説明

貝係止具抜去方法と貝係止具抜去装置

【課題】貝係止具を確実に抜去できる方法と、構造簡潔、安価な抜去装置を提供する。
【解決手段】本発明の抜去方法は、ロープを抜去装置に引き込んで走行させ、ロープを貫通突出している貝係止具の突出部を整列具に接触させてロープの周方向外側に向け、その突出部を、ロープの外側に配置された抜去具の回転により抜去具側に引き込んでロープから抜去し、抜去されなかった貝係止具の突出部は、ロープ走行方向先方に配置された抜去具の回転により抜去するようにした。本発明の抜去装置は、ロープ通路と、ロープを牽引する牽引具と、ロープを貫通突出している貝係止具の突出部をロープの周方向外側に向ける整列具と、その突出部をロープの周方向外側に引き込んで抜去する回転式の抜去具と、ロープから抜去された貝係止具を外部に排出する排出シュータを備え、整列具をロープ通路の上に配置し、二以上の抜去具をロープの走行方向に位置をずらして配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、帆立貝を耳吊り養殖するためにロープに貫通されている貝係止具を、養殖後にロープから抜去する方法と、それに使用される貝係止具抜去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帆立貝を耳吊り養殖する場合、図11に示すように、帆立貝養殖用ロープ(通常は樹脂製の編みロープ:以下「ロープ」という。)Cに樹脂製の貝係止具Dを貫通し、ロープCから突出した貝係止具Dの突出部Eを帆立貝Bの耳に開口してある孔に差し込んで、ロープCに多数の帆立貝Bを吊り下げ、そのロープCを、図11のように、海中に横に張った横ロープAに吊るしている。海から引き上げて帆立貝を取り外したロープCは次の養殖に再利用されている。この場合、ロープCに残っている貝係止具BをロープCから抜去して、抜去後のロープCに新たな貝係止具Dを差し込んでいる。
【0003】
帆立貝耳吊り養殖では、養殖して成長した帆立貝を貝係止具Dから取り外す。この場合、貝係止具Dは帆立貝と共にロープCから外れることもあるが、ロープCに残ることもある。そのロープは次の帆立貝養殖に再利用されている。この場合、貝係止具DがロープCに残ったままでは再利用しにくい(できない)ので、再利用する前に貝係止具DをロープCから取外して(抜去して)いる。
【0004】
本件特許出願人は先に、貝係止具DをロープCから自動的に取外す(抜去する)貝係止具抜去装置を開発した。この抜去装置は、貝係止具Dが残っているロープCを引き込みながら、ロープCから突出する貝係止具Dの突出部Eを回転式の抜去具に引き込んで貝係止具DをロープCから抜去するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−159872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、貝係止具を確実に抜去することのできる貝係止具抜去方法と、構造がシンプルで製作し易く、安価な貝係止具抜去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の貝係止具抜去方法(以下「抜去方法」という。)は、耳吊り養殖用のロープを貫通してそのロープの外周に突出している貝係止具の突出部をロープの外側に引き込んで抜去する貝係止具抜去方法であり、ロープを抜去装置のロープ通路に引き込んでロープ通路を走行させ、その引き込み時又は走行中に前記突出部をロープ通路の上に配置された整列具に接触させて突出部の向きをロープの周方向外側に向け、ロープの移動(走行)に伴って移動する前記貝係止具の突出部をロープの外側に配置された抜去具の回転により抜去具側に引き込んでロープから抜去し、その抜去具で抜去されなかった貝係止具の突出部をロープの周方向外側で前記抜去具と異なる周方向外側で且つロープ走行方向先方に配置された抜去具の回転によりその抜去具側に引き込んでロープから抜去する方法である。この場合、貝係止具の突出部をロープの左右両外側、又は左右両外側及び上側、又は左右両外側及び下側、又は左右両外側及び上下両側に抜去することができる。
【0008】
