貼付製剤
【課題】 貼付する際の操作性が良好で、しかも、剥離後の剥離シートによる事故の起る可能性を小さくできる貼付製剤を提供する。
【解決手段】 粘着剤層を被覆する剥離シート1が、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込み2を設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も完全に分割されず、単一のシートのままである、貼付製剤。好ましくは、幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるように切り込み2が形成され、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置される。また好ましくは、幅の小さいシート部1Aの幅(A)と幅の大きいシート部1Bの幅(B)との比(A:B)が1:2〜6、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10である。
【解決手段】 粘着剤層を被覆する剥離シート1が、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込み2を設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も完全に分割されず、単一のシートのままである、貼付製剤。好ましくは、幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるように切り込み2が形成され、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置される。また好ましくは、幅の小さいシート部1Aの幅(A)と幅の大きいシート部1Bの幅(B)との比(A:B)が1:2〜6、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付製剤に関し、詳しくは、剥離シートを有する貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品も新規な医薬品の開発には莫大な費用と多大な時間を要するため、既成医薬品の投与形態の変更を試みた製剤が多数開発されている。その一つとして、経皮吸収製剤が挙げられ、なかでも貼付製剤はその種類が増加してきている。
【0003】
貼付製剤としては、支持体、有効成分を含有した粘着剤層、剥離シートをこの順に積層した形態のもの(所謂、「マトリックスタイプの貼付製剤」)が一般的であるが、他に、支持体と皮膚接着層(粘着剤層)の間に有効成分を保持したリザーバーを有し、皮膚接着層(粘着剤層)を剥離シートで覆った形態のいわゆるリザーバータイプの貼付製剤も存在する。
【0004】
上記のように、貼付製剤は、通常、粘着剤層や皮膚接着層を保護する目的で柔軟性を有する合成樹脂フイルムやシリコン加工紙等からなる剥離シートで粘着剤層や皮膚接着層を被覆している。一方、貼付製剤自体(本体)は皮膚への物理刺激を低減する目的で柔軟な支持体と粘着剤層を有し、貼付製剤自体がコシの柔らかいシート状物となっている。
【0005】
剥離シートの機能は、粘着剤層の保護以外に、柔軟な貼付製剤の形状保持、貼付製剤を皮膚へ貼付する際の操作性向上等があり、このため、貼付製剤本体(すなわち、支持体/粘着剤層の積層体)よりも剛直なシートを剥離シートに使用することが多い。
【0006】
かかる剥離シートを有する貼付製剤では、通常、その周端の一部から指先や爪等で剥離シートを剥がした後、皮膚に貼付するが、貼付製剤(全体)が薄いシート状物であるため、剥離シートを剥がしにくく、剥離シートの剥離作業に要する時間が長くなり、時間を浪費することがある。そこで、従来から、多くの貼付製剤では、剥離シートの剥離作業を容易に行えるように、様々な工夫がなされている。
【0007】
具体的には、(1)剥離シートに切断部を設け、この切断部より剥離を行うようにしたもの(例えば、特許文献1)、(2)膏体より大面積の剥離シートを用いたもの、(3)2枚の剥離シートを膏体の略中央部分で重ね合わせ、この膏体に接触しない重ね合わせ部分より剥離を行うようにしたもの等が提案されている。
【0008】
近時では、上記(1)のタイプの貼付製剤において、シートの中央部を波状に切断した形状の剥離シートを有する貼付製剤(特許文献2)や2本の切断線を設けてシートを三分割し、中央部のシート片を剥離し、貼付後に両側の剥離シートを剥がしたりする貼付製剤(例えば、特許文献3)がよく見受けられるが、このタイプの貼付製剤では、剥離シートを剥離した後は、剥離シートは2枚乃至3枚のシートになるので、剥離シートを剥がした後にゴミとなるシートが多数生じるものであった。
【0009】
ところで貼付製剤は有効成分の用量設定を貼付面積により変えることが可能なため、一般に、子供や幼児への投与(貼付)は通常成人が使用する面積を小さくした製剤が使用される。しかしながら、面積が小さくなると上記のような剥離シートの工夫を行っても、貼付時の取り扱い性がさらに困難な傾向となり、特に幼児への貼付時には、保護者の苦労はさらに増える。例えば、剥離シートが中央の切断部を有した貼付製剤の場合、片側の剥離シートを剥離した貼付製剤を一方の手に持って、なかなか体を静止してくれない幼児を他方の手で押さえながら貼付し、残りの剥離シートを剥がさなければならず、その作業は煩雑であり、しかも、意図したところに貼付製剤を正確に貼付できない場合も少なくない。従って、取り扱い性がよく、速やかに貼付できる貼付製剤が求められている。また、サイズの小さい貼付製剤の場合、剥離後のゴミとなるシートはさらに小さいサイズになって、微小サイズのシート屑が複数枚生じるため、万が一、剥離後のシート屑を廃棄し忘れたり、落としてしまった場合、幼児がシート屑を誤飲する可能性も高くなる。
【特許文献1】実開昭62−050623号公報
【特許文献2】特開平10−265372号公報
【特許文献3】国際公開第00/69422号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、剥離シートを有する従来の貼付製剤に伴う種々の問題点を解消して、貼付する際の操作性が良好で、しかも、剥離後の剥離シートによる事故の起る可能性を低くすることができる貼付製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成からなる本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)粘着剤層を被覆する剥離シートが、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込みを設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も、単一のシートのままであることを特徴とする貼付製剤、
(2)単一のシートに切り込みを境にして幅の小さいシート部と幅の大きいシート部とが形成されるように切り込みが形成されており、幅の小さいシート部が貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置されている、上記(1)記載の貼付製剤、
(3)幅の小さいシート部の幅(A)と幅の大きいシート部の幅(B)との比(A:B)が1:2〜6であり、かつ、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周辺までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10であることを特徴とする、上記(2)記載の貼付製剤、
(4)切り込みを貼付製剤の外周と略平行に走るように形成してなる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(5)単一のシートが、切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置が施されたものである、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(6)切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置がシートの一部を切断したものである、上記(5)記載の貼付製剤、
(7)切り込みに接する直線部で屈曲可能となる処置がシートの厚みに対するハーフカット処理ある、上記(5)記載の貼付製剤、
(8)切り込みと該切り込みに接する直線部との交差角度(R)が0〜90°である、上記(5)〜(7)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(9)平面形状が略方形の貼付製剤であり、該略方形の一辺の長さが10〜50mmであることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(10)平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤であり、該円形若しくは楕円形の直径若しくは長径が10〜50mmである、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の貼付製剤、及び
(11)剥離シートの厚みが30〜150μmである、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の貼付製剤、に関する
【発明の効果】
