説明

警報装置

【課題】ハウジングを構成するボディとカバーとが新規な手段によって互いに結合した警報装置を提供する。
【解決手段】ハウジング1は、合成樹脂成型品からなり収納凹部10が設けられたボディ11と、合成樹脂成型品からなりボディ11に結合して収納凹部10を閉塞するカバー12とからなる。さらに、ボディ11とカバー12との間には融着用導電線4を挟まれている。製造時にボディ11とカバー12とを結合させる際は、融着用導電線4に通電する。すると、ボディ11やカバー12を構成する熱可塑性樹脂が融着用導電線4の発するジュール熱で溶融し、この溶融した熱可塑性樹脂が融着用導電線4への通電を停止した後に硬化することにより、ボディ11とカバー12とは互いに融着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常を検知して報知する警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、異常を検知する異常検知回路と、異常検知回路によって異常が検知されたときに異常を報知するワイヤレス信号を送信する報知回路としての送信回路とを備える警報装置が提供されている。この種の警報装置は、使用者によって携行されて上記ワイヤレス信号を受信して警報音を発生させる報知装置とともに用いられる。ワイヤレス信号の媒体としては、例えば小電力無線や微弱無線といった電波が用いられる。また、警報装置としては、上記送信回路に代えて又は上記送信回路に加えて、ブザーや発光ダイオードを有して音や光によって異常を報知する報知回路を備え、上記のような報知装置を用いずとも警報装置単体での使用が可能なものもある。
【0003】
異常検知回路によって検知される異常としては、窓ガラスの破壊や、窓の開放状態などがある。窓ガラスの破壊を検知する警報装置としては、異常検知回路として例えば図4(a)に示すように圧電セラミックPCと圧電セラミックPCの出力から窓ガラスの破壊に関わる周波数成分を分離するフィルタ回路(図示せず)とを備えるものであり、窓ガラスの振動が圧電セラミックPCに伝わるように窓ガラスに貼着されてフィルタ回路の出力に基づいて窓ガラスの破壊を検知するものがある。また、窓の開放を検知する警報装置としては、図4(b)に示すように永久磁石(図示せず)との距離に応じて接点が開閉されるリードスイッチRSを異常検知回路に有し、窓の開閉に伴って互いの距離が変化する2箇所のうちの一方に取り付けられる永久磁石(図示せず)とともに、上記2箇所の他方に取り付けて用いられ、リードスイッチRSの接点状態に基づいて窓の開放を検知するものがある。さらに、上記2種類の異常検知回路をともに備えた警報装置も提供されている。
【0004】
図5(a)(b)に示すように、異常検知回路や送信回路が実装されたプリント配線板2並びに異常検知回路や送信回路の電源となる電池3をそれぞれ収納するハウジング1としては、収納凹部10が設けられたボディ11と、ボディ11に機械的に結合して収納凹部10の内面との間にプリント配線板2や電池3が収納される空間を構成するカバー12とで構成されたものが一般的である。図5(a)(b)の例では、異常検知回路によって異常が検知されたときに駆動されて鳴動するブザーBZが、カバー12に取り付けられている。
【0005】
ボディ11とカバー12とを互いに結合させる方法として、従来は、ボディ11に複数個(図では6個)のねじ挿通穴11dを貫設するとともにカバー12に同数のねじ穴12dを設け、ボディ11のねじ挿通穴11dに挿通されてカバー12のねじ穴12dに螺合するねじ(図示せず)により、ボディ11とカバー12とを互いにねじ止めするという方法をとっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、警報装置は、例えば窓に取り付けられる場合には窓に結露した水が入らないように、屋外に取り付けられる場合には雨滴が入らないようにといったように、防水性が要求されることが多い。そこで、図5(a)(b)の例では、収納凹部10を囲む環形状の防水溝11eがボディ11に設けられ、防水溝11eにはエラストマのような柔軟な材料からなる環形状のパッキン6が収納されるとともに、図6に示すように防水溝11eに挿入されて防水溝11eの底面との間でパッキンを挟む環形状の防水突起12eがカバーに設けられている。すなわち、防水溝11eの内面と防水突起12eとの間で潰れたパッキン6により、ボディ11とカバー12との間の隙間が閉塞され、防水性が確保されている。
【特許文献1】登録実用新案第3108993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
