説明

負極活物質、その製造方法及び二次電池

【課題】二次電池の放電容量を十分に大きくすることができ、かつ、燃焼に対する防止策を講じることなく安全性に優れた二次電池を実現できる負極活物質及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、未処理の層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルにおける最も高いピークの位置に対し、最も高いピークの位置が低角度側にシフトしたX線回折のスペクトルが測定される高容量層状珪酸塩鉱物からなることを特徴とする負極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、その製造方法及び二次電池に関し、より詳しくは、低コストで安全性に優れ、かつ容量の大きい二次電池とすることができる負極活物質、その製造方法及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低コストで安全性に優れ、かつ容量の大きい二次電池が求められてきた。そして、このような二次電池を実現する電極、活物質及びセパレータとして、様々なものが提案されている。そして、このような電極及び活物質として、特許文献1〜3には、粘土鉱物を使用した電極が開示されている。
【0003】
特許文献1には、層状粘土化合物を添加した電極が提案されている。この電極を適用することで初期充放電特性に優れた二次電池を実現できる。また、特許文献2には、粘土鉱物を含有する電極体が提案されている。この電極体を適用することで機械的強度を向上させた二次電池を実現できる。そして、特許文献3には、安価で安全なリチウム二次電池を実現する負極活物質として、モンモリロナイト等の層状粘土鉱物を適用した負極活物質が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−279354号公報
【特許文献2】特開2008−71757号公報
【特許文献3】特開2004−296370号公報
【特許文献4】特開2008−66094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された粘土鉱物を使用した電極体及び負極活物質を適用した二次電池は放電容量が十分ではないという問題があった。また、二次電池に用いられる負極活物質としては、グラファイト等の炭素材料が広く適用されているが、炭素材料は可燃性であるため燃焼に対する防止策を必要とする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、二次電池の放電容量を十分に大きくすることができ、かつ、燃焼に対する防止策を講じることなく安全性に優れた二次電池を実現できる負極活物質及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明においては、未処理の層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルにおける最も高いピークの位置に対し、最も高いピークの位置が低角度側にシフトしたX線回折のスペクトルが測定される高容量層状珪酸塩鉱物からなることを特徴とする負極活物質を提供する。
【0008】
本発明によれば、上記高容量層状珪酸塩鉱物は、その層間隔が広くなっていると考えられることから、上記高容量層状珪酸塩鉱物においては二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われることが可能になると考えられる。そのため、高容量層状珪酸塩鉱物から構成された負極活物質を二次電池に適用した場合に、その放電容量を大きくできるようになる。
【0009】
また、一般的に層状珪酸塩鉱物は、不燃性であり、かつ容易に入手できることから安全性に優れかつ低コストの二次電池とすることができる。
【0010】
上記発明においては、上記未処理の層状珪酸塩鉱物が雲母族の層状珪酸塩鉱物であることが好ましい。
【0011】
上記発明においては、上記雲母族の層状珪酸塩鉱物が白雲母であることが好ましい。
【0012】
上記発明においては、上記高容量層状珪酸塩鉱物がイオンになる金属元素を更に含有することが好ましい。さらに、高容量の負極活物質とすることができるからである。
【0013】
また、本発明においては、未処理の層状珪酸塩鉱物を含有する原料組成物を焼成する焼成工程を有し、上記原料組成物が焼成されたものを負極活物質とすることを特徴とする負極活物質の製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記負極活物質の製造方法により製造された負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物は、その層間隔が広くなっていると考えられることにより、上記高容量層状珪酸塩鉱物においては二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われることが可能になると推定される。この結果、上記負極活物質を二次電池に適用した場合に、その放電容量を大きくできるようになる。
【0015】
上記発明においては、上記焼成工程前に上記未処理の層状珪酸塩鉱物にイオンになる金属元素の塩を混合して上記原料組成物とする混合工程を更に有することが好ましい。上記二次電池の放電容量をさらに大きくできるからである。
【0016】
上記発明においては、上記未処理の層状珪酸塩鉱物として雲母族の層状珪酸塩鉱物を適用することが好ましい。
【0017】
