説明

貼着シート

【課題】患部を固定するとともに、血行を促進することができ、また、通気性が良く、かつ、耐水性を有することによって、水に濡れても使用し続けることができる貼着シートを提供する。
【解決手段】基材シートの一面に有効成分を含む部分を設け、基材シートの他面に貼り付け手段として粘着剤層を設け、身体に貼り付けて使用する貼着シートについて、質量%でセラミックス65〜85%、トルマリン20〜10%、ゼオライト5〜1%、残部添加剤を有効成分とし、これをバインダーと混合したものを塗布材として、基材シートの一面に上記塗布材を分散状に塗布した塗布部分を設けた構成を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートの一面に有効成分を含む部分を有し、基材シートの他面に、身体に貼り付けて使用するための粘着剤層を有している貼着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下肢や上肢の筋腱に、疲労やダメージによっていわゆる筋肉痛であるとか肩こりというような軽度の身体症状が起こることは、日常経験するところであるが、捻挫や慢性症に至ることもあるので、適時に手当てをする必要がある。このため、例えばスポーツ障害として起こる各種症状には関節、筋肉などにテープを巻いて行うテーピングによって患部を固定するなどの処置を施し、肩こりなどにはパップ剤を患部に貼付し、炎症を抑制するなどの処置が施される。
【0003】
テーピングは患部を保護するための療法であり、パップ剤は患部に薬効成分の作用を及ぼす療法である。筋腱の疲労やダメージのような身体症状が出ている場合、血行の不良や患部の冷え等も生じていると考えられるので、これらに総合的に対処するには、例えば、患部を固定すると同時に血行を促進するというような、複合的な処置を施すことも必要になる。しかし、テーピングで固定されている患部周辺の血行が促進されるとは思われず、望ましい処置とはいえないことになる。
【0004】
先行する技術を調査すると、例えば、実開昭62−155860号のものは、遠赤外線輻射体を患部又はツボに貼付することによって、症状の自然治癒効果を促進する技術を開示している。また、実開昭63−56295号は、Fe304の粉体をセラミック粉体と混合して焼成し、セラミック状に硬化させた後に微小粉末に加工し、バインダーを混合して塗布剤を形成し、塗布剤を布はく等にプリントした遠赤外線輻射布を開示している。しかし、上記のものでは遠赤外線輻射体を身体にどのように固定して作用させるのかが不明であり、結果として望ましい治癒効果を得られるかどうか不明である。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−155860号
【特許文献2】実開昭63−56295号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、患部を固定するとともに、血行を促進することができる貼着シートを提供することである。また、本発明の他の課題は、通気性が良く、かつ、耐水性を有することによって、水に濡れても使用し続けることができる貼着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、基材シートの一面に有効成分を含む部分を設けるとともに、基材シートの他面に貼り付け手段としての粘着剤層を設け、身体に貼り付けて使用する貼着シートについて、質量%でセラミックス65〜85%、トルマリン20〜10%、ゼオライト5〜1%、残部添加剤を有効成分とし、これをバインダーと混合したものを塗布材とし、基材シートの一面に上記塗布材を分散状に塗布した塗布部分を設けた構成を有するものとするという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の貼着シートは、基材シートの一面に有効成分を含む部分を設けるとともに、基材シートの他面に貼り付け手段としての粘着剤層を設け、身体に貼り付けて使用するものである。有効成分を含む部分は、基材シートの一面にあり、基材シートの他面には粘着剤層が設けられていて、身体の皮膚に密着している。従って、一面の有効成分は基材シートを透過し、密着している身体に非接触で作用する。
【0009】
