説明

貯湯式給湯機

【課題】組み立てやすく、メンテナンスの簡単な断熱材構造の給湯機を提供する。
【解決手段】加熱手段2で加熱された温水を貯湯する略円筒状の貯湯タンク7と、該貯湯タンク7を包囲する略角筒状の外装ケース1と、前記貯湯タンク7と外装ケース1との間の空間に前記貯湯タンク7の保温、断熱を行う断熱材を備えたものに於いて、前記断熱材は発泡断熱材26と真空断熱材29で形成し、前記発泡断熱材26は貯湯タンク7の側面と外装ケース1の側面が近接する部分に凹部27を設け、該凹部27の左右には一対の溝28を備え、該溝28に上下方向からスライドして取り付けられる板状の真空断熱材29を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気温水器やヒートポンプ式給湯機等の湯水を貯湯する収容タンクを備える貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の給湯機では、断熱性の優れた断熱材として、真空断熱材を使用するものがあった。これは容器中を真空或いは減圧にすることによって熱伝導率を更に低下させたものであって、極めて高い断熱性を有する。この真空断熱材の構造及び材料として、金属・プラスチックスラミネートフィルムやプラスチック多層フィルムなどのガスバリヤー性の高い容器中に、パーライト、シリカ等の無機系微粒状断熱粉体やウレタンフォーム、ハニカム等を吸着剤とともにコア材として入れ真空封止したものがあった。(例えば、特許文献1参照)
また、図 で示すように、真空断熱材Aは、円筒状の貯湯タンクBが、角筒状の外装ケースCの側面と最近接する部位を中心として、貯湯タンクBの形状に沿うように貼り付けられ、シート状断熱材Dは、外装ケースCの角部内側の空間において、十分な厚みを確保して配設することで、真空断熱材Aの使用量を削減しながら、貯湯タンクBの断熱性能を低下させることなく、かつ省スペース化を実現し、低コストで実用性の高い貯湯タンクBを提供できるものであった。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平2−772293号公報
【特許文献2】特開2005−226965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、真空断熱材の真空部を構成するフィルム部分が傷付きやすく、傷付き孔が空き真空状態が破壊されることで、断熱効果が10分の1に低下するものであり、又傷付きやすいことにより、取り扱いが難しく、組立性に大きな問題を有するものであった。
また、組み立て作業では、真空断熱材は貯湯タンクに直接接着やテープ止めされ、発泡状断熱材とは別々に取り付けられていたので組み立て作業の作業性が悪くコストアップの要因に成っていた。また、接着剤やテープによる取付は、貯湯タンクのメンテナンス作業を難しくするものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明はこの点に着目し上記欠点を解決する為、特にその構成を、加熱手段で加熱された温水を貯湯する略円筒状の貯湯タンクと、該貯湯タンクを包囲する略角筒状の外装ケースと、前記貯湯タンクと外装ケースとの間の空間に前記貯湯タンクの保温、断熱を行う断熱材を備えたものに於いて、前記断熱材は発泡断熱材と真空断熱材で形成し、前記発泡断熱材は貯湯タンクの側面と外装ケースの側面が近接する部分に凹部を設け、該凹部の左右には一対の溝を備え、該溝に上下方向からスライドして取り付けられる板状の真空断熱材を備えたものである。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、発泡断熱材の凹部に板状の真空断熱材をスライドして取り付けるので、極めて取り扱いが容易で、より組立やすく作業効率も上がるものであり、又発泡断熱材と真空断熱材の組み合わせにより、充分な断熱効果が得られると共にコンパクト化を実現するものである。
また、、真空断熱材の固定には接着剤やテープを使用することもなく修理等のメンテナンス時に断熱材を着脱する場合でも簡単に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は貯湯タンクユニットを構成する外装ケース、2はヒートポンプユニットよりなる加熱手段、3は給湯栓、4はリモートコントローラ、5は浴槽、6は電源である。
【0007】
