説明

貯湯タンクユニット

【課題】貯湯タンク内の圧力が所定値以上になったときに開弁する圧力逃がし弁の出口に接続される排水ホースを外装ケーシングの底板の下方に引き出すものにおいて、排水ホースの引き出し位置を貯湯タンクユニットの設置場所と排水溝の埋設個所との位置関係に応じて変更できるようにする。
【解決手段】貯湯タンク2と、貯湯タンクを収納する外装ケーシング3とから成り、外装ケーシングの底板31の前部と後部とに上方にのびるタンク支持片31bを立設し、これらタンク支持片を貯湯タンクの下部周面に固定して、貯湯タンクを外装ケーシング内に支持するようにした貯湯タンクユニットにおいて、底板31に、タンク支持片31bを立設した前部と後部との間に位置させて、横方向に長手に連続する開口31cが形成され、この開口31cを閉塞する発泡樹脂製の蓋板38が底板31に着脱自在に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクと、貯湯タンクを収納する外装ケーシングとから成る貯湯タンクユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の貯湯タンクユニットでは、外装ケーシングの底板の前部と後部とに上方にのびるタンク支持片を立設し、これらタンク支持片を貯湯タンクの下部周面に固定して、貯湯タンクを外装ケーシング内に支持するようにしている。そして、従来、外装ケーシングの底板は、タンク支持片を立設した前部から後部に亘って連続する1枚の板材で構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、外装ケーシング内には、各種の配管や弁が設けられている。これら弁の1つとして、貯湯タンク内の圧力が所定値以上になったときに開弁する圧力逃がし弁が有る。そして、圧力逃がし弁の出口に接続した排水ホースを、外装ケーシングの底板の1箇所に形成した透孔を通して底板の下方に引き出し、貯湯タンクユニットを設置した家の敷地に埋設した排水溝に挿入している。
【0004】
然し、これでは、外装ケーシングの底板からの排水ホースの引き出し位置が制限され、貯湯タンクユニットの設置場所によっては、排水溝までの排水ホースの引き回しが複雑になってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−278544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、外装ケーシングの底板からの排水ホースの引き出し位置を貯湯タンクユニットの設置場所と排水溝の埋設個所との位置関係に応じて変更できるようにした貯湯タンクユニットを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、貯湯タンクと、貯湯タンクを収納する外装ケーシングとから成り、外装ケーシングの底板の前部と後部とに上方にのびるタンク支持片を立設し、これらタンク支持片を貯湯タンクの下部周面に固定して、貯湯タンクを外装ケーシング内に支持するようにした貯湯タンクユニットであって、貯湯タンク内の圧力が所定値以上になったときに開弁する圧力逃がし弁の出口に接続される排水ホースを外装ケーシングの底板の下方に引き出すものにおいて、外装ケーシングの底板に、タンク支持片を立設した前部と後部との間に位置させて、横方向に長手に連続する開口が形成され、この開口を閉塞する発泡樹脂製の蓋板が外装ケーシングの底板に着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外装ケーシングの底板に形成した開口の横方向全範囲の任意の位置で排水ホースを下方に引き出すことが可能である。そして、貯湯タンクユニットの設置現場において、外装ケーシングの底板から一旦蓋板を取り外して、排水溝の埋設個所に近い蓋板の部分に孔を形成した後、蓋板を底板に形成した開口を閉塞するように装着し、排水ホースを蓋板に形成した孔に挿通して底板の下方に引き出すことができる。従って、外装ケーシングの底板からの排水ホースの引き出し位置を貯湯タンクユニットの設置場所に合わせて排水溝の埋設個所に近い位置に変更でき、排水溝までの排水ホースの引き回しが複雑になることを回避できる。また、蓋板は発泡樹脂製であるため、容易に孔を形成することができ、更に、底板の開口を断熱的に閉塞して、貯湯タンクや配管からの放熱ロスを低減することができる。
