説明

負荷電流制御装置及び負荷電流制御方法等

【課題】ケーブル径を太くしたり、許容電流値の大きな部品を使用することを必要とせず、簡単な回路構成で、電源ケーブルに流れる電流を一定値以下に保つことが可能な負荷電流制御装置及び負荷電流制御方法等を提供する。
【解決手段】本願は、電源Bに接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置S1であって、前記電源Bから入力された電源電圧の変化を検出する電源電圧検出部2と、前記電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させるLED制御部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置及びその方法等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の後部座席に座る乗員用として、文字や画像等を表示するディスプレイ(リアシート用ディスプレイ)が車両内の所定位置に設置される場合がある。かかる場合において、当該ディスプレイ用の電源は例えば車両の前方から延長された電源ケーブルを通じて供給されるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記延長された電源ケーブルによる電源電圧の降下により電流値が増加するため、使用するケーブル径を太くしたり、使用する部品(例えばインダクタ等)の許容電流値を大きくする必要があった。
【0004】
また、延長された電源ケーブルによる電源電圧の降下量が大きい場合、ディスプレイ駆動回路(例えばDC/ACインバータ、DC/DCインバータ)を動作させることが困難になるため、別途昇圧回路を設けていた。
【0005】
一方、特許文献1には、負荷と並列に装置電源内に定負荷を設け、当該定負荷の電圧を検出し、当該電圧から調整電圧値を算出し、当該調整電圧値を出力電圧に加算する制御を行い、負荷へ印加される電圧を一定電圧に調整するようにしたライブラリ装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−22596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように使用するケーブル径を太くすると、ユーザが扱い難くなる。また、当該ケーブル径を大きくしたり、許容電流値の大きな部品を使用すると、コストアップ(材料費が増す)となり、昇圧回路を設ける場合は更にコストアップとなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1では、負荷に一定電圧を印加させるため、定負荷回路や電圧出力回路に加算回路等が必要となり、部品点数が増加するという問題がある。
【0008】
そこで、本願は、このような問題の解消を課題の一例とし、ケーブル径を太くしたり、許容電流値の大きな部品を使用することを必要とせず、簡単な回路構成で、電源ケーブルに流れる電流を一定値以下に保つことが可能な負荷電流制御装置及び負荷電流制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置であって、前記電源から入力された電源電圧の変化を検出する電源電圧検出手段と、前記電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させる負荷電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御方法であって、前記電源から入力された電源電圧の変化を検出する工程と、前記電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の負荷電流制御プログラムの発明は、電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御するコンピュータを、前記電源から入力された電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させるように機能させることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の記録媒体の発明は、請求項6に記載の負荷電流制御プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態では、図1を参照して、ディスプレイ(例えばリアシート用ディスプレイ)を構成するLED(発光ダイオード)(表示手段の一例)を負荷とし、当該負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置の構成及び機能について説明する。なお、負荷電流制御装置は、例えば車両に搭載されたディスプレイ装置に組み込まれる。
【0015】
図1は、第一実施形態に係る負荷電流制御装置S1の概要構成例を示す図である。
【0016】
第一実施形態に係る負荷電流制御装置S1は、図1(A)に示すように、電源(例えば、バッテリ)Bからの電源電圧を入力するための電源入力部(例えば電源入力端子)1と、電源電圧検出部2(電源電圧検出手段の一例)と、抵抗値決定部3と、LED制御部4(負荷電流制御手段の一例)と、を備えて構成されている。
【0017】
