説明

貯留層の浸透率の推定

石油含有貯留層の浸透率を判定する方法は、第1の位置から貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、標識有機分子は、半減期が1か月未満の放射性核種を含む。特定の実施形態では、標識有機分子は、ヨウ素131およびフッ素18からなる群から選択される放射性核種を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する実施形態は、一般に、浸透率の推定に関し、より詳細には、石油含有貯留層の浸透率の推定に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透率とは、岩石が流体を伝えるときの伝えやすさであり、一般に、ダルシーまたはミリダルシーで測定される。1ダルシーとは、厚さ1センチメートルの岩石試料が、粘性単位1センチポアズの1立法センチメートルの流体を、単位大気の差圧下で1平方センチメートルの面積に1秒間で通過させるという浸透率を表す。非常に重要な関係する記述語は、多孔率である。多孔率は、岩石試料の体積のうち、岩石試料内の空隙である部分の割合と定義される。多孔率は通常、0〜1の範囲の割合、または0パーセント〜100パーセントの範囲の百分比として報告される。
【0003】
石油含有貯留層内に存在する岩石は、開いた体積を有する固体微粒子または微粒子間の孔から構成されると見なすことができる。孔の数、孔の相対的な寸法、および位置が、岩石の多孔率、そして岩石の浸透率を判定する要因である。油層の全体的な産出可能性をより確実に予測する手段として、油層の岩石相の浸透率と多孔率の両方を測定または推定することができると有利である。この知識はまた、水注入による貯留層内の石油の2次採取(two−phase displacement)を用いる高度な回収技法にかけるとき、貯留層の挙動を予測するのに有益である。さらに、油層の産出特性は、多孔率および浸透率に加えて、いくつかの要因、たとえば水、石油、および気体に対する相対的な浸透率、貯留層の寸法、貯留層の水飽和、毛管圧、ならびに毛管圧関数などの圧力および特性の影響を受けることがある。
【0004】
油田内の石油含有区間の浸透率および多孔率特性は、油田全体で必ずしも一定ではないことがよく知られている。たとえば、所与の油田を構成する石油含有区間の浸透率は、油田全体で数桁変動することがある。石油含有区間の浸透率および多孔率特性は、モデル化される油田または油田の一部分にわたって均質のままではないことがあるため、簡単なモデルでは、油田の性能に関する有用な情報を得ることができないことがある。
【0005】
たとえば、サウジアラビアのガワール(Ghawar)油田について考察する。ガワール油田は、世界最大の従来型の油田である。ガワール油田は、1948年に発見され、1951年に産出を開始した。ピーク時には、この油田は、1日570万バレルを産出した。この油田の多孔率および平均浸透率が約10マイルの範囲にわたって異なる位置で変動することは、当技術分野では知られている。この油田に対して知られている平均多孔率は、約14パーセント〜約19パーセントの範囲内で変動すると見られ、また平均浸透率は、約52ミリダルシー〜約639ミリダルシーの範囲内で変動すると見られる。この油田のハラド(Haradh)部分の平均多孔率は14パーセントであり、平均浸透率は52ミリダルシーであると知られている。この油田のハウィヤ(Hawiyah)部分の平均多孔率は17パーセントであり、平均浸透率は68ミリダルシーであると知られている。この油田のウスマニヤ(Uthmaniyah)部分の平均多孔率は18パーセントであり、平均浸透率は220ミリダルシーであると知られている。この油田のアインダール(Ain Dar)部分の平均多孔率は19パーセントであり、平均浸透率は617ミリダルシーであると知られている。この油田のシェドガム(Shedgum)部分の平均多孔率は19パーセントであり、平均浸透率は639ミリダルシーであると知られている。
【0006】
石油含有貯留層から取り出したコア試料の浸透率および多孔率は直接測定することができ、そのようなデータは価値がある可能性がある。しかし、場合によっては、そのようなコア試料を入手することができず、入手可能なときでも、コア試料が貯留層の特質を全体としてどれだけうまく表すか、ならびにコアリング自体および後の試料の取扱いの作用によって起こりうる変化に関して、不確実性が残る。
【0007】
