび所望の異性体含量を有するそれらの混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートが適している。
【0016】
ウレタン構造、ウレア構造、カルボジイミド構造、アシルウレア構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、オキサジアジントリオン構造、ウレトジオン構造および/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有する、モノマージイソシアネートまたはトリイソシアネートの誘導体を使用することも適している。
【0017】
脂肪族および/または脂環式のジイソシアネートまたはトリイソシアネートに基づくポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0018】
成分a)のポリイソシアネートは、特に好ましくは、二量化またはオリゴマー化された脂肪族および/または脂環式のジイソシアネートまたはトリイソシアネートである。
【0019】
HDIおよび1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタンに基づく、イソシアヌレート、ウレトジオンおよび/またはイミノオキサジアジンジオン或いはそれらの混合物が特に好ましい。
【0020】
ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基および/またはアミド基を有するNCO官能性プレポリマーを成分a)として使用することもできる。成分a)としてのプレポリマーは、場合により触媒および溶媒を使用した、適当な化学量論量での、モノイソシアネート、オリゴイソシアネートまたはポリイソシアネートa1)とイソシアネート反応性化合物a2)との反応により、当業者によく知られている方法で得られる。
【0021】
適当なポリイソシアネートa1)は、当業者に自体知られている、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のジイソシアネートおよびトリイソシアネートであって、それらがホスゲン法によって得られたのかまたはホスゲンフリー法によって得られたのかは重要ではない。また、当業者に自体よく知られており、ウレタン構造、ウレア構造、カルボジイミド構造、アシルウレア構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、オキサジアジントリオン構造、ウレトジオン構造またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するモノマージイソシアネートおよび/またはトリイソシアネートの高分子量二次生成物を、単独でまたは互いの所望の混合物として使用することもできる。
【0022】
成分a1)として使用することができる適当なモノマージイソシアネートまたはトリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネートである。
【0023】
プレポリマーの合成に関するイソシアネート反応性化合物a2)として、OH官能性化合物を使用することが好ましい。これらは、後の成分b)についての記載に示されているようなOH官能性化合物と類似している。
【0024】
a2)の好ましいOH官能性化合物は、200〜6200g/molの数平均分子量を有する、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールである。エチレングリコールおよびプロピレングリコールに基づき、プロピレングリコールの割合が少なくとも40重量%を占める二官能性ポリエーテルポリオール、200〜4100g/molの数平均分子量を有するテトラヒドロフランのポリマー、および200〜3100g/molの数平均分子量を有する脂肪族ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0025】
エチレングリコールおよびプロピレングリコールに基づき、プロピレングリコールの割合が少なくとも80重量%を占める二官能性ポリエーテルポリオール(特に純ポリプロピレングリコール)、および200〜2100g/molの数平均分子量を有するテトラヒドロフランのポリマーがとりわけ好ましい。2〜20個の炭素原子を含有する脂肪族、芳香脂肪族または脂環式の二官能性、三官能性または多官能性アルコールによる(特に3〜12個の炭素原子を含有する二官能性脂肪族アルコールによる)ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン(特にε−カプロラクトン)の付加物もまた特に好ましい。これらの付加物は、好ましくは200〜2000g/mol、特に好ましくは500〜1400g/molの数平均分子量を有する。
【0026】
アロファネートを、別のプレポリマーとのまたは成分a1)のオリゴマーとの混合物として使用することもできる。そのような場合、1〜3.1の官能価を有するOH官能性化合物を使用することが有利である。3〜20個の炭素原子を含有する単官能性アルコールを使用することが好ましい。
【0027】
プレポリマーを調製するために、アミンを使用することもできる。例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノベンゼン、ジアミノビスフェニル、二官能性ポリアミン、例えばJeffamine(登録商標)、10000g/molの数平均分子量を有するアミン末端ポリマー、および互いの所望の混合物が適している。
【0028】
ビウレット基を有するプレポリマーを調製するためには、イソシアネートをアミンと過剰に反応させてビウレット基を形成する。前記したタイプのオリゴマーまたはポリマー、第一級または第二級の二官能性アミンの全てが、先に記載したジイソシアネート、トリイソシアネートおよびポリイソシアネートとの反応の際のアミンとして適している。脂肪族アミンおよび脂肪族イソシアネートに基づく脂肪族ビウレットが好ましい。2000g/mol未満の数平均分子量を有し、脂肪族ジアミンまたは二官能性ポリアミンおよび脂肪族ジイソシアネート(特にHDIおよびTMDI)に基づく低分子量ビウレットが好ましい。
【0029】
好ましいプレポリマーは、脂肪族イソシアネート官能性化合物と、200〜10000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマーのイソシアネート反応性化合物とから得られた、ウレタン、アロファネートまたはビウレットであり;脂肪族イソシアネート官能性化合物と、200〜6200g/molの数平均分子量を有するポリオールまたは3000g/molの数平均分子量を有する(ポリ)アミンとから得られた、ウレタン、アロファネートまたはビウレットが特に好ましく;HDIまたはTMDIと、200〜2100g/molの数平均分子量を有する二官能性ポリエーテルポリオール(特にポリプロピレングリコール)とから得られたアロファネート、HDIまたはTMDIから得られ、脂肪族、芳香脂肪族または脂環式の二官能性、三官能性または多官能性のC2〜20アルコール(特に二官能性脂肪族C3〜12アルコール)によるブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン(特にε−カプロラクトン)の(500〜3000g/mol、特に好ましくは1000〜2000g/molの数平均分子量を有する)付加物に基づく(特に二官能性脂肪族イソシアネートの他のオリゴマーとの混合物としての)ウレタン、或いはHDIまたはTMDIから得られ、2000〜6200g/molの数平均分子量を有する三官能性ポリエーテルポリオール(特にポリプロピレングリコール)に基づくウレタン、およびHDIまたはTMDIと二官能性アミンまたは200〜1400g/molの数平均分子量を有するポリアミンとから得られた(特に二官能性脂肪族イソシアネートの他のオリゴマーとの混合物としての)ビウレットがとりわけ好ましい。
【0030】
先に記載したプレポリマーは、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満の遊離モノマーイソシアネートの残留含量を有する。
【0031】
記載したプレポリマーに加えて、イソシアネート成分はもちろん、別のイソシアネート成分をある割合で含有してもよい。芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式のジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートがこの目的に適している。そのようなジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。適当なジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよび所望の異性体含量を有するそれらの混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、またはウレタン構造、ウレア構造、カルボジイミド構造、アシルウレア構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、オキサジアジントリオン構造、ウレトジオン構造またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するそれらの誘導体、およびそれらの混合物である。オリゴマー化および/または誘導体化ジイソシアネートに基づき、適当な方法によって過剰ジイソシアネートを除去したポリイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートに基づく前記ポリイソシアネートが好ましい。HDIに基づくオリゴマーのイソシアヌレート、ウレトジオンおよびイミノオキサジアジンジオン、並びにそれらの混合物が特に好ましい。
【0032】
場合により、イソシアネート成分a)が、イソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物と部分的に反応したイソシアネートをある割合で含有することも可能である。本発明では、イソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物として、α,β−不飽和カルボン酸誘導体、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレエート、フマレート、マレイミド、アクリルアミド、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテル、並びにジシクロペンタジエニル単位および少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物を使用することが好ましい。イソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物は、特に、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する、アクリレートおよびメタクリレートである。適当なヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えばTone(登録商標) M100(Dow、米国)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール)のヒドロキシ官能性モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートまたはテトラ(メタ)アクリレートのような化合物、またはそれらの工業用混合物である。また、単独のまたは前記モノマー化合物と組み合わせた、アクリレート基および/またはメタクリレート基を有するオリゴマーまたはポリマーのイソシアネート反応性不飽和化合物も適している。イソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物と部分的に反応したイソシアネートの割合は、イソシアネート成分a)に基づいて、0〜99%、好ましくは0〜50%、特に好ましくは0〜25%、とりわけ好ましくは0〜15%である。
【0033】
場合により、先に記載したイソシアネート成分a)に関して、完全にまたはある割合で、被覆技術から当業者に知られているブロック剤と完全にまたは部分的に反応したイソシアネートを含有することも可能である。ブロック剤の例として、以下を挙げることができる:アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびアミン、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタム、N−tert−ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル、またはこれらブロック剤の所望の混合物。
【0034】
平均して一分子あたり少なくとも1.5個のイソシアネート反応性基を有する多官能性イソシアネート反応性化合物の全てを、成分b)として使用することができる。
【0035】
本発明において、イソシアネート反応性基は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基またはチオール基であり、ヒドロキシ化合物が特に好ましい。
【0036】
適当な多官能性イソシアネート反応性化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールである。
【0037】
加えて、低分子量(即ち500g/mol未満の分子量)および短鎖(即ち2〜20個の炭素原子)を有する脂肪族、芳香脂肪族または脂環式、二官能性、三官能性または多官能性のアルコールもまた、成分b)の要素としての多官能性イソシアネート反応性化合物として適している。
【0038】
そのようなアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)であってよい。適当なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールである。適当なより高官能性のアルコールは、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはソルビトールである。
【0039】
適当なポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸またはポリカルボン酸またはそれらの無水物と2以上のOH官能価を有する多価アルコールとから既知の方法で得られるような、直鎖ポリエステルジオールまたは分岐ポリエステルポリオールである。
【0040】
そのようなジカルボン酸またはポリカルボン酸またはそれらの無水物の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸、および酸無水物、例えば、o−フタル酸無水物、トリメリット酸無水物またはコハク酸無水物、またはそれらの互いの所望の混合物である。
【0041】
そのような適当なアルコールの例は、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、またはそれらの互いの所望の混合物である。
【0042】
好ましいポリエステルポリオールは、脂肪族アルコールと、脂肪族酸および芳香族酸の混合物とに基づいており、500〜10000g/molの数平均分子量および1.8〜6.1の官能価を有する。
【0043】
特に好ましいポリエステルポリオールは、脂肪族のジカルボン酸またはポリカルボン酸(例えば、アジピン酸および/またはコハク酸)または無水物、或いは前記脂肪族ポリカルボン酸または無水物と芳香族ポリカルボン酸(例えばテレフタル酸および/またはイソフタル酸)または無水物との混合物[ここで、芳香族ポリカルボン酸または無水物の割合は、使用するポリカルボン酸または無水物の総量に基づいて、好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満を占める]と組み合わせた、脂肪族ジオール(例えば、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、エタンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよび/またはテトラプロピレングリコール)、または前記ジオールとより高い官能価を有する脂肪族アルコール(例えば、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリスリトール)との混合物[ここで、より高い官能価を有する脂肪族アルコールの割合は、使用するアルコールの総量に基づいて、好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満を占める]に基づく。特に好ましいポリエステルポリオールは、1000〜6000g/molの数平均分子量および1.9〜3.3の官能価を有する。
【0044】
ポリエステルポリオールは、天然原料、例えばひまし油に基づいてもよい。ポリエステルポリオールは、開環ラクトン重合におけるヒドロキシ官能性化合物(例えば、2以上のOH官能価を有する多価アルコール、または1.8より大きい官能価を有するポリオール、例えば先に記載したタイプのもの)によるラクトン(例えば、ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン)またはラクトン混合物の付加反応によって好ましくは得ることができるような、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーに基づくこともできる。
【0045】
本発明において使用される好ましいポリオールは、1.8〜3.1の官能価および200〜4000g/molの数平均分子量を有するポリエーテルポリオールであり、1.9〜2.2の官能価および500〜2000g/mol(特に600〜1400g/mol)の数平均分子量を有するポリ(テトラヒドロフラン)が特に好ましい。ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトンおよびε−カプロラクトンの付加物が特に好ましい。
【0046】
そのようなポリエステルポリオールは、好ましくは400〜6000g/mol、特に好ましくは800〜3000g/molの数平均分子量を有する。そのOH官能価は、好ましくは1.8〜3.5、特に好ましくは1.9〜2.2である。
【0047】
適当なポリカーボネートポリオールは、有機カーボネートまたはホスゲンとジオールまたはジオール混合物との反応により自体既知の方法で得ることができる。
【0048】
適当な有機カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジフェニルカーボネートである。
【0049】
適当なジオールまたは混合物は、ポリエステルセグメントに関する記載に示した2以上のOH官能価を有する多価アルコール、好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/または3−メチルペンタンジオールを包含する。即ち、ポリエステルポリオールをポリカーボネートポリオールに変換してもよい。
【0050】
そのようなポリカーボネートポリオールは、好ましくは400〜4000g/mol、特に好ましくは500〜2000g/molの数平均分子量を有する。これらのポリオールのOH官能価は、好ましくは1.8〜3.2、特に好ましくは1.9〜3.0である。
【0051】
適当なポリエーテルポリオールは、OH官能性スターター分子またはNH官能性スターター分子による環式エーテルの重付加物であり、重付加物は場合により、ブロック構造を有する。
【0052】
適当な環式エーテルは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンおよびそれらの所望の混合物である。
【0053】
使用してよいスターターは、ポリエステルポリオールに関する記載に示した2以上のOH官能価を有する多価アルコール、並びに第一級または第二級のアミンおよびアミノアルコールである。
【0054】
好ましいポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドのみに基づくか、或いはプロピレンオキシドと別の1−アルキレンオキシドとに基づく(別の1−アルキレンオキシドの割合は80重量%以下である)ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーに基づく、先に記載したタイプのポリエーテルポリオールである。プロピレンオキシドホモポリマー、並びにオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位および/またはオキシブチレン単位を有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーが特に好ましく、全てのオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位およびオキシブチレン単位の総量に基づくオキシプロピレン単位の割合は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも45重量%を占める。ここで、オキシプロピレンおよびオキシブチレンはそれぞれ、直鎖および分岐のC3異性体の全て並びに直鎖および分岐のC4異性体の全てを包含する。
【0055】
そのようなポリエーテルポリオールは、好ましくは250〜10000g/mol、特に好ましくは500〜8500g/mol、とりわけ好ましくは600〜4500g/molの数平均分子量を有する。OH官能価は、好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.8〜3.1、とりわけ好ましくは1.9〜2.2である。
【0056】
好ましく使用される特定のポリエーテルポリオールは、Y(X−H)タイプのヒドロキシ官能性マルチブロックコポリマーを含んでなるイソシアネート反応性成分からなるポリエーテルポリオールである。ここで、i=1〜10、n=2〜8であり、数平均分子量は1500g/molより大きく、Xセグメントはおのおの式(I):
−CH−CH(R)−O− 式(I)
[式中、Rは、水素、置換されていてもよくまたはヘテロ原子(例えばエーテル酸素)によって中断されていてもよいアルキル基またはアリール基である]
で示されるオキシアルキレン単位からなり、Yは基礎となるスターターであり、Xセグメントの割合は、XセグメントおよびYセグメントの総量に基づいて少なくとも50重量%を占める。
【0057】
外部ブロックXは、Y(X−H)の総分子量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは66重量%を占め、式(I)で示されるモノマー単位からなる。Y(X−H)において、nは、好ましくは2〜6の数、特に好ましくは2または3、とりわけ好ましくは2である。Y(X−H)において、iは、好ましくは1〜6の数、特に好ましくは1〜3の数、とりわけ好ましくは1である。
【0058】
式(I)において、Rは好ましくは、水素、メチル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基、或いはエーテル基含有アルキル基である。好ましいエーテル基含有アルキル基は、オキシアルキレン単位に基づくエーテル基含有アルキル基である。
【0059】
マルチブロックコポリマーY(X−H)は、好ましくは1200g/mol超、特に好ましくは1950g/mol超の数平均分子量を有するが、好ましくは12000g/mol以下、特に好ましくは8000g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0060】
ブロックは、同じオキシアルキレン反復単位のみを含んでなるホモポリマーであってよい。Xブロックは、異なったオキシアルキレン単位からランダムになるか、またはブロック構造で異なったオキシアルキレン単位からなってもよい。
【0061】
セグメントは、好ましくは、プロピレンオキシドのみに基づくか、或いはプロピレンオキシドと別の1−アルキレンオキシドとの(別の1−アルキレンオキシドの割合は80重量%以下である)ランダム混合物またはブロック様混合物に基づく。
【0062】
特に好ましいセグメントXは、プロピレンオキシドホモポリマー、並びにオキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位を有する(全てのオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位の総量に基づくオキシプロピレン単位の割合は、少なくとも20重量%、特に好ましくは40重量%を占める)ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0063】
後に記載するように、Xブロックは、先に記載したアルキレンオキシドの開環重合によって、nヒドロキシ官能性またはnアミノ官能性のスターターブロックY(H)に付加される。
【0064】
Y(X−H)中に50重量%未満、好ましくは34重量%未満の量で存在する内部ブロックYは、環式エーテルに基づいたジヒドロキシ官能性ポリマー構造および/またはより高いヒドロキシ官能価を有するポリマー構造からなるか、或いはジヒドロキシ官能性のおよび/またはより高いヒドロキシ官能価を有する、ポリカーボネート構成単位、ポリエステル構成単位、ポリ(メタ)アクリレート構成単位、エポキシ樹脂構成単位および/またはポリウレタン構成単位、または対応するハイブリッドからなる。
【0065】
適当なポリエステルポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸、ポリカルボン酸またはそれらの無水物(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸、および酸無水物、例えば、o−フタル酸無水物、トリメリット酸無水物またはコハク酸無水物)或いはそれらの混合物と、多価アルコール(例えば、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール)またはそれらの混合物とから、場合により高官能性ポリオール(例えば、トリメチロールプロパンまたはグリセロール)の使用を伴って、既知の方法で調製され得るような、直鎖ポリエステルジオールまたは分枝ポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールの調製に適した多価アルコールはもちろん、脂環式および/または芳香族のジヒドロキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物であってもよい。ポリエステルの調製に、遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステル或いはそれらの混合物を使用することも可能である。
【0066】
ポリエステルポリオールは、ひまし油のような天然原料に基づいてもよい。ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ官能性化合物(例えば、好ましくは2のヒドロキシ官能価を有する多価アルコール、例えば前記タイプのもの)によるラクトン(例えば、ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン)またはラクトン混合物の付加反応によって好ましくは得ることができるような、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーに基づくこともできる。
【0067】
そのようなポリエステルポリオールは、好ましくは200〜2000g/mol、特に好ましくは400〜1400g/molの数平均分子量を有する。
【0068】
適当なポリカーボネートポリオールは、有機カーボネートまたはホスゲンとジオールまたはジオール混合物との反応によって、それ自体既知の方法で得ることができる。
【0069】
適当な有機カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジフェニルカーボネートである。
【0070】
適当なジオールまたは混合物は、ポリエステルポリオールに関する記載に示された2のヒドロキシ官能価を有する多価アルコール、好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/または3−メチルペンタンジオールを包含する。ポリエステルポリオールを、ポリカーボネートポリオールに変換してもよい。ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを前記アルコールのポリカーボネートポリオールへの転化に使用することが特に好ましい。
【0071】
そのようなポリカーボネートポリオールは、好ましくは400〜2000g/mol、特に好ましくは500〜1400g/mol、とりわけ好ましくは650〜1000g/molの数平均分子量を有する。
【0072】
適当なポリエーテルポリオールは、OH官能性またはNH官能性スターター分子による環式エーテルの重付加物であり、この重付加物は、場合によりブロック構造を有する。例えば、ポリエーテルポリオールとして以下を挙げることができる:スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの重付加物並びにそれらの混合付加物およびグラフト生成物、並びに多価アルコールまたはその混合物の縮合によって得られたポリエーテルポリオール、並びに多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシル化によって得られたポリエーテルポリオール。
【0073】
適当な環式エーテルのポリマーは、特に、テトラヒドロフラン重合体である。
【0074】
ポリエステルポリオールに関する記載に示された多価アルコール、並びに2〜8、好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜3、とりわけ好ましくは2のOH官能価またはNH官能価を有する第一級または第二級のアミンおよびアミノアルコールを、スターターとして使用してよい。
【0075】
そのようなポリエーテルポリオールは、好ましくは200〜2000g/mol、特に好ましくは400〜1400g/mol、とりわけ好ましくは650〜1000g/molの数平均分子量を有する。
【0076】
テトラヒドロフラン重合体を、スターターに使用するポリエーテルポリオールとして使用することが好ましい。
【0077】
もちろん、前記成分の混合物を、内部ブロックYに使用することもできる。
【0078】
内部ブロックYに好ましい成分は、3100g/mol未満の数平均分子量を有する、テトラヒドロフラン重合体、脂肪族ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオール、並びにε−カプロラクトン重合体である。
【0079】
内部ブロックYに特に好ましい成分は、3100g/mol未満の数平均分子量を有する、テトラヒドロフラン二官能性重合体、二官能性脂肪族ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオール、並びにε−カプロラクトン重合体である。
【0080】
とりわけ好ましくは、スターターセグメントYは、500g/mol超〜2100g/mol未満の数平均分子量を有する、二官能性脂肪族ポリカーボネートポリオール、ポリ(ε−カプロラクトン)、またはテトラヒドロフラン重合体に基づく。
【0081】
構造Y(X−H)で示され、好ましく使用されるブロックコポリマーは、本発明に従った前記ブロックXを50重量%超含んでなり、1200g/mol超の全体の数平均分子量を有する。
【0082】
特に好ましいブロックコポリマーは、50重量%以下の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートポリオールまたはポリ−THF、および50重量%以上の本発明に従った前記ブロックXを含んでなり、1200g/mol超の数平均分子量を有する。特に好ましいブロックコポリマーは、50重量%以下の脂肪族ポリカーボネートポリオール、ポリ(ε−カプロラクトン)またはポリ−THF、および50重量%以上の本発明に従った前記ブロックXを含んでなり、1200g/mol超の数平均分子量を有する。
【0083】
とりわけ好ましいブロックコポリマーは、34重量%以下の脂肪族ポリカーボネートポリオール、ポリ(ε−カプロラクトン)またはポリ−THF、および66重量%以上の本発明に従った前記ブロックXを含んでなり、1950g/mol超〜9000g/mol未満の数平均分子量を有する。
【0084】
前記ブロックコポリマーは、アルキレンオキシド付加方法によって調製される。第一に、ツェレビチノフ活性水素原子含有スターター化合物Y(H)によるアルキレンオキシドの塩基触媒付加反応が工業的に重要であり、第二に、この反応の実施のための複金属シアン化物化合物(DMC触媒)の使用がますます重要となってきている。ツェレビチノフによって発見された方法によりヨウ化メチルマグネシウムとの反応によってメタンを生成するならば、N、OまたはSと結合した水素は、ツェレビチノフ活性水素と称される(時には単に「活性水素」とも称される)。ツェレビチノフ活性水素含有化合物の典型的な例は、官能基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基またはチオール基を含有する化合物である。ツェレビチノフ活性水素原子含有スターター化合物によるアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)の塩基触媒付加反応は、アルカリ金属水酸化物の存在下で実施されるが、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属カルボン酸塩またはアルカリ土類金属水酸化物を使用することもできる。アルキレンオキシド付加反応の完了後、例えば希釈した無機酸(例えば、硫酸またはリン酸)での中和および得られた塩の除去によって、ポリエーテル鎖上の重合活性中心を失活させなければならない。本発明の方法では、DMC触媒を使用することが好ましい。例えば、US−A 5 470 813、EP−A 700 949、EP−A 743 093、EP−A 761 708、WO 97/40086、WO 98/16310およびWO 00/47649に記載されている高活性DMC触媒を使用することが特に好ましい。典型的な例は、EP−A 700 949に記載され、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト酸亜鉛(III))および有機錯体配位子(例えばtert−ブタノール)に加えて500g/mol超の数平均分子量を有するポリエーテルも含有する、高活性DMC触媒である。これらの触媒は、高活性の故に、ポリエーテルポリオールの更なる後処理が不要になるほどの少量で使用することができる。調製方法を、以下に詳細に記載する。ブロックコポリマー中に50重量%未満の量で存在するOH官能性前駆体Yを「スターターポリオール」として使用し、そこへアルキレンオキシドを重合させると、最終的にマルチブロックコポリマーが得られる。好ましく使用されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびそれらの混合物である。アルコキシル化によるポリエーテル鎖の合成は、例えば、1種の単量体エポキシドのみを使用して、或いは複数の異なった単量体エポキシドをランダムにまたはブロック様で使用して実施してよい。
【0085】
マトリックスポリマーの調製における成分a)およびb)の好ましい組み合わせは、以下のものである。
【0086】
A)HDIに基づくイソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオンおよび/または他のオリゴマーと;1.8〜3.1の官能価および200〜4000g/molの数平均分子量を有するポリエーテルポリオールによるブチロカプロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトンの付加物との組み合わせ。特に好ましくは、HDIに基づくオリゴマー、イソシアヌレートおよび/またはイミノオキサジアジンジオンと;1.9〜2.2の官能価および500〜2000g/mol(特に600〜1400g/mol)の数平均分子量を有するポリ(テトラヒドロフラン)によるε−カプロラクトンの付加物(全体の数平均分子量は800〜4500g/mol、特に1000〜3000g/molである)との組み合わせ。
【0087】
B)脂肪族イソシアネート官能性化合物と、200〜6000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマーイソシアネート反応性化合物とから得られたウレタン、アロファネートまたはビウレットと;500〜8500g/molの数平均分子量および1.8〜3.2のOH官能価を有し、ポリプロピレンオキシドのみに基づくかまたはプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドに基づく(エチレンオキシドの割合は60重量%以下である)ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーに基づく、ポリエーテルポリオールとの組み合わせ。HDIまたはTMDIと、200〜2100g/molの数平均分子量を有する二官能性ポリエーテルポリオール(特にポリプロピレングリコール)とから得られたアロファネートと;1800〜4500g/molの数平均分子量および1.9〜2.2のOH官能価を有するプロピレンオキシドホモポリマーとの組み合わせが特に好ましい。
【0088】
C)脂肪族イソシアネート官能性化合物と、200〜6000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマーイソシアネート反応性化合物とから得られたウレタン、アロファネートまたはビウレット;またはHDIに基づくイソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオンおよび/または他のオリゴマーと;式(I)[式中、Yは、いずれの場合も1.8〜3.1のOH官能価および400〜2000g/molの数平均分子量を有する純脂肪族ポリカーボネートポリオールまたはテトラヒドロフラン重合体であり、nは2であり、iは1または2であり、RはメチルまたはHである]で示され、1950〜9000g/mol、好ましくは1950〜6000g/molの全体の数平均分子量を有するポリエーテルブロックコポリマーまたはマルチブロックコポリマーとの組み合わせ。HDIまたはTMDIと、200〜2100g/molの数平均分子量を有する二官能性ポリエーテルポリオール(特にポリプロピレングリコール)とから得られたアロファネート;または脂肪族ジアミンまたはポリアミンと脂肪族ジイソシアネート(特にHDIおよびTMDI)とに基づき(特に二官能性脂肪族イソシアネートの他のオリゴマーとの混合物としての)200〜1400g/molの数平均分子量を有するビウレット;または脂肪族、芳香脂肪族または脂環式の二官能性、三官能性または多官能性C2〜20アルコールによる(特に二官能性脂肪族C3〜12アルコールによる)ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン(特にε−カプロラクトン)の(200〜3000g/mol、特に好ましくは1000〜2000g/molの数平均分子量を有する)付加物に基づき、HDIまたはTMDIから得られた(特に二官能性脂肪族イソシアネートの他のオリゴマーとの混合物としての)ウレタン;またはHDIに基づくイソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオンおよび/または他オリゴマーと;式(I)[式中、Yは、1.8〜2.2のOH官能価および600〜1400g/mol(特に1000g/molまで)の数平均分子量を有する、1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートとに基づく純脂肪族ポリカーボネートポリオール、或いはテトラヒドロフラン重合体であり、nは2であり、iは1または2であり、RはメチルまたはHであり、エチレンオキシドの単位はXの総量に基づいて60重量%以下である]で示されるポリエーテルブロックコポリマーまたはマルチブロックコポリマーとの組み合わせが特に好ましい。
【0089】
単官能性書込モノマー(成分B))は好ましくは、一般式(II):
【化1】