本発明の貝係止具抜去装置(以下「抜去装置」という。)は、耳吊り養殖用のロープを貫通してそのロープの外周に突出している貝係止具の突出部をロープの側方に引き込んで抜去する貝係止具抜去装置であり、ロープが走行するロープ通路と、ロープをロープ通路に牽引する牽引具と、ロープ通路を走行中のロープをロープ通路に押し付けると共にロープから突出している貝係止具の突出部をロープの周方向外側に向ける整列具と、その突出部をロープ走行中にロープの外側に引き込む回転式の抜去具と、ロープから抜去された貝係止具を装置本体の外部に排出する排出シュータを備え、前記整列具はロープ通路の上に配置され、前記抜去具はロープ通路の外側周方向いずれか二以上の箇所に配置され、それら二以上の抜去具はロープの走行方向に位置をずらして配置されたものである。
【0009】
本発明の抜去装置では、前記抜去装置において、二つの抜去具をロープの左右両外側、又は左右両外側及び上側、又は左右両外側及び下側、又は左右両外側及び上下両側に配置することができる。
【0010】
本発明の抜去装置は、前記抜去装置において、ロープ通路の入口手前に、ロープ通路に引き込まれるロープをガイドするロープガイドを備えたものとすることができる。
【0011】
本発明の抜去装置は、前記抜去装置において、牽引体と、ロープ通路と、抜去具と、排出シュータを装置本体に設け、整列具を装置本体のロープ通路の上に開閉可能な蓋に設けることができる。装置本体にはロープガイドを設けることもできる。
【0012】
本発明の抜去装置は、前記抜去装置において、回転式の抜去具を歯車、又は表面が貝係止具との摩擦抵抗の大きなロールとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抜去方法は、ロープを走行させて、ロープを貫通突出している貝係止具の突出部を、ロープの周方向外側に向けるので、前記突出部がロープ通路の周方向外側配置されている抜去具に引き込まれ、突出部がロープの周方向外側いずれの方向に突出していても、貝係止具は確実に抜去される。
【0014】
本発明の抜去装置は次のような効果がある。
(1)整列具がロープ通路の上に配置されているので、走行中のロープを整列具によりロープ走行路に押し付けて、ロープが走行中に上下或いは左右に振れる(暴れる)のを防止することができる。
(2)二以上の抜去具がロープ走行路の周方向外側に配置され、且つ、ロープの走行方向に位置をずらして配置されているので、貝係止具の突出部が整列具によりロープの周方向外側のいずれの方向に向けられても、前記いずれかの抜去具で確実に引き込まれて抜去される。また、二つ以上の抜去具で貝係止具を同時に反対方向に引き込むことがないので貝係止具が切断してロープ内に残ることもない。
(3)ロープ通路の入口手前にロープガイドを設けたので、ロープが暴れにくくなってスムースにロープ走行路に引き込まれ、整列具により、貝係止具の向きを左或いは右に揃え易くなる。
(4)ロープ牽引具と、ロープ走行路と、回転式の抜去具と、排出口を装置本体に設け、整列具を蓋に設けたので、抜去装置の構成が簡潔になる。
(5)ロープガイドを装置本体に設ければ、抜去装置の構成が簡潔、コンパクトになり、ロープが装置本体のロープ通路に引き込まれ易くなる。
(6)排出シュータがあるので、ロープから抜去された貝係止具が装置本体の外に確実に排出され、貝係止具が装置本体内に詰まることがなく、抜去作業を連続して行うことができる。
(7)抜去具を、歯車とする場合は既存のヘリカル歯車を、表面が貝係止具との摩擦抵抗が大きな回転体とする場合は既存のゴムロールや樹脂リール等を使用することができるので抜去装置のコストも低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の抜去装置の蓋を開いた状態の上方斜視図。
【図2】(a)は本発明の抜去装置における整列具を使用した貝係止具整列方法の一例を示す説明図、(b)は整列具に蓋を取り付けた状態を示す説明図。
【図3】(a)は本発明の抜去装置にロープをセットした状態の平面図、(b)は同状態の側面図。
【図4】(a)〜(c)は本発明の抜去装置における整列具により貝係止具の突出部を整列させる過程の正面説明図、(d)〜(f)は同過程の側面図。
