説明

識別媒体および識別媒体の識別方法

随時、自在に印字ができ、容易に偽造することができず、また特異な見え方をすることで、真正性の判別力が容易で、かつ割安の価格で製造できる識別媒体を提供する。
コレステリック液晶層10あるいは、異なる屈折率を有する光学薄膜を多層に積層した多層薄膜5と破壊型印字記録層を積層することで、サーマルプリンタ等で印字した文字、記号、パターンあるいは模様等が、見る角度によって表示される色が変化するという特異な光学的な性質を有する識別媒体を得る。また、このような光学的な性質を利用した識別方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポート、書類、各種カード、パス、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券、音楽や映像が記録された記録媒体、コンピュータソフトウェアが記録された記録媒体、各種工業製品、食品、薬、日用雑貨品等の製品本体あるいはパッケージに貼られる製品ラベル等の真正性(真贋性)を識別する技術に利用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品やそのパッケージ等には、中身や成分、生産地、製造番号、製造年月日、バーコード等を印刷した製品ラベルが貼られている。こうした情報は製品単品ごとに変わるので、大量に同一のラベルを作ることはできない。このため小ロットで対応が容易な破壊型印字記録層を有するラベルに、サーマルプリンタ、レーザー、あるいは放電プリンタ等で印字したものが用いられている。しかし、最近、偽の製品ラベルを貼った偽造品、あるいは正規の製品から剥がした正規のラベルを貼った偽造品が流通経路に出回り、多くの被害を出すようになった。こうした製品ラベルの不正使用を防止するために、その真正性を判別する技術が必要とされている。
【0003】
上記のような技術として、通常は一層しかない着色層を複数層積み重ね、サーマルヘッドによる破壊の深度を調節することにより、複数色の混ざった表示を可能にし、さらに印刷層の色調と組み合わせることにより、複雑な模様を描く技術が特許文献1に示されている。また、熱破壊型印字記録層と放電破壊型印字記録層と2種類の記録層を有し、それぞれの特徴を生かした破壊印字を、表面と裏面同時に行う技術が特許文献2に示されている。また、熱破壊型印字記録層とホログラムを組み合わせ、ホログラムの装飾性と偽造しにくさを感熱記録紙に付与する技術が特許文献3に示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−15985号公報
【特許文献2】特開平6−106882号公報
【特許文献3】特開平8−80680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の着色層を組み込むことは、製造工程数が増えるため製造コストが割高になる。さらに、数多くの着色層を積層することは材料費の点からも割高となる。また、ホログラムを組み合わせて利用する方法は、近年ホログラムの偽造技術が向上し、真正判断が困難な偽物が製造される場合があるので、安全ではなくなりつつある。こうした背景のもと、より偽造が困難で、真偽の判別が容易であり、かつ割安の価格で製品ラベルを製造できる技術が求められている。
【0006】
本発明は、材料構成が単純で製造方法が複雑でないために材料コスト、製造コストがともに割安で、かつ、材料自体の偽造困難性が高いため容易に偽造することができず、また特異な見え方をすることで、真正性の判別力が高く、しかも容易である識別媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、真正性の判別力に優れた識別方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の識別媒体は、異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分に、異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜が露出する。この露出部の描く文字、記号、パターンあるいは模様は、識別媒体を見る角度によってその色が変化し、通常のどの角度から見ても色の変化しない着色層を有する製品ラベルとは著しく異なり、真偽を容易に識別できる。また、多層薄膜は一般的な塗工装置があれば製造可能であり、設備を保有していれば割安のコストで容易に製造できるが、保有していないと複製は困難であり、あえて行えば多大の費用を要する。そのため、製造コストが低いのに比して偽造防止力が高いという利点を有する。
【0009】
また、この発明の他の識別媒体は、特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備えることを特徴としている。
【0010】
上記構成の識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分に、特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層が露出する。この露出部の描く文字、記号、パターンあるいは模様は、識別媒体を見る角度によってその色が変化し、通常のどの角度から見ても色の変化しない着色層を有する製品ラベルとは著しく異なり、真偽を容易に識別できる。また、コレステリック液晶の製造には特殊な設備と原料が必要であり、設備と原料を保有していれば割安のコストで容易に製造できるが、保有していないと複製は困難であり、あえて行えば多大の費用を要する。そのため、製造コストが低いのに比して偽造防止力が高いという利点を有する。