警報装置は、なるべく目立たないように、特に窓に取り付けられるものにあっては取り付けられた窓の開閉の邪魔にならないように、小型化が要求されることが多い。しかし、上記従来の警報装置では、ねじ挿通穴やねじ穴を設ける必要があることにより、ハウジングが大型化してしまっている。また、ボディ11とカバー12との間ですべりが生じるため、ボディ11とカバー12との個々に機械的強度が要求されるから薄型化が難しい。
【0008】
ボディ11とカバー12とを互いに結合させる手段としては、ねじ止めの他に超音波接合や接着剤が考えられるが、超音波接合を用いると接合時の振動が異常検出回路や送信回路の回路部品を傷める可能性があり、接着剤では一般に接着後に充分に硬化するまで静置する必要があるため結合に時間がかかる。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ハウジングを構成するボディとカバーとが新規な手段によって互いに結合した警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ハウジングと、ハウジングに収納された電池と、ハウジングに収納されて電池を電源とし異常を検知したときに異常検知信号を出力する異常検知回路と、異常検知回路が異常検知信号を出力したときに異常を報知する報知回路とを備え、ハウジングは、収納凹部が設けられたボディと、ボディに機械的に結合して収納凹部を閉塞し電池と異常検知回路と報知回路とがそれぞれ収納される空間を収納凹部の内面との間に構成するカバーとからなり、カバーとボディとが収納凹部の開口縁において互いに融着していることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、融着した部位ではカバーとボディとの間の隙間が閉塞されて収納凹部内への液滴の侵入が抑制されるから、防水性が向上する。また、ボディとカバーとをねじ止めによって互いに結合させる場合に比べ、ボディとカバーとの間ですべりが生じにくいことによりハウジング全体としての剛性が向上し、ボディ及びカバーに要求される機械的強度が低くなるから、ハウジングの薄型化が可能となる。また、融着時の熱は、ボディとカバーとの結合に超音波接合を用いる場合における振動に比べ、異常検知回路や報知回路の回路部品を傷めにくい。さらに、ボディとカバーとの結合に接着剤を用いる場合に比べ、ボディとカバーとを短時間で結合させることができる。また、廃棄後の資源回収時には、融着した部位を再度加熱することにより、超音波接合や接着剤の場合に比べて容易にボディとカバーとを分離させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ボディとカバーとはそれぞれ熱可塑性樹脂からなり、それぞれ導電材料からなりボディとカバーとの間に挟まれ製造時にボディとカバーとを互いに結合させる際に通電されてジュール熱によりボディとカバーとを互いに融着させる少なくとも1本の融着用導電線を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ハウジング外面への加熱によってカバーとボディとを互いに融着させる場合に比べ、融着した部位をハウジングの内側として見栄えを改善することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、融着用導電線は一本であって収納凹部の開口を囲む環形状の一部が欠けた形状であり、この欠けた一部の長さはボディとカバーとの融着時に溶融した熱可塑性樹脂が行き渡る程度に短いことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、環形状の欠けた部分には溶融した熱可塑性樹脂が流れ込むから、収納凹部の全周にわたってカバーとボディとを互いに融着させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、融着用導電線は一本であって収納凹部の開口を囲む環形状の一部が欠けた形状であり、柔軟な材料からなり収納凹部の開口の周囲であって融着用導電線が配置されていない部位の少なくとも一部においてカバーとボディとの間の隙間を閉塞する閉塞体を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、融着用導電線が欠けていてカバーとボディとが融着されない部位でカバーとボディとの間の隙間が閉塞体によって閉塞されるから、閉塞体を設けない場合に比べて防水性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、ボディとカバーとを融着によって互いに結合させたので、融着した部位ではカバーとボディとの間の隙間が閉塞されて収納凹部内への液滴の侵入が抑制されるから、防水性が向上する。また、ボディとカバーとをねじ止めによって互いに結合させる場合に比べ、ボディとカバーとの間ですべりが生じにくいことによりハウジング全体としての剛性が向上し、ボディ及びカバーの個々に要求される機械的強度が低くなるから、ハウジングの薄型化が可能となる。また、融着時の熱は、ボディとカバーとの結合に超音波接合を用いる場合における振動に比べ、異常検知回路や報知回路の回路部品を傷めにくい。さらに、ボディとカバーとの結合に接着剤を用いる場合に比べ、ボディとカバーとを短時間で結合させることができる。また、廃棄後の資源回収時には、融着した部位を再度加熱することにより、超音波接合や接着剤の場合に比べて容易にボディとカバーとを分離させることができる。