上記発明においては、上記雲母族の層状珪酸塩鉱物として白雲母を適用することが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、上記負極活物質を含有する負極層と、正極層と、上記負極層及び上記正極層の間に挟持される電解質と、を有することを特徴とする二次電池を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記二次電池に含有される上記負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔が広くなっていると考えられることにより、上記高容量層状珪酸塩鉱物においては上記二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われることが可能になると推定される。この結果、高容量層状珪酸塩鉱物から構成された負極活物質を二次電池に適用した場合に、その放電容量を大きくできるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、二次電池の放電容量を十分に大きくすることができ、かつ、燃焼に対する防止策を講じることなく安全性に優れた二次電池を実現できるといった効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における負極活物質の製造方法の第一実施態様を説明する図である。
【図2】本発明における負極活物質の製造方法の第二実施態様を説明する図である。
【図3】本発明における二次電池の一例を示す概略断面図である。
【図4】実施例1の白雲母及び比較例1の白雲母についてのX線回折測定の結果を示す図である。
【図5】実施例1について得られた充放電特性評価の結果を示す図である。
【図6】実施例2について得られた充放電特性評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の負極活物質、その製造方法及び二次電池について詳細に説明する。
【0023】
A.負極活物質
まず、本発明の負極活物質について説明する。本発明の負極活物質は、未処理の層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルにおける最も高いピークの位置に対し、最も高いピークの位置が低角度側にシフトしたX線回折のスペクトルが測定される高容量層状珪酸塩鉱物から構成されることを特徴とするものである。
【0024】
このような高容量層状珪酸塩鉱物は、通常、未処理の層状珪酸塩鉱物に所定の処理等を施すことにより得られるものである。本発明における高容量層状珪酸塩鉱物及び未処理の層状珪酸塩鉱物は同一の結晶構造を有する層状珪酸塩鉱物であるが、上述した最も高いピークの位置のシフト量に対応するような格子定数の差を有するものである。
【0025】
本発明の負極活物質が上記高容量層状珪酸塩鉱物から構成されるものであることにより、本発明の負極活物質を二次電池の負極層に適用したときには、二次電池の放電容量を大きくすることができ、二次電池を安全でかつ安価にすることができる。
【0026】
本発明の負極活物質を二次電池に適用した場合に、その放電容量が大きくなるのは、以下の理由によるものと推定される。
【0027】
すなわち、上述した高容量層状珪酸塩鉱物及び未処理の層状珪酸塩鉱物における格子定数の差は、高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔が未処理の層状珪酸塩鉱物の層間隔よりも広くなっていることを示す。そして、高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔が広くなっていることにより、高容量層状珪酸塩鉱物においては二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われることが可能になる。この結果、高容量層状珪酸塩鉱物から構成された負極活物質を二次電池に適用した場合に、その放電容量を大きくできるようになる。以下、このような特徴を有する高容量層状珪酸塩鉱物について詳細に説明する。
【0028】
1.高容量層状珪酸塩鉱物
本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物は、そのX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置が、未処理の層状珪酸塩鉱物のX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置より、低角度側にシフトしたものである。高容量層状珪酸塩鉱物は、未処理の層状珪酸塩鉱物に所定の処理等を施すこと等により得られるものである。以下、未処理の層状珪酸塩鉱物、シフト量、及び処理方法等について説明する。
【0029】
(1)未処理の層状珪酸塩鉱物
本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物は、上述したように、未処理の層状珪酸塩鉱物に所定の処理を施すことにより得られるものである。この未処理層の層状珪酸塩鉱物とは、採掘後に、上記X線回折スペクトルの最も高いピークの位置に対して影響を及ぼすような処理が施されていない層状珪酸塩鉱物のことを意味するものであり、一般的な処理、すなわち研磨、切断及び洗浄等の処理が施されたものを含むものである。このような未処理の層状珪酸塩鉱物としては、所定の処理等を施すこと等により高容量層状珪酸塩鉱物が得られるのであれば、特に限定されるものではないが、例えば、蛇紋石−カオリン族、タルク−パイロフィライト族、雲母族、層間欠陥型雲母、脆雲母族、緑泥石族及び混合層鉱物等の族に属するものが挙げられる。
【0030】
