説明

負荷時タップ切換器

負荷時タップ切換器スイッチング機構200が、複数の隆起部分311を画定する環状カム210と、少なくとも部分的に環状カムの内側に配置され、環状カムに対して回転可能なスイッチ・アセンブリ220であって、電気的スイッチ224aおよび環状カムの内側面と係合しているカム・フォロア222aを含むスイッチ・アセンブリ220と、を含んでおり、複数の隆起部分は、環状カムとスイッチ・アセンブリとが相対的に回転するとカム・フォロアを駆動するように構成されており、カム・フォロアの駆動によって電気的スイッチの動作が引き起こされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気変圧器に用いる負荷時タップ切換機構に関し、特に、負荷時タップ切り換え時の動作のタイミングを制御する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば変電所で使用される高電圧変圧器は、この変圧器から下流に引き出される電力量に応じて、電気的負荷が変動する。負荷時タップ切換器があれば、負荷電流を遮断することなく変圧器の巻線比を変更することが可能である。したがって、負荷時タップ切換器は、負荷電流を遮断することが望ましくない電力変圧器に有用である。
【0003】
変圧器の巻線にいくつかのタップ位置を設けると、変圧器の巻線数を選択することが可能になり、可変巻線比を効果的に有する変圧器が製造可能になる。これにより、様々な負荷に適応するように変圧器の二次(出力)側の電圧を調整することが可能になる。
【0004】
負荷時タップ切換器の典型的な回路設計を、図1に概略的に示す。負荷時タップ切換器100は、第1の電気的端子180に接続された変圧器コイル160を含んでおり、変圧器コイル160は、コイル180の異なる巻線比を選択するためのいくつかのタップ位置スイッチ110、112を有している。ダイバータ・スイッチ130が、ロータリ・スイッチ・アーム170とダイバータ・インピーダンス140、142とを含んでおり、タップ位置スイッチ110、112を第2の電気的端子190に接続して回路を完結させる。
【0005】
図1では、タップ位置スイッチ110が閉じており、対応するタップ位置を、ロータリ・スイッチ・アーム170を介して端子190に接続している。ダイバータ・インピーダンス140は短絡されている。
【0006】
タップ切換器は、一連のステップを踏んで、スイッチ110、112に対応するタップ位置間の負荷時タップ切り換えを完了する。以下にそのあらましを示す。
・タップ・スイッチ112が閉じる。
・ダイバータ・スイッチ130のロータリ・スイッチ・アーム170が、電流がダイバータ・インピーダンス140のみを通って端子190に向かう位置まで、反時計回りに回転する。
・ロータリ・スイッチ・アーム170は、さらに、電流がダイバータ・インピーダンス140および142を同時に通る位置まで回転する。
・ロータリ・スイッチ・アーム170はさらに、電流がダイバータ・インピーダンス142のみを通って端子190に向かう位置まで回転する。
・ダイバータ・スイッチ130のロータリ・スイッチ・アーム170はさらに、ダイバータ・インピーダンス142が短絡されて負荷がタップ位置112を通って供給される位置まで回転する。
・タップ・スイッチ110が開く。
【0007】
上記ステップは、いくつかの可能なタップ切り換えシーケンスの1つに過ぎないが、それらに関係する一般原理を示している。上記シーケンスと同様のイベントシーケンスを有する、より詳細なタップ切り換えシーケンスが、米国特許第4081741号明細書に開示されている。この明細書はさらに、真空遮断器とも呼ばれる真空スイッチの使用について示しており、真空スイッチは、負荷を1つのタップから別のタップに移す際に使用されて、望ましくない放電を防ぐ。
【0008】
タップ切り換え動作には複雑な一連のステップが必要であり、通常は高電圧を扱うため、負荷時タップ切換器アセンブリは、傾向として、規模が大きく、機械的に複雑である。高電圧変圧器の場合、タップ切換器は、変圧器内のオイルが充填されたキャビティの中に取り付けられる場合が多く、その場合、タップ切換器の取り付けおよび取り外しは、変圧器に対して垂直方向に行わなければならない。これらの要件はいずれも、タップ切換器の取り付けおよび取り外しを困難かつ場合によっては危険にする傾向があり、特に、稼働中の変電所での作業がこれに該当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前述した問題のうちの1つまたは複数の問題に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、負荷時タップ切換器スイッチング機構が提供され、これは、
複数の隆起部分を画定する環状カムと、