[式中、R、Rは、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基である]
で示されてよい。単官能性書込モノマーが15℃未満のガラス転移温度Tを有することが特に好ましい。
【0090】
多官能性書込モノマー(成分B))は特に、一般式(III):
【化2】

[式中、nは2以上4以下であり、R、Rは、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基である]
で示される化合物であってよい。多官能性書込モノマーが1.50超の屈折率n20を有することが更に好ましい。
【0091】
アクリレート系α,β−不飽和カルボン酸誘導体のような化合物(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸)の混合物を、本発明に必須の書込コモノマーとして使用することができる。アクリレートおよびメタクリレートが好ましい。
【0092】
一般に、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルは、それぞれアクリレートまたはメタクリレートと称される。使用できるアクリレートおよびメタクリレートの例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、p−クロロフェニルメタクリレート、p−ブロモフェニルアクリレート、p−ブロモフェニルメタクリレート、2,4,6−トリクロロフェニルアクリレート、2,4,6−トリクロロフェニルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルメタクリレート、ペンタクロロフェニルアクリレート、ペンタクロロフェニルメタクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、ペンタブロモフェニルメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ナフチルメタクリレート、1,4−ビス(2−チオナフチル)−2−ブチルアクリレート、1,4−ビス(2−チオナフチル)−2−ブチルメタクリレート、プロパン−2,2−ジイルビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−{[3,3,3−トリス(4−クロロフェニル)プロパノイル]オキシ}プロパン−3,1−ジイル)オキシエタン−2,1−ジイル]ジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレートおよびそれらのエトキシル化類似化合物、N−カルバゾリルアクリレートであるが、これらは例示にすぎない。
【0093】
1.450より大きい屈折率n20を有するアクリレートおよびメタクリレートを使用することが好ましい。少なくとも1個の芳香族構成単位を有し、1.50より大きい屈折率n20を有するアクリレートを使用することが特に好ましい。この目的に特に適した例として、ビスフェノールAに基づくアクリレートおよびメタクリレートまたはそれらの誘導体、更にはチオアリール基を有するアクリレートおよびメタクリレートを挙げることができる。
【0094】
ウレタンアクリレートを書込コモノマーとして使用することが好ましい場合もある。ウレタンアクリレートは、少なくとも1個のアクリル酸エステル基を有し、更に少なくとも1つのウレタン結合を有する化合物を意味すると理解される。ヒドロキシ官能性アクリル酸エステルとイソシアネート官能性化合物との反応によって、そのような化合物が得られることが知られている。
【0095】
このために使用できるイソシアネートの例は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式のジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートである。そのようなジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。適当なジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよび所望の異性体含量を有するそれらの混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートおよびトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート、或いはウレタン構造、ウレア構造、カルボジイミド構造、アシルウレア構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、オキサジアジントリオン構造、ウレトジオン構造またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するそれらの誘導体、およびそれらの混合物である。芳香族または芳香脂肪族のジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートが好ましい。
【0096】
ウレタンアクリレートの調製に適したヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えば、Tone(登録商標) M100(Dow、ドイツ国シュヴァルバハ)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール)のヒドロキシ官能性モノアクリレート、ジアクリレートまたはテトラアクリレートのような化合物、またはそれらの工業用混合物である。2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートおよびポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートが好ましい。また、アクリレート基および/またはメタクリレート基を有するオリゴマーまたはポリマーのイソシアネート反応性不飽和化合物を単独でまたは前記モノマー化合物と組み合わせることも適している。ヒドロキシル基を有し、20〜300mgKOH/gのOH含量を有する自体既知のエポキシ(メタ)アクリレート、またはヒドロキシル基を有し、20〜300mgKOH/gのOH含量を有するポリウレタン(メタ)アクリレート、または20〜300mgKOH/gのOH含量を有するアクリル化ポリアクリレート、およびそれらの互いの混合物、およびそれらとヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとの混合物、およびそれらとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物、またはヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物を使用することもできる。ヒドロキシル基を有し、所定のヒドロキシ官能価を有するエポキシアクリレートが好ましい。ヒドロキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートは特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオール或いはそれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体のエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物に基づく。アクリル酸および/またはメタクリル酸並びにグリシジル(メタ)アクリレートの既知の反応から得ることができるような、所定の官能価を有するエポキシアクリレートが更に好ましい。
【0097】
(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートの混合物を使用することが好ましく、少なくとも1つの芳香族構成単位を有する(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートの混合物を使用することが特に好ましい。
【0098】
書込コモノマーとして使用される特に好ましい化合物は、芳香族イソシアネートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートとに基づく、ウレタンアクリレートおよびウレタンメタクリレートの混合物である。
【0099】
特に好ましい態様では、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートによる芳香族トリイソシアネート(特に好ましくは、トリス(4−フェニルイソシアナト)チオホスフェート、または芳香族ジイソシアネート(例えばトルエンジイソシアネート)の三量体)の付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートによる3−チオメチルフェニルイソシアネートの付加物との混合物を、書込コモノマーとして使用する(WO 2008/125229 A1および特許出願EP 09009651.2に記載)。
【0100】
また、書込モノマーとして、グリシジルエーテルアクリレートウレタンを使用することが好ましい。グリシジルエーテルアクリレートウレタンは、一般式(IVa)または一般式(IVb)で示される化合物、或いは一般式(IVa)で示される化合物と一般式(IVb)で示される化合物との混合物である。
【化3】