石油含有貯留層の浸透率を推定しようとして、様々な方法が開発されてきた。石油含有貯留層の浸透率を判定する1つの方法は、中性子崩壊のロギング手順を使用することを含む。知られている中性子捕獲断面を有する第1の水性の液体が石油含有貯留層内へ注入され、当該石油含有貯留層の水飽和が実質上100パーセントになるまで続けられる。第1の水性の液体の注入に続いて、第1の水性の液体の中性子捕獲断面とは異なる、知られている中性子捕獲断面を有する第2の粘性の液体が、貯留層内へ低圧で注入される。一定期間後、中性子崩壊のロギング手順を使用して、粘性の液体の濃度が測定される。粘性の液体の注入は、より高い圧力を使用して繰り返され、粘性の液体の濃度が再び測定される。注入圧力は、個別のステップで増大され、石油含有貯留層の破断圧力に達するまで、濃度がステップごとに測定される。粘性の液体の濃度と注入圧力の関係は図表化され、石油含有岩石の浸透率を判定するために使用される。しかし、前述のように、この手順は比較的複雑であり、時間がかかることがあり、比較的大量の複数の外因性の液体を貯留層内へ注入することを必要とすることがある。
【0008】
貯留層の浸透率を推定する別の方法は、産出流期間後に閉鎖された坑井内の坑底圧の測定によってデータが収集される圧力上昇分析を伴う。坑井の産出が停止されている間に、坑井の坑底圧の経時的な上昇が記録される。時間に対する圧力のプロファイルを作成することができ、数学的な貯留層モデルとともに使用して、貯留層および坑井孔付近領域の範囲および特性を評価することができる。しかし、前述のように、そのようなデータを得るには、通常、長期間にわたって坑井からの産出を停止しなければならず、これは、坑井からの産出の停止に関連する費用のため、望ましくないことがある。
【0009】
貯留層の特性を推定する別の方法では、モデルが貯留層の過去の産出履歴に最もよく似るまで、貯留層モデルのパラメータが変動される産出履歴整合処理を使用する。関係する方法では、破断処理中に処理圧力の整合を利用する。これらの整合方法を利用するとき、整合の精度はとりわけ、貯留層モデルの品質ならびに圧力および産出データの品質および量に依存する。モデルが整合された後、このモデルを使用して、今後の貯留層の挙動をシミュレートすることができる。しかし、これらの方法に関連する欠点は、石油含有貯留層の破断面または特性のいくつかの異なる可能な構造が、同じ結果をもたらしうることである。すなわち、さらに制限する情報が得られない限り、多くの可能な解決策、またはパラメータ値のセットが、可能な整合をもたらす可能性が高い。
【0010】
別の方法は、試錐孔付近で石油含有岩石に交流磁界を繰り返し印加することを含む。この結果、試錐孔付近の「励起区間」内に存在する核子の反復的励起−緩和処理が行われる。常磁性ロギングと呼ばれるこの技法は、開いた孔および枠付きの坑井孔内で使用することができる。試錐孔に比較的近接している制限された区間内では、常磁性ロギングを使用して、石油の量、水の量、総流体体積、存在する石油の粘性、石油飽和および水飽和率、浸透率、試錐孔付近の垂直な石油と水の境界の位置、ならびに石油含有層の横方向の不連続性の位置を推定することができる。しかし、前述のように、この技法は、試錐孔に比較的近接している領域内でしか、そのようなパラメータに反応しない。
【0011】
別の方法は、岩石の隙間内に流体を含有する石油含有岩石の現地分析を含む。岩石に対して流体に運動を与える励起デバイスが提供され、岩石層内の流体の相対的な運動によって生じる磁界が測定され、岩石層の浸透率が推定される。浸透率を推定する手段として、核磁気共鳴技法および電子常磁性共鳴技法も用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4876449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在利用可能な技法の数および多様性にかかわらず、石油含有貯留層の浸透率特性の信頼性が高い推定を可能にする現地測定のための簡単な技法が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、石油含有貯留層の浸透率を判定する方法は、第1の位置から貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、標識有機分子は、半減期が1か月未満の放射性核種を含む。
【0015】
別の実施形態では、石油含有貯留層の浸透率を判定する方法は、第1の位置から貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、標識有機分子は、ヨウ素131およびフッ素18からなる群から選択される放射性核種を含む。
【0016】
さらに別の実施形態では、原油層の浸透率を判定する方法は、原油中の溶液として、第1の地表下の位置から貯留層内へ1−(131I)ヨードオクタデカンを注入するステップと、貯留層内の第2の地表下の位置で1−(131I)ヨードオクタデカンに関連する信号を検出するステップとを含む。
【0017】
