説明

豆類の脱皮方法と脱皮装置

【課題】種々の径の大豆に対応し得る豆類の脱皮方法と脱皮装置を提供する。
【解決手段】豆類の脱皮方法は、浸漬工程と、脱皮工程と、を備え、前記脱皮工程では、浸漬された豆類が、正回転体4aと反回転体4bとを備えた脱皮装置1に送り込まれた後に、正回転体の回転軸6a回りの表面及び反回転体の回転軸6b回りの表面に、それぞれ回転軸に対して平行であってその周方向に対して間隔を設けて備えられた引き込み突起9によって、正回転体及び反回転体の回転方向に引き込まれ、正回転体及び反回転体の引き込み突起で挟まれることによって豆類の種皮が割砕され、割砕された種皮が脱皮される方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、豆類の脱皮方法及び脱皮装置に関するものであり、特に大豆の脱皮に適したものである。
【背景技術】
【0002】
従来の味噌は、種皮を付けたまま大豆をすりつぶして製造されるため、種皮に含まれる糖類に起因してやや色の濃いものとなっていた。近年、消費者は淡い色調の味噌を嗜好するようになり、これに伴い大豆の種皮を取り除いた脱皮後の大豆をすりつぶして味噌が製造されるようになってきた。
【0003】
大豆の脱皮方法としては、乾燥大豆を研磨して種皮を取り除く乾式研磨が多く採用されているが、この乾式研磨によると種皮に加えて子実部までもが削り取られるため、味噌の収率が悪くなるばかりか、研磨後の廃棄処分量が増加するため環境負荷の増大にもつながっていた。
【0004】
そこで特許文献1では、水に浸漬された大豆を脱皮機によって脱皮する湿式脱皮方式を提案している。この脱皮機は、ステンレスなど硬質材料製の低速回転体と、低速回転体より小径で外周がシリコーンゴムなど弾性体で被覆された高速回転体を備えており、低速回転体及び高速回転体は、両者ともに大径部(直径の大きな断面)と小径部(直径の小さな断面)が回転軸に沿って交互に配置された表面邪腹状の形状となっている。低速回転体の大径部(小径部)の配置間隔と、高速回転体の小径部(大径部)の配置間隔とは一致しており、低速回転体と高速回転体とは回転軸が平行となるように配置されるとともに、低速回転体の大径部と高速回転体の小径部(低速回転体の小径部と高速回転体の大径部)が噛み合いしかも浸漬大豆が通過し得る隙間(隣接部)が設けられるように配置されている。
【0005】
低速回転体はその回転軸まわりに回転し、高速回転体は回転軸回りに低速回転体とは反対方向であって低速回転体よりも高速に回転する。低速回転体の大径部及び小径部、高速回転体の大径部及び小径部は、それぞれ回転軸に沿って配置されているため、低速回転体及び高速回転体の回転中も、大径部と小径部の噛み合い状態は常に維持され、隣接部における間隔は一定に保たれる。
【0006】
浸漬大豆は、低速回転体と高速回転体の回転方向に送り込まれ、隣接部に導かれて低速回転体と高速回転体の回転速度差によって生じるひねりの力を受け、低速回転体表面の弾性体に擦られて脱皮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の脱皮機は、低速回転体及び高速回転体ともに大径部と小径部が回転軸に沿って交互に配置された表面邪腹状の形状となっているため、例えば回転中の小径部に大豆が送り込まれても大豆をひっかけるものがないことから隣接部までなかなか送り込めないという問題があった。あるいは、この問題を解決するために、高速回転体の表面に回転軸に対して平行な切欠きを設ける必要があり、脱皮機の製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0009】
また、特許文献1の脱皮機は、浸漬大豆の種皮を擦ることによって取り除くものであり、高速回転体の表面には大豆種皮を擦るための弾性体を被覆し、低速回転体の表面は大豆の反力を確保するため硬質材料で製造される必要があり、ふたつの回転体には異なる素材の調達を必要とし、脱皮機の製造コストを押し上げる要因となっていた。さらに大豆の粒径は、国内産の平均粒径が7.0mmであるのに対し中国産大豆やカナダ産のものは5.6mmといったように、大豆の種類によってそれぞれ平均粒径は異なるが、特許文献1の脱皮機には隣接部における間隔の調整手段がないため、一種類の大豆しか対応できないという問題を抱えていた。
