説明

貯湯式給湯装置

【課題】貯湯タンク内に湯水が長時間滞留することを、節水を図りつつ適切に防止することが可能な貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯式給湯装置WHの貯湯タンク1は、給水が下部からなされ、かつ出湯が上部からなされる構成であり、制御手段2は、湯水の滞留時間に関する判断を制限時間よりも短い間隔で繰り返して行ない、かつこの湯水の滞留時間に関する判断では、直前の制限時間内における積算出湯量に関するデータと、貯湯タンク1の容量に関するデータとに基づき、貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が制限時間に達したか否かが判断されるとともに、湯水の滞留時間が制限時間に達している場合には、その湯水の量も判断され、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え動作時には、制限時間に達した湯水の量、またはこれに余裕を加えた量の湯水が貯湯タンク1の上部から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクを備えている貯湯式給湯装置、さらに詳しくは、貯湯タンク内に比較的低温の湯水が長時間にわたって滞留したままになるようなことを防止し、衛生に優れたものとすることが可能な貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貯湯式給湯装置の具体例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された貯湯式給湯装置は、燃料電池の排熱を利用して加熱された温水を貯湯タンクに貯留し、この貯湯タンクから所望の給湯先に給湯を行なうことが可能とされている。このような貯湯式給湯装置においては、貯湯タンクに比較的低温の湯水が長時間滞留した場合に、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖し、湯水が飲用などに適さないものとなる虞がある。
このような虞を解消する手段としては、貯湯タンク内に貯留された湯水の滞留時間を判断し、湯水の滞留時間が所定の制限時間に達したものと判断される場合には、貯湯タンク内の湯水を入れ替えることが考えられる。特許文献1においては、そのような構成を実現するための手段として、流量センサを利用して検出される貯湯タンクからの出湯流量(単位時間当たりの流量)が所定値未満である時間を、貯湯タンク内に湯水が滞留している時間と見做している(同文献の〔0054〕を参照)。この上で、前記した時間が所定の制限時間以上継続すると、貯湯タンク内の湯水を排出し、新しい湯水と入れ替えるようにしている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
第1に、貯湯タンクからの出湯流量が所定値未満である時間を、貯湯タンク内に湯水が滞留している時間と見做す手法を採用したのでは、その判断結果が実情に沿わない場合が多い。なぜなら、貯湯タンクからの出湯流量が所定値未満であっても、貯湯タンクから出湯がなされている限りは、貯湯タンク内の一部の湯水は入れ替わるため、このような場合をも湯水の滞留時間と見做すことは適切ではないからである。また、前記従来では、貯湯タンクからの出湯流量が所定値を超えたときには、湯水が滞留していないものと判断されることとなるが、貯湯タンクからの出湯流量が所定値を超えたとしても貯湯タンク内の湯水の全量が直ちに入れ替わる訳ではなく、貯湯タンク内には滞留時間が制限時間を超えた湯水が存在する可能性はある。したがって、前記従来技術においては、貯湯タンクの湯水の滞留時間の判断に過誤が生じ易い。その結果、このような過誤判断に基づき、湯水の入れ替え動作が高い頻度で無駄に実行されたり、あるいは湯水の入れ替え動作が必要であるにも拘わらず、そのような動作が実行されないといった不具合を生じる虞がある。
【0005】
第2に、前記従来技術では、貯湯タンクに貯留された湯水のうち、滞留時間が所定の制限時間に達した湯水が、どれだけの量だけ存在するかについては、判断することが困難である。このため、貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作を実行する際には、貯湯タンク内の湯水の全量を入れ替えざるを得ないこととなる。