説明

識別情報設定装置、導通検査装置、及び、ワイヤハーネス構造体

【課題】中継コネクタを識別情報毎に製品管理する必要がなく、しかも、中継コネクタの小型化を図ることができる識別情報設定装置を提供する。
【解決手段】導通検査装置13は、ワイヤハーネス構造体3のワイヤハーネス6を搭載するワイヤハーネス搭載台14と、このワイヤハーネス搭載台14上に配置された各中継コネクタ7に接続可能な複数の第1コネクタ15と、を備えている。この導通検査装置13内の検査装置17は、第1コネクタ15を用いてワイヤハーネス6に電流を流して導通検査を行う。検査装置17は、さらに、複数の第1コネクタ15から互いに異なるIDを出力させて、各中継コネクタ7にIDを設定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別情報設定装置、導通検査装置、及び、ワイヤハーネス構造体に係り、特に、電子機器とこれを制御する電子制御装置とを接続するワイヤハーネス構造体の中継コネクタに識別情報を設定する識別情報設定装置、識別情報設定機能を備えた導通検査装置、及び、当該識別情報設定装置により識別情報が設定されるワイヤハーネス構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車、貨物車等の車両には、エアコンやワイパー、パワーウインドウなどを構成する多種多様な電子機器が搭載されている。これらの電子機器は、コンピュータなどで構成された電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)と電気的に接続されており、これら電子機器とECUとの間で電力や制御信号などが伝えられる。
【0003】
従来、上述した電子機器を制御する電子制御システムとして、例えば、図5に示すようなものが提案されている(例えば特許文献1)。同図に示すように、電子制御システム1は、車両に搭載された図示しない複数の電子機器と、この電子機器を制御するECU2と、これら複数の電子機器−ECU2間を接続するワイヤハーネス構造体3と、を備えている。
【0004】
上記ワイヤハーネス構造体3は、ECU2に接続されるワイヤハーネス6と、このワイヤハーネス6に接続され、ECU2と多重通信を行ってECU2と電子機器との間の通信を中継する複数の中継コネクタ7と、を備えている。上記ワイヤハーネス6は、電源線L1、グランド線L2及び信号線L3の3本の電線から構成されている。上記複数の中継コネクタ7及びECU2は、これら1本の電源線L1、グランド線L2及び信号線L3にそれぞれ共通接続されている。
【0005】
上記中継コネクタ7は、信号線L3を介してECU2との信号授受を行い、この信号授受に応じて当該中継コネクタ7に接続されている電子機器の動作を制御する。なお、中継コネクタ7には各々、中継コネクタ7全体の制御を司る図示しないCPUが内蔵されている。
【0006】
このように、一つの信号線L3にECU2と複数の中継コネクタ7とを接続して信号授受を実現するために各中継コネクタ7には、識別情報としてのIDが設定されている。そして、中継コネクタ7は各々、信号に送信先のIDと自己のIDとを添付して信号の送信を行うと共に、自己のIDが添付された信号の受信を行っている。
【0007】
上記IDの設定がないと一つの信号線L3に接続されたECU2と複数の中継コネクタ7との信号の授受ができなくなるため、IDの設定は必要不可欠なものである。従来、上記IDの設定としては、例えば中継コネクタ7のハウジング内の複数のID設定スイッチ群を内蔵したり、中継コネクタ7内に設けられた図示しない不揮発性メモリなどに、製造時に個別に記憶するなどして行われる。
【0008】
しかしながら、上述したIDの設定方法では、ID毎に製品管理が必要となる。また、外観が同じものだと中継コネクタ7同士区別できないため誤接続され、正規の制御ができなくなり、製品不良になる危険性もある。そこで、例えば、中継コネクタ7に通信や電源供給用の端子金具とは別に複数のID設定用端子金具を設け、この中継コネクタ7に接続される相手側のコネクタに複数のID設定用端子金具のうちIDに応じた一つと接続するセレクタ端子を設けることも考えられる(特許文献2)。しかしこの場合、上述したように通信や電源供給用の端子金具とは別に、ID接続用端子金具を複数設ける必要があり、中継コネクタ7のサイズが大きくなったり、形状が複雑になる、という問題がある。
【0009】
また、中継コネクタ7をワイヤハーネス6に一つずつ取り付ける取付装置と、取付装置によって1つの中継コネクタ7がワイヤハーネス6に接続される毎に接続された中継コネクタ7に対応するアドレスをワイヤハーネス6を介して送信するアドレス書込装置と、を備えたアドレス設定システムも提案されている(特許文献3)しかしながら、この場合、取付装置によって一つずつしか中継コネクタ7を取り付けることができないため、取付に時間がかかる、という問題がある。しかも、中継コネクタ7を取り付ける順番を間違えると、中継コネクタ7に誤ったIDが設定され、製品不良になる危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−225673号公報