【0012】
本発明の貼付製剤によれば、剥離シートの一部を剥離し、この剥離した部分を手で持って露出した粘着剤層を皮膚に貼付することで貼付製剤を仮着でき、その後、剥離シートを完全に剥離して残りの粘着剤層の露出部分を皮膚に貼付することによって、貼付製剤を片手で皮膚の意図した部分に比較的簡単に貼付することができる。従って、例えば、なかなか体を静止してくれない幼児等の患部に貼付製剤を貼付する際に、一方の手で幼児等を押さえながら他方の手で幼児の患部に貼付製剤を速やかに貼付することができる。さらに、粘着剤層から完全に剥離した剥離シートは単一のシートのままであることから、小サイズの貼付製剤であっても、剥離シートを剥がした後に微小サイズのシート屑を生じることがなく、シート屑を幼児が誤飲するという事故を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
図1及び図2は本発明の貼付製剤の第1及び第2の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。これら第1及び第2の具体例の貼付製剤10、20に示されるように、本発明の貼付製剤は、粘着剤層を被覆する剥離シート1を、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込み2を設けて構成したことを主たる特徴とし、好ましくは、切り込み2を、単一のシート1に該切り込み2を境にして幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるように形成したものである。ここで、剥離シート1は、以下に説明するように、粘着剤層から完全に剥離した後も完全に分割されずに、単一のシートの状態を維持するものである。
【0014】
図3(a)〜(d)は図2に示す貼付製剤20の貼付作業の手順を模式的に示した図であり、図中の図2と同一符号は同一または相当する部分を示し、符号4は支持体を示す。
本発明の貼付製剤の貼付方法を、かかる図3を参照して説明すると、まず、剥離シート1の切り込み2によって分断された2つのシート部1A、1Bのうちの幅の大きい側のシート部1Bを剥離する(図3(a)、(b))。
次に、上記の剥離したシート部1Bを手(図示せず)で持ち、該シート部1Bの剥離によって露出した粘着剤層3の粘着面3a(図3(b))を、皮膚表面の所望部分(患部)(図示せず)に貼り付け(図3(c))、この後、シート部1Bを貼付製剤20の周囲を引き回すように引っ張ることで、剥離シート1を粘着剤層3から完全に引き剥がし(図3(d))、粘着剤層3の粘着面3a全体を皮膚(患部)(図示せず)に圧着する。なお、粘着剤層3から完全に剥がし取った剥離シート1は、図3(d)に示すように、2枚以上のシート片に分割されることはなく、単一のシート(単一物)のままである。
【0015】
このように、本発明の貼付製剤では、剥離シート1の幅が大きいシート部1Bを剥離し、この剥離したシート部1Bを片手で持って露出した粘着剤層3を皮膚に貼り付け、次いで、該シート部1Bを引き回すように引っ張ることで、剥離シート1を粘着剤層3から完全に引き剥がして、粘着剤層3の粘着面全面を皮膚に圧着することができるので、片手で貼付製剤を皮膚の意図した部分に貼付することができる。さらに、粘着剤層3から完全に剥離した剥離シート1は、図3(d)に示すように、単一のシートのままであるので、廃棄が簡単であり、しかも、サイズが小さい貼付製剤を構成した場合に、複数の微小なシート屑を生じることもないので、幼児等が剥離後の剥離シートを誤飲するという事故を未然に防止することができる。
【0016】
本発明の貼付製剤において、剥離シートは、例えば、剥離処理が施されたプラスチックシート、金属箔及びシリコン加工紙等が挙げられる。好適には、無延伸または延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等のフイルム若しくはシート、又はアルミ箔等に公知の剥離処理(例えば、シリコーン離型処理等)を施したもの、シリコン加工紙が挙げられる。
【0017】
また、剥離シートの厚みは30〜150μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。これは、後述するように、本発明の貼付製剤の貼付操作(作業)では、剥離シート1の一部(幅が大きいシート部1B)を剥離後、剥離シート1を折り曲げる作業を行うのが好ましく、剥離シート1の厚みが大きすぎると折り曲げにくくなり、また、剥離シート1の厚みが薄すぎると、剥離シート1の一部(幅が大きいシート部1B)を剥離した後、該一部(幅が大きいシート部1B)を手で持って貼付操作を行い難くなるためである。
【0018】
本発明の貼付製剤は、支持体の少なくとも片面上に、粘着剤層と該粘着剤層を被覆する剥離シートを積層した構成を基本構成としている。粘着剤層3の粘着剤は、皮膚刺激性を有しない医療用途の粘着剤であれば特に制限されず、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。粘着剤層3には溶解状態、分散状態又は結晶析出状態で保持され、経皮的に全身性又は局所性の薬効を発現できるものであれば、任意の薬物を保持させることができる。このような薬物としては、具体的には、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、全身麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗欝剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬、麻薬等が挙げられる。これらの薬物は、必要に応じて2種類以上併用してもよい。また、その際、経皮吸収薬物の既知の吸収促進剤や架橋剤を適量添加することも可能である。さらに、支持体と粘着剤層(皮膚接着層)の間に有効成分を保持したリザーバーを設け、粘着剤層(皮膚接着層)を剥離シートで覆った形態のいわゆるリザーバータイプの貼付製剤にすることも可能である。本発明において、粘着剤層3の厚みは、一般的には10〜200μmであり、好ましくは20〜160μmである。
【0019】
本発明の貼付製剤に用いられる支持体4は、安全性が確保されているものであることが好ましく、さらに、貼付に際し、支持体のエッジ部による物理的刺激が少ないように、支持体は薄いものであることが好ましい。このような支持体としては、具体的には、ポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独フィルム及びこれらのラミネートフィルム等が好適である。また、上記材料からなる不織布、織布、編布、無孔シート、多孔シート等も好適であり、これらのいずれかの組み合わせでラミネートシートとした支持体でもかまわない。支持体の厚みは特に限定されないが、一般的には、2〜150μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0020】
本発明の貼付製剤において、貼付製剤の平面形状は特に限定はされないが、剥離シートの剥離作業のしやすさ、貼付製剤の貼付操作のしやすさ等の点から、前記図1及び図2の貼付製剤10、20のような略方形や、図4及び図5に示す貼付製剤30、40のような円形や楕円形等の形状が好ましい。図4及び図5は本発明の貼付製剤の第3及び第4の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。なお、本発明において、貼付製剤の平面形状おける「略方形」とは、略正方形、略長方形、菱形、台形等を意味する。これらの中でも、支持体のエッジによる物理刺激低減や剥離作業のしやすさ等の点から、図1及び図2に示す略正方形や略長方形(例えば、正方形、長方形、これらの4角に丸みを持たせた形状)が好ましい。また、「略方形」とは、図1及び図2に示すように角部に丸みを持たせた形状をも包含する概念である。また、「角部」とは、略方形中の2辺が接合して形成される先端部だけでなく、該先端部に丸みを持たせた場合の円弧部分をも包含する概念である。
【0021】
本発明において、貼付製剤が平面形状が略方形の貼付製剤である場合、4つの角部は、図1及び図2に示すように、必要に応じて適当な曲率半径の円弧部分を設けてもよく、その曲率半径は1〜7mmが好ましい。曲率半径が1mm未満の場合には丸みを持たせない場合と大きな差がないため円弧を形成する意味が乏しく、7mmを超えると製剤特性上の意義がなく、製造上の歩留まりが低下して経済的に不利になる傾向にある。
【0022】
本発明の貼付製剤において、剥離シート1に形成する切り込み2は、図1〜5に示されるように、基本的に、貼付製剤の外周と略平行に走るように形成する。なお、切り込みの形状は直線でも曲線でもよく、図6に示すような波線でもよい。波線は剥離シートの剥離を容易にする点で好ましい。また、切り込み2は、それによって単一のシート1に幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるものであれば、図7や図8に示すような不規則な形状であってもよい。ただし、このような場合、幅の大きい側のシート部1Bを持って粘着剤層を皮膚表面の所望部分(患部)(図示せず)に貼り付け後、剥離シート1を完全に粘着剤層から剥離する際の剥離性が若干低下する場合がある。なお、図6〜8中の符号L2は後記で説明する屈曲予定線である。
【0023】
