説明

貨幣出金装置および貨幣出金システム

【課題】貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる貨幣出金装置を提供する。
【解決手段】ATM1は、情報処理センタ3に対して、店舗ID、キャシュカードから読み取ったカードデータ、入力された暗証番号等のデータを送って、出金可能額の問い合わせを行う。情報処理センタ3は、ATM1からの出金可能額の問い合わせを受信すると、出金管理テーブルから、受信したカードIDに対応する当日の累計出金額を読み出す。また、ATM1から受信したカードIDに対応する口座残高を、ホストコンピュータ4から取得する。そして、情報処理センタ3は、一日当たりの出金限度額と、当日の累計出金額と、口座残高とに基づいて、出金可能額を算出して、ATM1に送信する。ATM1は、受信した出金可能額を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貨幣出金装置および貨幣出金システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ店等の遊技施設においては、通常、現金またはプリペードカードによって、遊技媒体(パチンコ玉)の貸し出しを受け付けている。遊技施設の中には、デビット端末を設置し、プリペードカードの購入にデビットカード(キャッシュカード)を利用できる施設もある。デビットカードを用いた決済(デビット決済)が可能となると、遊技客に対して、遊技への過剰な投資を誘発するおそれがある。そこで、遊技施設に設置されたデビット端末での決済金額を制限することにより、遊技への過剰な投資を抑制するシステムが開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、遊技施設に自動取引装置(ATM:Automated Teller Machine)を設置することが可能となり、遊技施設に設置されたATMでキャッシュカードを利用して、口座残高より現金の引き出し(出金取引)ができるようになった。ただし、遊技への過剰な投資を抑制するために、一日当たりの出金額の制限を行っている(例えば3万円)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊技施設に設置されたATMを利用する際に、遊技客が入力した出金請求額が口座残高を上回った場合または今回の出金請求額を含めた当日の出金額の総計が一日当たりの出金限度額を上回る場合には、残高不足エラーまたは取引金額上限オーバーとなり、現金の引き落としができなくなる。このような残高不足エラーまたは取引金額上限オーバーが発生した場合、遊技客がATMに対して行った出金取引操作が無駄となるとともに、他の遊技客の取引機会の損失を招くことにより、売り上げの減少に繋がる可能性がある。
【0006】
この発明は、貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる貨幣出金装置および貨幣出金システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムに適用される貨幣出金装置(1)において、キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段(10,17)と、上位装置(3)と通信することにより、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間当たりの出金限度額と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とから決定される、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を取得する出金可能額取得手段(10,20)と、前記出金可能額取得手段によって取得された出金可能額を表示する出金可能額表示手段(10,13)と、を含む貨幣出金装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
請求項1に記載の発明では、貨幣出金装置は、カード情報読取手段によってキャッシュカードに記憶されているカード情報が読み取られた後に、上位装置と通信することにより、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を取得する。そして、貨幣出金装置は、上位装置から取得した出金可能額を表示する。この発明では、出金可能額が表示されるので、利用者は出金可能額を認識することができる。このため、出金可能額より大きな金額が、出金請求額として入力されるのを回避または低減できる。したがって、貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記出金可能額は、前記所定期間当たりの出金限度額から、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額である請求項1記載の貨幣出金装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムに適用される貨幣出金装置(1)において、キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段(10,17)と、上位装置(3)と通信することにより、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額または前記所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値とを含むデータを取得するデータ取得手段(10,20)と、前記データ取得手段によって取得したデータに基づいて、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された出金可能額を表示する出金可能額表示手段(10,13)と、を含む貨幣出金装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、貨幣出金装置は、カード情報読取手段によってキャッシュカードに記憶されているカード情報が読み取られた後に、上位装置と通信することにより、キャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額または所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値とを含むデータを取得する。