これでは、排水量が多くなり、水資源に多くの無駄を生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−17346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、貯湯タンク内に湯水が長時間滞留することを、節水を図りつつ適切に防止することが可能な貯湯式給湯装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される貯湯式給湯装置は、貯湯タンクと、この貯湯タンク内における湯水の滞留時間を判断し、かつこの滞留時間が所定の制限時間に達したものと判断したときに、前記貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作を実行させる制御手段と、を備えている、貯湯式給湯装置であって、前記貯湯タンクとしては、内部への湯水供給が下部から行なわれ、かつ外部への出湯が上部から行なわれる構成のものが用いられており、前記制御手段は、前記貯湯タンクからの出湯量を監視しつつ、前記湯水の滞留時間に関する判断を、前記制限時間よりも短い時間間隔で繰り返して行なうように構成され、前記湯水の滞留時間に関する判断においては、この判断時の直前の前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量に関するデータと、前記貯湯タンクの容量に関するデータとに基づいて、前記貯湯タンク内の湯水の滞留時間が前記制限時間に達したか否かが判断されるとともに、湯水の滞留時間が前記制限時間に達している場合には、前記制限時間に達した湯水の量も判断され、前記貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作が実行されるときには、前記制限時間に達した湯水の量、またはこれに所定の余裕を加えた量の湯水が、前記貯湯タンクの上部から排出されるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、貯湯タンク内における滞留時間が長く、制限時間に達した湯水が存在するか否かの判断を、正確に行なうことが可能である。すなわち、貯湯タンクは、内部への湯水の供給が下部からなされ、かつ出湯が上部からなされるものであるため、基本的には、新しい湯水(滞留時間が短い湯水)は貯湯タンクの下部に存在し、上部側には滞留時間が長い湯水が存在することとなる。このような貯湯タンクにおいて、制限時間内における貯湯タンクからの積算出湯量が貯湯タンクの容量以上であれば、前記制限時間内において貯湯タンク内の湯水の全量が入れ替わっており、滞留時間が制限時間に達した湯水は存在しないものと考えることができる。また、貯湯タンクからの積算出湯量が貯湯タンクの容量未満である場合には、滞留時間が制限時間に達した湯水が貯湯タンク内に存在しているものと考えることができる。この場合、滞留時間が制限時間に達した湯水の量は、貯湯タンクからの積算出湯量と貯湯タンクの容量との差に相当する量、またはこれと略同等の量と考えることができる。本発明では、このような原理に基づき、滞留時間が制限時間に達した湯水が貯湯タンク内に存在するか否かを判断しているために、その判断は、実情に沿った正確なものとなる。その結果、本発明によれば、前記従来技術とは異なり、湯水の滞留時間が長くないにも拘わらず、湯水の入れ替え動作が高い頻度で無駄に実行されることは防止され、また湯水の滞留時間が長く、湯水の入れ替え動作が必要であるにも拘わらず、そのような動作が実行されないといった不具合が生じないようにすることができる。
第2に、本発明によれば、貯湯タンクの湯水の入れ替え動作時における排水量を少なくし、節水を図ることが可能である。すなわち、本発明では、貯湯タンクの湯水の入れ替え動作時には、前記従来技術とは異なり、貯湯タンク内の湯水の全量を排出することはなく、滞留時間が制限時間に達した湯水の量、またはこれに余裕を加えた量の湯水が排出されるだけであるために、滞留時間が短い湯水が無駄に排水されることが防止され、節水を図ることが可能である。もちろん、本発明では、貯湯タンクの湯水の入れ替え動作時には、湯水を貯湯タンクの上部から排水するために、滞留時間が長い湯水の排出を適切に行なうことが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記湯水の滞留時間に関する判断においては、前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量が前記貯湯タンクの容量以上である場合には、前記湯水の滞留時間は前記制限時間に達していないと判断される一方、そうでない場合には、前記湯水の滞留時間が前記制限時間に達していると判断され、前記積算出湯量と前記貯湯タンクの容量との差分が、前記制限時間に達した湯水の量とされる。
【0012】
