説明

貼付剤

【課題】液状成分を粘着剤層中に良好に保持し、低刺激性の貼付剤を提供する。
【解決手段】支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付剤であって、当該粘着剤層は、重量平均分子量250万以上のアクリル酸エステル系ポリマーと、当該ポリマーと相溶する液状可塑剤を含有することを特徴とする。アクリル酸エステル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚面に貼付して皮膚面の保護に用いる被覆用、皮膚を通しての薬物の体内への連続的な投与用等として使用する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健常皮膚や創傷皮膚などの皮膚面の保護等に用いる被覆用、皮膚を通しての経皮投与用の薬物の体内への投与用等に用いる貼付剤など、これまで、各種の皮膚面貼付型外用剤の開発が行われてきた。これらの剤は、貼付部位が皮膚面であるので、開発に当たっては、貼付時の取り扱い性、皮膚面の動きに対する追従性に加えて、皮膚に対して角質損傷等による刺激の抑制すなわち低刺激性が要求される。
【0003】
これらのうち、取り扱い性や皮膚に対する低刺激性については、粘着剤自体の組成を変更して皮膚接着力を適度に低下させたり、粘着剤層に水や油状成分等の液状成分を含有させて含水ゲルや油状ゲルとし、粘着剤層にソフト感を与える方法等が挙げられる。またこの方法において、架橋剤を用いて粘着剤を架橋させて凝集力を持たせ、粘着剤層中に液状成分を保持させることが知られている。この架橋剤は、粘着剤が有する官能基、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基と複数箇所で反応し、その結果、粘着剤層が網目構造となって液状成分が保持される。この反応において、液状成分、添加物、薬物等が架橋剤と反応が可能な官能基を有している場合には、拡散性の違いより、架橋剤が粘着剤よりも優先的に低分子量であるこれらと反応するのが一般的であり、実際そのようになるケースが多い。その結果、架橋剤による粘着剤の架橋が行われないので液状成分が粘着剤中に保持されず、加えて液状成分、添加物、薬物等の本来の効果が発現されないといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであり、その目的は、液状成分を粘着剤層中に良好に保持し、低刺激性の貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、架橋剤を使用せず液状成分を保持する方法を検討した結果、粘着剤として、重量平均分子量が250万以上のアクリル酸エステル系ポリマーを用いることにより、上記課題が解決できることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付剤であって、当該粘着剤層は、重量平均分子量250万以上のアクリル酸エステル系ポリマーと、当該ポリマーと相溶する液状可塑剤を含有することを特徴とする、貼付剤。
(2)アクリル酸エステル系ポリマーの重量平均分子量が500万以上であることを特徴とする、上記(1)に記載の貼付剤。
(3)アクリル酸エステル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の貼付剤。
(4)液状可塑剤の含有量が、アクリル酸エステル系ポリマー100重量部に対して10〜100重量部であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の貼付剤。
(5)液状可塑剤が、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の貼付剤。
(6)粘着剤層がさらに経皮吸収性薬物を含有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、架橋処理を行わなくとも、液状可塑剤を粘着剤層中に良好に保持させることができるので、皮膚接着性とこれと相反する性質の低刺激性を同時に満足する貼付剤を提供できる。また、液状可塑剤や薬物がどのような官能基を有するものであっても、その本来の効果を発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体の片面に粘着剤層を形成してなるものである。本発明で使用される支持体としては、特に限定されないが、液状可塑剤や薬物が支持体中を通って背面から失われて含有量が低下しないもの、即ち、これらの成分が不透過性があるような材料が好ましい。具体的には、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー樹脂等からなるフィルム、金属箔や、またはこれらのラミネートフィルム等が挙げられる。これらのうち、支持体と粘着剤層との間の接着性(投錨力)を向上させるために、支持体を上記材料からなる無孔フィルムと多孔性フィルムとのラミネートフィルムとし、多孔性フィルム側に粘着剤層を形成することが好ましい。
【0009】
多孔性フィルムとしては、粘着剤層の投錨性が良好であれば特に限定されないが、例えば、紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したシート等が挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔性フィルムの厚みは投錨力の向上および貼付剤の柔軟性を考慮して10〜500μm、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の貼付剤の場合は10〜200μm程度である。織布や不織布である場合、これらの目付量を5〜30g/m2 、好ましくは8〜20g/m2 とすることが投錨力の向上の点で好ましい。
【0010】
支持体の片面に形成される粘着剤層は、粘着剤としてのアクリル酸エステル系ポリマーと、当該ポリマーと相溶する液状可塑剤を含有する。アクリル酸エステル系ポリマーは、重量平均分子量が250万以上、好ましくは500万以上であり、このような高分子量のアクリル酸エステル系ポリマーを粘着剤として使用すると、この粘着剤が有する凝集力により液状可塑剤が粘着剤層中に保持される。この分子量が250万未満の場合、上記の粘着性ポリマーが有する凝集力が劣るので、液状可塑剤は粘着剤層中に保持されず、粘着層表面にブルーミングして接着性が悪化する。なお、上記ポリマーの重量平均分子量の上限は1000万程度である。
【0011】