ここで、本発明における上記蛇紋石−カオリン族に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、リザーダイト、アメサイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレイポナイト、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト(板状)、オーディナイト等が挙げられる。また、本発明における上記タルク−パイロフィライト族に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト等が挙げられる。本発明における上記雲母族に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、金雲母、イーストナイト、鱗雲母、ポリリシオライト、白雲母、砥部雲母、ソーダ雲母等が挙げられる。
【0031】
本発明における上記層間欠損型雲母に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、イライト、海緑石、ブラマーライト、ウォンネサイト等が挙げられる。本発明における上記脆雲母族に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、クリントナイト、木下、ビデ雲母、真珠雲母等が挙げられる。本発明における上記緑泥石族に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、ペナンタイト、ドンバサイト、クッケアイト等が挙げられる。本発明における上記混合層鉱物に属する層状珪酸塩鉱物としては、例えば、クルケアイト、レクトライト、トスダイト、ルニジャンライト、サライオタイト等が挙げられる。
【0032】
本発明における層状珪酸塩鉱物としては、上述した中でも、雲母族及び層間欠陥型雲母の層状珪酸塩鉱物が好ましい。雲母族に属する層状珪酸塩鉱物としては、中でも、金雲母、白雲母等が好ましい。本発明においては、特に、雲母族に属する層状珪酸塩鉱物としては白雲母が好ましい。
【0033】
(2)シフト量
本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物は、そのX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置が、未処理の層状珪酸塩鉱物のX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置より、低角度側にシフトしたものである。そして、高容量層状珪酸塩鉱物及び未処理の層状珪酸塩鉱物は同一の化学組成及び同一の結晶構造を有するものであるが、このシフト量に対応するような格子定数の差を有するものである。さらに、この格子定数の差は、高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔が二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われるように未処理の層状珪酸塩鉱物の層間隔よりも広くなっていることを示すと推定される。
【0034】
本発明における、上述した最も高いピークの位置(最も高いピークにおける入射角(2θ))がシフトしたシフト量としては、二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易にかつ多量に行われるように高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔が広くなっていることに対応するシフト量であれば、特に限定されるものではないが、0.1°〜1.0°の範囲内であることが好ましい。
【0035】
特に、本発明に用いられる未処理の層状珪酸塩鉱物が白雲母である場合は、0.1°〜0.6°の範囲内であることが好ましい。
【0036】
(3)処理方法
本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物は、上記未処理の層状珪酸塩鉱物に所定の処理等を施すことにより、得られるものである。このような処理等としては、未処理の層状珪酸塩鉱物に対して、上述したようなX線回折スペクトルにおける最も高いピークの位置の関係が得られるような処理であれば特に限定されるものではなく、機械的な処理や熱的な処理等の物理的な処理、酸、アルカリ等の薬品による処理等の化学的な処理等を挙げることができる。本発明においては、後述する負極活物質の製造方法で説明する焼成処理が好ましい処理法として挙げることができる。
【0037】
(4)その他
本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物は、イオンになる金属元素をさらに含有していてもよい。ここで、イオンになる金属元素とは、本発明に用いられる高容量層状珪酸塩鉱物から構成される負極活物質を負極層に適用した二次電池において充放電に寄与するイオンになる金属元素のことであり、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等を挙げることができる。本発明においては特にリチウム(Li)が好ましい。二次電池の放電容量を大きくできるからである。
【0038】
本発明においては、上記高容量層状珪酸塩鉱物が上記イオンになる金属元素をさらに含有することにより、上記高容量層状珪酸塩鉱物を二次電池に適用した際に、二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離がさらに容易となることが推定され、これにより、二次電池の放電容量をさらに大きくすることができる。ここで、上記高容量層状珪酸塩鉱物が、上記イオンになる金属元素をさらに含有することにより、二次電池の放電容量をさらに大きくできる理由は明確でないが以下のように推定される。
【0039】
