説明

賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、賦形用シートおよび賦形物

【課題】 賦形性と離型性に優れる賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、該組成物がフィルム状樹脂基材に積層されている賦形用シート、該賦形用シートを賦形した後、活性エネルギー線照射により硬化させた賦形物を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性ポリエステル樹脂と、重合性ビニル系化合物と、ポリエーテル変性及び/又はポリエステル変性シリコーン化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であり、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度が100℃以下である賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、該組成物がフィルム状樹脂基材に積層されている賦形用シート、及び該賦形用シートを型押賦形した後、活性エネルギー線照射により硬化させた賦形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ、映写スクリーン、建装材用エンボスシート等の賦形物の製造に好適に用いることができる賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と賦形用樹脂シート、および、この賦形用シートからなる賦形物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズや映写スクリーンなどに用いられる光学シートの製造方法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法などの製造方法が知られている。しかしながら、これらの製造方法では、大きなサイズのシートの成形が困難である、大量生産のためには数多くの金型が必要となる、等の問題があった。
【0003】
このため、紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用い、円筒形のレンズ型により、フィルム状樹脂基材の両面に連続的にレンズを形成する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
前記特許文献1には、レンチキュラーレンズスクリーンの製造工程として、ベースフィルムの両面に紫外線硬化性樹脂を塗布する工程と、レンチキュラーレンズのレンズ面形状と反対形のレンズ成形型面が形成された型を有する一対の成形用のロール間に紫外線硬化性樹脂が塗布されたベースフィルムを通して両面にレンチキュラーレンズを成形する工程と、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることにより、ベースフィルムの両面にレンチキュラーレンズを形成する工程を有するスクリーンの製造方法が記載されており、ベースフィルムの両面の紫外線硬化性樹脂を一度に連続的に型押賦形する点が特徴的であるが、用いられる紫外線硬化性樹脂については、実施例の中に『溶融状態の紫外線硬化性樹脂(例えばAPR樹脂〔商品名、旭化成(株)製〕、グランディック樹脂〔商品名、大日本インク(株)製〕、ノプコキュア樹脂〔商品名、サンノプコ(株)製〕)』とあるだけで詳細な記載はない。
【0005】
一方、前記特許文献1に従って、ロール状の一対のレンズ型の間にフィルム状樹脂基材上に積層された活性エネルギー線硬化型樹脂を連続的に通して型押賦形する場合、良好な賦形性(微細な金型の形状でも正確に再現し、その形状を維持する性能)を実現するために樹脂組成物の粘度を低く抑える必要がある一方で、賦形前後の樹脂層の流動を防ぐために樹脂組成物の粘度をある程度高くする必要がある。また、良好な賦形性を実現するような低粘度の樹脂組成物では、賦形後に未硬化の樹脂層がロール状のレンズ型に付着してしまい、離型性不良を引き起こすという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平01−159627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の解決しようとする課題は、フィルム状樹脂基材の片面もしくは両面に積層された活性エネルギー線硬化型樹脂をロール状や平面状の型を型押しして賦形をする際に、賦形性と離型性に優れる賦形シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、この賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がフィルム状樹脂基材の片面又は両面に積層されている賦形シート、および、この賦形用シートを賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させてなる賦形物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、熱可塑性ポリエステル樹脂(R)、重合性ビニル系化合物(V)とポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であり、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下である賦形シート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光学物品用途にも好適な透明性を有し、これをフィルム状樹脂基材の片面あるいは両面に積層し、ロール状や平面状の型を型押しして賦形し、型から離型した後に活性エネルギー線を照射して硬化させるような型押賦形による賦形物の製造方法において、良好な賦形性と未硬化の状態での良好な離型性を両立しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と、重合性ビニル系化合物(V)と、ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であり、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下であることを特徴とする賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層されていることを特徴とする賦形用シート、および、この賦形用シートを型押賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させてなることを特徴とする賦形物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光学物品用途にも好適な透明性を有し、賦形前後における樹脂層の流動を防ぐことが出来、また、未硬化の状態での離型性に優れるため、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をロール状金型等により連続的に型押しして賦形を行う際に、樹脂層の型への付着なく、レンズパターンをはじめとする型の形状を正確に転写された機械物性の良好な硬化物が容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(R)としては、常温(25℃)で固形で、熱可塑性のポリエステル樹脂が挙げられ、なかでも、フィルム状樹脂基材が熱による変形の影響を受けにくい温度領域、例えば30〜100℃での加熱による粘度低下が適度に大きく、賦形性と硬化物の機械物性のバランスのより良好な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が得られることから、数平均分子量(Mw)1,000〜8,000のポリエステル樹脂であることが好ましく、数平均分子量(Mw)1,500〜5,000のポリエステル樹脂であることがより好ましい。さらに、本発明で用いるポリエステル樹脂(R)としては、環球法による軟化点が80〜150℃のものが好ましい。
【0013】
また、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)としては、分子中に不飽和二重結合を有するものである方が活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。また、分岐状ポリエステル樹脂であってもよい。
【0014】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)としては、例えば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるものが挙げられる。