本発明の貼付製剤において、「幅の小さいシート部」及び「幅の大きいシート部」おける「幅」とは、切り込み2と直交する方向での幅(切り込みから切り込みと直交する方向でのシート外周までの距離)であり、図1、2、4及び5中の符号Aが幅の小さいシート部1Aの幅であり、符号Bが幅の大きいシート部1Bの幅である。幅の小さいシート部1Aの幅(A)と幅の大きいシート部1Bの幅(B)との比(A:B)は、切り込み2の形状や貼付製剤の平面形状等によっても異なるが、一般的には1:2〜6とするのが適当であり、好ましくは1:3〜6である。なお、平面形状が略方形の貼付製剤の場合の、切り込み2の略方形の「角部」に沿う位置での「幅の小さいシート部」及び「幅の大きいシート部」における「幅」は上記の寸法比を外れていてもよく、また、切り込み2の開始位置付近における当該「幅」も上記の寸法比を外れていてもよい。
【0024】
剥離シート1を剥離する際の操作片となる幅の大きいシート部1Bは、その根元から折曲げたとき(図3(b))、それが貼付製剤の外周よりもはみ出す大きさであることが貼付操作の操作性の点から好ましいが、切り込み2の終端部2x(図1、2、4及び5中の符号2x)が剥離シート1の外周に近接し過ぎると、操作片であるシート部1Bを剥離したときや該シート部1Bをその根元から折曲げたときに、該シート部1Bだけでなく、剥離シート1の該シート部1Bに繋がる周縁部(粘着剤層3の周縁に粘着(接着)している部分)が剥離し、その後の貼付操作が困難になってしまう。よって、剥離シートの大きさ(D)と、切り込み2の終端部2xから剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)は1:2〜6であることが好ましく、1:3〜7であるのがより好ましい。
【0025】
本発明における「切り込みの終端部から剥離シートの外周までの最短距離(C)」とは、切り込み2の終端部2xから外周部への最短となる直線(図1、2、4、5中の直線L1)の長さである。また、「剥離シートの大きさ(D)」とは、該直線L1と平行な直線を該直線L1に重ねて、剥離シートの外周に対して2点で交差するように引いたときの、該2点間の距離(長さ)のことである。なお、図1、2、4、5において、かかる直線L1と平行な直線は省略している。
【0026】
本発明の貼付製剤において、剥離シート1に形成する切り込み2は、図1〜8に示されるように、該切り込み2によって区画される幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さ(部分)に沿って配置されるように形成するのが好ましい。切り込み2の長さがこれより短い場合(すなわち、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4未満の長さ(部分)にしか沿わない場合)、貼付製剤の柔軟性によってしわが入ったり、粘着面どうしが接着するなど、貼付操作の煩雑性が増す傾向となり、一方、これより長い場合(すなわち、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/2よりも長い長さ(部分)に沿う場合)、剥離したシート部1B(操作片)を持って粘着面を皮膚に貼付し、剥離シートの残りの部分(シート部1Aを含む)を剥がす際に剥離シートを剥がし難くなる傾向となる。
【0027】
本発明の貼付製剤では、先ず、幅の大きいシート部1Bを剥離し、該シート部1Bをその根元から折り曲げ、該シート部1Bを操作片として、貼付操作を行うので、かかる折曲げ操作を容易に行うために、予め、剥離シート1のシート部1Bの根元付近に、シートを屈曲可能にする屈曲予定線(直線)を切り込み2に接するように規定しておくのが好ましく、かかる屈曲予定線(直線)を規定するための処置としては、印刷等により直線状の折り目を付与する処置、シートの一部を切断しておく処置(例えば、屈曲予定線の両端に充当する部分に1〜2mm程度の長さの切れ目を形成しておく。)、シートの厚み方向にハーフカットを施す処置等が挙げられる。なお、シートの一部を切断したりシートの厚み方向にハーフカットを施す方法としては、レーザー切断で行うのが好ましく、レーザー切断装置であれば、照射エネルギー、照射時間の制御で粘着剤層には影響を与えず、剥離シートのみの切断が可能である。
【0028】
図9(a)〜(c)は、図1に示した平面形状が略正方形の貼付製剤10の剥離シート1に形成した屈曲予定線L2の種々の態様を示している。また、図10は図4に示した平面形状が円形の貼付製剤30の剥離シート1に形成した屈曲予定線L2の一態様、図11は図5に示した平面形状が楕円形の貼付製剤40の剥離シートに形成した屈曲予定線L2の一態様を示している。これらの図に示されるように、本発明において、切り込み2(の延長線)と、切り込みに接する屈曲予定線L2との交差角度(R)は0〜90°の範囲内にあるのが好しく、0〜60°の範囲にあるのがより好ましい。また、屈曲予定線L2は切り込み2の終端部2x付近において切り込み2に接すればよく、切り込み2の終端部2xに直接接するように形成しても(図9(a)、(b))、切り込み2の終端部2xの近傍で接するように形成してもよい(図9(c))。切り込み2と、切り込みに接する屈曲予定線L2との交差角度(R)が90°より大きい場合、剥離したシート部1Bを持っても、容易にシート部1Aを剥離できなくなる傾向となり、好ましくない。なお、本発明において、屈曲予定線L2は、前述の切り込み2を終端部2xで終端させずにそのままその方向へ継続して形成した場合の仮想の切り込みに充当する直線L1に重ねて形成するか、直線L1を基準にして幅の大きいシート部1B側に形成するものである。
【0029】
本発明の貼付製剤のサイズ(平面視での大きさ)は特に限定されないが、本発明の貼付製剤における剥離シートの構成は、比較的サイズの小さい貼付製剤において特に有効な手段である。すなわち、従来の2枚以上のシート片に完全に分割された剥離シートを有するサイズの小さい貼付製剤では、剥離シートを除去した後にゴミとなる剥離シート(シート屑)はさらに小さいサイズの複数枚のシート片となり(通常、該シート片は平坦な形状)、その廃棄作業が煩雑である。例えば、テーブルなど平坦面上に剥離後の剥離シートを置いた場合、サイズが小さく平坦な形状にシートは拾い上げることも困難である。これに対し、本発明の貼付製剤の剥離シートは剥離後も単一物(1枚の連続した状態を保持しており)であり、しかも、一部が屈曲により起立した立体的な形状であるため、テーブルなど平坦面上に剥離後の剥離シートを置いた場合も、容易に拾い上げることができ、速やかな廃棄が可能である。従って、本発明の貼付製剤は、例えば、平面形状が略方形の貼付製剤である場合の略方形の一辺の長さが10〜50mmの範囲にある貼付製剤や、平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤である場合の円形若しくは楕円形の直径もしくは長径が10〜50mmの範囲にある貼付製剤のような、サイズが比較的小さい貼付製剤においてその効果がより顕著に発揮される。
【0030】
本発明の貼付製剤の製造方法は従来公知の方法で製造することができる。例えば、表面を剥離処理した剥離シート1上に、前記粘着剤の溶液を所望の厚みの粘着剤層3が形成されるように塗布し、溶剤を除去した後、支持体4を貼りあわせて、シート状原反(積層体)を作製し、該シート状原反(積層体)から所望の平面形状の貼付製剤を打抜き(抜き取り)、該打抜き(抜き取り)と同時に剥離シート1に切り込み2を形成するか、或いは、該打抜き(抜き取り)後、貼付製剤の剥離シート1に金属刃等で切り込み2を形成することで、本発明の貼付製剤を製造することができる。打ち抜き装置にはダイカットやレーザー切断装置を用いることができるが、打ち抜きと同工程で剥離シート1に切り込み2を形成する場合、レーザー切断装置を使用するのが好ましい。レーザー切断装置を使用すれば、容易に任意の形状の製剤を抜くことができるとともに、照射エネルギー、照射時間の制御で粘着剤層には影響を与えることなく、剥離シート1に切り込み2を形成することができる。
【0031】
本発明の貼付製剤は、皮膚、粘膜等の表面に適用することができ、医療又は衛生材用、テーピング用等に広く応用することが可能である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
シリコーン離型処理を施した、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、アクリル酸/アクリル酸オクチルエステル共重合体の酢酸エチル溶液を乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布乾燥した後、坪量12g/m2のポリエチレンテレフタレート製不織布にPETフィルムをラミネートした支持体の不織布面を貼り合せてシート状原反を得た。次いで、該シート状原反をレーザー切断して、シート状原反から4つの角部に曲率半径2mmの丸みを持たせた一辺が15mmの略正方形のシート体を抜き取り、これと同時に、該略正方形のシート体の4つの角部のうちの任意の一つの角部における丸みを持たさない場合の当該角部の頂点から3mm離れた位置(当該角部の隣りの一辺上の位置)を開始点として、剥離シート(ポリエチレンテレフタレートフィルム)に図1(図9)と同様の略正方形の一辺と平行な直線状の切り込み(長さ12mm)を形成し、さらに屈曲予定線を規定するためのハーフカット処理を直線状に施して、図9に示す屈曲予定線を形成した。