前記外装ケース1内には、湯水を貯湯する貯湯タンク7と、貯湯タンク7の上部に接続された出湯管8と、貯湯タンク7の下部に接続された給水管9と、出湯管8からの高温水と給水管9から分岐されたバイパス管10からの低温水とを混合するミキシング弁11と、ミキシング弁11の下流に接続された給湯管12と、給湯管12に設けられた給湯温度センサ13と、給湯管11に設けられた給湯流量センサ14と、給水管9に設けられた給水温度センサ15と、給湯管12から分岐され浴槽5に接続された湯張り管16と、この湯張り管16の開閉を行う湯張り弁17と、湯張り管16を流れる流量を積算する湯張り流量センサ18と、出湯管8から分岐して接続された貯湯タンク7の過圧を逃す過圧逃し弁19と、給水管9に設けられた給水圧を減圧する減圧弁20と、貯湯タンク7の側面上下方向に複数設けられた貯湯温度センサ21と、この外装ケース1内の各種機器の制御を行うマイクロコンピュータを主に構成される給湯制御部22と、貯湯タンク7と加熱手段2とを接続して湯水を循環させるヒーポン往き管23とヒーポン戻り管24からなる加熱循環回路25とを備えて構成されている。
【0008】
26は貯湯タンク7の外郭のほぼ全面を覆い保温・断熱を行う、耐熱性発泡ポリスチレンからなる発泡断熱材である。
前記発泡断熱材は貯湯タンク7の側面と外装ケース1の側面が近接する部分に縦長の凹部27を設け、この凹部27の左右には対向する一対の溝28を設けている。
29は板状で縦長の真空断熱材で、横方向の寸法が前記一対の溝28の寸法よりも稍小さく設けられ、前記溝28に上下方向からスライドして取り付けられることで、極めて取り扱いが容易で、より組立やすく作業効率も上がるものであり、発泡断熱材26と真空断熱材29の組み合わせにより、充分な断熱効果が得られると共にコンパクト化を実現するものである。
【0009】
前記真空断熱材29は、芯材と、該芯材を覆うガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材とからなり、その内部圧力が1Pa〜200Paとなるように減圧し、密閉封止したもので、公知の方法で作製出来るものである。
前記貯湯タンク7の上面および底面は略半球形に形成され、この上面および底面に沿って前記発泡断熱材26で形成される蓋状発泡材30が設けられ、この蓋状発泡材30の端部に備えた溝31に前記真空断熱材29の端部を挿入して、この真空断熱材29の上下を固定するものであるので、真空断熱材29の固定には接着剤やテープを使用することもなく修理等のメンテナンス時に断熱材26・29・30を着脱する場合でも簡単に行うことができるようになるものである。
【0010】
前記加熱手段2は、二酸化炭素冷媒を圧縮するコンプレッサー32と、凝縮器としての冷媒−水熱交換器33と、減圧器34と、蒸発器としての空気熱交換器35よりなるヒートポンプ回路36と、空気熱交換器35に送風する送風機37と、加熱循環回路25途中に設けられた能力可変の循環ポンプ38と、加熱循環回路25の冷媒−水熱交換器33入口側に設けられ、冷媒−水熱交換器33に流入する湯水の温度を検出する熱交入口温度センサ39と、加熱循環回路25の冷媒−水熱交換器33出口側に設けられ、冷媒−水熱交換器33から流出する湯水の温度を検出する熱交出口温度センサ40と、この加熱手段2の制御を行うマイクロコンピュータを主に構成される加熱制御部41とを備えて構成されている。
【0011】
ここで、前記電源6は時間帯別電灯であり、夜間(ここでは23時から翌7時まで)が割安な電力料金設定となっているもので、この割安な夜間電力を用いて夜間に一日に必要な貯湯熱量を沸かし上げて使用するものであり、また、この時間帯別電灯では昼間(7時から23時まで)にも電力は供給され、残湯量が少なくなったときに追加の沸き増しが行われるものである。なお、前記電源6は給湯制御部22に接続され、この給湯制御部22からリモートコントローラ4および加熱制御部41に有線にて通信信号が重畳されて電力供給されるものである。
【0012】
そして、夜間時間帯になると前記給湯制御部22が翌日に必要な貯湯熱量を演算し、この目標となる貯湯熱量を夜間時間帯の終了時までに沸き上げるよう加熱制御部41に指示してヒートポンプ回路36を作動させ、加熱循環回路25の循環ポンプ38を駆動開始する。そして、循環ポンプ38の駆動により貯湯タンク7下部から取り出された湯水がヒーポン往き管23を通り加熱手段2の冷媒−水熱交換器33に流入して加熱され、ヒーポン戻り管24を介して貯湯タンク7の上部に戻されることにより高温の湯が貯湯される。
又このヒーポン往き管23については、発泡断熱材26及び真空断熱材29による断熱からは外れており、加熱手段2へ供給される水の温度をわざと上げないことで、COPを向上させるようにしているものである。
【0013】
更に貯湯タンク7の側面に設けられた貯湯温度センサ21が所定の量の高温水が貯湯されたことを検出するか、または、熱交入口温度センサ39が所定温度以上を検出すると、給湯制御部22が加熱制御部41へ加熱動作の停止を指令し、ヒートポンプ回路36と循環ポンプ38の作動が停止され、夜間時間帯の終了時までに貯湯動作を終了するものである。
