調軸機能付き側方光入出力装置及びその調整方法
【課題】 簡易な構成、被入力光ファイバの曲げ方向を調整するだけの簡便な方法により、プローブ光ファイバの光軸調整をする。
【解決手段】 被入力光ファイバ固定領域AのV溝1Aに固定する被入力光ファイバF1の中心軸を回転の中心として調軸領域Bの平面上で被入力光ファイバF1の曲げ方向を変化させる。被入力光ファイバF1の曲げ方向が変化すると、光ファイバの断面に扁平が生じ、V溝端部における被入力光ファイバF1の中心軸が微小に変化する。これを利用してプローブ光ファイバの素線部先端との位置関係を調軸する。
【解決手段】 被入力光ファイバ固定領域AのV溝1Aに固定する被入力光ファイバF1の中心軸を回転の中心として調軸領域Bの平面上で被入力光ファイバF1の曲げ方向を変化させる。被入力光ファイバF1の曲げ方向が変化すると、光ファイバの断面に扁平が生じ、V溝端部における被入力光ファイバF1の中心軸が微小に変化する。これを利用してプローブ光ファイバの素線部先端との位置関係を調軸する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を入出力するために側方から付き当てるプローブ光ファイバの光軸を最適な位置に調整する調軸機能付き側方光入出力装置及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気伝導によるメタルケーブル伝送系では、伝導体であるメタル部に他のメタル線を接触させることで導通させ、信号の分波や合波ができ、試験や通話等の保守運用業務に適用することができる。通常、メタルケーブルには絶縁材料による被覆が施されてされているが、導通させる際にこの被覆の一部を除去し、導通を図った後に絶縁テープ等で保護することで、他のメタルケーブルとの接触や地絡を防ぐ等の手法が容易に施工することができる。このように、メタルケーブルは優れた柔軟性や保守運用性、施工性を有している。
【0003】
一方、光伝導による光ファイバ伝送系では、光ファイバのコアを伝搬する光を別の光ファイバに分波したり、他の光ファイバからの光を合波したりすることは非常に困難であることから、メタルケーブルに比べて保守運用性に劣るため、補完するためのいくつかの手法が採られている。以下に従来の手法や技術を述べる。
【0004】
1つ目は、予め、光ファイバ線路に光合分波カップラを挿入しておく例がある(非特許文献1参照)。光合分波カップラは例えば2入力2出力のファイバ溶融型カップラ等があり、一方の入力光を2出力に分波する、もしくは2入力の光を1出力もしくは2出力に合波することができる。
【0005】
しかしながら、光合分波カップラが挿入されていない光ファイバ通信路に適用する場合には、一端、光ファイバ通信路を切断して光合分波カップラを挿入する必要があり、その際通信が途切れることになる。
2つ目は、光ファイバ心線対照器(非特許文献2参照)や光ファイバ回線使用状況判別装置(特許文献1参照)の例がある。光ファイバ通信路の一端から試験光を入射し、光ファイバ通信路途中の光ファイバを曲げ、曲げ部から漏洩する光を、光電変換半導体素子で受光し電気変換を行なって、試験光の有無やその状態を識別するものであり、光ファイバ通信路の保守運用業務に非常に有効な技術のひとつとして活用されている。
【0006】
しかしながら、ここで用いられている技術は光ファイバ中を伝搬する光の分波のみである。また、その場で電気信号に変換することが可能な目的に用いる装置であるため、光ファイバのコア面積に比べて受光面積の大きな光電変換半導体素子で漏洩光を受光することができ、精密な光学的な位置調整を行なうことなく高効率な結合系を構成することが可能である。
【0007】
3つ目は、光ファイバ曲げ部と外部の光ファイバを光電変換することなく光学的に結合し信号光や試験光を入出力する例がある(特許文献2参照)。この例の手法では、光ファイバ曲げ部から漏洩する光を光ファイバプローブに結合すると共に、光ファイバプローブから放出された光を光ファイバ曲げ部から光ファイバのコアに入射・結合する。双方向伝送の光ファイバ伝送路の一時的もしくは永続的な迂回を実現できる手法として期待できる技術である。
【0008】
しかしながら、光ファイバのコアの直径は10μm前後であり、光ファイバプローブへの結合領域や光ファイバプローブからの放出領域が狭いことから、レンズ等の光学素子を用いた受光面の拡大と集光が有効であるが、高い結合光学系を構成するためには0.1μmオーダの光軸調整が必要であり、顕微鏡などの拡大観察手段が必要となる。
【0009】
更に、光ファイバの曲げ形状や光ファイバ被覆状況の個体毎のばらつきにより、光ファイバプローブへの結合光学系として最適な位置が定まらない。このことから、都度毎に光軸調整を必要とするので、精密な光学微動機能を有する装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-25052号公報
【特許文献2】特開2009-25210号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nobuo Tomita, Hidetoshi Takasugi, Naoyuki Atobe, Ikuo Nakamura, Fumio Takaesu, Seiji Takashima, ”Design and Performance of a Novel Automatic Fiber Line Testing System With OTDR for Optical Subscriber Loops,” J. Lightwave Technol., vol.12, no.5, pp.717-726, 1994.