すなわち、図9(a)に対応する貼付製剤I(切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:90°)、図9(b)に対応する貼付製剤II(切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:45°)、図9(c)に対応する貼付製剤III(屈曲予定線L2の長さ:8mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:45°)をそれぞれ作製した。
【0034】
(実施例2)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、実施例1と同様の4つの角部に曲率半径3mmの丸みを持たせた一辺が30mmの略正方形のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図12に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。
すなわち、図12(a)に対応する貼付製剤IV(切り込み2の開始点:角部頂点から5mmの位置、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:7mm)、図12(b)に対応する貼付製剤V(切り込み2の開始点:角部頂点から5mmの位置、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:23mm)、図12(c)に対応する貼付製剤VI(切り込み2の開始点:略正方形の一辺の中間、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:7mm)をそれぞれ作製した。
【0035】
(実施例3)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、直径30mmの円形のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図10に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。すなわち、図10に対応する貼付製剤VII(切り込み2と円形貼付製剤の外周との間隔5mm、切り込み2の深さが5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度が0°、屈曲予定線L2の長さが13mm)を作製した。
【0036】
(実施例4)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、長径が45mm、短径が30mmの楕円形状のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図11に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。すなわち、図10に対応する貼付製剤VIII(切り込み2と楕円形貼付製剤の外周との間隔5mm、切り込み2の深さが5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度が30°、屈曲予定線L2の長さが10mm)を作製した。
【0037】
(比較例1)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様にして、実施例1と同様の4つの角部に曲率半径2mmの丸みを持たせた一辺が15mmの略正方形状のシート体を抜き取り、図13に示すように、抜き取ったシート体の剥離シート1の中央部に該剥離シート1を等分に2分割する直線状の切断線12を形成して、貼付製剤(貼付製剤IX)を得た。
【0038】
上記実施例1〜4及び比較例1で作製した貼付製剤I〜IXを10人の成人を評価者とし、本人自身の胸に対して貼付操作を行わせ、下記の評価項目について4段階評価をした。各項目での10人の評価点の平均値を求め、その結果を表1に示した。
【0039】
(初めのセパレータを剥離した後の操作性)
3点:粘着剤面とセパレータとが貼り付くこともなく、片手での操作が容易である。
2点:粘着剤面とセパレータとが貼り付きそうになり、片手での操作がやや困難である。
1点:粘着剤面とセパレータとが部分的に貼り付き、片手での操作がかなり困難である。
0点:粘着剤面とセパレータとが貼り付き、貼付操作の継続が不可能である。
【0040】
(貼り易さ及び残りのセパレータの剥がし易さ)
3点:片手で把持して容易に粘着剤面の一部を患部に貼付することができ、残りのセパレータの剥離もスムーズである。
2点:片手で把持して粘着剤面の一部を患部に貼付することができ、残りのセパレータの剥離も可能である。
1点:片手で把持して粘着剤面の一部を患部に貼付することが困難であるが、残りのセパレータの剥離は可能である。
0点:片手で把持して粘着剤の一部を患部に貼付することが困難であり、残りのセパレータの剥離も不可能である。
【0041】
(貼付状態)
3点:皺もなく良好に貼付できる。
2点:少し皺が入るが、ほぼ良好に貼付できる。
1点:かなり皺が入り、良好に貼付できない。
0点:貼付できない。
【0042】
(全体的な操作性)
3点:極めて操作し易い。
2点:操作し易い。
1点:やや操作し難い。
0点:操作し難い。
【0043】
【表1】
【0044】
上記結果から、実施例1〜4の貼付製剤I〜VIIIは、貼付時の取扱い性に優れ、特に貼付操作時に粘着剤面とセパレータとが不用意に貼り付くことなく片手で操作することができ、セパレータの剥離も極めてスムーズに行うことが可能であり、一連の貼付操作性が従来よりも改善された良好な貼付製剤であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の貼付製剤の第1の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図2】本発明の貼付製剤の第2の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図3】図(a)〜図(d)は図2に示す貼付製剤の貼付作業の手順を模式的に示した図である。
【図4】本発明の貼付製剤の第3の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図5】本発明の貼付製剤の第4の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図6】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図7】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図8】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図9】図(a)〜図(c)は図1に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図10】図4に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線の一例を示す図である。
【図11】図5に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線の一例を示す図である。
【図12】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図13】比較例1の貼付製剤を剥離シートの側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 剥離シート
1A 幅の小さいシート部
1B 幅の大きいシート部
2 切り込み
2x 切り込みの終端部
3 粘着剤層
4 支持体
10、20、30、40 貼付製剤
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付製剤に関し、詳しくは、剥離シートを有する貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品も新規な医薬品の開発には莫大な費用と多大な時間を要するため、既成医薬品の投与形態の変更を試みた製剤が多数開発されている。その一つとして、経皮吸収製剤が挙げられ、なかでも貼付製剤はその種類が増加してきている。
【0003】
貼付製剤としては、支持体、有効成分を含有した粘着剤層、剥離シートをこの順に積層した形態のもの(所謂、「マトリックスタイプの貼付製剤」)が一般的であるが、他に、支持体と皮膚接着層(粘着剤層)の間に有効成分を保持したリザーバーを有し、皮膚接着層(粘着剤層)を剥離シートで覆った形態のいわゆるリザーバータイプの貼付製剤も存在する。
【0004】
上記のように、貼付製剤は、通常、粘着剤層や皮膚接着層を保護する目的で柔軟性を有する合成樹脂フイルムやシリコン加工紙等からなる剥離シートで粘着剤層や皮膚接着層を被覆している。一方、貼付製剤自体(本体)は皮膚への物理刺激を低減する目的で柔軟な支持体と粘着剤層を有し、貼付製剤自体がコシの柔らかいシート状物となっている。
【0005】
剥離シートの機能は、粘着剤層の保護以外に、柔軟な貼付製剤の形状保持、貼付製剤を皮膚へ貼付する際の操作性向上等があり、このため、貼付製剤本体(すなわち、支持体/粘着剤層の積層体)よりも剛直なシートを剥離シートに使用することが多い。
【0006】