上記の有効成分はこのような作用をするもので、具体的には質量%でセラミックス65〜85%、トルマリン20〜10%、ゼオライト5〜1%、残部添加剤を構成成分として有している。セラミックスは、体温によって暖められることによって、遠赤外線と呼ばれる、波長が2.5〜30μmの電磁波を放射するものを使用する。この遠赤外線は身体組織に対して非接触で作用し、それ自体又は他との相乗効果として、例えば血行を促進させる等の効能を発揮することが分かっている。
【0010】
セラミックス由来の遠赤外線輻射による上記の血行促進作用を期待するには、試行錯誤による経験値であるが、質量%で少なくとも65%は必要であり、85%を超えても効果に顕著な差はないことが分かっている。トルマリンは、いわゆるマイナスイオンを得るために使用するもので、同様に質量%で少なくとも10%、最大20%が適量である。ゼオライトは抗菌効果を得るために使用するもので、同様に質量%で少なくとも1%、最大5%が適量である。ゼオライトとしては銀ゼオライトが最も好ましい。添加剤は、残部に相当する、質量%で数%〜十数%程度を改質剤として添加配合することになるが、例えば、マイナスイオンの発生量の調整等にも効果があると考えられている。
【0011】
基材シートとしては、一方向に伸縮性を有し、かつ、上記一方向に対する交差方向には伸縮性を有しない織布を使用することが望ましい。織布を使用することで、通気性を確保し易く、長期間の連続使用でも、蒸れ等の発生をある程度抑制することができる。伸縮性を利用すれば、貼付部分に張力を掛けることができるけれども、負荷を掛けることが望ましくない場合もあるので、交差方向には伸縮性を有しない構成とすれば、下肢又は上肢の動きを固定したくない方向には伸縮性方向を合わせ、動きを固定する方向には伸縮性を有しない方向を合わせる使用方法が可能になる。ただし、交差する両方向に伸縮性を有するもの、或いは、交差する両方向に伸縮性を有しないものも基材シートに使用することができる。なお、上記遠赤外線による作用をより有効にするために、基材シートとして遠赤外線を吸収し、再び放射し易い遠赤外線加工繊維を用いて編織したシートを使用することが得策である。
【0012】
上記の有効成分を含む塗布部分は、基材シートの一面に分散状に塗布されていることが望ましい。この塗布部分は、例えば、有効成分を含む塗布材を基材シートの一面に、水玉状に塗布すること、或いはそれと逆に、基材シートの地肌が水玉状に露出するように、水玉状以外の部分に塗布材を塗付することによって実施することができる。つまり、水玉が塗布材から成る場合をポジ模様とすれば、水玉以外の部分が塗布材の場合はネガ模様となるが、本発明はポジ又はネガのどちらの水玉状でも良い。
【0013】
分散状の塗布部分は、例えば楕円形ないしはひし形などのように、一方向に細長い形状のもので、その長手方向を伸縮方向と一致させて基材シートに塗布した構成を有するものとする。このように構成することによって、基材シートの伸縮方向を、分散状の塗布材の形状で表示することが可能になる。分散状の塗布部分は、基材シートを構成する織布の編織組織に強固に固着しているので、単に伸縮を繰り返す程度では組織に固着したものが剥がれることはない。
【0014】
さらに、分散状の塗布部分は、特定の商品に関するロゴタイプ及び又はマークから成るものとすることができる。例えば、スポーツなどの用具や用品メーカー等、特定の権利者から許可を得たブランドマークを含むロゴタイプ及び又はマークを分散状の塗布部分の模様とすることが可能である。従って、本発明の貼着シートを、テーピング用のテープやパップ剤のように使用しながら貼着シートそれ自体が広告媒体としての効果を発揮するという使用法が可能になる。
【0015】
本発明の貼着シートは、基材シートの他面に貼り付け手段としての粘着剤層を設け、身体に貼り付けて使用するものである。粘着剤としては耐水性の粘着剤、例えば、アクリル樹脂系粘着剤等を使用することで、入浴を繰り返しても剥がれず、長時間継続して使用することが可能になる。なお、基材シートには天然繊維又は合成繊維若しくはそれらの混合使用が可能であるが、長時間の使用を考慮して、特にかぶれ難い材質の繊維を使用することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、患部に貼り付けて該当箇所を固定することができ、かつまた、セラミックス等の作用によって血行を促進可能な貼着シートを提供するものである。従って、テーピングによる固定と、患部周辺の血行の促進という二つの作用を同時に得ることができる。