説明

貨物船のハッチの作動機構

【課題】簡単な構造で安全性のあるハッチ作動機構を提供する。
【解決手段】貨物船のハッチの作動機構が開示されている。このハッチは、その開位置と閉位置との間を動くことのできる少なくとも1枚のハッチパネル1’、1”を有しており、該ハッチパネルは、自身に接続されると共にハッチパネルの動く方向に実質的に平行に配され、作動手段によって駆動される歯車5によって作動される歯付きラック2を有している。この発明は、該歯付きラック2の少なくとも一部に湾曲した形状を与え、歯付きラック2が歯車5と咬合している状態を保つために、該歯車5から離れてはいるが非常に近接する位置において、裏当て要素6を有することによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貨物船のハッチの作動機構に関する。ハッチは、その開位置と閉位置との間を動くことのできる少なくとも1枚のハッチパネルを有しており、該ハッチパネルは、自身に接続されると共にハッチパネルの動く方向に実質的に平行に配された歯付きラックを有している。この歯付きラックは歯車によって作動され、その歯車は作動手段によって駆動される。
【0002】
したがって、この発明は、特に、作動機構によって貨物船の複数枚のハッチパネルを開閉することに関する。特に、複数枚のハッチパネルを閉じている間であってハッチパネル間のシール部材を圧縮しなければならない場合と、複数枚のハッチパネルを開いている間であってハッチパネルがその駆動位置に持ち上げられなければならない場合とには、それぞれ大きな力が必要とされる。
【背景技術】
【0003】
ハッチ作動機械は、従来から、複数枚のハッチパネルの上昇/降下と、実際にハッチパネルを駆動するのとで別個の作動装置を用いてきた。
【0004】
ハッチパネルの上昇/閉鎖動作は、例えば、複数枚のハッチパネルの隣接する2枚のハッチパネル毎にシリンダによって作動される一対のレバー機構を使用するか、一対のハッチパネル毎に8つの車が使用されるホイールリフト機構を用いて行われる。
【0005】
さらに、複数枚のハッチパネルの駆動は、例えば、歯付きラック/歯車駆動機構によって、一般に行われてきた。ハッチパネルが一対の平滑なレール上を走行する車に乗って移動ことができるので、その機構は小さな力を発生し、また、最小限の駆動力しか必要としない。
【0006】
複数枚のハッチパネルの固定は、従来から、各パネルについて多数個を必要とする別々の手動式ロック又は固定ピンによってなされてきた。
【0007】
他の問題にもまして、従来技術のこれら諸態様は、複数枚のハッチパネルを上昇/降下させるのと、それらを駆動するのとに別個の装置を必要とすることによってその実施が困難になっている。さらにまた、船の乗組員が複数枚のハッチパネルを固定するというもう1つの作業を怠ると、航行中にハッチのパネルが偶発的に開いてしまい、パネルの耐候性が劣化していると、積み荷を完全に駄目にしてしまうほどの損害を与えてしまう場合がある。最悪の場合、ハッチパネルが開いてしまうことによって、船全体の安全性が損なわれてしまうこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、貨物船のハッチカバーのハッチパネル用の、前記問題のない新しい型の作動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による作動機構は、歯付きラックの少なくとも一部が湾曲した形状を有していることと、歯付きラックが歯車と咬合している状態を保つために、前記歯車から離れてはいるが非常に近接する位置において、裏当て要素を有していることによって特徴付けられる。
【0010】
この発明による作動機構の好ましい態様は、前記裏当て要素が、その回転軸が前記歯車の回転軸と実質的に平行である中間車であることと、該裏当て要素が歯付きラックを挟んで前記歯車の反対側に取り付けられていることとによって特徴付けられる。
【0011】
この発明による作動機構の他の好ましい態様は、前記歯車と裏当て要素とが、船体に枢軸回動可能に接続されている支持枠に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明による作動機構のさらに別の好ましい態様は、前記歯付きラックがハッチパネルの先端辺/後端辺の中心点と実質的に一致する点に取り付けられており、歯付きラックの湾曲部がハッチパネルの後端辺の外側に位置していることを特徴とする。
【0013】
この発明の他の好ましい態様は、添付の請求項5及び6に開示されている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の効果の1つとして、全ての駆動機能(上昇/降下及び駆動)を単一の低動力作動装置によって処理することができ、各ハッチパネルについて2基以上の作動装置を必要としないことが挙げられる。さらに、この発明によると、ハッチの固定/固定解除は、怠られることのある別の作業段階を必要としなくなる。この発明による作動機構は水力又は電気的手段のいずれかによって駆動することができる。さらに、この発明によると、ハッチの取り付けとメンテナンスとを簡単にすることができる。この発明による作動機構は、経費的に有利であると共に操作における信頼性の高い単純な構造物であるという特徴も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、添付の図面を参照しながら、好適な態様の助けを借りて、この発明をより詳細に検討する。
【0016】
図1A及び1Bを参照すると、これらの図には、閉鎖位置にある、この発明による作動機構を備えた貨物船のハッチカバー1が示されている。このハッチカバー1は2枚のハッチパネル1’及び1”を有している。この2枚のハッチパネルには、湾曲している端部を除き、主に真っ直ぐな形状の歯付きラック2が取り付けられている。作動機構は、さらに、支持枠4を有し、この支持枠4には歯車5と前記歯付きラックと接触して動作する裏当て要素6とが取り付けられている。この裏当て要素6は適切な機能的滑動要素又は中間車(中間車は線図に示されている。これによって、本明細書のこの後の部分で、裏当て要素が一般に中間車と称されることがある。)のような回転部材であってもよい。この支持枠4は、枢軸ピン7によって船体に接続されている。この好適な態様において、歯付きラック2は、ハッチパネル1’及び1”の前端辺/後端辺のほぼ中心点に取り付けられ、一方、歯付きラックの湾曲部は歯付きラックの後端辺の外側に位置している。この記載において、「ハッチパネルの後端辺」という用語は、相互に最も離れた位置にある、2枚のパネル1’、1”の端辺を意味している。また、前端辺は、ハッチカバー1が完全に閉じた位置にあるときに(図1A及び1Bを参照されたい)、(シール部材をその間に挟んで)相互に合わさる端辺のことである。
