説明

豚の追込み搬送方法とその装置

【課題】 豚にかかるストレスを可及的に減少させ、肉質の向上と作業の効率化を高めることのできる豚の追込み搬送方法とその装置を提供する。
【解決】 上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア装置2と、誘導コンベア装置2の搬送方向上に、所要間隔と所要高さの段差を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベアを主体とする腹乗せコンベア装置3と、誘導コンベア装置2と腹乗せコンベア装置3間の側面部に跨って配置される左右一対のコンベアからなる乗移りコンベア装置4とで搬送装置1を構成し、誘導コンベア装置2上の豚の背後を遮断しながら腹乗せコンベア装置3に搬送し、乗移りコンベア装置4に豚の脚部を移行させたのち、腹乗せコンベア装置3の始端側で乗移りコンベア装置4の進行方向を下降方向に変え、腹乗せコンベア装置3上に豚を腹這い状態で載せ電撃作業場に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屠畜作業場において、豚を追込通路から電撃作業場へ送り込むに際し、豚に無理な負担や恐怖感を与えることなく、常に安定した状態で豚を搬送することのできる豚の追込み搬送方法と、この方法に使用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豚を拘束した状態で電撃作業場に搬送するに際し、豚に無理な負担や恐怖感を与えることなく、常に安定した豚の動きを拘束保定する搬送装置として、特許第2869722号公報(特許文献1)において、豚の保定搬送装置が提案されている。
【0003】
この豚の保定搬送装置は、特公平7−89837号公報で提案された豚の拘束搬送装置の有する問題点を解決したものである。
具体的には、豚の追込み通路の終端部に、豚の腹部を乗載支持し、搬送する搬送手段を連続して配置し、豚を拘束した姿勢で電撃作業場に連続的に送り込むようにした豚の保定搬送装置において、前記搬送手段の左右両側及び上側の略全長に、搬送手段の軸線と平行で、かつ、豚の左右両側に接する水平移動可能な側部拘束手段を左右対称的に設けるとともに、豚の背側に接する上下移動可能な背部拘束手段を設けたものである。
【0004】
前記特許文献1に記載の豚の保定搬送装置は、豚の追込み通路と、前記通路上に設けた開脚体によって案内された豚は、腹這い状態でコンベアに乗載支持されて搬送されるとともに、豚は背部拘束手段、側部拘束手段の上下、又は左右の水平移動によって、体形に適合した拘束がなし得られ、豚の安定した搬送が連続的に行われ、電撃効果の向上が図れるという作用効果を奏する点において、きわめて実用性の高いものである。
【0005】
また、豚の習性を利用して、恐怖感のない安定した搬送がなし得られ、更に電撃効果の向上が図れることが期待されていた。
【特許文献1】特許第2869722号公報
【特許文献2】特公平 7−89837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の豚の保定搬送装置は、先に述べたように、豚を一頭づつ追込み通路に追込んだのち、豚の自走によって前進させながら、通路上に設けた開脚手段によって、豚の脚を左右に開脚させ、コンベアに腹這い状態で載せて電撃作業場に送り込むものである。
【0007】
しかしながら、前記豚の保定搬送装置の近傍に設けられた、追込みのための待機場所から一頭づつ豚を追い込む作業は、作業員が豚の臀部などを叩きながら行っているが、豚は素直に追込み通路に入るとは限らず、場合によっては暴れることもある。
【0008】
また、自ら追込み通路に進入したとしても、追込み通路に追込まれた豚の全てが自発的に前進するとは限らず、後戻りすることや、後続の豚が前の豚に近接した状態で移動する場合、さらには、後続の豚が前の豚に乗り掛かることもある。
そのため、追込み通路に作業員を配置し、前記のような場合には、作業員が豚の臀部などを叩きながら適宜前進させる必要があるので、作業員の負担が大きく、豚に作用する負荷(ストレス)も、必ずしも減少していないことが判明した。
【0009】
この発明はかかる現状に鑑み、豚を電撃作業場に送り込むに際し、追込み通路(誘導路)に送り込まれた豚を、人手を要することなくスムーズに前進させたのち、前記追込み通路の終端部において、豚の脚を自動的に左右に拡開させて、搬送装置に腹這い状態で載せながら電撃作業場まで搬送することによって、豚にかかるストレスを可及的に減少させ、肉質の向上と作業の効率化を高めることのできる豚の追込み搬送方法とその装置を提供せんとすることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