【特許文献2】特開平10−6748号公報
【特許文献3】特開2009−212931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、中継コネクタを識別情報毎に製品管理する必要がなく、しかも、中継コネクタの小型化を図ることができる識別情報設定装置、導通検査装置、及び、ワイヤハーネス構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、複数の電子機器を制御する電子制御装置が接続されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスに接続され、前記電子制御装置と多重通信を行って前記電子制御装置と前記電子機器との間の通信を中継する複数の中継コネクタと、を備えたワイヤハーネス構造体の前記中継コネクタに識別情報を設定するための識別情報設定装置において、前記複数の中継コネクタ毎に設けられ、前記各中継コネクタの前記電子機器との接続コネクタ部に接続可能な複数の第1コネクタと、前記複数の第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる識別情報出力手段と、を備えたことを特徴とする識別情報設定装置に存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記ワイヤハーネスに取り付けられた、前記電子制御装置と接続するためのコネクタに接続可能な第2コネクタをさらに備え、前記識別情報出力手段が、前記第2コネクタから識別情報の設定命令を出力することを特徴とする請求項1に記載の識別情報設定装置に存する。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記ワイヤハーネスを搭載するワイヤハーネス搭載台をさらに備え、前記複数の第1コネクタが、前記ワイヤハーネス搭載台上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の識別情報設定装置に存する。
【0015】
請求項4記載の発明は、複数の電子機器を制御する電子制御装置が接続されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスに接続され、前記電子制御装置と多重通信を行って前記電子制御装置と前記電子機器との間の通信を中継する複数の中継コネクタと、を備えたワイヤハーネス構造体の導通検査を行う導通検査装置であって、前記複数の中継コネクタ毎に設けられ、前記各中継コネクタの前記電子機器との接続コネクタ部に接続可能な複数の第1コネクタと、前記複数の第1コネクタを用いて前記ワイヤハーネスに電流を流すことにより導通検査を行う導通検査手段と、を備えた導通検査装置において、前記複数の第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる識別情報出力手段をさらに備えたことを特徴とする導通検査装置に存する。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載の識別情報設定装置により中継コネクタの識別情報が設定されるワイヤハーネス構造体において、前記各中継コネクタには、識別情報の設定命令が入力されると、前記接続コネクタ部に入力される識別情報を自己の識別情報として設定する識別情報設定手段が設けられたことを特徴とするワイヤハーネス構造体に存する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、複数の第1コネクタが、複数の中継コネクタ毎に設けられ、識別情報出力手段が、複数の第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる。これにより、ワイヤハーネスに組み付ける前は全ての中継コネクタを同一にすることができるため、識別情報毎に中継コネクタを製品管理する必要がない。また、ID設定用の端子を中継コネクタに設ける必要もないので、中継コネクタの小型化を図ることができる。