さらに別の実施形態では、原油層の浸透率を判定する方法は、原油中の溶液として、第1の地表下の位置から貯留層内へ1−(18F)フルオロオクタデカンを注入するステップと、貯留層内の第2の地表下の位置で1−(18F)フルオロオクタデカンに関連する信号を検出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術的な効果は、貯留層の浸透率および貯留層の産出可能性に関係する貯留層特性の現地測定を使用して石油含有貯留層の浸透率を推定する簡略化された強固な方法を含む。本発明によって提供される方法は、重要で有益な特徴として、半減期が比較的短い(1か月未満)放射性核種を含む比較的微量の標識有機分子を使用し、それによって石油含有貯留層の長期的な汚染をなくす。この方法は、柔軟性をさらに提供し、幅広い種類の石油含有貯留層タイプで浸透率および他の特性の推定で使用するために適合することができる。この開示は、本発明の実施で使用するのに適した標識有機分子の選択された例を提供するが、本発明によって提供される方法によれば、半減期が1か月未満の放射性核種を含む非常に幅広い種類の標識有機分子を用いることができることが、この開示の利益を得る当業者には理解されるであろう。
【0019】
ここに記載の説明では例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、また任意のデバイスまたはシステムの作製および使用ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含めて、本発明をあらゆる当業者が実行できるようにする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者には想到される他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と変わらない構造上の要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とほとんど違いのない同等の構造上の要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。
【0020】
本発明の上記および他の特徴、態様、利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解されるであろう。図面全体にわたって、同じ文字が同じ部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】複数の試錐孔を有する油田の図である。
【図2】本発明の一実施形態による浸透率を推定する方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、本発明の1つまたは複数の特有の実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、本明細書では、実際の実装形態のすべての特徴について説明しないことがある。あらゆる工学または設計プロジェクトの場合と同様に、あらゆるそのような実際の実装形態の開発では、システムおよび事業に関係する制約に準拠することなど、実装形態ごとに変動しうる開発者の固有の目標を実現するために、多数の実装形態固有の決定を下さなければならないことを理解されたい。さらに、そのような開発努力は複雑で時間のかかることがあるが、それにもかかわらず、この開示に利益を有する当業者にとっては設計、製作、および製造という日常の業務であるはずであるということを理解されたい。
【0023】
本発明の様々な実施形態の要素について述べるとき、冠詞「a」、「an」、および「the」は、要素が1つまたは複数存在することを意味するものとする。「含む、備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は包括的であり、記載の要素以外のさらなる要素も存在しうることを意味するものとする。開示する実施形態の説明では、所与の動作パラメータおよび/または環境的条件のいかなる例も、他のパラメータ/条件を除外しようとするものではない。
【0024】
本明細書では、「標識有機分子」という語句は、1つまたは複数の放射性核種を含む有機分子を指し、低分子量の分子と高分子量の有機分子の両方を包含する。
【0025】
本明細書に記載する本発明の実施形態は、石油含有貯留層内の浸透率に関係する特性を推定する現況技術の方法の記載の欠点に対処する。具体的には、本発明の方法は、石油含有貯留層の浸透率および多孔率に関係する特性を現地で確認する改善された柔軟性を提供する。一実施形態では、これらの現地測定は、試錐孔、たとえば産出試錐孔または感知試錐孔内の様々な位置で行うことができる。一実施形態では、標識有機分子は、試錐孔内の1つの位置から石油含有貯留層内へ注入され、その後、石油含有貯留層内の標識有機分子に関連する信号が、試錐孔内の第2の位置で検出される。標識有機分子の注入と前記標識有機分子に関連する信号の検出との間で経過する時間、検出される信号の大きさおよび性質を別々にまたは集合的に使用して、石油含有貯留層の1つまたは複数の浸透率特性を推定することができる。本発明は、貯留層の浸透率に関係する特性を推定する当技術分野で知られている方法に比べて、さらなる信頼性およびコストの節減の機会を提供すると考えられる。
