説明

識別機能付きケーブル

【課題】 従来のケーブルでは、引き抜くケーブルを誤るおそれがある。
【解決手段】 本件出願の識別機能付きケーブルは、外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの両端付近外周又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにした。また、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの外部に露出する心線両端面又は/及び軸方向任意の外周位置を光入出射部とすることもできる。更に、光ファイバをケーブルの外周に螺旋状に巻き付けるとか、二本以上の光ファイバをケーブルの外周の周方向異なる二以上の箇所に併設することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器間、コンピュータと周辺機器間といった各種機器間の接続、或いは電源への家電製品の接続等に使用される識別機能付きケーブルに関し、特に、ケーブルの判別が困難なほど多数本のケーブルやコード(以下これらをまとめて「ケーブル」という。)が配線される箇所への配線に適するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会では、ネットワークの高速化及び多機能化が求められ、従来よりもネットワークシステムが多層化(階層化)し、複雑になっている。それら機器間の接続には、通称、パッチコードと呼ばれているコネクタ付きのデータ送信用ケーブルが使用されている。使用されるケーブルの本数は、小規模なネットワークシステムのサーバでも数十本、電話局などの大規模なネットワークシステムでは数百本もの多数になる。ケーブルの通常の長さはそれぞれ異なるが、5m〜20m程度のものが多く利用されている。これらケーブルは通常は機器の背面又は前面の接続端子に接続されて機器設置室内に引き回されており、機器の背面又は前面に密集しているのが実情である。
【0003】
これら機器は定期的に点検、機器の更新、切替えなどが行なわれている。その場合、機器間を接続しているケーブルが抜き差しされる。この場合、ケーブルは前記のように密集しているためケーブルの抜き差しの間違いがあり、これが原因で点検、保守作業時にネットワークのトラブルが多々発生している。このトラブル発生はデータの破損や漏洩、システムダウン等に繋がり、情報化社会の今日、回線によっては大きな社会問題に発展しかねない危険がある。
【0004】
前記トラブル発生を防止するため、従来は、ケーブルを色違いにしたり、ケーブルに識別票(タグ)を取付けたりして、ケーブルを視認できるようにしている。しかし、それだけでは、密集している多くのケーブルの中から、抜き差しするケーブルの両端の対応関係を正確に確認することは困難であり、ケーブルの抜き差しの間違いは依然として解消されていない。
【0005】
前記課題を解消するために従来は特許文献1記載のようなケーブルが開発されている。このケーブルは一端のコネクタ側に導通クリップを接触させ、他端のコネクタ側にブザーのリード線を接触させると、ブザーからブザー音が発生して、ケーブルの両端位置を確認できるようにしたものであり、このケーブルを用いることにより、密集している多数本のケーブルの中から抜き差しするケーブルの特定が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特許第3363132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載のケーブルを使用しても、ブザーの鳴ったケーブルを目視で確認するときに見間違えたり、ケーブルを確認できたとしても抜き差し前にブザーをケーブルから離すとブザー音が停止するため抜き差しの直前になってケーブルを間違えるといったことがあり、結局は抜き差しの間違いを完全解消することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーブルの両端位置を目視で確実に特定でき、ケーブルの抜き差しの間違いを防止できる識別機能付きケーブルを提供するものである。
【0009】
本件出願の識別機能付きケーブルは、請求項1記載のように、外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの両端付近外周又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにした。
【0010】
本件出願の識別機能付きケーブルは、請求項2記載のように、外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの外部に露出する心線両端面又は/及び軸方向任意の外周位置を光入出射部とし、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにした。
【0011】
本件出願の識別機能付きケーブルは、請求項3記載のように、外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバが前記ケーブルの外周の周方向異なる二以上の箇所にケーブルの軸方向に沿って併設され、夫々の被覆光ファイバの両端面又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにした。
【0012】