すなわち、上記高容量層状珪酸塩鉱物が上記イオンになる金属元素をさらに含有する場合、上記高容量層状珪酸塩鉱物から構成される負極活物質を負極層に適用した二次電池においては、充放電が開始される前から充放電に寄与するイオンの金属元素が上記高容量層状珪酸塩鉱物に予め含有されていることになる。そして、これを要因として、この二次電池において充放電が行われるときには、この二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が上記高容量層状珪酸塩鉱物においてさらに容易になると考えられる。
【0040】
そして、このようなイオンになる金属元素は、上記高容量層状珪酸塩鉱物に含有されていれば特に限定されるものではないが、好ましくは上記高容量層状珪酸塩鉱物の層間に存在することが好ましい。
【0041】
また、上記高容量層状珪酸塩鉱物がこのようなイオンになる金属元素を含有しているかどうかは、例えば、ICP発光分析等により、確認することができる。
【0042】
2.負極活物質
本発明における負極活物質は、上記高容量層状珪酸塩鉱物から構成されるものである。このため、本発明における負極活物質を負極層に適用した二次電池の放電容量を大きくできる。また、層状珪酸塩鉱物は容易に入手できるものであることから、コスト的に有利であるといった利点を有する。さらに、層状珪酸塩鉱物は従来から負極活物質に適用されている炭素系の材料と比較して可燃性でないことから、安全性にも優れたものであるといえる。
【0043】
このような本発明の負極活物質は二次電池の負極層に用いられるものであるが、本発明の負極活物質が適用される二次電池は、全固体二次電池であることが好ましい。全固体二次電池は、液体電解質を適用した二次電池と比較して安全装置を簡素化できるため、製造コストや生産性に優れるからである。また、本発明の負極活物質が適用される二次電池は、リチウム二次電池であるのが好ましい。リチウム二次電池は、リチウムイオン以外のイオンを適用した二次電池よりも電池効率が高いからである。
【0044】
B.負極活物質の製造方法
次に、本発明における負極活物質の製造方法について説明する。本発明における負極活物質の製造方法は、二つの実施態様に大別することができる。以下、本発明における負極活物質の製造方法について第一実施態様及び第二実施態様に分けて説明する。
【0045】
1.第一実施態様
まず、本発明の負極活物質の製造方法の第一実施態様について説明する。本実施態様の負極活物質の製造方法は、未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する焼成工程を有し、上記原料組成物が焼成されたものを負極活物質とすることを特徴とするものである。
【0046】
本実施態様によれば、上記負極活物質の製造方法によって得られる負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物は、未処理の層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルにおける最も高いピークの位置に対し、最も高いピークの位置が低角度側にシフトしたX線回折のスペクトルが測定される。したがって、このような高容量層状珪酸塩鉱物から構成される負極活物質を二次電池に適用した場合には、「A.負極活物質」の項目で説明した理由により、その放電容量を大きくできる。
【0047】
図1は、本発明における負極活物質の製造方法の第一実施態様を説明する図である。図1に示される製造方法においては、まず、出発原料として未処理の層状珪酸塩鉱物を用意する。次に、未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する(焼成工程)。次に、未処理の層状珪酸塩鉱物が焼成されたものを負極活物質とする。以下、本実施態様の負極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0048】
(1)出発原料
本実施態様における負極活物質の製造方法においては、出発原料として、未処理の層状珪酸塩鉱物を用意する。この未処理の層状珪酸塩鉱物は、「A.負極活物質 1.高容量層状珪酸塩鉱物 (1)未処理の層状珪酸塩鉱物」の項目で説明したものと同じものなので、ここでは、その説明を省略する。
【0049】
(2)焼成工程
本実施態様における焼成工程においては、上記未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する。このような本工程における各種の焼成条件について以下に説明する。
【0050】
まず、未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する際の焼成温度について説明する。この焼成温度は、未処理の層状珪酸塩鉱物をこの焼成温度で焼成することにより、それについて測定されるX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置が、上記高容量層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置まで低角度側にシフトするのならば特に限定されるものではないが、400℃〜1100℃であることが好ましい。焼成温度は、未処理の層状珪酸塩鉱物が分解しない範囲で、出来るだけ高くした方が、上記最も高いピークの位置が低角度側にシフトするシフト量が大きくなるからである。
【0051】
特に、本実施態様における未処理の層状珪酸塩鉱物が白雲母である場合の焼成温度は、600℃〜1000℃であることが好ましい。
【0052】