【0015】
前記ポリカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、またはその無水物;トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三官能以上のカルボン酸、またはその無水物等が挙げられる。また、炭素原子数4以下の低級アルキルカルボン酸エステル類をポリカルボン酸成分として使用することもできる。これらのポリカルボン酸成分は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、マレイン酸および/またはフマール酸をポリカルボン酸成分の一部乃至全部として用いた場合には、得られるポリエステル樹脂に不飽和二重結合を導入でき、また、重合性ビニル系化合物(V)との相溶性に優れるポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。なお、必要により安息香酸、p−トルイック酸、p−tert−ブチル安息香酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
【0016】
前記ポリオール成分としても、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール 、1,4−ブテンジオール 、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の2価アルコール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコ−ル類等が挙げられる。これらのポリオール成分は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
なお、これらのポリカルボン酸成分とポリオール成分を用いてポリエステル樹脂を製造する際には、ジブチル錫オキシド等のエステル化触媒を適宜使用することができる。
【0018】
本発明で用いる重合性ビニル系化合物(V)としては、特に限定されるものではなく、各種の重合性ビニルモノマーや重合性ビニルオリゴマー、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート等の(メタ)アクリル系モノマー;ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系オリゴマーなどが挙げられる。これら重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーはそれぞれ単独で用いることができるが、通常は重合性ビニルモノマーの単独使用、または重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が好ましい。なお、重合性ビニルオリゴマーとしては、数平均分子量(Mn)が2,000以下で、かつ熱可塑性ポリエステル樹脂(R)の数平均分子量よりも小さいオリゴマーが好ましい。
【0019】
また、これら重合性ビニル系化合物(V)のなかでも、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができることから、分子中に不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレートを必須成分として用いることが好ましい。
【0020】
本発明で用いるポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)としては、ポリシロキサンの末端および/または側鎖に、ポリエーテル鎖および/またはポリエステル鎖が導入された化合物が挙げられ、ポリシロキサンにポリエーテル鎖およびポリエステル鎖以外のエポキシ基、アミノ基の如き有機基の導入が併用された共変性シリコーン化合物であっても差し支えない。また、分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。
【0021】
前記ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えば、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618、KF−6011、KF−6015、KF−6004、X−22−4272、X−22−4952、X−22−6266、X−22−3667、X−22−4741、X−22−3939A、X−22−3908A〔以上;信越化学工業(株)製〕、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−310、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3510、BYK−301、BYK−307、BYK−325、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348(以上;ビックケミー社製)、SILWET L−77、SILWET L−720、SILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7604、SILWET Y−7006、SILWET FZ−2101、SILWET FZ−2104、FZ−2105、SILWET FZ−2110、SILWET FZ−2118、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2122、SILWET FZ−2123、SILWET FZ−2130、SILWET FZ−2154、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2163、SILWET FZ−2164、SILWET FZ−2166、SILWET FZ−2191、SILWET FZ−2203、SILWET FZ−2207、SILWET 2208、SILWET FZ−3736、SILWET Y−7499、SILWET FZ−3789、SF8472、BY16−004、SF8428、SH3771、SH3746、BY16−036、SH3749、SH3748、SH8400、SF8410〔以上;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕、L032、L051、L066〔以上;旭化成ワッカーシリコーン(株)製〕等が挙げられる。また、特に分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、BYK−UV3500、BYK−UV3570、BYK−UV3530(以上;ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0022】
また、前記ポリエステル変性シリコーン化合物としては、例えば、BYK−310、BYK−315、BYK−370等が挙げられ、また、特に分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、BYK−UV3570(ビックケミー社製)等が挙げられる。これらポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)はそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明において、ポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)は、光学部品用途にも好適な透明性を確保できるよう、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の相溶性が維持される範囲で用いられ、その配合量としては活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分における含有率が1〜15重量%となる範囲が好ましく、3〜10重量%となる範囲がより好ましい。この配合量は、一般的な注型重合等で用いられるシリコーン系化合物等の離型剤の場合と比較して多量である。これは、賦形性を維持しつつ賦形前後に樹脂層が流動しない程度に粘度が高くなるように配合された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である場合、一般的な注型重合の場合に比べて離型剤のブリード性が乏しくなるため、そのような低ブリード性条件下でも離型性を発現出来るようするためである。なお、前記シリコーン化合物(S)の配合量が1重量%未満の場合は離型性への効果が不十分であり、15重量%を超える配合量では活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のフィルム状樹脂基材への付着性の低下を招くため、いずれも好ましくない。