【非特許文献2】山下、羽田野、小山田、徳田「曲げ法を用いた光心線対照器の結合効率」信学論、vol.J66-B, no.11, 1983.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上述べたように、高い結合光学系を構成するためには0.1μmオーダの光軸調整が必要であり、顕微鏡などの拡大観察手段が必要となる。
更に、光ファイバの曲げ形状や光ファイバ被覆状況の個体毎のばらつきにより、光ファイバプローブへの結合光学系として最適な位置が定まらず、都度毎に光軸調整を必要とするので、精密な光学微動機能を有する装置が必要である。
【0013】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、簡易な構成の面上で、被入力光ファイバの曲げ方向を調整するだけの簡便な方法により、プローブ光ファイバの先端との位置関係を保持した状態で調整作業が可能となる調軸機能付き側方光入出力装置及びその調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る調軸機能付き側方光入出力装置は、以下のような態様の構成とする。
(1)上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックと、前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定するための固定手段と、前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出するための角度検出手段とを具備する態様とする。
【0015】
(2)(1)の構成において、前記被覆付き光ファイバと前記プローブ光ファイバを、前記基盤ブロック上で固定する押さえ部とを備える態様とする。
(3)(1)の構成において、前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整する態様とする。
【0016】
(4)(1)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置する態様とする。
【0017】
(5)(1)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸する態様とする。
【0018】
本発明に係る調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法は、以下のような態様の構成とする。
(6)上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックを用いて、前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定し、前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出し、前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整する態様とする。
【0019】
(7)(6)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置する態様とする。
【0020】
(8)(6)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸する態様とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明により、光ファイバを切断することなく、短時間でかつ高効率に、光信号を取り出したり、入力したりすることができる。特に、従来は0.1μmレベルの3次元方向の精密で複雑な位置調整が可能なマイクロマシン機能や視認するための拡大手段を具備した装置を実装する必要があるのに対し、本発明は1軸(z軸)のみの調軸に簡素化できることと、その0.1μmレベルの調軸精度を光ファイバの固定角度の調整で簡易化できことから、ツールの低廉化や作業時間短縮が期待できる。
【0022】
更に、光ファイバ曲げ部とプローブ光ファイバを高効率な入出力結合系を簡易に構成することが可能となり、光ファイバを切断することなく通信線路の二重化を実現することができ、光ファイバを切断することなく心線対照光を挿入することができるなど、高い保守運用性を有する光ファイバネットワークを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図。
【図2】(a)は図1に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、(b)は図1に示す調軸領域(B区間)の断面図、(c)は図1に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図。
【図3】同一V溝上の異径心線の軸ズレ距離を示す断面図。
【図4】同一V溝上の異径心線の軸ズレ距離を示す側面図。
【図5】角度を有する被覆付き光ファイバ曲げ部のコア軸ズレ(断面図)を示す図。
【図6】プローブ光ファイバ先端位置と結合効率の相関を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図。
【図8】図7に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、(b)は図3に示す調軸領域(B区間)の断面図、(c)は図3に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図。
【図9】角度目盛までの距離dと角度目盛間隔wdを示す図。
【図10】被覆押さえ部の圧縮による被覆の偏平による軸ズレ距離(断面図)を示す図。
【図11】被覆押さえ部圧縮偏平による軸ズレ距離の変化特性を示す図。