次に、高容量層状珪酸塩鉱物を得るために未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する焼成時間について説明する。ここで説明する焼成時間とは、未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する際に上述した焼成温度を維持する時間のことを指す。この焼成時間は未処理の層状珪酸塩鉱物をこの焼成時間で焼成することにより、それについて測定されるX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置が、上記高容量層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルの最も高いピークの位置まで低角度側にシフトするのならば特に限定されない。この焼成時間は、上述した未処理の層状珪酸塩鉱物の種類及び上述した焼成温度に応じて適宜定めればよいが、具体的には、特に0.1時間〜20時間の範囲内であることが好ましい。焼成時間は、未処理の層状珪酸塩鉱物が分解しない範囲で、出来るだけ長くした方が、上記最も高いピークの位置が低角度側にシフトするシフト量が大きくなるからである。
【0053】
次に、高容量層状珪酸塩鉱物を得るために未処理の層状珪酸塩鉱物を焼成する雰囲気について説明する。本工程における焼成は、上述したような高容量層状珪酸塩鉱物を得ることができるのであれば、空気中で行っても非酸化性雰囲気中で行っても構わない。非酸化性雰囲気としては、具体的には不活性ガス雰囲気および還元性雰囲気を挙げることができる。不活性ガス雰囲気で焼成を行う方法としては、例えばAr等の不活性ガスを流通させながら焼成を行う方法等を挙げることができる。
【0054】
2.第二実施態様
次に、本発明の負極活物質の製造方法の第二実施態様について説明する。本実施態様の負極活物質の製造方法は、未処理の層状珪酸塩鉱物にイオンになる金属元素の塩を混合して原料組成物とする混合工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程を有し、上記原料組成物が焼成されたものを負極活物質とすることを特徴とするものである。
【0055】
本実施態様によれば、上記負極活物質の製造方法によって得られた負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物は、第一実施態様における高容量層状珪酸塩鉱物と比較して、イオンになる金属元素をさらに含有することになる。このイオンになる金属元素とは、このような高容量層状珪酸塩鉱物から構成される負極活物質を負極層に適用した二次電池において充放電に寄与するイオンの金属元素のことであり、「A.負極活物質 1.高容量層状珪酸塩鉱物 (4)その他」の項目で説明したものと同様である。
【0056】
本実施態様により得られる高容量層状珪酸塩鉱物から構成される負極活物質を負極層に適用した二次電池においては、「A.負極活物質 1.高容量層状珪酸塩鉱物 (4)その他」の項目で説明した通り、充放電が開始される前から充放電に寄与するイオンの金属元素が上記高容量層状珪酸塩鉱物に予め含有されていることになる。そして、この二次電池において充放電が行われるときには、この二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が上記高容量層状珪酸塩鉱物においてさらに容易になると考えられる。
【0057】
これにより、本実施態様における負極活物質の製造方法により得られた負極活物質を負極層に適用した二次電池の放電容量をより大きくすることができると考えられる。
【0058】
図2は、本発明における負極活物質の製造方法の第二実施態様を説明する図である。図2に示される製造方法においては、まず、出発原料として未処理の層状珪酸塩鉱物及びイオンになる金属元素の塩を用意する。次に、未処理の層状珪酸塩鉱物にイオンになる金属元素の塩を混合して原料組成物とする(混合工程)。次に、上記原料組成物を焼成し(焼成工程)、上記原料組成物が焼成されたものを負極活物質とする。以下、本実施態様の負極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0059】
(1)出発原料
本実施態様における負極活物質の製造方法においては、出発原料として、未処理の層状珪酸塩鉱物及びイオンになる金属元素の塩を用意する。この未処理の層状珪酸塩鉱物は、「A.負極活物質 1.高容量層状珪酸塩鉱物 (1)未処理の層状珪酸塩鉱物」の項目で説明したものと同じものなので、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施態様に用いられるイオンになる金属元素の塩としては、後述する焼成工程において未処理の層状珪酸塩鉱物と混合して得られる原料組成物を焼成することによって、上述したようなイオンになる金属元素を含有する高容量層状珪酸塩鉱物が得られるのであれば、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩等を挙げることができる。そして、これらの塩の中でもリチウム塩が好ましい。リチウム塩を用いて得られた負極活物質を負極層に適用した二次電池において、充放電に寄与するイオンがリチウムイオンになるので、二次電池の放電容量を中でも大きくできるからである。
【0061】
さらに、本実施態様に用いられるリチウム塩としては、特に限定されるものではなく、無機リチウム塩でも有機リチウム塩でもよい。無機リチウム塩としては、例えば、LiNO(硝酸リチウム)、LiCO(炭酸リチウム)、LiSO(硫酸リチウム)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl等を挙げることができる。中でもLiNO(硝酸リチウム)等が好ましい。また、有機リチウム塩としては、例えば、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等を挙げることができる。