式中、nは2〜6の自然数であり、
は、芳香族基を有し、4〜36個の炭素原子を含有する単核有機基または多核有機基であり、
は、3〜30個の炭素原子を含有するオレフィン性不飽和基であり、
は、脂肪族または芳香族のジイソシアネートまたはポリイソシアネートに由来し、2〜30個の炭素原子を含有する有機基である。
【0101】
式(IVa)または(IVb)で示される不飽和グリシジルエーテルアクリレートウレタンは、2段階合成法で調製することができる。第一の反応では、不飽和カルボン酸をエポキシドと反応させて、2種のアルコールの混合物を生成する。第二の反応段階では、このアルコール混合物を、ジイソシアネートまたは官能価nのポリイソシアネートR(NCO)によりウレタン化して、グリシジルエーテルアクリレートウレタンを生成する(特許出願EP 09002180.9に記載)。好ましくは、メタクリル酸およびアクリル酸またはそれらの誘導体を、エポキシド、好ましくは芳香族エポキシド、例えば、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルまたはビフェニルグリシジルエーテルとして使用し、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)またはトリイソシアナトノナン(TIN)をイソシアネート成分として使用することが好ましい。
【0102】
特に好ましい態様では、「アクリル酸、ビフェニルグリシジルエーテルおよびTDI」の組み合わせ、「アクリル酸、フェニルグリシジルエーテルおよびTDI」の組み合わせ、および「アクリル酸、ビフェニルグリシジルエーテルおよびHDI」の組み合わせを使用する。
【0103】
更に、一般式VaおよびVb:
【化4】

[式中、RおよびRは互いに独立して、置換フェニル基、置換および/または未置換ナフチル基である]
で示される特定のメタクリレートを使用してもよい。好ましくは、Rおよび/またはRは、6〜24個の炭素原子、0〜5個のイオウ原子および0〜5個のハロゲン原子を含んでよい。
【0104】
好ましい態様によれば、Rおよび/またはRは、チオエーテル基、フェニル基および/またはハロゲン原子によって置換されていてよい。
【0105】
および/またはRが、ナフチル、3−メチルチオフェニル、2−ビフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、2−ブロモフェニルであることが特に好ましい。
【0106】
メタクリレートの調製は、2段階合成で実施する。第一の反応では、酸R−COOHをグリシジルメタクリレートと反応させ、2種のアルコールの混合物を生成する。第二の反応段階では、アルコール混合物をモノイソシアネートR−NCOによりウレタン化してメタクリレート混合物を生成する。
【0107】
特に好ましい態様では、「グリシジルメタアクリレート、ナフトエ酸および3−チオメチルフェニルイソシアネート」の組み合わせを使用する。
【0108】
成分C)として、1種以上の光開始剤を使用する。光開始剤は通常、化学線によって活性化されて、相応の重合性基の重合を開始することができる開始剤である。光開始剤は、それ自体既知の市販化合物であり、一分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とに分類されている。更に、化学的性質に依存して、これらの開始剤は、ラジカル重合、アニオン重合(または)カチオン(または混合)重合に使用される。
【0109】
ラジカル光重合のための(I型)系は、例えば、第3級アミンと組み合わせた芳香族ケトン化合物(例えばベンゾフェノン)、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記タイプの混合物である。適当な共開始剤(例えば、メルカプトベンゾキサゾールおよびα−ヒドロキシアルキルフェノン)を伴った、(II型)開始剤、例えば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、種々に置換されたヘキサアリールビスイミダゾール(HABI)もまた適している。EP−A 0223587に記載され、アリールホウ酸アンモニウムと1種以上の染料との混合物からなる光開始剤組成物を、光開始剤として使用することもできる。アリールホウ酸アンモニウムとして、例えば、テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリフェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリナフチルブチルボレート、テトラメチルアンモニウムトリフェニルベンジルボレート、テトラ(n−ヘキシル)アンモニウム(sec−ブチル)トリフェニルボレート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムジフェニルジフェニルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(4−tert−ブチル)フェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(3−フルオロフェニル)ヘキシルボレート、およびテトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシルボレートが適している。適当な染料は、例えば、ニューメチレンブルー、チオニン、ベーシックイエロー、ピナシアノールクロリド、ローダミン6G、ガロシアニン、エチルバイオレット、ビクトリアブルーR、セレスチンブルー、キナルジンレッド、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、アストラゾンオレンジG、ダロウレッド、ピロニンY、ベーシックレッド29、ピリリウムI、サフラニンO、シアニンおよびメチレンブルー、アズールA(Cunninghamら、RadTech '98 North America UV/EB Conference Proceedings, シカゴ、1998年4月19日〜22日)である。
【0110】
アニオン重合に使用される光開始剤は、概して(I型)系であり、第一系列遷移金属錯体から誘導される。本発明では、クロム塩、例えば、トランス−Cr(NH(NCS)−(Kutalら、Macromolecules 1991, 24, 6872)またはフェロセン化合物(Yamaguchiら、Macromolecules 2000, 33, 1152)が適している。アニオン重合の別の可能性は、光分解によってシアノアクリレートを重合できる、クリスタルバイオレットロイコニトリルまたはマラカイトグリーンロイコニトリルのような染料の使用にある(Neckersら、Macromolecules 2000, 33, 7761)。しかしながら、発色団がポリマーに組み込まれるので、得られるポリマーは全体に着色される。
【0111】
カチオン重合に使用される光開始剤は、実質上、以下の3種類を包含する:アリールジアゾニウム塩、オニウム塩(本発明では、とりわけ、ヨードニウム塩、スルホニウム塩およびセレノニウム塩)および有機金属化合物。露光すると、水素供与体の存在下および不存在下、フェニルジアゾニウム塩は、重合を開始するカチオンを生じることができる。系全体の有効性は、ジアゾニウム化合物に使用された対イオンの性質によって決まる。ここでは、それほど反応性ではないが極めて高価なSbF、AsFまたはPFが適している。薄膜被覆への使用には、これらの化合物は概して適当ではない。なぜなら、露光後に遊離される窒素が、薄膜表面の品質を低下させる(ピンホール)からである(Liら、Polymeric Materials Science and Engineering, 2001, 84, 139)。オニウム塩、特にスルホニウム塩およびヨードニウム塩が、極めて広範囲で使用され、多くの形態で市販されている。これら化合物の光化学は、長い間研究されてきた。ヨードニウム塩は励起後まず均等開裂し、それによってラジカルおよびラジカルアニオンを生じ、ラジカルおよびラジカルアニオンは、H引き抜きにより安定化され、プロトンを遊離し、次いでカチオン重合を開始する(Dektarら、J. Org. Chem. 1990, 55, 639; J. Org. Chem., 1991, 56, 1838)。このメカニズムは、ヨードニウム塩のラジカル光重合への使用も可能にする。ここでも、対イオンの選択が再び重要であり、SbF、AsFまたはPFが同様に好ましい。他の点では、この構造分類において、芳香族の置換基の選択は完全に自由であり、合成に適した出発構成単位の利用可能性によって実質的に決定される。スルホニウム塩は、ノリッシュII型反応に従って分解する化合物である(Crivelloら、Macromolecules, 2000, 33, 825)。スルホニウム塩の場合もまた、対イオンの選択が重要であり、この選択が実質的にポリマーの硬化速度に現れる。SbF塩を使用した場合に概して最良の結果が得られる。ヨードニウム塩およびスルホニウム塩の自己吸収が300nm未満で起こるので、これらの化合物は、近紫外線または短波長可視光での光重合に対して適当に増感させなければならない。これは、より高吸収性の芳香族、例えば、アントラセンおよびその誘導体(Guら、Am. Chem. Soc. Polymer Preprints, 2000, 41 (2), 1266)またはフェノチアジンまたはその誘導体(Huaら、Macromolecules 2001, 34, 2488-2494)を使用することによって達成される。
【0112】
これらの化合物の混合物を使用することが有利な場合もある。硬化に使用される線源に応じて、当業者に既知の方法で、光開始剤のタイプおよび濃度を適合させなければならない。詳細は、例えばP. K. T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, 第3巻、1991, SITA Technology, London, 第61〜328頁に記載されている。
【0113】
好ましい光開始剤は、テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリフェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリナフチルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(4−tert−ブチル)フェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(3−フルオロフェニル)ヘキシルボレートおよびテトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシルボレートと、染料、例えば、アストラゾンオレンジG、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、アズールA、ピリリウムI、サフラニンO、シアニン、ガロシアニン、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、エチルバイオレットおよびチオニンとの混合物である。
【0114】
使用される光開始剤組成物は、好ましくは、アニオン染料、カチオン染料または中性染料、および共開始剤を含んでなる。
【0115】
感光性ポリマー組成物は、可塑剤として、非光重合性成分D)を更に含有してよい。この可塑剤は好ましくは、両方の書込モノマーがマトリックスポリマーより大きい屈折率を有するならば、可塑剤の屈折率がマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位小さくなるように、また、両方の書込モノマーがマトリックスポリマーより小さい屈折率を有するならば、可塑剤の屈折率がマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位大きくなるように選択する。
【0116】
使用してよい可塑剤は特に、一般式(VI):
【化5】