電源電圧検出部2は、例えば、図1(B)に示すように、ツェナーダイオードDと、トランジスタ(例えば、NPN型バイポーラトランジスタ)Trと、抵抗R1(抵抗値は、例えば数キロオーム程度)と、を備え、電源Bから入力された電源電圧の変化を検出するようになっている。トランジスタTrのベースはツェナーダイオードDを介して電源入力部1に接続され、且つ、抵抗R1を介して接地されており、また、トランジスタTrのエミッタは接地されている。また、トランジスタTrは、そのオン(ON)からオフ(OFF)へ、又はオフからオンへ、リニア(線形)に変化(言い換えれば、徐々に変化)する特性を有している(つまり、トランジスタTrの抵抗値がリニアに変化)。
【0018】
また、抵抗値決定部3は、例えば、図1(B)に示すように、抵抗R2(抵抗値は、例えば数百オーム程度)及びR3(抵抗値は、例えば数百オーム程度)を備え、抵抗R2及び抵抗R3の一端は相互に接続されると共にLED制御部4の入力端子T1に接続され、抵抗R2の他端はトランジスタTrのコレクタに接続され、抵抗3の他端は接地されている。そして、トランジスタTrのオンオフ動作に応じてLED制御部4の入力端子T1に接続される抵抗値(言い換えれば、入力端子T1に印加される電圧)が変化(つまり、抵抗R2及びR3の並列抵抗値と、抵抗R3のみの抵抗値のとの間で変化)するようになっている。
【0019】
しかも、トランジスタTrの抵抗値は、リニアに変化するため、入力端子T1に接続される抵抗値もリニアに変化することになり、その結果、LED制御部4の入力端子T1に印加される電圧もリニアに変化することになる。
LED制御部4は、例えば制御ICにより構成され、抵抗値決定部3により決定された抵抗値に応じた電圧(入力端子T1に印加される電圧)にしたがってLED5への負荷電流の供給制御を行うようになっており、電源電圧の変化に応じて入力端子T1に印加される電圧がリニアに変化するため、LED制御部4は、これに応じてLED5に供給する負荷電流量をリニアに変化させる。なお、LED制御部4は、DC/DCインバータ制御を含む場合もある。
【0020】
次に、以上のように構成された負荷電流制御装置S1における動作を説明する。
【0021】
電源入力部1からの電源電圧が、ツェナーダイオードDの閾値としての電圧(トランジスタTrのベース−エミッタ間電圧VBE、例えば、+0.6V)より大きいときは、トランジスタTrは飽和領域でオンしているため、LED制御部4の入力端子T1に接続される抵抗値は、抵抗R2とR3の並列抵抗値となっている。
【0022】
続いて、当該電源電圧がツェナーダイオードDの電圧(VBE、例えば、+0.6V)より小さくなった場合に、トランジスタTrは飽和領域から外れていき、徐々にオフ方向に動作を変える。これにより、LED制御部4の入力端子T1に接続される抵抗値は、徐々に抵抗R3の抵抗値に近づいていくため、リニアに大きくなる。
【0023】
そして、LED制御部4は、このようにリニアに変化する抵抗値にしたがって、LED5に供給する負荷電流をリニアに(徐々に)減少させるように制御し(LED制御部4は、その出力を減少させる方向に動作をシフトさせていき)、これにより当該負荷電流量がリニアに減少していく。このとき、抵抗R3を適正値に定めておくことにより、ユーザから見てディスプレイにおける輝度の減少量に違和感を与えずにすむ(抵抗R3にて設定される値以下に制御されることはないため)という効果を奏する。
【0024】
なお、上記動作において、電源電圧が閾値より大きくなった場合には、負荷電流が徐々に増加するように制御されることになる。
【0025】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態では、図2を参照して、ディスプレイを構成する蛍光管(表示手段の一例)を負荷とし、当該負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置の構成及び機能について説明する。
【0026】
図2は、第二実施形態に係る負荷電流制御装置S2の概要構成例を示す図である。
【0027】
第二実施形態に係る負荷電流制御装置S2は、図2(A)に示すように、電源(例えば、バッテリ)Bからの電源電圧を入力するための電源入力部(例えば電源入力端子)11と、電源電圧検出部12(電源電圧検出手段の一例)と、抵抗値決定部13と、蛍光管制御部14(負荷電流制御手段の一例)と、を備えて構成されている。
【0028】
電源電圧検出部12の構成等は、例えば、図2(B)に示すように、第一実施形態における電源電圧検出部2と同様である。
抵抗値決定部13の構成等も、例えば、図2(B)に示すように、第一実施形態における抵抗値決定部3と基本的には同様であるが、抵抗2及び抵抗3の一端は相互に接続されると共に蛍光管制御部14の入力端子T2に接続され、且つ、ダイオードD1を介して蛍光管16に接続されるようになっている。
【0029】
蛍光管制御部14は、例えば制御IC(DC/ACインバータ制御IC)により構成され、抵抗値決定部13により決定された抵抗値に応じた電圧(入力端子T2に印加される電圧)にしたがってインバータトランス15を介して蛍光管16への負荷電流の供給制御を行うようになっており、電源電圧の変化に応じて入力端子T2に印加される電圧がリニアに変化するため、蛍光管制御部14は、これに応じてインバータトランス15を介して蛍光管16に供給する負荷電流量をリニアに変化させる。
【0030】