【0062】
(2)混合工程
本実施態様における混合工程においては、上記未処理の層状珪酸塩鉱物及び上記イオンになる金属元素の塩を混合して原料組成物とする。
【0063】
また、本実施態様における混合工程において、上記未処理の層状珪酸塩鉱物及び上記イオンになる金属元素の塩を混合する割合は、その割合で混合して得られる原料組成物を用いることによって、上記イオンになる金属元素を含有する高容量層状珪酸塩鉱物が得られるのであれば、特に限定されるものではないが、モル比で、未処理の層状珪酸塩鉱物:イオンになる金属元素の塩=1:0.1〜1:10であることが好ましく、特に1:0.3〜1:0.5であることが好ましい。
【0064】
中でも、上記未処理の層状珪酸塩鉱物が白雲母で上記イオンになる金属元素の塩がリチウム塩である場合には、上記混合する割合は、特に限定されるものではないが、モル比で、白雲母:リチウム塩=1:0.1〜1:9であることが好ましく、特に1:0.3〜1:0.5であることが好ましい。
【0065】
(3)焼成工程
本実施態様における焼成工程においては、上記混合工程で得られた原料組成物を焼成する。本工程における各種の焼成条件は、「B.負極活物質の製造方法 1.第一実施態様 (2)焼成工程」において説明したものと同じなので、ここでは説明を省略する。
【0066】
C.二次電池
次に、本発明の二次電池について説明する。本発明の二次電池は、上述した負極活物質を含有する負極層と、正極層と、上記負極層及び上記正極層の間に挟持される電解質層と、を有することを特徴とするものである。
【0067】
本発明によれば、上述した負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔は広くなると考えられる。このため、この負極活物質へのイオンの挿入・脱離が容易になる。したがって、上述した負極活物質を負極層に適用した二次電池の放電容量を大きくできる。
【0068】
図3は、本発明における二次電池の一例を示す概略断面図である。二次電池10は、負極活物質を含有する負極層1と、正極層2と、負極層1及び正極層2の間に挟持される電解質層3と、を有するものである。以下、本発明の二次電池について、構成ごとに説明する。
【0069】
1.負極層
まず、本発明における負極層について説明する。負極層は、負極活物質及び固体電解質を含有する層である。
【0070】
本発明における負極活物質としては、「A.負極活物質」で説明した負極活物質が用いられる。「A.負極活物質」で説明した通り、この負極活物質を構成する高容量層状珪酸塩鉱物の層間隔は未処理の層状珪酸塩鉱物よりも広いものと推定される。このため、この負極活物質を負極層に用いる場合、二次電池において充放電が行われるときに、この負極活物質においては二次電池の充放電に寄与するイオンの挿入・脱離が容易になると考えられる。したがって、この負極活物質を負極層に適用した二次電池の放電容量を大きくすることができる。
【0071】
本発明において、全固体二次電池の場合は、負極層に固体電解質層が含有されていてもよい。このような固体電解質としては、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等を挙げることができる。本発明においては、固体電解質が硫化物固体電解質であることが好ましい。硫化物固体電解質は、イオン伝導性が高く、負極層のイオン伝導性を向上させることができるからである。本発明における硫化物固体電解質としては、例えば、Li11等を挙げることができる。
【0072】
また、負極層は導電化材を含有していてもよい。導電化材の添加により、負極層の導電性を向上させることができる。本発明に用いられる導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。
【0073】
さらに、負極層は、結着剤及び増粘剤を含有していてもよい。本発明で用いられる結着剤の種類としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの水系結着剤等を挙げることができる。そして、増粘剤の種類としては、スチレンブタジェンゴム(SBR)などのゴム系増粘剤などを挙げることができる。また、負極層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0074】
2.電解質層
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、正極層および負極層の間に形成される層である。電解質層は、イオン伝導を行うことができる層であれば特に限定されるものではないが、固体電解質層であることが好ましい。安全性の高い全固体電池を得ることができるからである。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。また、固体電解質層の形成方法としては、例えば、固体電解質材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。このような、固体電解質層に用いられる固体電解質としては、「C.二次電池 1.負極層」で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0075】
また、本発明における電解質層は、電解液から構成される層であっても良い。電解液を用いることで、高出力な二次電池を得ることができる。また、電解液は、通常、塩および有機溶媒(非水溶媒)を含有する。
【0076】
3.正極層
次に、本発明における正極層について説明する。本発明における正極層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着剤の少なくとも一つを含有していても良い。