[式中、nは1以上8以下であり、R10、R11、R12は、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基である]
で示されるウレタンである。好ましくは、基R10、R11、R12の少なくとも1つは少なくとも1個のフッ素原子で置換されており、特に好ましくは、基R10は、少なくとも1個のフッ素原子を有する有機基である。
【0117】
感光性ポリマー組成物の更なる成分E)は、ラジカル安定剤、任意に触媒並びに他の助剤および/または添加剤であってよい。
【0118】
例えば“Methoden der organic Chemie” (Houben-Weyl), 第4版、第XIV/1巻、第433頁など、Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961に記載されているような、重合禁止剤および酸化防止剤が、ラジカル安定剤の例として適している。適当な物質の例は、フェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、クレゾール、ヒドロキノン、ベンジルアルコール、例えばベンズヒドロール、場合によりキノン、例えば2,5−ジ−tert−ブチルキノン、場合により芳香族アミン、例えばジイソプロピルアミンまたはフェノチアジンである。
【0119】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、2−メトキシ−p−ヒドロキノンおよびベンズヒドロールが好ましい。
【0120】
場合により、1種以上の触媒を使用してよい。触媒は、ウレタン生成を促進する触媒である。このために知られている触媒は、例えば、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジカルボン酸ジメチルスズ、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、または第三級アミン、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド(1,2−a)ピリミジンである。
【0121】
ジラウリン酸ジブチルスズ、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジカルボン酸ジメチルスズ、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド(1,2−a)ピリミジンが好ましい。
【0122】
もちろん、場合により、別の助剤または添加剤を使用してもよい。これらは、例えば、被覆技術の分野で常套の添加剤、例えば、溶媒、可塑剤、均展剤または接着促進剤であってよい。1つのタイプの添加剤を複数種、同時に使用することが有利な場合もある。もちろん、色々なタイプの添加剤を複数種使用することが有利な場合もある。
【0123】
別の好ましい態様によれば、様々な割合の単官能性書込モノマーおよび多官能性書込モノマーを有する個々の露光済みホログラフィック媒体の屈折率コントラストΔnは55%未満の差で異なることが意図され、この差は下記式:
【数1】

に従って計算される。
【0124】
工程ii)における感光性ポリマー組成物層を基材に結合させることも可能である。また、感光性ポリマー組成物層を別の基材に結合させてもよい。
【0125】
貼合わせまたは接着により、被膜と基材を互いに結合させることが好ましい。
【0126】
本発明は更に、本発明の方法によって得ることができる露光済みホログラフィック媒体に関する。
【実施例】
【0127】
実施例を参照して、本発明を以下でより詳細に説明する。
【0128】
以下で使用する用語:
以下を含んでなる感光性ポリマー組成物:
・マトリックスとしての三次元架橋有機ポリマーA)[特に好ましい三次元架橋有機ポリマーは、イソシアネート成分a)と前駆体としてのイソシアネート反応性成分b)とからなり、一般に溶液に添加されている触媒成分E)を用いて架橋されたポリマーである]、
・化学線の作用下でエチレン性不飽和化合物と重合を伴いながら反応する基(放射線硬化性基)を有し、マトリックス中に溶解または分散した状態で存在する化合物B)、
・少なくとも1種の光開始剤C)、
・任意に非光重合性成分D)、
・任意に、触媒、ラジカル安定剤、溶媒、添加剤、並びに他の助剤および/または添加剤E)。
Fは、UV開始剤C4)としてのDarocur TPOを0.1重量%含有する感光性ポリマー組成物を示し、UV弾性率GUVを測定するために使用した。
Mは、Darocur TPOを対応する可視領域用光開始剤C)に置き換えた、対応する感光性ポリマー組成物Fを含んでなるホログラフィック媒体を示す。
【0129】
測定方法:
特に記載のない限り、記載したパーセントは全て、重量パーセントに基づく。
【0130】
光重合性書込モノマーB)の屈折率と非光重合性成分D)の屈折率の測定
透過スペクトルおよび反射スペクトルから、試料の波長の関数としての屈折率nを得た。そのために、試料の約100〜300nm厚さフィルムを、酢酸ブチル中希釈溶液から、石英ガラス基材に回転塗布によって適用した。STEAG ETA-Optikの分光計CD-Measurement System ETA-RTを用いて、この層パケットの透過スペクトルおよび反射スペクトルを測定し、次いで、層厚さとnのスペクトル曲線とを、測定した透過スペクトルおよび反射スペクトルに適合させた。これは、分光計の内部ソフトウェアを用いて実施し、更に、ブランク測定において予め測定した石英ガラス基材の屈折率データを必要とした。光重合性モノマーB)の屈折率nMoまたは非重合性成分D)の屈折率nCAは、589nmのナトリウム灯の波長に基づき、従って、n20に相当する。得られた屈折率を表1に示す。
【0131】
重合体ウレタン網状構造に基づくマトリックス成分A)の屈折率の測定
屈折率nMaを測定するための感光性ポリマーマトリックスを調製するため、イソシアネート反応性成分b)を場合により60℃に加熱した。次いで、イソシアネート成分a)を添加し、Speedmixer(Hauschild)で1分間混合した。続いて、成分E)の溶液を添加し、再びSpeedmixerで1分間混合した。成分E)の溶液は、n−エチルピロリドン中10重量%溶液であった。相応の溶液使用量と得られた屈折率とを表1に示す。なお液体である組成物を、ガラス板に、所望の厚さでナイフ塗布によって適用した。
重合体網状構造に基づくマトリックスを、ガラス基材上に、厚さ約500μm〜1000μmの層として製造した。この試料について、589nmのナトリウム灯の波長での屈折率nMaを、Abbe屈折率測定器を用いてDIN 51423−2と同様に測定した。その値はn20に相当する。
【0132】
種々の成分のガラス転移温度Tの測定
ガラス転移温度Tを測定するために、約10mgの物質をアルミニウム製るつぼに量りとり、有孔蓋で閉じた。次いで、このように調製した試料について、示差走査熱量計(Mettler-Toledo製DSC822e/400)を用いてガラス転移温度を測定した。20K/分の加熱速度で3回加熱サイクルを実施した。第一サイクルの開始温度と終了温度はそれぞれ、−100℃および80℃であった。第二サイクルおよび第三サイクルの開始温度と終了温度はそれぞれ、−100℃および150℃であった。対応する冷却速度は50K/分であった。熱量計の炉および試料を、20mL/分の流量を有する窒素流でフラッシした。第三加熱サイクルにおけるガラス転移温度を、試料のTとして測定した。
【0133】
反射装置における二光束干渉によるホログラフィック媒体のホログラム特性DEおよびΔnの測定
「性能パラメーターDEおよびΔnを測定するための、光開始剤含有感光性ポリマー組成物に基づくホログラフィック媒体の製造」の部に記載されているように製造した媒体を、以下のような図1の測定装置を用いて、そのホログラム特性について試験した。
【0134】
空間フィルター(SF)およびコリメーターレンズ(CL)を用いて、He−Neレーザー光(発光波長633nm)を平行均一光に変換した。虹彩絞り(I)によって、信号光と参照光の最終断面を確立した。虹彩絞りの開口径は0.4cmであった。偏光感受型ビームスプリッター(PBS)により、レーザー光は2つの均一偏光コヒーレント光に分けられた。λ/2プレートによって、参照光の出力を0.5mWに調節し、信号光の出力を0.65mWに調節した。試料を取り除いた状態で、半導体検出器(D)を用いて出力を測定した。参照光の入射角(α)は−21.8°、信号光の入射角(β)は41.8°であった。光方向に垂直な試料から出発して角度を測定した。従って、図1によれば、αは負号(−)を有し、βは正号(+)を有する。試料(媒体)の位置で、2つの重なった光の干渉場は、試料に入射する2つの光の角2等分線と垂直である明暗縞の回折格子を生じた(反射型ホログラム)。格子周期とも称される、媒体における縞間隔Λは、約225nmであった(媒体の屈折率は約1.504と考えられる)。
【0135】
図1は、λ=633nm(He−Neレーザー)でのホログラフィック媒体試験器(HMT)の配置を示す:M=ミラー、S=シャッター、SF=空間フィルター、CL=コリメーターレンズ、λ/2=λ/2プレート、PBS=偏光感受型ビームスプリッター、D=検出器、I=虹彩絞り。α=−21.8°およびβ=41.8°は試料の外(媒体の外)で測定したコヒーレント光の入射角である。RD=ターンテーブルの基準方向。
【0136】
図1に示したようなホログラフィー実験装置を用いて、媒体の回折効率(DE)を測定した。
【0137】
以下の方法で、媒体にホログラムを書込んだ。
・露光時間tの間、両方のシャッター(S)を開放する。
・その後、シャッター(S)を閉じた状態で、媒体を5分間おいて、まだ重合されていない書込モノマーを拡散させた。
【0138】
書込んだホログラムを、以下の方法で読み取った。信号光のシャッターは閉じたままにした。参照光のシャッターを開放した。参照光の虹彩絞りを1mm未満の直径まで閉じた。これにより、媒体の回転角(Ω)の全てにおいて、光が、先に書込んだホログラムに常に完全に存在することが確実となった。コンピューター制御の下、ターンテーブルは、0.05°の角度ステップ幅でΩ最小からΩ最大までの角度範囲をカバーした。Ωは、ターンテーブルの基準方向に垂直な試料から測定した。ホログラムの書込み中に参照光および信号光の入射角が等しくなったとき、即ちα=−31.8°、β=31.8°になったときを、ターンテーブルの基準方向とした。このときΩ書込は0°である。従って、α=−21.8°およびβ=41.8°については、Ω書込は10°である。以下は一般に、ホログラムの書込み中の干渉場にあてはまる。
【数2】