【0009】
また、本発明において、蓋板は、底板の下方から開口に嵌合されるように形成され、底板の下面に、開口内に張り出す係止位置と開口から外れた逃げ位置とに回動自在な複数の爪片が設けられ、これら爪片を係止位置に回動させることで蓋板が抜け止めされるようにすることが望ましい。これによれば、蓋板をタンク支持片に邪魔されずに容易に底板に装着でき、また、構造も簡単になってコストダウンを図る上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の貯湯タンクユニットを具備する貯湯式給湯装置の構成を示す説明図。
【図2】実施形態の貯湯タンクユニットの分解斜視図。
【図3】実施形態の貯湯タンクユニットの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の貯湯タンクユニット1を具備する貯湯式給湯装置を示している。貯湯タンクユニット1は、貯湯タンク2と、貯湯タンク2を収納する外装ケーシング3とから成る。そして、貯湯式給湯装置は、タンク水(貯湯タンク2内の水)を加熱する加熱装置たるヒートポンプユニット4を備えている。
【0012】
ヒートポンプユニット4は、冷媒を蒸発器41からコンプレッサ42と放熱器43と膨張弁44とを介して蒸発器41に戻す閉回路で構成される公知のものである。蒸発器41にはファン41aが付設されており、冷媒がファン41aにより送風される大気の熱を吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒はコンプレッサ42で圧縮されて高温高圧になり、放熱器43で放熱した後、膨張弁44で減圧されて蒸発器41に戻される。また、貯湯タンク2の底部から頂部にヒートポンプユニット4の放熱器43を介してタンク水を循環させるタンク水循環路45を設けている。タンク水循環路45には、ヒートポンプユニット4側に位置させて、循環ポンプ45aが介設されている。そして、循環ポンプ45aの作動により、貯湯タンク1の底部から低温のタンク水が放熱器43に供給され、放熱器43における冷媒との熱交換でタンク水が加熱されて貯湯タンク2の頂部に戻されるようにしている。ヒートポンプユニット4及び循環ポンプ45aは、貯湯タンク2の上部のタンク水の温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出温度が所定温度を下回ったときに、作動される。
【0013】
貯湯タンク2は、上下方向に長手の容量が例えば50Lのタンクである。貯湯タンク2の底部には給水路21が接続され、頂部には出湯路22が接続されている。給水路21には、水道管21aからの冷水が減圧弁21bを介して供給される。また、減圧弁21bの下流側の給水路21の部分から分岐する分岐給水路21cが設けられており、この分岐給水路21cと出湯路22とを、給湯栓等の給湯端末23aに連なる給湯路23の上流端に合流して接続している。そして、貯湯タンク2から出湯路22を介して出湯される温水と、分岐給水路21cを介して供給される冷水との混合比を湯水混合手段24により調節し、設定温度の湯が給湯端末23aに供給されるようにしている。
【0014】
湯水混合手段24は、出湯路22に介設した第1流量調節弁24aと、分岐給水路21cに介設した第2流量調節弁24bとで構成されている。また、出湯路22に流れる温水の温度を検出する第1温度センサ24cと、分岐給水路21cに流れる冷水の温度を検出する第2温度センサ24dと、給湯路23に流れる湯の温度を検出する第3温度センサ24eとを設けている。そして、第1と第2の各温度センサ24c,24dの検出温度に基づいて第1と第2の各流量調節弁24a,24bをフィードフォワード制御すると共に、第3温度センサ24eの検出温度が設定温度になるように各流量調節弁24a,24bをフィードバック制御して、温水と冷水の混合比を自動調節し、設定温度の湯が給湯端末23aに供給されるようにしている。
【0015】
また、給湯路23には、バイパス弁23bが介設されると共に、このバイパス弁23bと並列に、バーナ(図示せず)を加熱源とする給湯熱源機5が接続されている。そして、出湯路22に出湯される温水の温度が設定温度未満になったときは、バイパス弁23bを閉弁して、給湯熱源機5を作動させ、給湯熱源機5により水を設定温度に加熱するようにしている。
