説明

質量分析装置

【課題】質量分析装置において、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン、−イオンや電子に因るノイズを低減することを解決しようとする課題とする。
【解決手段】イオン検出器1のイオン入射口11aの周囲の金属板11に、複数個の棒状の絶縁スペーサー50を介して第2のメッシュ52を取り付け、第2のメッシュ52に複数個の棒状の絶縁スペーサー50を介して第1のメッシュ51を取り付ける。検出イオンが+イオンの場合、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して−の電位を印加し、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して+の電位を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生装置、イオン分析部、及びイオン検出器を備えた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図7ないし図8に示すような質量分析装置100が知られている(例えば、特許文献1参照)。質量分析装置100は、図7に示すように、真空チャンバー200を形成するステンレス製の容器110を備えている。真空チャンバー200の内部には、試料をイオン化するためのイオン発生装置3、生成されたイオンを質量ごとに分離するためのイオン分析部2、分離されたイオンを検出するためのイオン検出器1が設けられている。この質量分析器100は、イオン検出器1をデータ処理装置4に接続して使用する。
【0003】
イオン分析部2は、図8に示すように、4個の円筒電極から構成されている四重極電極21を備えていて、一端部がイオン入射部22、他端部がイオン出射部23となっている。イオン入射部22とイオン出射部23の間の空間は、イオン飛翔空間となっていて、イオン発生装置3で発生したイオンが、イオン入射部22からイオン飛翔空間内に導入される。四重極電極21には、定常電圧と所定の周波数の交流電圧を重畳した電圧が印加され、入射したイオンのうち、当該定常電圧、交流電圧及びその周波数に対応する質量数のイオンのみがイオン出射部23まで導かれることにより、所定の質量数のイオンが他の質量数のイオンから分離される。
【0004】
イオン検出器1は、図8に示すように、イオン検出器本体10と電子入射面を持つ電子増倍部16を備えている。イオン検出器本体10は、両端部に金属板11、13を有し、金属板11には、イオン入射口11aが、金属板13には、出射口13aが形成されている。また、イオン検出器本体10の支持金属板12には、絶縁部材14を介してコンバージョンダイノード15が取り付けられている。コンバージョンダイノード15はイオンが入射することにより電子またはイオンを放出するものであり、コンバージョンダイノード15への印加電圧の極性を切り換えることにより、+イオン、−イオンの双方に対応することが出来る。電子入射面を持つ電子増倍部16はコンバージョンダイノード15と対面するように配置されている。
【0005】
所望の質量数のイオンが、イオン入射口11aからイオン検出器1内部に入射すると、入射したイオンは、コンバージョンダイノード15と金属板11、支持金属板12とにより形成される電子レンズによりその軌道が曲げられ、コンバージョンダイノード15に入射する。コンバージョンダイノード15に+イオンが入射すると、コンバージョンダイノード15は電子を放出し、コンバージョンダイノード15に−イオンが入射すると、コンバージョンダイノード15は+イオンを放出し、この電子、または+イオンが電子入射面から電子増倍部16に入射し、電子増倍部16で指数関数的な増倍が行なわれて、大きな電気信号としてデータ処理部4に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−351564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】

ところで、上記従来の技術は、イオン発生装置3からイオン分析部2のイオン飛翔空間内にイオンと共に放出される電磁波や高速粒子は、イオン入射口11aからイオン検出器1の内部に進入するが、進入した電磁波や高速粒子は、エネルギーが高いので、電子レンズにより軌道を曲げられることが無く、そのまま直進し、金属板13の出射口13aから外部に出射され、イオン検出器1内で乱反射されることがない。これにより、電磁波や高速粒子によるノイズの発生が防止される。
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では、図9に示すように、MAS28(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)が7.0×10と小さく、ノイズが完全に除去されていない。これは、イオン分析部2から漏れ出す等して質量分析装置100内の雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン、−イオン、電子がイオン検出器1に進入し、これら+イオン、−イオン、電子が、コンバージョンダイノード15に入射されてこれがノイズとなると考えられる。
そこで、本発明は、イオン分析部2から漏れ出す等して質量分析装置100内の雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン、−イオン、電子に因るノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イオン発生装置、イオン分析部、及びイオン検出器を備えた質量分析装置において、イオン分析部のイオン出射部とイオン検出器のイオン入射口の間に、グランド電位に対して+または−の電位が印加される第1電位設定手段と、第1電位設定手段と逆の−または+の電位が印加される第2電位設定手段を順番に配置した。
【0010】
電位設定手段はメッシュで構成することができる。
【0011】