【0011】
本発明は、破壊型印字記録層側の少なくとも一部に印刷層を備えると好ましい。このような識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分によって描かれた文字、記号、パターンあるいは模様と印刷層に描かれた同様の文字、記号、パターンあるいは模様が識別媒体上に併在する。そして識別媒体を見る角度を変化させたとき、その一部の色だけが変化し、通常のどの角度から見ても色の変化しない着色層を有する識別媒体とは著しく異なり、真偽を容易に識別できる。
【0012】
本発明では、印刷層が多層薄膜あるいはコレステリック液晶層を特定の方向から見たときの色と外観上同じであると好ましい。このような識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分によって描かれた文字、記号、パターンあるいは模様の色と印刷層に描かれた色が特定の角度から眺めたとき同じになり、認識できなくなる。そして識別媒体を見る角度を変化させたとき、再びその文字、記号、パターンあるいは模様が浮かび上がって認識できるようになる。こうした特徴は、通常のどの角度から見ても色の変化しない着色層を有する製品ラベルとは著しく異なり、真偽を容易に識別できる。
【0013】
本発明では、多層薄膜側あるいはコレステリック液晶層側に暗色の顔料を含有する粘着層を備えると好ましい。このような識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分によって描かれた文字、記号、パターンあるいは模様の色が、それ以外の色の光が暗色の顔料を含有する粘着層に吸収されるためより鮮明に視認することができ、偽造品との差がより、明瞭になる。
【0014】
本発明では、多層薄膜あるいはコレステリック液晶層の少なくとも一部にホログラム加工または型押し加工が施されていると好ましい。このような識別媒体によれば、除去された破壊型印字記録層部分によって描かれた文字、記号、パターンあるいは模様部分の見る角度による色の変化だけでなく、模様も変化させることができる。このため偽造品との差がより明瞭になるとともに、複雑な態様を呈するため偽造品の製造も困難になる。
【0015】
本発明では、多層薄膜あるいはコレステリック液晶層の少なくとも一部に層間剥離または剥離破壊構造を備えていると好ましい。このような識別媒体によれば、一度製品やパッケージに貼られた後で、これを剥がすと、識別媒体は剥離構造部分で剥離が生じ、再び製品ラベル等として使用することができない。このため、偽造品を本物に見せるための流用を防ぐことができる。
【0016】
本発明では、粘着層が、識別対象物から剥がすと対象物あるいは識別媒体のいずれかに、文字あるいは記号が識別できるようになる転移性あるいは剥離性の粘着材であるとより好ましい。このような識別媒体によれば、一度製品やパッケージに貼られた後で、これを剥がすと、転移あるいは識別媒体は剥離が生じ、一度貼られたものを剥がしたことが明瞭に視認でき、再び製品ラベル等として使用することができない。このため、偽造品を本物に見せるための流用を防ぐことができる
【0017】
本発明では、多層薄膜あるいはコレステリック液晶層の両側の少なくとも一部にそれぞれ破壊型印字記録層と印刷層とを備えると好ましい。このような識別媒体によれば、多層薄膜あるいはコレステリック液晶層の両側に、除去された破壊型印字記録層部分によって、文字、記号、パターンあるいは模様を描くことができる。それらは識別媒体を見る角度によってその色が変化し、通常のどの角度から見ても色の変化しない着色層を有する識別媒体とは外観が著しく異なり、真偽を容易に識別することができる。
【0018】
次に、本発明の識別媒体の識別方法は、異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体、あるいは特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体の識別方法であって、識別媒体を一乃至二以上の所定の視角から観察することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の他の識別媒体の識別方法は、特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体の識別方法であって、識別媒体を所定の旋回方向の円偏光を選択的に透過する光学フィルタを介して観察することを特徴としている。
【0020】
ここで、図1に示す一般的な破壊型記録層を有する識別媒体1について説明する。この識別媒体は全体として積層構造を有し、下から順に、セパレータ7、粘着層6、着色層(基材を兼ねる)12、アンカー層9、破壊型印字記録層4、印刷層3、保護層2となっている。セパレータ7は離型性を有し、対象物に貼る前に剥離する。粘着層6は接着層と呼ばれることもあり、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/プロピオン酸共重合体、ゴム系樹脂、シアノアクリレート樹脂、セルロース系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系共重合体などのバインダーに、必要に応じて、可塑剤、安定剤、硬化剤などを添加した後、溶剤あるいは希釈剤で十分に混練し、グラビア法、ロール法、ナイフエッジ法などの塗布方法によって基材に塗工する。
