説明

質問機、及び質問機の受信感度設定方法

【課題】目的とする応答機から確実に格納情報を読み出すことができるようにする。
【解決手段】ICタグ5(応答機)に格納されている格納情報を送信させる要求電波を送信する送信回路12と、要求電波を受信した応答機5から送信されてくる応答電波を受信して復調する受信回路14とを有するRFIDのリーダライタ装置10(質問機)に、受信回路14の受信感度を設定するための感度設定回路141を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RFIDのリーダ装置等の質問機、及び質問機の受信感度設定方法に関し、とくに目的とする応答機から確実に格納情報を読み出すための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で情報を読出すシステム(以下、情報読出システムという)に用いられるRFID(Radio Frequency IDentification)が利用する周波数帯は、現在、13.56MHz帯や2.45GHz帯が主流である。昨今ではこれらに加えてUHF帯(通信距離3〜6m)を用いたRFIDの導入が検討されており、わが国においても電波法の改正等、UHF帯を用いたRFIDの導入に向けて各所で研究が行われている。UHF帯を用いるRFIDは、従来の13.56MHz帯(通信距離80cm程度)や2.45GHz帯(通信距離1.5m程度)等を用いた場合に比べて通信距離が長い(3〜6m程度)という特徴がある。またUHF帯を用いるRFIDでは、複数の応答機(例えばICタグ)に記録されている情報(以下、格納情報という)をリーダ装置(質問機)が一度に読み出すことが可能である。さらにリーダ装置から見えない場所にあるICタグの情報を読み出すことも可能である。
【特許文献1】特開2004−38574号公報
【特許文献2】特開平9−18381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、現状普及しているRFIDのリーダ装置の受信感度は、一般的な使用状態を想定して設定されて出荷されている。しかしながらリーダ装置からICタグに向けて送信される電波(以下、要求電波という)や要求電波を受信したICタグから送信されてくる電波(以下、応答電波という)の到達距離は、RFID が適用される環境に左右され、リーダ装置の出荷時等において設定されている受信感度が、リーダ装置が使用される個々の現場において必ずしも適切な状態に設定されているとは限らない。このため、近接して配置されている複数のICタグのうちの一つからそのICタグに格納されている情報(以下、格納情報という)を読み出そうとする場合、リーダ装置の読み出し対象になっていないICタグから送信されてくる応答電波を拾ってしまうことがあり、システムを誤動作させる要因となる。
【0004】
例えば図9に示すように複数のリーダ装置10が隣接して配置されるRFID を用いたシステムでは、第1のシステム91のリーダ装置10(1)についてはICタグ5(1)の格納情報を読み出せればよいのだが、リーダ装置10(1)が格納情報を読み出せる範囲(サービスエリア)が広すぎると、第2のシステム92のICタグ5(2)の格納情報まで読み出してしまうことになる。そしてこのような問題は、UHF帯のようなサービスエリアの広い周波数帯を用いるRFIDシステムにおいてはとくに深刻である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、目的とする応答機から確実に格納情報を読み出すことができる質問機、及び質問機の受信感度設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のうちの第1の請求項に記載の発明は、応答機に格納されている格納情報を送信させる要求電波を送信する送信回路と、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信して復調する受信回路とを有する質問機であって、前記受信回路の受信感度を設定するための感度設定回路を備えることとする。
【0007】
このように、質問機に感度設定回路を設けることで、質問機の受信感度を自由に変化させることが可能となる。このため、質問機が対象としない応答機から送信されてくる応答電波を受信しないように設定することが可能になる。従って質問機が対象としている応答機のみから確実かつ安定して格納情報を読み出すようにすることが可能となる。またサービスエリアを必要な範囲に自在に設定することが可能となる。
【0008】
本発明のうち第2の請求項に記載の発明は、請求項1に記載の質問機であって、前記感度設定回路は、前記受信感度の指定を受け付けるユーザインタフェースを有し、前記感度設定回路は、前記ユーザインタフェースから受け付けた受信感度となるように、前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むこととする。
ユーザはこのユーザインタフェースを利用して、受信回路の受信感度を容易に設定することができる。
【0009】
本発明のうち第3の請求項に記載の発明は、請求項1に記載の質問機であって、前記応答電波に基づく受信信号の強度を示す信号を出力する信号強度測定回路を有し、前記感度設定回路は、前記信号強度測定回路から出力される前記信号に応じて、前記受信回路の前記受信感度を自動的に設定する回路を含むこととする。