【0024】
本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と、前記重合性ビニル系化合物(V)と、前記シリコーン化合物(S)を必須成分とし、さらに必要により前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤、溶剤等を含有してなるものが挙げられる。このような本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、賦形工程の前後における樹脂層の流動による膜厚の変化を抑えるために、適度な粘度をもつ必要がある。一方で良好な賦形性を得るためには賦形工程における粘度が低い方が望ましい。これらを両立させるためには、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下であることが必須であり、これにより、型押賦形工程前に膜厚の変化なく、また良好な賦形性を得ることが出来る。なかでも、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が40℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が80℃以下であるものがより好ましい。前記温度(T4)が30℃より小さいと、シート状樹脂基材に積層された賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる樹脂層が、賦形工程に至る前に流動による膜厚の変化を生じ易いので好ましくない。前記温度(T6)が100℃より大きいと、加熱溶融してシート状樹脂基材に積層する際の加熱温度を高くせざるを得ず、その結果、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の重合性ビニル系化合物がゲル化し、均一に積層することが困難となるのに加え、賦形する際にも加熱する温度を高くする必要があり、その結果、軟化点が低いポリエチレンテレフタレート等のシート状樹脂基材が熱変形してしまう問題が生じる可能性もあるため好ましくない。
【0025】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と前記重合性ビニル系化合物(V)は、得ようとする賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下となる範囲内であれば任意の割合で混合してよいが、なかでも、その重量比(R/V)が40/60〜90/10の範囲であることが、前記複素粘性率(η)と温度の関係を満足させやすいことから、好ましい。
【0026】
本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と前記重合性ビニル系化合物(V)を必須成分とし、さらに必要により前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤、溶剤等を含有してなるものが挙げられる。
【0027】
なお、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度に対する粘度変化があまりに急激な場合、賦形工程のわずかな温度の振れが賦形性に及ぼす影響を無視できなくなるため、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては適当な感温性を示すものであることがより好ましく、具体的には前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T4)と前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T6)の温度差(T4−T6)が20℃以上であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。このとき、さらに前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T5)が40〜80℃であることが好ましい。
【0028】
なお、本発明において賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分である不揮発分の複素粘性率(η)は、HAAKE社製レオメーター RS500を用いて、測定周波数:6.28rad/sec.(1Hz)、測定開始温度:25℃、測定終了温度:150℃、昇温速度:2℃/min.の条件で、溶剤を含有しない賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について測定を行って得られるものである。また、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)、および、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)は、それぞれ前記複素粘性率(η)の温度変化の測定結果のチャートから求めることができる。
【0029】
本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に必要により含有させることができる、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)以外の他の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これら他の樹脂の使用量は、通常前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)100重量部に対して100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0030】
また、前記光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル等が挙げられ、なかでも1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。光重合開始剤の使用量は、通常前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と重合性ビニル系化合物(V)の合計(または、活性エネルギー線照射で硬化する樹脂成分)100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.1〜6重量部である。
【0031】
さらに、前記その他の添加剤としては、例えば、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤等が挙げられる。
【0032】
これらその他の添加剤のなかでも、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造時における熱重合の防止や貯蔵安定性を保つために、熱重合防止剤を配合することが望ましい。熱重合防止剤としては、特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の使用量は、通常前記熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と、重合性ビニル系化合物(V)と、シリコーン化合物(S)の合計(または、加熱により硬化しうる樹脂成分)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0033】
なお、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、フィルム状樹脂基材への積層に際して、さらに必要に応じて溶剤を含有させることができる。
【0034】
本発明の賦形用シートは、前記した本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層されているものであればよい。この賦形用シートに用いられるフィルム状樹脂基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂からなるフィルム状樹脂基材、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂からなるフィルム状樹脂基材、ポリカーボネート樹脂からなるフィルム状樹脂基材のように活性エネルギー線を透過する基材であることが、これら基材の両面または片面に積層され賦形された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の樹脂層に対して活性エネルギー線を照射する際に、フィルム状樹脂基材の一方の側からの照射で硬化させることが可能となることから好ましい。フィルム状樹脂基材の厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて決定されるが、38〜500μmのものが好ましく、50〜150μmのものがより好ましい。また、フィルム状樹脂基材は樹脂層との密着性を向上させるために、その表面について、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理等の易接着性処理を施したものが好ましい。