このような構成によれば、湯水の滞留時間が制限時間に達しているか否かの判断、ならびに滞留時間が制限時間に達した湯水の量の算出を、簡易かつ正確に行なうことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記湯水の滞留時間に関する判断は、前記貯湯タンク内に所定温度未満の湯水領域が存在することを条件として行なわれ、かつその後に前記条件が解消され、または前記条件が解消されたことに加えてさらに所定の追加の条件が満たされたときには、前記判断は中止されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、貯湯タンク内の湯水が所定温度未満の比較的低温となって、たとえばレジオネラ菌やその他の雑菌類が繁殖する可能性が生じるような場合に限り、滞留時間が長い湯水の入れ替え動作を行なわせることが可能となる。貯湯タンク内の湯水全体が高温状態に維持されている場合には、雑菌類が繁殖する可能性は事実上なく、このような場合には湯水の入れ替えを行なう必要がないため、衛生に優れたものとしつつ、節水を図る上で、合理的である。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記制御手段が前記貯湯タンクからの出湯量を監視する動作処理は、前記制限時間よりも短い所定の時間が経過する都度、その時間内における前記貯湯タンクからの出湯量を検出して記憶部に記憶する動作処理であり、前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量は、前記記憶部に記憶された出湯量のデータに基づいて求められる。
【0016】
このような構成によれば、データ処理を容易なものとしつつ、貯湯タンクからの積算出湯量を適切に求めることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記貯湯タンクは、この貯湯タンク内に貯留された湯水を加熱するための熱交換器またはヒータを内蔵している。
【0018】
このような構成によれば、貯湯タンク内の湯水加熱が可能であることは勿論のこと、この湯水加熱に際しては、貯湯タンク内の下部側に新しい湯水が存在し、かつ上部側には滞留時間が比較的長い湯水が存在する状態が大きく崩れないようにすることができる。したがって、本発明が意図する作用を適切に得る上でより好ましい。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る貯湯式給湯装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】(a)〜(g)は、図1に示す貯湯式給湯装置の制御部のデータ処理を模式的に示す説明図である。
【図3】図1に示す貯湯式給湯装置の制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す貯湯式給湯装置の制御部の動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1に示す貯湯式給湯装置WHは、外装ケース70内に収容された貯湯タンク1、本発明でいう制御手段の一例に相当する制御部2、湯水加熱用の主熱源としてのソーラ集熱パネル3、および補助熱源機4を具備している。
【0023】
貯湯タンク1は、内部への給水が下部から行なわれ、かつ出湯が上部から行なわれる構成とされたものである。より具体的には、水道管などの給水管71から入水口10aに供給された水は、減圧弁16および流量センサSaを有する入水管10を通過し、この入水管10の先端開口部10bから貯湯タンク1内の下部に供給可能である。貯湯タンク1内の上部には、出湯管11の先端開口部11bが位置しており、この出湯管11を介して貯湯タンク1内の湯水を外部に出湯させることが可能である。
【0024】
出湯管11には、湯水入れ替え時用の排水管12が分岐接続され、また湯水混合弁V1が設けられている。排水管12は、後述する貯湯タンク1内の湯水の入れ替え動作時において排水を行なわせるための部位であり、通常時においては、この排水管12に設けられた排水弁V2は閉状態にある。湯水混合弁V1は、出湯管11内を流れる湯水と入水管10の分岐配管部13内を流れる水とを所望の比率で混合可能であり、この湯水混合弁V1を通過した湯水が出湯口11aに到達し、配管部62を介して補助熱源機4に供給される。入水管10には、開閉弁V3を有するバイパス配管部14が接続されている。このバイパス配管部14は、たとえば湯水混合弁V1が万一故障するなどして高温出湯の虞が生じた際に開閉弁V3が開状態となり、入水管10に供給された水を出湯口11aに直接導くことによって高温出湯を防止する役割を果たす。貯湯タンク1の下部には、補助排水管15が接続されている。この補助排水管15は、貯湯タンク1内の湯水の全量を排水する場合に利用され、この補助排水管15に設けられた開閉弁V4は、常時は閉状態にある。
【0025】
貯湯タンク1内には、湯水加熱手段として、たとえばコイル状管タイプの熱交換器5が設けられている。この熱交換器5の内部には、ソーラ集熱パネル3内を通過して加熱された熱媒が外部配管部30、および熱媒循環用ポンプPや膨張タンク50などを備えた内部配管部51a,51bを介して供給可能である。
【0026】
補助熱源機4は、貯湯タンク1から出湯される湯水の温度が所定の目標給湯温度よりも低い場合に、この湯水を目標給湯温度まで加熱するためのものであり、その構成は、たとえば一般のガス給湯器と同様な構成である。具体的には、補助熱源機4は、燃料ガスを燃焼させるバーナ40、このバーナ40に燃焼用空気を供給するファン41、バーナ40によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なう熱交換器42、および各部の動作制御を行なう制御部43を備えている。補助熱源機4の出湯口には、たとえばカラン60が設けられた配管部61が接続されており、カラン60が開けられると、入水口10aに常時作用している給水圧により、貯湯タンク1からの出湯が可能である。