【0016】
また、貯湯タンク2内に気泡が貯まって圧力が過度に上昇することを防止するために、貯湯タンク2内の圧力が所定値以上になったときに開弁する圧力逃がし弁25を備えている。圧力逃がし弁25は、貯湯タンク2の頂部に直付けすることも可能であるが、本実施形態では、タンク水循環路45に、貯湯タンク2の頂部側の端部に位置させて、圧力逃がし弁25を接続している。圧力逃がし弁25の出口には排水ホース25aが接続されている。
【0017】
図2を参照して、貯湯タンク2は、断熱材2aにより被覆した状態で外装ケーシング3内に収納されている。尚、図2では、図面簡略化のために、各種配管、弁は省略している。また、図2に示す如く、貯湯タンク2の頂部には、出湯路22を接続する出湯口2bと、タンク水循環路45を接続する戻り口2cとが開設されている。
【0018】
外装ケーシング3は、底板31と、底板31上に設けたフレーム枠32と、フレーム枠32にこれを覆うようにして取付けられる、前板33、後板34、左右の側板35L,35R及び天板36とで構成されている。前板33と後板34は、夫々上下に2分割されている。フレーム枠32は、底板31の前後左右の四隅に立設した4本の縦フレーム32aと、これら縦フレーム32の上端間を連結する上フレーム32bと、前側の左右の縦フレーム32a,32aの上下方向中間部間に横設した前横フレーム32cと、後側の左右の縦フレーム32a,32aの上下方向中間部間に横設した後横フレーム32dと、左右各側の前後の縦フレーム32a,32aの下部間に取り付けた補強板32eとで構成されている。
【0019】
図2及び図3を参照して、底板31の下面の前後左右の四隅には脚部31aが垂設されている。更に、底板31の前部中央部と後部の左右2箇所には、上方にのびる計3本のタンク支持片31bが立設されている(図3参照)。そして、これらタンク支持片31bを貯湯タンク2の下部周面に固定して、貯湯タンク2を外装ケーシング3内に支持するようにしている。また、上フレーム32bに、貯湯タンク2の頂部の戻り口2cを嵌合させるクロスメンバ32fを取り付けて、貯湯タンク2の振れを生じないようにしている。
【0020】
右側の側板35Rの下部には、給水路21に水道管21aを接続する給水接続口35aと、外装ケーシング3の外部の給湯路23となる給湯配管23cを接続する給湯接続口35bと、給湯熱源機5の流入側配管5aと流出側配管5bを夫々バイパス弁23bの上流側と下流側の給湯路23の部分に接続する熱源機用の往き接続口35cと戻り接続口35dとが設けられている。また、左側の側板35Lの下部には、外装ケーシング3の外部のタンク水循環路45となる、ヒートポンプユニット4に対する往き管45bと戻り管45cとを夫々接続する循環路用の往き接続口35eと戻り接続口35fとが設けられている。
【0021】
また、右前側の縦フレーム32aの後面には、前横フレーム32cの上方に位置させて、電子制御基板37aを収納固定する電装ボックス37がビス止めされている。電装ボックス37には、その下板部から前方にのびる舌片部37bが形成されている。そして、舌片部37bの前端に下方に屈曲する爪部37cを形成し、この爪部37cを前横フレーム32cに形成したスリット32gに係合させている。これによれば、舌片部37bが縦フレーム32aと前横フレーム32cとを連結するコーナー部材として機能し、フレーム枠32の剛性が向上する。
【0022】
ところで、圧力逃がし弁25の出口に接続した排水ホース25aは、外装ケーシング3の底板31の下方に引き出して、貯湯タンクユニット1を設置した家の敷地に埋設した排水溝に挿入する必要がある。そこで、本実施形態では、底板31からの排水ホース25aの引き出し位置を貯湯タンクユニット1の設置場所と排水溝の埋設個所との位置関係に応じて変更できるように、以下の如く構成している。
【0023】
即ち、底板31に、タンク支持片31bを立設した前部と後部との間に位置させて、横方向に長手に連続する開口31cを形成し、この開口31cの横方向全範囲の任意の位置で排水ホース25aを下方に引き出すことができるようにしている。但し、開口31cが開放されたままであると、開口31cから外装ケーシング3内に外気が侵入して、貯湯タンク2や配管からの放熱ロスを生じやすくなり、更には、外装ケーシング3内に小動物が侵入してしまう。
【0024】