【0019】
請求項2の発明は、融着用導電線の発するジュール熱によりボディとカバーとを互いに融着させるので、ハウジング外面への加熱によってカバーとボディとを互いに融着させる場合に比べ、融着した部位をハウジングの内側として見栄えを改善することができる。
【0020】
請求項3の発明は、融着用導電線すなわちボディ及びカバーにおいて加熱される範囲は収納凹部の開口を囲む環形状の一部が欠けた形状であることにより、環形状の欠けた部分には溶融した熱可塑性樹脂が流れ込むから、収納凹部の全周にわたってカバーとボディとを互いに融着させることができる。また、融着用導電線を複数本設ける場合に比べて製造コストを低減することができる。さらに、報知回路が外部と電波を送受信する場合であっても、融着用導電線が収納凹部を全周にわたって囲む場合に比べ、融着用導電線が上記電波を阻害しにくい。
【0021】
請求項4の発明は、柔軟な材料からなり収納凹部の開口の周囲であって融着用導電線が配置されていない部位の少なくとも一部においてカバーとボディとの間の隙間を閉塞する閉塞体を備えるので、閉塞体を備えない場合に比べて防水性を向上することができる。また、融着用導電線を複数本設ける場合に比べて製造コストを低減することができる。さらに、報知回路が外部と電波を送受信する場合であっても、融着用導電線が収納凹部を全周にわたって囲む場合に比べ、融着用導電線が上記電波を阻害しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の基本構成は図5(a)(b)に示した従来例と共通であるので、共通する構成については同じ符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0024】
本実施形態において、ボディ11及びカバー12はそれぞれ熱可塑性樹脂からなる。また、図2(a)(b)に示すように、ボディ11において収納凹部10を囲む溝11aが設けられ、カバー12には溝11aに挿入される突起12aが突設されている。さらに、図1に示すように、溝11aには例えば金属の細線からなる融着用導電線4が収納されており、突起12aは溝11aの底面との間に融着用導電線4を挟む。カバー12には、融着用導電線4の一端部ずつを露出させる2個の通電穴12bが貫設されている。
【0025】
製造時にボディ11とカバー12とを結合させる際は、ボディ11とカバー12とを互いに重ねて溝11aに突起12aが挿入された状態で、通電穴12bに電極を挿入することにより融着用導電線4に通電する。すると、融着用導電線4が発するジュール熱で溝11aの内面や突起12aにおいて熱可塑性樹脂が溶融され、この溶融された熱可塑性樹脂が融着用導電線4への通電を停止した後に硬化することにより、ボディ11とカバー12とは互いに融着される。
【0026】
ここで、溝11a、突起12a、並びに融着用導電線4は、それぞれ収納凹部10を囲む環形状の一部が切り欠かれた形状であって、切り欠かれた両端部からそれぞれ内側へ折り返される形で延長された形状をしている。融着用導電線4の両端部において互いに最も近接した部位間の距離は0.5mm〜1mmとなっており、上記溶着の過程で溶融された熱可塑性樹脂が収納凹部10の全周に行き渡るようになっている。これにより、ボディ11とカバー12との間の隙間は完全に閉塞される。また、ワイヤレス信号の媒体として電波を用いる場合であっても、融着用導電線4を上記のような形状としていることにより、融着用導電線4が収納凹部10を全周にわたって囲む場合に比べ、融着用導電線4がワイヤレス信号を阻害しにくい。
【0027】
ここで、カバー12には、電池3をハウジング1に出し入れする際に電池3が通される電池用開口12cが貫設されるとともに、電池用開口12cを閉塞する電池カバー13が例えば嵌合によって着脱自在に取り付けられる。融着用導電線4の両端部はそれぞれ電池3の近傍に位置しており、各通電穴12bはそれぞれ電池用開口12cの近傍に位置していて電池用開口12cとともに電池カバー13によって閉塞される。電池カバー13とカバー12との隙間は、各通電穴12bと電池用開口12cとを囲む全周において、例えばエラストマのような柔軟な材料からなるパッキン(図示せず)によって閉塞され、通電穴12bや電池用開口12cを通じた液滴の浸入はこのパッキンによって阻止される。
