説明

貯留浸透容器

【課題】本願発明は、地上でも地下でも使用可能で、地下で使用する際にも配管工事を必要最小限とする雨水等の貯留浸透容器の提案にある。
【解決手段】本発明は、内壁と外壁の2重の側面を有する容器であって、当該2重の側面の上部は閉じられ、下部で開放された縁部空間を形成し、内壁の上方縁部に複数の縁部開口部が縁部空間に向かって開口し、容器上端開放部には蓋と水の流入口を有し、容器中の水を上記縁部開口部より縁部空間を経て地中に浸透さす貯留浸透容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の利用と、貯留容量を超える水を地下に浸透させる雨水の利用技術に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雨水や融雪水の地下浸透施設としては、コンクリート製あるいはプラスチック製の浸透枡や浸透トレンチ、浸透側溝、浸透井戸等を地中に埋設すると共に、その周辺に砕石を充填し、集水した雨水等をその底部や側面から地中に浸透させる構造のものが知られている。
これらの地下浸透施設は、内部に雨水等を集水して貯留し、徐々に地中に浸透させ地下水の涵養等に効果のあるものである。
【0003】
また、雨水の有効利用として、特開平09-41470には下方を貯留槽とし上方を浸透槽とする雨水貯留浸透槽が開示されている。特開2000-170220には容器であって上部に浸透部を設けたものを地下に埋設し、屋根雨水を有効利用すると共に、貯留容量を超える雨水は上部の浸透部分から地下に浸透させる貯留浸透容器が開示されている。
【0004】
上記貯留浸透容器は地下にのみ設置するものであり、地上及び地下の両方に必要に応じて設置できるものではなかった。また、浸透部分には地下に余剰の雨水を浸透させるための配管がなされ、設置工事の途中に配管するか、配管付きの容器を埋設するため施工にあたっては配管を破損しないよう注意して設置する必要があった。
【0005】
【特許文献1】特開平09-41470
【特許文献2】特開2000-170220
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、地上でも地下でも使用可能で、地下で使用する際にも配管工事を必要最小限とする雨水等の貯留浸透容器の提案にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内壁と外壁の2重の側面を有する容器であって、当該2重の側面の上部は閉じられ、下部で開放された縁部空間を形成し、内壁の上方縁部に複数の縁部開口部が縁部空間に向かって開口し、容器満水時には容器中の水を上記縁部開口部より縁部空間に流出させる貯留浸透容器である。地下及び地上で使用可能とするため余剰の水は容器の側面を2重とし、その2重とした側面の間に流出させるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、(1)容器の側壁を2重とし縁部空間を形成し、余剰の水を内壁面上方より縁部空間を介して流出させるようにしたため、流出用の配管工事を必要としない。(2)埋設して使用する際にも流出用の配管がないため、配管を損傷しないよう注意して工事をする必要がない。(3)地上で使用する場合には、剰余の水は縁部空間の側壁に沿って流出するため、均一に地上に到達し、一箇所から浸透しないため容器周囲が泥濘化しない。(4)地上で使用しても剰余の水が縁部空間内に流出するため、容器の外側が濡れない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】は、本発明に係る貯留浸透容器の断面を示す概念図である。
【図2】は、本発明に係る貯留浸透容器を地下に埋設した状態を示す概念図である。
【図3】は、本発明に係る貯留浸透容器を地上に設置した状態を示す概念図である。
【図4】は、本発明に係る貯留浸透容器を地上置きとし、その下方に貯留浸透槽を設置した状態を示す概念図である。
【図5】は、ブロックの例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を図によって、より詳細に説明する。
図1は、本発明に係る貯留浸透容器の断面を示す概念図である。
図に示すように、容器の側壁は内壁と外壁からなる2重壁とされ、2重となった側壁の間の空間が縁部空間となっている。内壁と外壁はその上端で閉じられ、下端で開放されている。内壁の上部には複数の開口が設けられ、容器内が満たされたとき剰余の水がその開口から縁部空間に流出する。
【0011】
容器の上部には図に示すように蓋を設け、屋根雨水等を流入させる配管を設けておくこともできる。 本例では容器の上部は一体化された状態となっているが、上下に分かれるようにしておくことでもよい。
【0012】
図2は本貯留浸透容器を地下に埋設した状態を示している。上述したように、外部に突出する流出用配管がないため、施工工事が簡単となる。
【0013】
図3は本貯留浸透容器を地上に設置した状態を示している。容器を溢れた水は容器の内壁の上部縁部に設けた開口部から縁部空間に流出する。内壁周囲全体から流出し、縁部空間の底部全体から浸透するため、容器の周囲を泥濘化することがない。また縁部空間内に流出するので、本貯留浸透容器の外側を濡らすことがない。
【0014】
図4は本貯留浸透容器を地上置きとし、その下部に、下方を貯留部とし、上方を浸透部とした貯留浸透槽を設置したものである。本貯留浸透容器が満水となり、当該貯留浸透容器中の水が内壁上方に設けた縁部開口部から縁部空間内に流出し、当該貯留浸透容器の地下下方に設けた貯留浸透槽中に流入する。下方の貯留浸透槽では流入した水を貯留部に貯留し、貯留部が満水となったとき貯留部上方に設けた浸透部から余剰の水が地中に浸透するものである。貯留浸透槽の貯留部に貯留された水はポンプにより上方の貯留浸透容器に送られ、利用に供されるものである。
【0015】
貯留浸透槽中に設けたポンプの配管は上部の貯留浸透容器に導かれる。例えば、貯留浸透容器中の水が一定水位以下に下がった場合、ポンプが作動し容器中の水が所定の水位以下に下がらないようにするなど既存の技術を利用して設定しておくことができる。
また、貯留浸透槽は貯留部をコンクリート製の槽とし、上部を浸透性のコンクリート製とすることができる。また、貯留浸透槽内に図5に示すようなブロックを充填し、その底部及び貯留部の周囲を遮水性のシートで囲み、透水部はその周囲を透水性のシートで囲った槽とすることでもよい。既存の貯留浸透槽の構成がそのまま利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
雨水の有効利用及び地下浸透のために利用される。
【符号の説明】
【0017】
1 貯留浸透容器
2 容器内壁
3 容器外壁
4 内壁上方に設けた縁部開口部
5 縁部空間
6 流入口
7 貯留浸透槽
8 貯留部
9 浸透部
10 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁と外壁の2重の側面を有する容器であって、当該2重の側面の上部は閉じられ、下部で開放された縁部空間を形成し、内壁の上方縁部に複数の縁部開口部が縁部空間に向かって開口し、容器満水時には容器中の水を上記縁部開口部より縁部空間に流出させる貯留浸透容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138689(P2010−138689A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191983(P2009−191983)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(306024805)株式会社 林物産発明研究所 (155)
【Fターム(参考)】