【0021】
着色層12はナイロン、セルロース、ジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネートなどのプラスチック類、銅、アルミニウム等の金属類、紙、含浸紙などを単独であるいは組み合わせて用い、その基材自体の表面色を利用することもできるが、各種塗料あるいはインキを、グラビア法、ロール法、ナイフエッジ法、オフセット法、などの塗布方法あるいは印刷方法で形成してもよい。この着色層は後に述べる印刷層に比して比較的耐熱温度の高いものを用いるのが好ましい。
【0022】
アンカー層9には、透明な0.05〜0.5mm程度の厚さの、たとえばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリルなどの熱可塑性樹脂、あるいは、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂などを用いることができる。破壊型印字記録層4は、感熱破壊型、または放電破壊型があり、低融点のTe,Sn,In,Al,Bi,Pb,Zn,Cu,Fe−Co,Ni,Cr,Tiなどの金属または合金あるいはこれらの混合物もしくは化合物からなり、真空蒸着法、スパッタ法、メッキ法などにより着色層12上に形成することができる。
【0023】
印刷層3は上記着色層12の表面に塗布した、各種塗料やインキと同様の材料である。保護層2は合成樹脂フィルムをラミネートするか、エクストルージョンコート法によるか、あるいは合成樹脂塗料を塗布することなどによって形成することができる。保護層を構成する合成樹脂は、用途、あるいは他の層との密着性を考慮して、着色層の基材を形成するときに用いた合成樹脂類と同等のものが広く用いられる。特に、熱硬化性の合成樹脂を用いると、表面の硬度、汚染の防止という点で有利であり、さらに、紫外線硬化型の合成樹脂を含む塗料を用いれば、塗布後の硬化を瞬時に行えるので好ましい。
【0024】
上述した識別媒体1の表面を、サーマルプリンタあるいは放電プリンタで局所的に加熱し、溶融・破壊させると図2に示すような除去部8を形成することができる。この除去部8により、視覚的には、製造年月日、製造番号などの文字、商標等の記号、バーコード等のパターン、デザインとしての模様を構成することができる。
【0025】
次に、コレステリック液晶層が有する光学的な性質について説明する。図3は、コレステリック液晶層の構造を示す図である。コレステリック液晶は層状構造をなしており、各層での分子長軸方向が互いに平行であり、かつ層面に平行である。また、各層は少しずつ回転して重なっており、立体的にスパイラル構造をとる。
【0026】
ここで、層に垂直な方向で考えて、分子長軸が360度回転して元へ戻るまでの距離をピッチP、各層内の平均屈折率をnとして、λs=n・Pを満たす、中心波長λsの円偏光に対して、当該コレステリック液晶層は、選択的な反射特性を示す。すなわち、特定の偏光状態にない光(自然光)を照射した際に、中心波長λsの円偏光のみを選択的に反射する。また、この反射される円偏光の旋回方向は、コレステリック液晶層の回転方向に応じて、右回りまたは左回りが決まる。つまり、コレステリック液晶層は、特定中心波長であり、かつ特定旋回方向の円偏光を選択的に反射し、他の波長領域の特定旋回方向の円偏光成分、さらに直線偏光成分や逆旋回方向の円偏光成分は透過させる。
【0027】
図4は、コレステリック液晶層10において、特定波長で特定旋回方向の円偏光が選択的に反射される状態を示す概念図である。例えば、図4には、右回り(右ネジの向き)に各層の分子長軸が回転してゆくスパイラル構造を示すコレステリック液晶層10が示されている。このコレステリック液晶層に自然光を入射させると、特定中心波長帯域の右回り円偏光の成分が選択的に反射され、他の偏光成分(直線偏光成分や左回り円偏光)や他の波長帯域の右回り円偏光はコレステリック液晶層10を透過する。
【0028】
たとえば、可視光を吸収する黒紙のような材料の上に、赤色の中心波長λsを反射する図3の構造を有するコレステリック液晶を配置し、太陽光などのランダム光を当てると透過光は全て黒紙に吸収され、中心波長λsの右回り円偏光のみが選択的に反射され、肉眼ではこのコレステリック液晶層は鮮やかな赤色に見える。このような特定の旋回方向の特定の中心周波数の光を選択的に反射する性質を円偏光選択性という。
【0029】
また、コレステリック液晶は見る角度によって色が変わるという特徴を有する。これは、ピッチPが見かけ上減少することから、中心波長λsが短波長側へ移行するためである。たとえば、垂直方向から観察して赤色に呈色するコレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくするに従いオレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察される。この現象をブルーシフトという。なお、視野角とは、観察面への垂線と視線とのなす角度として定義される。
【0030】