【0027】
制御部2は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されており、前述した各種の弁V1〜V3の動作制御などを実行する。貯湯タンク1には、複数の温度センサSbが異なる高さに設けられており、制御部2は、これら複数の温度センサSbを利用した湯水温度の検出も可能である。また、貯湯タンク1からの出湯量も検出可能である。貯湯タンク1からの出湯量は、流量センサSaを利用して検出される流量に基づき、この流量から分岐配管部13を介して湯水混合弁V1を通過する水の流量を減じるなどして求めることが可能である。もちろん、本実施形態とは異なり、出湯管11に流量センサを設けて、貯湯
タンク1からの出湯量を直接検出する構成とすることもできる。制御部2は、貯湯タンク1内における湯水の滞留時間を判断し、かつこの滞留時間が所定の制限時間に達したものと判断したときには、湯水の入れ替え動作を実行させるように構成されている。ただし、その詳細については、後述する。
【0028】
次に、前記した貯湯式給湯装置WHにおいて、貯湯タンク1内の湯水入れ替え制御を行なう場合の作用について説明する。併せて、制御部2の動作処理手順の一例について、図3に示したフローチャートを参照しつつ説明する。
【0029】
まず、貯湯タンク1内が比較的高温の湯水の満杯状態にあり、複数の温度センサSbのいずれにおいても、所定温度(たとえば、60℃以上)が検出されている場合には、制御部2は、貯湯タンク1内の湯水入れ替えのための制御をとくに実行しない(S1:NO)。貯湯タンク1内の湯水全体が60℃以上の高温であれば、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖する可能性はないと考えられ、貯湯タンク1内の湯水の衛生さは保たれているからである。
【0030】
貯湯タンク1内の湯水温度は時間の経過に伴って徐々に低下するが、ソーラ集熱パネル3は天候の影響を大きく受けるために、ソーラ集熱パネル3を利用した湯水加熱量が不足気味になる場合がある。このような場合、貯湯タンク1内の湯水温度が60℃未満に低下する虞がある。このような事態が生じ、複数の温度センサSbの少なくとも1つが60℃未満の検出温度を示すと、制御部2は、その時点でタイマセットを行ない(S1:YES,S2)。その後は、以下に述べるような貯湯タンク1内の湯水入れ替えのための制御を実行する。
【0031】
すなわち、制御部2は、前記したタイマセット後には、予め設定された時間(たとえば2時間)が経過する都度、この2時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量を検出し、そのデータをこの制御部2が備えたEEPROMなどの記憶部20(図2を参照)に記憶する処理を繰り返して実行する(S3:YES,S4)。このような処理は、たとえば複数の温度センサSbの全ての検出温度が60℃以上となり、かつその状態が15分以上継続する事象が検出されない限りは継続して実行される(S3:NO,S10:NO,S3)。なお、前記した事象が検出された場合には、制御部2は、タイマリセットを行ない(S10:YES,S11)、貯湯タンク1内の湯水入れ替えのための制御を中止する。貯湯タンク1内の湯水が高温に維持されると、殺菌効果が得られ、貯湯タンク1内を衛生な状態にすることができるからである。貯湯タンク1内の湯水入れ替え制御を中止するための条件(ステップS10の内容)は、前記した内容に限らないが、貯湯タンク1内の全域を殺菌し得る温度条件とすることが好ましい。たとえば、複数の温度センサSbの全ての検出温度が70℃以上となり、かつその状態が10分以上継続することを、湯水入れ替え制御を中止するための条件とすることもできる。
【0032】
ステップS2のタイマセット時から所定の制限時間(たとえば96時間)が経過すると、制御部2は、その時点で貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が96時間に達したか否かを判断する(S5:YES,S6)。この判断は、貯湯タンク1の容量TCと、前記した96時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量ΣQとを比較することにより行ない、TC>ΣQの関係である場合には、制御部2は、湯水の滞留時間は96時間以上であると判断し、滞留時間が96時間に達した湯水の量は、(TC−ΣQ)であると判断する(S6:YES,S7)。
【0033】
理解を容易にするため、図2を用いて前記した一連の処理を模式的に説明する。まず、同図(a)に示すように、制御部2の記憶部20の初期(ステップS2のタイマセット時)には、2時間ごとの積算出湯量を示すアドレスa1〜a48へのデータの書き込みはな
い。ただし、その後2時間経過した際には、同図(b)に示すように、アドレスa1の最新の2時間における貯湯タンク1からの積算出湯量Q1のデータが書き込まれる。その後は、同図(c)〜(d)に示すように、2時間が経過する毎に、アドレスa1の最新の2時間の積算出湯量Q2,Q3のデータが順次書き込まれる。これに伴い、同図(b)で示されていた最新の2時間の積算出湯量Q1のデータは、アドレスa2,a3の2〜4時間前、4〜6時間前のデータとなる。このような処理が繰り返し実行され、初期から96時間が経過すると、同図(e)に示すように、アドレスa1〜a48の全てに2時間ごとの貯湯タンク1からの積算出湯量Q1〜Q48のデータが書き込まれる。
【0034】
図2(e)に示すように、初期から96時間が経過した時点において、制御部2は、(TC−ΣQ)の値を、滞留時間が96時間に達した湯水の量であって、排水対象となる量であると判断する。ここで、ΣQは、96時間内における貯湯タンク1からの積算出湯量であり、アドレスa1〜a48に書き込まれた積算出湯量Q1〜Q48の合計値である。積算出湯量ΣQが貯湯タンク1の容量TC未満であれば、貯湯タンク1内の湯水の全量が96時間内において入れ替わっていないものと考えることが可能である。貯湯タンク1の容量TCが200Lであって、積算出湯量ΣQが、150Lの場合、それらの差分の50Lは、貯湯タンク1内の滞留時間が96時間に達したものと判断することができる。なお、積算出湯量ΣQが貯湯タンク1の容量以上であり、(TC−ΣQ)の値がゼロ、または負となる場合には、滞留時間が96時間に達した湯水は貯湯タンク1内に存在しないものと判断される(S6:NO,S12)。
【0035】
制御部2は、滞留時間が96時間に達した湯水が存在すると判断した場合、排水弁V2を開状態とし、貯湯タンク1内の湯水を(TC−ΣQ)の量だけ排水管12から外部に排出させる(S8)。これに伴い、それと同等量だけ新たな水が貯湯タンク1に流入する。このような湯水の入れ替え動作により、滞留時間が96時間に達した湯水を貯湯タンク1内から排除し、貯湯タンク1内の衛生さを保つことができる。ただし、湯水の入れ替え動作時においては、湯水の入れ替えの確実化、あるいは信頼性を高めるべく、湯水の入れ替え量を(TC−ΣQ)に所定の余裕量を加えた値とすることもできる。この余裕量は、一定量((TC−ΣQ)の大きさには関係なく、たとえば常に2L)に設定したり、あるいは一定の比率((TC−ΣQ)のたとえば10%)に設定するといったことが可能であるが、その値を決定するための手法や具体的な値は問わない。
【0036】
前記した湯水の入れ替え動作を行なった際には、貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が変化するため、これに対応すべく記憶部20のデータを更新する(S9)。このデータ更新は、たとえば図2(f)に示すように、アドレスa48の積算出湯量に関するデータをクリアするとともに、アドレスa1の最新の2時間の積算出湯量の値をQ48’とする。このQ48’は、具体的には、同図(e)の積算出湯量Q48に、前記した湯水の入れ替え時に排出された湯水量(TC−ΣQ)を加えた値となる。
【0037】
前記したデータ更新の後において、貯湯タンク1内の湯水温度が未だ十分に上昇せず、ステップS10の湯水入れ替え解除条件が満たされない場合には、前記した湯水入れ替えのための制御が繰り返される(S9,S10:NO,S3)。このため、前記したデータ更新の後において、さらに2時間が経過すると、図2(g)に示すように、最新の2時間おける貯湯タンク1からの積算出湯量Q49のデータが、アドレスa1に書き込まれる。同図(f)のアドレスa1〜a47に書き込まれていたデータは、アドレスa2〜a48に移行する。これに伴い、制御部2は、貯湯タンク1の容量TCと、アドレスa1〜a48に書き込まれた積算出湯量の合計値ΣQとを比較し、TC>ΣQであれば、湯水の滞留時間が96時間に達したものと判断するとともに、(TC−ΣQ)が排水対象量とされて、貯湯タンク1の湯水の入れ替え動作が実行される。
【0038】
前記したような湯水の入れ替えのための制御は、ステップS10の湯水入れ替え解除条件が満たされない限り繰り返されるために、その後も2時間が経過する毎に、貯湯タンク1内の湯水の滞留時間が96時間に達したか否かが判断され、96時間に達していれば、その都度、滞留時間が96時間に達したものと判断された量、またはこれに余裕を加えた量の湯水が排出されて湯水の入れ替え動作がなされる。湯水の滞留時間の判断に際し、滞留時間が96時間に達する湯水が貯湯タンク1に存在しないと判断された場合であっても、予め定められた制御終了条件にならない限りは、その2時間後には、湯水の滞留時間の判断が再度繰り返される(S12,S13:NO,S3)。
【0039】