このような重量平均分子量が250万以上のポリマーの製造には、乳化重合、塊状重合、懸濁重合が採用されるが、重量平均分子量の調整が比較的容易である点から、乳化重合が好適に採用される。
【0012】
なお、本発明でいう重量平均分子量とはポリマーをテトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシド等の測定用の溶媒に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により示差屈折系を用いて検出したものである。
【0013】
アクリル酸エステル系ポリマーとしては、重量平均分子量が250万以上であり、後述する液状可塑剤を相溶することができる限り特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的にはアルキル基がブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル等の炭素原子数が4以上の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。
【0014】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコールエステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等のビニル基を有する化合物等が挙げられ、これらの単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。これらのモノマーの共重合量は、得られる共重合体の重量平均分子量に応じて適宜設定される。
【0015】
なお、粘着剤がアクリル酸エステル系ポリマー以外の、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系、シリコーン系のポリマーであれば、液状可塑剤との相溶性が充分でなかったり、薬物の溶解性や放出性が劣ったりする。
【0016】
粘着剤層に含有される液状可塑剤は、粘着剤層を可塑化してソフト感を付与するものであり、これにより皮膚刺激性を低減する。本発明で使用される液状可塑剤としては、室温で液状であり、可塑化作用を示し、上記のアクリル酸エステル系ポリマーと相溶するものであれば、特に限定されないが、薬物の経皮吸収性、保存安定性を向上させるものであることが好ましい。具体的には、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステル;炭素数8〜10の脂肪酸;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン、ラノリン等の油脂類;酢酸エチル、エチルアルコール、ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール等の有機溶剤;液状の界面活性剤;ジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケート等の従来より公知の可塑剤;流動パラフィン等の炭化水素類;その他、エトキシ化ステアリルアルコール、グリセリンエステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル、N−メチルピロリドン、オレイン酸エチル、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸ジイソプロピル、パルミチン酸オクチル、1,3−プロパンジオール、グリセリン等が挙げられる。勿論、これらの中から室温で液体のものが使用される。また、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。
【0017】
上記の液状可塑剤の中でも、粘着剤との相溶性、適度な皮膚接着性、加熱工程での揮散が無い等の点で、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルが好ましい。炭素数12〜16の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられ、炭素数が1〜4の低級1価アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。特に好適なものとしてミリスチン酸イソプロピルが例示される。
【0018】
液状可塑剤の含有量は、アクリル酸エステル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部、より好ましくは60〜100重量部である。この含有量が10重量部未満の場合、粘着剤層の可塑化が不充分となって皮膚刺激性を低減することができない場合があり、逆に100重量部を超える場合、粘着剤が有する凝集力によっても液状可塑剤を粘着剤層中に保持させることができない場合があり、粘着層表面にブルーミングして接着性が劣る場合がある。
【0019】
粘着剤層はさらに経皮吸収性薬物を含有してもよい。本発明に使用される経皮吸収性薬物としては、治療目的に応じて適宜選択されるが、例えば、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗鬱剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬等であって、経皮吸収可能な薬物が挙げられる。これらの薬剤は、必要に応じて2種以上併用される。中でも、粘着剤層での均一な分散性および経皮吸収性の点から、疎水性薬物(水100gに対する溶解量0.4g以下)を使用することが好ましい。
【0020】
これらの薬物の含有量は、経皮吸収性薬物の種類や、投与目的に応じて適宜設定されるが、粘着剤層中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。この含有量が1重量%未満の場合、治療に有効な量の薬物の放出が期待できず、逆に40重量%を超える場合、治療効果に限界があり、また経済的にも不利である。
【0021】
粘着剤層の厚みは、粘着性や、経皮吸収性薬物を含有する場合は薬物の必要量およびその利用率等を考慮して、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0022】