【図12】角度βと角度目盛wdの相関(屈曲部から固定部までのファイバ長d依存性)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図、図2(a)は図1に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、図2(b)は図1に示す調軸領域(B区間)の断面図、図2(c)は図1に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図である。
【0025】
図1及び図2において、基盤ブロック2は被入出力光ファイバF1の固定領域(A区間)、調軸領域(B区間)、プローブ光ファイバF2の固定領域(C区間)から構成されている。
上記基盤ブロック2のA区間上面には被覆付光ファイバF1を収納することができるV溝1Aが形成されている。A区間とB区間の上部表面の境界領域は、曲げ半径Rの曲率で緩やかに角が取られて、B区間上部の傾斜に連続的に繋がっており、V溝1Aに収納された被覆付光ファイバF1が半径Rの形状で曲げられ、B区間上部に沿うように導かれる。B区間斜面には、導かれた被覆付光ファイバF1を、V溝端部を中心軸として任意の角度に固定できるファイバ固定部5と、その角度の目安となる角度目盛4が設けられている。C区間上面には、先端が素線部6に施されたプローブ光ファイバF2を収納することができるV溝1Cが形成されている。
【0026】
図3は、同一直線上に配列されたA区間上部のV溝1A及びC区間上部のV溝1Cに、それぞれ被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2の被覆のない素線部6が収容された位置関係を説明するための断面図である。
被覆付光ファイバF1の半径をr1、プローブ光ファイバF2の素線部6の半径をr2、被覆付光ファイバF1の中心(コア中心に相当)とV溝1Aの底部までの距離をh1、プローブ光ファイバF2の素線部6の中心(コア中心に相当)とV溝1Cの底部までの距離をh2、V溝1A,1Cの拡がり角をθとする。幾何学的にこれらの関係は、
【0027】
【数1】
で表すことができる。
図4は、同一直線上に配列されたA区間上部のV溝1A及びC区間上部のV溝1Cに、それぞれ被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2の被覆のない素線部6が収容された位置関係を説明するための側面図である。被覆付光ファイバF1は半径Rの曲率で曲げられており、プローブ光ファイバF2は図4に示すように被覆付光ファイバF1の曲げ部に突き当てられている。図4からわかるように、被覆付光ファイバF1の中心に位置するコアは、曲げ形状に沿ってその中心に存在し、プローブ光ファイバF2の中心に位置するコアの延長線上と理想的には交わることになる。
【0028】
しかしながら、被覆付光ファイバF1の被覆は一般的にUV硬化樹脂などの材料で構成されているため、その半径r1の精度はr2に比べて個体差も大きく、上部からの押さえ圧力によっても変化するため、必ずしも交わるとは限らない。
図5は、曲げられた被覆付光ファイバF1の漏れ光をプローブ光ファイバF2で受光する際の、プローブ光ファイバ先端位置の結合効率の相関を示す図である。これより、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面(XY軸平面)の法線方向(Z軸方向)の軸ズレによる結合効率の変化が大きいことがわかる。これは、図4で示す系では、被覆付光ファイバF1とプローブ光ファイバF2は、それぞれ同一直線上に配置されたV溝1A,1C上に収容されていることから、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面(図5のXY平面に相当)と、プローブ光ファイバ先端の軸は、同一平面上にあるか、もしくは平行状態にあるとみなせる。平行状態にある場合は、図5におけるZ軸の軸ズレを調整することで、被覆付光ファイバの曲げられた平面とプローブ光ファイバ先端の軸は同一平面上に配置されることになる。
【0029】
図6は、角度を有する被覆付き光ファイバF1の曲げ部のコア軸ズレを示す図である。B区間上部の被覆付光ファイバF1の固定角度βを調整することでその軸ズレを調整することができる。被覆付光ファイバF1の中心はそのコア位置に相当することから、プローブ光ファイバF2の中心(コア中心)との軸ズレ距離は図のようにwで示される。このように、V溝個所(に配置された被覆付光ファイバの中心)を軸として曲げ方向(固定角度β)を変化させることで、曲げられた平面(図5のXY平面に相当)は変化するが、プローブ光ファイバF2の先端の軸との平行関係は崩れない。したがって、固定角度βを調整することで、wがゼロになる個所、すなわち、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面とプローブ光ファイバF2の先端の軸は同一平面上に配置となる個所が必ず存在する。この時のwは幾何学的に導出され、
【0030】
【数2】
となる。
このように、固定角度βを調整することにより、軸ズレ距離wを最小化することで、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面とプローブ光ファイバF2の先端の軸は同一平面上に配置することで、結合効率の向上が期待できる。
【0031】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図、図8(a)は図7に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、図8(b)は図7に示す調軸領域(B区間)の断面図、図8(c)は図7に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図である。尚、図7及び図8において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分を中心に説明する。
【0032】
図7及び図8に示す実施形態では、図1及び図2に示した第1の実施形態の構成に押さえ部3を付加した構成となっている。
