説明

貨物自動車用幌掛装置

【課題】荷台の天井部や側面部を覆う幌の開閉を短時間で行うことができ、かつ、幌を開閉する駆動機構の保守や点検が容易な貨物自動車用幌掛装置を提供する。
【解決手段】荷台2aの前後に立設され,アーチ状のガイドレール9a,9bを有する前支柱3及び後支柱4と、これらの支柱にそれぞれ取り付けられ,ガイドレール9a,9bに案内されて正逆方向に循回する無端チェーン10a,10bと、無端チェーン10a,10bに取り付けられてガイドレール9a,9bに沿って走行する幌シート固定具と、無端チェーン10a,10bが鋭角をなすように巻回される駆動スプロケット13a,13bと、駆動スプロケット13a,13bの側方に配置されるガイドスプロケット11a,11bと、駆動スプロケット13a,13bを駆動するモータ12a,12bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積荷を雨や日差しから保護するために貨物自動車の荷台を覆うように幌を自動で掛ける装置に係り、特に、荷台の天井部や側面部の全開及び全閉を効率よく行うことが可能な貨物自動車用幌掛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車の積荷に幌を掛ける作業は、天候に左右されないように屋内で行われることが多い。そして、この作業を人手によって行う場合、積荷の嵩が大きいと、天井部を幌で完全に覆うために作業者が荷台や積荷に上らなければならないことがある。しかし、積荷の上での作業は、足場が不安定となるため、危険である。また、屋内での作業は、作業スペースを十分に確保できないと、作業効率が著しく低下してしまう。そのため、積荷が嵩張り易い大型の貨物自動車の場合には、通常、積荷に自動で幌を掛ける装置が用いられる。
このような装置としては、例えば、天井部の中央で2枚のサイドパネルに分割されるアルミ製のパネルで荷台を覆い、必要に応じてサイドパネルを電動モータ等の駆動によって左右にそれぞれ傾斜させ、天井部を開口させる構造のものが知られている。しかしながら、このような構造の装置では、荷台の天井部及び側面部を全開できないという課題があった。また、天井クレーン等による吊り荷役作業時に、傾斜状態のサイドパネルが天井クレーン等に吊られた荷物と接触して変形するおそれがある。さらに、天井の低い倉庫や車両の両側のスペースが狭い場所では、サイドパネルの可動範囲が制約されるため、天井部を完全に開口できないという課題があった。
このような課題に対処するべく、近年、荷台の天井部と側面部を覆うように自動で幌を掛け、その幌を同じく自動で全開し、あるいは全閉する装置について盛んに研究や開発がなされている。そして、それらに関して既にいくつかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トラックの荷台に設けた幌(シート)をその側面方向から自動で開閉し、天井部や側面部を全開あるいは全閉させることが可能な「トラック等の荷台用幌装置」に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、トラックの荷台の天井部と左右側面部を覆うように一体的に形成された幌シートと、この幌シートが固定される複数本のシート支持梁と、このシート支持梁を架設可能に,荷台の前後に設けられる一対のアーチ型ガイドレールと、シート支持梁が取り付けられるとともに,駆動装置によって駆動されてアーチ型ガイドレールに沿って正逆方向に巡回する駆動策とを備えるものである。
このような構造においては、駆動策の巡回によってシート支持梁が展開され、あるいは寄せ集められる。そして、幌シートはシート支持梁の動作に対応して開閉する。この場合、側面の一方にシート支持梁を寄せ集めることにより、幌シートが折り畳まれて荷台の天井部及び側面が全開する。
【0004】
次に、特許文献2には、幌によって荷台の天井部及び側面部を容易に全開・全閉することができる「トラック用幌掛装置」に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、荷台の前後に設けられる門型の前支柱及び後支柱と、前支柱及び後支柱の内部に,左右へ回動自在に設置される2本のチェーンと、幌を固定支持する幌取付板と,チェーンに連動して支柱内を移動可能に設置される移動体とからなる幌開閉具と、隣接する幌開閉具間に設けられ,幌を折り畳む際に中折れする連結具と、前支柱と後支柱内の対向する各幌開閉具間に張設させる幌とを備えており、左右の幌開閉具が2本のチェーンに対してそれぞれ固定された構造となっている。