所要頭数の豚を収容する追込み室の出口に近接して、上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア装置と、前記誘導コンベア装置の搬送方向上に、所要の間隔を存し、かつ所要高さの段差を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベアを主体とする腹乗せコンベア装置と、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置間の側面部に跨って配置される左右一対のコンベアからなる乗移りコンベア装置を使用し、
前記追込み室から誘導コンベア装置上に豚を送り出すと同時に、追込み室側の誘導コンベア装置の始端部を遮断する工程と、
前記誘導コンベア装置に載せた豚を、その背後を遮断した状態を保持しながら搬送する工程と、
前記誘導コンベア装置上の豚の胸部が、前記段差を介して配置された腹乗せコンベア装置の始端部に接したとき、豚の左右の脚部を自動的に前記左右一対の乗移りコンベア側に移行させ、この状態を保持しながら搬送する工程と、
前記腹乗せコンベアの始端側において、前記乗移りコンベアの進行方向を下降方向に変えることによって、豚を確実に腹這い状態で前記腹乗せコンベアに乗移らせる工程と、
腹這い状態の豚を、その状態を維持しながら腹乗せコンベアによって電撃作業場に搬送する工程
を順次実施すること
を特徴とする豚の追込み搬送方法である。
【0011】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
所要頭数の豚を収容する追込み室の出口に近接して、上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア装置と、前記誘導コンベア装置の搬送方向上に、段差を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベア装置と、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置の側面部間に跨って配置される乗移りコンベア装置から構成されるものであって、
前記誘導コンベア装置は、搬送方向に沿って、誘導コンベアの移動速度と同期しながら移動するとともに、誘導コンベア上に乗った豚の背後を、遮断した状態で併走するプッシング機構を具備し、
前記腹乗せコンベア装置は、前記誘導コンベアの進行方向上に、その始端部が、前記誘導コンベアの終端部との間に所要の間隔を存し、かつ誘導コンベア装置の終端部との間に所要高さの段差を介して上り方向に配置され、
前記乗移りコンベア装置は、前記誘導コンベア装置の終端部と腹乗せコンベア装置の始端部間に跨って並行配置される、所要の幅と長さを有する左右一対の乗移りコンベアからなること
を特徴とする豚の追込み搬送装置である。
【0012】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の豚の追込み搬送装置において、
前記誘導コンベア装置は、
所要の幅と長さを有する誘導コンベアで構成され、その始端部は、前記追込み室の出口近傍に位置し、前記出口と前記誘導コンベアの始端部との間に、スライド式柵ゲートが出没自在に配置されていること
を特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の豚の追込み搬送装置において、
前記誘導コンベアは、
終端部側に、豚の脚を左右に強制的に開脚させる平面三角形状の開脚部材が配置されていること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項2又は3に記載の豚の追込み搬送装置において、
前記誘導コンベア装置は、
いずれか一方の側面に沿って配置された、楕円形状のコンベアに突設された柵部材によって、誘導コンベア上の豚の後部を常時遮断するプッシング機構を具備していること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項2に記載の豚の追込み搬送装置において、
前記乗移りコンベア装置は、
所要の長さを有する左右一対のコンベアからなるもので、前記コンベアは、前記誘導コンベアおよび腹乗せコンベアより広幅で、前記誘導コンベアと並行する前記コンベアの上部始端側は、誘導コンベアと面一の高さとし、前記腹乗せコンベアと並行するコンベアの上部終端側は、腹乗せコンベアの始端側で下方に向かって移動するように構成されていること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項2〜6のいずれかに記載の豚の追込み搬送装置において、