より具体的には、キャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とを含むデータ、または前記口座残高と、所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値とを含むデータとのいずれかを取得する。そして、貨幣出金装置は、上位装置から取得したデータに基づいて、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を算出して表示する。
【0012】
この発明では、出金可能額が表示されるので、利用者は出金可能額を認識することができる。このため、出金可能額より大きな金額が、出金請求額として入力されるのを回避または低減できる。したがって、貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記算出手段は、前記所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額を出金可能額として算出するものである請求項3記載の貨幣出金装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、出金請求額を入力させるための入力手段(12,13)と、前記入力手段によって入力された出金請求額が、前記出金可能額以下であるか否かを判別する判別手段(10)と、前記判別手段によって、前記出金請求額が前記出金可能額以下であると判別されたときには、前記出金請求額に相当する現金を出金するための出金処理を行ない、前記出金請求額が前記出金可能額より大きいと判別されたときには、出金処理を禁止する手段(10,16)とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の貨幣出金装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明では、出金請求額が入力されると、入力された出金請求額が出金可能額以下であるか否かが判別される。出金請求額が出金可能額以下であると判別されたときには、出金請求額に相当する現金を出金するための出金処理が行なわれ、出金請求額が出金可能額より大きいと判別されたときには、出金処理が禁止される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムにおいて、1または複数の貨幣出金装置(1)と、各貨幣出金装置と通信可能な上位装置(3)とを備えており、貨幣出金装置は、キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段(10,17)と、前記上位装置に対して、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報を送信して、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を問い合わせることにより、前記上位装置から前記出金可能額を取得する出金可能額取得手段(10,20)と、前記出金可能額取得手段によって取得された出金可能額を表示する出金可能額表示手段(10,13)と、を含んでおり、前記上位装置は、前記所定期間内において、前記各貨幣出金装置によって行われた出金取引に関する情報を記憶する記憶手段(30,33)と、前記貨幣出金装置から前記キャッシュカードに対する現在の出金可能額の問い合わせを受信したときには、当該キャッシュカードのカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間当たりの出金限度額度と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とに基づいて、出金可能額を算出する算出手段(30,32)と、前記算出手段によって算出された出金可能額を前記貨幣出金装置に送信する送信手段(30,31)とを含む、貨幣出金システムである。
【0017】
請求項6に記載の発明では、貨幣出金装置は、カード情報読取手段によってキャッシュカードに記憶されているカード情報が読み取られた後に、上位装置に対して、カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報を送信して、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を問い合わせる。上位装置は、この貨幣出金装置から前記キャッシュカードに対する現在の出金可能額の問い合わせを受信したときには、当該キャッシュカードのカード情報に対応する口座残高と、所定期間当たりの出金限度額度と、当該所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とに基づいて、出金可能額を算出する。そして、算出した出金可能額を貨幣出金装置に送信する。貨幣出金装置は、上位装置からの出金可能額を受信すると、受信した出金可能額を表示する。
【0018】
この発明では、出金可能額が表示されるので、利用者は出金可能額を認識することができる。このため、出金可能額より大きな金額が、出金請求額として入力されるのを回避または低減できる。したがって、貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記算出手段は、前記所定期間当たりの出金限度額度から前記累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額を出金可能額として算出するものである請求項6記載の貨幣出金システムである。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、貨幣出金装置に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、貨幣出金装置の稼動効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】貨幣出金システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ATMの外観を示す斜視図である。
【図3】ATMの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】情報処理センタの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】出金管理テーブルの内容の一例を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態において、 出金取引時にATMおよび情報処理センタによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態において、 出金取引時にATMおよび情報処理センタによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態において、 出金取引時にATMおよび情報処理センタによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態において、 出金取引時にATMおよび情報処理センタによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
【0023】
[1]第1の実施形態
図1は、貨幣出金システムの構成を示している。
パチンコ等の遊技施設である複数の店舗A,B,Cそれぞれに、自動取引装置(ATM)1A,1B,1Cが設置されている。これらを総称する場合には、自動取引装置1(またはATM1)ということにする。ATM1は、公衆回線2を介して、情報処理センタ3に接続されている。情報処理センタ3には、ATM1による取引が可能な各銀行X,Y,Zのホストコンピュータ4A,4B,4Cが専用回線を介して接続されている。これらを総称する場合には、ホストコンピュータ4ということにする。
【0024】
ATM1は、キャッシュカードを用いて出金、入金、残高紹介等の取引を行える機能を備えている。情報処理センタ3は、ATM1とホストコンピュータ4との間の通信を仲介する。また、情報処理センタ3は、ATM1によって実行される出金取引に関するデータを管理する。各銀行のホストコンピュータ4には、顧客情報ファイル(CIF:Custmer Information File)を備えている。顧客情報ファイルは、顧客口座情報として、顧客の口座番号、氏名、住所、預金残高、暗証番号等を体系的に管理、記憶している。
【0025】
図2は、ATMの外観を示している。
ATM1の前方に突出したほぼ水平な操作面には、紙幣を投入または放出するための紙幣投入放出口11と、暗証番号、出金請求額(出金額)等を入力するためのテンキー12とが設けられている。ATM1の前面のほぼ垂直な操作面には、操作手順の案内や取引操作を行うための操作表示部13と、キャッシュカードを挿入および返却するためのカード挿入返却口14と、取引明細が印字されたレシートを発行するためのレシート発行口15とが設けられている。操作表示部13としては、この実施形態では、タッチパネル付きの表示器が用いられている。
【0026】
図3は、ATMの電気的構成を示している。
ATM1は、制御部10によって制御される。制御部10は、CPU、そのプログラムや必要なデータを記憶したROM、必要なデータを記憶するRAMを備えている。制御部10には、テンキー12、操作表示部13、紙幣入出金部16、カード処理部17、レシート処理部18、記憶部19、通信処理部20等が接続されている。
【0027】
紙幣入出金部16は、出金時においては、出金請求額の紙幣を収納箱(図示略)から繰り出し、計数して紙幣投入放出口11まで搬出する。また、紙幣入出金部16は、入金時においては、紙幣投入放出口11から投入された紙幣を計数して収納箱に収納するものである。カード処理部17は、カード挿入返却口14の内側に設けられ、カード挿入返却口14から挿入されたキャッシュカードの情報を読取り、取引終了時にカード挿入返却口14からカードを返却する。レシート処理部18は、レシートに取引明細を印字し、印字済みのレシートをレシート発行口15から発行する。記憶部19は、書き換え可能な不揮発性メモリからなり、当該ATM1が設置された店舗のID等のデータが記憶される。通信制御部20は、公衆回線2を介して制御部10が情報処理センタ3と通信を行うためのものである。
【0028】
図4は、情報処理センタの電気的構成を示している。
情報処理センタ3は、制御部30を備えている。制御部30は、CPU、ROMおよびRAMを備えている。制御部30には、通信制御部31、32、記憶部33等が接続されている。通信制御部31は、公衆回線2を介して、制御部30がATM1と通信を行うためのものである。通信制御部32は、専用回線を介して、制御部30がホストコンピュータ4と通信を行うためのものである。記憶部33は、書き換え可能な不揮発性メモリからなり、必要なデータが記憶される。記憶部33には、ATM1によって行われた出金取引に関する情報を管理するための、出金管理テーブルが設けられている。
【0029】
図5は、出金管理テーブルの内容の一例を示している。
この実施形態では、遊技への過剰な投資を抑制するために、遊技客がATM1を利用して1日に出金できる金額の総計(1日の累計出金額)が、予め定められた一日当たりの出金限度額以下に制限されている。一日当たりの出金限度額は、この実施形態では、3万円であり、情報処理センタ3の記憶部33に記憶されている。
【0030】
出金管理テーブルには、当日一日分の出金取引に関するデータが記憶される。この実施形態では、出金管理テーブルの内容は、一日単位でクリアされる。出金管理テーブルには、出金取引が行われる毎に、当該取引が行われた店舗のIDに関連して、当該取引に用いられたキャッシュカードのID、今回の出金額、当日における当該キャシュカードを利用した出金額の累計(累計出金額)および当該店舗の当日における当該キャシュカードを利用した出金取引の回数(出金回数)が記憶される。ただし、累計出金額は、当該店舗のみにおける出金額の累計ではなく、情報処理センタ3が管理している全ての店舗(遊技施設)での出金額の累計である。出金回数は、当該店舗のみにおける出金取引の回数である。出金回数も、情報処理センタ3が管理している全ての店舗での出金取引の回数としてもよい。
【0031】
カードIDが“13579”のキャッシュカードに関する出金データが、図5に示されているような内容となった経緯について説明する。このキャッシュカードを持つ遊技者は、例えば、店舗IDが”1030“の店舗に設置された貨幣出金装置1において、まず、10,000円を出金した。その時点では、店舗ID”1030“のカードID“13579”に対応する、今回出金額および累計出金額がともに”10,000円“となり、出金回数が”1“となる。
【0032】
この後、当該遊技者が、店舗を移動し、店舗IDが”1020“の店舗に設置されたATM1において5,000円を出金した。その時点では、店舗ID”1020“のカードID“13579”に対応する、今回出金額が”5,000円“となり、累計出金額が”15,000円“となり、出金回数が”1“となる。また、店舗ID”1030“のカードID“13579”に対応する、今回出金額が”10,000円“を維持し、累計出金額が”15,000円“に変化し、出金回数が”1“を維持する。
【0033】
この後、さらに、当該遊技者が、店舗IDが”1020“の店舗に設置されたATM1において10,000円を出金した。その時点では、店舗ID”1020“のカードID“13579”に対応する、今回出金額が”10,000円“に変化し、累計出金額が”25,000円“となり、利用回数が”2“となる。また、店舗ID”1030“のカードID“13579”に対応する、今回出金額が”10,000円“を維持し、累計出金額が”25,000円“に変化し、出金回数が”1“を維持する。つまり、図5に示すような内容となる。
【0034】
図6および図7は、出金取引時にATM1および情報処理センタ3によって実行される処理の手順を示している。
ATM1の制御部10は、待機状態においては、遊技客に取引を選択させるための取引選択画面を表示している(ステップS1)。遊技客によって出金取引以外の取引が選択されると(ステップS3でYES)、制御部10は選択された取引に対応した処理を実行する。
【0035】
遊技客によって出金取引が選択された後(ステップS2でYES)、遊技客によってキャッシュカードがカード挿入返却口14から挿入されると(ステップS4でYES)、カード処理部17によって、カードに記録されているカードID、口座番号等のカードデータが読み取られる(ステップS5)。カード処理部17によって読み取られたカードデータは、制御部10に与えられる。制御部10は、暗証番号の入力を促すための暗証番号入力案内画面を表示する(ステップS6)。この表示に基づいて、遊技客は、テンキー12によって暗証番号を入力する。
【0036】
暗証番号が入力されると(ステップS7でYES)、制御部10は、情報処理センタ3に対して、店舗ID、キャシュカードから読み取ったカードデータ、入力された暗証番号等のデータを送って、出金可能額の問い合わせを行う(ステップS8)。
【0037】
情報処理センタ3は、ATM1からの出金可能額の問い合わせを受信すると、出金管理テーブル(図5参照)から、受信したカードIDに対応する当日の累計出金額を読み出し、当該累計出金額が1日当たりの出金限度額(この例では3万円)未満であるか否かを判別する(ステップS21)。累計出金額が1日当たりの出金限度額未満であれば(ステップS21でYES)、情報処理センタ3は、対応する銀行のホストコンピュータ4に対して、カードデータ、暗証番号等のデータを送るとともに口座残高等の問い合わせを行う(ステップS22)。この問い合わせを受信したホストコンピュータ4は、受信した口座番号に基づいて、顧客情報ファイルから対応する顧客口座情報を読み出し、受信した暗証番号が正しいか否かの確認を行い、その確認結果と口座残高とを、情報処理センタ3に送信する。
【0038】