本件出願の識別機能付きケーブルは、請求項4記載のように、外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外周に被覆光ファイバが螺旋状に巻き付けられ、その被覆光ファイバの両端面又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本件出願の請求項1〜請求項4記載の識別機能付きケーブルは、ケーブルの外側に併設した被覆光ファイバの両端付近外周、両端部、軸方向任意の外周位置に光入出射部を形成し、いずれか一の光入出射部から入射した光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されるようにしたので次のような効果がある。
(1)通信機器に差し込まれているケーブルを抜くとき或いは通信機器にケーブルを差し込むときにいずれか一つの光入出射部から光を入射するだけで、密集している多数本のケーブルの中から抜き差しするケーブル及びその両端のコネクタを見誤ることなく目視で確認でき、データの破損や漏洩、システムダウン等のトラブル発生を未然に防止することができる。
(2)作業者が光源をケーブルの光入出射部に接触させなくても接近させるだけでケーブルに光を入射することができ、確認作業が容易である。
(3)光入出射部を光ファイバの両端付近に設けたので、光ファイバ両端にコネクタを取り付けることにより、コネクタの確認も容易になり、機器へのコネクタの抜き差し間違いの防止が確実になる。
(4)光入出射部を光ファイバの外部に露出させたので、光入出射部へ光を入射させ易く、光入出射部から出射する光が確実に外部に出射し、その光を容易且つ確実に確認できる。
(5)光入出射部を光ファイバの軸方向任意の外周位置に形成した場合、ケーブルをその長手方向任意の位置で確認することができるようになる。
【0014】
請求項2記載の識別機能付きケーブルでは、光ファイバの両端を光入出射部としたので、わざわざ光入出射部を形成する必要がなく、構成が簡潔で製作が容易になる。
【0015】
請求項3記載の識別機能付きケーブルは、光ファイバをケーブルの外周に螺旋状に巻き付けたので、光ファイバの軸方向任意の外周位置に光入出射部を形成してあれば、光ファイバ及びそれが巻きつけられているケーブルをそれらの長手方向どの位置においても確認することができる。
【0016】
請求項4記載の識別機能付きケーブルは、二本以上の光ファイバをケーブルの外周の周方向異なる二以上の箇所に併設したので、光ファイバの軸方向任意の外周位置に光入出射部を形成してあれば、ケーブルが捩れても光ファイバがケーブルの陰に隠れて見えにくくなるとか、見えなくなるといったことが無く確実に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施形態1)
本発明の識別機能付きケーブルの実施形態の一例を図1に基づいて説明する。図1に示す識別機能付きケーブルは、通信用のケーブル1の両端に通信機器に脱着可能なコネクタ2が取り付けられ、そのケーブル1の外周にその軸方向に沿って光ファイバ3が併設されている。
【0018】
前記ケーブル1は金属心線の同軸ケーブルであっても、光ファイバ心線の光ファイバケーブルであってもよい。いずれの場合も心線の外周が絶縁材、補強材等で被覆されている。このケーブル1の両端に取付けられるコネクタ2は図示した形状のもの、或いは他の形状のものとすることができる。
【0019】
前記光ファイバ3は前記ケーブル1を判別するためのものであり、心線が被覆材4で被覆されている。心線はガラス製のものでもプラスティック製のものでもよい。光ファイバ3は前記ケーブル1の外周に沿わせてその被覆部をケーブル1の被覆に固定してある。固定手段は接着材による接着、熱溶着、テープの巻き付けといった任意手段で行うことができる。
【0020】
図1に示す光ファイバ3の両端付近(コネクタ2の手前)の外周面には図1に示す光入出射部5が形成されている。この光入出射部5は一方の光入出射部5から光ファイバ3の心線に光を入射すると、心線内を伝播(伝送)された光が他方の光入出射部5から外部に出射するようにした部分である。光入出射部5は光ファイバ3の被覆材4を剥離して光ファイバ3を外部に露出させ、その外周面に傷を付けたり切除したり曲げたりして光反射面を設けて形成してある。光入出射部5は光ファイバ3の軸方向両端寄り位置(コネクタ寄りの位置)に形成してあるが、光ファイバ3の軸方向任意の数箇所に形成して、それら光入出射部5から出射される光を確認し易くしておくこともできる。光ファイバ3は光入出射部5をケーブル1の外側に向けてケーブル1に固定して、光入出射部5に光を入射し易くすると共に光入出射部5から出射する光が外部から見易くなるようにしてある。
【0021】
(実施形態2)
本発明の識別機能付きケーブルの第2の実施形態を図2に基づいて説明する。図2の識別機能付きケーブルの基本的構成は実施形態1のものと同じであり、異なるのは、光ファイバ3の両端面をコネクタ2の手前に露出させ、この両端面を光入出射部5としたことである。この場合、光ファイバ3の両端付近の被覆材4をケーブル1の被覆に固定しないで、
光ファイバ3の両端部を持ち上げたりケーブル1を曲げたりして光ファイバ3の両端面の光入出射部5から光を入射しやすくすることもできる(図2中破線部参照。)。また、両端の被覆材4を長めに剥離して光ファイバ3の両端部を長めに露出させて、光入射を行い易く、また光出射を確認し易くすることもできる。その場合、露出した光ファイバ3の端部をキャップ等で保護することもできる。
【0022】
(実施形態3)
本発明の識別機能付きケーブルの光ファイバ3は、光ファイバ3の両端寄り位置に光入出射部5を形成したり、光ファイバ3の両端面を光入出射部5とする他に、光入出射部5を光ファイバ3の軸方向任意の数箇所に形成することもできる。その場合、被覆材4を透明或いは半透明にして、各光入出射部5から出射される光を被覆材4の外周から透視できるようにすることもできる。
【0023】
(実施形態4)
図1、図2に示す光ファイバ3はケーブル1に平行に沿わせてあるが、図3に示すように、光ファイバ3はケーブル1の外周に螺旋状に巻き付けることもできる。この場合、図3に示すように、光入出射部5を両端寄り部分に加えて、光ファイバ3の軸方向任意の数箇所に形成すれば光ファイバ3及びそれが巻きつけられているケーブル1をそれらの長手方向どの位置においても確認することができる。被覆材4を透明或いは半透明にして、各光入出射部5から出射される光を被覆材4の外周から透視できるようにすることもできる。
【0024】
(その他の実施形態)
光ファイバ3をケーブル1に沿って平行に併設する場合は、図4に示すように、二本以上の光ファイバ3をケーブル1の周方向異なる二箇所以上に取り付けることもできる。このようにすれば機器に接続されたケーブル1が捩れても光ファイバ3がケーブルの陰に隠れて見えにくくなるとか、見えなくなるといったことが無く確実に確認できる。この場合も、図4に示すように、光ファイバ3の両端面を光入出射部5とすると共に、光入出射部5を光ファイバ3の軸方向任意の数箇所に形成することができる。
【0025】
ケーブル1に併設される光ファイバ3は被覆されていない裸光ファイバ3であってもよい。裸光ファイバ3は外部にむき出しのままにしておくこともできるが、ケーブル1の被覆時に同時に被覆することも可能である。
【0026】
図1、図2では光ファイバ3をその両端面がコネクタカバー6の手前に露出させてあるが、両端面はコネクタカバー6で被覆して外部に露出しないようにすることもできる。このように包み込んで被覆した場合は、光ファイバ3の両端面に、配線された周囲のケーブルや光ファイバが接触しないため両端面が損傷しにくくなる。
【0027】
コネクタ2はケーブル1の両端に設ける場合に限らず一端のみに備えることもできる。その場合、コネクタ2を備えないケーブル1の端部は通信機器やそれに接続する周辺機器に固定接続しておくことが可能である。
【0028】
(本発明の識別機能付きケーブルの使用形態)
以上のように構成された本発明の識別機能付きケーブルは、これまでのケーブルと同様に夫々の端部のコネクタ2を通信機器に差し込んで使用する。識別機能付きケーブルが接続された通信機器の点検や組替え、移設、増設等を行う場合はコネクタ2を抜き差しして差し替える。この場合、コネクタ2を引き抜く前に或いは差し込む前に抜き差しするケーブルを確認する。確認するには図1、図2に示すように抜き差しするケーブル1に併設してある光ファイバ3の一方の光入出射部5に作業者が光源7を接近或は接触させて光ファイバ心線に光を入射して他方の光入出射部5から出射させ、その出射光を目視で確認し、確認されたケーブル1のコネクタ2を抜き差しする。入射する光は電球やLEDから発光される光の他にレーザ光とすることもできる。前記光源7にはペンライト、サーチライト等の携帯式の各種ライトや、現場の商用電源から電源を取出して使用可能な光源、或いは本発明の識別機能付きケーブル用に新たに開発される専用の光源、更には、携帯式或いは固定式のレーザ発振器(レーザ光源)などの任意のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の識別機能付きケーブルは、各種通信機器に使用されるコネクタ付きのデータ送信用のケーブルに限られず、家電等を含む各種電気機器用のコネクタ付きコード等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の識別機能付きケーブルの実施形態の一例を示す正面図。
【図2】本発明の識別機能付きケーブルの実施形態の他の一例を示す正面図。
【図3】本発明の識別機能付きケーブルの実施形態のその他の一例を示す正面図。
【図4】本発明の識別機能付きケーブルの実施形態のその他の一例を示す正面図。
【符号の説明】
【0031】
1 ケーブル
2 コネクタ
3 光ファイバ
4 被覆材
5 光入出射部
6 コネクタカバー
7 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの両端付近外周又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されることを特徴とする識別機能付きケーブル。
【請求項2】
外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外側にその軸方向に沿って併設され、被覆光ファイバの外部に露出する心線両端面又は/及び軸方向任意の外周位置を光入出射部とし、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されることを特徴とする識別機能付きケーブル。
【請求項3】
外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバが前記ケーブルの外周の周方向異なる二以上の箇所にケーブルの軸方向に沿って併設され、夫々の被覆光ファイバの両端面又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されることを特徴とする識別機能付きケーブル。
【請求項4】
外周が被覆されたケーブルの一端又は両端に機器へ脱着可能なコネクタが設けられ、被覆光ファイバがそのケーブルの外周に被覆光ファイバが螺旋状に巻き付けられ、その被覆光ファイバの両端面又は/及び軸方向任意の外周位置に光入出射部が形成され、いずれか一の光入出射部から入射された光が他のいずれかの光入出射部から目視可能に出射されることを特徴とする識別機能付きケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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