前記誘導コンベア装置、腹乗せコンベア装置および乗移りコンベア装置は、
いずれも豚の背面部および側面部を拘束する拘束機構を有すること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項2〜6のいずれかに記載の豚の追込み搬送装置において、
前記誘導コンベア、腹乗せコンベアおよび乗移りコンベアは、
いずれもエンドレスに形成され、インバータ制御されるモータなどの駆動装置によって駆動すること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の豚の追込み搬送方法は、追込み室から追出された豚を誘導コンベア装置に追込んだのち、誘導コンベア装置の始端部を遮断するため、追込み室側に後戻りすることがなく、暴れるおそれも解消される。
【0019】
また、この発明の豚の追込み搬送方法は、誘導コンベアの前進に伴って、常時豚の後部側を遮断した状態で搬送するので、豚を一頭づつ、所定間隔を存して前方に搬送することができるとともに、豚が誘導コンベア上で後ずさりすることがなく、かつ前後の豚同士が互いに接触することがなく、豚に不要なストレスを掛けることがない。
また、作業員の追込み作業における負担が大幅に減少し、オートメーション化を可能とするものである。
【0020】
また、この豚の追込み搬送方法は、豚を立脚状態で搬送する誘導コンベア装置と、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベア装置の間に、乗移りコンベア装置を介在させることによって、自動的に開脚される豚の左右の脚部を保持し、豚を安全に前進させることができる。
【0021】
また、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置間に跨って、左右両側部にそれぞれ乗移りコンベアが配され、かつ誘導コンベア装置の終端部と腹乗せコンベア装置の始端部には、所要の高さの段部を有するため、豚の胸部が前記段差に当接すると、自動的に豚が持上げられると同時に、左右の脚部が自動的に開脚し、開脚された各四肢がそれぞれ前記前記左右一対の乗移りコンベアで支持されるが、前記乗移りコンベアの進行方向を、前記腹乗せコンベアの始端側で下降方向に変えることによって、豚の四肢が乗移りコンベアから離れる。
したがって、誘導コンベアより高い位置に配置した腹乗せコンベアに、豚をスムーズに乗移らせることができるので、豚に過度のストレスを与えることがない。
【0022】
さらに、この豚の追込み搬送装置は、前記誘導コンベア装置の搬送方向に沿って、誘導コンベアの移動速度と同期しながら移動し、コンベア上に乗った豚の背後を遮断した状態で併走するプッシング機構を具備しているので、豚が不用意に後ずさりすることがなく、スムーズな搬送を行なうことができる。
【0023】
また、前記誘導コンベア装置に送り出した豚を、一頭づつ所要の間隔を存して搬送することができるので、誘導コンベア上の豚同士の接触などがない。
同時に、定間隔で豚を確実に搬送することができるため、搬送効率を大幅に向上させるとともに、豚に対する負荷が減少し、配置する作業員の数を減らし省力化を推進させることができる。
【0024】
特に、この豚の追込み搬送装置は、追込み室から追出した豚を、爾後、作業員の人手を要することなく、電撃作業場まで豚に不要なストレスを掛けることなく、効率的に搬送させることができるので、肉質の向上と省人化を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明にかかる豚の搬送方法の一例を、添付の図面に示す豚の搬送装置を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
図1はこの発明にかかる豚の搬送装置の概略を示す平面図、図2は同側面図、図3は要部の拡大平面図、図4はこの発明の豚の搬送装置を構成する腹乗せコンベアの概略説明図である。
【0027】
この発明にかかる豚の搬送装置1は、図1および図2で明らかなように、所要頭数の豚を収容する追込み室(図示せず)出口に近接し、上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア21を主体とする誘導コンベア装置2と、前記誘導コンベア21の搬送方向と同一軸線上に、わずかな段差、具体的には豚の脚の長さ程度、を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベア31を主体とする装置3と、前記誘導コンベア装置2と腹乗せコンベア装置3の側面部間に跨って配置される、左右一対のコンベア41,42を主体とする乗移りコンベア装置4からなるものである。
【0028】