本発明の貼付剤は、重量平均分子量が500万以上のアクリル酸エステル系ポリマーと、液状可塑剤とを(各種疾患の予防・治療用の場合は経皮吸収性薬物も)、必要に応じて溶剤を用いて混合し、この溶液をセパレーター上に、乾燥後の厚みが好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜100μmとなるように塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層を支持体の片面に転写することにより作成される。
【0023】
本発明の貼付剤は、皮膚面の保護等に使用される被覆用の貼付剤、例えば絆創膏、ドレッシング等に、経皮吸収性薬物を含有する場合は、例えば各種疾患の予防・治療を行う貼付剤として好適に使用され得る。
【0024】
本発明の貼付剤は、接着性の良好なアクリル酸エステル系ポリマーに液状可塑剤を配合するので、粘着剤層の接着性を適度に低下させ、かつ粘着剤層を可塑化してソフト感を与えて低刺激性を達成する。本発明では、粘着剤として重量平均分子量が250万以上という高分子量のアクリル酸エステル系ポリマーを使用するが、このポリマーは高い凝集力を有するので、従来のような粘着剤の架橋処理を行わなくとも、粘着剤の凝集力のみによって液状可塑剤を粘着剤層中に保持することができる。従って、本発明の貼付剤は、皮膚接着性とこれと相反する性質の低刺激性を同時に満足するものである。また、液状可塑剤や薬物がどのような官能基を有するものであっても、その本来の効果を発現させることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中で部とあるのは全て重量部を意味するものである。
【0026】
実施例1
アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸イソブチル20部、アクリル酸5部、1−ドデカンチオール0.06部およびペルオキソ2硫酸アンモニウム0.2部を水溶液中で乳化重合させて得られたアクリル酸アルキルエステル系粘着剤60部(重量平均分子量500万)と、ミリスチン酸イソプロピル40部を酢酸エチル中で混合し粘着剤層用溶液を得た。この溶液をポリエステル製セパレーター上に乾燥後の厚みが60μmとなるように塗布し、100℃、3分間乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層をポリエステル製不織布(8g/m2 )/ポリエステルフィルム(2μm厚)の積層フィルムの不織布面に転写して貼付剤を得た。
【0027】
比較例1
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸イソブチル20部、アクリル酸5部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中で溶液重合させて得たアクリル酸アルキルエステル系粘着剤60部(重量平均分子量200万)と、ミリスチン酸イソプロピル40部を酢酸エチル中で混合し粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0028】
比較例2
実施例1において、ミリスチン酸イソプロピルを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0029】
比較例3
比較例1において、ミリスチン酸イソプロピルを使用しなかったこと以外は、比較例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0030】
参考例
比較例1で得られた粘着剤50部、三官能性イソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン社製)0.2部、ミリスチン酸イソプロピル40部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0031】
実施例2
実施例1で得られた粘着剤50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0032】
比較例4
比較例1で得られた粘着剤50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0033】
比較例5
実施例1で得られた粘着剤90部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0034】
比較例6
比較例1で得られた粘着剤50部に、三官能性イソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン社製)0.4部、ミリスチン酸イソプロピル40部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0035】
実施例3
アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸イソブチル20部、アクリル酸5部、1−ドデカンチオール0.06部およびペルオキソ2硫酸アンモニウム0.1部を水溶液中で乳化重合させて得られたアクリル酸アルキルエステル系粘着剤60部(重量平均分子量700万)と、ミリスチン酸イソプロピル40部を酢酸エチル中で混合し粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0036】
比較例7
実施例3において、ミリスチン酸イソプロピルを使用しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法により貼付剤を得た。
【0037】
実施例4
アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸イソブチル20部、アクリル酸5部、1−ドデカンチオール0.06部およびペルオキソ2硫酸アンモニウム0.4部を水溶液中で乳化重合させて得られたアクリル酸アルキルエステル系粘着剤60部(重量平均分子量250万)と、ミリスチン酸イソプロピル40部を酢酸エチル中で混合し粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0038】
比較例8
実施例4において、ミリスチン酸イソプロピルを使用しなかったこと以外は、実施例4と同様の方法により貼付剤を得た。
【0039】
実施例5
実施例3で得られた粘着剤50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0040】
実施例6
実施例4で得られた粘着剤50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0041】
比較例9