【0026】
前述のように、一実施形態では、石油含有貯留層の浸透率を判定する方法は、第1の位置から貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、標識有機分子は、半減期が1か月未満の放射性核種を含む。一実施形態では、石油含有貯留層は、海底の下に位置する海底地表下の岩石層とすることができる。代替実施形態では、石油含有貯留層は、「乾燥地帯」の地表下の岩石層とすることができる。
【0027】
様々な実施形態では、標識有機分子は、半減期が1か月未満の放射性核種を含む。適した放射性核種は、ヨウ素131、臭素82、フッ素18、炭素11、および窒素13を含み、これらの放射性核種のそれぞれの半減期は、1か月未満である。代替実施形態では、標識有機分子は、半減期が1週間未満の放射性核種を含む。さらに別の実施形態では、標識有機分子は、半減期が1日未満の放射性核種を含む。さらに別の実施形態では、標識有機分子は、ヨウ素131およびフッ素18からなる群から選択される放射性核種を含む。
【0028】
一実施形態では、標識有機分子は、1−(131I)ヨードオクタデカンを含む。1−(131I)ヨードオクタデカンなどの標識有機分子は、周囲条件下におけるほぼ室温から溶媒の還流温度の範囲内の温度におけるアセトニトリルなどの極性溶媒中での1−オクタデカノルトシラートと容易に入手可能な(131)ヨウ化ナトリウムまたはカリウムの反応など、標準的な放射化学合成方法論を使用して準備できることが、当業者には理解されるであろう。同様に、反応溶媒としてアセトンを使用することができる。反応混合物内にクラウンエーテルなどの触媒を含んで、出発トシラートからヨウ素131を含む生成物標識有機分子への変換速度を加速させることができる。この反応は、最大量の出発ヨウ化物を生成物に変換するために、モル過剰量の出発トシラートを使用して実施することができる。この反応に続いて、生成物標識有機分子は、たとえば1列のシリカゲルを通過することによって、あらゆる残留無機ヨウ化物から分離することができる。本発明の目的では、通常、貯留層内へ注入される標識有機分子の試料内にこの出発材料が存在しても、注入ステップ、検出ステップ、または貯留層内での標識有機分子の動きに干渉しないと予期されるため、通常、いかなる残りのトシラートも生成物から分離する必要はない。
【0029】
別の実施形態では、標識分子は、1−(18F)フルオロオクタデカンを含むことができる。1−(18F)フルオロオクタデカンは、(131I)ヨウ化ナトリウムまたはカリウムの代わりに(18F)フッ化物源が用いられることを除いて、1−(131I)ヨードオクタデカンの準備と同様に準備できることが、当業者には理解されるであろう。市販の(18F)フッ化物源は広く利用可能であり、市販の(18F)フッ化物を使用して求核置換反応SN2を実施する技法がよく知られている。この反応に続いて、(18F)フッ素を含む生成物標識有機分子は、たとえば1列のシリカゲルを通過することによって、またはそのような目的で使用される当技術分野では知られている他の方策によって、あらゆる残留の無機フッ化物から分離することができる。
【0030】
前述のように、本発明の方法は、貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出することを含む。したがって、標識有機分子は、第1の位置から貯留層内へ注入され、印加される力、たとえば標識有機分子を貯留層内へ追いやる加圧された液体または気体の形態の圧力の影響下で、貯留層の一部分を横切る。一実施形態では、標識有機分子は貯留層内へ注入され、その後溶媒で溶出され、それによって標識有機分子は、貯留層内で移動する前面として分散される。貯留層内の第2の位置に位置する検出器は、移動する前面が検出器の位置に近づくと、標識有機分子に関連する信号を検出する。第2の位置における検出の開始時間と印加される力の大きさをともに使用して、貯留層の浸透率特性を評価できることが、当業者には理解されるであろう。
【0031】
一実施形態では、貯留層内の第2の位置で検出される標識有機分子に関連する信号は、γ線である。代替実施形態では、貯留層内の第2の位置で検出される標識有機分子に関連する信号は、β粒子である。さらに別の実施形態では、貯留層内の第2の位置で検出される標識有機分子に関連する信号は、陽電子消滅事象から生じる光子である。
【0032】