【0010】
本願発明の課題は、大豆の脱皮の際に子実の欠損率を抑えられ味噌の収率が従来よりも改善されるものであって、回転体に切欠きを設ける必要がなく、回転体の製造のため多種類の材料を必要としないなど、その製造コストを抑えられる脱皮装置であって、種々の径の大豆に対応し得る豆類の脱皮方法と脱皮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の豆類の脱皮方法は、豆類の脱皮方法において、前記豆類を所定時間浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程によって浸漬された豆類を脱皮する脱皮工程と、を備え、前記脱皮工程では、前記浸漬された豆類が、筒状又は管状であってその回転軸まわりに回転可能な正回転体と、筒状又は管状であってその回転軸まわりに前記正回転体とは反対方向に回転可能な反回転体とを備えた脱皮装置に送り込まれた後に、前記正回転体の回転軸回りの表面及び前記反回転体の回転軸回りの表面に、それぞれ回転軸に対して平行であってその周方向に対して間隔を設けて備えられた引き込み突起によって、前記正回転体及び反回転体の回転方向に引き込まれ、前記正回転体及び反回転体の引き込み突起で挟まれることによって豆類の種皮が割砕され、割砕された種皮が脱皮される方法である。
【0012】
この場合、脱皮後の種皮と実とを分離する分離工程を備え、この分離工程では、前記脱皮後の種皮及び実を水槽内の水に投入し、この水を攪拌して比重差による種皮と実との分離を促進する方法とすることもできる。
【0013】
本願発明の豆類の脱皮装置は、豆類の脱皮装置において、筒状又は管状であってその回転軸まわりに回転可能な一又は二以上の正回転体と、筒状又は管状であってその回転軸まわりに前記正回転体とは反対方向に回転可能な一又は二以上の反回転体と、前記正回転体及び反回転体を回転させ得る回転駆動体と、を備え、前記正回転体と反回転体は、それぞれの回転軸が平行であって両者が最も接近する箇所に隙間を設けて配置され、前記正回転体の回転軸回りの表面及び前記反回転体の回転軸回りの表面には、それぞれ回転軸に対して略平行な引き込み突起が周方向に対して間隔を設けて備えられ、前記豆類は、前記正回転体及び反回転体の引き込み突起によって前記隙間の方へ引き込まれるとともに、それぞれの引き込み突起で挟まれることでその種皮が割砕され、割砕された種皮が脱皮されるものである。
【0014】
本願発明の豆類の脱皮装置は、請求項3記載の豆類の脱皮装置において、正回転体の単位時間当たりの回転数と、反回転体の単位時間当たりの回転数が、異なるものである。
【0015】
本願発明の豆類の脱皮装置は、請求項3又は請求項4記載の豆類の脱皮装置において、正回転体又は/及び反回転体を、回転軸に対して直交する方向に移動させ得る間隔調整装置を備え、前記間隔調整装置によって、脱皮する豆類の大きさに応じて、前記正回転体と反回転体との間隔を調整可能なものである。
【0016】
本願発明の豆類の脱皮装置は、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の豆類の脱皮装置において、豆類を貯蔵可能な貯蔵ビンを備え、前記貯蔵ビンの一部には貯蔵された豆類を正回転体と反回転体との間に送り出す開口部が設けられ、この開口部には供給調整装置が設けられ、前記供給調整装置は、回転軸まわりに回転する回転体を有し、この回転体の回転速度によって回転体と反回転体との間に送り出す豆類の量を調整可能なものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の豆類の脱皮方法及び脱皮装置には次のような効果がある。
(1)浸漬大豆が引き込み突起で挟まれることによって、その皮が割砕して脱皮されるので、子実が削り取られることがなく、つまり子実の欠損率が抑えられ、味噌の収率が従来よりも改善される。
(2)回転体表面の引き込み突起が、浸漬大豆の種皮を割砕する機能と、正回転体と反回転体の隙間の方へ浸漬大豆を引き込む機能とを兼ね備えているので、大豆を誘導するために切欠き等の特別な装置を設ける必要がなく、その製造コストを抑えることができる。
(3)正回転体と反回転体の表面に、必ずしもそれぞれ異なる材質を用いる必要がなく、調達する材料の種類が少なくて済み、その製造コストを抑えることができる。