さらに、複数の中継コネクタをワイヤハーネスに取り付けた後に、識別情報を設定することができるため、複数の中継コネクタを一度にワイヤハーネスに取り付けることができ、組み立て時間を短縮することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、識別情報出力手段が、第2コネクタから識別情報の設定命令を出力するので、この設定命令を中継コネクタが受け取って、第1コネクタから入力された識別情報を自己の識別情報として設定することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、複数の第1コネクタが、ワイヤハーネス搭載台上に配置されているので、対応する位置に配置された第1コネクタに中継コネクタを接続して、識別情報を設定することができるため、識別情報の誤設定を防止できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、識別情報出力手段が、導通検査に用いる第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる。これにより、ワイヤハーネス構造体の導通検査工程で中継コネクタに識別情報を設定することができる。また、ワイヤハーネスに組み付ける前は全ての中継コネクタを同一にすることができるため、識別情報毎に中継コネクタを製品管理する必要がない。また、ID設定用の端子を中継コネクタに設ける必要もないので、中継コネクタの小型化を図ることができる。さらに、複数の中継コネクタにワイヤハーネスを取り付けた後に、識別情報を設定することができるため、複数の中継コネクタを一度にワイヤハーネスに取り付けることができ、組み立て時間を短縮することができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、設定命令を中継コネクタが受け取って、第1コネクタから入力された識別情報を自己の識別情報として設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の識別情報設定装置を組み込んだ導通検査装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す導通検査装置の電気構成図である。
【図3】図1及び図2に示す導通検査装置を構成する制御部の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】図5及び図6に示す中継コネクタ内に内蔵されたCPUの処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1に示す導通検査装置を用いてIDが設定されるワイヤハーネス構造体を組み込んだ電子制御システムを示す構成図である。
【図6】図5に示す中継コネクタを構成するチップの詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の識別情報設定装置及び導通検査装置について説明する前に、この識別情報設定装置及び導通検査装置を用いてID(識別情報)が設定されるワイヤハーネス構造体について図5及び図6を参照して説明する。図5は、図1に示す導通検査装置を用いてIDが設定されるワイヤハーネス構造体を組み込んだ電子制御システムを示す構成図である。図6は、図5に示す中継コネクタを構成するチップの詳細を示すブロック図である。
【0024】
図5に示す電子制御システム1は、図示しない車両に搭載されている。この電子制御システム1は、図示しない複数の電子機器と、これら電子機器を制御する電子制御装置(以下ECU)2と、複数の電子機器及びECU2間を通信可能に接続するためのワイヤハーネス構造体3と、を備えている。
【0025】
上記電子機器は、ECU2によって制御される各種装置であり、例えば、エアコン、ワイパー、パワーウインドウやドアスイッチなどの各種スイッチが挙げられる。上記ECU2には、車載バッテリから電源電圧VBが供給されている。上記ECU2は、電子制御システム1全体の制御を司るマイクロプロセッサ(MPU)4と、後述するワイヤハーネス構造体3などに接続される外部コネクタ5などから構成されている。
【0026】
上記MPU4は、後述する中継コネクタ7からスイッチのオン情報が入力されると、その操作スイッチに対応する電子機器のID及びその電子機器が接続される中継コネクタ7のID(識別情報)を宛先情報として付加した制御信号を出力する。
【0027】
上記外部コネクタ5は、MPU4に接続されている。上記外部コネクタ5は、後述する複数の中継コネクタ7と多重通信を行うための所定の通信プロトコル(例えば、LIN(Local Interconnect Network))などに対応した通信インタフェースを内蔵している。また、外部コネクタ5には、電源電圧VBの+側が出力される電源端子、電源電圧VBの−側が出力されるグランド端子及び上記通信インタフェースに接続された制御信号が出力される信号端子(何れも図示せず)が設けられている。
【0028】
上記ワイヤハーネス構造体3は、ワイヤハーネス6と、複数の中継コネクタ7と、を備えている。
【0029】