このように、質問機が受信感度を自動的に設定する回路を備えることで、受信感度を設定するためのユーザの負担を軽減することができる。
【0010】
本発明のうち第4の請求項に記載の発明は、請求項4に記載の質問機であって、前記受信感度を自動的に設定する回路は、前記受信回路の受信感度が、前記受信回路の受信信号に含まれる雑音の強度と復調部に要求される信号対雑音比との和から閾値を求め、前記信号強度測定回路によって測定される信号強度から前記閾値を差し引くことにより求められる値だけ、受信信号の信号強度を減衰させる回路を含むこととする。
このように、受信回路の受信信号に含まれる雑音強度と信号対雑音比との和から求まる閾値を求めて、各時点における信号強度から前記閾値を差し引いた値を減衰量とすることで、必要とされる減衰量を自動的に見積もることが可能となる。
【0011】
本発明のうち第5の請求項に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、前記受信回路は、前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路を含み、前記感度設定回路は前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅を行うかどうかを切り換えることにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むこととする。
このように、受信感度の変更は、受信信号を低雑音増幅回路に通過させるかどうかを切り換えることにより行うことができる。
【0012】
本発明のうち第6の請求項に記載の発明は、請求項5に記載の質問機であって、前記感度設定回路は、前記低雑音増幅器の利得を制御することにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むこととする。
このように、利得を制御することで、受信感度をきめ細かく設定することができる。
【0013】
本発明のうち第7の請求項に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、前記受信回路は、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路を含み、前記感度設定回路は前記応答電波に基づく受信信号の前記アッテネータ回路による減衰を行うかどうかを切り換えることにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むこととする。
このように、受信感度の変更は、受信信号をアッテネータ回路に通過させるかどうかを切り換えることにより行うことができる。
【0014】
本発明のうち第8の請求項に記載の発明は、請求項7に記載の質問機であって、前記感度設定回路は、前記信号減衰回路による減衰量を制御することにより前記受信回路の受信感度を設定することとする。
このように、減衰量を制御することで、受信感度をきめ細かく設定することができる。
【0015】
本発明のうち第9の請求項に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、前記受信回路は、前記受信回路は前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路と、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路とを含み、前記感度設定回路は、前記応答電波に基づく受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅のみ行うか、前記応答電波に基づく受信信号を前記アッテネータにのみ通過させるのか、前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅も前記アッテネータ回路による減衰も行わないようにするか、のいずれかの状態に切り換える回路を含むこととする。
このように、感度設定回路が受信信号を低雑音増幅回路にのみ通過させるのか、アッテネータ回路にのみ通過させるのか、もしくはこれらのいずれも通過させないか、を切り換える回路を備えることで、受信感度を変化させることができる。これにより質問機が対象としている応答機のみから確実かつ安定して格納情報を読み出すようにすることが可能となる。
【0016】
本発明のうち第10の請求項に記載の発明は、請求項9に記載の質問機であって、前記感度設定回路は、前記低雑音増幅回路の利得、及び前記アッテネータ回路の減衰量を制御する回路を含むこととする。
このように、感度設定回路が低雑音増幅回路の利得、及び前記アッテネータ回路の減衰量を制御する回路を備えることで、感度設定回路は受信感度を低雑音増幅回路の最大利得からアッテネータ回路の最大減衰量までの範囲の連続的に変化させることができる。これにより質問機が対象としている応答機のみから確実かつ安定して格納情報を読み出すようにすることが可能となる。
【0017】
本発明のうち第11の請求項に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の質問機であって、前記応答機はRFIDにおけるICタグであり、当該質問機は前記ICタグから前記格納情報を読み出すRFIDのリーダ装置であることとする。
