識別装置及び識別方法
【課題】小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することを可能とし、ATM等に組み込んで使用する信頼性の高い識別装置を実現する。
【解決手段】光源2によりホログラムフィルム10aを光照射し、それぞれ異なる方向に複数の貫通孔11が形成された3枚の板状光路部材3a,3b,3cが積層された光路部材3を用い、ホログラムフィルム10aからの反射光を3つの異なる方向に出射させ、ディテクタアレイ4で受光することで、板状光路部材3a,3b,3cに対応した3種のホログラム像を得る。
【解決手段】光源2によりホログラムフィルム10aを光照射し、それぞれ異なる方向に複数の貫通孔11が形成された3枚の板状光路部材3a,3b,3cが積層された光路部材3を用い、ホログラムフィルム10aからの反射光を3つの異なる方向に出射させ、ディテクタアレイ4で受光することで、板状光路部材3a,3b,3cに対応した3種のホログラム像を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別パターンを例えばそのホログラム像により真偽を判定する識別装置及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣又はクレジットカード等には、偽造防止のためにしばしばホログラムフィルムを添付するという対策が行われている。一般的には、人間が視認により異常の有無を確認しているが、現金自動預け入れ払い機(ATM)等にセンサを組み込むことで紙幣に添付したホログラムフィルムを識別できるようにすれば、偽造券の判別に有用である。
【0003】
紙幣等に添付されたホログラムフィルムは、光源又は観察の角度によって、どのような像が見えるかが決まり、角度により異なる数種類の像が現れるように造られている場合がある。このため、ホログラムが本物であるか否かを識別するには、複数の角度から観察することが必要である。例えば、見えるべき像が1種類であれば、像が見える角度と、像が見えない角度の2つの角度から観察することで、ホログラムの真偽を判別することができる。
【0004】
ホログラムを観察するには、特定の角度、例えばフィルム面に垂直な角度から照明光を照射し、レンズと撮像素子(例えばCCDカメラ)を用いて、様々な角度からホログラムフィルムを観察すれば良い。主にフィルム面の垂直軸周りの方向によって、観察される像が違って見えるので、レンズと撮像素子からなる観察装置を、ホログラムフィルムに対して垂直な軸の周りに方向を変化させてゆくことで像を確認することができる。複数の角度からの観察像を同時に取得するためには、複数のレンズ及び撮像素子をセットで配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−69947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホログラムの観察に、複数のレンズ及び撮像素子をセット配置した場合、レンズが焦点を結ぶにはある程度の距離が必要なために光路長が比較的長くなる。更に、ホログラムフィルムとのレンズとの角度が異なるセットを複数装備するためには、大きなスペースを必要とすることになり、ATMの端末内に適宜収納することは困難である。
【0007】
特許文献1には、カード等の局所的な部分(ホログラム)に光源から光を照射し、特定の角度への反射光強度が閾値を越えるか否かをディテクタで読み取る装置が開示されている。この場合、レンズを使用せずに直接にディテクタで光を受けており、設置スペースは小さくなる。しかしながら、複数の照射スポットからの反射光が入り乱れて近隣のディテクタにも入射してしまうため、ホログラムの像観察には適さない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することを可能とし、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
識別装置の一態様は、識別パターンに光を照射する光源と、前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材と、前記光路部材から出射させた前記反射光を検出する検出器とを含む。
【0010】
識別方法の一態様は、識別パターンに光を照射し、前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材を介して、前記光路部材から前記反射光を出射させ、前記光路部材から出射させた前記反射光を検出器で検出した後、データ処理部でホログラム像を形成し、前記ホログラム像を、前記識別パターンについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、前記識別パターンの真偽を判定する。
【発明の効果】
【0011】
上記の各態様によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態による識別装置を示す模式図である。
【図2】各板状光路部材の構成を示す概略平面図である。
【図3】ディテクタアレイの構成を示す概略正面図である。
【図4】本実施形態において形成されるホログラム像の一例を示す模式図である。
【図5】各板状光路部材の貫通孔の形成角度を説明するための模式図である。
【図6】各板状光路部材の構成を示す概略平面図である。
【図7】本実施形態による識別方法をステップ順に示すフロー図である。
【図8】本実施形態による識別装置の変形例1を示す模式図である。
【図9】本実施形態による識別装置の変形例2を示す模式図である。
【図10】本実施形態による識別装置の変形例3を示す模式図である。