少なくとも部分的に環状カムの内側に配置され、環状カムに対して回転可能なスイッチ・アセンブリであって、電気的スイッチおよび環状カムの内側面と係合しているカム・フォロアを含むスイッチ・アセンブリと、を含んでおり、
複数の隆起部分は、スイッチ・アセンブリと環状カムとが相対的に回転するとカム・フォロアを駆動するように構成されており、カム・フォロアの駆動によって電気的スイッチの動作が引き起こされる。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、複数の隆起部分を画定する環状カムと、少なくとも部分的に環状カムの内側に配置され、環状カムに対して回転可能なスイッチ・アセンブリであって、電気的スイッチおよび環状カムの内側面と係合しているカム・フォロアを含むスイッチ・アセンブリと、を含んでいる負荷時タップ切換器スイッチング機構を操作する方法が提供され、この方法は、環状カムとスイッチ・アセンブリとが相対的に回転したときに、複数の隆起部分のうちの1つまたは複数の隆起部分との係合により、カム・フォロアを駆動し、カム・フォロアの駆動によって電気的スイッチの動作を引き起こすことを含む。
【0012】
以下では、本発明の好ましい実施形態を、非限定的な例として、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】負荷時タップ切換器の典型的な設計の回路図である。
【図2a】第1の位置関係にあるタップ切換器の概略平面図である。
【図2b】第1の位置関係にあるタップ切換器の一代替実施形態の概略平面図である。
【図3a】図2aのタップ切換器の詳細断面図である。
【図3b】図2aのタップ切換器の詳細断面図である。
【図3c】図2aのタップ切換器の詳細断面図である。
【図3d】図2bのタップ切換器の詳細断面図である。
【図3e】図2bのタップ切換器の詳細断面図である。
【図4】環状カムの周辺端部のまわりの滑動可能接点のペアの斜視図である。
【図5】電気的接点を有する取り付けフレームの内側にある環状カムの概略一部切欠き平面図である。
【図6】滑動可能接点のペアを有する接点搬送板の斜視図である。
【図7】接点搬送板の一部およびバネ荷重接点ピンの断面図である。
【図8】第2の位置関係にある図2のタップ切換器の概略平面図である。
【図9】第3の位置関係にある図2のタップ切換器の概略平面図である。
【図10】タップ切換器の一代替構成の概略平面図である。
【図11】図8の代替タップ切換器構成の滑動可能接点構成の概略断面図である。
【図12】1フェーズ分のタップ切換器の一例示的実施形態の概略斜視図である。
【図13】タップ切換器の電気的接続図である。
【図14a】一例示的タップ切換器のスイッチング・シーケンスを示す図である。
【図14b】一例示的タップ切換器のスイッチング・シーケンスを示す図である。
【図15a】一例示的タップ切換器アセンブリの斜視図である。
【図15b】図15aの例示的タップ切換器の選択された部分の一代替斜視図である。
【図16】回転可能な接点構成の斜視図である。
【図17a】様々な位置関係にある、図16の回転可能な接点構成の断面図である。
【図17b】様々な位置関係にある、図16の回転可能な接点構成の断面図である。
【図17c】様々な位置関係にある、図16の回転可能な接点構成の断面図である。
【図17d】様々な位置関係にある、図16の回転可能な接点構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1については、既に、前述の本発明の背景技術に関して説明した。
【0015】
図2aは、本発明の一態様によるタップ切換機構200を示す。ここでは、スイッチング・アセンブリ220が環状カム210の内側に配置されている。スイッチング・アセンブリ220は、第1および第2の真空スイッチ224a、224bを含んでおり、これらのそれぞれは、接続リンケージ226a、226bを介して、それぞれのカム・フォロア222a、222bと接続されている。真空スイッチ224a、224bは、負荷時タップ切換器のダイバータ・スイッチ接点を提供し、各真空スイッチ224a、224bは、それぞれのカム・フォロア222a、222bおよび接続リンケージ226a、226bによって駆動される。
【0016】
図2bは、タップ切換機構の一代替実施形態200’を示す。ここでは、識別されている要素210’、220’、222a’、222b’、224a’、224b’、226a’、226b’が、図2aの実施形態で識別されている、同様の番号の各要素に対応している。しかしながら、接続リンケージ226a’、226b’が、図2の226a、226bとは異なる構成になっており、具体的には、カム・フォロア用バイアス手段が、戻しバネ228a’、228b’の形でカム・フォロア222a’、222b’と一直線上に設けられている(図2aでは、真空スイッチ224a、224bと一直線上に設けられている)。このバイアスされた戻し機構については、後述の図3dおよび図3eで詳細に示している。