前記誘導コンベア装置2は、豚が自然体で歩行するのに必要な最低の幅(約20cm程度)と、所要の長さ(約600cm以下程度)を有する、インバータ制御されるエンドレスな誘導コンベア21からなるもので、その両側面と上部には、豚を拘束するための拘束機構(図示せず)が配置されている。
【0029】
また、この誘導コンベア装置2のいずれか一方の側面には、長軸側が前記誘導コンベア21と併走可能な、インバータ制御されるエンドレスな楕円形のコンベア22が配置されている。
【0030】
この楕円形のコンベア22は、コンベア22の周長によってピッチ割りを行ない、外方に突出する柵部材23を定ピッチ毎に配置し、前記誘導コンベア21上の豚の後部を遮断し、かつ後退した豚の臀部を前方に押し遣るプッシング機構を構成している。
【0031】
さらに、この誘導コンベア装置2の始端側(前記追込み室側)には、図1で明らかなように、誘導コンベア21に追込まれた豚が追込み室に後戻りすることがないよう、スライド式柵ゲート24が、前記誘導コンベア21の始端部を遮断できるよう、出没自在となるよう配置されている。
【0032】
さらにまた、前記誘導コンベア21の終端部の上面には、豚の前後の脚を同時に、かつ強制的に開脚させるための、平面視二等辺三角形状の開脚部材25が配置されている。
なお、この開脚部材25は、この発明においては必須のものではなく、前後の脚を強制的に開脚させることができる機構を備えるならば、特段の制限はないものである。
【0033】
前記腹乗せコンベア装置3は、前記誘導コンベア21の搬送方向上に、一般的な豚における脚長程度の高さの段差を介して、上り方向に傾斜させて配置されるインバータ制御されるエンドレスな腹乗せコンベア31からなるもので、この腹乗せコンベア31の幅は、前記誘導コンベア21の幅と同幅以下、具体的には約10mm程度とすることによって、装置全体の小型化を図っている。
【0034】
前記乗移りコンベア装置4は、図1で明らかなように、同一線延長線上に所要間隔を存して配置される前記誘導コンベア装置2の始端部と、前記腹乗せコンベア装置3の終端部に跨る左右側面部に配置される、インバータ制御されるエンドレスな左右一対のコンベア41,42とから構成される。
【0035】
前記左右一対のコンベア41,42は、開脚された豚の前後方向の四肢(脚部)を安定して搬送させるに必要な幅を有するものである。
また、各コンベア41,42の始端側(誘導コンベア21側)の、前記誘導コンベア21と併走する上部コンベア終端部41aは、誘導コンベア21と同じ高さを保持して上方に移動するよう配置されるとともに、前記腹コンベア31の始端側の上部コンベア終端部41bは、図2で明らかなように、下降方向に移動するように配置されるものである。
なお、反対側のコンベア42も同様に配置されるものである。
【0036】
したがって、乗移りコンベア41,42にそれぞれ両脚が載せられた豚は、開脚状態を維持しながら前進する。
ついで、前記コンベア41,42が、前記腹乗せコンベア31の始端部から少し前進した位置で下降方向に移動すると、豚の両脚が乗移りコンベア41,42から完全に離れ、豚の腹部が、段差を以って上向きに配置された腹乗せコンベア31に載るので、豚は腹這い状態を維持した状態で、前記腹乗せコンベア31によって電撃作業場(図示せず)に搬送される。
【0037】
また、この発明の豚の搬送装置1は、図4に示す腹乗せコンベア装置3で明らかなように、各コンベア21,31,41,42は、いずれも機枠F内に配置され、当該機枠F内に設けられる駆動輪(図示せず)が、歯車などの連動機構を介してモータなどの駆動源に連結されている。
【0038】
また、各コンベアを内装する機枠Fの内側面部には、それぞれ豚の側部を拘束する拘束部材A,Aが、上部には豚の背部を拘束する拘束部材Bが配置されるものである。
これら拘束部材A,Bは、いずれもエアシリンダによって適宜制御されるもので、配置位置や制御手段には特段の制限はないものである。
【0039】
かかる構成からなる豚の搬送装置1を使用した豚の搬送方法を、具体的に説明する。
【0040】
豚が追込み室の出口から追出され、誘導コンベア装置2側に移動すると、誘導コンベア21の始端部近傍に設置された複数の自動測定装置(図示せず)によって、豚の体幅、体高、腹部の床からの高さなどが測定され、この測定値は電子的記憶装置に入力される。
ついで、豚が誘導コンベア21上に載ると、追込み室の出口と連続する誘導コンベア装置2間が、スライド式柵ゲート24によって閉止されるので、豚は後退して追込み室に戻ることはない。
【0041】