【0014】
なお、ここで貯湯タンク7内に貯湯される熱量は給湯制御部22により、過去数日分の給湯負荷から適切と思われる熱量を目標貯湯熱量として算出されるもので、貯湯される湯水の温度は季節(または給水温度センサ15で検出する給水温度)および目標貯湯熱量の大小によって60℃〜90℃の範囲で変動するものである。
【0015】
前記リモートコントローラ4には給湯設定温度を設定する温度設定スイッチ42、浴槽5への湯張りを指示する湯張りスイッチ43、湯張り量を設定する湯張り量設定スイッチ44、及び給湯可能な残時間を表示させる残時間表示スイッチ45とを有した操作部46と、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部47と、これら操作部46及び表示部47を制御すると共に、前記給湯制御部22と通信を行うマイクロコンピュータを主に構成されたリモコン制御部48を備えており、通常運転時は前記表示部47に操作部46で設定された給湯設定温度や時刻情報および貯湯温度センサ21で検知する残り貯湯量等が表示されるものである。なお、前記表示部47はドットマトリクス型の液晶表示部としても良い。
【0016】
次に給湯栓3を開くと、給水管9からの給水圧により貯湯タンク7上部の高温水が出湯管8に押し出され、給湯制御部22により制御されるミキシング弁11にて、バイパス管10の低温水と給湯温度センサ13の検出する温度が、前記リモートコントローラ4の操作部46で設定された給湯設定温度になるように混合されて、給湯管12を介して給湯されるものである。
【0017】
もしも給湯量が通常よりも多くなってしまい、昼間電力時間帯にて貯湯温度センサ21で検出する残り貯湯量が少なくなったことを給湯制御部22が検知し、貯湯タンク7内に貯湯された湯の湯切れが予想される場合は、その時点にて昼間電力を利用して必要な熱量の沸き増しが行われるものである。
【0018】
次に浴槽5に湯張りを行う際は、リモートコントローラ4の湯張りスイッチ43が操作されると、給湯制御部22が湯張り弁17を開いて湯張りを開始し、湯張りを開始してからの積算流量が湯張り量に達したことを検出すると湯張り弁17を閉じて湯張りを完了するものである。
【0019】
次に図5によって、真空断熱材29と蓋状発泡材30の取付を説明すれば、発泡断熱材26と底部の蓋状発泡材30を貯湯タンク7に取付け、発泡断熱材26の凹部27左右に備えた一対の溝28の間に板状の真空断熱材29(一点鎖線)を上方から4枚矢印の様にスライドさせて取り付ける、更に上方より蓋状発泡材30を溝31に真空断熱材29の端部が差し込まれる様に取り付ける、その後断熱材26・29・30の周りに外装ケース1を取り付けるものである。
よって、極めて取り扱いが容易で、より組立やすく作業効率も上がるものであり、又発泡断熱材26と真空断熱材29の組み合わせにより、充分な断熱効果が得られると共にコンパクト化を実現するものである。
また、真空断熱材29の固定には接着剤やテープを使用することもなく修理等のメンテナンス時に断熱材26・29・30を着脱する場合でも簡単に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態の貯湯式給湯装置の概略構成図。
【図2】同要部の横断面図。
【図3】同要部の縦断面図。
【図4】同貯湯タンクと断熱材の正面図。
【図5】同真空断熱材と蓋状発泡材を取り付ける状態の説明図。
【図6】従来例の横断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 外装ケース
2 加熱手段
26 発泡断熱材
27 凹部
28 溝
29 真空断熱材
30 蓋状断熱材
31 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で加熱された温水を貯湯する略円筒状の貯湯タンクと、該貯湯タンクを包囲する略角筒状の外装ケースと、前記貯湯タンクと外装ケースとの間の空間に前記貯湯タンクの保温、断熱を行う断熱材を備えたものに於いて、前記断熱材は発泡断熱材と真空断熱材で形成し、前記発泡断熱材は貯湯タンクの側面と外装ケースの側面が近接する部分に凹部を設け、該凹部の左右には一対の溝を備え、該溝に上下方向からスライドして取り付けられる板状の真空断熱材を備えた事を特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記貯湯タンクの上面および底面は略半球形に形成され、該上面および底面に沿って蓋状発泡材が設けられ、該蓋状発泡材の端部に備えた溝に前記真空断熱材の端部が挿入される事を特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate