説明

貴金属溶解ルツボの割れ検知方法

【目的】 貴金属溶解ルツボの割れを早期に検知し、事故を未然に防止し、且つ洩れた貴金属溶湯の回収を容易且つ早期にできるようにする。
【構成】 貴金属溶解ルツボ1の周囲にCu線2を張りめぐらして独立した2個のアンテナ3,4を設け、この2個アンテナ間に直流電圧を印加し、抵抗変化を変換器盤上のリーク電流計に指示させ、このリーク電流計の指示値にて変換器盤上に取付けたリークブレーカでトリップし、運転を停止し、警報を発する貴金属溶解ルツボ1の割れ検知方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、貴金属溶解ルツボの割れ検知方法に関する。固定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、貴金属の溶解は、ジルコニアとアルミナから成るルツボの中で高周波誘導加熱により溶解している。ところで、ルツボが損耗して薄くなったり、或いは新しくても欠陥があった時などに、ヒートショックによりルツボにクラックが発生すると、これに高温の貴金属溶湯が浸透していく。一般に高周波誘導加熱炉は、高周波誘導加熱コイル(以下単にコイルという)が水冷であるので、このコイルが前記クラックを浸透してきた高温の貴金属溶湯に接触して万一破れると、水蒸気爆発を起こす恐れがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、貴金属溶解ルツボに発生したクラックをいち早く検知し、事故を未然に防止するための貴金属溶解ルツボの割れ検知方法を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の貴金属溶解ルツボの割れ検知方法は、貴金属溶解ルツボの周囲にCu線を張りめぐらして独立した2個のアンテナを設け、この2個のアンテナ間に直流電圧を印加し、抵抗変化を変換器盤上のリーク電流計に指示させ、このリーク電流計の指示値にて変換器盤上に取付けたリークブレーカーでトリップし、運転を停止し、警報を発するものである。
【0005】
【作用】上記のような本発明の貴金属溶解ルツボの割れ検知方法によると、貴金属溶解ルツボが損耗して薄くなったり、或いは新しくても欠陥があった時などにクラックが発生し、これに高温の貴金属溶湯が浸透していき、この溶湯が2個のアンテナに接近、両アンテナに接触すると、リーク電流計が振れ、リークブレーカーでトリップし、高周波誘導加熱が直ちに停止され、警報が発せられる。従って、いち早くクラックが検知され、事故が未然に防止される。
【0006】
【実施例】本発明の貴金属溶解ルツボの割れ検知方法の一実施例を図によって説明すると、図1に示すようにジルコニアよりなる貴金属溶解ルツボ1の周囲にCu線2を一定間隔に縦に張りめぐらしてアンテナ3となし、このアンテナ3とルツボ1の真下にCu線をまんじ型に張りめぐらしたアンテナ4間に直流電圧をリークアンテナ端子5、6側から印加し、抵抗変化を図示せぬ変換器盤上のリーク電流計に指示させ、このリーク電流計の指示値約 250mAにて変換器盤上に取付けた図示せぬリークブレーカーでトリップし、運転を停止し、警報を発するものである。かかる貴金属溶解ルツボの割れ検知方法に於いて、高周波誘導加熱炉7は、正常時耐火粉末(例えばジルコニア粉末)層8が乾燥しているので、リーク電流計の振れは零である。ところが貴金属溶解ルツボ1が損耗して薄くなったり、或いは新しくても欠陥があった時などにクラックが発生したりすると、このクラックに高温の貴金属溶湯8が浸透していき、アンテナ3、4に接近、両アンテナに接触すると、リーク電流計が振れ、リークブレーカーがトリップし、高周波誘導加熱が直ちに停止され、警報が発せられる。かくして、貴金属溶解ルツボ1のクラックがいち早く検知され、貴金属溶解ルツボ1に生じたクラックから侵出した貴金属溶湯8が耐火粉末層9を通り、更にマイカ層10及びコイル11固定用セメント層12を通り、コイル11に接触してコイル11が破れ、水蒸気爆発を起こすような事故が未然に防止される。
【0007】尚、高周波誘導加熱炉7の製作後の最初の溶解では耐火粉末層9中に水分があるので、リーク電流計は振れるが、2、3回の溶解により完全に水分が無くなるので、リーク電流計の振れは零となり、以後正常に耐火物の抵抗変化が指示できるようになる。
【0008】
【発明の効果】以上の通り本発明の貴金属溶解ルツボの割れ検知方法によると、貴金属溶解ルツボの割れを早期に検知され、湯洩れにより水冷の炉コイルが破れて水が溶湯に接触して水蒸気爆発を起こすような事故が未然に防止され、また洩れた貴金属溶湯の回収が容易且つ早期にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の貴金属溶解ルツボの割れ検知方法の説明図である。
【符号の説明】
1 貴金属溶解ルツボ
2 Cu線
3 アンテナ
4 アンテナ
8 貴金属溶湯
5、6 リークアンテナ端子
7 高周波誘導加熱炉
11 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 貴金属溶解ルツボの周囲にCu線を張りめぐらして独立した2個のアンテナを設け、この2個のアンテナ間に直流電圧を印加し、抵抗変化を変換器盤上のリーク電流計に指示させ、このリーク電流計の指示値にて変換器盤上に取り付けたリークブレーカーでトリップし、運転を停止し、警報を発することを特徴とする貴金属溶解ルツボの割れ検知方法。

【図1】
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【公開番号】特開平5−249067
【公開日】平成5年(1993)9月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−84513
【出願日】平成4年(1992)3月6日
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)