A区間に収納された被覆付光ファイバF1及びC区間に収納されたプローブ光ファイバF2を固定するため、上部から押さえ部3で固定することができる。この押さえ部3は一体であっても区間部位ごとに個別であっても良い。これにより、被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2を把持固定することができ、結合効率の安定化を図ることが可能となる。
【0033】
上記構成において、図9にB区間における角度目盛までの距離dと角度目盛間隔wdとの関係を示す。すなわち、B区間では、固定角度βを調整するための角度目盛4が斜面に印字している。固定角度βを微調整するには単位角度に相当する角度目盛間隔をできるだけ大きくとることが有効である。具体的には、図9に示すようにV溝1Aに収納された被覆付光ファイバF1の中心部の軸中心から目盛印字個所までの距離dをできるだけ大きくとることで、固定角度βの時の角度目盛wdを大きくとることができ、調整精度が向上する。
【0034】
本実施形態の大きさや扱う被覆付光ファイバの長さを基準に、dの長さを決定することになる。このような構成を採ることで、0.1μmレベルの微小な光軸合わせを、顕微鏡などの拡大手段を用いないで固定角度の調整のみで実現することができ、簡素なツールとして構成できる。
【0035】
また、B区間斜面の被覆付光ファイバF1の固定方法は、面状のマグネット等を用いて、基盤ブロック2に仮止めし、固定角度βを微調整する手段が有効である。
図10は、押さえ部3の圧縮により被覆付光ファイバF1の被覆の偏平が生じた際の軸ズレ距離を示す図である。
【0036】
被覆付光ファイバF1を固定するため被覆部を押さえ部3により圧縮すると、被覆は偏平し、その中心部の位置が変わる。押さえ部3の下部の被覆と接触する面の位置とV溝底部の距離を、押さえ圧縮前がk0、押さえ圧縮後をkとすると、偏平した被覆付光ファイバF1の中心とV溝底部の距離h1とプローブ光ファイバF2の中心とV溝底部の距離h2、及び軸ズレ距離wは、以下の式で幾何学的に概ね表すことができる。
【0037】
【数3】
図11は、被覆押さえ部3の圧縮による被覆付光ファイバF1の被覆の偏平による軸ズレ距離wの変化特性を示す図である。V溝拡がり角度θ=40deg、被覆付光ファイバの半径r1=125μm、プローブ光ファイバF2の素線部(クラッド)6の半径r2=62.5μmとしている。ここで圧縮率の大きさについては、次式で表す値とした。
【0038】
【数4】
図11は、押さえなし、約20%圧縮、約35%圧縮の計算結果をプロットしている。このように、圧縮率が大きくなる程、軸ズレ距離wは小さくなる。
【0039】
図12は、角度βと角度目盛間隔wdの相関(屈曲部から固定部までのファイバ長d依存性)を示す図である。V溝に収納された被覆付光ファイバF1の中心部の軸中心から目盛印字個所までの距離dを変化させてプロットする。前述したように、dを大きくすることで角度目盛間隔を大きくすることができる。
【0040】
例えば、軸ズレ距離wが2μm、被覆押さえ部3の圧縮率が20%であったとする。図11よりその時の調整角度βは0.05degであり、図12より、その時の角度目盛間隔wdはd=100mmの時は約5mm、d=50mmの時は約2.4mm、d=10mmの時は約0.3mmとなる。
【0041】
このように、被覆部の偏平が生じる場合にも、本発明により調軸することが可能である。
尚、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A,1C…V溝、2…基盤ブロック、3…押さえ部、4…角度目盛、5…ファイバ固定部、6…素線部、F1…被覆付光ファイバ、F2…プローブ光ファイバ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を入出力するために側方から付き当てるプローブ光ファイバの光軸を最適な位置に調整する調軸機能付き側方光入出力装置及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気伝導によるメタルケーブル伝送系では、伝導体であるメタル部に他のメタル線を接触させることで導通させ、信号の分波や合波ができ、試験や通話等の保守運用業務に適用することができる。通常、メタルケーブルには絶縁材料による被覆が施されてされているが、導通させる際にこの被覆の一部を除去し、導通を図った後に絶縁テープ等で保護することで、他のメタルケーブルとの接触や地絡を防ぐ等の手法が容易に施工することができる。このように、メタルケーブルは優れた柔軟性や保守運用性、施工性を有している。
【0003】
一方、光伝導による光ファイバ伝送系では、光ファイバのコアを伝搬する光を別の光ファイバに分波したり、他の光ファイバからの光を合波したりすることは非常に困難であることから、メタルケーブルに比べて保守運用性に劣るため、補完するためのいくつかの手法が採られている。以下に従来の手法や技術を述べる。
【0004】
1つ目は、予め、光ファイバ線路に光合分波カップラを挿入しておく例がある(非特許文献1参照)。光合分波カップラは例えば2入力2出力のファイバ溶融型カップラ等があり、一方の入力光を2出力に分波する、もしくは2入力の光を1出力もしくは2出力に合波することができる。
【0005】
しかしながら、光合分波カップラが挿入されていない光ファイバ通信路に適用する場合には、一端、光ファイバ通信路を切断して光合分波カップラを挿入する必要があり、その際通信が途切れることになる。
2つ目は、光ファイバ心線対照器(非特許文献2参照)や光ファイバ回線使用状況判別装置(特許文献1参照)の例がある。光ファイバ通信路の一端から試験光を入射し、光ファイバ通信路途中の光ファイバを曲げ、曲げ部から漏洩する光を、光電変換半導体素子で受光し電気変換を行なって、試験光の有無やその状態を識別するものであり、光ファイバ通信路の保守運用業務に非常に有効な技術のひとつとして活用されている。
【0006】
しかしながら、ここで用いられている技術は光ファイバ中を伝搬する光の分波のみである。また、その場で電気信号に変換することが可能な目的に用いる装置であるため、光ファイバのコア面積に比べて受光面積の大きな光電変換半導体素子で漏洩光を受光することができ、精密な光学的な位置調整を行なうことなく高効率な結合系を構成することが可能である。