【図11】図10の識別装置における各板状光路部材の方位角を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、識別装置及び識別方法の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態による識別装置を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。
【0014】
本実施形態では、例えば紙葉10に付けられた識別パターンであるホログラムフィルム10aを観察対象とする。
識別装置において、1は、紙葉10を載置する搬送面1aを有し、搬送面1aに載置された紙葉10を例えば矢印Aの方向に搬送する搬送部である。2は、紙葉10のホログラムフィルム10aに光を照射する光源である。3は、ホログラムフィルム10aからの反射光を2つ以上、ここでは3つの異なる方向に出射させる光路部材である。4は、光路部材3から出射させた反射光を検出するディテクタアレイである。5は、ディテクタアレイ4で検出した反射光から形成されるホログラム像を、ホログラムフィルム10aについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、ホログラムフィルム10aの真偽を判定するデータ処理部である。
【0015】
光源2は、適度に発散する光を照射できる例えばLED又は蛍光管等を有している。
識別装置において現れるホログラム像は、観察する方向だけでなく、光源2の照射方向にも依存しており、照射方向が若干変化すると、反射によりホログラム像の見える方向が若干変化する。このため、照射光が広い角度範囲の光線を含むものであれば、1つのパターン像が広い観察範囲で見えるようになり、特定の角度のみで見えるというホログラムの特徴を識別し難くなる。このため、光源2としては狭い角度の光線だけを照射するものが適しており、±5度程度の範囲の光線を含む、例えばLED又は蛍光管等を備えた光源が望ましい。
【0016】
光路部材3は、複数、ここでは3枚の板状光路部材3a,3b,3cが例えば積層されて構成される。板状光路部材3a,3b,3cは、図2(a)〜(c)に示すように、それぞれ反射光を入光面から出光面に向けて通過させる光路となる、互いに平行な複数の貫通孔11を有している。貫通孔11は、一列に複数配設されているが、2列以上に複数配設するようにしても良い。板状光路部材3aの貫通孔11と、板状光路部材3bの貫通孔11と、板状光路部材3cの貫通孔11とでは、それぞれ形成される方向(形成角度)が相異なる。
【0017】
光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cでは、貫通孔11により、それぞれ特定方向の反射光のみを選別して透過するように構成されている。光路部材3は、例えばプラスチック又は金属等からなり、少なくとも貫通孔11の内壁が反射光を遮光する材質であるか、或いは当該内壁に光反射を防止する表面処理が施されている。この構成により、主に直接的に貫通孔11を通り抜けた、狭い角度範囲のみの反射光がディテクタアレイ4で検出される。貫通孔11は例えば、配列ピッチを1mm程度、孔径を0.7mm程度、長さを15mmとすることで、充分に狭い角度範囲にして1mm程度の空間分解能の観察が可能となる。
【0018】
ディテクタアレイ4は、図3に示すように、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出するものである。ディテクタアレイ4の受光面には、板状光路部材3a,3b,3cの各貫通孔11に対応するようにマトリクス状にフォトダイオード等の受光素子4aが並列している。ディテクタアレイ4では、板状光路部材3a,3b,3cに対応して3行の受光素子4aの素子ライン4A,4B,4Cが設けられている。板状光路部材3a,3b,3cの夫々について、貫通孔11の数だけの測定点を持つ強度プロファイルが得られる。なお、ディテクタアレイ4において、例えば6行以上(各板状光路部材にそれぞれ2行以上が対応する。)の受光素子4aのラインを設けるようにすることも考えられる。
【0019】
図4(a)〜(c)に示すように、板状光路部材3a,3b,3cに対応するディテクタアレイ4の素子ライン4A,4B,4Cから、それぞれライン状の光強度データ(例えばラインデータ21a,22a,23a)が得られる。搬送部1による紙葉10の搬送により次々に取得したラインデータ21a,22a,23aをマッピングすることにより2次元のホログラム像が形成される。このようにして板状光路部材の個数分のホログラム像(ここでは、板状光路部材3a,3b,3cによる3つのホログラム像21,22,23)が得られる。
【0020】
データ処理部5は、ディテクタアレイ4と接続されており、得られたホログラム像を、予め登録されている正規のホログラム像と比較し、正規のホログラム像と一致又は類似すると判断した場合に、当該ホログラム像が正規のホログラム像に対応した画像であると判断する。検出器4で形成されたホログラム像の、正規のホログラム像との比較は、例えば各点の光強度を閾値により二値化した後、パターンマッチングにより行われる。データ処理部5の機能は、例えばROM又はハードディスク等の記憶媒体から読み出したプログラムをコンピュータのCPUで実行することにより実現される。
【0021】
ホログラムフィルム10aのようなフィルム状のホログラムでは、垂直方向から照明した場合には、フィルム面に垂直な軸の周りのどちらの方向(方位)から観察するかにより現れるホログラム像が基本的に決定される。垂直からの傾き角は、ホログラム像のパターンに影響を与えない場合が多い。
本実施形態において、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11の角度を変えることで変化させているのは、垂直軸回りの方位である。図2では、板状光路部材3a,3b,3cは、搬送方向Aからの観察と、搬送方向Aから両側に例えば30°ずらした方向からの観察とを行うように貫通孔11がそれぞれ形成されている。
【0022】