【0028】
上記構成によれば、ボディ11とカバー12とをねじ止めによって互いに結合させる場合に比べ、ボディ11とカバー12との間ですべりが生じにくいことによりハウジング1全体としての剛性が向上し、ボディ11及びカバー12に要求される機械的強度が低くなるから、ハウジング1の薄型化が可能となる。また、融着時の熱は、ボディ11とカバー12との結合に超音波接合を用いる場合における振動に比べ、異常検知回路や送信回路の回路部品を傷めにくい。さらに、ボディ11とカバー12との結合に接着剤を用いる場合に比べ、ボディとカバーとを短時間で結合させることができる。
【0029】
また、ハウジング1の外面への加熱によってボディ11とカバー12とを互いに融着させる場合に比べ、融着される部位はハウジング1の内側となるから見栄えが改善される。さらに、廃棄後の資源回収時には、融着用導電線4に再度通電することにより、融着された部位を溶融させてボディ11とカバー12とを容易に分離させることができる。
【0030】
なお、図3(a)(b)に示すように、ワイヤレス信号として電波を用いる場合に電波を阻害しにくいように融着用導電線4の両端間の距離を大きくする場合であっても、雄略要導電線4の両端間のボディ11とカバー12とが互いに融着しない部位に、例えばエラストマのような柔軟な材料からなる閉塞体5を配置すれば、閉塞体5によってボディ11とカバー12との間の隙間を閉塞して同様の防水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ同上を示し、(a)はカバーを示す背面図であり、(b)はボディを示す正面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ同上の別の形態を示し、(a)はカバーを示す背面図であり、(b)はボディを示す正面図である。
【図4】(a)は窓ガラスの破壊を検知する警報装置の例を示す説明図であり、(b)は窓の開放を検知する警報装置の例を示す説明図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ従来の警報装置を示し、(a)はカバーを示す背面図であり、(b)はボディを示す正面図である。
【図6】同上の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ハウジング
2 プリント配線板
3 電池
4 融着用導電線
10 収納凹部
11 ボディ
12 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ハウジングに収納された電池と、
ハウジングに収納されて電池を電源とし異常を検知したときに異常検知信号を出力する異常検知回路と、
異常検知回路が異常検知信号を出力したときに異常を報知する報知回路とを備え、
ハウジングは、収納凹部が設けられたボディと、ボディに機械的に結合して収納凹部を閉塞し電池と異常検知回路と報知回路とがそれぞれ収納される空間を収納凹部の内面との間に構成するカバーとからなり、
カバーとボディとが収納凹部の開口縁において互いに融着していることを特徴とする警報装置。
【請求項2】
ボディとカバーとはそれぞれ熱可塑性樹脂からなり、
それぞれ導電材料からなりボディとカバーとの間に挟まれ製造時にボディとカバーとを互いに結合させる際に通電されてジュール熱によりボディとカバーとを互いに融着させる少なくとも1本の融着用導電線を備えることを特徴とする請求項1記載の警報装置。
【請求項3】
融着用導電線は一本であって収納凹部の開口を囲む環形状の一部が欠けた形状であり、この欠けた一部の長さはボディとカバーとの融着時に溶融した熱可塑性樹脂が行き渡る程度に短いことを特徴とする請求項2記載の警報装置。
【請求項4】
融着用導電線は一本であって収納凹部の開口を囲む環形状の一部が欠けた形状であり、
柔軟な材料からなり収納凹部の開口の周囲であって融着用導電線が配置されていない部位の少なくとも一部においてカバーとボディとの間の隙間を閉塞する閉塞体を備えることを特徴とする請求項2記載の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−152371(P2008−152371A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337372(P2006−337372)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】