【0077】
上記正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMnO、LiNiMn、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiCoPO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができる。
【0078】
上記導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。上記結着剤の種類としては、例えば、フッ素含有結着剤等を挙げることができる。なお、正極層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
4.その他の構成
本発明の二次電池は、上述した正極層、電解質層および負極層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもアルミニウムが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、二次電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明の二次電池が全固体電池である場合、発電要素を絶縁リングの内部に形成しても良い。
【0080】
5.二次電池
本発明の二次電池は、例えば車載用電池として有用である。本発明の二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
【0081】
また、本発明の二次電池の製造方法は、上述した二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、本発明の二次電池が全固体電池である場合、その製造方法の一例としては、正極層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。まず、実施例1及び比較例1について説明する。
【0083】
[実施例1]
(原料前処理)
白雲母を乳鉢で20分間粉砕した。
【0084】
(焼成処理)
白雲母を900°で2時間焼成した。また、焼成には焼成炉を用いた。
【0085】
(電極作製)
まず、N-メチルピロリドン中で、焼成後の白雲母、導電材、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びスチレンブタジェンゴム(SBR)を、重量比88:10:1:1の割合で混合した。次に、その組成物を、負極集電体であるCu箔(厚さ10μm、日本製箔社製)上に塗布した。次に、電極密度が1.2g/cmとなるようにプレスし、次に、φ16mmの円形に打ち抜き、負極電極を得た。
【0086】
(電池作製)
まず、作製した負極電極及びLiメタルを負極及び正極としてそれぞれ適用して、2032型のコインセルを作製した。この際、セパレータとしてはPE製のセパレータを適用し、電解液としてはEC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)及びEMC(エチルメチルカーボネート)を体積比3:4:3で混合した溶媒にLiPFを濃度1Mで溶解させたものを適用した。
【0087】
[比較例1]
白雲母の焼成処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、負極電極及び電池を作製した。
【0088】
[評価1]
(X線回折測定)
実施例1に用いられた900℃で焼成した白雲母及び比較例1に用いられた未焼成の白雲母についてX線回折測定を行った。実施例1の白雲母及び比較例1の白雲母についてのX線回折測定の結果を図4に示す。
【0089】
(電気化学特性評価)
実施例1及び比較例1において得られた電池の電気化学特性を評価した。電気化学特性は、0.1C(なお、1Cは1時間で満充電できる電気量である。)で0.01VまでLiを挿入し、その後3VまでLiを脱離する操作を行って、充放電特性を評価した。実施例1について得られた充放電特性評価の結果を図5に示す。また、実施例1及び比較例1において得られた放電容量の結果を表1に示す。また、表1には上述したX線回折測定において得られたX線回折スペクトルの最も高いピークにおける入射角(2θ)を合わせて示した。
【0090】
【表1】

【0091】
以上のように評価1の結果からは、実施例1に用いられた900℃で焼成した白雲母の最も高いX線回折ピークの入射角(2θ)が、比較例1に用いられた未焼成の白雲母の最も高いX線回折ピークの入射角(2θ)に対して低角度側にシフトしていることが確認された。つまり、実施例1で作製された負極電極を構成する白雲母においては、比較例で作製された負極電極を構成する白雲母と比較して層間隔が広がっていることが確認された。また、実施例1で作製された電池の放電容量が、比較例1で作製された電池の両方の放電容量と比較して大きくなることが確認された。
【0092】
従って、実施例1で作製された電池においては、負極電極を構成する白雲母の層間隔が広がることにより、負極電極においてイオンの挿入・脱離が容易になり、放電容量が大きくなっているものと考えられる。
【0093】
[実施例2]
(原料前処理)
白雲母を乳鉢で20分間粉砕した。
【0094】
(原料組成物の作製)
白雲母及び硝酸リチウム(LiNO)をモル比1:0.4で混合し、原料組成物を得た。
【0095】
(焼成処理)
得られた原料組成物を900°で2時間焼成した。また、焼成には焼成炉を用いた。
【0096】
(電極作製)