上記ワイヤハーネス6は、上記外部コネクタ5の電源端子に接続される電源線L1、グランド端子に接続されるグランド線L2、及び、信号端子に接続され各中継コネクタ7宛の制御信号が多重(シリアル)伝送される信号線L3の3本の電線からなり、この3本の電線の外周にビニルテープが巻き付けられている。
【0030】
このワイヤハーネス6の一端には、接続コネクタ8が設けられていて、この接続コネクタ8をECU2の外部コネクタ5に接続すると、外部コネクタ5の電源端子が電源線L1に接続され、グランド端子がグランド線L2に接続され、信号端子が信号線L3に接続される。また、ワイヤハーネス6から分岐した複数の分岐線6aの端末には、後述する中継コネクタ7がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
上記中継コネクタ7は、ワイヤハーネス6と電子機器とを接続するためのコネクタである。この中継コネクタ7は、アウタハウジング9と、このアウタハウジング9内に収容されている制御回路パッケージ10と、で構成されている。アウタハウジング9は、絶縁性の合成樹脂を用いて平坦な箱状に形成されており、筒状のフード部9aと、このフード部9aに連なった制御回路パッケージ収容室9bと、を一体に備えている。
【0032】
上記制御回路パッケージ10は、図示しない電子機器又は電子機器から引き出された電線に接続される端子金具T1と、分岐線6aを構成する電源線L1、グランド線L2、信号線L3に各々接続される端子金具T2と、封止体11と、を備えている。
【0033】
上記端子金具T1は、導電性の金属から構成されていて、一端が後述する封止体11内に挿入され、他端が封止体11の互いに対向する一対の面の一方から突出している。また端子金具T1の外部に突出された他端には、雄タブ端子が形成されていて、上記アウタハウジング9内のフード部9a内に収容されている。即ち、このフード部9aと端子金具T1とで、電子機器との接続コネクタ部Cを構成している。
【0034】
この接続コネクタ部Cのフード部9aに上記電子機器又は電子機器から引き出された電線の端末に取り付けられた図示しないコネクタのハウジングが嵌合されると、端子金具T1に形成された雄タブ端子にそのハウジング内に収容された雌型端子金具が電気的に接続される。これにより、端子金具T1には図示しない電子機器が接続される。
【0035】
上記端子金具T2は、導電性の金属から構成されていて、一端が後述する封止体11内に挿入され、他端が封止体11の互いに対向する一対の面の他方から突出している。この端子金具T2の外部に突出された他端には、圧接端子が形成されていて、その圧接端子にそれぞれ電源線L1、グランド線L2、信号線L3が圧接されている。
【0036】
上記封止体11は、制御回路が内蔵されたチップ12(図6)と、これら端子金具T1及びT2の一端と、をワイヤボンディングして接続された状態で、樹脂封止している。上記チップ12には、電源線L1及びグランド線L2を介して電源電圧VBが供給されている。上記封止体11内のチップ12は、図6に示すように、通信インタフェース12aと、入出力ポート12bと、メモリ12cと、CPU12dと、を備えている。
【0037】
上記通信インタフェース12aは、上述したECU2と多重通信を行うための所定プロトコルに対応したインタフェースである。上記入出力ポート12bには、上述した端子金具T2各々に接続された電子機器のIDが各端子金具T2に割り振られたアドレスとして格納されている。上記メモリ12cは、不揮発性のメモリであり、この中継コネクタ7のIDが記憶される。上記CPU12dは、この中継コネクタ7全体の制御を司る中央演算処理装置である。
【0038】
上記CPU12dは、図6に示すように、通信制御部12d−1と、入出力制御部12d−2と、ID制御部12d−3と、を備えている。上記通信制御部12d−1は、ワイヤハーネス6の信号線L3を介して上記ECU2から送信された制御信号を受信し、受信した制御信号に含まれる中継コネクタ7のIDが自己のIDでないときはその制御信号を破棄し、受信した制御信号に含まれる中継コネクタ7のIDが自己のIDであるときはその制御信号を後述する入出力制御部12d−2に出力する。また、上記入出力制御部12d−2は、通信制御部12d−1から制御信号を受信するとその制御信号に付加された電子機器のIDを読み取って、読み取ったIDの電子機器に接続された端子金具T2から上記制御信号を送信する。
【0039】
また、上記入出力制御部12d−2は、端子金具T2を介して電子機器からの制御信号を受信すると、その端子金具に割り振られた電子機器10のIDを送り元情報として付加して、通信制御部12d−1に供給する。通信制御部12d−1は、入出力制御部12d−2から制御信号を受信すると、さらに自己の中継コネクタ7のIDを送り元情報として付加して端子金具T1を介してECU2宛に送信する。
