説明

貼付構造及び電子機器並びに貼付方法

【課題】貼付部材と被貼付部材を接着している両面接着部材を被貼付部材から容易に、かつ、完全に剥離することができる貼付構造及びその貼付構造を備えた電子機器並びに貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付する貼付方法を提供すること。
【解決手段】貼付部材174と両面接着部材173との接着力が、被貼付部材175と両面接着部材との接着力よりも大きくなるように構成する。これにより、被貼付部材に貼付されている貼付部材を引張ることにより、両面接着部材は常に貼付部材に貼り付いたまま被貼付部材から引き剥がされるので、両面接着部材が被貼付部材に残留してしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付部材と被貼付部材が両面接着部材を介して貼付された貼付構造及びその貼付構造を備えた電子機器並びに貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付する貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等においては部品のリサイクル化が推し進められている。プラスチックや金属等で成る部品の場合は、筐体に対してネジやスナップフィット等により取り付けられているため、当該部品の筐体に対する解体作業性が高く、筐体をリサイクルし易い。ところが、セラミック等で成る部品の場合は、筐体に対して両面接着テープ等により貼り付けられているため、当該部品の筐体に対する解体作業性が低く、筐体をリサイクルし難い。即ち、作業者はセラミック部品を指で摘んで引張ることにより筐体から剥がして解体するが、このときに筐体側に両面接着テープが貼り付いたままとなる場合がある。このような場合、筐体をリサイクルするためには、両面接着テープを筐体から剥がす必要があるが、全面が貼り付いている両面接着テープの剥がし作業は困難であり、手間が掛かってコスト高になる。
【0003】
そこで、セラミック部品と筐体の接合面に隣接する少なくとも1つの非接合面に、両面接着テープの剥離紙を残留させるようにした両面接着テープの貼付方法が提案されている。この貼付方法によれば、作業者がセラミック部品を解体したときに筐体側に両面接着テープが貼り付いたままとなっても、残留している両面接着テープの剥離紙を指で摘んで引張ることにより、両面接着テープを筐体から剥がすことができる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−3129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の貼付方法では、両面接着テープの剥離紙を残留させる分だけ余分に両面接着テープが必要であり、コスト高の一因となる。また、両面接着テープと筐体との接着力によっては、両面接着テープを完全に剥がすことが困難な場合があり、剥がす途中で両面接着テープが切れて筐体に残留してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、貼付部材と被貼付部材を接着している両面接着部材を被貼付部材から容易に、かつ、完全に剥離することができる貼付構造及びその貼付構造を備えた電子機器並びに貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付する貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明の貼付構造では、貼付部材と被貼付部材が両面接着部材を介して貼付された貼付構造であって、前記貼付部材と前記両面接着部材との接着力が、前記被貼付部材と前記両面接着部材との接着力よりも大きくなるように構成されていることを特徴としている。これにより、被貼付部材に貼付されている貼付部材を引張ることにより、両面接着部材は常に貼付部材に貼り付いたまま被貼付部材から引き剥がされるので、両面接着部材が被貼付部材に残留してしまうことを防止することができる。
【0008】
また、前記貼付部材の接着面積は、前記被貼付部材の接着面積よりも大きくなるように構成されていることを特徴としている。これにより、貼付部材と両面接着部材との接着力を、被貼付部材と両面接着部材との接着力よりも大きくすることができる。また、前記被貼付部材の貼付面は、凹凸形状に形成されていることを特徴としている。これにより、貼付部材の接着面積を、被貼付部材の接着面積よりも大きくすることができる。
【0009】
また、前記貼付部材の前記被貼付部材に対する位置決め部材が、前記被貼付部材の貼付面近傍に設けられていることを特徴としている。これにより、貼付部材が他の部材と干渉してしまう事態を防止することができる。また、前記位置決め部材は、少なくとも前記貼付部材の両側部を抱持可能な形状に形成されていることを特徴としている。これにより、抱持されていない貼付部材の部分を摘んで引張ることができる。このような貼付構造が適用可能なものとしては、貼付部材がコアであり、被貼付部材が筐体である場合である。
【0010】
上記目的達成のため、本発明の電子機器は、上記各貼付構造を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する電子機器を提供することが可能である。また、上記目的達成のため、本発明の貼付方法は、貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付する貼付方法であって、前記貼付部材と前記両面接着部材との接着力が、前記被貼付部材と前記両面接着部材との接着力よりも大きくなるように設定し、貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付することを特徴としている。これにより、被貼付部材に貼付されている貼付部材を引張ることにより、両面接着部材は常に貼付部材に貼り付いたまま被貼付部材から引き剥がされるので、両面接着部材が被貼付部材に残留してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る貼付構造を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図、図2は、その内部構成を示す断面図である。この記録装置はインクジェット式プリンタ100であり、例えば名刺、カード、L判/2L判、ハガキ、六切やJIS規格のA6判からA4判までのサイズの単票紙に記録することができる機能を備えている。このインクジェット式プリンタ100は、図1に示すように、全体が略直方体状のハウジング101で覆われている。そして、ハウジング101の上面における前面側には操作部110が配設され、前面における図示左側にはメモリカードスロット部120が配設され、上面における背面側には給紙部130が配設され、前面側には排紙部140が配設されている。