前記したような動作処理手順によれば、貯湯タンク1内には60℃以下の湯水が96時間以上滞留することを適切に防止し、貯湯タンク1内および貯湯タンク1から出湯される湯水を衛生的なものとすることができる。また、貯湯タンク1内の湯水の入れ替え量は、滞留時間が96時間に達した湯水の量、またはこれに余裕を加えた量であって、貯湯タンク1内の湯水の全量が入れ替えられるものではないために、大幅な節水を図り、水資源を大切にすることもできる。
【0040】
前記した貯湯式給湯装置WHの制御部2には、貯湯タンク1の湯水を入れ替えるための制御を実行する場合において、図4に示すフローチャートのような動作制御を実行させることもできる。
【0041】
まず、貯湯タンク1内の湯水を排水して、湯水を入れ替えるための条件が成立した場合において(S20)、補助熱源機4がMOQオフの状態であれば、制御部2は、湯水混合弁V1を水側全開・湯側全閉(分岐配管部13側全開・出湯管11側全閉)とした後に、排水弁V2を開状態とし、貯湯タンク1から排水を開始させる(S21:YES,S22,S23)。ここで、MOQとは、補助熱源機4が出湯運転を行なうのに必要な補助熱源機4における最小通水量であり、MOQオフとは、補助熱源機4に最小通水量以上の通水がなされておらず、補助熱源機4が非運転状態にあることを意味する。後述するMOQオンは、補助熱源機4に最小通水量以上の通水があり、補助熱源機4が運転状態にあることを意味する。補助熱源機4は、通水量を検出するためのセンサScを有し、MOQオンの際には、制御部43から制御部2にその旨の信号が送出されるように構成されている。貯湯タンク1からの排水に際し、湯水混合弁V1を前記したような状態に設定しておけば、貯湯タンク1内に96時間以上滞留していた湯水が湯水混合弁V1を通過して補助熱源機4側に供給される虞を解消しつつ、補助熱源機4には、入水口10aに供給された水を適切に供給することが可能となる。
【0042】
一方、前記とは異なり、補助熱源機4がMOQオンの場合には、前記したステップS22,S23は実行されず、待機状態となる(S21:NO)。このような動作処理によれば、補助熱源機4から給湯先への給湯動作が行なわれている最中に、排水動作が開始されないこととなるために、給湯温度が急変することを適切に抑制することができる。
【0043】
排水弁V2を開状態とした後、貯湯タンク1から所定量の湯水の排水が完了する迄の期間中においては、補助熱源機4がMOQオフであれば、排水弁V2は開いたままとされる(S23,S24:NO,S28:NO,S30)。これに対し、補助熱源機4がMOQオンになると、その期間中は排水弁V2を閉状態とする(S28:YES,S29)。このような動作制御によれば、貯湯タンク1からの排水量を正確に捕捉することが可能となる。
【0044】
貯湯タンク1から所定量の湯水を排水し終えた場合、その時点において補助熱源機4が未だMOQオフであれば、制御部2は、直ちに湯水混合弁V1を通常制御状態にするとともに、排水弁V2を閉状態とする(S24:YES,S25:YES,S26,S27)
。このことにより、貯湯式給湯装置WHを通常状態に迅速に復帰させることが可能である。これに対し、貯湯タンク1から所定量の湯水を排水し終えた時点において、補助熱源機4がMOQオンである場合には、補助熱源機4がMOQオフになるまでは、湯水混合弁V1の水側全開・湯側全閉状態を保持しつつ、排水弁V2を閉状態とする(S24:YES,S25:NO,S31,S27)。このことにより、やはり補助熱源機4から給湯先への給湯動作がなされている際に、その給湯温度が急変しないようにすることが可能である。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る貯湯式給湯装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0046】
本発明の動作制御で用いられる貯湯タンクの容量のデータや、貯湯タンクからの積算出湯量のデータは、貯湯タンクの実際の容量や貯湯タンクからの実際の積算出湯量に対し、多少の誤差を有するものであってもよく、必ずしも厳密に一致していなくてもよい。貯湯タンクの容量としては、たとえば出湯管の内部容積をも加味した値を用いてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、本発明でいう制限時間を96時間としているが、この制限時間の具体的な長さは限定されない。同様に、貯湯タンクからの出湯量の監視動作(出湯量を検出して記憶部に記憶する動作)は、2時間の間隔で行なわれなくてもよく、これとは異なる時間間隔で実行させることもできる。出湯量の監視動作を一定の時間間隔ごとで行なわせれば、記憶部へのデータ書き込み量を少なくできるといった利点が得られるが、これに代えて、出湯量の監視動作を連続的に行なうようにしてもかまわない。
【0048】