標識有機分子の量は、貯留層内の第2の位置で検出できれば十分であり、注入される標識有機分子の実際の質量は、1ミリグラム未満程度であると予期される。一実施形態では、貯留層内へ注入される標識有機分子の量は、約200ミリキュリー未満の放射能に対応する。別の実施形態では、標識有機分子は、約180ミリキュリー未満の放射能に対応する。さらに別の実施形態では、標識有機分子は、約150ミリキュリー未満の放射能に対応する。
【0033】
一実施形態では、方法は、貯留層の地表に接触する溶液として、第1の位置から貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、溶液に力を印加して第1の位置から貯留層内へ入れるステップとを含む。様々な実施形態では、標識有機分子を含む溶液は、標識有機分子と、標識有機分子に適合している溶媒とを含むことができる。一実施形態では、溶媒は、溶媒中で標識有機分子が完全に溶解して均質の溶液を形成するような溶媒である。別の実施形態では、溶媒は、キャリアとして機能することができ、標識有機分子は、溶媒中にうまく分散させることができる。特定の他の実施形態では、溶媒は中性溶媒であり、標識有機分子と反応しない。溶媒の適した例には、デカン、ヘキサデカン、オクタデカン、原油、および精製油などの炭化水素溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール、4−ヘキシルアニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、およびポリエチレングリコールのエーテル類などのエーテル類、ならびに酢酸エチル、安息香酸メチル、およびブチロラクトンなどのエステル類が含まれる。溶媒は、取扱いの容易さと安全性の両方を実現し、その結果、貯留層を必要以上に汚染しないように選択することができ。
【0034】
用いられる溶媒の量は、標識有機分子に関連する信号が検出される第2の位置と第1の位置の間の距離、これらの位置間の貯留層の浸透率、ならびに貯留層のうち、測定が行われる領域内の亀裂および溝などの不均質性の存在などのパラメータとともに変動させることができる。一実施形態では、用いられる溶媒の量は、約10ミリリットル〜約1000リットルの範囲内である。別の実施形態では、用いられる溶媒の量は、約100ミリリットル〜約100リットルの範囲内である。さらに別の実施形態では、用いられる溶媒の量は、約1リットル単位〜約10リットルの範囲内である。
【0035】
図1は、N+1個の試錐孔100を有する油田を示す。一態様では、本発明の方法を使用して、注入点A110として働く坑井孔と試料採取坑井W1、W2、...、WN1201〜120Nの間の石油含有貯留層内に最小の孔口半径が存在するか否かを判定する。
【0036】
貯留層の特定の孔口寸法特性は、貯留層注入点A110内へ注入される用いられる標識有機分子の寸法および構造を変動させ、貯留層内の第1の位置から、貯留層、たとえば試料採取坑井W1、W2、...、WN1201〜120N内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出できる貯留層内の位置への標識有機分子の移動に関係する輸送時間および効率を測定することによって調査することができる。標識有機分子の寸法および構造が、標識有機分子の移動を可能にする貯留層内の孔の性能を超過する場合、移動の抑制の開始が観察される特定の標識有機分子の寸法から、貯留層の特定の孔口寸法分布を推定することができる。特定の標識有機分子が、第1の位置から、第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出できる貯留層内の点へ移動できないが、寸法がより小さい標識有機分子はそのようにうまく移動した場合、注入点A110と特定の試料採取坑井の間の領域内の孔口半径は、移動していない標識有機分子より小さいと結論付けることができる。
【0037】
貯留層の孔口寸法分布を調査するために使用される標識有機分子の構造は、大きく変動させることができ、1−(131I)ヨードオクタデカンなどの標識有機分子の枝分れ変種をどちらも作る技法は、当技術分野ではよく知られている。さらに、ほとんどあらゆる寸法を有するオリゴマーおよびポリマー標識有機分子を準備することが可能である。たとえば、ヨウ素131または臭素82を含むポリスチレンは、当技術分野では知られており、当業者であれば、当技術分野で認識されている技法を用いて、大きく変動させた寸法を有する幅広い種類の低分子量および高分子量のポリスチレンを作ることができる。前述のように、試験される標識有機分子の少なくとも1つは、試料採取坑井W1、W2、...、WN1201〜120Nで容易に検出できるべきである。この場合も、調査される分子(標識有機分子)は1つまたは複数の放射性核種を含み、極めてわずかな量の標識有機分子を用いることができ、したがってこの技法は、貯留層の後の産出特性に悪影響を与えないと予期されることが強調される。