追込まれた豚が載った前記誘導コンベア21は、上方に向かって移動するので、誘導コンベア21上の豚は、その自重などによって後退するおそれがあるが、豚が誘導コンベア21上に載ると、前記プッシング機構が自動的に作動し、豚の臀部側の誘導コンベア21上に柵部材23を突出させ、豚の臀部側を遮断し、柵部材23によって後押しすることによって、豚の後退を阻止する。
【0042】
この状態を保持しながら、誘導コンベア21の移動によって、豚が開脚部材25に接すると、この開脚部材25によって豚は、左右の両前足、両後足を強制的に開かれ、腹乗せコンベア31に向かって前進する。
【0043】
しかしながら、前記腹乗せコンベア31の始端部と誘導コンベア21の終端部の左右側面部には、それぞれ腹乗せコンベア31と誘導コンベア21間に跨って、左右一対のコンベア41,42が配置されているので、前記開脚部材25によって強制的に左右に押し開かれた左側の前後の脚は、図3においてコンベア42上に、右側の前後の脚は、コンベア41上に移動した状態で前進する。
【0044】
なお、この実施例においては、前記開脚部材25によって豚の前後の脚部を強制的に左右に押し開き、誘導コンベア21の左右に配置した腹乗せコンベア31の始端側に移行させる方式を採用しているが、前記開脚部材25が存在しなくとも、この発明の豚の搬送装置1では、豚の前後の脚部を左右に開脚させることができるものである。
【0045】
すなわち、前記誘導コンベア21の終端部と、腹乗せコンベア31の始端部とは、所要の間隔を存するとともに、豚の脚部の長さとほぼ対応する高さの段差が形成されているので、誘導コンベア21の終端側に搬送された豚の胸部は、必然的に高さのある腹乗せコンベア31の始端部に当接する。
【0046】
一方、前記腹乗せコンベア31も上り方向に回転しているため、豚の胸部が腹乗せコンベア31によって持上げられると同時に、左右の前後の脚部が、腹乗せコンベア31と同速度で移動する左右のコンベア41,42と当接し、脚部をコンベア41,42に、胴体の一部が腹乗せコンベア31に載った状態で前進移動するものである。
【0047】
しかしながら、前記各コンベア41,42は、始端側が誘導コンベア21の終端部と、終端側が腹乗せコンベア31の始端側と並走するように配置されるとともに、各コンベア41,42の終端部は、前記腹乗せコンベア31の始端側から少し前進した位置で、上り方向から下降方向に移動方向が変更されるように設けられている。
【0048】
したがって、豚の腹乗せコンベア31への移行とほぼ同時に、前記コンベア41,42が上方移動から下方移動に変わるので、豚の脚がいずれもコンベア41,42上から離れるため、腹乗せコンベア31に移行した豚は、自身の脚部で立つことができず、自動的に腹部が腹乗せコンベア31上に載せられた状態で電撃作業場に送られる。
【0049】
以上述べたように、この発明の豚の搬送方法およびその搬送装置は、追込み室から出た豚については、爾後、人手を要することなく電撃作業場まで自動的に搬送されるので、人手を要した従来の搬送手段に比べ、豚にかかるストレスを大幅に減らすことができる。

【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明の豚の搬送方法とその搬送装置は、誘導コンベア装置と、腹乗せコンベア装置と、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置間の側面部に跨って配置される左右一対のコンベアからなる乗移りコンベア装置を利用することによって、豚を電撃作業場に搬送するものであるので、前記誘導コンベア装置、腹乗せコンベア装置、左右一対の乗移りコンベアの大きさや強度などを適宜設定することによって、他の動物にも利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明にかかる豚の搬送装置の概略を示す平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】要部の拡大平面図である。
【図4】この発明の豚の搬送装置を構成する腹乗せコンベアの概略説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 豚の搬送装置
2 誘導コンベア装置
21 誘導コンベア
22 楕円形状のコンベア
23 柵部材
24 スライド式柵ゲート
25 開脚部材
3 腹乗せコンベア装置
31 腹乗せコンベア
4 乗移りコンベア装置
41,42 コンベア
41a コンベアの始端側