このような構造によれば、チェーンを駆動させることで幌を容易に全開・全閉することができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、荷物積卸の際に大きな作業スペースを必要とせず、かつ、作業効率を向上させることが可能な「荷物運搬車の荷台開閉テント」に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、荷台の少なくとも前部及び後部に設けられる門型枠体と、これらの門型枠体間を被って荷物積載室を形成するテント布と、このテント布に対して略水平に適宜間隔をもって取り付けられるとともに,門型枠体に沿って上下動自在に設置される複数の骨体と、門型枠体にその左右方向中央部から,門型枠体に沿って左右に一対設けられ,最下部の骨体が固着される無端歯付きベルトと、この無端歯付きベルトを正逆方向に駆動させる駆動源とを備えるものである。
このような構造によれば、無端歯付きベルトを駆動させることで骨体が上下動し、さらに荷台両側のテント布が開閉するという作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2704366号公報
【特許文献2】特開平10−203174号公報
【特許文献3】特開平4−143122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、チェーンの駆動スプロケットに巻回される角度が大きいため、駆動スプロケットの回転速度を上げた場合に、チェーンが外れ易いという課題があった。また、チェーンの弛みを防ぐ機構を備えていないため、駆動スプロケットの回転方向を切り替えた場合にチェーンが弛んで駆動スプロケットから外れてしまうおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2に開示された発明においても、駆動スプロケットに巻回されるチェーンの角度が大きいため、主軸スプロケットの回転が速い場合にはチェーンが外れるおそれがある。そのため、主軸スプロケットの回転速度を上げることができず、幌の開閉に時間を要するという課題があった。また、モータや主軸スプロケットが荷台より低い位置に収納されているため、保守や点検の作業が容易でないという課題があった。
【0009】
特許文献3に開示された発明は、無端歯付きベルトにテンションをかけて歯付きプーリーから外れ難くするような機構を備えていないため、歯付きプーリーの回転速度を上げた場合や、その回転方向を切り替えた場合に無端歯付きベルトに弛みが生じて歯付きプーリーから外れてしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、荷台の天井部や側面部を覆う幌の開閉を短時間で行うことができ、かつ、幌を開閉する駆動機構の保守や点検が容易な貨物自動車用幌掛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である貨物自動車用幌掛装置は、貨物自動車の荷台を覆う幌シートを開閉する貨物自動車用幌掛装置であって、荷台の前後に立設され,両側面部及び天井部にアーチ状のガイドレールが設けられた前支柱及び後支柱と、これら前支柱及び後支柱にそれぞれ取り付けられ,ガイドレールに案内されて正逆方向に循回する無端チェーンと、この無端チェーンに取り付けられてガイドレールに沿って走行する幌シート固定具と、ガイドレールから露出した無端チェーンの一部が巻回されるガイドスプロケット及び駆動スプロケットと、この駆動スプロケットを駆動するモータとを備え、ガイドスプロケットは駆動スプロケットの側方に配置され、無端チェーンは鋭角をなすように駆動スプロケットに巻回されることを特徴とするものである。