【図5】本発明の抜去装置における引き込み貝により貝係止具の突出部を引き抜く初期時の平面説明図。
【図6】(a)〜(c)は本発明の抜去装置における引き込み貝により貝係止具の突出部を引き抜く過程の正面説明図、(d)〜(f)は同過程の側面図。
【図7】(a)〜(f)は本発明の抜去装置における引き込み貝により貝係止具を抜去する場合の経過説明図。
【図8】本発明の抜去装置の蓋を取り外した状態の斜視図。
【図9】本発明の抜去装置のケース前壁と排出口を取り外した状態の斜視図。
【図10】本発明の抜去装置のケース後壁を外して入口側から見た状態の斜視図。
【図11】帆立貝耳吊り養殖の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の抜去方法の実施形態)
本発明の抜去方法の一例を図面に基づいて説明する。この抜去方法は図1に示すようにロープCを貫通突出している貝係止具Dの突出部Eを、ロープCの進行方向左側又は右側に横向きに整列させ、その突出部Eを引き抜き具で引き抜き具側に引き込んで、貝係止具DをロープCから引き抜く方法である。
【0017】
図示した本発明の抜去装置を使用して、本発明の抜去方法により貝係止具を抜去する方法を一例として以下に説明ずる。
(1)ロープC(図2)を、抜去装置のロープ通路1(図1)の上に引き込んで、図1の右方向に走行させる。
(2)前記引き込み時に、貝係止具D(図2)の突出部E(図2)を、ロープ通路1の上に配置されている整列具2(図1、図2(a)、(b))の入口縁2a(図2(a)、(b))に接触させて、突出部Eの向きをロープCの進行方向左右いずれかの方向に強制的に向け、その向きでロープCの走行を継続させて、図2(a)、図3(a)のように整列具2の下に引き込む。このとき、上向き或いは下向きになるものもあるがそのまま引き込む。
(3)ロープCの走行を進行させると、整列具2により左向きにされた突出部Eが、ロープCの走行方向手前左側に配置されている回転式の抜去具(手前抜去具)3a(図1)により手前抜去具3a側に引き込まれる。手前抜去具3aが図1に示すヘリカル歯車の場合は、図5のように突出部Eが多数本のヘリカル歯6の間の溝内に引き込まれる。
(4)前記引き込み状態で手前抜去具3aの回転を継続させ、ロープCの走行を継続させることにより、図6(a)〜(f)、図7(a)〜(f)のように手前抜去具3aによる貝係止具Dの引き込みが進行して貝係止具DがロープCから抜去される。
(5)前記(4)の操作で抜去されずにロープCに残っている貝係止具D(整列具2で右向き或いは上下方向に整列された突出部E)は、ロープCをそのまま走行させることにより回転中の先方抜去具3bの回転により先方抜去具3b側に引き込まれる。
(6)前記(5)の先方抜去具3bの回転を継続させ、ロープCの走行を継続させることにより、先方抜去具3bに貝係止具Dが引き込まれて、貝係止具DがロープCから抜去される。
(7)上記(1)〜(6)により、ロープCの周方向左右に向けられた突出部Eは確実に抜去される。
【0018】
整列具2によりロープCの上又は下に向けて突出させられた突出部Eは図示されていない上下に配置された回転式の上抜去具或いは下抜去具により、ロープCの走行中に抜去される。
【0019】
(抜去装置の実施例)
本発明の抜去装置の一実施例を、図面に基づいて以下に説明する。この実施例の抜去装置は装置本体10(図1)と、装置本体10に蝶番11(図1)で開閉可能に取付けられた蓋12(図1)を備えている。
【0020】
装置本体10の上面にはロープ通路1が形成されている。ロープ通路1は装置本体10を横切る方向(図1の左右方向)に形成されている。装置本体10の出口の先方にはロープCを前記ロープ通路1に引き込んでロープ通路1の上を走行させるロープ牽引具13(図1)が設けられ、装置本体10の入口の手前にはロープ通路1に引き込まれるロープCをロープ通路1に引き込まれ易く案内するロープガイド14(図1)とガイドローラ15(図1)が設けられ、ロープ通路1の側方にはロープCを貫通突出している貝係止具Dをロープ通路1の側方に引き込んで抜去する回転式の抜去具3a、3bが設けられている。
【0021】