搬送部1の搬送面1aと貫通孔11を延長した面とが交わるラインの部分が観測される部位になり、通常ではこのラインを搬送方向Aと直交する方向に設定する。そのため、必然的に貫通孔11は、搬送方向A或いはその逆方向に傾いて形成されることになる。但し、本実施形態では、これ以外の傾斜方向に貫通孔11を形成しても有効である。
【0023】
図5は、各板状光路部材の貫通孔の形成角度を説明するための模式図である。
図5では、搬送部1の搬送面1aをX−Y平面とする。X−Y平面において、直線OCを含むX軸方向を方位0°として、X軸と直線ODとのなす角を方位角θ1と定義する。光路部材3の垂直方向(Z軸方向)からの傾斜角、即ちZ軸と直線OAとのなす角を傾斜角θ2と定義する。傾斜角θ2は、主に45°である場合を想定している。図6には、光路部材3の板状光路部材3a,3bの概略平面図を例示する。
【0024】
板状光路部材3aの貫通孔11の方向は、以下のように定められる。
方位角0°(直線OCの方向)からの観察を行うには、直線OA方向に貫通孔11が位置する。即ち、板状光路部材3aには、図6(a)に示す入光側の辺Lと垂直な方向Dに貫通孔11を形成すれば良い。
【0025】
板状光路部材3bの貫通孔11の方向は、以下のように定められる。
方位角θ1(直線ODの方向)からの観察を行う場合は、直線ODを含み、かつX−Y平面(搬送面1a)に垂直な平面を考え、これと板状光路部材3bの交点からなる直線OBと平行に貫通孔11を形成する。角AOBを、板状光路部材3bの貫通孔11の孔角θ3と定義する。即ち、板状光路部材3bには、図6(b)に示す入光側の辺Lと垂直な方向Dから孔角θ3の方向に貫通孔11を形成すれば良い。
【0026】
方位角θ1,傾斜角θ2,孔角θ3は、以下の関係を有する。
tanθ3=AB/OA
=CD/OA
=OC×tanθ1/[OC/cos(90−θ2)]
= tanθ1×cos(90−θ2)
よって、
θ3=tan-1[tanθ1×cos(90−θ2)]
上記の式から、方位角θ1=45°、傾斜角θ2=45°の場合には、孔角θ3は35°程度となる。同様に、方位角θ1=30°、傾斜角θ2=45°の場合には、孔角θ3は22°程度となる。
【0027】
上記のように、本実施形態では、光路部材3の貫通孔11の角度を変えることにより、±45°程度まで観察方位を変化させることができる。従って、光路部材3の貫通孔11を搬送方向Aに傾ける配置とした場合には、搬送方向Aを中心に±45°程度までの観察方位を実現することができる。
【0028】
上記のように構成された識別装置を用いた識別方法について説明する。図7は、本実施形態による識別方法をステップ順に示すフロー図である。
先ず、光源2は、搬送部1の搬送面1aに載置された紙葉10のホログラムフィルム10aに光を照射する(ステップS1)。
続いて、光路部材3は、ホログラムフィルム10aからの反射光を貫通孔11を介してディテクタアレイ4に出射する(ステップS2)。
【0029】
続いて、ディテクタアレイ4は、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出する(ステップS3)。ディテクタアレイ4は、搬送部1による紙葉10の搬送により次々に取得したラインデータ21a,22a,23aをマッピングし、板状光路部材3a,3b,3cに対応した3種のホログラム像を形成する(ステップS4)。
【0030】
続いて、データ処理部5は、得られた各ホログラム像を、それぞれ予め登録されている正規のホログラム像と比較する(ステップS5)。ステップS5において、得られた各ホログラム像が正規のホログラム像と一致又は類似すると判断した場合には、当該ホログラム像が正規のホログラム像に対応した画像であり、当該ホログラムフィルム10a(紙葉10)は真正なものであると判断する(ステップS6)。一方、得られた各ホログラム像が正規のホログラム像とは異なると判断した場合には、当該ホログラム像は正規のホログラム像に対応しない画像であり、当該ホログラムフィルム10a(紙葉10)は偽物であると判断する(ステップS7)。
【0031】
以下、本実施形態の諸変形例について説明する。
【0032】
(変形例1)
上述したような、方位によって現れる像が異なる場合ではなく、同じ方位でも傾斜角により現れる像が変化するようなホログラムを識別する場合には、例えば図8のように識別装置を構成すれば良い。
図8では、光路部材3を構成する板状光路部材3a,3b,3cを、それぞれ異なる傾斜角に配置する。板状光路部材3a,3b,3cの各出光面と対向するように、ディテクタアレイ12a,12b,12cが配置されている。ディテクタアレイ12a,12b,12cは、上記したディテクタアレイ4の各行の受光素子4aのラインが設けられている。
【0033】
観測する方位が、光路部材3の傾斜の方位と同じ(方位角0°)場合には、全ての板状光路部材で入光側の辺と垂直な方向に貫通孔11を形成すれば良いが、方位角0°以外では厳密には同じ方位で観測するためには、光路部材3の傾斜に伴って、光路部材3の貫通孔11の角度を若干変える必要がある。
方位角のみならず、傾斜角にも敏感なホログラム像を観察する場合にも、複数の板状光路部材を積層配置するのではなく、図8と同様に板状光路部材毎に傾斜角を変えて、夫々の板状光路部材が最適な傾きになるように配置することが有効である。方位角が0°からずれるほど、実際の観察方向の傾斜角は、光路部材3の傾斜角からずれる。このことを考慮して光路部材3の傾斜角を決定する必要がある。例えば図5において、方位角θ1及び傾斜角θ2が45°である場合には、貫通孔11の傾き角(直線OBとZ軸とのなす角度)は、光路部材3の傾斜角45°よりも大きく(水平に近く)なっている。観察する角度を傾き45°にしたいのであれば、光路部材3の傾斜角を45°よりも小さくする必要がある。
【0034】
(変形例2)