(4)正回転体と反回転体との間隔を調整することができる間隔調整装置を備えているので、種々の径の大豆の脱皮に対応できる。
(5)正回転体と反回転体との間に送り込む豆類の量を調整することができるロータリーバルブが設けられているので、出荷状況等に応じて脱皮大豆の製造速度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の脱皮装置を示す断面図。
【図2】本願発明の脱皮装置を示す正面図。
【図3】正回転体と反回転体の表面に備えられた引き込み突起を示す斜視図。
【図4】引き込み突起の詳細を説明するための詳細図。
【図5】正回転体又は反回転体の表面に備えられた引き込み突起を示す断面図。
【図6】大豆脱皮の全工程を実施する大豆脱皮システムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
本願発明の豆類の脱皮方法と脱皮装置の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、本願発明の豆類の脱皮装置を示す断面図である。図1に示す脱皮装置1は、大豆の種皮を取り除く装置であり、ホッパー2、供給ロータリー3、回転体4(以下、「ロール4」という。)、間隔調整装置5、その他本体フレームや外周ケースなどから構成されている。ホッパー2に蓄えられた大豆は、ホッパー2の底を通過し、供給ロータリー3を経て、さらにロール4を通過する際に種皮が取り除かれる。
【0020】
ロール4は、時計回りに回転する正回転体4a(以下、「正ロール4a」という。)と、反時計回りに回転する反回転体4b(以下、「反ロール4b」という。)からなり、それぞれ正ロール4aは回転軸6aの回りを回転し、反ロール4bは回転軸6bの回りを回転する(図1に示す矢印参照)。正ロール4aと反ロール4bは、回転軸6aと回転軸6bが平行となるように配置されるとともに、正ロール4aと反ロール4bが最も接近するところでも所定の隙間が生じるように配置されている。すなわち本実施形態の脱皮装置1は、大豆がこの隙間を通過する際、大豆に対して正ロール4a、反ロール4bともに同方向(図では下向き)の力を作用させる、いわゆる圧偏式である。
【0021】
ホッパー2は、大豆を貯蔵することが可能で、底部には開口部が設けられている。この開口部は、ホッパー2内の大豆を放出するためのものであり、放出後の大豆が散乱しないように、開口面積は小さくしている。この開口部は開閉式とすることもできる。ホッパー2上部は、大豆をホッパー2内に投入するために開口された投入口が設けられている。この投入口は、大豆を投入しやすいように開口面積を大きくしている。ホッパー2は、図1に示すように円錐形や角錐形とするのが一般的であるが、必要に応じて他の形状とすることもできる。なお、大豆を供給ロータリー3又はロール4に直接投入しうる手段があれば、必ずしも脱皮装置1にホッパー2を設ける必要はない。
【0022】
供給ロータリー3は、ホッパー2から放出される大豆の量を調整してロール4に送り込むものであり、従来のロータリーバルブの構造を利用することができる。具体的には、供給ロータリー3は回転軸を中心に回転する回転体を備えており、この回転体が回転することによってホッパー2の開口部から引き渡される大豆をロール4の方に引き込むものである。回転体の回転速度が速いほどロール4に送り出す大豆の量は多くなり、逆に、回転速度が遅いほどロール4に送り出す大豆の量は少なくなる。また、ホッパー2の下部にダンパー7を設けることもできる。このダンパー7は、供給ロータリー3の回転体がホッパー2の開口部から大豆を引き込む際の障壁となっており、一度に大量の大豆が供給ロータリー3に流出するのを防いでいる。なお、ロール4に投入する大豆の量を調整する必要がない場合には、必ずしも脱皮装置1に供給ロータリー3を設ける必要はない。
【0023】
前記したようにロール4は、それぞれ反対方向に回転する正ロール4aと反ロール4bとを備えており、回転軸6aと回転軸6bが平行となるように正ロール4aと反ロール4bは配置さていれる。正ロール4a及び反ロール4bは、それぞれ回転軸6aと回転軸6bを回転軸として回転するものであり、回転軸にそって略同一(同一含む)断面が連続する筒状(中実)又は管状(中空)の形状である。なお、正ロール4aの径と反ロール4bの径は、同じ径とすることも異なる径とすることもできる。また、たとえば正ロール4aを大きな径とし、反ロール4bの径を正ロール4aの径よりも極端に小さい径として、一つの正ロール4aに対して二以上の反ロール4bを設けることもできる。