θは媒体外の実験系における半角であり、ホログラムの書込み中は以下があてはまる。
【数3】

従って、この場合、θは−31.8°である。接近したそれぞれの回転角Ωで、相応の検出器Dを用いて、ゼロ次透過された光の出力を測定し、検出器Dを用いて、一次回折された光の出力を測定した。接近したそれぞれの角度Ωで、下記式の商として回折効率を得た。
【数4】

は回折光の検出器での出力であり、Pは透過光の検出器での出力である。
【0139】
前記方法によって、ブラッグ曲線(これは、回折効率ηを、書込んだホログラムの回転角Ωの関数として示す)を測定し、コンピューターに保存した。また、ゼロ次透過強度を、回転角Ωに対してプロットし、コンピューターに保存した。
【0140】
ホログラムの最大回折効率(DE=η最大)、即ちピーク値をΩ再生で測定した。この最大値を測定するために、場合により、回折光の検出器の位置を変える必要があった。
【0141】
次に、測定したブラッグ曲線と透過強度の角度変化とから、結合波理論(H. Kogelnik, The Bell System Technical Journal, 第48巻、1969年11月、第9号、第2909頁〜第2947頁参照)を用いて、感光性ポリマー層の屈折率コントラストΔnおよび厚さdを決定した。光重合の結果生じる厚さの収縮の故に、ホログラムストリップ間隔Λ’およびストリップ配向(傾き)が、干渉縞ストリップ間隔Λおよびその配向から逸脱し得ることに留意しなければならない。従って、α’または最大回折効率が得られるターンテーブルの対応角度Ω再生もまた、αまたは対応するΩ書込からそれぞれ逸脱するであろう。その結果、ブラッグ条件は変わる。この変化は、評価方法において考慮されなければならない。評価方法を以下に記載する:書込ホログラムに関連し、干渉縞に関連しない幾何学的量の全てを、破線により示す量として表す。
【0142】
Kogelnikによれば、反射型ホログラムのブラッグ曲線η(Ω)について、以下の式があてはまる。
【数5】

ここで、
【数6】

である。
【0143】
ホログラムを読み取る(「再生」する)とき、先の記載と同様に、以下があてはまる:
【数7】

【0144】
ブラッグ条件下では、「位相のずれ」DPは0である。従って、以下の式があてはまる。
【数8】

【0145】
なお未知の角度β’は、厚さ収縮しか生じないと仮定した、ホログラムの書込み中のブラッグ条件と、ホログラムの書込み中の干渉場のブラッグ条件との比較から決定することができる。このとき、以下の式があてはまる。
【数9】

νは回折格子厚さであり、ξは離調パラメータであり、Ψ’は書込んだ屈折率格子の配向(傾き)である。α’およびβ’は、ホログラムの書込み中の干渉場の角度αおよびβに相当するが、媒体において測定され、(厚さ収縮後)ホログラムの回折格子に適用することができる。nは、感光性ポリマーの平均屈折率であり、1.504に設定した。λは、真空でのレーザー光の波長である。
【0146】
ξ=0に対する最大回折効率(DE=η最大)は以下である:
【数10】

【0147】
図2は、角度離調ΔΩに対してプロットした測定透過出力P(実線、右側のy軸)、(検出器の測定可能範囲で)角度離調ΔΩに対してプロットした測定回折効率(黒丸、左側のy軸)、およびKogelnik理論に適合させたもの(破線、左側のy軸)を示す。
【0148】
回折効率、理論ブラッグ曲線および透過強度の測定データを、角度離調とも称される中心回転角:
【数11】

に対してプロットし、図2に示す。
【0149】
DEはわかっているので、Kogelnikによる理論ブラッグ曲線の形状は、感光性ポリマー層厚さd’のみによって決まる。次いで、DEの測定値と理論値とが常に一致するように、与えられた厚さd’に対し、DEを介してΔnを補正する。そして、理論ブラッグ曲線の第一二次極小の角度位置が透過強度の第一二次極大の角度位置と一致し、加えて、理論ブラッグ曲線と透過強度の半値全幅(FWHM)が一致するまで、d’を調整する。
【0150】
反射型ホログラムの方向はΩスキャンによる再生時に付随して回転するが、回折光の検出器は測定可能な角度範囲でしか検出できないので、幅広のホログラム(小さいd’)のブラッグ曲線は、適当に検出器の位置を調節しても、Ωスキャンで完全には記録されず、中心領域しか記録されない。従って、層厚さd’を調整するために、ブラッグ曲線に相補的である透過強度の形状を付加的に使用する。
【0151】
図2は、角度離調ΔΩに対する、結合波理論に従ったブラッグ曲線ηのプロット(破線)、測定回折効率のプロット(黒丸)、および透過出力(実線)を示す。
【0152】
ホログラムの書込み中にDEが飽和値に達する、入射レーザー光の平均エネルギー線量を測定するため、1つの組成物について、この手順を、様々な媒体で、様々な露光時間tに対して、場合により数回繰り返した。平均エネルギー線量Eは、角度αおよびβに調整された2つの部分光(P=0.50mWの参照光およびP=0.65mWの信号光)の出力、露光時間tおよび虹彩絞り直径(0.4cm)から、下記式に従って得られる。
【数12】