ATM等では、紙幣の表面と裏面とを一定の方向に揃えることを要求せず、紙幣が表裏いずれに配置された場合でも適正に処理できるものがある。この場合、紙幣に付されたホログラムフィルムが搬送面のいずれの側であっても正確に観察することが求められる。
図9の識別装置では、光源2、光路部材3及びディテクタアレイ4からなる観測系を、搬送部1の搬送面1aの表面側及び裏面側の双方にそれぞれ配置している。この構成によれば、紙葉10のホログラムフィルム10aが表面及び裏面のいずれに付されていても、正確な観測ができる。
【0035】
(変形例3)
図10の識別装置では、搬送部1の搬送面1aに垂直な軸である、光源2からの照射光に対して、搬送方向Aに向けて傾斜配置された光路部材3及びディテクタアレイ4と、搬送方向Aとは逆の方向に向けて傾斜配置された光路部材13及びディテクタアレイ14とをそれぞれ配置している。
光路部材13は、複数、ここでは2枚の板状光路部材13a,13bが例えば積層されて構成される。板状光路部材13a,13bは、光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cと同様に、それぞれ反射光を入光面から出光面に向けて通過させる、互いに平行な複数の貫通孔11を有している。
【0036】
ディテクタアレイ14は、板状光路部材13a,13bの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出するものである。ディテクタアレイ4と同様に、ディテクタアレイ14の受光面には、板状光路部材13a,13bの各貫通孔11に対応するようにマトリクス状にフォトダイオード等の受光素子が並列している。ディテクタアレイ14では、板状光路部材13a,13bに対応して2行の受光素子のラインが設けられている。
【0037】
搬送方向Aを方位角0°の方向とすると、光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cには、図11に示す方位角0°,方位角45°,方位角−45°に対応する孔角の貫通孔11が形成されている。光路部材13の板状光路部材13a,13bには、図11に示す方位角150°,方位角方位−150°に対応する孔角の貫通孔11が形成されている。
通常、ホログラムフィルムでは、観察方位を180°反転させても同じパターンの像が見られる。そのため、方位角±150°は、方位角±30°と同等である。
【0038】
板状光路部材を積層して光路部材とする場合、各板状光路部材の観察する位置は、搬送面上で少しずつずれている。各板状光路部材で十分な観察を行うためには、ホログラムフィルムの搬送方向に幅広く光照射することを要する。
光路部材として光路部材3のみを片側配置する場合、照明を要する部位が広くなるのに対して、図10のように光路部材3に加えて光路部材13を光源2からの照射光に対して互いに逆側に配置することにより、照明を要する部位は狭くなる。従って、光源2の構成を簡素化することができる。
また、片側に複数の光路部材3を配置すると、光源2による照明を邪魔しないようにするために、上方に配置されている光路部材3を搬送面1aに近接配置させることができないという問題がある。この点でも、図10のように光源2からの照射光に対して互いに逆側に光路部材3,13を分けて配置する方が有利である。
【0039】
通常、ホログラムフィルムは、10mm角程度の小さなものであるが、各種の紙幣等を扱うような汎用性の高い識別装置では、特定の狭い位置だけでなく、紙幣等の幅全体等の広い範囲を観察することが望まれる。従来のレンズを用いた観察では、広い範囲を観察するには光路長が一層大きくなる等、スペースの増大を招く。本実施形態では、紙幣等の広い範囲の観察に適している。例えば、光路部材3及びディテクタアレイ4を横方向に適宜長く形成することにより、光路長を増大することなく広い範囲を観察することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態及びその諸変形例によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本件によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送部
1a 搬送面
2 光源
3,13 光路部材
3a,3b,3c 板状光路部材
4,12a,12b,12c,14 ディテクタアレイ
4a 受光素子
4A,4B,4C 素子ライン
5 データ処理部
10 紙葉
10a ホログラムフィルム
11 貫通孔
21,22,23 ホログラム像
21a,22a,23a ラインデータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別パターンを例えばそのホログラム像により真偽を判定する識別装置及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣又はクレジットカード等には、偽造防止のためにしばしばホログラムフィルムを添付するという対策が行われている。一般的には、人間が視認により異常の有無を確認しているが、現金自動預け入れ払い機(ATM)等にセンサを組み込むことで紙幣に添付したホログラムフィルムを識別できるようにすれば、偽造券の判別に有用である。
【0003】
紙幣等に添付されたホログラムフィルムは、光源又は観察の角度によって、どのような像が見えるかが決まり、角度により異なる数種類の像が現れるように造られている場合がある。このため、ホログラムが本物であるか否かを識別するには、複数の角度から観察することが必要である。例えば、見えるべき像が1種類であれば、像が見える角度と、像が見えない角度の2つの角度から観察することで、ホログラムの真偽を判別することができる。
【0004】
