説明

豆乳の処理方法

【課題】
呉汁からおからを分離して得た豆乳から完全に不快臭を除去するとともに、香ばしさと深いコクを付与することができる豆乳の処理方法を提供する。
【解決手段】
呉汁からおからを分離した後の豆乳を150〜500°Cの超高温に所定時間保持する。この超高温を過熱水蒸気又は高圧水蒸気を加熱源として得ることができ、この場合、過熱水蒸気又は高圧水蒸気をスチームインジェクション又はスチームインフュージョンすることによって超高温を効率的に得ることができる。
以上の高温処理によって不快臭を除去するとともに香ばしさとコクを付与することができる。このように豆乳を超高温に所定時間保持する処理工程によって凝集物が生成したときは、超高温処理の後、ホモゲナイザーで均質化処理するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呉汁からおからを分離した後の豆乳を処理して不快臭を除去して香ばしさとコクを付与して美味しい豆乳にする豆乳の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆乳から不快臭を除去するため豆乳を加熱する従来の処理方法は、汎用ボイラにおける上限圧力と豆乳蛋白の焦げ付きが起こるのを避けることを考慮して、150°Cまでが限界とされて来た。このような従来の豆乳処理法でも不快臭の除去が90%程度まで可能であるが、香ばしさと深いコクを付与することは尚不充分である。
【0003】
豆乳は健康食品であることから最近需要が伸びてはいるものの、従来の処理方法で処理された豆乳は香ばしさや深いコクに欠けている面があるだけでなく、なお不快臭が多少残っているために時として敬遠されている面があるのが現状である。従って、健康に良い豆乳を更に飲み易いものに処理して一段と普及させることが望まれる。
【0004】
豆乳を高温で処理する上で1番の問題は、豆乳蛋白をどのようにして焦げ付かせることなしに、また、豆乳内の有効成分に影響を与えることなしに完全に不快臭を除去するとともに、香ばしさと深いコクを付与することができるかということである。
この問題を解決するため、加熱処理時間を延ばしたり、或いは成分調整を行なったりするなどの解決策が検討されて来たが、簡単な方法で不快臭を完全に除去するとともに、香ばしさと深いコクを十分に与えることができる処理法は現在なお満足すべきものが得られていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の豆乳処理方法が前記したように、不快臭をなお完全に除去出来なかったことと、香ばしさと深いコクを満足できる状態に付与することが出来ずにいた点に鑑み、本発明は、呉汁からおからを分離して得た豆乳から完全に不快臭を除去するとともに、香ばしさと深いコクを付与することができるようにした豆乳の処理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
呉汁からおからを分離した後の豆乳の処理方法における前記した課題を解決するため本発明は、豆乳を150〜500°Cの超高温に所定時間保持して不快臭を除去するとともに香ばしさとコクを付与するようにした豆乳の処理方法を提供する。
【0007】
本発明による豆乳の処理方法において採用する超高温の温度は、対象製品に対する味の変化や凝集物の生成、表面における焦げ付き状況などを勘案して、その温度への保持時間と併せて検討して決定する必要がある。なお、超高温における保持時間は、採用する温度が高温になるほど短時間処理を行なうことになるが、望まれる香ばしさとコクを付与するのに好ましい温度条件と、その温度に保持する時間により豆乳成分に与える影響を検討して決定する必要がある。
【0008】
本発明による豆乳の処理方法における前記超高温は、過熱水蒸気又は高圧水蒸気を加熱源として得ることができ、この場合、この過熱水蒸気又は高圧水蒸気を豆乳に対して所定時間だけ、スチームインジェクション又はスチームインフュージョンすることによって焦げ付きを起こすことなく豆乳を所定時間に亘って効果的に超高温に曝すことができる。
【0009】
本発明による豆乳の処理方法において、豆乳を超高温に所定時間保持する処理工程によって凝集物が生成する場合は、超高温に所定時間保持する処理工程の後の豆乳に対して、ホモゲナイザーによって均質化処理を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による豆乳の処理方法においては、豆乳を150〜500°Cの超高温に所定時間保持する処理を行なうが、その超高温の程度とその超高温への保持時間を適正に選定することにより、豆乳蛋白の焦げ付きを適度に抑えて所望の香ばしさやコクを付与することができる。