まず、N-メチルピロリドン中で、焼成後の原料組成物、導電材、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びスチレンブタジェンゴム(SBR)を、重量比88:10:1:1の割合で混合した。次に、その組成物を、負極集電体であるCu箔(厚さ10μm、日本製箔社製)上に塗布した。次に、電極密度が1.2g/cmとなるようにプレスし、次に、φ16mmの円形に打ち抜き、負極電極を得た。
【0097】
(電池作製)
まず、作製した負極電極及びLiメタルを負極及び正極としてそれぞれ適用して、2032型のコインセルを作製した。この際、セパレータとしてPE製のセパレータを適用し、電解液としてEC(エチレンカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)を体積比3:7で混合した溶媒にLiPFを濃度1Mで溶解させたものを適用した。
【0098】
[評価2]
(X線回折測定)
実施例2における焼成後の原料組成物についてX線回折測定を行った。
【0099】
(電気化学特性評価)
実施例2において得られた電池の電気化学特性を評価した。電気化学特性は、0.1C(なお、1Cは1時間で満充電できる電気量である。)で0.01VまでLiを挿入し、その後3VまでLiを脱離する操作を行って、充放電特性を評価した。実施例2について得られた充放電特性評価の結果を図6に示す。また、実施例2において得られた放電容量の結果を、実施例1において得られた放電容量の結果とともに表2に示す。また、表2には上述したX線回折測定において得られたX線回折スペクトルの最も高いピークにおける入射角(2θ)を合わせて示した。
【0100】
【表2】

【0101】
以上のように評価2の結果からは、実施例2で作製された電池の放電容量が、実施例1で作製された電池の放電容量と比較して大きくなることが確認された。実施例2で作製された電池の放電容量が、実施例1で作製された電池の放電容量と比較して大きくなる理由は下記のように推定される。
【0102】
実施例2における焼成後の原料組成物及び実施例1における焼成後の白雲母においてX線回折スペクトルの最も高いピークにおける入射角(2θ)は同一値である。つまり、実施例2で作製された電池及び実施例1で作製された電池において、負極電極を構成する白雲母の層間隔は変わらないと考えられる。一方、実施例2において、白雲母及び硝酸リチウム(LiNO)をモル比1:0.4で混合して得られた原料組成物を適用しているのに対し、実施例1においては、白雲母を適用している。このため、実施例2で作製された電池においては、実施例1で作製された電池とは異なり、充放電を開始する前から負極電極を構成する白雲母がリチウムイオンになる金属元素(リチウム)を含有している。従って、実施例2で作製された電池においては、充放電を開始する前から負極電極を構成する白雲母がリチウムイオンになる金属元素(リチウム)を含有していることを要因として、充放電に寄与するリチウムイオンの挿入・脱離が負極電極においてさらに容易になると考えられる。この結果、実施例2で作製された電池の放電容量は、実施例1で作製された電池よりも大きくなっていると考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1 … 負極層
2 … 正極層
3 … 電解質層
10 …二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理の層状珪酸塩鉱物について測定されるX線回折のスペクトルにおける最も高いピークの位置に対し、最も高いピークの位置が低角度側にシフトしたX線回折のスペクトルが測定される高容量層状珪酸塩鉱物からなることを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
前記未処理の層状珪酸塩鉱物が雲母族の層状珪酸塩鉱物であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記雲母族の層状珪酸塩鉱物が白雲母であることを特徴とする請求項2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記高容量層状珪酸塩鉱物がイオンになる金属元素を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極活物質。
【請求項5】
未処理の層状珪酸塩鉱物を含有する原料組成物を焼成する焼成工程を有し、前記原料組成物が焼成されたものを負極活物質とすることを特徴とする負極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程前に前記未処理の層状珪酸塩鉱物にイオンになる金属元素の塩を混合して前記原料組成物とする混合工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記未処理の層状珪酸塩鉱物として雲母族の層状珪酸塩鉱物を適用することを特徴とする請求項6に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記雲母族の層状珪酸塩鉱物として白雲母を適用することを特徴とする請求項7に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極活物質を含有する負極層と、正極層と、前記負極層及び前記正極層の間に挟持される電解質と、を有することを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−154884(P2011−154884A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15536(P2010−15536)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】