【0018】
本発明のうち第12の請求項に記載の発明は、請求項3に記載の質問機であって、前記信号強度測定回路はRSSI(Radio Signal Strength Indicator)回路であることとする。
【0019】
本発明のうち第13の請求項に記載の発明は、請求項4に記載の質問機であって、前記閾値は、前記雑音の強度と信号対雑音比との和から求まる値に所定のオフセット値を加算した値であることとする。
このように、オフセット値を加味することで、質問機のサービスエリアが必要以上に狭くなってしまうのを防ぐことができる。
【0020】
本発明のうち第14の請求項に記載の発明は、応答機に格納されている格納情報を送信させる要求電波を送信する送信回路と、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信して復調する受信回路とを有し、前記受信回路は、前記受信回路は前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路と、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路とを含んで構成される質問機の受信感度設定方法であって、前記感度設定回路は、前記応答電波に基づく受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅のみ行うか、前記応答電波に基づく受信信号を前記アッテネータにのみ通過させるのか、前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅も前記アッテネータ回路による減衰も行わないようにするか、のいずれかの状態に切り換えるとともに、前記低雑音増幅回路の利得、及び前記アッテネータ回路の減衰量を制御することにより受信感度を設定することとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、目的とする応答機から確実に格納情報を読み出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態として説明する、RFIDによるリーダ装置10(質問機)のブロック構成である。同図に示すように、本実施形態のリーダ装置10は、送信アンテナ11、送信回路12、受信アンテナ13、受信回路14、ベースバンド処理回路15、及び演算回路16等の構成を備えている。
【0023】
送信回路12は、ICタグ5に格納されている情報(以下、格納情報という)をICタグ5に送信させるための電波(以下、要求電波という)の元になる送信信号を生成して送信アンテナ11に供給する。送信アンテナ11から送信される要求電波の周波数は例えばUHF帯である。
【0024】
送信回路12は、BB(Base Band)アンプ121、ローパスフィルタ(LPF)122、変調回路123、局部発振器124、バンドパスフィルタ(BPF)125、パワーアンプ126、ローパスフィルタ127を用いて構成されている。BBアンプ121は、ベースバンド処理回路15から出力される送信データを増幅する。ローパスフィルタ122は、ベースバンド処理回路15によって増幅された送信データを帯域制限する。変調回路123は帯域制限された送信データを変調し、要求電波の周波数の送信信号を生成する。バンドパスフィルタ125は、変調回路123から出力される送信信号を帯域制限する。パワーアンプ126は上記送信信号を所定の電力に増幅する。増幅された送信信号はローパスフィルタ127を通過して送信アンテナ11に供給される。
【0025】
受信回路14はダイレクトコンバージョン方式の回路である。受信回路14は、受信アンテナ13によって受信される、要求電波を受信したICタグ5から送信されてくる電波(以下、応答電波という)を復調する。応答電波の周波数は、例えばUHF帯である。受信回路14にはフロントエンド回路141、直交検波回路142、復調回路143、RSSI(Radio Signal Strength Indicator)回路144等の回路が含まれる。
【0026】
フロントエンド回路141には、受信回路14の受信感度の設定を行うための回路(感度設定回路)が含まれる。フロントエンド回路141は、低雑音増幅回路1411(以下、LNA(Low Noise Amplifier)1411という)、スルー出力回路1412、アッテネータ回路1413(以下、ATT(Attenuator)回路1413という)、及びスイッチ回路1414を含んで構成される。このうちLNA回路1411は受信回路14の初段で受信アンテナ13の受信信号(RF信号)を増幅し、受信回路14のS/N(信号対雑音比)を向上させる。なお、LNA回路1411は利得を制御するための回路(以下、利得制御回路という)を備える。FET(Field Effect Transistor)を用いて構成したLNA回路1411の一例を図2に、またこのLNA回路1411のFETの第2のゲートへの印加電圧と利得との関係を図3に示す。このLNA回路1411では、利得はゲートG2に対する印加電圧を変化させることにより制御する。なお、図2において、L1〜L4は整合用素子である。スルー出力回路1412は、受信アンテナ13の受信信号の増幅も減衰させずにそのまま後段の回路にスルー出力するための回路である。