装置本体10には駆動体16(例えばモータ:図9、図10)、駆動体16の回転駆動力をロープ牽引具13、抜去具3a、3bに伝達してそれらを回転させる動力伝達機構17(図9)、ロープCから抜去された貝係止具Dを装置本体10の外部に排出させる排出シュータ18(図1、図8)等が設けられている。
【0022】
前記ロープ通路1は図1に示すように入口側1aと出口側1bは断面V字状であり、入口側1aと出口側1bの間は上向きコ字形の溝状であり、いずれの部分も上方が開口しており、その開口部はロープCの太さより多少幅広にしてロープCの下部が入り込み可能としてある。ロープ通路1の形状は他の形状とすることもできる。
【0023】
ロープ牽引具13(図1、図8)はロープCを装置本体10の前記ロープ通路1に引き込む(牽引する)ものであり、ロープCを挟む牽引ローラ20と押さえローラ21を備えている。牽引ローラ20は装置本体10に装備されている駆動体16の回転力で回転駆動される。この場合、駆動体16の回転が減速機R(図9、図10)で減速され、動力伝達機構17を介して牽引ローラ20に伝達される。前記押さえローラ21(図8)は牽引ローラ20の外周面に巻かれるロープCを牽引ローラ20の外周面に押し付けてロープCがスリップすることなく円滑に牽引されるようにするものである。押さえローラ21は縦向きのアーム22(図9)の下部に回転可能に取付けられている。アーム22は下端が内向き(図1では左向き)にL字状になっており、L字状の先端部が支持軸23(図1、図8)により装置本体10に回転自在に取付けられて、アーム22の上端部に取付けてあるハンドル24(図1、図8)の上端部を図8の矢印A方向に引いて右に傾斜させると、押さえローラ21が牽引ローラ20の外周面から離れるようにしてある。
【0024】
前記牽引ローラ20(図8)と押さえローラ21(図8)の間に図3(a)、(b)のようにロープCを挟むときは、両ローラ20、21の回転中にその間の隙間にロープCの先端を差し込むと、ロープCは自動的に両ローラ20、21間に引き込まれる。この状態で前記駆動体16(図9)を回転させ、前記動力伝達機構17(図9)を介して牽引ローラ20を図3の矢印Y方向に回転させると、両ローラ20、21間に挟まれているロープCが牽引ローラ20の回転方向に引かれて、ロープ通路1の上を走行する。走行中のロープCが両ローラ20、21間に詰まった時は、ハンドル24を図8の矢印Z方向に倒して、アーム22の上部(図8、図9の支持軸23よりも上部)を外側(矢印Z方向)に開き、押さえローラ21を同方向に倒して牽引ローラ20から離して両ローラ20、21間の隙間を広げてロープCを引き抜く。引き抜き後にハンドル24を元の位置(矢印Zと反対方向)に戻すと押さえローラ21が同方向に戻る。このとき、アーム22の下部が図示されていない引張りばねにより引き戻される。
【0025】
前記ロープガイド14(図1)は、装置本体10の外側(ロープ通路1の入口側1aの手前)に設けられており、横向きU字状のガイドバー25a、25bと、一方のガイドバー25aから縦向きに突設した二本の導入バー25c、25dで構成されている。
【0026】
前記ガイドローラ15は装置本体10から内側に突設された支持軸26(図1)に回転可能に設けられて、前記ロープガイド14の上方先方に設けられている。ロープガイド14とガイドローラ15によりロープCをガイドするには、図3(a)、(b)に示すように、ロープCを一方の導入バー25aの下から上に回して他方の導入バー25bの下を通し、導入バー25bの下からガイドローラ15の上に掛け、ガイドローラ15の上から装置本体10のロープ通路1の上に引き込む。
【0027】
前記手前抜去具3a(図1)はロープ通路1の左側に、先方抜去具3bはロープ通路1の右側に配置され、二つの抜去具3a、3bはロープCの走行方向手前と先方に位置をずらして配置されている。図示した抜去具3a、3bは多数枚のヘリカル歯6を備えたヘリカル歯車であるが、他の形状のギヤを使用することもできる。二つの抜去具3a、3bは多数枚のヘリカル歯6の向きを逆向きにして回転軸27a、27bに取付けられており、回転軸27a、27bの回転により共に内側(ロープ通路1側)に回転するようにしてある。抜去具3a、3bには貝係止具Dとの摩擦抵抗が大きいゴムローラ、樹脂ローラ、他の材質製、他の構造のローラ等を使用することもできる。夫々の抜去具3a、3bの上にはカバー41(図3)を被せて抜去具3a、3bを隠してある。