このような構造の貨物自動車用幌掛装置においては、駆動スプロケットに巻回される無端チェーンの角度が小さく、無端チェーンと駆動スプロケットの噛合状態が安定するため、駆動スプロケットの回転が速い場合や駆動スプロケットの回転方向が切り替わった場合でも無端チェーンが駆動スプロケットから外れ難いという作用を有する。また、ガイドスプロケットが駆動スプロケットの側方に配置されているため、これらのスプロケットやモータ等によって構成される無端チェーンの駆動機構について、その高さがガイドスプロケットと駆動スプロケットの距離に影響されないという作用を有する。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の貨物自動車用幌掛装置において、無端チェーンに対して走行方向に直交する向きに力を加える弛み防止具を備えたことを特徴とするものである。
このような構造の貨物自動車用幌掛装置においては、ガイドスプロケットや駆動スプロケットに無端チェーンが押しつけられ、各スプロケットに対して無端チェーンが確実に噛合するという作用を有する。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の貨物自動車用幌掛装置において、前支柱に取り付けられる駆動スプロケット及びモータの少なくともいずれか一方は荷台よりも高い箇所に配置されることを特徴とするものである。
このような構造の貨物自動車用幌掛装置においては、貨物自動車から本装置を取り外すことなく、駆動スプロケットやモータを点検できるため、保守作業が容易である。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の貨物自動車用幌掛装置において、荷台を覆うように展開された幌シートを内側から支持可能に,荷台の左右に設けられた側板に跨設されるアーチ状の支持枠を備え、この支持枠は高さ調節手段を有するとともに,側板に設けられたガイドレールに沿って走行可能な移動体がその下端に設けられたことを特徴とするものである。
このような構造のトラック用幌掛装置においては、幌シートが支持枠によって内側から支持されるため、たるみが発生し難いという作用を有する。また、幌シートを開閉する際には、支持枠の高さを下げることにより幌シートと支持枠との干渉が回避される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の請求項1記載の貨物自動車用幌掛装置においては、駆動スプロケットの回転速度を上げるとともに、空回りさせることなく、駆動スプロケットの回転方向を切り替えることができる。これにより、幌シートの開閉時間が短縮される。さらに、ガイドスプロケットと駆動スプロケットの間の距離を大きくとれるため、無端チェーンの絡まりを防いで走行状態を安定させることができる。また、両スプロケットと無端チェーンの点検や保守作業が容易となる。加えて、ガイドスプロケットを駆動スプロケットから離して設置した場合でも無端チェーンの駆動機構が高くならないため、駆動機構を荷台の下へ容易に収納できる。
【0016】
本発明の請求項2記載の貨物自動車用幌掛装置によれば、高速回転時や回転方向の切り替え時における駆動スプロケットの空回りを防止し、無端チェーンの走行状態を安定させるという請求項1記載の発明の効果をより一層発揮させることが可能である。
【0017】
本発明の請求項3記載の貨物自動車用幌掛装置においては、駆動スプロケットやモータの点検や保守作業に要する手間を省くことができる。また、駆動スプロケットやモータの故障等を早期に発見することができる。これにより、装置の安全性が高まる。
【0018】
本発明の請求項4記載の貨物自動車用幌掛装置によれば、幌シートの上面における雨水のたまりを防ぐことができる。また、荷物の積み下ろしをする際には、支持枠が邪魔にならないように荷台の前方又は後方へ容易に移動させることができる。そして、支持枠の高さを下げた場合、この支持枠の移動作業を幌シートの開閉動作と並行して行うことが可能である。これにより、荷台の天井部や側面部の全開及び全閉を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係る貨物自動車用幌掛装置の実施例1の外観図である。
【図2】実施例1の貨物自動車用幌掛装置を構成する前支柱の正面図である。
【図3】実施例1の貨物自動車用幌掛装置を構成する後支柱の正面図である。
【図4】(a)及び(b)はそれぞれ実施例1の貨物自動車用幌掛装置を構成する幌シート固定具及び折畳金具の平面図であり、(c)は同図(a)のX−X線矢視断面図である。
【図5】(a)及び(b)は前支柱に設置された無端チェーンの駆動機構の部分拡大図であり、(c)は弛み防止具の部分拡大図である。
【図6】(a)及び(b)は支持枠の外観斜視図であり、(c)は同図(a)のY−Y線矢視断面の拡大図である。
【図7】(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係る貨物自動車用幌掛装置の実施例2の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施例の貨物自動車用幌掛装置は、貨物自動車において積荷を保護するために、側面部と天井部を覆うように自動で幌シートを荷台に掛けるとともに、その幌シートを開閉する装置である。以下、シャーシに荷台を搭載した貨物自動車について図1乃至図6を用いて説明し、荷台を搭載したトレーラがトラクタによってけん引される貨物自動車について図7を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係る貨物自動車用幌掛装置の実施例1の外観図である。なお、図1(a)は幌シート5が全閉した状態を示し、図1(b)は幌シート5の一部を折り畳んで荷台2aの天井部と左側面部を開放した状態を示している。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施例の貨物自動車用幌掛装置は、貨物自動車1aの荷台2aの前後にそれぞれ立設される前支柱3及び後支柱4と、前端及び後端が後述の幌シート固定具によって固定支持された状態で前支柱3と後支柱4に設置される幌シート5と、幌シート5を内側から支持可能に,荷台2aの左右両側に取り付けられた側板(前アオリ6a,6a及び後アオリ6b,6b)に跨設されるアーチ状の支持枠7と、前支柱3及び後支柱4に設けられた後述の前後一対のアーチ状のガイドレールにそれぞれ案内されて正逆方向に循回する後述の2本の無端チェーンと、この無端チェーンを循回駆動する後述の駆動機構とを備えている。
【0022】
前支柱3は内部に補強用の梁が設置され、前面と後面にそれぞれ目隠し用板3aが取り付けられている。また、後支柱4は荷台2aに後方から荷物を積み下ろしできるように開口部4aが設けられている。そして、図1(b)では図示を省略しているが、後支柱4には後扉8,8が開閉自在に取り付けられている。
支持枠7は、前アオリ6a,6a及び後アオリ6b,6bの上端部に設けられているガイドレール(図示せず)によって荷台2aの前後方向に対して走行可能に支持されている。また、全ての支持枠7,7を後アオリ6b,6b側に寄せることにより、前アオリ6a,6aは開放可能な状態となる。なお、本実施例では、前アオリ6a,6aを開放可能としているが、このような構造に限定されるものではなく、例えば、支持枠7,7を前アオリ6a,6a側に寄せて、後アオリ6b,6bを開放する構造とすることもできる。また、支持枠7の設置個数は2個に限らず、3個以上であっても良いし、荷台が短い場合には1個であっても良い。さらに、図1(b)では幌シート5が荷台2aの右側に折り畳まれた状態を示しているが、幌シート5は荷台2aの左右どちら側にも折り畳み可能である。
【0023】
次に、前支柱3及び後支柱4について図2乃至図4を用いて説明する。
図2及び図3はそれぞれ本実施例の貨物自動車用幌掛装置を構成する前支柱3及び後支柱4の正面図である。また、図4(a)及び(b)はそれぞれ本実施例の貨物自動車用幌掛装置を構成する幌シート固定具及び折畳金具17の平面図であり、(c)は同図(a)のX−X線矢視断面図である。なお、図2では、前支柱3の後面の目隠し用板3aの図示を省略し、図2及び図3では幌シート5の図示を省略している。また、図1に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図2及び図3に示すように、前支柱3及び後支柱4は荷台2aと略同じ幅をしており、左右の側面部と天井部に沿ってアーチ状のガイドレール9a,9bがそれぞれ設けられている。なお、前述したとおり、前支柱3は内部に補強用の梁3bが所定の間隔をあけて縦横に設置されており、後支柱4は荷台2aの後方から荷物を積み下ろしできるように開口部4aが設けられている。
【0024】
ガイドレール9a,9bの内部には、無端チェーン10a,10bの一部が摺動自在に設置されており、ガイドレール9a,9bの両端下部にはガイドスプロケット11a,11aが設置され、荷台2aの幅方向の略中央部にはガイドスプロケット11b,11bが設置されている。また、ガイドスプロケット11a,11bの間にはモータ12aによって駆動される駆動スプロケット13a及びガイドスプロケット11cと,モータ12bによって駆動される駆動スプロケット13b及びガイドスプロケット11cがそれぞれ設置され、ガイドスプロケット11a,11aと駆動スプロケット13a及びガイドスプロケット11cの間には弛み防止具14a,14aが設置され、ガイドスプロケット11a,11aと駆動スプロケット13b及びガイドスプロケット11cの間には弛み防止具14b,14bが設置されている。さらに、前支柱3ではガイドスプロケット11a,11aと弛み防止具14a,14aの間及びガイドスプロケット11a,11aと弛み防止具14b,14bの間にガイドスプロケット11d,11dがそれぞれ設置されている。
また、前支柱3及び後支柱4では、ガイドレール9a,9bに、折畳金具17を介して連結されるスライダ15a,15b及び端部スライダ16a,16bからなる幌シート固定具が設置されており、端部スライダ16a,16bには無端チェーン10a,10bがそれぞれ個別に取り付けられている。
【0025】
前支柱3及び後支柱4では、荷台2aが幌シート5で完全に覆われるように、端部スライダ16a,16bとガイドスプロケット11aが荷台2よりも低い箇所に設置されている。また、前支柱3では、モータ12a,12bや駆動スプロケット13a,13bが荷台2aよりも高い箇所に設置されている。そこで、前支柱3では、ガイドスプロケット11d,11dによって無端チェーン10a,10bが荷台2aよりも高い位置に持ち上げられている。これに対し、後支柱4では、荷台2aの後方から荷物を積み下ろしする際に邪魔にならないように、モータ12a,12bや駆動スプロケット13a,13bが荷台2aよりも低い箇所に設置されているため、ガイドスプロケット11d,11dは設置されていない。
【0026】
図4(a)及び(c)に示すように、幌シート固定具を構成するスライダ15a,15b及び端部スライダ16a,16bは、幌シート5を固定支持する幌取付板18aと,この幌取付板18aに立設した状態で回転自在に支持される複数のローラ18bとからなる。なお、ローラ18bはガイドレール9a,9bの端縁に噛合している。また、スライダ15bと端部スライダ16a,16bは、ガイドレール9a,9bの幅方向に平行な軸を中心として揺動自在に連結されている。これにより、幌シート固定具は、ガイドレール9a,9bに沿って走行可能となっている。
図4(b)に示すように、折畳金具17は、スライダ15a,15bを連結するための蝶番17dが端部に設けられた2枚の連結板17a,17aが、コイルスプリング17bが内設された蝶番17cを介して揺動自在に連結された構造となっている。そして、この折畳金具17によって、隣接する2つのスライダ15a,15a及びスライダ15a,15bは、ガイドレール9a,9bの幅方向に平行な軸を中心として互いに揺動自在に連結されている。従って、無端チェーン10a,10bを循回駆動し、端部スライダ16a,16bをガイドレール9a,9bに沿って移動させてスライダ15a,15bを寄せ集めると、折畳金具17が折り畳まれる(図2又は図3参照)。その結果、幌シート5の折り目が折畳金具17によって内側から外側に押し出され、幌シート5が蛇腹状に折り畳まれる(図1(b)参照)。
【0027】
無端チェーン10a,10bの駆動機構について図5を用いて説明する。
図5(a)及び(b)は前支柱3に設置された無端チェーン10a,10bの駆動機構の部分拡大図であり、(c)は弛み防止具14bの部分拡大図である。なお、以下は前支柱3に設置された駆動機構についての説明であるが、前述のガイドスプロケット11dの作用を除けば、後支柱4に設置された駆動機構についても同様であるため、後支柱4に設置された駆動機構については、その説明を省略する。また、弛み防止具14aの構造は弛み防止具14bと同一であるため、弛み防止具14aについての説明は省略する。
図5(a)及び(b)に示すように、前支柱3では、無端チェーン10aがガイドスプロケット11a〜11d及び駆動スプロケット13aに巻回されており、無端チェーン10bがガイドスプロケット11a〜11d及び駆動スプロケット13bに巻回されている。また、モータ12a,12bによって循回駆動される無端チェーン10a,10bは、弛み防止具14a,14b上を左右方向に摺動可能となっている。
【0028】
図5(a)において、モータ12aによって駆動スプロケット13aを矢印Bで示す向きに回転駆動すると、無端チェーン10aは矢印Aで示すように移動し、図2及び図3において端部スライダ16aは矢印Aの向きに移動する。なお、駆動スプロケット13aを矢印Bと逆の向きに回転駆動すると、無端チェーン10aは矢印Aと逆の向きに移動し、図2及び図3において端部スライダ16aは矢印Aと逆の向きに移動する。
一方、図5(b)において、モータ12bによって駆動スプロケット13bを矢印Bと逆の向きに回転駆動すると、無端チェーン10bは矢印Aと逆の向きに移動し、図2及び図3において端部スライダ16bは矢印Aと逆の向きに移動する。また、駆動スプロケット13bを矢印Bの向きに回転駆動すると、無端チェーン10bは矢印Aの向きに移動し、図2及び図3において端部スライダ16bは矢印Aの向きに移動する。
このように、無端チェーン10a,10bによって端部スライダ16a,16bが個別に操作される。そして、端部スライダ16a,16bが互いに近づく方向に移動した場合には、幌シート5が折り畳まれ、端部スライダ16a,16bが互いに離れる方向に移動した場合には、幌シート5が展開する。なお、前支柱3及び後支柱4にそれぞれ設置されたモータ12a,12bは互いに連動し、かつ、その回転速度はそれぞれの端部スライダ16a,16bの走行速度が同じになるように調整されている。
【0029】
本実施例の無端チェーン10a,10bの駆動機構をトラックの進行方向に見た場合、無端チェーン10a,10bはガイドスプロケット11bと駆動スプロケット13aに対して略「Z」を描くように巻回され、無端チェーン10bはガイドスプロケット11bと駆動スプロケット13bに対して略「Z」の逆の字を描くように巻回されている。この場合、駆動スプロケット13a,13bに巻回される無端チェーン10a,10bの角度が小さくなるため、無端チェーン10aと駆動スプロケット13a及び無端チェーン10bと駆動スプロケット13bとの噛合状態が常に安定する。すなわち、駆動スプロケット13a,13bは、回転速度を上げたり、回転方向を切り替えたりした場合でも無端チェーン10a,10bが外れ難いため、空回りが発生するおそれがない。従って、無端チェーン10a,10bの循回速度を上げるとともに、正逆の切り替えに要する時間を短縮することができる。これにより、幌シート5の開閉時間が短縮される。
また、上述の駆動機構においては、ガイドスプロケット11bが駆動スプロケット13a,13bの側方に配置される構造となっているため、駆動機構の高さを気にせずに、ガイドスプロケット11bと駆動スプロケット13a,13bの間の距離を大きくとることができる。この場合、無端チェーン10a,10bが絡まり難くなるため、走行状態が安定する。また、ガイドスプロケット11bや駆動スプロケット13a,13bの点検や保守作業が容易となる。さらに、ガイドスプロケット11bを駆動スプロケット13a,13bから離して配置した場合でも駆動機構の高さは変わらないため、荷台2の下への収納が容易である。
また、本実施例の貨物自動車用幌掛装置では、前支柱3に取り付けられる駆動スプロケット13a,13b及びモータ12a,12bが荷台2よりも高い箇所に配置されているため、貨物自動車から本装置を取り外すことなく、駆動スプロケット13a,13b及びモータ12a,12bの点検が可能である。従って、点検や保守作業に要する手間を省くことができる。そして、駆動スプロケット13a,13bやモータ12a,12bの故障等を早期に発見することができる。これにより、装置の安全性が高まる。
なお、本願明細書において、「ガイドスプロケット11bが駆動スプロケット13a,13bの側方に配置される」とは、本実施例のようにガイドスプロケット11bが駆動スプロケット13a,13bのほぼ真横に配置される場合だけでなく、ガイドスプロケット11bが駆動スプロケット13a,13bの斜め上方や斜め下方に配置される場合も含むものとする。
【0030】
図5(c)に示すように、弛み防止具14bは、平面視「く」の字状をなし,曲折部が前支柱3に軸支されるリンク19aと、一端がピン19dを用いて前支柱3に軸支されるとともに,他端近傍がリンク19aの一端とピン19eを介して揺動自在に連結されるアーム19bと、両端がピン19d,19fを用いて前支柱3及びリンク19aの他端にそれぞれ軸支されるコイルスプリング19cとからなる。
このような構造によれば、コイルスプリング19cによってピン19fで連結されたリンク19aの一端が矢印Dの方向に引張られるため、リンク19aが矢印Cの向きに回転し、ピン19eで連結された他端が持ち上げられる。そして、アーム19bが矢印Eの向きに回転し、無端チェーン10a,10bが所定量持ち上げられる。その結果、無端チェーン10a,10bがガイドスプロケット11a〜11d及び駆動スプロケット13a,13bに押しつけられる。これにより、各スプロケットに対して無端チェーン10a,10bが確実に噛合することになる。従って、高速回転時や回転方向の切り替え時における駆動スプロケット13a,13bの空回りを防止して、無端チェーン10a,10bの走行状態をより一層安定させることが可能である。
なお、本実施例において、アーム19bと無端チェーン10a,10bとの接触面積は小さいため、両者の間に発生する摩擦力は小さく、従って、弛み防止具14a,14bによって無端チェーン10a,10bの走行が阻害されることはない。
【0031】
次に、支持枠7の構造について図6を用いて詳しく説明する。
図6(a)及び(b)は支持枠7の外観斜視図であり、(c)は同図(a)のY−Y線矢視断面の拡大図である。
図6(a)及び(b)に示すように、支持枠7は、両端にU字管状の接続部20aを有するアーチ状の支持枠本体20と、接続部20aに内挿可能な円柱状の2本の接続部21a,21aが上面に立設されるとともに,前アオリ6a及び後アオリ6bの上端部に設けられたガイドレール6c上に設置される移動体21と、移動体21の上面に揺動可能に取り付けられたアーム22aを,支持枠本体20の接続部20aに取付板22bを介して揺動可能に取り付けられた断面コの字状のハンドル22cに,ピン22dを介して連結した高さ調節部22とからなる。すなわち、図6(a)において、アーム22aを矢印Fの方向に回転させると、支持枠本体20が矢印Gで示すように下方に移動し、図6(b)の状態となる。また、図6(b)において、アーム22aを矢印Fの逆の向きに回転させると、支持枠本体20は矢印Gの逆の向きに移動し、図6(a)の状態に戻る。すなわち、支持枠7は高さ調節部22のアーム22aを操作することで、高さを調節可能となっている。
また、図6(c)に示すように、移動体21は、上面に接続部21a,21aが設けられる移動体取付部21bと,ガイドレール6cの内壁面に当接可能に移動体取付部21bによって軸支されるローラ21c,21dとからなる。これにより、移動体21はガイドレール6cに沿って走行可能となっている。
【0032】
このような構造の貨物自動車用幌掛装置においては、幌シート5が支持枠7によって内側から支持されるため、幌シート5にたるみが発生し難い。これにより、幌シート5の上面に雨水がたまらないようにすることができる。また、荷物の積み下ろしをする際には、邪魔にならないように支持枠7を荷台2aの前方又は後方へ容易に移動させることができる。さらに、幌シート5を開閉する際に、幌シート5に干渉しないように支持枠7の高さを下げることにより、支持枠7の移動作業と幌シートの開閉動作5とを並行して行うことができる。これにより、荷台2aの天井部や側面部の全開及び全閉を効率よく行うことが可能となる。
【実施例2】
【0033】
図7(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係る貨物自動車用幌掛装置の実施例2の外観図である。なお、図7(a)は幌シート5が全閉した状態を示し、図7(b)は幌シート5の一部を折り畳んで荷台2bの天井部と左側面部を開放した状態を示している。なお、図1乃至図6に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図7(a)及び(b)に示すように、貨物自動車1bは、前輪26と後輪27を備えるトラクタ24と、このトラクタ24によってけん引されるトレーラ23とからなり、トラクタ24のシャーシ25aの後部と、トレーラ23のシャーシ25bの前部は、連結具(図示せず)を介して着脱可能に連結されている。そして、トレーラ23は、シャーシ25の後方に配設される車輪28と、トラクタ24の後輪27によって支持されており、荷台2bには、実施例1と同じ構造の貨物自動車用幌掛装置が設置されている。