次に、異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜が有する光学的な性質について説明する。図5は、多層薄膜における光の反射状態を示す概念図である。図5には、一例として第1の屈折率を有する光透過性の薄膜フィルム5a(A層)と第2の屈折率を有する光透過性の薄膜フィルム5b(B層)とを交互に多層に積層した構造が示されている。
【0031】
多層薄膜5に白色光を照射すると、異なる屈折率を有する光媒体の界面において入射光の反射がフレネルの反射則に従って発生する。この際、A層とB層との間の界面において、入射光の一部が反射し、その他は透過する。A層とB層との間の界面は、繰り返し現れるので、各界面で生じた反射光は干渉しあうため特定の波長の光のみ出射する。入射光の入射角を徐々に大きくすると、各界面で生じた反射光の光路差は、徐々に小さくなり、より短波長の光が干渉し強め合うようになる。従って、白色光が当たっている多層薄膜5をより斜め(面に平行に近い角度)から見る程、より短波長の光が強く反射しているように見える。例えば、白色光が当たっている多層薄膜5を傾けて行くと反射光がだんだん青っぽく見えるようになる。この現象もブルーシフトという。なお、入射角は、入射面への垂線と入射光のなす角度として定義される。
【0032】
異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜というのは、屈折率の異なる少なくとも2種類の光透過性薄膜フィルムを積層し、屈折率の異なる光透過性薄膜フィルム同士の界面が少なくとも一つ存在する多層構造をいう。この多層薄膜の具体的な構造としては、異なる屈折率を有する2種類の光透過性薄膜フィルムを交互に多層に重ねた構成、第1〜第N(Nは自然数)の屈折率を有した第1〜第Nの光透過性薄膜フィルムを順に積層したものを1単位として、それを任意の数で積層した構造等が挙げられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、随時、自在に印刷することができ、複雑な光学要素を組み合わせているため容易に偽造することができず、また特異な見え方をすることで、真正性の判別力が高く、しかも容易に判定でき、また、製造コストが割安な識別媒体が提供される。また、本発明によれば、真正性の判別力に優れた識別方法が提供される。
【0034】
また本発明の識別媒体は、左右の円偏光成分、色彩、図柄、カラーシフトといった光学現象が複雑に絡み合って現れる現象を利用して識別性を持たせているので、画像の取り込みによるコピーを用いた偽造が原理的に不可能であるという優位性がある。さらに、色彩感に優れているので、意匠性に優れたものを得ることができる。このことは、意匠性が重要な製品を識別対象物品とする場合に有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、従来の破壊型印刷記録層を有する表示ラベル等の識別媒体の断面構造を示す断面図である。
【図2】図2は、従来の破壊型印字記録層を部分的に除去した断面図である。
【図3】図3は、コレステリック液晶の層構造を説明する概念図である。
【図4】図4は、コレステリック液晶層の光学的な性質を説明する概念図である。
【図5】図5は、多層薄膜の光学的な性質を説明する概念図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態の識別媒体の断面図である。
【図7】図7は、印字後の第1の実施の形態の識別媒体の断面図である。
【図8】図8は、識別媒体1を製品ラベルに応用した模式図とその製品ラベルの表面に文字と模様が浮かび上がったところを表す斜視図である。
【図9】図9は、第2の実施の形態の識別媒体の断面図である。
【図10】図10は、第3の実施の形態の識別媒体の断面図である。
【図11】図11は、破壊型印字記録層の一例を備えた識別媒体の断面構造の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 識別媒体
1’ 印字後の識別媒体
2 保護層
3 印刷層
4 破壊型印刷記録層
5 多層薄膜
6 粘着層
7 セパレータ
8 除去部
9 アンカー層
10 コレステリック液晶層
11 基材
12 着色層
13 ロール状の識別媒体
14 低融点金属除去領域
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(第1の実施の形態)
図6は、第1の実施の形態の識別媒体1の断面構造を示す断面図である。この識別媒体1は、例えば製品本体あるいはそのパッケージに貼り付けて製品の識別に用いられる製品ラベルに使用できる。この識別媒体は積層構造を有し、下から順に、セパレータ7、粘着層6、多層薄膜5、破壊型印字記録層4、印刷層3、保護層2が積層されている。製品等に貼り付けるときはセパレータ7を剥がし、粘着層によって固定する。
【0038】
セパレータ7はシリコーン、フッ素樹脂、ワックス類等で表面処理をして離型性を付与した紙あるいはフィルムである。粘着層6は、識別媒体1を物品に固定させる機能を有し、前述した一般的な識別媒体で使用されている粘着材をそのまま用いることができるが、さらに紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等も使用することができる。
【0039】
粘着層6は、光吸収層としても機能する。そのため、粘着層6には、カーボン等の黒あるいは濃色の顔料が含まれており、可視光を吸収する機能が付与されている。なお、粘着層6とは別に可視光を吸収する光吸収層を設けてもよい。なお、粘着層に、剥離すると文字が出るような加工を加えても良い。