また、本発明の貼着シートは、基材シートの通気性が良く、かつ、耐水性を有することによって、水に濡れても使用し続けることができ、抗菌性を期待でき、傷口保護のために使用することも可能である。さらに、分散状の塗布部分を、特定の商品に関するロゴタイプやマーク等から成るものとすることで、新たな商品価値を生じるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る例1の貼着シート10を示す平面図であり、11は織布から成る基材シート、12は塗布部分を夫々示している。図1の塗布部分12は1個が楕円形のもので、それを多数一定の間隔にて分散配置した構成のパターン模様を有し、図では1点鎖線で示した横方向及び縦方向へ連続し、任意の大きさに形成される。このパターン模様は楕円形の塗布部分12が分散されているので、ネガとポジの例でいえばポジに該当することになる。
【0018】
基材シート11は、合成繊維、植物繊維又は動物繊維を用いたもので、図4に示したように、編織組織を有している。編織組織は、一方向に伸縮性を有し、かつ、上記一方向に対して直角に交差する方向には伸縮性を有しない組織構造を有する。この構造は、例えば伸縮性を有する編み糸と伸縮性を有しない編み糸を用いて形成することができ、また、メリヤス編みのような編織法によって伸縮性を付与することでも可能であり、本発明においても上記両方の方法を採用することができる。
【0019】
例1においては、塗布部分12は楕円形のものが、その長軸方向を編織組織の伸縮方向に合わせて、基材シート11の一面に、例えばスクリーン印刷プロセスによってプリントされている。従って、図1の貼着シート10は楕円が横に並んだパターン模様を有しているので、紙面の左右方向へ伸縮することが分かる。よって、矢印X方向に切断したテープは伸縮するが、矢印Y方向に切断したテープは伸縮しないので、テーピングの時に使い分けが可能になる。
【0020】
基材シート11の一面には有効成分を含む、上記の塗布部分12が設けられている。塗布部分12は、基材シート11の表面に上記のパターン模様を形成したスクリーンを配置し、その上から塗布材を塗布してパターン模様の穴から基材シート11の表面に付着させるもので、図4からも理解されるように、塗布部分12は基材シート11の編織組織に絡みついて、強固に一体化している。
【0021】
本発明の貼着シート10を身体に貼り付けて使用するために、貼り付け手段として粘着剤層14を基材シート11の他面に設けている。粘着剤層14は、基材シート11の編織組織に絡みついて強固に一体化しており、図示の例の場合部分的ではなく他面の全面に一様に形成されている。また、粘着剤層14は使用時まで、その表面を覆う剥離紙13によって保護されている(図4参照)。
【0022】
図2は本発明の例2の貼着シート20を示しており、基材シート21に、細長いひし形の形状の塗布部分22を有しており、その長手方向は伸縮方向と一致している。従って、例2のものは例1と同様に、紙面の左右方向、即ち、矢印X方向には伸縮するが、矢印Y方向には伸縮しない。
【0023】
さらに本発明では、塗布部分は、特定の商品に関するロゴタイプ又はマークから成るものとすることができる。図3は本発明の例3の貼着シート30を示しており、基材シート31に、細長いひし形の塗布部分22とABCの文字と図形とから成る仮のブランドマークであらわされた塗布部分32を有している。この塗布部分も、その長手方向は伸縮方向と一致しているので、例3のものも例1、例2と同様に、紙面の左右方向、即ち、矢印X方向には伸縮するが、矢印Y方向には伸縮しない。
【0024】
上記の各例1〜3における分散状の塗布部分12〜32は、塗布材の塗布量が夫々の基材シート11〜31の単位面積10cm平方当たり0.5gr〜10grの範囲にあるものとする。塗布量は有効成分として選択した物質によって変わり得るとともに、効果の強い貼着シートを製作するか、或いは弱い効果の貼着シートを製作するかでも変わり得る。また、塗布面積が広ければより硬質の貼着シートとなり、曲がり難くもなるので、これらを総合して上記の範囲が決定される。
【0025】
本発明の貼着シート10、20、30に使用した塗布材の例を挙げると以下のとおりである。
<実施例1>
セラミックス:コージエライト(magneium−aluminosilicate) 45%
ジルコニウム 40%
トルマリン 12%
銀ゼオライト 2%
添加剤 1%
<実施例2>
セラミックス:コージエライト(magneium−aluminosilicate) 40%
ジルコニウム 30%