【0034】
このような貨物自動車用幌掛装置においては、実施例1の貨物自動車用幌掛装置の作用及び効果が同様に発揮される。従って、本実施例の貨物自動車用幌掛装置によれば、重量物や長尺物を輸送する場合においても荷台の天井部や側面部の全開及び全閉を効率よく行うことが可能である。
なお、本実施例では、セミトレーラ方式の貨物自動車について説明しているが、本発明の貨物自動車用幌掛装置は、これに限定されるものではなく、フルトレーラ方式の貨物自動車にも同様に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
請求項1乃至請求項4に記載された発明は、幌で覆われた積荷を自動車で輸送する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1a,1b…貨物自動車 2a,2b…荷台 3…前支柱 3a…目隠し用板 3b…梁 4…後支柱 4a…開口部 5…幌シート 6a…前アオリ 6b…後アオリ 6c…ガイドレール 7…支持枠 8…後扉 9a,9b…ガイドレール 10a,10b…無端チェーン 11a〜11d…ガイドスプロケット 12a,12b…モータ 13a,13b…駆動スプロケット 14a,14b…弛み防止具 15a,15b…スライダ 16a,16b…端部スライダ 17…折畳金具 17a…連結板 17b…コイルスプリング 17c,17d…蝶番 18a…幌取付板 18b…ローラ 19a…リンク 19b…アーム 19c…コイルスプリング 19d〜19f…ピン 20…支持枠本体 20a…接続部 21…移動体 21a…接続部 21b…移動体取付部 21c,21d…ローラ 22…高さ調節部 22a…アーム 22b…取付板 22c…ハンドル 22d…ピン 23…トレーラ 24…トラクタ 25a,25b…シャーシ 26…前輪 27…後輪 28…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の荷台を覆う幌シートを開閉する貨物自動車用幌掛装置であって、
前記荷台の前後に立設され,両側面部及び天井部にアーチ状のガイドレールが設けられた前支柱及び後支柱と、
これら前支柱及び後支柱にそれぞれ取り付けられ,前記ガイドレールに案内されて正逆方向に循回する無端チェーンと、
この無端チェーンに取り付けられて前記ガイドレールに沿って走行する幌シート固定具と、
前記ガイドレールから露出した前記無端チェーンの一部が巻回されるガイドスプロケット及び駆動スプロケットと、
この駆動スプロケットを駆動するモータとを備え、
前記ガイドスプロケットは前記駆動スプロケットの側方に配置され、
前記無端チェーンは鋭角をなすように前記駆動スプロケットに巻回されることを特徴とする貨物自動車用幌掛装置。
【請求項2】
前記無端チェーンに対して走行方向に直交する向きに力を加える弛み防止具を備えたことを特徴とする請求項1記載の貨物自動車用幌掛装置。
【請求項3】
前記前支柱に取り付けられる前記駆動スプロケット及び前記モータの少なくともいずれか一方は前記荷台よりも高い箇所に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貨物自動車用幌掛装置。
【請求項4】
前記荷台を覆うように展開された前記幌シートを内側から支持可能に,前記荷台の左右に設けられた側板に跨設されるアーチ状の支持枠を備え、
この支持枠は高さ調節手段を有するとともに,前記側板に設けられたガイドレールに沿って走行可能な移動体がその下端に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の貨物自動車用幌掛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269782(P2010−269782A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97403(P2010−97403)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(596132411)オオシマ自工株式会社 (5)
【出願人】(593005644)JFE物流株式会社 (11)