ホログラムを観察するには、特定の角度、例えばフィルム面に垂直な角度から照明光を照射し、レンズと撮像素子(例えばCCDカメラ)を用いて、様々な角度からホログラムフィルムを観察すれば良い。主にフィルム面の垂直軸周りの方向によって、観察される像が違って見えるので、レンズと撮像素子からなる観察装置を、ホログラムフィルムに対して垂直な軸の周りに方向を変化させてゆくことで像を確認することができる。複数の角度からの観察像を同時に取得するためには、複数のレンズ及び撮像素子をセットで配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−69947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホログラムの観察に、複数のレンズ及び撮像素子をセット配置した場合、レンズが焦点を結ぶにはある程度の距離が必要なために光路長が比較的長くなる。更に、ホログラムフィルムとのレンズとの角度が異なるセットを複数装備するためには、大きなスペースを必要とすることになり、ATMの端末内に適宜収納することは困難である。
【0007】
特許文献1には、カード等の局所的な部分(ホログラム)に光源から光を照射し、特定の角度への反射光強度が閾値を越えるか否かをディテクタで読み取る装置が開示されている。この場合、レンズを使用せずに直接にディテクタで光を受けており、設置スペースは小さくなる。しかしながら、複数の照射スポットからの反射光が入り乱れて近隣のディテクタにも入射してしまうため、ホログラムの像観察には適さない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することを可能とし、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
識別装置の一態様は、識別パターンに光を照射する光源と、前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材と、前記光路部材から出射させた前記反射光を検出する検出器とを含む。
【0010】
識別方法の一態様は、識別パターンに光を照射し、前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材を介して、前記光路部材から前記反射光を出射させ、前記光路部材から出射させた前記反射光を検出器で検出した後、データ処理部でホログラム像を形成し、前記ホログラム像を、前記識別パターンについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、前記識別パターンの真偽を判定する。
【発明の効果】
【0011】
上記の各態様によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態による識別装置を示す模式図である。
【図2】各板状光路部材の構成を示す概略平面図である。
【図3】ディテクタアレイの構成を示す概略正面図である。
【図4】本実施形態において形成されるホログラム像の一例を示す模式図である。
【図5】各板状光路部材の貫通孔の形成角度を説明するための模式図である。
【図6】各板状光路部材の構成を示す概略平面図である。
【図7】本実施形態による識別方法をステップ順に示すフロー図である。
【図8】本実施形態による識別装置の変形例1を示す模式図である。
【図9】本実施形態による識別装置の変形例2を示す模式図である。
【図10】本実施形態による識別装置の変形例3を示す模式図である。
【図11】図10の識別装置における各板状光路部材の方位角を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、識別装置及び識別方法の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態による識別装置を示す模式図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。
【0014】
本実施形態では、例えば紙葉10に付けられた識別パターンであるホログラムフィルム10aを観察対象とする。
識別装置において、1は、紙葉10を載置する搬送面1aを有し、搬送面1aに載置された紙葉10を例えば矢印Aの方向に搬送する搬送部である。2は、紙葉10のホログラムフィルム10aに光を照射する光源である。3は、ホログラムフィルム10aからの反射光を2つ以上、ここでは3つの異なる方向に出射させる光路部材である。4は、光路部材3から出射させた反射光を検出するディテクタアレイである。5は、ディテクタアレイ4で検出した反射光から形成されるホログラム像を、ホログラムフィルム10aについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、ホログラムフィルム10aの真偽を判定するデータ処理部である。
【0015】
光源2は、適度に発散する光を照射できる例えばLED又は蛍光管等を有している。
識別装置において現れるホログラム像は、観察する方向だけでなく、光源2の照射方向にも依存しており、照射方向が若干変化すると、反射によりホログラム像の見える方向が若干変化する。このため、照射光が広い角度範囲の光線を含むものであれば、1つのパターン像が広い観察範囲で見えるようになり、特定の角度のみで見えるというホログラムの特徴を識別し難くなる。このため、光源2としては狭い角度の光線だけを照射するものが適しており、±5度程度の範囲の光線を含む、例えばLED又は蛍光管等を備えた光源が望ましい。
【0016】
光路部材3は、複数、ここでは3枚の板状光路部材3a,3b,3cが例えば積層されて構成される。板状光路部材3a,3b,3cは、図2(a)〜(c)に示すように、それぞれ反射光を入光面から出光面に向けて通過させる光路となる、互いに平行な複数の貫通孔11を有している。貫通孔11は、一列に複数配設されているが、2列以上に複数配設するようにしても良い。板状光路部材3aの貫通孔11と、板状光路部材3bの貫通孔11と、板状光路部材3cの貫通孔11とでは、それぞれ形成される方向(形成角度)が相異なる。