【0017】
図2aの真空スイッチ224a、接続リンケージ226a、カム・フォロア222a、および環状カム210のより詳細な断面図を、他の関連する構成要素とともに、図3aから図3cに示す。
【0018】
環状カム210とスイッチング・アセンブリ220とが相対的に回転すると、カム・フォロア222aは、環状カム210の内側面の外形310をなぞって、カム・フォロア222aの半径方向の直線的な動き、すなわち、環状カム210に対してスイッチング・アセンブリ222の回転の軸とほぼ直交する方向の動き、を引き起こす。この半径方向の直線的な動きは、真空スイッチ224aを開閉するように作用する。図3aから図3cは、この作用が行われる様子を示すシーケンスを表しており、真空スイッチ224aは、図3aおよび図3bでは閉じており、図3cでは開いている。図3aから図3cでは、ペアのスイッチ224a、224bのうちの一方の真空スイッチ224aだけを示している。
【0019】
図3aに示すように、たとえば、摩耗を低減するために回転可能なホイールを含んでよいカム・フォロア222aは、環状カム210がスイッチング・アセンブリ220に対して回転すると、環状カム210の外形310をなぞる。カム・フォロア222aは、接続リンケージ226aと真空スイッチ224aとの間に配置された第1のバネ(開口バネ)320によって、環状カム210に対してバイアスされている。
【0020】
図3aに示すように、第1および第2のバネ320、330は、両方とも、プランジャ340および接続ロッド350からなる真空スイッチ・アクチュエータを中心とする同軸上に配置されており、真空スイッチ224aは、矢印370で示された方向にプランジャ340が滑動することによって駆動される、すなわち、開く。接続ロッド350上に位置するロックナット360が、接続リンケージ226aの端部停止装置になっており、接続リンケージ226aは、開口バネ320で与えられるバイアスに対して接続ロッドに沿って滑動可能である。
【0021】
環状カム210の外形310は、複数の隆起部分311を含み、これらの隆起部分311は、環状カム210の周囲の円周方向に間隔をおいて配置されており、各隆起部分311は、ほぼ共通の直径315に対応する。カム・フォロア222aが隆起部分311の1つに当たっているときには、真空スイッチ224aは閉じている。
【0022】
図3bでは、環状カム210は、矢印380で示されるように、スイッチング・アセンブリ220に対して時計回りに回転したところであり、これにより、カム・フォロア222aは、外形310をなぞって、接続リンケージ226aを真空スイッチ224aから離すように持ち上げている。一代替構成として、環状カム210を固定して、スイッチング・アセンブリ220を逆方向に回転させても、同じ効果が得られる。この中間的な位置関係では、接続リンケージ226aは、ロックナット360による端部停止装置に当たっており、真空スイッチは、接触圧バネ330からかかる圧力によって、閉じたままである。接続リンケージ226aと真空スイッチ224aとの間の距離D1、ならびに接続リンケージ226aとプランジャ340との間の距離D2は、両方とも、図3aに示された距離D1、D2に比べて、同じ量だけ増えている。
【0023】
次に図3cでは、環状カム210は、矢印380で示されるように、スイッチング・アセンブリ220に対して時計回りにさらに回転したところであり、これにより、カム・フォロア222aは、外形310をなぞって、接続リンケージ226aを真空スイッチ224aからさらに離すように持ち上げており、カム・フォロア222aは、隣接する2つの隆起部分311の間の谷部312に収まっている。この位置関係では、カム・フォロア222aは、真空スイッチ224aから最も離れている。接続リンケージ226aと真空スイッチ224aとの間の距離D1は、図3aに示された距離D1に比べてさらに増えているが、接続リンケージ226aとプランジャ340との間の距離D2は、図3bと同じままであり、これは、プランジャ340が真空スイッチ224aから持ち上がっているためである。結果として、真空スイッチ224aは、この時点では開いている。
【0024】