【0007】
3つ目は、光ファイバ曲げ部と外部の光ファイバを光電変換することなく光学的に結合し信号光や試験光を入出力する例がある(特許文献2参照)。この例の手法では、光ファイバ曲げ部から漏洩する光を光ファイバプローブに結合すると共に、光ファイバプローブから放出された光を光ファイバ曲げ部から光ファイバのコアに入射・結合する。双方向伝送の光ファイバ伝送路の一時的もしくは永続的な迂回を実現できる手法として期待できる技術である。
【0008】
しかしながら、光ファイバのコアの直径は10μm前後であり、光ファイバプローブへの結合領域や光ファイバプローブからの放出領域が狭いことから、レンズ等の光学素子を用いた受光面の拡大と集光が有効であるが、高い結合光学系を構成するためには0.1μmオーダの光軸調整が必要であり、顕微鏡などの拡大観察手段が必要となる。
【0009】
更に、光ファイバの曲げ形状や光ファイバ被覆状況の個体毎のばらつきにより、光ファイバプローブへの結合光学系として最適な位置が定まらない。このことから、都度毎に光軸調整を必要とするので、精密な光学微動機能を有する装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-25052号公報
【特許文献2】特開2009-25210号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nobuo Tomita, Hidetoshi Takasugi, Naoyuki Atobe, Ikuo Nakamura, Fumio Takaesu, Seiji Takashima, ”Design and Performance of a Novel Automatic Fiber Line Testing System With OTDR for Optical Subscriber Loops,” J. Lightwave Technol., vol.12, no.5, pp.717-726, 1994.
【非特許文献2】山下、羽田野、小山田、徳田「曲げ法を用いた光心線対照器の結合効率」信学論、vol.J66-B, no.11, 1983.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上述べたように、高い結合光学系を構成するためには0.1μmオーダの光軸調整が必要であり、顕微鏡などの拡大観察手段が必要となる。
更に、光ファイバの曲げ形状や光ファイバ被覆状況の個体毎のばらつきにより、光ファイバプローブへの結合光学系として最適な位置が定まらず、都度毎に光軸調整を必要とするので、精密な光学微動機能を有する装置が必要である。
【0013】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、簡易な構成の面上で、被入力光ファイバの曲げ方向を調整するだけの簡便な方法により、プローブ光ファイバの先端との位置関係を保持した状態で調整作業が可能となる調軸機能付き側方光入出力装置及びその調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る調軸機能付き側方光入出力装置は、以下のような態様の構成とする。
(1)上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックと、前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定するための固定手段と、前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出するための角度検出手段とを具備する態様とする。
【0015】
(2)(1)の構成において、前記被覆付き光ファイバと前記プローブ光ファイバを、前記基盤ブロック上で固定する押さえ部とを備える態様とする。
(3)(1)の構成において、前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整する態様とする。
【0016】
(4)(1)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置する態様とする。
【0017】
(5)(1)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸する態様とする。
【0018】
本発明に係る調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法は、以下のような態様の構成とする。
(6)上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックを用いて、前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定し、前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出し、前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整する態様とする。
【0019】
(7)(6)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置する態様とする。
【0020】
(8)(6)の構成において、前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸する態様とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明により、光ファイバを切断することなく、短時間でかつ高効率に、光信号を取り出したり、入力したりすることができる。特に、従来は0.1μmレベルの3次元方向の精密で複雑な位置調整が可能なマイクロマシン機能や視認するための拡大手段を具備した装置を実装する必要があるのに対し、本発明は1軸(z軸)のみの調軸に簡素化できることと、その0.1μmレベルの調軸精度を光ファイバの固定角度の調整で簡易化できことから、ツールの低廉化や作業時間短縮が期待できる。