【0013】
また、ハウジング101の内部には、図2に示すように、用紙搬送部150及び記録部160が配設されている。そして、操作部110、メモリカードスロット部120、給紙部130、用紙搬送部150及び記録部160と図示しない電源や制御基板等とを電気的に接続するフレキシブルフラットケーブルやビニールケーブル(以下、単にケーブル170という)が配線されている。これらのケーブル170には、ノイズ防止等のためにフェライトコア171が嵌め込まれている。このフェライトコア(貼付部材、コア)171が、ハウジング101の一部として配設されている例えば操作部110と排紙部140とを仕切る仕切り板(被貼付部材、筐体)172に両面接着テープ(両面接着部材)173を介して貼付されている。このような本実施形態の貼付構造について更に図を参照して以下説明する。
【0014】
図3は、上記仕切り板172に上記フェライトコア171を貼付する前の状態を示す斜視図、図4は、上記仕切り板172に上記フェライトコア171を貼付した後の状態を示す斜視図、図5は、図4の側面図である。仕切り板172の上面には、フェライトコア171が貼付される貼付面174が設けられていると共に、この貼付面174の近傍にフェライトコア171を位置決めする位置決め部材175が設けられており、貼付面174及び位置決め部材175も本実施形態の貼付構造を構成している。
【0015】
貼付面174は、外形が矩形状であって表面が凹凸形状に形成されている。即ち、仕切り板172の上面の一部である矩形状の平坦面174a上には、レール状のリブ174bが複数本(この例では7本)所定間隔を空けて平行に突設されて貼付面174を構成している。ここで、フェライトコア171は、長円形の中空筒状に形成されており、中空部171aに通されたケーブル170が仕切り板172の貼付面174に沿うように、即ち、平坦な周面171bが貼付面174と対向するようにして貼付される。従って、両面接着テープ173は、フェライトコア171の平坦な周面171bの範囲内の大きさで、一面がこの平坦な周面171bに接着されると共に、他面が仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baに接着される。
【0016】
このとき、フェライトコア171の平坦な周面171bにおける両面接着テープ173との接着面積は、仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baにおける両面接着テープ173との接着面積よりも大きくなる。ここで、フェライトコア171に対する両面接着テープ173の接着力と、リブ174bに対する両面接着テープ173の接着力は、同一面積においては同一であるとすると、フェライトコア171の平坦な周面171bと両面接着テープ173との接着力は、仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baと両面接着テープ173との接着力よりも大きくなる。
【0017】
従って、作業者が、フェライトコア171と仕切り板172とを解体するためにフェライトコア171を指で摘んで引張ると、両面接着テープ173は、フェライトコア171の平坦な周面171bに貼り付いたままで、仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baから引き剥がされることになる。このため、作業者は、両面接着テープ173を仕切り板172から容易に、かつ完全に剥離させることができ、フェライトコア171と仕切り板172との解体作業性を高めることができる。
【0018】
位置決め部材175は、貼付面174の周縁を一部を除いて囲む壁状に形成されている。即ち、貼付面174の両側にて対向する2つの平面視略コの字の壁状に形成されて位置決め部材175を構成している。この位置決め部材175は、貼付面174にフェライトコア171が貼付されたときに、フェライトコア171の両側を抱持してフェライトコア171を位置決めする。これにより、フェライトコア171を貼付面174に貼付する際に正確に位置決めすることができるので、フェライトコア171が他の部品と干渉することは無く、フェライトコア171や他の部品の破損等を防止することができる。尚、図5に示すように、位置決め部材175の高さh1は、貼付面174にフェライトコア171を貼付したときの半円筒の周面の頂点までの高さh2よりも高くなるように形成する。これにより、フェライトコア171の両側を確実に抱持してフェライトコア171を正確に位置決めすることができる。
【0019】
また、フェライトコア171を貼付面174に貼付したときにフェライトコア171の周りを完全に囲んでおらず、フェライトコア171の両端面の略中央部に対応する部分が開放されている。従って、作業者がフェライトコア171と仕切り板172とを解体する際には、フェライトコア171の両端面を指で容易に摘んで引張ることができ、フェライトコア171と仕切り板172との解体作業性を高めることができる。更に、フェライトコア171の中空部171aに通されたケーブル170は、位置決め部材175とは干渉せずに上記開放部分を通るので、ケーブル170を仕切り板172に沿わせて配線することができる。従って、ケーブル170を無理に折り曲げる必要が無いので、断線を防止することができる。
【0020】