【0027】
ATT回路1413は後段の回路に供給する受信信号の信号強度を減衰させる回路である。ATT回路1413は、例えばT形、π形、ブリッジT形、反射形、バランス形等の回路によって実現される。ATT回路1413は、減衰量を制御するための回路(以下、減衰量制御回路という)を備える。T形の回路を用いて構成した減衰量の制御が可能なATT回路1413の一例を図4に示す。この回路は、V1は固定電圧とし、V2を可変電圧として用いる。この回路において、V1>V2とした場合はD1を流れる電流が大(つまりD1は低抵抗値)となってD2を流れる電流は小(つまりD2は高抵抗値)となり、その結果ATT回路1413による受信信号の減衰量は小となる。一方、V2>V1とした場合はD1を流れる電流が小(つまりD1は高抵抗値)となってD2を流れる電流は大(つまりD2は低抵抗値)となり、その結果ATT回路1413による受信信号の減衰量は大となる。
【0028】
スイッチ回路1414は、LNA回路1411、スルー出力回路1412、ATT1413のうちのいずれの出力を後段の回路に供給するのかを切り換える。スイッチ回路1414は、例えばFET又はPINダイオード等の素子を用いて構成されている。スイッチ回路1414は、その接点の状態として上記各回路からの出力に対応する「LNA」、「スルー」、及び「ATT」の3つのポジションを有する。スイッチ回路1414はまたユーザのマニュアル設定を受け付けるユーザインタフェース(不図示)を備えている。このスイッチ回路1414の具体的な機能や使用方法等の詳細については後述する。
【0029】
受信回路14を構成している回路のうち直交検波回路142は、スイッチ回路1414から出力される受信信号を検波してベースバンド信号を生成する回路である。直交検波回路142は、第1のDBM(Double Balanced Mixer)1421、第2のDBM1422、局部発振器1423、及びπ/2位相シフタ1424を含んで構成されている。なお、局部発振器1423は、送信回路12の局部発振器124と共用することもできる。第1のDBM1421には、スイッチ回路1414から出力される受信信号、及び局部発振器1423の発振信号が入力され、第1のDBM1421はI(In-phase)信号を出力する。第2のDBM1422には、スイッチ回路1414から出力される受信信号、及びπ/2位相シフタ1424から出力される局部発振器1423の発振信号の位相を90度(π/2)だけずらした信号が入力され、Q(Quadrature-phase)信号を出力する。第1のDBM1421から出力されるI信号は、第1のフィルタ1425を通過した後、第1のアンプ回路1426で増幅されて復調回路143に入力される。一方、第2のDBM1422から出力されるQ信号は、第2のフィルタ1427を通過した後、第2のアンプ回路1428で増幅されて復調回路143に入力される。
【0030】
復調回路143は、直交検波回路142から入力されるI信号及びQ信号のA/D変換、及び復調処理等を行って復調データを生成し、これをベースバンド処理回路15に出力する。
【0031】
RSSI回路144は、入力信号の強度に応じた電圧を出力する回路(信号強度測定回路)である。RSSI回路144には、第2のアンプ回路1428において増幅されたQ信号の一部と第1のアンプ回路1426で増幅されたI信号の一部とを合成した信号(以下、合成信号という)が入力され、RSSI回路144は合成信号の強度に対応する電圧を演算回路15に出力する。なお、RSSI回路144はA/Dコンバータを内蔵しており、RSSI回路144の出力電圧はデジタル値として演算回路15に出力される。図5はRSSI回路144の一例(A/Dコンバータの部分を除く)であり、図6はこの回路に入力される合成信号(RF−in)と出力電圧の関係である。入力信号は直列に接続されたリミッタ飽和RFアンプ1441によって段階的に増幅され、各リミッタ飽和RFアンプ1441の出力が各段に設けられている検波器1442によって振幅検波される。そして各検波器1442から出力される電圧を合成し、これをアンプ1443で増幅した電圧を出力としている。
【0032】
ベースバンド処理回路15は、受信回路14から入力される復調データについてフレームの除去、データの組立て、フレーム同期、誤り制御等を行ってデジタルデータを生成し、これを演算回路16に出力する。一方、ベースバンド処理回路15は、演算回路16から入力されるデジタルデータにフレームの追加や誤り制御符号の付加等を行って送信データを生成し、これを送信回路12に出力する。
【0033】
演算回路16は、CPU161、ROM・RAM等のメモリ162、キー入力パネルやスイッチ等の入力装置163、LCD等の表示装置164等からなる。メモリ162には、リーダ装置10が備える各種の機能を実現するプログラムやデータが記憶されている。演算回路16は、要求電波の元になるデジタルデータをベースバンド処理回路15に出力する。一方、演算回路16は、ベースバンド処理回路15から復調回路から入力されるデジタルデータを受信する。また演算回路16には制御ラインを介してLNA1411の利得制御回路、ATT1413の減衰量制御回路、スイッチ回路1414に接続されており、利得制御回路の利得制御、減衰量制御回路の減衰量制御、スイッチ回路1414のポジション切換等の処理を行う。