【0024】
図2は、本願発明の豆類の脱皮装置を示す正面図である。図2に示すように、脱皮装置1は、正ロール4aを回転させる駆動モーター8a、反ロール4bを回転させる駆動モーター8b、供給ロータリー3を回転させる駆動モーター8cを備えている。正ロール4aと反ロール4bの回転速度(単位時間当たりの回転数)は、それぞれ同じ値としてもよいが、一方の回転速度を他方の回転速度より速くすると、より効率的に大豆の種皮を脱皮することができる。望ましくは回転速度比を1:3〜1:7、さらに望ましくは1:5とする。
【0025】
正ロール4aと反ロール4bが最も接近するところには所定の隙間(以下、「クリアランス」という。)が設けられている。このクリアランスは、脱皮する大豆の平均径よりやや小さい間隔とし、望ましくは脱皮する大豆の平均径の70%以上100%未満とする。一般に、国産大豆の平均径は、乾燥時で7mm程度、浸漬後は10mm程度であり、中国産やカナダ産大豆の平均径は、乾燥時で5.6mm程度、浸漬後は7.8mm程度である。このように大豆の種類や、乾燥大豆か浸漬大豆かによって、クリアランスの間隔を適宜設定することが望ましい。
【0026】
図1に示すように、前記クリアランスの間隔を調整しうる間隔調整装置5を脱皮装置1に備えることもできる。この間隔調整装置5は、スライドレール、間隔調整ハンドルを備えており、スライドレールには正ロール4aの回転軸6aを受ける軸受けがスライド可能に取り付けられ、間隔調整ハンドルを操作することによって、回転軸6aの軸受けをスライドさせることによって正ロール4aを移動させて、クリアランスの間隔を調整することができる。スライドレールは回転軸6aに対して略直交(直交含む)する角度で配置されており、正ロール4aは回転軸6aに対して略直交する方向に移動できる。また、間隔調整ハンドルは、ねじ式、油圧式など、回転軸6aの軸受けに対してスライドする力を作用させることができれば従来の技術が利用できるし、間隔調整ハンドルの操作は手動とすることも電動その他の手段とすることもできる。なお、正ロール4aの回転軸6aを受ける軸受けに代えて、反ロール4bの回転軸6bを受ける軸受けをスライドレールにスライド可能に取り付けて反ロール4bを移動可能とすることも、正ロール4a、反ロール4bともに移動可能とすることもできる。
【0027】
正ロール4aと反ロール4bの間にスプリングを設けることもできる。スプリングを正ロール4aの一部と反ロール4bの一部に取り付け、正ロール4aと反ロール4bを引き付ける力が作用するようにスプリングを張設する。これによって、前記クリアランスを通過する大豆に双方から圧力が加わり、大豆種皮の割砕が促進され、効率よく脱皮できる。
【0028】
正ロール4a及び反ロール4bの表面のうち回転軸回りの表面(以下、便宜上「側面」という。)には、図3に示すように引き込み突起9が備えられている。この引き込み突起9は、回転軸に対して略平行(平行含む)に連続するものであり、図4に示すように回転軸回りに間隔を設けながら複数備えられている。この間隔は等間隔とすることもできるし、異なる間隔とすることもできる。また、引き込み突起9は、図3のように正ロール4a(反ロール4b)の表面の端部から端部まで全長にわたって連続させることもできるが、引き込み突起9の長さをこれより短くして、複数の引き込み突起9を軸方向に断続的に連続させたり、前後の引き込み突起9と千鳥配置としたり、表面のうち一部だけ(両端に平坦部を残して)配置することもできる。また、正ロール4aの側面に備わる引き込み突起9の配置と、反ロール4bの側面に備わる引き込み突起9の配置は、同じ配置とすることもできるし、異なる配置とすることもできる。ただし、正ロール4aと反ロール4bの回転中に少なくとも1回は、前記クリアランスにおいて、正ロール4aの引き込み突起9と反ロール4bの引き込み突起9が向かい合う必要がある。
【0029】