以上のように構成された負荷電流制御装置S2における動作は、第一実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0031】
以上説明したように、上記実施形態によれば、電源Bから入力された電源電圧の変化を検出し、当該電源電圧の変化に応じて負荷に対して供給する負荷電流をリニアに変化させる(例えば、電源電圧が閾値より小さく(又は大きく)なった場合に、負荷電流を徐々に減少(又は増加)させる)ように構成したので、例えば、延長された電源ケーブルのケーブル径を太くしたり、許容電流値の大きな部品を使用することを必要とせず、簡単な回路構成で、電源ケーブルに流れる電流を一定値以下に保つことができる。加えて、電源電圧が変化(増減)しても、負荷電流がリニアに変化するため、ユーザに対して、ディスプレイにおける輝度の変化に違和感を与えないことができる。
【0032】
また、オンからオフへ、又はオフからオンへリニアに変化する特性を有するトランジスタTrを用いることで、より簡単な回路構成で、負荷に対して供給する負荷電流をリニアに変化させる制御を実現することができる。
【0033】
なお、上記実施形態において、表示手段の一例としてLEDや蛍光管を適用したが、これに限定されるものではなく、例えば有機EL(エレクロトルミネッセンス)素子を適用しても良い。
【0034】
また、上記実施形態において、コンピュータとしてのCPUを主体として構成される負荷電流制御装置に備えるROM、不揮発性メモリ、又はハードディスク等の記録媒体に負荷電流制御プログラムを記憶しておき、上記CPUが当該記録媒体から負荷電流制御プログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することにより、上述したように、電源から入力された電源電圧の変化に応じて負荷に対して供給する負荷電流をリニアに変化させるように制御するように構成しても良い。
【0035】
また、上記実施形態は、車載用のリアシート用ディスプレイに対して適用されることがより効果的ではあるが、一般的な車載用ディスプレイや携帯端末(例えば携帯電話機、PDA等)用ディスプレイに対して適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施形態に係る負荷電流制御装置S1の概要構成例を示す図である。
【図2】第二実施形態に係る負荷電流制御装置S2の概要構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1,11…電源入力部
2,12…電源電圧検出部
3,13…抵抗値決定部
4…LED制御部
5…LED
14…蛍光管制御部
15…インバータトランス
16…蛍光管
S1,S2 …負荷電流制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御装置であって、
前記電源から入力された電源電圧の変化を検出する電源電圧検出手段と、
前記電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させる負荷電流制御手段と、
を備えることを特徴とする負荷電流制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷電流制御装置において、
前記負荷電流制御手段は、前記電源電圧が閾値より小さくなった場合に、前記負荷電流を徐々に減少させることを特徴とする負荷電流制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の負荷電流制御装置において、
前記電源電圧検出手段は、トランジスタを備え、当該トランジスタは、そのオンからオフへ、又はオフからオンへリニアに変化する特性を有することを特徴とする負荷電流制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の負荷電流制御装置において、
前記負荷は、ディスプレイを構成する表示手段であることを特徴とする負荷電流制御装置。
【請求項5】
電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御する負荷電流制御方法であって、
前記電源から入力された電源電圧の変化を検出する工程と、
前記電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させる工程と、
を備えることを特徴とする負荷電流制御方法。
【請求項6】
電源に接続され、負荷に対して供給する負荷電流を制御するコンピュータを、
前記電源から入力された電源電圧の変化に応じて前記負荷電流をリニアに変化させるように機能させることを特徴とする負荷電流制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の負荷電流制御プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録されていることを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−52629(P2008−52629A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230544(P2006−230544)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】