【0028】
抜去具3a、3bとロープ通路1の側壁1c(図5)との間にはロープCから抜去される貝係止具Dが通過可能な広さ(幅)の通過空間28(図5)が形成されている。通過空間28の広さは貝係止具Dの直径寸法と同じかそれよりも多少狭めの寸法にするのがよく、この程度の寸法にするとロープCから抜去される貝係止具Dが抜去具3a、3bとロープ通路1の側壁1cとの間に挟まれて抜去され易くなる。通過空間28が広すぎると、貝係止具Dが抜去具3a、3bにより側方に引き込まれにくくなり、ロープCから抜去されにくくなる虞がある。
【0029】
前記シュータ18(図8)は装置本体10に設けられており、その上部(入口)は前記通過空間28(図5)に連通し、下端(出口)18aは装置本体10のケースの前壁(図1、図8)に開口し、その出口18a側に向けて下り傾斜にして、シュータ18に落下した貝係止具Dは自動的に滑り落ちて出口18aから装置本体10の外部に排出されるようにしてある。
【0030】
前記駆動体16(図9、図10)にはモータに減速機Rが連結された汎用の減速機付きモータが使用されている。駆動体16には他のモータを使用することもできる。
【0031】
前記動力伝達機構17(図9、図10)は前記駆動体16の回転力を前記牽引ローラ20(図9)、抜去具3a、3b等に伝達してそれらを回転させるものであり、図10に示すように、減速機Rの回転軸に取り付けられているスプロケット30、牽引ローラ20の回転軸に取り付けられているスプロケット31、回転伝達軸32(図9)に取り付けられているスプロケット34(図10)等と、それらに巻回されたチェーン(図示せず)で構成されている。前記回転伝達軸32(図9)には二つの駆動ヘリカル歯車33a、33bが取り付けられている。この駆動ヘリカル歯車33a、33bは回転軸27a、27b(図1、図9、図10)に取付けられている受動ヘリカル歯車35a、35b(図9)と噛み合って回転軸27a、27bを回転させ、この回転により回転軸27a、27bに取付けられている抜去具3a、3bが回転するようにしてある。この場合、駆動ヘリカル歯車33a、33bはヘリカル歯の向きを互いに逆にし、受動ヘリカル歯車35a、35bのヘリカル歯の向きも互いに逆にして、二つの抜去具3a、3bが互いに逆回転するようにしてある。
【0032】
前記蓋12(図1、図2(b))はロープ通路1の長手方向に横長の板であり、それにハンドル12aが取付けられており、ハンドル12aのボール12bを手でつまんで開閉操作できるようにしてある。この蓋12の内面に整列具2(図1、図2(a)、(b))が取付けられている。
【0033】
前記整列具2は、装置本体10に引き込まれて装置本体10のロープ通路1を走行するロープCから突出している貝係止具Dの突出部Eを、強制的にロープの側方(右方向又は左方向)に向けて、左に設けた突出部Eが回転中の手前抜去具3aのヘリカル歯6の間の溝に、右に設けた先方抜去具3bが先方抜去具3bのヘリカル歯6の間の溝に夫々引き込まれるようにするものである。
【0034】
前記整列具2(図1、図2(a)、(b))は、ロープ通路1の長手方向に横長の板であり、蓋12の内面に連続V字状に曲げられた補強具40を介して取付けてロープ通路1を走行するロープCの上に被せてある。このように被せることにより、図2(a)のようにロープCを貫通突出している貝係止具Dの突出部Eが、整列具2の入口縁2aに当たって、図2(a)のように左右いずれかの方向又は左右双方に向けられ(整列され)る。ロープCの走行が進行すると、貝係止具Dはそのままの姿勢で整列具2の下に進入し、整列具2でロープ通路1に押し付けられながら走行する。突出部Eが前記のように左右いずれかの方向に向けられるときはロープCも同方向に多少回転する。
【0035】