ロール4まで送られてきた大豆は、さらに正ロール4aと反ロール4bの間のクリアランスを通過させる必要がある。正ロール4aの側面及び反ロール4bの側面が平坦であれば、大豆がこれら側面上を滑るためクリアランスに到達するまで時間がかかることがある。本願発明の場合、正ロール4aの側面及び反ロール4bの側面に設けられた引き込み突起9の効果で、大豆が側面上を滑ることなく引き込み突起9によって係止されて、確実にクリアランスまで到達することができる。
【0030】
大豆が正ロール4aと反ロール4bの間のクリアランスを通過する際、この大豆が正ロール4aの引き込み突起9と反ロール4bの引き込み突起9に挟まれる。このとき、大豆には双方の引き込み突起9から圧力が加えられ、大豆種皮が割砕する。大豆種皮が割砕すると、引き込み突起9が種皮をはぎ取って大豆は脱皮される。あるいは、一旦、大豆種皮が割砕すると、その後の大豆同士の摩擦などによって容易に大豆は脱皮される。
【0031】
図5は、引き込み突起9の断面形状を示す断面図である。引き込み突起9の正ロール4a(反ロール4b)表面からの突出高さH、引き込み突起9の配置間隔Bは、状況に応じて適宜設計することができるが、実験等によってHは0.5mm程度、Bは4mm程度とすると、より効率的に脱皮できることが分かった。
【0032】
引き込み突起9を正ロール4aや反ロール4bの表面に備える方法としては、正ロール4aや反ロール4bの製造段階から本体の一部として形成する方法や、正ロール4aや反ロール4bの製造後に引き込み突起9が設けられたシート状のものをライニングする方法など、種々の方法を採用することができる。なお、引き込み突起9が設けられたシート状のものとする場合、その材料にはウレタンをはじめ種々のものを利用することができる。
【0033】
(脱皮装置の実証実験)
実施形態1における脱皮装置1を用いた実証実験を行った。実験の諸条件は以下のとおりである。実験に使用した大豆はカナダ産大豆で、事前に水中に浸漬しており、浸漬後の平均径は約7.8mmであり、大豆の量は100kgとした。正ロール4aと反ロール4bの間のクリアランスの間隔は6mmとし、3台の脱皮装置1(1号機〜3号機)を使用して実験した。
【0034】
実際の利用を考えると、脱皮装置1の処理能力は1ton/hr程度が必要であり、脱皮率は80%以上を確保する必要があるため、これらを実験における目標値に設定した。実験の結果は表1のとおりである。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、いずれの脱皮装置1(1号機〜3号機)を使用しても、処理能力は目標とする1ton/hrを満足することができた。また、脱皮率についても、すべての脱皮装置1で80%以上を確保することができた。この実験結果から、本願発明の脱皮装置1は、効率よく大豆を脱皮するものであり、実用品として十分利用できるものであることがわかった。
【0037】
(実施形態2)
本願発明の豆類の脱皮方法と脱皮装置の第2の実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態は、実施形態1における脱皮装置1を含めた、大豆脱皮の全工程を実施する装置全体(システム)を説明するものである。図6は、大豆脱皮の全工程を実施する大豆脱皮システム10を示す説明図である。本実施形態では、ホッパー2、供給ロータリー3、ロール4を一組とするもの(以下、本実施形態では便宜上「大豆脱皮機11」という。)が3機備えられているが、これを1機又は2機、あるいは4機以上とするなど、状況に応じて適宜設計することができる。
【0038】
図6に示すように、大豆脱皮システム10は、大豆を浸漬させるための大豆浸漬タンク12、大豆と水分を分離させるための実・水分離器13、実際に大豆種皮を脱皮する大豆脱皮機11、脱皮後の大豆の種皮と子実部を分離するための実・水分離タンク14、脱皮後の種皮と水分を分離させるための皮・水分離器15、などによって構成されている。また、それぞれの施設を連絡する輸送パイプ16や、輸送パイプ16内の水や大豆を送り出すための各種ポンプも配置されている。
【0039】
図6に示す大豆脱皮システム10を、大豆脱皮の工程の順に従って以下説明する。まず、大豆は、所定量が貯水された大豆浸漬タンク12の中に投入され、ここで計画された時間浸漬される。大豆の浸漬時間は、水温によっても異なるが12〜24時間程度が望ましい。
【0040】