【0040】
多層薄膜5は、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる第1の薄膜フィルム5aと、コポリエチレンテレフタレートからなる第2の薄膜フィルム5bとが交互に総数で201層積層されたもので、20μmの厚さを有している。この多層薄膜5の製造方法は、まず、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる層(A層)を101層、イソフタル酸12モル%共重合ポリエチレンテレフタレートからなる層(B層)を100層、交互に積層して総数201層の未延伸シートを作製する。このシートを140℃の温度で縦方向に3.5倍延伸し、さらに150℃の温度で横方向に5.7倍に延伸し、210℃で熱処理を行い、全体の厚さが20μmの積層構造を得る。こうして、多層薄膜5を得る。この例では、多層薄膜5の層間隔は入射角0°のとき赤色光が反射されるように設定されている。なお、多層薄膜5の材質は、上述の材料に限定されるわけではない。さらに、上述のように異種の材質のフィルムを組み合わせるだけでなく、同種であっても屈折率の異なるフィルム同士を組み合わせることもできる。また、縦方向と横方向の延伸倍率を変えることによって異方性の多層薄膜を形成することもできる。異方性とは、縦方向と横方向とで識別媒体を傾けたときの色の変化が異なる多層薄膜を意味する。また、多層薄膜5と破壊型印字記録層4との密着性が良くない場合は、両者の間にアンカー層9を適宜設けて密着性を向上させることができる。
【0041】
破壊型印字記録層4は、たとえばSnを230℃で800Åの膜厚に蒸着して形成することができる。なお、破壊型印字記録層の材質は、上述の材料に限定されるものではなく、前述した一般的な識別媒体の破壊型印字記録層に用いられている材料を適宜用いることができる。
【0042】
印刷層3は、たとえば赤色のウレタン系塗料を10μm塗布して形成することができる。なお、印刷層の材質は、上述の材料に限定されるものではなく、前述した一般的な識別媒体の着色層の塗料やインクに用いられている材料を適宜用いることができる。また、印刷層を設けないでもよい。
【0043】
保護層2は、たとえば厚さ40μmの等方性トリアセチルセルロース(TAC)を用いることができる。保護層2は、透過する円偏光の偏光状態を乱さないようにするために、屈折率が等方性なものが好ましい。なお、保護層2の材質は、上述の材料に限定されるわけではない。前述した一般的な識別媒体の保護層に用いられている材料を適宜用いることができる。また、保護層を設けないでもよい。
【0044】
こうした積層構造を有する識別媒体1に、サーマルプリンタ、放電プリンタ等で印字をしたあとの識別媒体1’の断面構造を図7に示す。熱、あるいは静電気のエネルギーにより保護層2、印刷層3、破壊型印字記録層4が局部的に溶融・破壊されて除去され、除去部8を形成している。
【0045】
白色光下あるいは白色光下と見なせる環境で印字後の識別媒体1’を保護層2側から見た場合に、識別媒体1は全面赤色に見え、文字は識別することができない。しかし、この印字後の識別媒体1’を徐々に傾けて入射角を増やしていくと、図8に模式的に示すように除去部8の色が次第に橙、緑、青、紫と変化するので文字として認識することができるようになる。なお、印刷層の色は、多層薄膜とはまったく同一にならない色で、それらを鮮明に識別させる色でもよい。また、印刷層に種々の文字、記号、模様あるいはパターンが描かれていてもよい。
【0046】
識別媒体を量産するときは、長尺のシート状に連続生産し図8の下側に示すようなロール13に巻かれる。セパレータ7より上の部分を製品ラベル等の大きさに切り込みを入れ、回りの余分な部分を取り除き、セパレータ7を剥がすと対象物に貼り付けられる状態になる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態の識別媒体1の断面構造を示す断面図である。この識別媒体1は、例えば製品本体あるいはそのパッケージに貼り付けて製品の識別に用いられる製品ラベルに使用できる。この識別媒体1は積層構造を有し、下から順に、セパレータ7、粘着層6、基材11、コレステリック液晶層10、アンカー層9,破壊型印字記録層4、印刷層3、保護層2が積層されている。製品等に貼り付けるときはセパレータ7を離し、粘着層によって固定する。
【0048】
次に、コレステリック液晶層10の製造方法について説明する。まず、低分子コレステリック液晶を重合性モノマー中に溶解して保持させることでコレステリック液晶を成長させる。その後、光反応または熱反応などで低分子液晶を架橋して分子配向を固定するとともに高分子化し、コレステリック液晶の原液を得る。この原液を基材11として50μm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)の一面に所定の厚さになるように塗布し、コレステリック配向および分子配向の固定を行なう。この際、コレステリック液晶分子の積層方向に沿った捻れのピッチPが一様で、積層された厚さが2μmになるようにする。コレステリック液晶層の厚さは、0.5μm〜5.0μm程度の範囲から選択するのが適当である。本実施例では、右回りの円偏光性でかつ視野角0°の時に赤色に見えるようにピッチPを調整する。