【0017】
光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cでは、貫通孔11により、それぞれ特定方向の反射光のみを選別して透過するように構成されている。光路部材3は、例えばプラスチック又は金属等からなり、少なくとも貫通孔11の内壁が反射光を遮光する材質であるか、或いは当該内壁に光反射を防止する表面処理が施されている。この構成により、主に直接的に貫通孔11を通り抜けた、狭い角度範囲のみの反射光がディテクタアレイ4で検出される。貫通孔11は例えば、配列ピッチを1mm程度、孔径を0.7mm程度、長さを15mmとすることで、充分に狭い角度範囲にして1mm程度の空間分解能の観察が可能となる。
【0018】
ディテクタアレイ4は、図3に示すように、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出するものである。ディテクタアレイ4の受光面には、板状光路部材3a,3b,3cの各貫通孔11に対応するようにマトリクス状にフォトダイオード等の受光素子4aが並列している。ディテクタアレイ4では、板状光路部材3a,3b,3cに対応して3行の受光素子4aの素子ライン4A,4B,4Cが設けられている。板状光路部材3a,3b,3cの夫々について、貫通孔11の数だけの測定点を持つ強度プロファイルが得られる。なお、ディテクタアレイ4において、例えば6行以上(各板状光路部材にそれぞれ2行以上が対応する。)の受光素子4aのラインを設けるようにすることも考えられる。
【0019】
図4(a)〜(c)に示すように、板状光路部材3a,3b,3cに対応するディテクタアレイ4の素子ライン4A,4B,4Cから、それぞれライン状の光強度データ(例えばラインデータ21a,22a,23a)が得られる。搬送部1による紙葉10の搬送により次々に取得したラインデータ21a,22a,23aをマッピングすることにより2次元のホログラム像が形成される。このようにして板状光路部材の個数分のホログラム像(ここでは、板状光路部材3a,3b,3cによる3つのホログラム像21,22,23)が得られる。
【0020】
データ処理部5は、ディテクタアレイ4と接続されており、得られたホログラム像を、予め登録されている正規のホログラム像と比較し、正規のホログラム像と一致又は類似すると判断した場合に、当該ホログラム像が正規のホログラム像に対応した画像であると判断する。検出器4で形成されたホログラム像の、正規のホログラム像との比較は、例えば各点の光強度を閾値により二値化した後、パターンマッチングにより行われる。データ処理部5の機能は、例えばROM又はハードディスク等の記憶媒体から読み出したプログラムをコンピュータのCPUで実行することにより実現される。
【0021】
ホログラムフィルム10aのようなフィルム状のホログラムでは、垂直方向から照明した場合には、フィルム面に垂直な軸の周りのどちらの方向(方位)から観察するかにより現れるホログラム像が基本的に決定される。垂直からの傾き角は、ホログラム像のパターンに影響を与えない場合が多い。
本実施形態において、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11の角度を変えることで変化させているのは、垂直軸回りの方位である。図2では、板状光路部材3a,3b,3cは、搬送方向Aからの観察と、搬送方向Aから両側に例えば30°ずらした方向からの観察とを行うように貫通孔11がそれぞれ形成されている。
【0022】
搬送部1の搬送面1aと貫通孔11を延長した面とが交わるラインの部分が観測される部位になり、通常ではこのラインを搬送方向Aと直交する方向に設定する。そのため、必然的に貫通孔11は、搬送方向A或いはその逆方向に傾いて形成されることになる。但し、本実施形態では、これ以外の傾斜方向に貫通孔11を形成しても有効である。
【0023】
図5は、各板状光路部材の貫通孔の形成角度を説明するための模式図である。
図5では、搬送部1の搬送面1aをX−Y平面とする。X−Y平面において、直線OCを含むX軸方向を方位0°として、X軸と直線ODとのなす角を方位角θ1と定義する。光路部材3の垂直方向(Z軸方向)からの傾斜角、即ちZ軸と直線OAとのなす角を傾斜角θ2と定義する。傾斜角θ2は、主に45°である場合を想定している。図6には、光路部材3の板状光路部材3a,3bの概略平面図を例示する。
【0024】
板状光路部材3aの貫通孔11の方向は、以下のように定められる。
方位角0°(直線OCの方向)からの観察を行うには、直線OA方向に貫通孔11が位置する。即ち、板状光路部材3aには、図6(a)に示す入光側の辺Lと垂直な方向Dに貫通孔11を形成すれば良い。
【0025】
板状光路部材3bの貫通孔11の方向は、以下のように定められる。
方位角θ1(直線ODの方向)からの観察を行う場合は、直線ODを含み、かつX−Y平面(搬送面1a)に垂直な平面を考え、これと板状光路部材3bの交点からなる直線OBと平行に貫通孔11を形成する。角AOBを、板状光路部材3bの貫通孔11の孔角θ3と定義する。即ち、板状光路部材3bには、図6(b)に示す入光側の辺Lと垂直な方向Dから孔角θ3の方向に貫通孔11を形成すれば良い。
【0026】
方位角θ1,傾斜角θ2,孔角θ3は、以下の関係を有する。
tanθ3=AB/OA
=CD/OA
=OC×tanθ1/[OC/cos(90−θ2)]
= tanθ1×cos(90−θ2)
よって、
θ3=tan-1[tanθ1×cos(90−θ2)]
上記の式から、方位角θ1=45°、傾斜角θ2=45°の場合には、孔角θ3は35°程度となる。同様に、方位角θ1=30°、傾斜角θ2=45°の場合には、孔角θ3は22°程度となる。
【0027】