【0040】
上記ID制御部12d−3は、ワイヤハーネス6の信号線L3を介して上記ECU2から送信されたID設定命令が入力されると、端子金具T2から入力された信号に応じたIDを読み取り、その読み取ったIDを中継コネクタ7のIDとして設定し、メモリ12c内に格納すると共にメモリ12cに格納された設定済みフラグをオンする。詳しくは、上記ID制御部12d−3は、ID読取部12d−31と、セレクタ12d−32と、を備えている。
【0041】
ID読取部12d−31は、ECU2からID設定命令が入力されると、端子金具T2から入力された信号に応じたIDを中継コネクタ7のIDとしてメモリ12c内に格納する。即ち、端子金具T2が3端子あったとすると、“000”のときはIDを「0」とし、“001”のときはIDを「1」とし、“010”のときはIDを「2」とする。
【0042】
上記セレクタ12d−32は、端子金具T2からの入力を入出力制御部12d−2とID読取部12d−31との間で切り換える。セレクタ12d−32は、IDが未設定であり設定フラグがオフのときにID読取部12d−31の機能を有効にすると共にセレクタ12d−32によって端子金具T2からの入力をID読取部12d−31側に切り替える。この切り替えにより入出力制御部12d−2及び通信制御部12d−1によるECU2−電子機器間の通信動作が停止し、ID読取部12d−31によるIDの設定が行われる。
【0043】
一方、セレクタ12d−32は、ID設定命令に応じてIDの設定が行われ設定フラグがオンのときに、ID読取部12d−31の機能を無効にすると共にセレクタ12d−32によって端子金具T2からの入力を入出力制御部12d−2側に切り換える。この切り替えにより、ID読取部12d−31によるIDの設定動作が行われることなく、入出力制御部12d−2及び通信制御部12d−1によるECU2−電子機器間の通信動作が行われる。
【0044】
次に、上述したワイヤハーネス構造体3の導通検査を行う導通検査装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の識別情報設定装置を組み込んだ導通検査装置の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す導通検査装置の電気構成図である。
【0045】
図1に示すように、導通検査装置13は、ワイヤハーネス6を搭載するワイヤハーネス搭載台14と、このワイヤハーネス搭載台14上に配置された複数の第1コネクタ15及び第2コネクタ16と、これら第1コネクタ15及び第2コネクタ16に接続された検査装置17と、を備えている。
【0046】
上記ワイヤハーネス搭載台14は、平板状に形成されている。上記第1コネクタ15は、複数の中継コネクタ7毎に設けられている。即ち、ワイヤハーネス6に取り付けられた中継コネクタ7の数と、ワイヤハーネス搭載台14に配置された第1コネクタ15の数とは、互いに等しい。第1コネクタ15は、中継コネクタ7のフード部9aに嵌合するハウジングと、このハウジングに収容され、中継コネクタ7の端子金具T1に電気的に接続される端子金具と、から構成され、中継コネクタ7に設けた接続コネクタ部Cと接続可能に設けられている。
【0047】
第2コネクタ16は、接続コネクタ8のハウジングに嵌合するハウジングと、このハウジングに収容され、接続コネクタ8の端子に電気的に接続される端子金具と、から構成され、接続コネクタ8に接続可能に設けられている。これら第1コネクタ15及び第2コネクタ16は、検査装置17に接続されている。
【0048】
上記検査装置17は、図2に示すように、第1コネクタ15及び第2コネクタ16の端子金具に接続される検査・ID設定回路18と、この検査・ID設定回路18を制御する制御部19と、表示器20と、を有している。
【0049】
上記検査・ID設定回路18は、制御部19の制御に基づいて検査信号をワイヤハーネス6に流して、ワイヤハーネス6の導通状態を検査できるようになっている。また、検査・ID設定回路18は、制御部19の制御に基づいて第2コネクタ16からID設定命令を出力したり、各第1コネクタ15から互いに異なるIDを出力したりする。
【0050】
制御部19は、CPUから構成され、後述する導通検査処理やID設定処理などを行い、その結果を上記表示器20に表示する。
【0051】
次に、上述した構成の導通検査装置13を用いた導通検査手順、IDの設定手順、通信検査手順について図3及び図4を参照して以下説明する。図3は、図1及び図2に示す導通検査装置13を構成する制御部19の処理手順を説明するためのフローチャートである。図4は、図5及び図6に示す中継コネクタ7内に内蔵されたCPU12dの処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、図1に示すように、ワイヤハーネス搭載台14にワイヤハーネス6を搭載して、中継コネクタ7の接続コネクタ部Cを第1コネクタ15に接続すると共に接続コネクタ8を第2コネクタ16に接続する。その後、導通検査装置13の電源をオン又は検査開始操作を行う。
【0052】
この電源オンや検査開始操作などに応じて導通検査装置13内の制御部19は、図3に示す処理を開始して、まず導通検査処理を行う(ステップS1)。この導通検査処理において、制御部19は、導通検査手段として働き通常の導通検査と同様に、第1、第2コネクタ15、16を用いてワイヤハーネス6に検査信号を流してワイヤハーネス6の通電状態を検査を行う。この導通検査処理で異常が検出されると(ステップS2でY)、制御部19は、表示器20に通電異常を表示して(ステップS3)、処理を終了する。
【0053】
一方、導通検査処理で異常が検出されなければ(ステップS2でN)、制御部19は、第2コネクタ16を介して電源線L1−グランド線L2間に電源電圧VBを供給する(ステップS4)。これにより、各中継コネクタ7に電源電圧VBが供給される。
【0054】
次に、制御部19は、第2コネクタ16及び信号線L3を介して全中継コネクタ7宛にID設定命令を送信する(ステップS5)。その後、制御部19は、各第1コネクタ15から互いに異なるIDを出力させる(ステップS6)。このステップS5及びS6により制御部19は、請求項中の識別情報出力手段として機能する。次に、制御部19は、第2コネクタ16及び信号線L3を介して全ての中継コネクタ7に対してそのIDを添付したコマンドを順次送信する(ステップS7)。
【0055】
次に、制御部19は、コマンド送信に対して各中継コネクタ7からのレスポンスがあるか否かを判定し(ステップS8)、全ての中継コネクタ7からレスポンスがあれば(ステップS8でY)、表示器20に正常を表示する(ステップS9)。その後、制御部19は、第2コネクタ16を介しての電源電圧VBの供給を遮断して(ステップS10)、処理を終了する。
【0056】
これに対して、コマンド送信した各中継コネクタ7のうち、1つでもレスポンスがなければ(ステップS8でN)、表示器20に通信異常を表示すると共にレスポンスのない中継コネクタ7を表示する(ステップS11)。その後、制御部19は、ステップS10に進む。
【0057】
次に、中継コネクタ7内のCPU12dの動作について説明する。上述したステップS4により導通検査装置13から電源電圧VBが供給されると中継コネクタ7内のCPU12dは、図4に示す処理を開始して、まずID設定済みフラグがオンしているか否かを判定する(ステップS11)。ID設定済みフラグがオンしていれば(ステップS11でY)、CPU12dは通常の通信動作処理を行う(ステップS15)。これに対して、ID設定済みフラグがオフしていればID設定命令待ち状態となる(ステップS12)。
【0058】
次に、上述したステップS3により導通検査装置13からのID設定命令を受信すると(ステップS12でY)、中継コネクタ7内のCPU12dは、第1コネクタ15を介して端子金具T2から入力されたIDを読み取り(ステップS13)、識別情報設定手段として働き、読み取ったIDを自己のIDとしてメモリ12cに格納した後(ステップS14)、ステップS15に進み通常の通信動作処理に進む。この通信動作処理において、中継コネクタ7は、上述したステップS7により通電検査装置13からコマンドを受信すると、自己のIDを送り元情報として添付したレスポンスを送信する。
【0059】
上述した導通検査装置13によれば、制御部19が、導通検査に用いる複数の第1コネクタ15から互いに異なるIDを出力させる。これにより、ワイヤハーネス構造体3の導通検査工程で中継コネクタ7にIDを設定することができる。また、ワイヤハーネス6に組み付ける前は全ての中継コネクタ7を同一にすることができるため、ID毎に中継コネクタ7を製品管理する必要がない。また、ID設定用の端子を中継コネクタ7に設ける必要もないので、中継コネクタ7の小型化を図ることができる。さらに、複数の中継コネクタ7をワイヤハーネス6に取り付けた後に、IDを設定することができるため、複数の中継コネクタ7を一度にワイヤハーネス6に取り付けることができ、組み立て時間を短縮することができる。
【0060】
また、上述した導通検査装置13によれば、制御部19が、第2コネクタ16からID設定命令を出力するので、このID設定命令を中継コネクタ7が受け取って、第1コネクタ15から入力されたIDを自己のIDとして設定することができる。
【0061】
また、上述した導通検査装置13によれば、複数の第1コネクタ15が、ワイヤハーネス搭載台14上に配置されているので、対応する位置に配置された第1コネクタ15に中継コネクタ7を接続して、IDを設定することができるため、IDの誤設定を防止できる。
【0062】
また、上述したワイヤハーネス構造体3によれば、各中継コネクタ7のCPU12dが、ID設定命令が入力されると、接続コネクタ部Cに入力されるIDを自己のIDとして設定する。これにより、このID設定命令を中継コネクタ7が受け取って、第1コネクタ15から入力されたIDを自己のIDとして設定することができる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、導通検査装置13に識別情報設定装置を組み込んでいたが本発明はこれに限ったものではない。導通検査装置13とは別に識別情報設定装置を設けてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、中継コネクタ7のアウタハウジング9内に封止体11が収容されていて、この封止体11内でチップ12と端子金具T1及びT2とをワイヤボンディングして接続していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、中継コネクタ7のアウタハウジング9内に基板を収容し、この基板上でチップ12と端子金具T1及びT2とを接続するようにしてもよい。
【0065】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
2 ECU(電子制御装置)
6 ワイヤハーネス
7 中継コネクタ
12d CPU(識別情報設定手段)
13 導通検査装置(識別情報設定装置)
14 ワイヤハーネス搭載台
15 第1コネクタ
16 第2コネクタ
19 制御部(識別情報出力手段、導通検査手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器を制御する電子制御装置が接続されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスに接続され、前記電子制御装置と多重通信を行って前記電子制御装置と前記電子機器との間の通信を中継する複数の中継コネクタと、を備えたワイヤハーネス構造体の前記中継コネクタに識別情報を設定するための識別情報設定装置において、
前記複数の中継コネクタ毎に設けられ、前記各中継コネクタの前記電子機器との接続コネクタ部に接続可能な複数の第1コネクタと、
前記複数の第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる識別情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする識別情報設定装置。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスに取り付けられた、前記電子制御装置と接続するためのコネクタに接続可能な第2コネクタをさらに備え、
前記識別情報出力手段が、前記第2コネクタから識別情報の設定命令を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の識別情報設定装置。
【請求項3】
前記ワイヤハーネスを搭載するワイヤハーネス搭載台をさらに備え、
前記複数の第1コネクタが、前記ワイヤハーネス搭載台上に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の識別情報設定装置。
【請求項4】
複数の電子機器を制御する電子制御装置が接続されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスに接続され、前記電子制御装置と多重通信を行って前記電子制御装置と前記電子機器との間の通信を中継する複数の中継コネクタと、を備えたワイヤハーネス構造体の導通検査を行う導通検査装置であって、前記複数の中継コネクタ毎に設けられ、前記各中継コネクタの前記電子機器との接続コネクタ部に接続可能な複数の第1コネクタと、前記複数の第1コネクタを用いて前記ワイヤハーネスに電流を流すことにより導通検査を行う導通検査手段と、を備えた導通検査装置において、
前記複数の第1コネクタから互いに異なる識別情報を出力させる識別情報出力手段を
さらに備えたことを特徴とする導通検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の識別情報設定装置により中継コネクタの識別情報が設定されるワイヤハーネス構造体において、
前記各中継コネクタには、識別情報の設定命令が入力されると、前記接続コネクタ部に入力される識別情報を自己の識別情報として設定する識別情報設定手段が設けられた
ことを特徴とするワイヤハーネス構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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