かかる剥離シートを有する貼付製剤では、通常、その周端の一部から指先や爪等で剥離シートを剥がした後、皮膚に貼付するが、貼付製剤(全体)が薄いシート状物であるため、剥離シートを剥がしにくく、剥離シートの剥離作業に要する時間が長くなり、時間を浪費することがある。そこで、従来から、多くの貼付製剤では、剥離シートの剥離作業を容易に行えるように、様々な工夫がなされている。
【0007】
具体的には、(1)剥離シートに切断部を設け、この切断部より剥離を行うようにしたもの(例えば、特許文献1)、(2)膏体より大面積の剥離シートを用いたもの、(3)2枚の剥離シートを膏体の略中央部分で重ね合わせ、この膏体に接触しない重ね合わせ部分より剥離を行うようにしたもの等が提案されている。
【0008】
近時では、上記(1)のタイプの貼付製剤において、シートの中央部を波状に切断した形状の剥離シートを有する貼付製剤(特許文献2)や2本の切断線を設けてシートを三分割し、中央部のシート片を剥離し、貼付後に両側の剥離シートを剥がしたりする貼付製剤(例えば、特許文献3)がよく見受けられるが、このタイプの貼付製剤では、剥離シートを剥離した後は、剥離シートは2枚乃至3枚のシートになるので、剥離シートを剥がした後にゴミとなるシートが多数生じるものであった。
【0009】
ところで貼付製剤は有効成分の用量設定を貼付面積により変えることが可能なため、一般に、子供や幼児への投与(貼付)は通常成人が使用する面積を小さくした製剤が使用される。しかしながら、面積が小さくなると上記のような剥離シートの工夫を行っても、貼付時の取り扱い性がさらに困難な傾向となり、特に幼児への貼付時には、保護者の苦労はさらに増える。例えば、剥離シートが中央の切断部を有した貼付製剤の場合、片側の剥離シートを剥離した貼付製剤を一方の手に持って、なかなか体を静止してくれない幼児を他方の手で押さえながら貼付し、残りの剥離シートを剥がさなければならず、その作業は煩雑であり、しかも、意図したところに貼付製剤を正確に貼付できない場合も少なくない。従って、取り扱い性がよく、速やかに貼付できる貼付製剤が求められている。また、サイズの小さい貼付製剤の場合、剥離後のゴミとなるシートはさらに小さいサイズになって、微小サイズのシート屑が複数枚生じるため、万が一、剥離後のシート屑を廃棄し忘れたり、落としてしまった場合、幼児がシート屑を誤飲する可能性も高くなる。
【特許文献1】実開昭62−050623号公報
【特許文献2】特開平10−265372号公報
【特許文献3】国際公開第00/69422号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、剥離シートを有する従来の貼付製剤に伴う種々の問題点を解消して、貼付する際の操作性が良好で、しかも、剥離後の剥離シートによる事故の起る可能性を低くすることができる貼付製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成からなる本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)粘着剤層を被覆する剥離シートが、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込みを設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も、単一のシートのままであることを特徴とする貼付製剤、
(2)単一のシートに切り込みを境にして幅の小さいシート部と幅の大きいシート部とが形成されるように切り込みが形成されており、幅の小さいシート部が貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置されている、上記(1)記載の貼付製剤、
(3)幅の小さいシート部の幅(A)と幅の大きいシート部の幅(B)との比(A:B)が1:2〜6であり、かつ、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周辺までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10であることを特徴とする、上記(2)記載の貼付製剤、
(4)切り込みを貼付製剤の外周と略平行に走るように形成してなる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(5)単一のシートが、切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置が施されたものである、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(6)切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置がシートの一部を切断したものである、上記(5)記載の貼付製剤、
(7)切り込みに接する直線部で屈曲可能となる処置がシートの厚みに対するハーフカット処理ある、上記(5)記載の貼付製剤、
(8)切り込みと該切り込みに接する直線部との交差角度(R)が0〜90°である、上記(5)〜(7)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(9)平面形状が略方形の貼付製剤であり、該略方形の一辺の長さが10〜50mmであることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の貼付製剤、
(10)平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤であり、該円形若しくは楕円形の直径若しくは長径が10〜50mmである、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の貼付製剤、及び
(11)剥離シートの厚みが30〜150μmである、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の貼付製剤、に関する
【発明の効果】
【0012】
本発明の貼付製剤によれば、剥離シートの一部を剥離し、この剥離した部分を手で持って露出した粘着剤層を皮膚に貼付することで貼付製剤を仮着でき、その後、剥離シートを完全に剥離して残りの粘着剤層の露出部分を皮膚に貼付することによって、貼付製剤を片手で皮膚の意図した部分に比較的簡単に貼付することができる。従って、例えば、なかなか体を静止してくれない幼児等の患部に貼付製剤を貼付する際に、一方の手で幼児等を押さえながら他方の手で幼児の患部に貼付製剤を速やかに貼付することができる。さらに、粘着剤層から完全に剥離した剥離シートは単一のシートのままであることから、小サイズの貼付製剤であっても、剥離シートを剥がした後に微小サイズのシート屑を生じることがなく、シート屑を幼児が誤飲するという事故を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
図1及び図2は本発明の貼付製剤の第1及び第2の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。これら第1及び第2の具体例の貼付製剤10、20に示されるように、本発明の貼付製剤は、粘着剤層を被覆する剥離シート1を、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込み2を設けて構成したことを主たる特徴とし、好ましくは、切り込み2を、単一のシート1に該切り込み2を境にして幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるように形成したものである。ここで、剥離シート1は、以下に説明するように、粘着剤層から完全に剥離した後も完全に分割されずに、単一のシートの状態を維持するものである。
【0014】
図3(a)〜(d)は図2に示す貼付製剤20の貼付作業の手順を模式的に示した図であり、図中の図2と同一符号は同一または相当する部分を示し、符号4は支持体を示す。
本発明の貼付製剤の貼付方法を、かかる図3を参照して説明すると、まず、剥離シート1の切り込み2によって分断された2つのシート部1A、1Bのうちの幅の大きい側のシート部1Bを剥離する(図3(a)、(b))。
次に、上記の剥離したシート部1Bを手(図示せず)で持ち、該シート部1Bの剥離によって露出した粘着剤層3の粘着面3a(図3(b))を、皮膚表面の所望部分(患部)(図示せず)に貼り付け(図3(c))、この後、シート部1Bを貼付製剤20の周囲を引き回すように引っ張ることで、剥離シート1を粘着剤層3から完全に引き剥がし(図3(d))、粘着剤層3の粘着面3a全体を皮膚(患部)(図示せず)に圧着する。なお、粘着剤層3から完全に剥がし取った剥離シート1は、図3(d)に示すように、2枚以上のシート片に分割されることはなく、単一のシート(単一物)のままである。
【0015】
このように、本発明の貼付製剤では、剥離シート1の幅が大きいシート部1Bを剥離し、この剥離したシート部1Bを片手で持って露出した粘着剤層3を皮膚に貼り付け、次いで、該シート部1Bを引き回すように引っ張ることで、剥離シート1を粘着剤層3から完全に引き剥がして、粘着剤層3の粘着面全面を皮膚に圧着することができるので、片手で貼付製剤を皮膚の意図した部分に貼付することができる。さらに、粘着剤層3から完全に剥離した剥離シート1は、図3(d)に示すように、単一のシートのままであるので、廃棄が簡単であり、しかも、サイズが小さい貼付製剤を構成した場合に、複数の微小なシート屑を生じることもないので、幼児等が剥離後の剥離シートを誤飲するという事故を未然に防止することができる。