【0049】
コレステリック液晶の原液を得る方法としては、側鎖型または主鎖型のサーモトロピック高分子液晶をその液晶転移点以上に加熱してコレステリック液晶構造を成長させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して分子配向を固定する方法でもよい。また、側鎖型または主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶媒中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に揮発させて分子配向を固定する方法でもよい。
【0050】
これらの原料としては、側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネートなどの側鎖型ポリマーや、主鎖に液晶形成基を有するポリエステル、ポリエステアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーを挙げることができる。
【0051】
こうして製造した第2の実施の形態の識別媒体1の保護層2側にサーマルプリンタで印字し、バーコードパターンを描く。白色光下あるいは白色光下と見なせる環境で印字後の識別媒体1’を保護層2側から見た場合に、識別媒体1は全面赤色に見え、バーコードは識別することができない。しかしながら、この印字後の識別媒体1’を徐々に傾けて入射角を増やしていくと、除去部8の色が次第に橙、緑、青、紫と変化するのでバーコードとして認識することができる。
【0052】
さらに、白色光下あるいは白色光下と見なせる環境で印字後の識別媒体1’の保護層2の上に、右円偏光性フィルムと左円偏光性フィルムをそれぞれ載せた場合、右円偏光性フィルムの方にはバーコードは見えず、左円偏光性フィルムの方にはバーコードパターンが見える。
【0053】
(第3の実施の形態)
図10は、第3の実施の形態の識別媒体1の断面構造を示す断面図である。この識別媒体1は、例えばカード、証券、金券、公共競技投票券等の製品本体の一部あるいは全部を構成して製品の識別に使用することができる。この識別媒体は積層構造を有し、中心に多層薄膜5、その上下に破壊型印字記録層4、さらにその上下に印刷層3a、3b、さらにその上下に必要に応じて図示されない保護層2が積層されている。この上下2層の印刷層はそれぞれ異なる材質、色、模様で形成することができる。また、多層薄膜の色を認識しやすくするためには、なるべく暗色の光吸収性の印刷色を選択した方が好ましいが、別途、印刷層と破壊型印字記録層の間に暗色の光吸収層を設けてもよい。こうして製造した第3の実施の形態の識別媒体1はその両側にサーマルプリンタでそれぞれ異なる文字、記号、パターンあるいは模様等の印字をすることができる。
【0054】
(第1,2,3の実施の形態の変更例)
多層薄膜5またはコレステリック液晶層10に型押し等の方法でエンボスを設け、透過型のホログラム形成層を設けることができる。多層薄膜5がエンボスを設けにくい材質の場合は必要に応じてホログラム形成層を別途追加してもよい。また、コレステリック液晶層へのエンボス加工は、コレステリック液晶層の上下どちらの面に施してもよい。
【0055】
反射型のホログラムにする場合は、Cr,Ti,Fe,Co,Ni,Cu,Ag,A,Ge,Al,Mg,Sb,Pb,Pd,Cd,Bi,Sn,Se,In,Ga,Rb等の金属およびその酸化物、窒化物等の単独もしくは2種類以上組み合わせ、あるいは金属化合物等からなる反射性薄膜を、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、電解メッキ、無電解メッキ等により形成する。この場合は、ホログラム反射性薄膜を多層薄膜あるいはコレステリック液晶層と粘着層の間、あるいは基材11上に設ける。ホログラム形成層を有する識別媒体1は、印字後の文字や記号の領域中に模様を形成することができ、その模様の色が角度によって変化する。
【0056】
(第1,2,3の実施の形態の変更例)
本発明の識別媒体の一部に切れ目を入れてもよい。こうすると、再利用を目的に物品から無理やり剥がそうとした場合に、この切れ目から、識別媒体が破れ、その再利用ができなくなる。またこの構成は、パッケージの開封の有無を識別する開封識別シールに応用することもできる。
【0057】
(その他の実施の形態の変更例)
本発明の識別媒体において、一部に層間剥離や剥離破壊が生じる構成を付与することが好ましい。たとえば、コレステリック液晶層において故意に層間剥離が生じ易くすることは好ましい。たとえば、識別媒体1を物品から引き剥がそうとした場合に、粘着層6の固定力が失われる前に、コレステリック液晶層10の層構造が層間剥離するようにすることは好ましい。このようにすると、識別媒体1を剥がして再利用しようとする不正が防止できる。コレステリック液晶層の層間剥離が生じやすく調整する方法は、例えば製造時における温度条件を調整することで実現できる。
【0058】
本発明の識別媒体の粘着層に剥離時に文字等が対象物に転移して、あるいは識別媒体側に構造の変化が生じて、剥がした履歴が表示されるようにすることは好ましい。このような粘着材は、例えば、「開封済」という文字の形に多層薄膜、あるいはコレステリック液晶層および基材層と粘着層に切り込みを入れるか、粘着層と多層薄膜あるいは基材との間に、0.2μm〜5μmの厚さの部分剥離層を文字の形に印刷することによって形成される。部分剥離層はシリコーンやフッ素化合物、ワックス類などの材料を含有したインクによって構成されている。