十分浸漬された浸漬大豆は、大豆浸漬タンク12の下方に接続された輸送パイプ16を通って実・水分離器13まで輸送される。この際、輸送パイプ16の途中に設けられた移送ポンプ17によって、浸漬大豆と水は輸送パイプ16内を圧送される。
【0041】
実・水分離器13内には、傾斜板13aが設けられている。この傾斜板13aは、メッシュ状の板あるいは無数の孔を有する板であり、これが篩の役割を果たして、水は実・水分離器13の下方に接続された輸送パイプ16に送られるが、浸漬大豆は傾斜板13aの上に残る。傾斜板13aは傾いて設置されているので、傾斜板13a上の浸漬大豆はこれに沿って落下し、次工程の大豆脱皮機11に送られる。
【0042】
実・水分離器13から送られてきた浸漬大豆は、大豆脱皮機11の上部に設けられた分配機18によって均等に3機の大豆脱皮機11に振り分けられる。大豆脱皮機11のホッパー2に投入された浸漬大豆は、実施形態1で説明したようにロール4によって大豆種皮が割砕されて脱皮される。
【0043】
脱皮された浸漬大豆は子実部と種皮に分かれ、これらが混在した状態で、実・水分離タンク14に送られる。この場合、図6に示すように大豆脱皮機11の直下に実・水分離タンク14を配置し、脱皮された浸漬大豆を落下させ直接投入してもよい。
【0044】
実・水分離タンク14内には、所定量の水が蓄えられており、この水の中に子実部と種皮が投入される。実・水分離タンク14には、水を攪拌させる攪拌機(図示しない)が備えられ、この攪拌機で水を攪拌し揺動することによって子実部と種皮は分離し、その比重差から子実部は下方へ沈み、種皮は上方へ浮上していく。
【0045】
実・水分離タンク14の下部には輸送パイプ16が接続されている。この輸送パイプ16に設けられた水循環ポンプ19は、前記実・水分離器13から送られた水、及び後述する皮・水分離器15から輸送パイプ16を通じて送られる水を汲み上げて、実・水分離タンク14内へ圧送することができる。水循環ポンプ19と実・水分離タンク14の間にバルブ20を設け、実・水分離タンク14内へ圧送する水量を調整することもできる。
【0046】
実・水分離タンク14の下部に接続された輸送パイプ16から注水されると、実・水分離タンク14内の水位が上昇していく。実・水分離タンク14の上方にはオーバーフロー管14aが設けられており、オーバーフロー管14aの設置高さよりも上昇する水はオーバーフローして、オーバーフロー管14aから皮・水分離器15へと送られる。実・水分離タンク14内の水の上部には、前記攪拌分離された種皮があるので、オーバーフロー管14aに流れる水には種皮が混在している。
【0047】
実・水分離タンク14の底部付近には、通過板14bが設置されている。この通過板14bは、パンチングプレートなどで形成され、水は通過させるが子実部は通過させないものである。上部の種皮層を皮・水分離器15へ送り、実・水分離タンク14内の水を抜けば、通過板14bの上には子実部だけが残る。
【0048】
皮・水分離器15内には、傾斜板15aが設けられている。この傾斜板15aは、メッシュ状の板あるいは無数の孔を有する板であり、これが篩の役割を果たして、水は皮・水分離器15の下方に接続された輸送パイプ16に送られるが、種皮は傾斜板15aの上に残る。傾斜板15aは傾いて設置されているので、傾斜板15a上の種皮はこれに沿って落下し、皮収納器21へ移送される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明の豆類の脱皮方法と脱皮装置は、味噌の製造や豆腐など大豆を原料とする製品の製造に利用することができる。また、大豆に限らず、銀杏、くるみ、小豆、ナッツ類など他の豆類に応用することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 脱皮装置
2 ホッパー
3 供給ロータリー
4 回転体(ロール)
4a 正回転体(正ロール)
4b 反回転体(反ロール)
5 間隔調整装置
6a (正ロールの)回転軸
6b (反ロールの)回転軸
7 ダンパー
8b (正ロールの)駆動モーター
8a (反ロールの)駆動モーター
8c (供給ロータリーの)駆動モーター
9 引き込み突起
10 大豆脱皮システム
11 大豆脱皮機
12 大豆浸漬タンク
13 実・水分離器
13a(実・水分離器の)傾斜板
14 実・水分離タンク
14aオーバーフロー管