情報処理センタ3は、ホストコンピュータ4からの口座残高等のデータを受信すると(ステップS23でYES)、暗証番号の正しいことが確認されかつ口座に残高が存在するか否かを判別する(ステップS24)。暗証番号の正しいことが確認されかつ口座に残高が存在する場合には、情報処理センタ3は、出金可能額を算出し、算出した出金可能額をATM1に通知する(ステップS25)。具体的には、情報処理センタ3は、まず、一日当たりの出金限度額(この例では3万円)から、受信したカードIDに対応する当日の累計出金額を差し引いた値を、一日当たりの出金限度額内での利用可能残額として算出する。そして、情報処理センタ3は、受信した口座番号に対応する口座残高と、一日当たりの出金限度額内での利用可能残高とのうち、小さい方の金額を、出金可能額として算出する。
【0039】
一方、前記ステップS21において、累計出金額が1日当たりの出金限度額以上であると判別された場合(ステップS21でNO)または前記ステップS24において、暗証番号の正しいことが確認されていないか若しくは口座に残高が存在しないと判別された場合(ステップS24でNO)には、情報処理センタ3は、取引不可であることをATM1に通知する(ステップS26)。
【0040】
ATM1の制御部10は、情報処理センタ3からの問い合わせ結果(出金可能額または取引不可)を受信した場合には(ステップS9でYES)、受信した内容が取引不可であれば(ステップS10でYES)、取引不可であることを示すメッセージを表示した後(ステップS18)、待機状態に移行する。
【0041】
一方、問い合わせ結果として受信した内容が出金可能額である場合には(ステップS10でNO)、制御部10は、出金可能額を表示するとともに出金請求額の入力を促すための入力案内画面を表示する(ステップS11)。遊技客が出金請求額を入力すると(ステップS12でYES)、制御部10は、入力された出金請求額が出金可能額以下であるか否かを判別する(ステップS13)。入力された出金請求額が出金可能額を超えている場合には(ステップS13でNO)、取引不可であることを示すメッセージを表示した後(ステップS18)、待機状態に移行する。
【0042】
一方、入力された出金請求額が出金可能額以下である場合には(ステップS13でYES)、制御部10は、出金処理を行なう(ステップS14)。つまり、制御部10は、紙幣入出金部16を制御することにより、出金請求額に相当する紙幣を紙幣投入放出口11から放出する。また、制御部10は、レシート発行処理を行なう(ステップS15)。つまり、制御部10は、レシート処理部18を制御することにより、今回の出金取引に関する情報をレシートに印字して、レシート発行口15から発行する。また、制御部10は、カード返却処理を行なう(ステップS16)。つまり、制御部10は、カード処理部18を制御して、キャッシュカードをカード挿入返却口14から返却する。
【0043】
さらに、制御部10は、今回の出金取引に関する情報(出金取引データ)を、情報処理センタ3に送信する(ステップS17)。そして、待機状態となる。出金取引に関する情報には、日時、店舗ID、キャシュカードID、口座番号、出金額などのデータが含まれる。
【0044】
情報処理センタ3は、ATM1からの今回の出金取引に関する情報を受信した場合には、受信した情報を対応する銀行のホストコンピュータ4に送信するとともに(ステップS31)、受信した情報に基づいて、出金管理テーブルデータ(図5参照)の内容を更新する(ステップS32)。
【0045】
なお、前記ステップS13において、入力された出金請求額が出金可能額を超えている場合には(ステップS13でNO)、出金請求額を再入力させ、入力された出金請求額が出金可能額以下であるか否かを再度判別するようにしてもよい。そして、出金請求額の再入力が所定回数行われたにもかからず、入力された出金請求額が出金可能額以下とならない場合に待機状態にするようにしてもよい。
【0046】
上記第1の実施形態では、出金取引時には、出金可能額が操作表示部13に表示されるので、遊技客は出金可能額を認識することができる。このため、出金可能額より大きな金額が、出金請求額として入力されるのを回避または低減できる。したがって、ATM1に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、ATM1の稼動効率を高めることができる。
【0047】
[2]第2の実施形態
貨幣出金システムの構成は、第1の実施形態と同じである。また、ATM1および情報処理センタ3の電気的構成も、第1の実施形態と同じである。また、情報処理センタ3は、第1の実施形態と同様に、出金取引に関する情報を出金管理テーブル(図5参照)を用いて管理している。第1の実施形態では、出金可能額の算出を情報処理センタ3が行なっているが、第2の実施形態ではATM1が出金可能額の算出を行う。このため、ATM1は、出金可能額の算出に必要なデータを情報処理センタ3から取得する。
【0048】
図8および図9は、出金取引時にATM1および情報処理センタ3によって実行される処理の手順を示している。図8および図9において、図6および図7と同じ処理が実行されるステップには、同じステップ番号を付け、その説明を省略する。
【0049】
図8のATM1によって実行されるステップS1〜S7の処理は、図6のステップS1〜S7の処理と同様である。ステップS7で暗証番号が入力されると、ATM1の制御部10は、情報処理センタ3に対して、店舗ID、キャシュカードから読み取ったカードデータ、入力された暗証番号等のデータを送るとともに、出金可能額算出用データの問い合わせを行う(ステップS8a)。
【0050】
情報処理センタ3は、ATM1からの出金可能額算出用データの問い合わせを受信すると、対応する銀行のホストコンピュータ4に対して、カードデータ、暗証番号等のデータを送るとともに口座残高等の問い合わせを行いう(ステップS22)。この問い合わせを受信したホストコンピュータ4は、受信した口座番号に基づいて、顧客情報ファイルから対応する顧客口座情報を読み出し、受信した暗証番号が正しいか否かの確認を行い、その確認結果と口座残高とを、情報処理センタ3に送信する。