電位設定手段はアパーチャーで構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のように、イオン分析部のイオン出射部とイオン検出器のイオン入射口の間に、グランド電位に対して+または−の電位が印加される第1電位設定手段と、第1電位設定手段と逆の−または+の電位が印加される第2電位設定手段を順番に配置したので、イオン分析部2から漏れ出す等して質量分析装置100内の雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン、−イオン、電子がイオン検出器内に進入することを第1電位設定手段または第2電位設定手段によって阻止することできる。したがって、イオン検出器において、これら+イオン、−イオン、電子に因るノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1(a)】本発明の質量分析装置の第1の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)の説明図である。
【図1(b)】図1(a)に示す本発明の第1の実施形態の機能説明図である。
【図2(a)(b)(c)(d)】図1(a)に示す本発明の質量分析装置の第1の実施形態の実験結果を表す図表である。
【図3(a)】本発明の質量分析装置の第1の実施形態(検出イオンが−イオンの場合)の説明図である。
【図3(b)】図3(a)に示す本発明の第1の実施形態の機能説明図である。
【図4】本発明の質量分析装置の第2の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)の説明図である。
【図5】本発明の質量分析装置の第3の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)の説明図である。
【図6】本発明の電位設定手段の一例であるアパーチャーの斜視図である。
【図7】従来の質量分析装置を示すブロック図である。
【図8】従来の質量分析装置のイオン分析部、イオン検出器の説明図である。
【図9】従来の質量分析装置の質量m/電荷zに対する出力電流を表す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の質量分析装置の第1の実施形態を図1ないし図3に基づき説明する。なお、図面の説明においては、同一要素においては同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1(a)は、本発明の質量分析装置100の第1の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)を示す図であって、イオン検出器1のイオン入射口11aに第1のメッシュ51、第2のメッシュ52が取り付けられている、いわゆるWメッシュ構造を具体的に示す図である。図1(b)は、検出イオンである+イオン60及び雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン90、−イオン80、電子85に対する第1、第2のメッシュ51、52の機能説明図である。
【0016】
本発明の第1の実施形態の質量分析装置100は、図1(a)に示すように、試料をイオン化するためのイオン発生装置3、生成されたイオンを質量ごとに分離するためのイオン分析部2、分離されたイオンを検出するためのイオン検出器1を備えている。イオン発生装置3、イオン分析部2、イオン検出器1は、図7に示した従来の質量分析装置と同様に、真空チャンバー内部に収容されている。
【0017】
イオン発生装置3は、試料導入系から試料が導入されるイオン源31の周囲に、電子源32、リペラー電極34を備えている。電子源31は、例えばレニウム、タングステン等から成るフィラメントであり、電流を流すことで、イオン源の向かって飛んでいく熱電子33を発生させる。
【0018】
イオン分析部2は、四重極電極21を備えている。四重極電極21は、中心軸線の周りで、中心軸線に平行に配列された4個の円筒電極から構成されており、中心軸線方向の一端部がイオン入射部22、他端部がイオン出射部23となっている。また、四重極電極21内部のイオン入射部22とイオン出射部23の間の空間は、イオン飛翔空間となっていて、イオン発生装置3で発生した+イオン60、90が、イオン入射部23からイオン飛翔空間内に導入される。四重極電極21には、定常電圧と所定の周波数の交流電圧を重畳した電圧が印加され、入射した+イオン60、90のうち、当該周波数に対応する質量数の+イオン60のみがイオン出射部23まで導かれることにより、所定の質量数の+イオン60が他の質量数の+イオン90から分離される。
【0019】
イオン検出器1は、図8に示す従来のイオン検出器1と同じ構造を備えている。図8に基づいて説明すると、イオン検出器1は、イオン検出器本体10と電子入射面を持つ電子増倍部16を備えている。イオン検出器本体10は、両端部に金属板11、13を有し、金属板11には、イオン入射口11aが、金属板13には、出射口13aが形成されている。また、イオン検出器本体10の支持金属板12には、絶縁部材14を介してコンバージョンダイノード15が取り付けられていて、コンバージョンダイノード15と金属板11、支持金属板12とにより電子レンズ形成されている。電子入射面を持つ電子増倍部16はコンバージョンダイノード15と対面するように配置されている。所望の質量数の+イオン60が、イオン入射口11aからイオン検出器1内部に入射すると、入射した+イオン60は、この電子レンズによりその軌道が曲げられ、コンバージョンダイノード15に入射する。コンバージョンダイノード15は+イオン60が入射することにより電子を放出し、この電子が電子入射面から電子増倍部16に入射し、電子増倍部16で指数関数的な増倍が行なわれて、大きな電気信号としてデータ処理部4に送られるものである。コンバージョンダイノード15への印加電圧の極性を切り換えることにより、+イオン、−イオンの双方に対応することが出来る。
【0020】
図1(a)に示す第1の実施形態は、電位設定手段をメッシュで構成したものであって、イオン分析部2において分離された所望の質量数の+イオン60が入射するイオン検出器1のイオン入射口11aに、絶縁スペーサー50を介して2個のメッシュ51、52が取り付けられている。すなわち、図1(a)に示すように、イオン検出器1のイオン入射口11aの周囲の金属板11に、複数個の棒状の絶縁スペーサー50を介して第2のメッシュ52が取り付けられ、更に、第2のメッシュ52に複数個の棒状の絶縁スペーサー50を介して第1のメッシュ51が取り付けられている。そして、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して−の電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して+の電位が印加されている。