上述した実施形態では、貯湯タンク内の湯水の入れ替え用の制御が実行されるための条件として、貯湯タンク内の湯水温度が60℃まで低下することが必要とされているが、その温度は、60℃に限定されず、これとは異なる温度とすることができる。一般的には、60℃以下の温度で100時間以上にわたって貯湯タンク内に湯水が滞留すると雑菌が繁殖する可能性が出てくる。したがって、そのような数値を目安に諸条件を決定することが好ましい。ただし、本発明においては、貯湯タンク内の湯水を入れ替える動作が、貯湯タンク内の湯水温度には関係なく実行されるものとして構成することもできる。
【0049】
貯湯タンクは、内部への湯水供給が下部から行なわれ、かつ外部への出湯が上部から行なわれる構成であればよい。湯水加熱手段としては、貯湯タンク内に内蔵された熱交換器や、電熱式などのヒータを用いれば、貯湯タンク内の下部に位置する滞留時間が短い湯水と上部に位置する滞留時間が比較的長い湯水とを大きく攪拌させることがなく好ましいものの、これら以外の加熱手段を採用することもできる。主熱源や補助熱源を具備させる場合、これらの具体的な種類も問わない。
【符号の説明】
【0050】
WH 貯湯式給湯装置
V2 排水弁
1 貯湯タンク
2 制御部(制御手段)
5 熱交換器
10 入水管
11 出湯管
12 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
この貯湯タンク内における湯水の滞留時間を判断し、かつこの滞留時間が所定の制限時間に達したものと判断したときに、前記貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作を実行させる制御手段と、
を備えている、貯湯式給湯装置であって、
前記貯湯タンクとしては、内部への湯水供給が下部から行なわれ、かつ外部への出湯が上部から行なわれる構成のものが用いられており、
前記制御手段は、前記貯湯タンクからの出湯量を監視しつつ、前記湯水の滞留時間に関する判断を、前記制限時間よりも短い時間間隔で繰り返して行なうように構成され、
前記湯水の滞留時間に関する判断においては、この判断時の直前の前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量に関するデータと、前記貯湯タンクの容量に関するデータとに基づいて、前記貯湯タンク内の湯水の滞留時間が前記制限時間に達したか否かが判断されるとともに、湯水の滞留時間が前記制限時間に達している場合には、前記制限時間に達した湯水の量も判断され、
前記貯湯タンク内の湯水の入れ替え動作が実行されるときには、前記制限時間に達した湯水の量、またはこれに所定の余裕を加えた量の湯水が、前記貯湯タンクの上部から排出されるように構成されていることを特徴とする、貯湯式給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯式給湯装置であって、
前記湯水の滞留時間に関する判断においては、前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量が前記貯湯タンクの容量以上である場合には、前記湯水の滞留時間は前記制限時間に達していないと判断される一方、そうでない場合には、前記湯水の滞留時間が前記制限時間に達していると判断され、前記積算出湯量と前記貯湯タンクの容量との差分が、前記制限時間に達した湯水の量とされる、貯湯式給湯装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の貯湯式給湯装置であって、
前記湯水の滞留時間に関する判断は、前記貯湯タンク内に所定温度未満の湯水領域が存在することを条件として行なわれ、かつその後に前記条件が解消され、または前記条件が解消されたことに加えてさらに所定の追加の条件が満たされたときには、前記判断は中止されるように構成されている、貯湯式給湯装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の貯湯式給湯装置であって、
前記制御手段が前記貯湯タンクからの出湯量を監視する動作処理は、前記制限時間よりも短い所定の時間が経過する都度、その時間内における前記貯湯タンクからの出湯量を検出して記憶部に記憶する動作処理であり、
前記制限時間内における前記貯湯タンクからの積算出湯量は、前記記憶部に記憶された出湯量のデータに基づいて求められる、貯湯式給湯装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の貯湯式給湯装置であって、
前記貯湯タンクは、この貯湯タンク内に貯留された湯水を加熱するための熱交換器またはヒータを内蔵している、貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247098(P2012−247098A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117809(P2011−117809)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】