【0051】
情報処理センタ3は、ホストコンピュータ4からの口座残高等のデータを受信すると(ステップS23でYES)、暗証番号の正しいことが確認されかつ口座に残高が存在するか否かを判別する(ステップS24)。暗証番号の正しいことが確認されかつ口座に残高が存在する場合には、情報処理センタ3は、受信したカードIDに対応する当日の累計出金額を出金管理テーブルから読み出し、ホストコンピュータ4から取得した口座残高と、出金管理テーブルから読み出した当日の累計出金額とを、出金可能額算出用データとしてATM1に通知する(ステップS25a)。なお、出金可能額算出用データとして、口座残高と、一日当たりの出金限度額内での利用可能残額とを通知してもよい。ここで、一日当たりの出金限度額内での利用可能残額は、一日当たりの出金限度額(この例では3万円)から、受信したカードIDに対応する当日の累計出金額を差し引いた値である。
【0052】
一方、前記ステップS24において、暗証番号の正しいことが確認されていないかまたは口座に残高が存在しないと判別された場合(ステップS24でNO)には、情報処理センタ3は、取引不可であることをATM1に通知する(ステップS26)。
【0053】
ATM1の制御部10は、情報処理センタ3から問い合わせ結果(出金可能額算出用データまたは取引不可)を受信した場合には(ステップS9aでYES)、受信した内容が取引不可であれば(ステップS10aでYES)、取引不可であることを示すメッセージを表示した後(ステップS18)、待機状態に移行する。
【0054】
一方、問い合わせ結果として受信した内容が出金可能額算出用データである場合には(ステップS10aでNO)、制御部10は、受信した出金可能額算出用データに基づいて、出金可能額を算出する(ステップS19)。受信した出金可能額算出用データが、口座残高と当日の累計出金額とからなる場合には、制御部10は、まず、一日当たりの出金限度額(この例では3万円)から当日の累計出金額を差し引いた値を、一日当たりの出金限度額内での利用可能残額として算出する。そして、制御部10は、口座残高と、一日当たりの出金限度額内での利用可能残高とのうち、小さい方の金額を、出金可能額として算出する。一方、受信した出金可能額算出用データが、口座残高と一日当たりの出金限度額内での利用可能残額とからなる場合には、制御部10は、口座残高と、一日当たりの出金限度額内での利用可能残高とのうち、小さい方の金額を、出金可能額として算出する。
【0055】
制御部10は、出金可能額を算出すると、出金可能額を表示するとともに出金請求額の入力案内画面を表示する(ステップS11)。図9において、ATM1で実行されるステップS11〜S18の処理は、図7のステップS11〜S18の処理と同じである。また、図9において、情報処理センタ3によって実行されるステップS31およびS32の処理も、図7のステップS31〜S32の処理と同じである。
【0056】
上記第2の実施形態においても、出金取引時には、出金可能額が操作表示部13に表示されるので、遊技客は出金可能額を認識することができる。このため、出金可能額より大きな金額が、出金請求額として入力されるのを回避または低減できる。したがって、ATM1に対して出金取引不可となるような無駄な操作が行なわれるのを回避または低減できるとともに、ATM1の稼動効率を高めることができる。
【0057】
以上、この発明の第1および第2の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。前述の実施形態では、出金管理テーブルは情報処理センタ3に設けられているが、例えば、1台のATM1での1日当たりの出金額が制限されている場合には、出金管理テーブルをATM1の記憶部19に設けるようにしてもよい。この場合には、出金管理テーブルには、当該ATM1で行われた当日一日分の出金取引に関する情報が記憶される。出金管理テーブルには、出金取引に用いられたキャッシュカードのID、今回の出金額、当日における当該キャシュカードを利用した出金額の累計(累計出金額)および当日における当該キャシュカードを利用した出金取引の回数(出金回数)が記憶される。
【0058】
この場合、ATM1の制御部10は、出金取引時には、口座残高を情報処理センタ3を介してホストコンピュータ4から取得するとともに、読み取ったキャシュカードIDに対応する当日の累計出金額を出金管理テーブルから読み出す。制御部10は、1台のATM1での一日の出金限度額から当日の累計出金額を減算することにより、一日当たりの出金限度額内での利用可能残高を算出する。そして、制御部10は、口座残高と一日当たりの出金限度額内での利用可能残高とのうち、小さい方の金額を、出金可能額として算出して、操作表示部13に表示する。
【0059】
また、上記実施形態では、1日当たりの出金限度額が定められているが、1日以外の所定期間当たりの出金限度額が定められている場合にも、この発明を適用することができる。
また、図6および図7で示す処理または図8および図9に示す処理においては、取引選択画面を表示して、遊技客に取引選択をさせてから(ステップS1,S2参照)、遊技客にキャシュカードを挿入させるようにしているが(ステップS4参照)、遊技客にキャシュカードを挿入させてから、取引選択画面を表示して、遊技客に取引選択をさせるようにしてもよい。
また、ATM1の利用客には、ATM利用手数料を課するようにしてもよい。その場合、累計出金額にATM利用手数料を含めるようにしてもよいし、含めないようにしてもよい。例えば、出金取引に対して210円のATM利用手数料が発生するものとする。累計出金額にATM利用手数料を含めるようにした場合には、例えば、所定の日において、所定の遊技者の口座残高が1日当たりの出金限度額(30,000円)以上の金額であるときに、当該遊技者によって、最初に、出金請求額が10,000円の出金取引が行なわれたとすると、その取引完了時点での利用可能金額は、19,790円(=30,000円−(10,000円+210円)となる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ATM