【0017】
ハッチパネルの開動作中であって歯付きラック2の湾曲部の背面8が中間車6によって裏当てされている場合と、ハッチパネルの閉動作中であって歯付きラック2の湾曲部が歯車5によって裏当てされている場合とには、水力モータや電気モータなどのような作動装置が歯車5を駆動する。結果として、歯付きラックの直線部分に沿って与えられ、ハッチパネルの直線的な動きの部分を駆動する動力に比べて、歯付きラックの終端部を湾曲させることによって、ハッチパネルに与える動力を5倍から8倍に増加させることができる。実際は、歯車5が歯付きラック2に沿って回転するにつれ、歯車5に駆動されて動かされる。この機構がそのくさび増力効果領域内、即ち、歯付きラックの湾曲部に沿って動作するときには、ハッチパネル1は比較的ゆっくりした速度で動く。
【0018】
図2A及び2Bには、ハッチパネル1’、1”がわずかに開かれている状態、即ち、相互に離れている状態が示されている。この段階で、中間車6と歯車5とが歯付きラックの湾曲部の終わりまで動いてきて、歯付きラックの直線部の始まりに近付いて行くように、支持枠4が回転してきている。図3A及び3Bには、ハッチパネルが完全に開いた位置にある、最終的な状態が示されている。また、ハッチパネルが閉じるときには、機構は反対に動作する。
【0019】
その閉鎖位置においては(図1A参照。)、歯付きラックの軸がハッチパネルの動く方向に垂直になる点で歯車5と中間車6とが歯付きラックを留めて動かなくするので、この発明によるハッチカバーの作動機構は、別個の固定用作動機を必要とすることなく、自動的にハッチカバーのパネル1’、1”を固定する。明らかに、別個のモータ駆動ブレーキ等を使用して歯車5の動きを停止させることも可能であり、このようなモータ駆動ブレーキの使用によってハッチパネルを中間の位置で固定することもできる。
【0020】
図4には、図1〜3に示されている態様で採用されている作動機構が拡大して示されている。しかしながら、図5に示されているような、ハッチパネルが動く方向に直交するように配された2本のスライドレール9上を動くことのできるそり3に歯車5と中間車6とが取り付けられた形態のものに作動機構を代えることもできる。このように、この形態は前記態様に記載の枢軸回動する支持枠4に代えることができる。また、枢軸点の位置と機構のサイズ/位置とは変更することができる。
【0021】
当業者には、この発明が先に議論した好ましい態様によって限定されず、添付の請求項の範囲と精神の範囲内で変えることができるのは、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、ハッチパネルが閉位置にあるときの、この発明による作動機構を備えた貨物船のハッチを示している。
【図1B】図1Bは、図1Aに示されている状態の側面図である。
【図2A】図2Aは、ハッチパネルがわずかに開いた位置へと駆動された状態における、図1Aの構造物を示している。
【図2B】図2Bは、図2Aに示されている状態の側面図である。
【図3A】図3Aは、全ハッチパネルが完全に開いた位置へと駆動された状態における、図2Aと同じ構造物を示している。
【図3B】図3Bは、図3Aに示されている状態の側面図である。
【図4】図4は、この発明による作動機構の好適な一態様を示している。
【図5】図5は、この発明による作動機構の他の好適な態様を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船のハッチ(1)の作動機構であって、その開位置と閉位置との間を動くことのできる少なくとも1枚のハッチパネル(1’、1”)を有しており、該ハッチパネルは、自身に接続されると共にハッチパネルの動く方向に実質的に平行に配され、作動手段によって駆動される歯車(5)によって作動される歯付きラック(2)を有するハッチの作動機構において、該歯付きラック(2)の少なくとも一部が湾曲した形状を有しており、歯付きラック(2)が歯車(5)と咬合している状態を保つために、該歯車(5)から離れてはいるが非常に近接する位置において、裏当て要素(6)を有することを特徴とする作動機構。
【請求項2】
前記裏当て要素(6)が、その回転軸が前記歯車(5)の回転軸と実質的に平行である中間車であり、該裏当て要素(6)が歯付きラック(2)を挟んで前記歯車(5)の反対側に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の作動機構。
【請求項3】
前記歯車(5)と裏当て要素(6)とが、船体に枢軸回動可能に接続されている支持枠(4)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の作動機構。
【請求項4】
前記歯付きラック(2)がハッチパネル(1’、1”)の先端辺/後端辺の中心点と実質的に一致する点に取り付けられており、歯付きラックの前記湾曲部がハッチパネルの後端辺の外側に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の作動機構。
【請求項5】
その湾曲部の終端部における前記歯付きラック(2)の接線が、該歯付きラックの直線部の軸に関して約90゜の角度をなすことを特徴とする、請求項3に記載の作動機構。
【請求項6】
前記歯車(5)と支持枠(6)とが、前記ハッチパネル(1’、1”)の動く方向に対して垂直に動くことのできるそり(3)に取り付けられ、この垂直方向のそりの動きを支持する複数のスライドレール(9)が船体に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の作動機構。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−1338(P2008−1338A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−248984(P2006−248984)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(500412323)