上記のように、本実施形態では、光路部材3の貫通孔11の角度を変えることにより、±45°程度まで観察方位を変化させることができる。従って、光路部材3の貫通孔11を搬送方向Aに傾ける配置とした場合には、搬送方向Aを中心に±45°程度までの観察方位を実現することができる。
【0028】
上記のように構成された識別装置を用いた識別方法について説明する。図7は、本実施形態による識別方法をステップ順に示すフロー図である。
先ず、光源2は、搬送部1の搬送面1aに載置された紙葉10のホログラムフィルム10aに光を照射する(ステップS1)。
続いて、光路部材3は、ホログラムフィルム10aからの反射光を貫通孔11を介してディテクタアレイ4に出射する(ステップS2)。
【0029】
続いて、ディテクタアレイ4は、板状光路部材3a,3b,3cの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出する(ステップS3)。ディテクタアレイ4は、搬送部1による紙葉10の搬送により次々に取得したラインデータ21a,22a,23aをマッピングし、板状光路部材3a,3b,3cに対応した3種のホログラム像を形成する(ステップS4)。
【0030】
続いて、データ処理部5は、得られた各ホログラム像を、それぞれ予め登録されている正規のホログラム像と比較する(ステップS5)。ステップS5において、得られた各ホログラム像が正規のホログラム像と一致又は類似すると判断した場合には、当該ホログラム像が正規のホログラム像に対応した画像であり、当該ホログラムフィルム10a(紙葉10)は真正なものであると判断する(ステップS6)。一方、得られた各ホログラム像が正規のホログラム像とは異なると判断した場合には、当該ホログラム像は正規のホログラム像に対応しない画像であり、当該ホログラムフィルム10a(紙葉10)は偽物であると判断する(ステップS7)。
【0031】
以下、本実施形態の諸変形例について説明する。
【0032】
(変形例1)
上述したような、方位によって現れる像が異なる場合ではなく、同じ方位でも傾斜角により現れる像が変化するようなホログラムを識別する場合には、例えば図8のように識別装置を構成すれば良い。
図8では、光路部材3を構成する板状光路部材3a,3b,3cを、それぞれ異なる傾斜角に配置する。板状光路部材3a,3b,3cの各出光面と対向するように、ディテクタアレイ12a,12b,12cが配置されている。ディテクタアレイ12a,12b,12cは、上記したディテクタアレイ4の各行の受光素子4aのラインが設けられている。
【0033】
観測する方位が、光路部材3の傾斜の方位と同じ(方位角0°)場合には、全ての板状光路部材で入光側の辺と垂直な方向に貫通孔11を形成すれば良いが、方位角0°以外では厳密には同じ方位で観測するためには、光路部材3の傾斜に伴って、光路部材3の貫通孔11の角度を若干変える必要がある。
方位角のみならず、傾斜角にも敏感なホログラム像を観察する場合にも、複数の板状光路部材を積層配置するのではなく、図8と同様に板状光路部材毎に傾斜角を変えて、夫々の板状光路部材が最適な傾きになるように配置することが有効である。方位角が0°からずれるほど、実際の観察方向の傾斜角は、光路部材3の傾斜角からずれる。このことを考慮して光路部材3の傾斜角を決定する必要がある。例えば図5において、方位角θ1及び傾斜角θ2が45°である場合には、貫通孔11の傾き角(直線OBとZ軸とのなす角度)は、光路部材3の傾斜角45°よりも大きく(水平に近く)なっている。観察する角度を傾き45°にしたいのであれば、光路部材3の傾斜角を45°よりも小さくする必要がある。
【0034】
(変形例2)
ATM等では、紙幣の表面と裏面とを一定の方向に揃えることを要求せず、紙幣が表裏いずれに配置された場合でも適正に処理できるものがある。この場合、紙幣に付されたホログラムフィルムが搬送面のいずれの側であっても正確に観察することが求められる。
図9の識別装置では、光源2、光路部材3及びディテクタアレイ4からなる観測系を、搬送部1の搬送面1aの表面側及び裏面側の双方にそれぞれ配置している。この構成によれば、紙葉10のホログラムフィルム10aが表面及び裏面のいずれに付されていても、正確な観測ができる。
【0035】
(変形例3)
図10の識別装置では、搬送部1の搬送面1aに垂直な軸である、光源2からの照射光に対して、搬送方向Aに向けて傾斜配置された光路部材3及びディテクタアレイ4と、搬送方向Aとは逆の方向に向けて傾斜配置された光路部材13及びディテクタアレイ14とをそれぞれ配置している。
光路部材13は、複数、ここでは2枚の板状光路部材13a,13bが例えば積層されて構成される。板状光路部材13a,13bは、光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cと同様に、それぞれ反射光を入光面から出光面に向けて通過させる、互いに平行な複数の貫通孔11を有している。
【0036】
ディテクタアレイ14は、板状光路部材13a,13bの貫通孔11毎に、当該貫通孔11を通過した光の強度を検出するものである。ディテクタアレイ4と同様に、ディテクタアレイ14の受光面には、板状光路部材13a,13bの各貫通孔11に対応するようにマトリクス状にフォトダイオード等の受光素子が並列している。ディテクタアレイ14では、板状光路部材13a,13bに対応して2行の受光素子のラインが設けられている。
【0037】
搬送方向Aを方位角0°の方向とすると、光路部材3の板状光路部材3a,3b,3cには、図11に示す方位角0°,方位角45°,方位角−45°に対応する孔角の貫通孔11が形成されている。光路部材13の板状光路部材13a,13bには、図11に示す方位角150°,方位角方位−150°に対応する孔角の貫通孔11が形成されている。
通常、ホログラムフィルムでは、観察方位を180°反転させても同じパターンの像が見られる。そのため、方位角±150°は、方位角±30°と同等である。
【0038】