【0016】
本発明の貼付製剤において、剥離シートは、例えば、剥離処理が施されたプラスチックシート、金属箔及びシリコン加工紙等が挙げられる。好適には、無延伸または延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等のフイルム若しくはシート、又はアルミ箔等に公知の剥離処理(例えば、シリコーン離型処理等)を施したもの、シリコン加工紙が挙げられる。
【0017】
また、剥離シートの厚みは30〜150μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。これは、後述するように、本発明の貼付製剤の貼付操作(作業)では、剥離シート1の一部(幅が大きいシート部1B)を剥離後、剥離シート1を折り曲げる作業を行うのが好ましく、剥離シート1の厚みが大きすぎると折り曲げにくくなり、また、剥離シート1の厚みが薄すぎると、剥離シート1の一部(幅が大きいシート部1B)を剥離した後、該一部(幅が大きいシート部1B)を手で持って貼付操作を行い難くなるためである。
【0018】
本発明の貼付製剤は、支持体の少なくとも片面上に、粘着剤層と該粘着剤層を被覆する剥離シートを積層した構成を基本構成としている。粘着剤層3の粘着剤は、皮膚刺激性を有しない医療用途の粘着剤であれば特に制限されず、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。粘着剤層3には溶解状態、分散状態又は結晶析出状態で保持され、経皮的に全身性又は局所性の薬効を発現できるものであれば、任意の薬物を保持させることができる。このような薬物としては、具体的には、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、全身麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗欝剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬、麻薬等が挙げられる。これらの薬物は、必要に応じて2種類以上併用してもよい。また、その際、経皮吸収薬物の既知の吸収促進剤や架橋剤を適量添加することも可能である。さらに、支持体と粘着剤層(皮膚接着層)の間に有効成分を保持したリザーバーを設け、粘着剤層(皮膚接着層)を剥離シートで覆った形態のいわゆるリザーバータイプの貼付製剤にすることも可能である。本発明において、粘着剤層3の厚みは、一般的には10〜200μmであり、好ましくは20〜160μmである。
【0019】
本発明の貼付製剤に用いられる支持体4は、安全性が確保されているものであることが好ましく、さらに、貼付に際し、支持体のエッジ部による物理的刺激が少ないように、支持体は薄いものであることが好ましい。このような支持体としては、具体的には、ポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独フィルム及びこれらのラミネートフィルム等が好適である。また、上記材料からなる不織布、織布、編布、無孔シート、多孔シート等も好適であり、これらのいずれかの組み合わせでラミネートシートとした支持体でもかまわない。支持体の厚みは特に限定されないが、一般的には、2〜150μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0020】
本発明の貼付製剤において、貼付製剤の平面形状は特に限定はされないが、剥離シートの剥離作業のしやすさ、貼付製剤の貼付操作のしやすさ等の点から、前記図1及び図2の貼付製剤10、20のような略方形や、図4及び図5に示す貼付製剤30、40のような円形や楕円形等の形状が好ましい。図4及び図5は本発明の貼付製剤の第3及び第4の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。なお、本発明において、貼付製剤の平面形状おける「略方形」とは、略正方形、略長方形、菱形、台形等を意味する。これらの中でも、支持体のエッジによる物理刺激低減や剥離作業のしやすさ等の点から、図1及び図2に示す略正方形や略長方形(例えば、正方形、長方形、これらの4角に丸みを持たせた形状)が好ましい。また、「略方形」とは、図1及び図2に示すように角部に丸みを持たせた形状をも包含する概念である。また、「角部」とは、略方形中の2辺が接合して形成される先端部だけでなく、該先端部に丸みを持たせた場合の円弧部分をも包含する概念である。
【0021】
本発明において、貼付製剤が平面形状が略方形の貼付製剤である場合、4つの角部は、図1及び図2に示すように、必要に応じて適当な曲率半径の円弧部分を設けてもよく、その曲率半径は1〜7mmが好ましい。曲率半径が1mm未満の場合には丸みを持たせない場合と大きな差がないため円弧を形成する意味が乏しく、7mmを超えると製剤特性上の意義がなく、製造上の歩留まりが低下して経済的に不利になる傾向にある。
【0022】
本発明の貼付製剤において、剥離シート1に形成する切り込み2は、図1〜5に示されるように、基本的に、貼付製剤の外周と略平行に走るように形成する。なお、切り込みの形状は直線でも曲線でもよく、図6に示すような波線でもよい。波線は剥離シートの剥離を容易にする点で好ましい。また、切り込み2は、それによって単一のシート1に幅の小さいシート部1Aと幅の大きいシート部1Bとが形成されるものであれば、図7や図8に示すような不規則な形状であってもよい。ただし、このような場合、幅の大きい側のシート部1Bを持って粘着剤層を皮膚表面の所望部分(患部)(図示せず)に貼り付け後、剥離シート1を完全に粘着剤層から剥離する際の剥離性が若干低下する場合がある。なお、図6〜8中の符号L2は後記で説明する屈曲予定線である。
【0023】
本発明の貼付製剤において、「幅の小さいシート部」及び「幅の大きいシート部」おける「幅」とは、切り込み2と直交する方向での幅(切り込みから切り込みと直交する方向でのシート外周までの距離)であり、図1、2、4及び5中の符号Aが幅の小さいシート部1Aの幅であり、符号Bが幅の大きいシート部1Bの幅である。幅の小さいシート部1Aの幅(A)と幅の大きいシート部1Bの幅(B)との比(A:B)は、切り込み2の形状や貼付製剤の平面形状等によっても異なるが、一般的には1:2〜6とするのが適当であり、好ましくは1:3〜6である。なお、平面形状が略方形の貼付製剤の場合の、切り込み2の略方形の「角部」に沿う位置での「幅の小さいシート部」及び「幅の大きいシート部」における「幅」は上記の寸法比を外れていてもよく、また、切り込み2の開始位置付近における当該「幅」も上記の寸法比を外れていてもよい。
【0024】
剥離シート1を剥離する際の操作片となる幅の大きいシート部1Bは、その根元から折曲げたとき(図3(b))、それが貼付製剤の外周よりもはみ出す大きさであることが貼付操作の操作性の点から好ましいが、切り込み2の終端部2x(図1、2、4及び5中の符号2x)が剥離シート1の外周に近接し過ぎると、操作片であるシート部1Bを剥離したときや該シート部1Bをその根元から折曲げたときに、該シート部1Bだけでなく、剥離シート1の該シート部1Bに繋がる周縁部(粘着剤層3の周縁に粘着(接着)している部分)が剥離し、その後の貼付操作が困難になってしまう。よって、剥離シートの大きさ(D)と、切り込み2の終端部2xから剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)は1:2〜6であることが好ましく、1:3〜7であるのがより好ましい。
【0025】
本発明における「切り込みの終端部から剥離シートの外周までの最短距離(C)」とは、切り込み2の終端部2xから外周部への最短となる直線(図1、2、4、5中の直線L1)の長さである。また、「剥離シートの大きさ(D)」とは、該直線L1と平行な直線を該直線L1に重ねて、剥離シートの外周に対して2点で交差するように引いたときの、該2点間の距離(長さ)のことである。なお、図1、2、4、5において、かかる直線L1と平行な直線は省略している。
【0026】
本発明の貼付製剤において、剥離シート1に形成する切り込み2は、図1〜8に示されるように、該切り込み2によって区画される幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さ(部分)に沿って配置されるように形成するのが好ましい。切り込み2の長さがこれより短い場合(すなわち、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/4未満の長さ(部分)にしか沿わない場合)、貼付製剤の柔軟性によってしわが入ったり、粘着面どうしが接着するなど、貼付操作の煩雑性が増す傾向となり、一方、これより長い場合(すなわち、幅の小さいシート部1Aが貼付製剤の外周の1/2よりも長い長さ(部分)に沿う場合)、剥離したシート部1B(操作片)を持って粘着面を皮膚に貼付し、剥離シートの残りの部分(シート部1Aを含む)を剥がす際に剥離シートを剥がし難くなる傾向となる。
【0027】
本発明の貼付製剤では、先ず、幅の大きいシート部1Bを剥離し、該シート部1Bをその根元から折り曲げ、該シート部1Bを操作片として、貼付操作を行うので、かかる折曲げ操作を容易に行うために、予め、剥離シート1のシート部1Bの根元付近に、シートを屈曲可能にする屈曲予定線(直線)を切り込み2に接するように規定しておくのが好ましく、かかる屈曲予定線(直線)を規定するための処置としては、印刷等により直線状の折り目を付与する処置、シートの一部を切断しておく処置(例えば、屈曲予定線の両端に充当する部分に1〜2mm程度の長さの切れ目を形成しておく。)、シートの厚み方向にハーフカットを施す処置等が挙げられる。なお、シートの一部を切断したりシートの厚み方向にハーフカットを施す方法としては、レーザー切断で行うのが好ましく、レーザー切断装置であれば、照射エネルギー、照射時間の制御で粘着剤層には影響を与えず、剥離シートのみの切断が可能である。