図3dおよび図3eは、図2bの代替実施形態を示しており、図3aおよび図3cの実施形態の配置に対応する断面図、すなわち、真空スイッチが閉じた状態(図3d)と開いた状態(図3e)の断面図を示している。同様のラベル付けがなされた各構成要素は、図3aから図3cに示された各構成要素に対応する機能を有している。第1のバネ320’が、カム・フォロア222a’を、環状カム210’の内側周辺部に対してバイアスしており、第2のバネ330’が、カム・フォロア222a’が環状カム210’上の谷部312’に入ったときにリンケージ226a’を駆動することにより、真空スイッチ224a’を開くように動作する。したがって、スイッチング・アセンブリ220’の動作は、図2aおよび図3aから図3cの実施形態とよく似ているが、バネ320’、330’は、真空スイッチ224a’につながっているプランジャ350’に対してではなく、カム・フォロア222a’を駆動する滑動可能プランジャ351に対して動作する。この配置により、構造が簡単になり、スイッチング・アセンブリ220’の全体サイズが小さくなる。さらにこの構成によって、駆動機構の安定性が高まり、使用時に機構が動けなくなる可能性が低減される。これは、バイアスする機構がカム・フォロア222a’の直線運動と直接リンクしていることにより、駆動中に真空スイッチ・プランジャ350’に発生する回転モーメントを最小にするもしくはゼロにするためである。
【0025】
次に図4を参照すると、導電性滑動可能接点410a、410bが、回転可能環状カム210の外側湾曲面420上に配置されており、外側湾曲面420は、ポリマーのような絶縁性材料で作られていることが好ましい。図示した実施形態では、導電性滑動可能接点410a、410bも湾曲している。環状カム210は、フレームの内側での取り付けおよび回転可能な係合(図5を参照)のために、外側平坦フランジ付き部分450をさらに含んでよい。
【0026】
図4では、滑動可能接点410a、410bは、環状カム210の回転方向430において、相互に食い違う位置関係になっている。滑動可能接点410a、410bは、環状カム210の内側面440上の隆起部分311に対して、環状カム210の外側面420の周囲の特定の位置に配置されている。接点410a、410bは、環状カムの外形310と同じ速度で動くため、環状カム210の回転によるタップ切り換え動作の間のスイッチング・アセンブリ220の駆動のタイミングは、接点410a、410bの動きと同期する。
【0027】
図5は、図4に示したタイプの環状カム210が取り付けフレーム510の内側に回転可能に取り付けられている様子を平面図で示したものであり、取り付けフレーム510は、複数の電気的接点を端子520a、520bの形で含んでいる。滑動可能接点410a、410bは、バネ荷重ピン530a、530b(バネ自体は図5に示していない)をそれぞれの電気的接点520a、520bと強制的に接触させる。各ピン530a、530bは、滑動可能接点410a、410bが後続の端子520bに向かって動くと、接触が外れる。
【0028】
環状カム210の隆起部分311に対して滑動可能接点410を厳密に位置決めすることにより、所与のタップ切り換え動作について、スイッチング・イベントのシーケンスを正確に決定することが可能である。
【0029】
一代替実施形態では、固定された環状カム210に対してスイッチング・アセンブリ220が回転可能であり、図6に示すように、接点搬送板が導電性滑動可能接点を搬送する。接点搬送板600は、取り付け点605のまわりをスイッチング・アセンブリ220とともに回転するために取り付けられており、接点搬送板600の下側に導電性滑動可能接点610a、610bが配置されており、接点搬送板600は、ポリマーのような絶縁性材料で作られていることが好ましい。導電性滑動可能接点610a、610bは、図7に詳細に示すように、接点搬送板600上にバネで取り付けられていることが好ましい。図4および5に示した回転可能な環状カム210の場合と同様に、滑動可能電気的接点610a、610bは、接点搬送板600の回転方向630において、相互に食い違う位置関係で配置されており、これによって、スイッチング・アセンブリ220および接点搬送板600の回転に、タップ切り換え動作中のスイッチングが同期することが可能になっている。
【0030】
図7は、接点搬送板600の断面を詳細に示している。滑動可能電気的接点の1つである610aが示されており、610aはバネで接点搬送板600に取り付けられている。接点搬送板600が回転すると、接点610aは、ピン710に向かって移動する。ピン710も、バネで取り付けられていてよい。接点610aおよびピン710の一方または両方が、先細りの、または丸みを帯びた前縁を有することが好ましい。これは、接点610aの横方向の動きによってピンが電気的端子720と電気的に接触するようにするためである。
【0031】