【0022】
更に、光ファイバ曲げ部とプローブ光ファイバを高効率な入出力結合系を簡易に構成することが可能となり、光ファイバを切断することなく通信線路の二重化を実現することができ、光ファイバを切断することなく心線対照光を挿入することができるなど、高い保守運用性を有する光ファイバネットワークを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図。
【図2】(a)は図1に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、(b)は図1に示す調軸領域(B区間)の断面図、(c)は図1に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図。
【図3】同一V溝上の異径心線の軸ズレ距離を示す断面図。
【図4】同一V溝上の異径心線の軸ズレ距離を示す側面図。
【図5】角度を有する被覆付き光ファイバ曲げ部のコア軸ズレ(断面図)を示す図。
【図6】プローブ光ファイバ先端位置と結合効率の相関を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図。
【図8】図7に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、(b)は図3に示す調軸領域(B区間)の断面図、(c)は図3に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図。
【図9】角度目盛までの距離dと角度目盛間隔wdを示す図。
【図10】被覆押さえ部の圧縮による被覆の偏平による軸ズレ距離(断面図)を示す図。
【図11】被覆押さえ部圧縮偏平による軸ズレ距離の変化特性を示す図。
【図12】角度βと角度目盛wdの相関(屈曲部から固定部までのファイバ長d依存性)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図、図2(a)は図1に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、図2(b)は図1に示す調軸領域(B区間)の断面図、図2(c)は図1に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図である。
【0025】
図1及び図2において、基盤ブロック2は被入出力光ファイバF1の固定領域(A区間)、調軸領域(B区間)、プローブ光ファイバF2の固定領域(C区間)から構成されている。
上記基盤ブロック2のA区間上面には被覆付光ファイバF1を収納することができるV溝1Aが形成されている。A区間とB区間の上部表面の境界領域は、曲げ半径Rの曲率で緩やかに角が取られて、B区間上部の傾斜に連続的に繋がっており、V溝1Aに収納された被覆付光ファイバF1が半径Rの形状で曲げられ、B区間上部に沿うように導かれる。B区間斜面には、導かれた被覆付光ファイバF1を、V溝端部を中心軸として任意の角度に固定できるファイバ固定部5と、その角度の目安となる角度目盛4が設けられている。C区間上面には、先端が素線部6に施されたプローブ光ファイバF2を収納することができるV溝1Cが形成されている。
【0026】
図3は、同一直線上に配列されたA区間上部のV溝1A及びC区間上部のV溝1Cに、それぞれ被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2の被覆のない素線部6が収容された位置関係を説明するための断面図である。
被覆付光ファイバF1の半径をr1、プローブ光ファイバF2の素線部6の半径をr2、被覆付光ファイバF1の中心(コア中心に相当)とV溝1Aの底部までの距離をh1、プローブ光ファイバF2の素線部6の中心(コア中心に相当)とV溝1Cの底部までの距離をh2、V溝1A,1Cの拡がり角をθとする。幾何学的にこれらの関係は、
【0027】
【数1】
で表すことができる。
図4は、同一直線上に配列されたA区間上部のV溝1A及びC区間上部のV溝1Cに、それぞれ被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2の被覆のない素線部6が収容された位置関係を説明するための側面図である。被覆付光ファイバF1は半径Rの曲率で曲げられており、プローブ光ファイバF2は図4に示すように被覆付光ファイバF1の曲げ部に突き当てられている。図4からわかるように、被覆付光ファイバF1の中心に位置するコアは、曲げ形状に沿ってその中心に存在し、プローブ光ファイバF2の中心に位置するコアの延長線上と理想的には交わることになる。
【0028】
しかしながら、被覆付光ファイバF1の被覆は一般的にUV硬化樹脂などの材料で構成されているため、その半径r1の精度はr2に比べて個体差も大きく、上部からの押さえ圧力によっても変化するため、必ずしも交わるとは限らない。
図5は、曲げられた被覆付光ファイバF1の漏れ光をプローブ光ファイバF2で受光する際の、プローブ光ファイバ先端位置の結合効率の相関を示す図である。これより、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面(XY軸平面)の法線方向(Z軸方向)の軸ズレによる結合効率の変化が大きいことがわかる。これは、図4で示す系では、被覆付光ファイバF1とプローブ光ファイバF2は、それぞれ同一直線上に配置されたV溝1A,1C上に収容されていることから、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面(図5のXY平面に相当)と、プローブ光ファイバ先端の軸は、同一平面上にあるか、もしくは平行状態にあるとみなせる。平行状態にある場合は、図5におけるZ軸の軸ズレを調整することで、被覆付光ファイバの曲げられた平面とプローブ光ファイバ先端の軸は同一平面上に配置されることになる。