【0021】
本発明に係る質量分析装置の第1の実施形態の動作を図1(a)、図1(b)に従って説明する。イオン発生装置3の電子源32であるフィラメントに電流を流し、高温に熱すると、フィラメントから熱電子が発生し、イオン源に向かって飛んでいく。この状態のイオン源に試料導入系から試料(検出対象が+イオンである)を導入すると、試料分子は+イオン60、90等に変換される。変換された+イオン60、90等は、リペラー電極34によりイオン源から押し出され、イオン分析部2のイオン入射部22からイオン飛翔空間内に導入される。イオン分析部2においては、四重極電極21に、定常電圧と所定の周波数の交流電圧を重畳した電圧が印加されていて、入射したイオンのうち、当該周波数に対応する質量数の+イオン60のみがイオン出射部23まで導かれ、所定の質量数の+イオン60が他の質量数の+イオン90から分離される。そして、図1(b)に示すように、イオン分析部2において分離された所定の質量数の+イオン60は、通常数10eVの比較的高いエネルギーを有している。従って、逆の極性の第1のメッシュ51を通過し、同じ極性の第2のメッシュ52も通過することができる。そして、イオン入射口11aからイオン検出器1内に導入され、電子レンズにより軌道が曲げられてコンバージョンダイノード15に入射する。
【0022】
一方、図1(b)に示すように、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い−イオン80や電子85は、グランド電位に対して−の電位が印加されている第1のメッシュ51によりイオン検出器1への進入が阻止され、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン90は、グランド電位に対して+の電位が印加されている第2のメッシュ52によりイオン検出器1への進入が阻止される。これにより、イオン検出器1において、これら−イオン80や電子85、+イオン90に因るノイズを低減することができる。
【0023】
図2(a)〜(d)は、図1(a)に示す本発明の質量分析装置の第1の実施形態において、第1のメッシュ51の印加電位を、−100V、−200V、−300V、−500VとしたときのMAS28(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)を測定した実験結果を示す図表である。実験は、図9に示す従来の技術と同じ条件(真空度:1.0×10、コンバージョンダイノード電圧:−10kV、電子増倍部電圧:−1700V)、同じ装置で行なった。なお、メッシュについては、メッシュピッチが500μmでメッシュ間スペーサーは1mmである。
【0024】
図2(a)〜(d)の実験結果をみると、第1のメッシュ51の印加電位が−100Vのとき、第2のメッシュ52の印加電位が+20Vにおいて、MAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)が1.6×10であり、第1のメッシュ51の印加電位が−200Vのとき、第2のメッシュ52の印加電位が+28Vにおいて、MAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)が5.8×10であり、第1のメッシュ51の印加電位が−300Vのとき、第2のメッシュ52の印加電位が+33Vにおいて、MAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)が4.5×10であり、第1のメッシュ51の印加電位が−500Vのとき、第2のメッシュ52の印加電位が+44Vにおいて、MAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)が1.1×10である。したがって、第1、第2のメッシュ51、52を備えている場合のMAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)は、第1、第2のメッシュ51、52を備えていない場合のMAS(信号成分)/MAS4(ノイズ成分)すなわちS/N(信号雑音比)7.0×10よりもいずれも高くなっているから、第1、第2のメッシュ51、52を備えることによって確実にノイズは低減されている。
【0025】
図3(a)に示す質量分析装置100の第1の実施形態(検出イオンが−イオンの場合)は、イオン検出器1のイオン入射口11aに、絶縁スペーサー50を介して第1のメッシュ51、第2のメッシュ52が取り付けられている点で図1(a)に示す質量分析装置100の第1の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)と同じ構造である。図3(a)に示す質量分析装置100の第1の実施形態(検出イオンが−イオンの場合)が図1(a)に示す質量分析装置100の第1の実施形態(検出イオンが+イオンの場合)と異なる点は、検出イオンが−イオンであるために、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して+電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して−電位が印加されている点である。
【0026】
図3(b)は、−イオン70の検出イオン及び雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い−イオン80や電子85、+イオン90に対する第1、第2のメッシュ51,52の機能説明図である。
【0027】
本発明に係る質量分析装置の第1の実施形態(検出イオンが−イオンの場合)の動作を図3(a)、(b)に従って説明する。イオン発生装置3、イオン分析部2、イオン検出器1の内部の動作は、図1(a)の場合と同様である。
【0028】
イオン発生装置3により生成された−イオン70、−イオン80は、リペラー電極34によりイオン源から押し出され、イオン分析部2のイオン入射部22からイオン飛翔空間内に導入される。イオン分析部2において、所定の質量数の−イオン70が他の質量数のイオンから分離され、そして、分離された所定の質量数の−イオン70は、通常数10eVの比較的高いエネルギーを有している。従って、逆の極性の第1のメッシュ51を通過し、同じ極性の第2のメッシュ52も通過することができる。そして、イオン入射口11aからイオン検出器1内に導入され、電子レンズにより軌道が曲げられてコンバージョンダイノード15に入射する。