41b コンベアの終端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要頭数の豚を収容する追込み室の出口に近接して、上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア装置と、前記誘導コンベア装置の搬送方向上に、所要の間隔を存し、かつ所要高さの段差を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベアを主体とする腹乗せコンベア装置と、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置間の側面部に跨って配置される左右一対のコンベアからなる乗移りコンベア装置を使用し、
前記追込み室から誘導コンベア装置上に豚を送り出すと同時に、追込み室側の誘導コンベア装置の始端部を遮断する工程と、
前記誘導コンベア装置に載せた豚を、その背後を遮断した状態を保持しながら搬送する工程と、
前記誘導コンベア装置上の豚の胸部が、前記段差を介して配置された腹乗せコンベア装置の始端部に接したとき、豚の左右の脚部を自動的に前記左右一対の乗移りコンベア側に移行させ、この状態を保持しながら搬送する工程と、
前記腹乗せコンベアの始端側において、前記乗移りコンベアの進行方向を下降方向に変えることによって、豚を確実に腹這い状態で前記腹乗せコンベアに乗移らせる工程と、
腹這い状態の豚を、その状態を維持しながら腹乗せコンベアによって、電撃作業場に搬送する工程
を順次実施すること
を特徴とする豚の追込み搬送方法。
【請求項2】
所要頭数の豚を収容する追込み室の出口に近接して、上り方向に傾斜させて配置される誘導コンベア装置と、前記誘導コンベア装置の搬送方向上に、段差を介して上り方向に傾斜させて配置され、豚を腹這い状態で搬送する腹乗せコンベア装置と、前記誘導コンベア装置と腹乗せコンベア装置の側面部間に跨って配置される乗移りコンベア装置から構成されるものであって、
前記誘導コンベア装置は、搬送方向に沿って、誘導コンベアの移動速度と同期しながら移動するとともに、誘導コンベア上に乗った豚の背後を、遮断した状態で併走するプッシング機構を具備し、
前記腹乗せコンベア装置は、前記誘導コンベアの進行方向上に、その始端部が、前記誘導コンベアの終端部との間に所要の間隔を存し、かつ誘導コンベア装置の終端部との間に所要高さの段差を介して上り方向に配置され、
前記乗移りコンベア装置は、前記誘導コンベア装置の終端部と腹乗せコンベア装置の始端部間に跨って並行配置される、所要の幅と長さを有する左右一対の乗移りコンベアからなること
を特徴とする豚の追込み搬送装置。
【請求項3】
前記誘導コンベア装置は、
所要の幅と長さを有する誘導コンベアで構成され、その始端部は、前記追込み室の出口近傍に位置し、前記出口と前記誘導コンベアの始端部との間に、スライド式柵ゲートが出没自在に配置されていること
を特徴とする請求項2に記載の豚の追込み搬送装置。
【請求項4】
前記誘導コンベアは、
終端部側に、豚の脚を左右に強制的に開脚させる平面三角形状の開脚部材が配置されていること
を特徴とする請求項3に記載の豚の追込み搬送装置。
【請求項5】
前記誘導コンベア装置は、
いずれか一方の側面に沿って配置された、楕円形状のコンベアに突設された柵部材によって、誘導コンベア上の豚の後部を常時遮断するプッシング機構を具備していること
を特徴とする請求項2又は3に記載の豚の追込み搬送装置。
【請求項6】
前記乗移りコンベア装置は、
所要の長さを有する左右一対のコンベアからなるもので、前記コンベアは、前記誘導コンベアおよび腹乗せコンベアより広幅で、前記誘導コンベアと並行する前記コンベアの上部始端側は、誘導コンベアと面一の高さとし、前記腹乗せコンベアと並行するコンベアの上部終端側は、腹乗せコンベアの始端側で下方に向かって移動するように構成されていること
を特徴とする請求項2に記載の豚の追込み搬送装置。
【請求項7】
前記誘導コンベア装置、腹乗せコンベア装置および乗移りコンベア装置は、
いずれも豚の背面部および側面部を拘束する拘束機構を有すること
を特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の豚の追込み搬送装置。
【請求項8】
前記誘導コンベア、腹乗せコンベアおよび乗移りコンベアは、
いずれもエンドレスに形成され、インバータ制御されるモータなどの駆動装置によって駆動すること
を特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の豚の追込み搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104290(P2010−104290A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279753(P2008−279753)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(594158426)食肉生産技術研究組合 (15)
【Fターム(参考)】