【0034】
本実施形態のリーダ装置10では、受信回路14に設けられているスイッチ回路1414、LNA1411の利得制御回路、及びATT1413の減衰量制御回路により受信回路の感度を設定することが可能である。図7はこの設定のためにリーダ装置10に設けられるユーザインタフェースの一例である。以下、図8に示すフローチャートとともに、上記ユーザインタフェースにより受信感度を設定する場合の処理手順について説明する。
【0035】
受信感度の設定を行う場合、ユーザはまず、受信感度を手動で設定するのか、それとも自動で設定するのかを選択する(S811)。この選択は図7に示すユーザインタフェースのうち方式選択スイッチ71を操作することにより行う。ここで手動を選択した場合には(S811:手動)、ユーザは次に機能選択スイッチ72を操作してLNA1411によって受信感度を設定するのか(「LNA」のポジション)、LNA1411もATT1413も使用しないのか(「THRU」のポジション)、ATT1413によって受信感度を設定するのか(「ATT」のポジション)のいずれかを選択する(S812)。ここで「LNA」のポジションを選択した場合には(S812:LNA)、ユーザはさらに利得調節つまみ73を操作してLNA1411の利得(ゲイン)を設定する(S813)。また「ATT」のポジションを選択した場合には(S812:ATT)、ユーザは減衰量調節つまみ73を操作してATT1413による減衰量を設定する(S815)。
【0036】
ここで上記S812の処理における選択、LNA1411の利得の設定、及びATT1413の減衰量の設定に際し、ユーザはリーダ装置10の受信感度が所望の状態となるように行う。すなわち、ユーザは、リーダ装置10が目的とするICタグ5のみから送信されてくる応答電波のみを受信するように設定する。これは例えば、設定を行っては実際にリーダ装置10に応答電波を受信させて確認するといった作業を繰り返し行うことにより行われる。
【0037】
一方、S811においてユーザが自動を選択した場合(S811:自動)には、ユーザはさらに計算ボタン73を押して減衰量の計算指示を行う。演算回路16は、計算ボタン73が押されたことを検知すると(S816:YES)、RSSI144から信号強度を取得して(S817)減衰量を計算する(S818)。ここでの減衰量の計算は、例えば次のような手順で行われる。
【0038】
すなわち、受信アンテナ13における雑音が熱雑音によってのみ生成されると仮定すると、その雑音の強度Nは、N=kTBF(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、B:通信に必要な帯域幅、F:受信回路14の雑音指数)と求められる。ここで例えばリーダ装置10とICタグ5との間の通信で必要となる帯域幅が500(kHz)、室温25(℃)、雑音指数7(dB)とすると、受信信号に含まれる雑音強度Nは、
N=10log(1.38×10−23(J/K))+10log(298(K))
+10log(500×10(kHz))+7(dB)
=−228.6(dBW)+24.7(dB)+57(dB)+7(dB)
=−139.9(dBW) ……式1
となる。この値はdBmに換算すると、
N=−139.9(dBW)+30(dB)=−109.9(dBm)≒−110(dBm) ……式2
である。
【0039】
ここで受信回路14がICタグ5からの応答信号を復調するのに必要なC/N(信号対雑音比)が13(dB)であるとすれば、受信回路14が応答信号を復調するために必要となる信号強度は、
信号強度=N+C/N=−110(dBm)+13(dB)=−97(dBm) ……式3
である。
【0040】
以上の結果、この例では信号強度(以下、受信感度という)が−97(dBm)(以下、これを閾値という)よりも大きければ、受信回路14はICタグ5からの応答信号を復調できることになり、従ってS818における減衰量を、S817でRSSI144から取得した信号強度から次式によって求めることが可能となる。
減衰量=取得した信号強度−閾値 ……式4
ここで例えばRSSI144から取得した信号強度が−82(dBm)である場合には、
減衰量=−82(dBm)−(−97(dBm))=15(dB) ……式5
となる。また例えば、RSSI144から取得した信号強度が−62(dbm)である場合には、
減衰量=−62−(−97)=35(dB) ……式6
となる。
【0041】
なお、閾値を厳密に設定し過ぎると、リーダ装置10のサービスエリアを必要以上に狭くしてしまう可能性もある。そこで式3で求めた信号強度にオフセット値を加算した値を閾値とするようにしてもよい。
【0042】
以上のようにして減衰量が求まると、次に演算回路16は、スイッチ回路1414のポジションの切換や利得制御回路の利得制御、減衰量制御回路の減衰量制御を制御して、受信信号が減衰量だけ減衰されるようにする(S819)。なお、演算回路16は、このような制御によって、減衰量を所定範囲で変化させることができる。例えばLNA1411の利得制御回路の制御によって利得を0〜15(dB)の範囲で、ATT1413の減衰量制御回路の減衰量を25(dB)の範囲で夫々可変できる場合には、演算回路16は、スイッチ回路1414のポジションとの関係で次のようにして40(dB)の範囲で減衰量を変化させることができる。