図8および図9は、図2の機構における、スイッチング・アセンブリ220に対する環状カム210の異なる回転角度に対応する異なる位置関係を示している。図2では、両方の真空スイッチ224a、224bが閉じており、環状カム210が、図2の回転角度から回転すると、位置関係は図8のように変化し、第1のカム・フォロア222aがカム外形をなぞって、隣接する2つの隆起部分311の間の谷部312に向かうと、第1の真空スイッチ224aが開き、第2の真空スイッチ224bは閉じたままである。環状カム210がさらに回転すると、図9に示すように、これらの真空スイッチの開閉が逆になって、第1の真空スイッチ224aは閉じ、第2の真空スイッチ224bは開く。環状カム210が回転し続けると、このスイッチング・シーケンスが繰り返され、このシーケンスは、前述のように、環状カム210の外側面の周囲の、または接点搬送板600の下側の、滑動可能電気的接点によってなされる電気的接点のシーケンスと同期している。
【0032】
スイッチング・アセンブリが環状カムに対して回転可能である構成を、図10に示す。スイッチング・アセンブリ820は、取り付け点850のまわりを回転することが可能であり、環状カム810および取り付けフレーム830は固定されている。環状カム810は取り付けフレーム830に対して回転しないので、取り付けフレーム830自体の内側面にカム外形310を形成することが可能である。電気的接点720(図7)は、取り付けフレーム830の平坦面上に示されている。接点搬送板上の滑動可能接点(図示せず)は、スイッチング・アセンブリ820とともに回転することが可能であり、図7に詳細に示すように、取り付けフレーム830の平坦面に沿って滑動する。この様子を、図11に詳細に示す。図11では、回転可能な接点搬送板600上の滑動可能接点910が、矢印920で示された方向で接触ピン840に近づきつつある。回転可能な接点搬送板600への滑動可能接点910の配置は、必要な場合に、固定取り付けフレーム830内のピン840に対する滑動可能接点910の動きによって電気的接触が成立したり断絶したりするのに同期して、真空スイッチを用いて、必要なタップ切り換え能力が得られるように行うことが可能である。
【0033】
本発明の一態様によるタップ切換機構の典型的な実装では、各フェーズごとに2つの真空スイッチ(真空ボトルとも呼ばれる)を用いることが必要になり、タップ切換器全体としては、全部で6個の真空ボトルを用いることになる。図12は、1フェーズ分のそのようなタップ切換器の一例示的実施形態の概略斜視図を示す。駆動歯車1010が、接続シャフト1015を介して、スイッチング・アセンブリ1020に接続されている。スイッチング・アセンブリ1020は、2つの真空スイッチを含み、環状カム1030上に取り付けられている。環状カム1030自体は、防護板1040の内側に取り付けられている。駆動歯車1010が回転すると、図8に示した構成を含むスイッチング・アセンブリ1020が環状カム1030に対して回転して、必要なスイッチング動作のシーケンスを駆動することにより、タップ切り換え動作が実施される。
【0034】
本発明によるタップ切換器に必要な電気的接続を示す基本的な電気回路を、図13に示す。変圧器コイル1320が、共通端子1319と、様々な出力負荷を可能にするように配置された複数の電気的タップ1302〜1318とを含んでいる。スイッチング・アセンブリ220は、たとえば、矢印1310で示された方向に、回転するように配置され、これによって、アセンブリ220が回転しながら端子1301を選択された電気的タップ端子1302〜1318に接続するのに伴って、連続的な電気的接続が行われる。
【0035】
図14aおよび図14bは、本発明の一態様による負荷時タップ切換器のスイッチング動作の典型的なシーケンスを示す。スイッチング・アセンブリ220が、矢印1410で示されるように位置Aから位置Bまで回転すると、図14bの線図に示されるように、スイッチング動作のシーケンスが実行される。位置Aでは、真空スイッチVMおよびVRの両方が閉じており、端子スイッチMは閉じており、バイパス抵抗スイッチR1は開いている。スイッチング・アセンブリ220が動いて位置Aから離れると、バイパス抵抗スイッチR1が閉じ、続いて、真空スイッチVMが開き、端子スイッチMが開く。スイッチング・アセンブリ220がさらに回転すると、端子スイッチMが閉じ、続いて真空スイッチVMが閉じる。次に真空スイッチVRが開き、続いて、バイパス抵抗スイッチR1が開き、真空スイッチVRが再度閉じて、スイッチング動作が完了する。各スイッチング動作は、前述のように、環状カムの滑動可能接点、ピン、および隆起部分の相対的な位置関係に従って同期している。
【0036】