【0153】
使用される角度αおよびβで、媒体において同じ出力密度が達成されるように、部分光の出力を調節した。
【0154】
態様として、532nmの放射波長λを有する緑色レーザーを用いて、図1に示した装置に相当する試験も実施した。ここで、α=−11.5°、β=33.5°、P=1.84mW、P=2.16mW。
【0155】
本発明における振動レオメーターによるUV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GUVの測定
なお液体である組成物(F)を、(50℃に予熱した)レオメーターのプレート・プレート測定システム(炉モデルCTD 450L+R+L+PP/GLを備え、プレート・プレート測定システムに透明基板を備えたAnton Paar製PhysicaモデルMCR 301)に導入した。次いで、以下の条件で、初期には時間の関数として、感光性ポリマー組成物のマトリックスの硬化を測定した:
・プレート間隔250μm、プレート直径12mm、
・一定角振動数ω62.8rad/秒および制御された対数変形振幅勾配10%〜0.01%での振動測定モード、
・温度50℃、0ニュートンに設定された法線力調整。
・少なくとも2時間の測定時間にわたって、または一定値G’に達するまで、貯蔵弾性率G’を記録した。この値をGと称する。
【0156】
感光性ポリマーのUV硬化には、標準フィルター320nm〜500nmを備えた100W高圧水銀灯OmniCure Series 1000を用いた。
・透明な下板を通して感光性ポリマーを水銀灯で露光した。(測定室に導入されており、透明ガラス板に光を導く)導波管の出口での(EXFO Radiometer R2000を用いて測定される)出力密度が600mW/cmとなるように、水銀灯出口の開口部を調節した。
・一定角振動数ω62.8rad/秒および制御された対数変形振幅勾配0.01%〜0.001%での振動測定モード、
・温度50℃、0ニュートンに設定された法線力調整。
・少なくとも15分間の測定時間にわたって、または一定値G’に達するまで、UV露光中の貯蔵弾性率G’を記録した。この値をGUVと称する。
【0157】
典型的な測定曲線の例を図3に示す。図3は、貯蔵弾性率G’に基づく、マトリックス網状構造の硬化曲線(左側)および続くUV架橋曲線(右側)を示す。
【0158】
実施例に使用した組成物成分の説明:
使用したイソシアネート(成分a))
Desmodur(登録商標) XP 2599は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の製品であって、Acclaim 4200へのヘキサンジイソシアネートの完全アロファネートである。NCO含量:5.6〜6.4%(成分a1))。
Desmodur(登録商標) XP 2747は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の製品であって、約280g/molの数平均分子量を有するポリプロピレングリコールへのヘキサンジイソシアネートの完全アロファネートである。NCO含量:16.5〜17.3%(成分a2))。
Desmodur(登録商標) XP 2410は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の製品であって、イミノオキサジアジンジオンの割合が少なくとも30%のヘキサンジイソシアネート系ポリイソシアネートである。NCO含量:23.5%(成分a3))。
Desmodur(登録商標) XP 2580は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の製品であって、ヘキサンジイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネートである。NCO含量:約20%(成分a4))。
【0159】
使用したイソシアネート反応性成分(成分b))
Acclaim(登録商標) 4200は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の市販品であって、4000g/molの数平均分子量を有するポリプロピレンオキシドである(ポリオールb1))。
【0160】
ポリオールb2)は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の実験生成物であって、その調製方法を以下に示す。
【0161】
ポリオールb2)の調製:
撹拌機を備えた20L容の反応槽に、2475gのTerathane(登録商標) 650(650g/molの数平均分子量を有するポリテトラヒドロフラン、BASF SE(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)の製品)を計量添加し、452.6mgのDMC触媒を添加した。次いで、約70rpmで撹拌しながら105℃に加熱した。真空引きおよび窒素導入を3回実施することによって、空気を窒素に置き換えた。撹拌速度を300rpmに上げた後、真空ポンプを稼働させながら約0.1barの圧力で、下から窒素を混合物に57分間流通させた。続いて、窒素を用いて0.5barの圧力にし、100gのエチレンオキシド(EO)および150gのPOを同時に添加して重合を開始させた。それによって、圧力は2.07barに上昇した。10分後、圧力は0.68barに低下し、更に5.116kgのEOおよび7.558kgのPOを混合物として、2.34barで1時間53分にわたって計量添加した。エポキシドの計量添加が完了してから31分後、残圧2.16barで減圧を適用し、完全に脱気した。7.5gのIrganox 1076を添加することにより生成物を安定化させた。僅かに濁った(TE(F)値330)粘性液体として生成物(OH価:27.1mgKOH/g、25℃での粘度:1636mPas)を得た。
【0162】
ポリオールb3)は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の実験生成物であって、Terathane(登録商標) 1000(1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール、BASF SE(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)の製品)およびε−カプロラクトンのブロックコポリマーである。その調製方法を以下に示す。
【0163】
ポリオールb3)の調製:
1L容のフラスコに、まず、0.18gのオクタン酸スズ、374.8gのε−カプロラクトン、および374.8gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量500g/molOH)を導入し、120℃に加熱し、固形分(不揮発性成分の割合)が99.5重量%以上になるまでこの温度で保った。次いで冷却し、ワックス状固体として生成物を得た。
【0164】
ポリオールb4)は、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の実験生成物である。その調製方法を以下に示す。
【0165】
ポリオールb4)の調製:
撹拌機を備えた20L容の反応槽に、2465gのTerathane(登録商標) 650を計量添加し、450.5mgのDMC触媒を添加した。次いで、約70rpmで撹拌しながら105℃に加熱した。真空引きおよび窒素導入を3回実施することによって、空気を窒素に置き換えた。撹拌速度を300rpmに上げた後、真空ポンプを稼働させながら約0.1barの圧力で、下から窒素を混合物に72分間流通させた。続いて、窒素を用いて0.3barの圧力にし、242gのプロピレンオキシド(PO)を添加して重合を開始させた。それによって、圧力は2.03barに上昇した。8分後、圧力は0.5barに低下し、更に12.538kgのPOを、2.34barで2時間11分にわたって計量添加した。POの計量添加が完了してから17分後、残圧1.29barで減圧を適用し、完全に脱気した。7.5gのIrganox 1076を添加することにより生成物を安定化させた。無色の粘性液体として生成物(OH価:27.8mgKOH/g、25℃での粘度:1165mPas)を得た。
【0166】
使用した触媒(成分E))
Fomrez(登録商標) UL28:ウレタン化触媒、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、Momentive Performance Chemicals(米国コネティカット州ウィルトン)の市販品、N−エチルピロリドン中10%濃度溶液として使用(成分E1))。
【0167】
使用した放射線硬化性化合物(成分B))
成分B1):ホスホロチオイルトリス(オキシ−4,1−フェニレンイミノカルボニルオキシエタン−2,1−ジイル)トリアクリレート
【化6】

500mL容の丸底フラスコに、まず、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.1g、トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェートの酢酸エチル中27%濃度溶液(Desmodur RFE、Bayer MaterialScience AGの製品)213.07gを導入し、60℃に加熱した。次いで、42.37gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満になるまで混合物を60℃で維持した。続いて冷却し、酢酸エチルを完全に真空除去した。半結晶性固体として、生成物を得た。屈折率nMoは1.579であった。
【0168】
成分B2):2−({[3−(メチルスルファニル)フェニル]カルバモイル}オキシ)エチルプロプ−2−エノエート
【化7】

100mL容の丸底フラスコに、まず、0.02gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、0.01gのDesmorapid Z、および11.7gの3−(メチルチオ)フェニルイソシアネートを導入し、60℃に加熱した。次いで、8.2gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満になるまで混合物を60℃で維持した。続いて冷却した。無色液体として、生成物を得た。屈折率nMoは1.576であった。
【0169】
成分B3):Sartomer(登録商標) SR349、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート
【化8】

Sartomer(登録商標) SR349は、Sartomer Company(米国19341ペンシルヴェニア州トーマスジョーンズウェイエクストン502)の製品である。屈折率n20=nMoは1.543(メーカーのデータシートにおけるデータ)であった。
【0170】
成分B4):3−[(2−メチルアクリロイル)オキシ]−2−[(3−メチルチオフェニルカルバモイル)オキシ]−プロピルナフタレン−1−カルボキシレート
【化9】

と2−[(2−メチルアクリロイル)オキシ]−1−{[(3−メチルチオフェニルカルバモイル)オキシ]メチル}エチルナフタレン−1−カルボキシレート
【化10】

との混合物
撹拌機および還流冷却器を備えた三ッ口フラスコに、60℃で、まず、9.4gの実施例1.1の生成物、および1mgのジラウリン酸ジブチルスズを導入し、空気をゆっくりと流通させた。発熱条件下、5.0gのm−メチルチオフェニルイソシアネートを25分間にわたって滴加した。21時間撹拌し、0%のNCO含量を有する透明な黄色の生成物を得た。屈折率nMoは1.617であった。
【0171】
成分B5):{[4−({[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)オキシ]カルボニル}アミノ)フェノキシ]ホスホロチオイル}ビス(オキシベンゼン−4,1−ジイルカルバモイルオキシエタン−2,1−ジイル)ビスアクリレート
【化11】

2L容の丸底フラスコに、まず、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.5g、ジラウリン酸ジブチルスズ(Desmorapid Z、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))0.25g、およびトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェートの酢酸エチル中27%濃度溶液(Desmodur(登録商標) RFE、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)の製品)1.00kgを導入し、60℃に加熱した。次いで、95.3gのヘキサフルオロイソプロパノールを滴加し、8時間この温度を保った。続いて、133.5gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満になるまで混合物を60℃で維持した。その後冷却し、酢酸エチルを完全に真空除去した。無色の油状物として、生成物を得た。屈折率nMoは1.584であった。
【0172】
成分B6):(4−メチルベンゼン−1,3−ジイル)ビス[カルバモイルオキシ−3−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロパン−2,1−ジイル]ビスアクリレートと(4−メチルベンゼン−1,3−ジイル)ビス[カルバモイルオキシ−3−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロパン−1,2−ジイル]ビスアクリレートと類似異性体の混合物
【化12】

前駆体成分B6.1:還流冷却器および撹拌機を備えた三ッ口フラスコに、まず、430.2gのDenacol EX 142(Nagase-Chemtex(日本国))、129.7gのアクリル酸、1.18gのトリフェニルホスフィン、および0.0056gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを導入した。次いで、空気をゆっくりと流通させ、サーモスタットを用いて60℃に調節した。続いて、90℃で24時間撹拌した。157.8mgKOH/gのOH価を有する透明な液体を得た。
還流冷却器および撹拌機を備えた三ッ口フラスコに、まず、前駆体成分B6.1の21.3g、および2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートとの混合物(Desmodur T80、Bayer Material Science AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))の5.2gを導入した。次いで、空気をゆっくりと流通させ、サーモスタットを用いて60℃に調節した。初期の発熱反応後、生成物を60℃で24時間撹拌した。0%のNCO含量を有し、光沢のある無色透明の生成物を得た。屈折率nMoは1.611であった。
【0173】
使用した光開始剤組成物(成分C))
組成物ニューメチレンブルー+CGI 909(成分C1))の説明:
ビーカーにおいて、0.1gのニューメチレンブルー、および1.00gのCGI 909((テトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシル)ボレート、[1147315-11-4]、Ciba Inc.(スイス国バーゼル)によって調製された実験生成物)を、暗闇または適当な照明の下で、3.50gのN−エチルピロリドンに溶解した。この溶液の相応の重量パーセントを、実施例の媒体を製造するために使用した。
【0174】
組成物サフラニンO+CGI(成分C2))の説明:
ビーカーにおいて、0.1gのサフラニンO、および1.00gのCGI 909((テトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシル)ボレート、[1147315-11-4]、Ciba Inc.(スイス国バーゼル)によって調製された実験生成物)を、暗闇または適当な照明の下で、3.50gのN−エチルピロリドンに溶解した。この溶液の相応の重量パーセントを、実施例の媒体を製造するために使用した。
【0175】
組成物ニューメチレンブルー+サフラニンO+CGI 909(成分C3))の説明:
成分C3は、成分C1と成分C2の1:1混合物である。この溶液の相応の重量パーセントを、実施例の媒体を製造するために使用した。
【0176】
UV開始剤TPO(成分C4))の説明:
Darocur(登録商標) TPO(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)は、Ciba Inc.(スイス国バーゼル)の製品である。実施例の媒体を製造するために、この製品の相応の重量パーセントを、暗闇または適当な照明の下で計量添加した。
【0177】
使用した非光重合性成分(成分D))
成分D1)ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル)−(2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイル)ビスカルバメートの説明:
50mL容の丸底フラスコに、まず、0.02gのDesmorapid Z、および3.6gの2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート(TMDI)を導入し、60℃に加熱した。次いで、11.9gの2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタン−1−オールを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満になるまで混合物を60℃で維持した。続いて冷却した。無色の油状物として、生成物を得た。屈折率n20=nCAは1.384であった。
【0178】
成分D2)2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニルブチルカルバメートの説明:
1L容の丸底フラスコに、まず、0.50gのDesmorapid Z、および186gのn−ブチルイソシアネートを導入し、60℃に加熱した。次いで、813gの2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノナノールを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満になるまで混合物を60℃で維持した。続いて冷却した。無色の油状物として、生成物を得た。屈折率n20=nCAは1.356であった。
【0179】
試料および実施例の媒体の組成および製造
屈折率およびガラス転移温度を測定するための試料の製造
屈折率nMaを測定するために、感光性ポリマー組成物のマトリックス成分A)として下記三次元架橋ポリマーを調製し、先に記載した方法に従って測定した。同様に、光重合性モノマー成分B)または非光重合性成分D)の屈折率nMoまたはnCAを、先に記載したように実験的に測定した。表1に、厳密な組成、および結果を示す。NCO:OHは、それぞれの成分A)における成分a)と成分b)の官能基の当量比を意味する。
【0180】
【表1】