14b通過板
15 皮・水分離器
15a(皮・水分離器の)傾斜板
16 輸送パイプ
17 移送ポンプ
18 分配機
19 水循環ポンプ
20 バルブ
21 皮収納器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆類の脱皮方法において、
前記豆類を所定時間浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程によって浸漬された豆類を脱皮する脱皮工程と、を備え、
前記脱皮工程では、前記浸漬された豆類が、
筒状又は管状であってその回転軸まわりに回転可能な正回転体と、筒状又は管状であってその回転軸まわりに前記正回転体とは反対方向に回転可能な反回転体とを備えた脱皮装置に送り込まれた後に、
前記正回転体の回転軸回りの表面及び前記反回転体の回転軸回りの表面に、それぞれ回転軸に対して平行であってその周方向に対して間隔を設けて備えられた引き込み突起によって、前記正回転体及び反回転体の回転方向に引き込まれ、
前記正回転体及び反回転体の引き込み突起で挟まれることによって豆類の種皮が割砕され、割砕された種皮が脱皮されることを特徴とする豆類の脱皮方法。
【請求項2】
請求項1記載の豆類の脱皮方法において、
脱皮後の種皮と実とを分離する分離工程を備え、この分離工程では、前記脱皮後の種皮及び実を水槽内の水に投入し、この水を攪拌して比重差による種皮と実との分離を促進することを特徴とする豆類の脱皮方法。
【請求項3】
豆類の脱皮装置において、
筒状又は管状であってその回転軸まわりに回転可能な一又は二以上の正回転体と、
筒状又は管状であってその回転軸まわりに前記正回転体とは反対方向に回転可能な一又は二以上の反回転体と、
前記正回転体及び反回転体を回転させ得る回転駆動体と、を備え、
前記正回転体と反回転体は、それぞれの回転軸が平行であって両者が最も接近する箇所に隙間を設けて配置され、
前記正回転体の回転軸回りの表面及び前記反回転体の回転軸回りの表面には、それぞれ回転軸に対して略平行な引き込み突起が周方向に対して間隔を設けて備えられ、
前記豆類は、前記正回転体及び反回転体の引き込み突起によって前記隙間の方へ引き込まれるとともに、それぞれの引き込み突起で挟まれることでその種皮が割砕され、割砕された種皮が脱皮されることを特徴とする豆類の脱皮装置。
【請求項4】
請求項3記載の豆類の脱皮装置において、
正回転体の単位時間当たりの回転数と、反回転体の単位時間当たりの回転数が、異なることを特徴とする豆類の脱皮装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の豆類の脱皮装置において、
正回転体又は/及び反回転体を、回転軸に対して直交する方向に移動させ得る間隔調整装置を備え、
前記間隔調整装置によって、脱皮する豆類の大きさに応じて、前記正回転体と反回転体との間隔を調整可能であることを特徴とする豆類の脱皮装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の豆類の脱皮装置において、
豆類を貯蔵可能な貯蔵ビンを備え、
前記貯蔵ビンの一部には貯蔵された豆類を正回転体と反回転体との間に送り出す開口部が設けられ、この開口部には供給調整装置が設けられ、
前記供給調整装置は、回転軸まわりに回転する回転体を有し、この回転体の回転速度によって回転体と反回転体との間に送り出す豆類の量を調整可能なことを特徴とする豆類の脱皮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200168(P2011−200168A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70535(P2010−70535)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、地域イノベーション創出総合支援事業重点地域研究開発推進プログラム(地域ニーズ即応型)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(397068056)古川機工株式会社 (10)
【出願人】(592102940)新潟県 (41)
【出願人】(301075916)株式会社峰村商店 (1)
【Fターム(参考)】