【0029】
図6は、角度を有する被覆付き光ファイバF1の曲げ部のコア軸ズレを示す図である。B区間上部の被覆付光ファイバF1の固定角度βを調整することでその軸ズレを調整することができる。被覆付光ファイバF1の中心はそのコア位置に相当することから、プローブ光ファイバF2の中心(コア中心)との軸ズレ距離は図のようにwで示される。このように、V溝個所(に配置された被覆付光ファイバの中心)を軸として曲げ方向(固定角度β)を変化させることで、曲げられた平面(図5のXY平面に相当)は変化するが、プローブ光ファイバF2の先端の軸との平行関係は崩れない。したがって、固定角度βを調整することで、wがゼロになる個所、すなわち、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面とプローブ光ファイバF2の先端の軸は同一平面上に配置となる個所が必ず存在する。この時のwは幾何学的に導出され、
【0030】
【数2】
となる。
このように、固定角度βを調整することにより、軸ズレ距離wを最小化することで、被覆付光ファイバF1の曲げられた平面とプローブ光ファイバF2の先端の軸は同一平面上に配置することで、結合効率の向上が期待できる。
【0031】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る調軸機能付き側方光入出力装置の構成を示す図、図8(a)は図7に示す被入出力光ファイバ固定領域(A区間)の断面図、図8(b)は図7に示す調軸領域(B区間)の断面図、図8(c)は図7に示すプローブ光ファイバ固定領域(C区間)の断面図である。尚、図7及び図8において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分を中心に説明する。
【0032】
図7及び図8に示す実施形態では、図1及び図2に示した第1の実施形態の構成に押さえ部3を付加した構成となっている。
A区間に収納された被覆付光ファイバF1及びC区間に収納されたプローブ光ファイバF2を固定するため、上部から押さえ部3で固定することができる。この押さえ部3は一体であっても区間部位ごとに個別であっても良い。これにより、被覆付光ファイバF1及びプローブ光ファイバF2を把持固定することができ、結合効率の安定化を図ることが可能となる。
【0033】
上記構成において、図9にB区間における角度目盛までの距離dと角度目盛間隔wdとの関係を示す。すなわち、B区間では、固定角度βを調整するための角度目盛4が斜面に印字している。固定角度βを微調整するには単位角度に相当する角度目盛間隔をできるだけ大きくとることが有効である。具体的には、図9に示すようにV溝1Aに収納された被覆付光ファイバF1の中心部の軸中心から目盛印字個所までの距離dをできるだけ大きくとることで、固定角度βの時の角度目盛wdを大きくとることができ、調整精度が向上する。
【0034】
本実施形態の大きさや扱う被覆付光ファイバの長さを基準に、dの長さを決定することになる。このような構成を採ることで、0.1μmレベルの微小な光軸合わせを、顕微鏡などの拡大手段を用いないで固定角度の調整のみで実現することができ、簡素なツールとして構成できる。
【0035】
また、B区間斜面の被覆付光ファイバF1の固定方法は、面状のマグネット等を用いて、基盤ブロック2に仮止めし、固定角度βを微調整する手段が有効である。
図10は、押さえ部3の圧縮により被覆付光ファイバF1の被覆の偏平が生じた際の軸ズレ距離を示す図である。
【0036】
被覆付光ファイバF1を固定するため被覆部を押さえ部3により圧縮すると、被覆は偏平し、その中心部の位置が変わる。押さえ部3の下部の被覆と接触する面の位置とV溝底部の距離を、押さえ圧縮前がk0、押さえ圧縮後をkとすると、偏平した被覆付光ファイバF1の中心とV溝底部の距離h1とプローブ光ファイバF2の中心とV溝底部の距離h2、及び軸ズレ距離wは、以下の式で幾何学的に概ね表すことができる。
【0037】
【数3】
図11は、被覆押さえ部3の圧縮による被覆付光ファイバF1の被覆の偏平による軸ズレ距離wの変化特性を示す図である。V溝拡がり角度θ=40deg、被覆付光ファイバの半径r1=125μm、プローブ光ファイバF2の素線部(クラッド)6の半径r2=62.5μmとしている。ここで圧縮率の大きさについては、次式で表す値とした。
【0038】
【数4】
図11は、押さえなし、約20%圧縮、約35%圧縮の計算結果をプロットしている。このように、圧縮率が大きくなる程、軸ズレ距離wは小さくなる。
【0039】
図12は、角度βと角度目盛間隔wdの相関(屈曲部から固定部までのファイバ長d依存性)を示す図である。V溝に収納された被覆付光ファイバF1の中心部の軸中心から目盛印字個所までの距離dを変化させてプロットする。前述したように、dを大きくすることで角度目盛間隔を大きくすることができる。
【0040】
例えば、軸ズレ距離wが2μm、被覆押さえ部3の圧縮率が20%であったとする。図11よりその時の調整角度βは0.05degであり、図12より、その時の角度目盛間隔wdはd=100mmの時は約5mm、d=50mmの時は約2.4mm、d=10mmの時は約0.3mmとなる。
【0041】
このように、被覆部の偏平が生じる場合にも、本発明により調軸することが可能である。
尚、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A,1C…V溝、2…基盤ブロック、3…押さえ部、4…角度目盛、5…ファイバ固定部、6…素線部、F1…被覆付光ファイバ、F2…プローブ光ファイバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックと、
前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定するための固定手段と、
前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出するための角度検出手段と