以上のように、本実施形態のフェライトコア171と仕切り板172が両面接着テープ173を介して貼付された貼付構造によれば、フェライトコア171と両面接着テープ173との接着力が、仕切り板172と両面接着テープ173との接着力よりも大きくなるように構成されているので、仕切り板172に貼付されているフェライトコア171を引張ることにより、両面接着テープ173は常にフェライトコア171に貼り付いたまま仕切り板172から引き剥がされ、両面接着テープ173が仕切り板172に残留してしまうことを防止することができる。
【0021】
また、フェライトコア171の接着面積は、仕切り板172の接着面積よりも大きくなるように構成されているので、フェライトコア171と面接着テープ173との接着力を、仕切り板172と両面接着テープ173との接着力よりも大きくすることができる。また、仕切り板172の貼付面174は、凹凸形状に形成されているので、フェライトコア171の接着面積を、仕切り板172の接着面積よりも大きくすることができる。
【0022】
また、フェライトコア171の仕切り板172に対する位置決め部材175が、フェライトコア171の貼付面174近傍に設けられているので、フェライトコア171が他の部品と干渉してしまう事態を防止することができる。また、位置決め部材175は、少なくともフェライトコア171の両側部を抱持可能な形状に形成されているので、抱持されていないフェライトコア171の部分を摘んで引張ることができる。
【0023】
尚、上述した実施形態では、貼付面174の断面が矩形波状となるように貼付面174を形成したが、これに限定されるものでは無く、フェライトコア171の平坦な周面171bにおける両面接着テープ173との接着面積が、仕切り板172の貼付面174における両面接着テープ173との接着面積よりも大きくなるように形成すれば良い。例えば貼付面174の断面がサイン波状や三角波状となるように、あるいは貼付面174の面粗度を高くした貼付面174を形成しても良い。
【0024】
また、フェライトコア171の平坦な周面171bにおける両面接着テープ173との接着面積が、仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baと両面接着テープ173との接着面積よりも大きくなるように形成したが、これに限定されるものでは無い。即ち、フェライトコア171の平坦な周面171bと両面接着テープ173との接着力が、仕切り板172の貼付面174に突設されたリブ174bの頂面174baと両面接着テープ173との接着力よりも大きくなるようにすれば良く、例えば両面接着テープ173の両面に塗布する接着剤の種類や厚さ等を異ならせることにより、あるいは貼付面174の材質を異ならせることにより上記接着力を得るようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
貼付部材を被貼付部材に対して貼付するものであれば、フェライトコアを仕切り板に貼付する場合に限定されるものでは無く、種々の材質に対して適用可能である。また、貼付構造を備えた電子機器であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置、スキャナ等の記録装置を含む一般的な電子機器であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る貼付構造を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図である。
【図2】図1のプリンタの内部構成を示す断面図である。
【図3】図2の仕切り板にフェライトコアを貼付する前の状態を示す斜視図である。
【図4】図2の仕切り板にフェライトコアを貼付した後の状態を示す斜視図である。
【図5】図4の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
100 インクジェット式プリンタ、101 ハウジング、110 操作部、120 メモリカードスロット部、130 給紙部、140 排紙部、150 用紙搬送部、160 記録部、170 ケーブル、171 フェライトコア、172 仕切り板、173 両面接着テープ、174 貼付面、175 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付部材と被貼付部材が両面接着部材を介して貼付された貼付構造であって、
前記貼付部材と前記両面接着部材との接着力が、前記被貼付部材と前記両面接着部材との接着力よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする貼付構造。
【請求項2】
前記貼付部材の接着面積は、前記被貼付部材の接着面積よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貼付構造。
【請求項3】
前記被貼付部材の貼付面は、凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の貼付構造。
【請求項4】
前記貼付部材の前記被貼付部材に対する位置決め部材が、前記被貼付部材の貼付面近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の貼付構造。
【請求項5】
前記位置決め部材は、少なくとも前記貼付部材の両側部を抱持可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の貼付構造。
【請求項6】
前記貼付部材は、コアであり、前記被貼付部材は、筐体であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の貼付構造。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の貼付構造を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付する貼付方法であって、
前記貼付部材と前記両面接着部材との接着力が、前記被貼付部材と前記両面接着部材との接着力よりも大きくなるように設定し、
貼付部材を両面接着部材を介して被貼付部材に貼付することを特徴とする貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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