【0029】
一方、図3(b)に示すように、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン90は、第1のメッシュ51によりイオン検出器1への進入が阻止され、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い−イオン80や電子85は、第2のメッシュ52によりイオン検出器1への進入が阻止される。これにより、イオン検出器1において、これら−イオン80や電子85、+イオン90に因るノイズを低減することができる。
【0030】
本発明の質量分析装置100の第2、第3の実施形態を図4、図5に示す。
【0031】
図4に示す本発明の質量分析装置100の第2の実施形態においては、電位設定手段としての第1、第2のメッシュ51、52は、イオン分析部2のイオン出射部23に取り付けられている。図4に示すように、四重極電極21の各々の円筒電極の端部に、棒状の絶縁スペーサー50を介して第1のメッシュ51が取り付けられ、更に、第1のメッシュ51には、複数個の棒状の絶縁スペーサー50を介して第2のメッシュ52が取り付けられている。そして、検出イオンが+イオンの場合は、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して−の電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して+の電位が印加される。検出イオンが−イオンの場合は、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して+の電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して−の電位が印加される。
【0032】
図5に示す本発明の質量分析装置100の第3の実施形態においては、電位設定手段としての第1、第2のメッシュ51、52は、イオン検出器1の金属板11、イオン分析部2のイオン出射部23以外の部材、例えば、イオン検出器1本体、イオン分析部2本体、もしくは真空チャンバーの容器110等に絶縁スペーサーを介して取り付けられている(図示せず)。そして、検出イオンが+イオンの場合は、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して−の電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して+の電位を印加される。検出イオンが−イオンの場合は、第1のメッシュ51にはグランド電位に対して+の電位が印加され、第2のメッシュ52にはグランド電位に対して−の電位が印加される。
【0033】
図4、図5に示す第2、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い−イオン80や電子85、+イオン90は、第1のメッシュ51、第2のメッシュ52によってイオン検出器1内への進入が阻止されるので、イオン検出器1において、これら−イオン80や電子85、+イオン90に因るノイズを低減することができる。
【0034】
以上本発明の質量分析装置100の第1ないし第3の実施形態においては、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン90、−イオン80や電子85のイオン検出器1内への進入を阻止する電位設定手段をメッシュで構成しているが、メッシュの代わりに図6に示すアパーチャー53、54等の他の手段で構成してもよい。アパーチャー53、54等の他の手段を、イオン分析部2のイオン出射部23とイオン分析器1のイオン入射口11aとの間に取り付ける手段、及び検出イオンが+イオンの場合、検出イオンが−イオンの場合に応じてアパーチャー53、54等の他の手段に印加する電位は、本発明の質量分析装置100の第1ないし第3の実施形態と同じである。
【0035】
また、雰囲気中に漂っているエネルギーの極めて低い+イオン90、−イオン80や電子85のイオン検出器1内への進入を阻止する手段としてメッシュ51、52とアパーチャー53、54等の他の手段を混在して用いてもよい。
【0036】
なお、本発明の質量分析装置のイオン検出器1、イオン分析部2、イオン発生装置3は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…イオン検出器、2…イオン分析部、3…イオン発生装置、4…データ処理装置、10…イオン検出器本体、11…金属板、11a…イオン入射口、12…支持金属板、13…金属板、13a…出射口、14…絶縁部材、15…コンバージョンダイノード、16…電子増倍部、21…四重極電極、22…イオン入射部、23…イオン出射部、31…イオン源、32…電子源、33…熱電子、34…リペラー電極、50…絶縁スペーサー、51…第1のメッシュ、52…第2のメッシュ、53、54…アパーチャー、100…質量分析装置、110…容器、200…真空チャンバー。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生装置、イオン分析部、及びイオン検出器を備えた質量分析装置において、前記イオン分析部のイオン出射部と前記イオン検出器のイオン入射口の間に、グランド電位に対して+または−の電位が印加される第1電位設定手段と、前記第1電位設定手段と逆の−または+の電位が印加される第2電位設定手段を順番に配置したことを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
前記電位設定手段をメッシュで構成したことを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記電位設定手段をアパーチャーで構成したことを特徴とする請求項1記載の質量分析装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−3836(P2012−3836A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130069(P2010−130069)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】