【0028】
図9(a)〜(c)は、図1に示した平面形状が略正方形の貼付製剤10の剥離シート1に形成した屈曲予定線L2の種々の態様を示している。また、図10は図4に示した平面形状が円形の貼付製剤30の剥離シート1に形成した屈曲予定線L2の一態様、図11は図5に示した平面形状が楕円形の貼付製剤40の剥離シートに形成した屈曲予定線L2の一態様を示している。これらの図に示されるように、本発明において、切り込み2(の延長線)と、切り込みに接する屈曲予定線L2との交差角度(R)は0〜90°の範囲内にあるのが好しく、0〜60°の範囲にあるのがより好ましい。また、屈曲予定線L2は切り込み2の終端部2x付近において切り込み2に接すればよく、切り込み2の終端部2xに直接接するように形成しても(図9(a)、(b))、切り込み2の終端部2xの近傍で接するように形成してもよい(図9(c))。切り込み2と、切り込みに接する屈曲予定線L2との交差角度(R)が90°より大きい場合、剥離したシート部1Bを持っても、容易にシート部1Aを剥離できなくなる傾向となり、好ましくない。なお、本発明において、屈曲予定線L2は、前述の切り込み2を終端部2xで終端させずにそのままその方向へ継続して形成した場合の仮想の切り込みに充当する直線L1に重ねて形成するか、直線L1を基準にして幅の大きいシート部1B側に形成するものである。
【0029】
本発明の貼付製剤のサイズ(平面視での大きさ)は特に限定されないが、本発明の貼付製剤における剥離シートの構成は、比較的サイズの小さい貼付製剤において特に有効な手段である。すなわち、従来の2枚以上のシート片に完全に分割された剥離シートを有するサイズの小さい貼付製剤では、剥離シートを除去した後にゴミとなる剥離シート(シート屑)はさらに小さいサイズの複数枚のシート片となり(通常、該シート片は平坦な形状)、その廃棄作業が煩雑である。例えば、テーブルなど平坦面上に剥離後の剥離シートを置いた場合、サイズが小さく平坦な形状にシートは拾い上げることも困難である。これに対し、本発明の貼付製剤の剥離シートは剥離後も単一物(1枚の連続した状態を保持しており)であり、しかも、一部が屈曲により起立した立体的な形状であるため、テーブルなど平坦面上に剥離後の剥離シートを置いた場合も、容易に拾い上げることができ、速やかな廃棄が可能である。従って、本発明の貼付製剤は、例えば、平面形状が略方形の貼付製剤である場合の略方形の一辺の長さが10〜50mmの範囲にある貼付製剤や、平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤である場合の円形若しくは楕円形の直径もしくは長径が10〜50mmの範囲にある貼付製剤のような、サイズが比較的小さい貼付製剤においてその効果がより顕著に発揮される。
【0030】
本発明の貼付製剤の製造方法は従来公知の方法で製造することができる。例えば、表面を剥離処理した剥離シート1上に、前記粘着剤の溶液を所望の厚みの粘着剤層3が形成されるように塗布し、溶剤を除去した後、支持体4を貼りあわせて、シート状原反(積層体)を作製し、該シート状原反(積層体)から所望の平面形状の貼付製剤を打抜き(抜き取り)、該打抜き(抜き取り)と同時に剥離シート1に切り込み2を形成するか、或いは、該打抜き(抜き取り)後、貼付製剤の剥離シート1に金属刃等で切り込み2を形成することで、本発明の貼付製剤を製造することができる。打ち抜き装置にはダイカットやレーザー切断装置を用いることができるが、打ち抜きと同工程で剥離シート1に切り込み2を形成する場合、レーザー切断装置を使用するのが好ましい。レーザー切断装置を使用すれば、容易に任意の形状の製剤を抜くことができるとともに、照射エネルギー、照射時間の制御で粘着剤層には影響を与えることなく、剥離シート1に切り込み2を形成することができる。
【0031】
本発明の貼付製剤は、皮膚、粘膜等の表面に適用することができ、医療又は衛生材用、テーピング用等に広く応用することが可能である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
シリコーン離型処理を施した、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、アクリル酸/アクリル酸オクチルエステル共重合体の酢酸エチル溶液を乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布乾燥した後、坪量12g/m2のポリエチレンテレフタレート製不織布にPETフィルムをラミネートした支持体の不織布面を貼り合せてシート状原反を得た。次いで、該シート状原反をレーザー切断して、シート状原反から4つの角部に曲率半径2mmの丸みを持たせた一辺が15mmの略正方形のシート体を抜き取り、これと同時に、該略正方形のシート体の4つの角部のうちの任意の一つの角部における丸みを持たさない場合の当該角部の頂点から3mm離れた位置(当該角部の隣りの一辺上の位置)を開始点として、剥離シート(ポリエチレンテレフタレートフィルム)に図1(図9)と同様の略正方形の一辺と平行な直線状の切り込み(長さ12mm)を形成し、さらに屈曲予定線を規定するためのハーフカット処理を直線状に施して、図9に示す屈曲予定線を形成した。
すなわち、図9(a)に対応する貼付製剤I(切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:90°)、図9(b)に対応する貼付製剤II(切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:45°)、図9(c)に対応する貼付製剤III(屈曲予定線L2の長さ:8mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:45°)をそれぞれ作製した。
【0034】
(実施例2)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、実施例1と同様の4つの角部に曲率半径3mmの丸みを持たせた一辺が30mmの略正方形のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図12に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。
すなわち、図12(a)に対応する貼付製剤IV(切り込み2の開始点:角部頂点から5mmの位置、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:7mm)、図12(b)に対応する貼付製剤V(切り込み2の開始点:角部頂点から5mmの位置、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:23mm)、図12(c)に対応する貼付製剤VI(切り込み2の開始点:略正方形の一辺の中間、切り込み2と略正方形の一辺との間隔5mm、切り込み2の深さ:5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度:0°、屈曲予定線L2の長さ:7mm)をそれぞれ作製した。
【0035】
(実施例3)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、直径30mmの円形のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図10に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。すなわち、図10に対応する貼付製剤VII(切り込み2と円形貼付製剤の外周との間隔5mm、切り込み2の深さが5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度が0°、屈曲予定線L2の長さが13mm)を作製した。
【0036】
(実施例4)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様の処理により、長径が45mm、短径が30mmの楕円形状のシート体を抜き取るとともに、抜き取ったシート体に図11に示す切り込みと屈曲予定線を形成した。すなわち、図10に対応する貼付製剤VIII(切り込み2と楕円形貼付製剤の外周との間隔5mm、切り込み2の深さが5mm、切り込み2と屈曲予定線L2の交差角度が30°、屈曲予定線L2の長さが10mm)を作製した。
【0037】
(比較例1)
実施例1で得たシート状原反から、実施例1と同様にして、実施例1と同様の4つの角部に曲率半径2mmの丸みを持たせた一辺が15mmの略正方形状のシート体を抜き取り、図13に示すように、抜き取ったシート体の剥離シート1の中央部に該剥離シート1を等分に2分割する直線状の切断線12を形成して、貼付製剤(貼付製剤IX)を得た。
【0038】
上記実施例1〜4及び比較例1で作製した貼付製剤I〜IXを10人の成人を評価者とし、本人自身の胸に対して貼付操作を行わせ、下記の評価項目について4段階評価をした。各項目での10人の評価点の平均値を求め、その結果を表1に示した。