0〜15(dB) : ポジションが「LNA」
15(dB) : ポジションが「THRU」
15〜40(dB) : ポジションが「ATT」
【0043】
演算回路16は、以上の制御を行うと、制御を実行した旨を示す情報を表示装置164に表示する(S820)。ユーザは、表示装置164にメッセージが表示されたことを確認すると、リーダ装置10を試用して受信回路14の受信感度が所望の値に設定されているかどうかを調べる。なお、表示装置164には、上記制御を実行した旨を示す情報とともに、演算回路16が設定した減衰量も表示され、ユーザはこれを見て受信回路14の感度が所望の値に設定されているかどうかを知ることもできる。
【0044】
受信感度が所望の値に設定されていることを確認した場合、ユーザはライトボタン75を押す。演算回路75は、ライトボタン75が押されたことを検知すると(S821)、S818の処理で求められている減衰量をメモリ162に書き込む(S822)。一方、受信感度が所望の値に設定されていない場合には、ユーザは再び計算ボタン74を押して再び減衰量を設定し直す(S817からの処理を再び行う)。なお、この場合、ユーザは例えばリーダ装置10とICタグ5の位置関係を変更するなどしてリーダ装置10によって計算される減衰量が前回と異なるようにする。ユーザは以上の作業を繰り返し行って、リーダ装置10の受信感度が所望の値になるようにする。
【0045】
上記実施形態において、リーダ装置10の電源投入時等の起動時には、演算回路16は前回動作時以前に既にメモリ162に記憶されている減衰量を読み出して、そのような減衰量となるように、自動的にスイッチ回路1414のポジションの切換や利得制御回路の利得の制御、減衰量制御回路の減衰量の制御を行うようにすることもできる。
【0046】
なお、以上の実施形態の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えばリーダ装置10はリーダライタ装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態によるリーダ装置10のブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるLNA回路1411の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による図2に示すLNA回路1411におけるFETの第2のゲートへの印加電圧と利得との関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるATT回路1413の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるRSSI回路144の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による合成信号(RF−in)と出力電圧との関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による受信感度の設定を行うためにリーダ装置10に設けられるユーザインタフェースの一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態によるユーザインタフェースにより受信感度を設定する場合の処理手順を説明するフローチャートを示す図である。
【図9】従来のRFIDを用いたシステムを説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
10 リーダ装置 11 送信アンテナ
12 送信回路
121 アンプ回路 122 ローパスフィルタ
123 変調回路 124 局部発振器
13 受信アンテナ 14 受信回路
141 フロントエンド回路 142 直交検波回路
143 復調回路 144 RSSI回路
1411 低雑音増幅回路 1412 スルー出力回路
1413 アッテネータ回路 1414 スイッチ回路
15 ベースバンド処理回路 16 演算回路
161 CPU 162 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答機に格納されている格納情報を送信させる要求電波を送信する送信回路と、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信して復調する受信回路とを有する質問機であって、前記受信回路の受信感度を設定するための感度設定回路を備えることを特徴とする質問機。
【請求項2】
請求項1に記載の質問機であって、
前記感度設定回路は、前記受信感度の指定を受け付けるユーザインタフェースを有し、前記感度設定回路は、前記ユーザインタフェースから受け付けた受信感度となるように、前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項3】
請求項1に記載の質問機であって、
前記応答電波に基づく受信信号の強度を示す信号を出力する信号強度測定回路を有し、
前記感度設定回路は、前記信号強度測定回路から出力される前記信号に応じて、前記受信回路の前記受信感度を自動的に設定する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項4】