を具備することを特徴とする調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項2】
前記被覆付き光ファイバと前記プローブ光ファイバを、前記基盤ブロック上で固定する押さえ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項3】
前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項4】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項5】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項6】
上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックを用いて、
前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定し、
前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出し、
前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整することを特徴とする調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【請求項7】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置することを特徴とする請求項6記載の調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【請求項8】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸することを特徴とする請求項6記載の調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【請求項1】
上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックと、
前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定するための固定手段と、
前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出するための角度検出手段と
を具備することを特徴とする調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項2】
前記被覆付き光ファイバと前記プローブ光ファイバを、前記基盤ブロック上で固定する押さえ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項3】
前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項4】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項5】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸することを特徴とする請求項1記載の調軸機能付き側方光入出力装置。
【請求項6】
上面に第1のV溝が形成され、当該第1のV溝に被覆付き光ファイバが収納される被入出力光ファイバ固定領域、前記被入出力光ファイバ固定領域の上面と同一面に前記第1のV溝と同一直線上に第2のV溝が形成され、当該第2のV溝に先端が素線部とされたプローブ光ファイバが収納されるプローブ光ファイバ固定領域、及び、前記被入出力光ファイバ固定領域と前記プローブ光ファイバ固定領域との間に配置され、前記被入出力光ファイバ固定領域から緩やかに角が取られて傾斜する平面が一定の曲率で連続的に繋がる調軸領域が一体形成される基盤ブロックを用いて、
前記第1のV溝に前記被覆付き光ファイバを収納した状態で前記調整領域の傾斜面に前記被覆付き光ファイバを這わせた状態で任意の角度で固定し、
前記固定手段による光ファイバの固定角度を検出し、
前記被入出力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記被覆付き光ファイバの光軸と、前記プローブ光ファイバ固定領域の前記V溝に固定した前記プローブ光ファイバの素線部の光軸を、前記調軸領域の面上において前記被覆付き光ファイバの角度を変えることにより調整することを特徴とする調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【請求項7】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に前記被入力光ファイバを固定し、連続する前記調軸領域面上で被入力光ファイバを開放配置し、前記V溝の延長軸上に前記プローブ光ファイバを固定し、前記プローブ光ファイバの素線部先端を曲げ部に近接し配置することを特徴とする請求項6記載の調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【請求項8】
前記被入力光ファイバ固定領域の前記V溝に固定する前記被入力光ファイバの中心軸を回転の中心として前記調軸領域の平面上で前記被入力光ファイバの曲げ方向を変化させて光ファイバの断面を扁平させ、前記V溝端部における前記被入力光ファイバの中心軸を微小に変化させることで調軸することを特徴とする請求項6記載の調軸機能付き側方光入出力装置の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−25025(P2013−25025A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158905(P2011−158905)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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