トルマリン 20%
銀ゼオライト 5%
添加剤 5%
<実施例3>
実施例1の塗布材を、綿−ポリウレタン混紡の、幅10cm、長さ30cmの遠赤外線加工繊維から成る基材シートに、長径5mm、短径3mmの楕円から成る塗布部分を1行7個として69列、合計483個をスクリーン印刷によってプリントし、重量を計測した。5枚の平均値で、基材シートの単位面積10cm平方当たりの塗布部分の質量は約1grであった。
<実施例4>
実施例2の塗布材を、綿−ポリウレタン混紡の、幅10cm、長さ30cmの遠赤外線加工繊維から成る基材シートに、文字と図形から成る塗布部分を多数ほぼ均等な間隔を以ってスクリーン印刷によってプリントし、重量を計測した。同じく5枚の平均値で、基材シート単位面積10cm平方当たりの塗布部分の質量は約5grであった。
【0026】
上記実施例3記載の塗布部分を有する本発明の貼着シートを使用し、効果を試験したところ、以下のとおりであった。
・治験者の平均年齢、 62歳(男性30名、女性70名)
・膝痛の軽減率 、1日後86.4%、2日後90.5%、3日後83.3%
・腰痛の軽減率 、1日後89.5%、2日後89.5%、3日後86.7%
・平均の軽減率(全症状)、2日後83%、3日後87%
(軽減率は、膝痛、腰痛に何らかの軽減がみられたものの割合をいう。)
以上により、本発明の貼着シートによれば、身体各部の痛みに関して、顕著な改善効果が得られたことが分かる。
【0027】
本発明の貼着シートは、任意の大きさないしは形状に切って使用することができ、患部を覆い他面の粘着剤層で接着することも、また、テープとして用いテーピングを行うことが可能である。しかも、編織構造を有するので通気性が高く、かぶれ難く、入浴によってはがれず、何日間も継続して使用することができる。
【0028】
このように、本発明によれば、貼着シートを身体の患部に貼付することによって、当該患部を保護し、セラミックスによると考えられる遠赤外線の作用、トルマリンによると考えられるマイナスイオンの作用、ゼオライトによる抗菌作用を及ぼすことができ、また、テーピングによる患部の固定効果と患部に対する血行促進効果によって、所期の治癒効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る貼着シートの例1を示す一部分の平面図である。
【図2】同じく貼着シートの例2を示す一部分の平面図である。
【図3】同じく貼着シートの例3を示す一部分の平面図である。
【図4】同上要部の構造を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10、20、30 貼着シート
11、21、31 基材シート
12、22、32 塗布部分
13 剥離紙
14 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一面に有効成分を含む部分を設けるとともに、基材シートの他面に貼り付け手段として粘着剤層を設け、身体に貼り付けて使用する貼着シートであって、
質量%でセラミックス65〜85%、トルマリン20〜10%、ゼオライト5〜1%、残部添加剤を有効成分とし、これをバインダーと混合したものを塗布材とし、
基材シートの一面に上記塗布材を分散状に塗布した塗布部分を設けた構成を有する
貼着シート
【請求項2】
分散状の塗布部分は、楕円形ないしはひし形又は一方向に細長い形状のもので、その長手方向を伸縮方向と一致させて基材シートに塗布した構成を有する請求項1記載の貼着シート。
【請求項3】
分散状の塗布部分は、特定の商品に関するロゴタイプ及び又はマークから成る請求項3記載の貼着シート。
【請求項4】
分散状の塗布部分は、基材シートの単位面積10cm平方当たりの塗布量が0.5gr〜10grである請求項3記載の貼着シート。
【請求項5】
基材シートは、一方向に伸縮性を有し、かつ、上記一方向に対する交差方向には伸縮性を有しない織布から成る請求項1記載の貼着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245116(P2011−245116A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123058(P2010−123058)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(504244391)有限会社東セラ (2)
【Fターム(参考)】