図1、図2(a)、(b)に示すように整列具2は、ロープ走行方向手前左側に左凹部2bが形成されて、整列具2と対向配置された手前抜去具3a(図1)をロープ通路1寄りに接近配置して、ロープ通路1を走行中のロープCからその左側に突出している突出部Eを引き込み易くなるようにし、整列具2のロープ走行方向先方右側に右凹部2cが形成されて、整列具2と対向配置された先方抜去具3b(図1)をロープ通路1寄りの位置に接近配置して、ロープ通路1を走行中のロープCからその右側に突出している突出部Eを引き込み易くなるようにしてある。
【0036】
(抜去装置の使用方法)
本発明の抜去装置の使用の一例を以下に説明する。
(1)抜去装置へのロープのセット
図2(a)に示すように貝係止具Dが貫通しているロープCを、図3(b)のように抜去装置にセットする。このとき、ロープCを一方の導入バー25aの下から上に回してから他方の導入バー25bの下を通して、ガイドローラ15の上に掛け、ガイドローラ15の上からロープ通路1の上に引き込み、ロープCの先端部を牽引ローラ20と押さえローラ21の間に挟む。挟むときは、ロープCの先端部を牽引ローラ20と押さえローラ21の間に差込んで、回転中の両ローラ20、21間に引き込ませる。
(2)ロープの走行
前記のようにセットしてから、駆動体16(図9)を回転させ、動力伝達機構17(図9)を介して牽引ローラ20を図2(a)の矢印X方向に回転させると、牽引ローラ20と押さえローラ21との間に挟まれているロープCがロープ通路1の上を矢印X方向へ走行する。
(3)貝係止具の向きの整列
ロープCがロープ通路1の上を走行(移動)すると、ロープCの左右に突出している突出部E(図4(a)、(d))が整列具2の入口縁2aに当たって左又は右に向けられ(図4(b)、(e)、(c)、(f))、その状態で整列部2の下に進入して整列具2で押し付けられてその向きに保持される。
(4)貝係止具の抜去
前記のように左右に強制整列させられた突出部Eは、図5のように手前抜去具3aの溝内に引き込まれ、その抜去具3aの回転が進行するにつれて図6(a)〜(f)、図7(a)〜(f)のように手前抜去具3aの外周面に沿って引かれてロープCから抜去され、通過空間28(図5)内を通過して排出シュータ18(図1)内に落下し、排出シュータ18の出口18aから装置本体10の外部に排出される。右側に突出させられた突出部Eは先方抜去具3bの溝内に引き込まれ、その抜去具3bの回転が進行するにつれてその抜去具3bの外周面に沿って引かれてロープCから抜去され、通過空間28(図5)内を通過して前記排出シュータ18(図1)内に落下し、排出シュータ18の出口18aから装置本体1の外部に排出される。
(5)ロープの送り出し
前記のように貝係止具が抜去されたロープCは、牽引ローラ20の回転により、その先方に送り出され、牽引ローラ20によるロープCの引き込み中は前記抜去が連続して行われる。
【0037】
図示した抜去装置は、手前抜去具3aがロープCの周方向左側に、先方抜去具3bがロープCの周方向右側に配置された場合であるが、本発明では、抜去具をロープCの周方向上と下の双方又はいずれか一方にも配置することもできる。この場合は、上又は下の抜去具をロープCの走行方向に位置をずらして配置する。その配置はロープ通路1の入口側から出口側に左右上下の順に配置する必要はなく、その配置順序は任意に選定することができる。上下の抜去具で抜去された貝係止具も排出シュータに落下して抜去装置の外に排出さる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の抜去方法及び抜去装置は、帆立貝以外の貝の養殖に使用されるロープから貝係止具を抜去するのにも利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 ロープ通路
1a ロープ通路の入口側
1b ロープ通路の出口側
1c ロープ通路の側壁
2 整列具
2a 整列具の入口縁
2b 左凹部
2c 右凹部
3a 手前抜去具
3b 先方抜去具
6 ヘリカル歯
10 装置本体
11 蝶番
12 蓋
12a ハンドル
12b ボール
13 ロープ牽引具
14 ロープガイド
15 ガイドローラ
16 駆動体
17 動力伝達機構
18 排出シュータ
18a 排出シュータの出口
20 牽引ローラ
21 押さえローラ
22 アーム
23 支持軸
24 ハンドル