実施例3で得られた粘着剤90部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0042】
比較例10
実施例4で得られた粘着剤90部、メトプロロール10部を酢酸エチル中で混合して粘着剤層用溶液を得た。この溶液を用いて、実施例1と同様の方法により貼付剤を得た。
【0043】
実験例
上記実施例1〜6、比較例1〜10および参考例で得られた貼付剤(コロネートHLを添加したものに関しては、70℃で2日間保存した後)を用いて以下の試験を行った。
1.皮膚接着性
実施例1〜6、比較例1〜10および参考例で得られた各サンプル10cm2をボランティア6名の上腕内側に貼付し、24時間経過後の皮膚接着性を目視にて判定した。最も良く密着しているもの(接着良好のもの)を5、剥がれの著しいものを1として評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1より、実施例1〜6の貼付剤はいずれも皮膚接着性が良好であった。しかし、比較例1、4の貼付剤においては、粘着剤の凝集力が悪いため、ミリスチン酸イソプロピルが粘着剤層で保持されず、セパレーター界面にブルーミングしているため接着性がなかった。比較例6の貼付剤においては、薬物であるメトプロロールと架橋剤であるコロネートHLが優先的に反応してしまったため、ミリスチン酸イソプロピルが粘着剤層で保持されず、セパレーター界面にブルーミングしているため接着性がなかった。
【0046】
2.角質剥離量
ボランティア6名の上腕内側に、12mm幅で50mm長さに裁断した各サンプルを6時間貼付した後剥離して、このサンプルを下記の組成の染色液に24時間浸漬した後、蒸留水で洗浄して剥離した角質細胞の染色を行った。但し、この試験に用いた染色液は支持体を構成する不織布に染み込むので、この試験用に、12μm厚のポリエステルフィルムを支持体とした貼付剤を作成し、これを供試した。また、経皮吸収用薬物としてメトプロロールを用いた実施例2、5、6および比較例4〜6、9、10の貼付剤については、メトプロロールを配合しないこと以外は全く同様のプラセボ製剤を作製してこれを供試した。
染色した各サンプルを12mm×5mmの大きさに裁断し、1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液5ml中にこれらのサンプルを24時間浸漬して付着した角質細胞からの色素の抽出操作を行い抽出液の吸光度(595nm)を分光光度計で測定した。対照サンプルには皮膚面に貼付しなかったサンプルを用い、同様の抽出操作を行い吸光度を測定した。上記サンプルと対照サンプルの吸光度の差を剥離した角質細胞量とした。その結果を表2に示す。剥離した角質細胞量が多いほど吸光度は高くなる。この吸光度は、1.0以下、特に0.5以下であることが好ましい。なお、実体顕微鏡にて計数した剥離角質細胞数と上記吸光度との間には、良好な相関関係が認められた。
<染色液組成>
Gentian Violet 1.0%
Brillian Green 0.5%
蒸留水 98.5%
【0047】
3.痛み度
10cm2 の大きさに裁断した各サンプルをボランティア6名の上腕内側に貼付し、1時間経過後の剥離時の痛みを測定した。痛みの評価は下記基準に基づき、その平均値を求めた。その結果を表2に示す。
1:痛みなし
2:痛みを感じる
3:僅かに痛い
4:痛い
5:非常に痛い
【0048】
【表2】

【0049】
表2により、実施例1〜6の貼付剤はいずれも角質剥離量が少なく、剥離時の痛みも少ないものであった。しかし、比較例2、3、5、7〜10の貼付剤は、角質剥離量が多く、剥離時には痛みを感じるものであった。なお、比較例1、4および6の貼付剤は、セパレーター界面にブルーミングが生じていたため測定不可能であった。
【0050】
4.皮膚移行率
実施例2、5、6および比較例4〜6、9、10のサンプル(10cm2 )を人の上腕内側に8時間貼付し、剥離した後、メタノールを用いてテープ中から薬物であるメトプロロールを抽出し、HPLC(検出機:UV210nm)を用いて定量を行い、それぞれ未貼付サンプルに含まれる薬物の含量を100%とし、測定値よりヒト皮膚移行率を算出した。その結果を表3に示す。この移行率は、10%以上、特に30%以上であることが好ましい。
【0051】
【表3】

【0052】
表3より、実施例2、5、6の貼付剤はいずれも移行率が良好なものであったが、これらの実施例と比較すると比較例5、9、10の貼付剤は移行率が劣ったものであった。なお、比較例4、6の貼付剤は、貼付部位に粘着剤およびミリスチン酸イソプロピルが残留したため測定不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に粘着剤層を形成してなる貼付剤であって、当該粘着剤層は、重量平均分子量250万以上のアクリル酸エステル系ポリマーと、当該ポリマーと相溶する液状可塑剤を含有することを特徴とする、貼付剤。
【請求項2】
アクリル酸エステル系ポリマーの重量平均分子量が500万以上であることを特徴とする、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
アクリル酸エステル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
液状可塑剤の含有量が、アクリル酸エステル系ポリマー100重量部に対して10〜100重量部であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項5】
液状可塑剤が、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数が1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項6】
粘着剤層がさらに経皮吸収性薬物を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の貼付剤。

【公開番号】特開2009−102351(P2009−102351A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316268(P2008−316268)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【分割の表示】特願平10−195403の分割
【原出願日】平成10年7月10日(1998.7.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】