請求項4に記載の質問機であって、
前記受信感度を自動的に設定する回路は、前記受信回路の受信感度が、前記受信回路の受信信号に含まれる雑音の強度と復調部に要求される信号対雑音比との和から閾値を求め、前記信号強度測定回路によって測定される信号強度から前記閾値を差し引くことにより求められる値だけ、受信信号の信号強度を減衰させる回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、
前記受信回路は、前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路を含み、前記感度設定回路は前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅を行うかどうかを切り換えることにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項6】
請求項5に記載の質問機であって、
前記感度設定回路は、前記低雑音増幅器の利得を制御することにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、
前記受信回路は、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路を含み、前記感度設定回路は前記応答電波に基づく受信信号の前記アッテネータ回路による減衰を行うかどうかを切り換えることにより前記受信回路の受信感度を設定する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項8】
請求項7に記載の質問機であって、
前記感度設定回路は、前記信号減衰回路による減衰量を制御することにより前記受信回路の受信感度を設定することを特徴とする質問機。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の質問機であって、
前記受信回路は、前記受信回路は前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路と、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路とを含み、
前記感度設定回路は、前記応答電波に基づく受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅のみ行うか、前記応答電波に基づく受信信号を前記アッテネータにのみ通過させるのか、前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅も前記アッテネータ回路による減衰も行わないようにするか、のいずれかの状態に切り換える回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項10】
請求項9に記載の質問機であって、
前記感度設定回路は、前記低雑音増幅回路の利得、及び前記アッテネータ回路の減衰量を制御する回路を含むことを特徴とする質問機。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の質問機であって、
前記応答機はRFIDにおけるICタグであり、当該質問機は前記ICタグから前記格納情報を読み出すRFIDのリーダ装置であることを特徴とする質問機。
【請求項12】
請求項3に記載の質問機であって、
前記信号強度測定回路はRSSI(Radio Signal Strength Indicator)回路であることを特徴とする質問機。
【請求項13】
請求項4に記載の質問機であって、
前記閾値は、前記雑音の強度と信号対雑音比との和から求まる値に所定のオフセット値を加算した値であることを特徴とする質問機
【請求項14】
応答機に格納されている格納情報を送信させる要求電波を送信する送信回路と、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信して復調する受信回路とを有し、
前記受信回路が、前記応答電波に基づく受信信号を増幅する低雑音増幅回路と、前記応答電波に基づく受信信号を減衰させるアッテネータ回路とを含んで構成される質問機の受信感度設定方法であって、
前記感度設定回路は、前記応答電波に基づく受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅のみ行うか、前記応答電波に基づく受信信号を前記アッテネータにのみ通過させるのか、前記受信信号の前記低雑音増幅回路による増幅も前記アッテネータ回路による減衰も行わないようにするか、のいずれかの状態に切り換えるとともに、前記低雑音増幅回路の利得、及び前記アッテネータ回路の減衰量を制御することにより受信感度を設定すること
を特徴とする質問機の受信感度設定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−120090(P2006−120090A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309935(P2004−309935)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(504385708)マイティカード株式会社 (11)
【Fターム(参考)】