【0011】
本発明による豆乳の処理方法において、豆乳を超高温に保持するための熱源として、過熱水蒸気又は高圧水蒸気を採用すると、過熱水蒸気又は高圧水蒸気の熱量の顕熱は僅かであるため、豆乳の焦げ付きは一部生ずるにすぎず豆乳全体としてみれば機器への焦げ付きは最小限に抑えることが可能である。
そして、この一部の焦げ付きが豆乳へ好ましい香ばしさとしての味覚を付与し深いコクを感ずる基となるのである。
【0012】
また、本発明による豆乳の処理方法において、豆乳を超高温に保持するための熱源として高圧水蒸気を用いる場合は、豆乳到達温度を200°C以下に抑え、焦げ付きを抑えることが望ましい。
なお、豆乳を超高温に保持することにより凝集物を生成することがあるが、この場合は、超高温に保持した後の豆乳に対して、ホモゲナイザー(均質機)によって均質化処理を行なって凝集物が生成した豆乳を均質化できるので、超高温処理による凝集物生成は格別問題とすることなしに本発明により所望の品質の豆乳を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、以下の実施例は過熱水蒸気を熱源として豆乳を超高温に保持する場合の例を示している。
【0014】
加熱源 : 過熱水蒸気(300°C、0.6MPa)をスチームインジェクショ ンで処理すべき豆乳中に注入
温度保持条件: 5秒間
豆乳に対して上記操作により超高温の処理を施した結果、不快臭が完全に除去されるとともに、深いコクと甘みが増した豆乳製品を得ることができた。
【0015】
なお、上記実施例では、180°Cの超高温に豆乳を保持しており、凝集物は生成しなかったが、豆乳を超高温に保持することによって豆乳中に凝集物が生成した場合は、ホモゲナイザーによってその凝集物を破砕することによって均質化処理して凝集物生成の問題を解消することにより、更に高温帯での処理を施して香ばしさとコクの付与を増すことも可能であることが判った。
【0016】
また、上記実施例では過熱水蒸気をスチームインジェクションで豆乳に適用することによって豆乳を超高温に保持しているが、過熱水蒸気をスチームインフュージョンで適用しても、豆乳を同様に超高温に保持することができる。
なお、豆乳に対し過熱水蒸気又は高圧水蒸気を混合させるために行うスチームインジェクションやスチームインフュージョンは通常行われる一般的なやり方で行ってよく、特殊な手段を採用することなく実施可能である。
【0017】
以上、本発明を実施例について説明したが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されることなく実施することができる。
例えば、上記した実施の形態では、高温処理工程を過熱水蒸気又は高圧水蒸気を加熱源として行なう場合について説明したが、豆乳を150〜500℃の超高温に加熱できるものであれば水蒸気以外の加熱ガス体、その他のガス媒体などの他の加熱源を使用することが可能であり、例えば凝集により液化しない適宜の不活性ガスなどの使用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呉汁からおからを分離した後の豆乳の処理方法であって、前記豆乳を150〜500°Cの超高温に所定時間保持して不快臭を除去するとともに香ばしさとコクを付与することを特徴とする豆乳の処理方法。
【請求項2】
前記超高温を過熱水蒸気又は高圧水蒸気を加熱源として得ることを特徴とする請求項1に記載の豆乳の処理方法。
【請求項3】
前記過熱水蒸気又は高圧水蒸気を加熱源とする超高温をスチームインジェクション又はスチームインフュージョンによって得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の豆乳の処理方法。
【請求項4】
前記超高温に所定時間保持する処理工程の後、ホモゲナイザーで均質化処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の豆乳の処理方法。

【公開番号】特開2006−288253(P2006−288253A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112093(P2005−112093)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000213895)朝日食品工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】