【0059】
対象物に貼り付けられた、こうした構成の識別媒体を剥がすと、切り込みに沿って、多層薄膜、あるいはコレステリック液晶層および基材と粘着材が分離し、対象物に文字の形で残る。あるいは剥がすときの応力によって、部分剥離層に層間のずれが生じ、気泡が入り込むことにより、識別媒体側に視認可能な態様の変化をもたらす。
【0060】
破壊型印字記録層として、部分的に熱を加えることで、部分的に層構造が消失する構成を採用することもできる。この例としては、低融点金属の薄膜を破壊型印字記録層として利用する例を挙げることができる。低融点金属の薄膜に、サーマルプリンタのヘッド(サーマルヘッド)等を用いて、局所的に熱を加えると、その部分が部分的に溶融し、その溶融物が周囲に吸収されるように移動する。この結果、部分的に低融点金属が除去された構造を得ることができる。この低融点金属が存在しない部分を利用して、所定の図柄を形成することができる。
【0061】
以下、この態様の一例を説明する。図11は、破壊型印字記録層の一例を備えた識別媒体の断面図である。この例においては、破壊型印字記録層として低融点金属の薄膜を利用する。低融点金属としては、例えば蒸着した錫(Sn)を採用することができる。低融点金属は、融点が300度以下であるものが好ましい。
【0062】
以下、この例の製造工程の一例を説明する。なお、多層薄膜や粘着層の詳細は、前述した実施形態におけるものと同じである。
【0063】
まず、多層薄膜5の一方の面に破壊型印字記録層4となる錫の薄膜を真空蒸着法によって形成する。この錫の薄膜の厚さは、例えば0.4μmとする。なお、この錫の薄膜の厚さは、0.1μm〜1μm程度の範囲から選択することが適当である。
【0064】
破壊型印字記録層4を形成したら、その上に光透過性の樹脂材料等によって構成される保護層2を貼り合わせる。また、セパレータ7の剥離面上に粘着層6を設けたものを用意する。そして、この粘着層6を多層薄膜5の露出した他方の面に粘着させることにより、図11(A)に示す状態を得る。ここで粘着層は、可視光線を吸収する黒色の顔料を含有させ、光吸収層として機能させる。
【0065】
図11(A)に示す状態を得たら、保護層2の上からサーマルプリンタによる印字処理を行う。この際、部分的に加えられる熱によって、保護層2に溶融や変形が生じず、部分的に錫の薄膜によって構成される破壊型印字記録層4が溶融する条件によって印字処理を行う。この印字処理により、図11(B)に示すように、部分的に錫の薄膜層が無くなり、或いは薄くなる。その結果、部分的に錫薄膜が存在しない(あるいは視覚的には存在しない程度と認められる)低融点金属除去領域14が形成される。この現象は、サーマルヘッドから熱を加えられた部分の錫薄膜が溶融し、その溶融したものが、より低温状態にある周囲の錫薄膜に吸い寄せられ、その結果、錫が部分的に存在しないと見なせる部分(低融点金属除去領域14)が形成される現象として理解することができる。
【0066】
上述した現象を得ることができる印字処理は、サーマルヘッドの温度、サーマルヘッドと保護層2との距離、保護層2の材質、保護層2の厚さ、破壊型印字記録層4を構成する材質、破壊型印字記録層4の厚さといった要素が、その効果に影響を与える。したがって、印字処理条件は実験的に得ることが好ましい。
【0067】
以下において、低融点金属除去領域14を用いて文字を形成した場合における光学的な機能について説明する。この場合、保護層2の面を見ると、低融点金属除去領域14以外の領域は、錫の金属光沢が見える。そして、低融点金属除去領域14の部分は、錫薄膜部が存在せず、そこからは多層薄膜を見ることができる。
【0068】
よって、保護面2を垂直方向から見た場合、金属光沢面に低融点金属除去領域14によって形成される文字図柄が形成された状態が観察される。そして、識別媒体全体を傾けてゆくと、文字図柄の部分がブルーシフトし、その色彩感が変化する。他方で、低融点金属除去領域14以外の領域は、視野角を変化させながら金属光沢面を見た場合の光の反射具合に見える。この結果、ブルーシフトを示す低融点金属除去領域14の部分が際だって観察される。こうして、識別媒体としての光学機能を得ることができる。
【0069】
図11に示す構成は、最表面に保護層2が残った構造を得ることができる優位性がある。このため、印字処理の後にさらに作業工程を加えなくても、観察面が保護膜に覆われた構造を得ることができる。なお、図11に示す構成において、多層薄膜の代わりにコレステリック液晶層を用いることもできる。この場合、低融点金属除去領域14からコレステリック液晶層が見え、コレステリック液晶の光学特性を利用した図柄の表示を行うことができる。
【0070】
また、多層薄膜5の代わりにコレステリック液晶層を採用した場合、所定旋回方向の円偏光を選択的に透過する光学フィルタを介した観察を行うことで、特異な光学機能を得ることができる。
【0071】
例えば、符号5の層がコレステリック液晶層であるとして、そのコレステリック液晶層が赤に見える右回り円偏光を選択的に反射するように設定されているとする。この場合、右回り円偏光を選択的に透過する光学フィルタを介して図11に示す識別媒体を観察すると、低融点金属除去領域14を介してのコレステリック液晶層からの赤の反射光が見える。したがって、低融点金属除去領域14によって構成される図柄が、赤く見える。