【0181】
UV架橋前およびUV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GおよびGUVを測定するための、UV開始剤含有感光性ポリマー組成物の調製
UV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GUVを測定するための感光性ポリマー組成物を調製するため、成分B)、成分C4)(成分B)中に既に予備溶解させておいてもよい)、および任意に添加剤を、場合により60℃で、イソシアネート反応性成分b)に溶解した。場合により、乾燥炉において60℃で10分以下の時間加熱した。次いで、イソシアネート成分a)を添加し、Speedmixerで1分間混合した。続いて、成分E1)の酢酸ブチル中溶液を添加し、Speedmixerで再び1分間混合した。酢酸ブチル中の成分E1)の濃度は10重量%であった。この溶液を、表2に記載した量で使用した。
【0182】
表2は、UV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GUVを測定するための感光性ポリマー組成物の検討した例を示す。これらの例には、組成における限定的な特徴はない。これらの感光性ポリマー組成物は、「振動レオメーターによるUV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GUVの測定」の部に記載した方法に従って調製した。
【0183】
【表2】

【0184】
屈折率コントラストΔnを測定するための、光開始剤含有感光性ポリマー組成物に基づくホログラフィック媒体の製造
厚さ1mmのガラス板の間に感光性ポリマーが層として存在するホログラフィック媒体(表3参照)を、感光性ポリマー組成物から製造した。このタイプのホログラフィック媒体は特に、「反射装置における二光束干渉によるホログラフィック媒体のホログラム特性DEおよびΔnの測定」の部に記載した方法に従って、その特性を測定するのに適しているにすぎず、従って、特許請求の範囲において、このタイプのホログラフィック媒体に限定することを意味しているわけではない。ただし、使用した感光性ポリマー組成物は、UV架橋後の感光性ポリマーの弾性率GUV、およびΔnの最大変化については特許請求した特性を満たす。
【0185】
ホログラフィック媒体の例示的な製造
ホログラフィック媒体を製造するため、成分B)、成分C)(成分B)中に既に予備溶解させておいてもよい)並びに任意に助剤および添加剤を、場合により60℃で、暗闇の中でイソシアネート反応性成分b)に溶解し、次いで、20μmまたは10μmの寸法を有するガラスビーズ(例えばWhitehouse Scientific Ltd(英国CH3 7PBチェスター市ワバートン))を添加し、十分混合した(Speedmixer)。場合により、乾燥炉において60℃で10分以下の時間加熱した。続いて、イソシアネート成分a)を添加し、Speedmixerで再び1分間混合した。その後、成分E1)の溶液を添加し、Speedmixerで再び1分間混合した。得られた混合物を1mbar未満で撹拌しながら30秒以下の時間脱気し、その後、50×75mm寸法のガラス板に分配し、別のガラス板でそれぞれ覆った。15kgの重さを数時間(通常一晩)かけて、PU組成物を硬化させた。一部については、媒体を、光を通さないパッケージの中で、60℃で更に2時間、後硬化させた。マトリックスの出発粘度および硬化速度が異なる種々の組成物は、同じ感光性ポリマー層厚さd’を常にはもたらさないので、d’は、書込んだホログラムの特性に基づいて、試料ごとに独立して測定した。
【0186】
【表3】

【0187】
組み合わせたGUVおよびΔn変化の結果
線量E(mJ/cm)での、G(MPa)、GUV(MPa)、ΔnおよびΔn変化(%)について以下の測定値を得た。それらを表4aおよび表4bに示す。*印付きのΔn値は、λ=633nmに代えてλ=532nmで測定した。
【0188】
【表4a】

【0189】
【表4b】

【0190】
印象深いことに、単官能性モノマー(成分B))含有混合物における多官能性モノマーの相対含量を変化させた際の、ホログラフィック媒体のΔn変化値およびUV架橋後の感光性ポリマー組成物の弾性率GUV値から、どのようにすれば、ホログラム特性Δnに有意な影響を与えずに、UV露光後の感光性ポリマーの機械的性質を、軟質ゴム様コンシステンシーから高機械的硬度まで調節できるのかがわかる。多官能性書込モノマーのみを含有する混合物では、力学的弾性率の柔軟な設定を実現することはできなかった。
【0191】
得られた結果を、図4〜図19および図A〜Dにも示す。これらの図は、組成物全体に基づいた光重合性多官能性成分Bの割合を有する媒体Mについての、UV開始剤含有組成物FのGUV変化(白抜き記号、左側のy軸)、Δn(λ=633nmで書込んだホログラム、黒塗り記号、右側のy軸)および/またはΔn(λ=532nmで書込んだホログラム、半黒塗り記号、右側のy軸)を示す。組成物全体に基づいた多官能性成分Bおよび単官能性成分Bの総割合は、表4aおよび表4bに示す。
【符号の説明】
【0192】
M ミラー
S シャッター
SF 空間フィルター
CL コリメーターレンズ
λ/2 λ/2プレート
PBS 偏光感受型ビームスプリッター
D 検出器
I 虹彩絞り
α −21.8°
β 41.8°

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜160MPaの範囲の弾性率GUVおよび0.008以上のΔnを有する感光性ポリマー組成物含有露光済みホログラフィック媒体の製造方法であって、
i)A)非晶質網状構造としてのマトリックスポリマー、
B)単官能性書込モノマーと多官能性書込モノマーとの組み合わせ、
C)光開始剤組成物、
D)任意に非光重合性成分、
E)任意に、触媒、ラジカル安定剤、溶媒、添加剤、並びに他の助剤および/または添加剤
を含んでなる感光性ポリマー組成物を供給し、
ii)感光性ポリマー組成物を媒体形状にし、
iii)ホログラムを書込むために、媒体をホログラフィック露光処理に付し、
iv)ホログラムを固定するために、媒体全体を紫外線露光し、
書込モノマーがアクリレート官能化化合物および/またはメタクリレート官能化化合物であり、感光性ポリマー組成物中の書込モノマーの総量が30重量%〜45重量%であり、未露光感光性ポリマー組成物が0.7MPa未満の弾性率Gを有し、書込モノマー総含量に対して、多官能性書込モノマーの高い相対的割合によって高い弾性率を得、単官能性書込モノマーの高い相対的割合によって低い弾性率を得るというように、書込モノマー総含量に基づいた単官能性書込モノマーの相対的割合と多官能性書込モノマーの相対的割合の比により、露光済み感光性ポリマー組成物の弾性率GUVが、意図した範囲0.1〜160MPaに調節される
方法。
【請求項2】
露光済みホログラフィック媒体が、0.3〜40MPa、好ましくは0.7〜15MPaの範囲の弾性率GUVを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2種の書込モノマーそれぞれの屈折率が、マトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位大きくなるように、またはマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位小さくなるように、書込モノマーおよびマトリックスポリマーを選択することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
マトリックスポリマーが特にNCO基含有成分とNCO反応性成分との反応によるポリウレタンであり、2つの成分の少なくとも1つが200g/mol超、好ましくは350g/mol超の当量を有し、更に好ましくはポリマー主鎖に環式構造が生じないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応した状態のポリウレタンが、−45℃未満のガラス転移温度Tを有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
単官能性書込モノマーが、一般式(II):
【化1】

[式中、R、Rは、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基である]
で示され、好ましくは15℃未満のガラス転移温度Tを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
多官能性書込モノマーが、一般式(III):
【化2】

[式中、nは2以上4以下であり、R、Rは、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基である]
で示され、好ましくは1.50超の屈折率n20を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
感光性ポリマー組成物が可塑剤を更に含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
両方の書込モノマーがマトリックスポリマーより大きい屈折率を有するならば、可塑剤の屈折率がマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位小さくなるように、両方の書込モノマーがマトリックスポリマーより小さい屈折率を有するならば、可塑剤の屈折率がマトリックスポリマーの屈折率より少なくとも0.05単位大きくなるように、可塑剤を選択することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
使用される可塑剤が、一般式(VI):
【化3】

[式中、nは1以上8以下であり、R10、R11、R12は、水素、および/または互いに独立して未置換のまたは場合によりヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐、環式または複素環式の有機基であり、好ましくは基R10、R11、R12の少なくとも1つは少なくとも1個のフッ素原子で置換されており、特に好ましくはR10が少なくとも1個のフッ素原子を有する有機基である]
で示されるウレタンであることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
光開始剤組成物が、アニオン性染料、カチオン性染料または中性染料、および共開始剤を含んでなることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
様々な割合の単官能性書込モノマーおよび多官能性書込モノマーを有する個々の露光済みホログラフィック媒体のΔnが55%未満の差で異なり、この差が下記式:
【数1】

に従って計算されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程ii)における感光性ポリマー組成物層を基材に結合させることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
感光性ポリマー組成物層を別の基材に結合させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
貼合わせまたは接着により、被膜と基材を互いに結合させることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの方法によって得ることができる露光済みホログラフィック媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2013−510333(P2013−510333A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537352(P2012−537352)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066456
【国際公開番号】WO2011/054749
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】