【0039】
(初めのセパレータを剥離した後の操作性)
3点:粘着剤面とセパレータとが貼り付くこともなく、片手での操作が容易である。
2点:粘着剤面とセパレータとが貼り付きそうになり、片手での操作がやや困難である。
1点:粘着剤面とセパレータとが部分的に貼り付き、片手での操作がかなり困難である。
0点:粘着剤面とセパレータとが貼り付き、貼付操作の継続が不可能である。
【0040】
(貼り易さ及び残りのセパレータの剥がし易さ)
3点:片手で把持して容易に粘着剤面の一部を患部に貼付することができ、残りのセパレータの剥離もスムーズである。
2点:片手で把持して粘着剤面の一部を患部に貼付することができ、残りのセパレータの剥離も可能である。
1点:片手で把持して粘着剤面の一部を患部に貼付することが困難であるが、残りのセパレータの剥離は可能である。
0点:片手で把持して粘着剤の一部を患部に貼付することが困難であり、残りのセパレータの剥離も不可能である。
【0041】
(貼付状態)
3点:皺もなく良好に貼付できる。
2点:少し皺が入るが、ほぼ良好に貼付できる。
1点:かなり皺が入り、良好に貼付できない。
0点:貼付できない。
【0042】
(全体的な操作性)
3点:極めて操作し易い。
2点:操作し易い。
1点:やや操作し難い。
0点:操作し難い。
【0043】
【表1】
【0044】
上記結果から、実施例1〜4の貼付製剤I〜VIIIは、貼付時の取扱い性に優れ、特に貼付操作時に粘着剤面とセパレータとが不用意に貼り付くことなく片手で操作することができ、セパレータの剥離も極めてスムーズに行うことが可能であり、一連の貼付操作性が従来よりも改善された良好な貼付製剤であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の貼付製剤の第1の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図2】本発明の貼付製剤の第2の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図3】図(a)〜図(d)は図2に示す貼付製剤の貼付作業の手順を模式的に示した図である。
【図4】本発明の貼付製剤の第3の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図5】本発明の貼付製剤の第4の具体例を剥離シートの側から見た平面図である。
【図6】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図7】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図8】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図9】図(a)〜図(c)は図1に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図10】図4に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線の一例を示す図である。
【図11】図5に示す貼付製剤における剥離シートに設ける屈曲予定線の一例を示す図である。
【図12】本発明の貼付製剤における剥離シートに設ける切り込みと屈曲予定線のバリエーションを示す図である。
【図13】比較例1の貼付製剤を剥離シートの側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 剥離シート
1A 幅の小さいシート部
1B 幅の大きいシート部
2 切り込み
2x 切り込みの終端部
3 粘着剤層
4 支持体
10、20、30、40 貼付製剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を被覆する剥離シートが、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込みを設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も、単一のシートのままであることを特徴とする貼付製剤。
【請求項2】
単一のシートに切り込みを境にして幅の小さいシート部と幅の大きいシート部とが形成されるように切り込みが形成されており、幅の小さいシート部が貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置されている、請求項1に記載の貼付製剤。
【請求項3】
幅の小さいシート部の幅(A)と幅の大きいシート部の幅(B)との比(A:B)が1:2〜6であり、かつ、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10であることを特徴とする、請求項2記載の貼付製剤。
【請求項4】
切り込みを貼付製剤の外周と略平行に走るように形成してなる、請求項1〜3のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項5】
単一のシートが、切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置が施されたものである、請求項1〜4のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項6】
切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置がシートの一部を切断したものである、請求項5記載の貼付製剤。
【請求項7】
切り込みに接する直線部で屈曲可能となる処置がシートの厚みに対するハーフカット処理ある、請求項5記載の貼付製剤。
【請求項8】
切り込みと該切り込みに接する直線部との交差角度(R)が0〜90°である、請求項5〜7のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項9】
平面形状が略方形の貼付製剤であり、該略方形の一辺の長さが10〜50mmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項10】
平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤であり、該円形若しくは楕円形の直径若しくは長径が10〜50mmである、請求項1〜8のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項11】
剥離シートの厚みが30〜150μmである、請求項1〜10のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項1】
粘着剤層を被覆する剥離シートが、単一のシートに該シートを完全に分割することのない切り込みを設けたものであり、かつ、粘着剤層から完全に剥離した後も、単一のシートのままであることを特徴とする貼付製剤。
【請求項2】
単一のシートに切り込みを境にして幅の小さいシート部と幅の大きいシート部とが形成されるように切り込みが形成されており、幅の小さいシート部が貼付製剤の外周の1/4〜1/2の長さに沿って配置されている、請求項1に記載の貼付製剤。
【請求項3】
幅の小さいシート部の幅(A)と幅の大きいシート部の幅(B)との比(A:B)が1:2〜6であり、かつ、剥離シートの大きさ(D)と切り込みの終端から剥離シートの外周までの最短距離(C)との比(C:D)が1:3〜10であることを特徴とする、請求項2記載の貼付製剤。
【請求項4】
切り込みを貼付製剤の外周と略平行に走るように形成してなる、請求項1〜3のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項5】
単一のシートが、切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置が施されたものである、請求項1〜4のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項6】
切り込みに接する直線部にて屈曲可能となる処置がシートの一部を切断したものである、請求項5記載の貼付製剤。
【請求項7】
切り込みに接する直線部で屈曲可能となる処置がシートの厚みに対するハーフカット処理ある、請求項5記載の貼付製剤。
【請求項8】
切り込みと該切り込みに接する直線部との交差角度(R)が0〜90°である、請求項5〜7のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項9】
平面形状が略方形の貼付製剤であり、該略方形の一辺の長さが10〜50mmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項10】
平面形状が円形若しくは楕円形の貼付製剤であり、該円形若しくは楕円形の直径若しくは長径が10〜50mmである、請求項1〜8のいずれか一項記載の貼付製剤。
【請求項11】
剥離シートの厚みが30〜150μmである、請求項1〜10のいずれか一項記載の貼付製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−204633(P2006−204633A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22090(P2005−22090)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]