【0072】
一方、左回り円偏光を選択的に透過する光学フィルタを介して図11に示す識別媒体を観察すると、低融点金属除去領域14を介してのコレステリック液晶層からの赤の反射光は、光学フィルタで遮断される。したがって、先の右回り円偏光を選択的に透過する光学フィルタを用いた観察の場合と異なる見え方となる。こうして、2種類の光学フィルタを用いた観察を行うことで、視覚的な識別性を得ることができる。そしてこの視覚効果を利用することで、効果的な真贋判定を行うことができる。
【0073】
図11に示す構成において、多層箔膜5やそれに代わるコレステリック液晶層にホログラム加工が施されていてもよい。こうすることで、低融点金属除去領域14によって構成さえる図柄に、ホログラムの図柄を組み合わせることができる。
【0074】
また、破壊型印字記録層4となる錫の薄膜の上に薄く印刷層を形成してもよい。例えば、錫の薄膜の上に薄く黄色のインクを印刷すると、黄色の層を介して錫の光沢が見え、金色っぽい色彩を得ることができる。この薄い印刷層をさらに形成することにより、破壊型印字記録層4の色彩感や光沢感を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、パスポート、書類、各種カード、パス、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券、音楽や映像が記録された記録媒体、コンピュータソフトウェアが記録された記録媒体、各種製品およびそのパッケージ等の真正性(真贋性)を識別する技術に利用することができる。また、本発明の識別媒体は、パッケージの開封の有無を識別する開封識別シールに利用することもできる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを互いに積層した多層薄膜の少なくとも一面の一部あるいは全部に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備えることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面の一部あるいは全部に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備えることを特徴とする識別媒体。
【請求項3】
前記破壊型印字記録層側の少なくとも一部に印刷層を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項4】
前記印刷層の色が前記多層薄膜あるいは前記コレステリック液晶層を特定の方向から見たときの色と外観上同じであることを特徴とする請求項3に記載の識別媒体。
【請求項5】
前記多層薄膜側あるいは前記コレステリック液晶層側に暗色の顔料を含有する粘着層を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の識別媒体。
【請求項6】
前記多層薄膜あるいは前記コレステリック液晶層の少なくとも一部にホログラム加工または型押し加工が施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の識別媒体。
【請求項7】
前記多層薄膜あるいは前記コレステリック液晶層の少なくとも一部に層間剥離または剥離破壊構造を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の識別媒体。
【請求項8】
前記粘着層が、識別対象物から剥がすと対象物あるいは識別媒体のいずれかに、文字、記号あるいは模様が識別できるようになる転移性あるいは剥離性の粘着材であることを特徴とする請求項5に記載の識別媒体。
【請求項9】
前記多層薄膜あるいは前記コレステリック液晶層の両側の少なくとも一部にそれぞれ前記破壊型印字記録層と、前記印刷層とを備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の識別媒体。
【請求項10】
異なる屈折率を有する光透過性薄膜フィルムを多層に積層した多層薄膜の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体あるいは特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体の識別方法であって、
前記識別媒体を一乃至二以上の所定の視角から観察することを特徴とする識別媒体の識別方法。
【請求項11】
特定の円偏光を反射する円偏光選択性を有するコレステリック液晶層の少なくとも一面に、所定の条件を加えることにより当該部分が除去される破壊型印字記録層を備える識別媒体の識別方法であって、
前記識別媒体を所定の旋回方向の円偏光を選択的に透過する光学フィルタを介して観察することを特徴とする識別媒体の識別方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【国際公開番号】WO2005/063495
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516688(P2005−516688)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019525
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】