そこで、開口31cを閉塞する発泡ウレタン等の発泡樹脂製の蓋板38を設け、この蓋板38を底板31に着脱自在に装着している。そして、貯湯タンクユニット1を設置する際は、設置現場において、外装ケーシング3の底板31から一旦蓋板38を取り外して、排水溝の埋設個所に近い蓋板38の部分に孔を形成した後、蓋板38を底板31に開口31cを閉塞するように装着し、排水ホース25aを蓋板38に形成した孔に挿通して底板31の下方に引き出す。
【0025】
これによれば、底板31からの排水ホース25aの引き出し位置を貯湯タンクユニット1の設置場所に合わせて排水溝の埋設個所に近い位置に変更でき、排水溝までの排水ホース25aの引き回しが複雑になることを回避できる。また、蓋板38は発泡樹脂製であるため、容易に孔を形成することができると共に、底板31の開口31cを断熱的に閉塞して、貯湯タンク2や配管からの放熱ロスを低減することができ、更に、外装ケーシング3内への小動物の侵入も阻止することができる。
【0026】
尚、本実施形態において、蓋板38は、底板31の開口31cに下方から嵌合されるように形成されている。また、底板31の左右両側部の下面に、開口31c内に張り出す係止位置(図3に実線で示す位置)と開口31cから外れた逃げ位置(図3に仮想線で示す位置)とに回動自在な複数の爪片31dを取り付けている。そして、底板31の下方から開口31cに蓋板38を嵌合させた後、爪片31dを逃げ位置から係止位置に回動させて、蓋板38を抜け止めするようにしている。
【0027】
これによれば、蓋板38をタンク支持片31bに邪魔されずに底板31に装着でき、蓋板38の装着作業が容易になる。また、構造も簡単になってコストダウンを図る上で有利である。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態は、底板31の開口31cと同一の大きさの蓋板38を開口31cに嵌合させているが、開口31cだけでなく底板31を全面的に覆うように蓋板を形成することも可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、タンク水を加熱する加熱装置としてヒートポンプユニット4を用いているが、太陽熱パネルや燃料電池等のヒートポンプユニット4以外の加熱装置を用いることも可能である。また、上記実施形態は、貯湯式給湯装置に用いる貯湯タンクニット1に本発明を適用したものであるが、タンク水を温水暖房端末に供給する貯湯式暖房装置に用いる貯湯タンクユニットにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1…貯湯タンクユニット、2…貯湯タンク、25…圧力逃がし弁、25a…排水ホース、3…外装ケーシング、31…底板、31b…タンク支持片、31c…開口、31d…爪片、38…蓋板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、貯湯タンクを収納する外装ケーシングとから成り、外装ケーシングの底板の前部と後部とに上方にのびるタンク支持片を立設し、これらタンク支持片を貯湯タンクの下部周面に固定して、貯湯タンクを外装ケーシング内に支持するようにした貯湯タンクユニットであって、
貯湯タンク内の圧力が所定値以上になったときに開弁する圧力逃がし弁の出口に接続される排水ホースを外装ケーシングの底板の下方に引き出すものにおいて、
外装ケーシングの底板に、タンク支持片を立設した前部と後部との間に位置させて、横方向に長手に連続する開口が形成され、この開口を閉塞する発泡樹脂製の蓋板が外装ケーシングの底板に着脱自在に装着されることを特徴とする貯湯タンクユニット。
【請求項2】
前記蓋板は、前記底板の下方から前記開口に嵌合されるように形成され、底板の下面に、開口内に張り出す係止位置と開口から外れた逃げ位置とに回動自在な複数の爪片が設けられ、これら爪片を係止位置に回動させることで蓋板が抜け止めされることを特徴とする請求項1記載の貯湯タンクユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153775(P2011−153775A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16338(P2010−16338)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】