25a、25b ガイドバー
25c、25d 導入バー
26 支持軸
27a、27b 回転軸
28 通過空間
30 スプロケット
31 スプロケット
32 回転伝達軸
33a、33b 駆動ヘリカル歯車
34 スプロケット
35a、35b 受動ヘリカル歯車
40 補強具
41 カバー
A 横ロープ
B 帆立貝
C ロープ
D 貝係止具
E 突出部
R 減速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳吊り養殖用のロープを貫通してそのロープの外周に突出している貝係止具の突出部をロープの外側に引き込んで抜去する貝係止具抜去方法であり、
ロープを抜去装置のロープ通路に引き込んでロープ通路を走行させ、その引き込み時又は走行中に前記突出部をロープ通路の上に配置された整列具に接触させて突出部の向きをロープの周方向外側に向け、ロープの移動(走行)に伴って移動する前記貝係止具の突出部をロープの外側に配置された抜去具の回転により抜去具側に引き込んでロープから抜去し、その抜去具で抜去されなかった貝係止具の突出部をロープの周方向外側で前記抜去具と異なる周方向外側で且つロープ走行方向先方に配置された抜去具の回転によりその抜去具側に引き込んでロープから抜去することを特徴とする貝係止具抜去方法。
【請求項2】
請求項1記載の貝係止具抜去方法において、貝係止具の突出部をロープの左右両外側、又は左右両外側及び上側、又は左右両外側及び下側、又は左右両外側及び上下両側に抜去することを特徴とすることを特徴とする貝係止具抜去方法。
【請求項3】
耳吊り養殖用のロープを貫通してそのロープの外周に突出している貝係止具の突出部をロープの側方に引き込んで抜去する貝係止具抜去装置であり、
ロープが走行するロープ通路と、ロープをロープ通路に牽引する牽引具と、ロープ通路を走行中のロープをロープ通路に押し付けると共にロープから突出している貝係止具の突出部をロープの周方向外側に向ける整列具と、その突出部をロープ走行中にロープの外側に引き込む回転式の抜去具と、ロープから抜去された貝係止具を装置本体の外部に排出する排出シュータを備え、前記整列具はロープ通路の上に配置され、前記抜去具はロープ通路の外側周方向いずれか二以上の箇所に配置され、それら二以上の抜去具はロープの走行方向に位置をずらして配置されたことを特徴とする貝係止具抜去装置。
【請求項4】
請求項3記載の貝係止具抜去装置において、二つの抜去具がロープの左右両外側、又は左右両外側及び上側、又は左右両外側及び下側、又は左右両外側及び上下両側に配置されたことを特徴とする貝係止具抜去装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の貝係止具抜去装置において、ロープ通路の入口手前に、ロープ通路に引き込まれるロープをガイドするロープガイドを備えたことを特徴とする貝係止具抜去装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の貝係止具抜去装置において、牽引体と、ロープ通路と、抜去具と、排出シュータを装置本体に設け、整列具を装置本体に開閉可能な蓋に設けたことを特徴とする貝係止具抜去装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の貝係止具抜去装置において、装置本体にロープガイドをも設けたことを特徴とする貝係止具抜去装置。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の貝係止具抜去装置において、回転式の引き込み具を歯車又は表面が貝係止具との摩擦抵抗の大きなロールとしたことを特徴とする貝係止具抜去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−5373(P2012−5373A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141833(P2010−141833)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(398000288)株式会社むつ家電特機 (17)
【Fターム(参考)】