3 情報処理センタ
4 ホストコンピュータ
10 制御部
13 操作表示部
19 記憶部
30 制御部
33 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムに適用される貨幣出金装置において、
キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段と、
上位装置と通信することにより、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間当たりの出金限度額と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とから決定される、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を取得する出金可能額取得手段と、
前記出金可能額取得手段によって取得された出金可能額を表示する出金可能額表示手段と、を含む貨幣出金装置。
【請求項2】
前記出金可能額は、前記所定期間当たりの出金限度額から、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額である請求項1記載の貨幣出金装置。
【請求項3】
同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムに適用される貨幣出金装置において、
キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段と、
上位装置と通信することにより、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額または前記所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値とを含むデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段によって取得したデータに基づいて、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された出金可能額を表示する出金可能額表示手段と、を含む貨幣出金装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記所定期間当たりの出金限度額から前記累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額を出金可能額として算出するものである請求項3記載の貨幣出金装置。
【請求項5】
出金請求額を入力させるための入力手段と、
前記入力手段によって入力された出金請求額が、前記出金可能額以下であるか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段によって、前記出金請求額が前記出金可能額以下であると判別されたときには、前記出金請求額に相当する現金を出金するための出金処理を行ない、前記出金請求額が前記出金可能額より大きいと判別されたときには、出金処理を禁止する手段とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の貨幣出金装置。
【請求項6】
同一キャッシュカードに対する所定期間当たりの出金限度額が定められている貨幣出金システムにおいて、
1または複数の貨幣出金装置と、各貨幣出金装置と通信可能な上位装置とを備えており、
貨幣出金装置は、
キャッシュカードに記憶されているカード情報を読み取るカード情報読取手段と、
前記上位装置に対して、前記カード情報読取手段によってキャシュカードから読み取られたカード情報を送信して、当該キャッシュカードに対する現在の出金可能額を問い合わせることにより、前記上位装置から前記出金可能額を取得する出金可能額取得手段と、
前記出金可能額取得手段によって取得された出金可能額を表示する出金可能額表示手段と、を含んでおり、
前記上位装置は、
前記所定期間内において、前記各貨幣出金装置によって行われた出金取引に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記貨幣出金装置から前記キャッシュカードに対する現在の出金可能額の問い合わせを受信したときには、当該キャッシュカードのカード情報に対応する口座残高と、前記所定期間当たりの出金限度額度と、前記所定期間内において当該キャッシュカードを用いて行われた出金取引の累計出金額とに基づいて、出金可能額を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された出金可能額を前記貨幣出金装置に送信する送信手段とを含む、貨幣出金システム。
【請求項7】
前記算出手段は、前記所定期間当たりの出金限度額度から前記累計出金額を減算した値と、前記口座残高とのうち、少ない方の金額を出金可能額として算出するものである請求項6記載の貨幣出金システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39652(P2011−39652A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184498(P2009−184498)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】