【0038】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による浸透率を推定する方法の図200が提供されている。この図に示すように、坑井孔210はドリルビットアセンブリ212を有し、ドリルビットアセンブリ212は吹出しポート214を備える。坑井孔210を通って、輸送管216が下げられる。輸送管216は、坑井孔210の地表部分218上の吹出しポート214を、ドリルビットアセンブリ212の経路内で坑井孔210内側に距離を空けて位置する検出ポート220へ接続する。電気、光学、音響、地震、または磁気手段を含む幅広い種類の手段によって地表から伝えられる指示を受けると、浸透率を推定する標識有機分子を含む溶液222が、吹出しポート214から輸送管216内へ導入される。本明細書では、「吹出しポート」214は、標識有機分子が注入される位置であり、「検出ポート」220は、標識有機分子が検出される位置である。溶液222は、デバイス(図示せず)を使用して圧力を印加することによって、検出ポート220から押し出すことができる。次いで溶液222は、吹出しポート214から検出ポート220への経路を進む。ドリルビットアセンブリ212の経路内で検出ポート220付近に、放射検出器224を位置決めすることができ、放射検出器224は、溶液222内に存在する標識有機分子に関連する信号を検出することが可能である。放射検出器224は、導線226を介して分析機器(図示せず)に接続される。印加される力を受けて、標識有機分子は、検出ポート220で標識有機分子に関連する信号を検出できる貯留層内の位置に到達する。注入と検出の間の時間および印加される力が記録され、貯留層の浸透率を推定するために使用することができる。
【0039】
図2では、吹出しポート214は、検出ポート220の上に示す。これらのポートの相対的な位置は、方法に影響を与えることなく逆にすることができる。吹出しポート214と放射検出器224を備える検出ポート220との間の離隔距離は、フィート単位で測定することができる。一実施形態では、吹出しポートと検出ポートの間の距離は、十フィート程度である。別の実施形態では、吹出しポートと検出ポートの間の距離は、百フィート程度である。様々な実施形態では、吹出しポートと検出ポートの間の距離は、十フィート程度であり、数フィートから数百フィートの範囲とすることができる。一実施形態では、標識有機分子は、ドリルステム内に位置するチャンバから吹出しポート214を通って貯留層内へ導入され、地表からの指示を受けると解放することができる。図2では、放射検出器は、報告の目的で、導線226を介して地表にリンクされる。検出器で収集されたデータは、電気、光学、音響、地震、または磁気手段を含む幅広い種類の手段によって、地表へ伝えることができる。
【0040】
特定の実施形態では、溶液222は、分子寸法の異なる複数の標識有機分子を含むことができる。特定の実施形態では、標識有機分子は、異なる標識有機分子、たとえば、フッ素18を含み、第1の分子寸法を有する第1の標識有機分子と、ヨウ素131を含み、第2のより大きい分子寸法を有する第2の標識有機分子とを含む混合物内に存在する放射性核種の識別情報によって区別することができる。用いられる検出器224は、第1の標識有機分子に関連する信号と第2の標識有機分子に関連する信号を区別することができ、それによって、単一試験孔寸法の推定試験を可能にする。たとえば、第1の標識有機分子が検出され、第2の標識有機分子が検出されない場合、吹出しポート214と検出ポート220の間の領域内の石油含有貯留層の孔口の直径は、第2の標識有機分子の寸法より小さいと結論付けることができる。
【0041】
本明細書では、本発明の特定の特徴についてのみ図示および説明したが、多くの修正形態および変更形態が、当業者には想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に入るすべてのそのような修正形態および変更形態を包含すると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0042】
100 試錐孔
110 注入点A
1201 試料採取坑井W1
1202 試料採取坑井W2
120N 試料採取坑井WN
210 坑井孔
212 ドリルビットアセンブリ
214 吹出しポート
216 輸送管
218 地表部分
220 検出ポート
222 溶液
224 放射検出器
226 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油含有貯留層の浸透率を判定する方法であって、
第1の位置から前記貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、
前記貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、