図15aは、本発明によるタップ切換器アセンブリ150の一代替例示的実施形態の斜視図を示す。ここでは、環状カム210’が取り付けフレームまたはメインボード153に固定されており、スイッチング・アセンブリ220’が、環状カム210’の内側でメインボード153に回転可能に取り付けられている。スイッチング・アセンブリ220’は、中心シャフト151のまわりを回転することが可能であり、中心シャフト151は、スイッチング・アセンブリ220’が回転する中心の軸を画定するとともに、タップ切換器アセンブリ150の集中電気的接点としても動作すること、すなわち、図13に示された端子1301に電気的に接続可能であること、が好ましい。スイッチング・アセンブリ220’は、カム・フォロア222a’、222b’によって駆動されて動作する真空スイッチ224a’、224b’と、さらに(図15bおよび図16を参照して後述する)接点構成とを含み、これらすべてが一体となって、環状カム210’に対して回転することが可能である。環状カム210’に対してスイッチング・アセンブリ220’が回転すると、前述したようにスイッチング動作のシーケンスが発生し、環状カム210’の周辺部のまわりに配置された隣接する接点シャフト152同士の間で電気的接点が切り換わる。接点シャフト152は、タップ切換器アセンブリ150を接続する変圧器にある各タップ1302〜1318(図13)との電気的接続を提供する。
【0037】
図15aに示した実施形態は、アセンブリ150全体のサイズが従来のタップ切換器より小さいという、本発明の有利な特徴を示しており、これは、スイッチング・アセンブリ220’が環状カム210’で画定された内部空間内に設けられ、環状カム210’で画定された平面内で回転可能であるためである。カム・フォロア222a’、222b’を環状カム210’の内側面に対してバイアスして配置することにより、真空スイッチ224a’、224b’を環状カム210’の面内で、すなわち、回転軸に垂直に、駆動することが可能であり、これによって、タップ切換器アセンブリ150の全体高さを抑えることが可能である。さらに、この配置によって、タップ切換器アセンブリ150全体の機械的設計がかなり単純になる。
【0038】
図15aのタップ切換器アセンブリ150の別の斜視図を、図15bに示す。図15bは、メインボード153を取り外した、環状カム210’およびスイッチング・アセンブリ220’の下側を示している。この図では、前述の接点構成154を見ることができる。さらに、接点構成154だけを切り離したものを、図16に示す。接点構成154は、バネでバイアスされた2つの滑動可能接点155a、155bを含み、第1の接点155aは、主電気的接点、すなわち、通常使用時に電流を搬送する接点であり、第2の接点155bは、タップ切り換え動作時にバイパス抵抗との接続を仲介する抵抗接点である。2つの接点155a、155bは、典型的には、電流搬送要件が異なるためにサイズが異なるが、動作は同様であり、どちらも、使用時に、環状カム210’のまわりに配置された接点シャフト152の1つに対して弾力によってバイアスされている。前述の他の実施形態と同様に、接点155a、155bは、スイッチング・アセンブリ上に食い違いの配置で設けられており、これは、タップ切り換え動作時に、電気的接続が、正しいシーケンスで、かつ、真空スイッチの動作と同期して行われるようにするためである。
【0039】
図17は、接点構成154が、第1の接点シャフト152aにある第1のタップ位置から、第2の接点シャフト152bにある第2のタップ位置への接続切り換えを引き起こす一例示的動作シーケンスを示す。接点155、すなわち、主接点155aまたは抵抗接点155bのいずれか、は、最初、第1の接点シャフト152aに対してバイアスされている。接点アセンブリ154が回転すると、接点155は、第1の接点シャフト152aから切り離され、第2の接点シャフト152bと接続される。接点155が主接点155aである場合、第1の接点シャフト152aとの接触が断絶してから第2の接点シャフト152bとの接触が成立するまでのわずかな間隔において、主接点155aからオフセットされている抵抗接点155bは、第2の接点シャフト152bを介して電流を搬送する。
【0040】
他の実施形態も、添付の請求項で定義される本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隆起部分を画定する環状カムと、
少なくとも部分的に前記環状カムの内側に配置され、前記環状カムに対して回転可能なスイッチ・アセンブリであって、電気的スイッチおよび前記環状カムの内側面と係合しているカム・フォロアを含む前記スイッチ・アセンブリと、を備えており、
前記複数の隆起部分は、前記環状カムと前記スイッチ・アセンブリとが相対的に回転すると前記カム・フォロアを駆動するように構成されており、前記カム・フォロアの駆動によって前記電気的スイッチの動作が引き起こされる、
負荷時タップ切換器スイッチング機構。
【請求項2】
前記複数の隆起部分は、前記環状カムの内側面上に設けられている、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
複数の接点端子を有する取り付けフレームをさらに備えており、前記環状カムおよび前記スイッチ・アセンブリは、少なくとも部分的に前記取り付けフレームの内側に取り付けられている、請求項1または請求項2に記載の機構。