板状光路部材を積層して光路部材とする場合、各板状光路部材の観察する位置は、搬送面上で少しずつずれている。各板状光路部材で十分な観察を行うためには、ホログラムフィルムの搬送方向に幅広く光照射することを要する。
光路部材として光路部材3のみを片側配置する場合、照明を要する部位が広くなるのに対して、図10のように光路部材3に加えて光路部材13を光源2からの照射光に対して互いに逆側に配置することにより、照明を要する部位は狭くなる。従って、光源2の構成を簡素化することができる。
また、片側に複数の光路部材3を配置すると、光源2による照明を邪魔しないようにするために、上方に配置されている光路部材3を搬送面1aに近接配置させることができないという問題がある。この点でも、図10のように光源2からの照射光に対して互いに逆側に光路部材3,13を分けて配置する方が有利である。
【0039】
通常、ホログラムフィルムは、10mm角程度の小さなものであるが、各種の紙幣等を扱うような汎用性の高い識別装置では、特定の狭い位置だけでなく、紙幣等の幅全体等の広い範囲を観察することが望まれる。従来のレンズを用いた観察では、広い範囲を観察するには光路長が一層大きくなる等、スペースの増大を招く。本実施形態では、紙幣等の広い範囲の観察に適している。例えば、光路部材3及びディテクタアレイ4を横方向に適宜長く形成することにより、光路長を増大することなく広い範囲を観察することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態及びその諸変形例によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本件によれば、小さなスペースで複数の角度から観察したホログラム等の像を、各観察角度の反射光が互いに影響を受けることなく取得することが可能となり、ATM等に組み込んで使用することができる信頼性の高い識別装置及び識別方法が実現する。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送部
1a 搬送面
2 光源
3,13 光路部材
3a,3b,3c 板状光路部材
4,12a,12b,12c,14 ディテクタアレイ
4a 受光素子
4A,4B,4C 素子ライン
5 データ処理部
10 紙葉
10a ホログラムフィルム
11 貫通孔
21,22,23 ホログラム像
21a,22a,23a ラインデータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別パターンに光を照射する光源と、
前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材と、
前記光路部材から出射させた前記反射光を検出する検出器と
を含むことを特徴とする識別装置。
【請求項2】
前記光路部材は、前記反射光を入光面から出光面に向けて通過させる、互いに平行な複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記光路部材は複数の板状光路部材を有し、それぞれの前記板状光路部材に、前記板状光路部材ごとに方向の異なる前記複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記光路部材は、プラスチック又は金属からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項5】
識別パターンに光を照射し、
前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材を介して、前記光路部材から前記反射光を出射させ、
前記光路部材から出射させた前記反射光を検出器で検出した後、データ処理部でホログラム像を形成し、
前記ホログラム像を、前記識別パターンについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、前記識別パターンの真偽を判定することを特徴とする識別方法。
【請求項1】
識別パターンに光を照射する光源と、
前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材と、
前記光路部材から出射させた前記反射光を検出する検出器と
を含むことを特徴とする識別装置。
【請求項2】
前記光路部材は、前記反射光を入光面から出光面に向けて通過させる、互いに平行な複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記光路部材は複数の板状光路部材を有し、それぞれの前記板状光路部材に、前記板状光路部材ごとに方向の異なる前記複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記光路部材は、プラスチック又は金属からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項5】
識別パターンに光を照射し、
前記識別パターンからの反射光を2つ以上の異なる方向に出射させる光路部材を介して、前記光路部材から前記反射光を出射させ、
前記光路部材から出射させた前記反射光を検出器で検出した後、データ処理部でホログラム像を形成し、
前記ホログラム像を、前記識別パターンについて予め登録されている正規のホログラム像と比較し、前記識別パターンの真偽を判定することを特徴とする識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−262394(P2010−262394A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111364(P2009−111364)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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