前記標識有機分子が、半減期が1か月未満の放射性核種を含む、方法。
【請求項2】
前記貯留層の地表に接触する溶液として、第1の位置から前記貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、前記溶液に力を印加して前記第1の位置から前記貯留層内へ入れるステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記標識有機分子が1−(131I)ヨードオクタデカンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記標識有機分子が1−(18F)フルオロオクタデカンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記検出するステップが、γ線の検出を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記検出するステップが、β粒子の検出を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記検出するステップが、陽電子消滅事象から生じる光子の検出を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記半減期が1週間未満である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記半減期が1日未満である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記標識有機分子が、前記標識分子を検出する手段を提供する約200ミリキュリー未満の放射能に対応し、前記標識分子を検出する前記手段が、前記貯留層内に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
石油含有貯留層の浸透率を判定する方法であって、
第1の位置から前記貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、
前記貯留層内の第2の位置で標識有機分子に関連する信号を検出するステップとを含み、
前記標識有機分子が、ヨウ素131およびフッ素18からなる群から選択される放射性核種を含む、方法。
【請求項12】
前記貯留層の地表に接触する溶液として、第1の位置から前記貯留層内へ標識有機分子を注入するステップと、前記溶液に力を印加して前記第1の位置から前記貯留層内へ入れるステップとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記標識有機分子が1−(131I)ヨードオクタデカンを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記標識有機分子が1−(18F)フルオロオクタデカンを含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記検出するステップが、γ線の検出を含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記検出するステップが、β粒子の検出を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記検出するステップが、陽電子消滅事象から生じる光子の検出を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
原油層の浸透率を判定する方法であって、
原油中の溶液として、第1の地表下の位置から前記貯留層内へ1−(131I)ヨードオクタデカンを注入するステップと、
前記貯留層内の第2の地表下の位置で1−(131I)ヨードオクタデカンに関連する信号を検出するステップとを含む、方法。
【請求項19】
原油層の浸透率を判定する方法であって、
原油中の溶液として、第1の地表下の位置から前記貯留層内へ1−(18F)フルオロオクタデカンを注入するステップと、
前記貯留層内の第2の地表下の位置で1−(18F)フルオロオクタデカンに関連する信号を検出するステップとを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−516560(P2013−516560A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548023(P2012−548023)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060905
【国際公開番号】WO2011/084656
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)