【請求項4】
前記環状カムは、前記取り付けフレームに対して回転可能である、請求項3に記載の機構。
【請求項5】
前記スイッチ・アセンブリは、前記取り付けフレームに対して回転可能である、請求項3に記載の機構。
【請求項6】
前記スイッチ・アセンブリおよび前記取り付けフレームは、互いに固定されており、前記環状カムは、前記環状カムが回転すると前記複数の接点端子と順次係合するように構成された滑動可能接点を備えている、請求項4に記載の機構。
【請求項7】
前記滑動可能接点は、前記環状カムの外側周辺部に配置されている、請求項6に記載の機構。
【請求項8】
前記環状カムの前記外側周辺部のまわりに、食い違いに配置された複数の前記滑動可能接点を備えている、請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記環状カムおよび前記取り付けフレームは、互いに固定されており、前記スイッチ・アセンブリは、前記取り付けフレームに対して前記スイッチ・アセンブリが回転すると前記複数の接点端子と順次係合するように構成された滑動可能接点を備えている、請求項5に記載の機構。
【請求項10】
前記滑動可能接点は、前記取り付けフレームの平坦面に沿って滑動可能である、請求項9に記載の機構。
【請求項11】
前記スイッチ・アセンブリ上に食い違いに配置された複数の前記滑動可能接点を備えている、請求項9または請求項10に記載の機構。
【請求項12】
前記複数の接点端子は、前記環状カムの前記周辺部のまわりに配置された複数の電気的接点シャフトの形をとる、請求項11に記載の機構。
【請求項13】
前記カム・フォロアは、前記環状カムに対する前記スイッチ・アセンブリの回転の軸にほぼ垂直な方向の駆動により、前記電気的スイッチを駆動するように構成されている、請求項1に記載の機構。
【請求項14】
前記電気的スイッチは、真空スイッチを備えている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機構。
【請求項15】
前記スイッチ・アセンブリは、前記カム・フォロアのペアを備えており、各カム・フォロアは、前記電気的スイッチのペアのうちの対応する一方の動作を引き起こすように構成されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の機構。
【請求項16】
前記カム・フォロアの前記ペアは、前記環状カムと前記スイッチ・アセンブリとが相対的に回転すると、前記電気的スイッチの前記ペアのシーケンシャル動作を引き起こすように構成されている、請求項14に記載の機構。
【請求項17】
前記カム・フォロアは、前記環状カムの前記内側面に対してバイアスされている、請求項2に記載の機構。
【請求項18】
前記スイッチ・アセンブリは、前記カム・フォロアを前記環状カムの前記内側面に対してバイアスするように構成されたバネを備えている、請求項17に記載の機構。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の機構を備えている負荷時タップ切換器。
【請求項20】
請求項19に記載の負荷時タップ切換器を備えている電気変圧器。
【請求項21】
複数の隆起部分を画定する環状カムと、少なくとも部分的に前記環状カムの内側に配置され、前記環状カムに対して回転可能なスイッチ・アセンブリであって、電気的スイッチおよび前記環状カムの内側面と係合しているカム・フォロアを含む前記スイッチ・アセンブリと、を備えている負荷時タップ切換器スイッチング機構を操作する方法であって、前記環状カムと前記スイッチ・アセンブリとが相対的に回転したときに、前記複数の隆起部分のうちの1つまたは複数の隆起部分との係合により、前記カム・フォロアを駆動し、前記カム・フォロアの駆動によって前記電気的スイッチの動作を引き起こすことを含む方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図17d】
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【公表番号】特表2011−512028(P2011−512028A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544778(P2010−544778)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000267
【国際公開番号】WO2009/095686
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(510208572)ブラッシュ トランスフォーマーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】