【0035】
フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層される賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分からなる樹脂層の厚みについては、特に限定されるものではなく、その用途に応じて決定されるが、通常10μm〜1mm、好ましくは50〜500μmであり、金型の最大深さの1〜5倍とするのが好ましい。
【0036】
フィルム状樹脂基材の片面または両面に、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層する方法については、特に限定されるものではないが、例えば、前記賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール等の溶剤に溶かして均一な溶液とし、各種コーターを用いてフィルム状樹脂基材上に流延した後、乾燥炉等で溶剤を揮発させて除去する方法、均一に混合された賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して粘度を下げてからフィルム状樹脂基材上に塗布し、冷却固化させる方法等が挙げられる。これらのうち前者では、特に厚膜塗工の際に完全な溶剤除去が困難であることから、後者がより好ましい。
【0037】
本発明の賦形用シートは、これを型押賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させることにより賦形物とすることができる。賦形用シートの型押賦形は、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層された賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層に、ロール状や平面状の型を型押しして賦形することにより行われる。例えば、フィルム状樹脂基材の片面または両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層した本発明の賦形用シートを、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・s、好ましくは1×10〜1×10dPa・sとなる温度、例えば40〜80℃に加温し、片方または両方に型を有する一対のロール状賦形用金型の間を通過させて、連続押圧による賦形と離型を行い、その後活性エネルギー線を照射して硬化させてフィルム状樹脂基材の片面または両側に賦形層を有する光学レンズシート等の賦形物を得る方法などが挙げられる。この際に硬化に用いる活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧または高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボン・アーク灯などの各種のものが使用できる。
【実施例】
【0038】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部は、特に記載しない限り重量基準である。
【0039】
合成例、実施例、比較例における数平均分子量(Mn)および複素粘性率(η)の測定方法を記す。
1.数平均分子量(Mn)
装置:東ソー(株)製高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:東ソー(株)製 TSKgel SuperHZ4000、SuperHZ3000、SuperHZ2000、SuperHZ1000、各1本
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.350ml/min.
【0040】
2.複素粘性率(η
装置:HAAKE社製レオメーター RS500
測定周波数:6.28rad/sec.(1Hz)
測定開始温度:25℃
測定終了温度:150℃
昇温速度:2℃/min.
【0041】
実施例1
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)製BAP2グリコール〕812部とフマール酸272部を、ジブチル錫オキシド1.1部の存在下、215℃で8時間反応させ、分子中に不飽和二重結合を有し、数平均分子量(Mn)2,300、軟化点100℃の熱可塑性ポリエステル樹脂(R1)を得た。
【0042】
次いで、2リットルのセパラブルフラスコに、得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(R1)74部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔大日本インキ化学工業(株)製ユニディックV−4260、数平均分子量1,700、平均不飽和基数3個〕19部、ジペンダエリスリトールとアクリル酸の反応物〔日本化薬(株)製KAYARAD DPHA〕3部、および、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE651〕4部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SILWET FZ−2164〕4部を仕込み、110℃で混合、減圧脱泡して均一な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は30℃において1.2×10dPa・s、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T6)は42℃、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T5)は58℃、溶剤を除く成分の前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T4)は74℃であり、温度差(T4−T6)は32℃であった。
【0043】
得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡績(株)製東洋紡エステルフィルムA4300〕と、アプリケーターを予め95℃に加温し、95℃に制御されたホットプレート上でポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をアプリケーターで塗布して、厚さ200μmの賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がフィルム状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S1)を得た。
【0044】
得られた賦形用シート(S1)を55℃に加温し、深さ70μm、ピッチ145μmのシリンドリカルレンズパターンの溝が平行に作成されているロール状金型と加圧用ロールの間に通して型押賦形した後、紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層に金型のパターンが転写され、硬化された賦形シート(Sc1)を得た。なお、賦形用シート(S1)は型押賦形時の賦形性と離型性が良好であり、得られた賦形シート(Sc1)は透明性が高く、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化層とポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性に優れるものであった。
【0045】
実施例2
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)PM−8701L〕365部と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)製BAP2グリコール〕405部と、イソフタル酸221部と、フマール酸104部を、ジブチル錫オキシド1.1部の存在下、230℃で6時間反応させ、分子中に不飽和二重結合を有し、数平均分子量(Mn)2,700、軟化点100℃の熱可塑性ポリエステル樹脂(R2)を得た。
【0046】
次いで、2リットルのセパラブルフラスコに、得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(R2)74部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とアクリル酸の反応物〔第一工業製薬(株)製ニューフロンティアBPP−4〕21部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE651〕4部、および、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〔信越化学工業(株)製KF−615A〕9部を仕込み、110℃で混合、減圧脱泡して均一な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は30℃において8.0×10dPa・s、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T6)は40℃、前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T5)は55℃、溶剤を除く成分の前記複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T4)は71℃であり、温度差(T4−T6)は31℃であった。
【0047】
次いで、得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして賦形用シート(S2)を得た。さらに、この賦形用シート(S2)を用いたい外は実施例1と同様にして、厚さ200μmの賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がフィルム状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S2)を得、次いで同様にして賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層に金型のパターンが転写され、硬化された賦形シート(Sc2)を得た。なお、賦形用シート(S2)は型押賦形時の賦形性と離型性が良好であり、得られた賦形シート(Sc2)は透明性が高く、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化層とポリエチレンテレフタレートフィルムとの密着性に優れるものであった。
【0048】
比較例1
2リットルのセパラブルフラスコに、実施例1で得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(R1)65部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔大日本インキ化学工業(株)製ユニディックV−4260、数平均分子量1,700、平均不飽和基数3個〕28部、ジペンダエリスリトールとアクリル酸の反応物〔日本化薬(株)製KAYARAD DPHA〕3部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE651〕4部、および、末端に水酸基を有するポリジメチルシリコーン〔チッソ(株)製サイラプレーンFM−DA11〕0.5部を仕込み、100℃で混合、減圧脱泡して均一な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は30℃において3.5×10dPa・sであったが、白濁しており、光学用途に不適当なものであった。
【0049】
比較例2
2リットルのセパラブルフラスコに、得られた実施例1で得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(R1)47部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔大日本インキ化学工業(株)製ユニディックV−4260、数平均分子量1,700、平均不飽和基数3個〕47部、ジペンダエリスリトールとアクリル酸の反応物〔日本化薬(株)製KAYARAD DPHA〕3部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE651〕4部、および、分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシリコーン〔ビックケミー社製BYK−UV3530〕15部を仕込み、100℃で混合、減圧脱泡して均一な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は30℃において5.0×10dPa・sと低粘度であった。
【0050】
次いで、得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmの賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がフィルム状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S′)を得た。
【0051】
得られた賦形用シート(S′)を40℃に加温し、深さ70μm、ピッチ145μmのシリンドリカルレンズパターンの溝が平行に作成されている円筒形金型と加圧用ロールの間に通して賦形を試みたが、賦形用シート(S′)の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層が金型面に付着して離型できず、賦形シートを得ることが出来なかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル樹脂(R)と、重合性ビニル系化合物(V)と、ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であり、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下であることを特徴とする賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)の溶剤を除く成分中における含有率が1〜15重量%である請求項1に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)が(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン化合物である請求項2に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
重合性ビニル系化合物(V)が分子中に不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物である請求項3に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステル樹脂(R)が数平均分子量(Mw)1,000〜8,000のポリエステル樹脂である請求項1〜4いずれか一項に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性ポリエステル樹脂(R)が不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂である請求項5に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が40℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が80℃以下であり、且つ、ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)の溶剤を除く成分中における含有率が3〜10重量%で、熱可塑性ポリエステル樹脂(R)が不飽和二重結合を有する数平均分子量(Mw)1,000〜8,000のポリエステル樹脂である請求項1〜4いずれか一項に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
さらに光重合開始剤を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層されていることを特徴とする賦形用シート。
【請求項10】
前記フィルム状樹脂基材がポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルム状樹脂基材である請求項9に記載の賦形用シート。
【請求項11】
請求項9または10に記載の賦形用シートを型押賦形した後、活性エネルギー線照射により硬化させてなることを特徴とする賦形物。


【公開番号】特開2006−233175(P2006−233175A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309772(P2005−309772)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】