説明

質量分析計の配置

【解決手段】本発明は、質量分析計補助真空出口(30)を有する質量分析計補助真空室(20)を囲むハウジング(86)と、少なくとも2つの質量分析計高真空室(21,22,23)と、高真空室(21,22,23)と接続され、補助真空出口(89)を有する一体化されたターボ分子ポンプ(12)とを備えた質量分析計の配置(10)に関する。2つの補助真空出口(30,89) は、ハウジング(86)内の共通の補助真空空間(98)に延びており、補助真空空間はハウジング出口(88)に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助真空出口を含む質量分析計補助真空室と、少なくとも2つの質量分析計高真空室と、高真空室に接続されているターボ分子ポンプとを備えた質量分析計の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような質量分析計の配置では、ターボ分子ポンプと、ターボ分子ポンプのための補助真空ポンプと、質量分析計補助真空室のための別の補助真空ポンプとが、対応する真空を質量分析計に供給するために必要とされる。このような配置は複雑で費用が嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/033520号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを考慮して、本発明は、経済的な質量分析計の配置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する質量分析計の配置により達成される。
【0006】
本発明の質量分析計の配置では、質量分析計のハウジング内に配置され、一体化されたターボ分子ポンプが備えられている。質量分析計の高圧室が、ハウジング内の通路を通ってターボ分子ポンプと直接接続されている。更に、質量分析計補助真空室の補助真空出口、及びターボ分子ポンプの補助真空出口が、質量分析計のハウジング内の共通の補助真空室に通じている。補助真空室は、必要な場合、外部の補助真空ポンプに通じる単一のハウジング出口で最終的に終端となる。
【0007】
質量分析計のハウジング内にターボ分子ポンプを一体化することにより、非常に小型で、比較的簡易な質量分析計の配置が実現される。質量分析計補助真空室の補助真空出口とターボ分子ポンプの補助真空出口とを組み合わせて、ハウジング内で共通且つ単一の補助真空室と成すことにより、構造が更に簡易化される。
【0008】
好ましい実施形態では、ターボ分子ポンプは、高真空コンプレッサ段に加えて補助真空コンプレッサ段を含んでおり、該補助真空コンプレッサ段は、質量分析計の補助真空出口とターボ分子ポンプの補助真空出口とが通じている補助真空室と、ハウジング出口との間に配置されている。このようにして、1乃至5mbarから5乃至10mbar又はそれ以上の補助真空圧力の圧縮が、質量分析計のハウジング内で既に達成される。従って、補助真空のハウジング出口に接続されるべき補助真空ポンプは、対応して小型に構成され得る。ターボ分子ポンプの補助真空コンプレッサ段は更に、外部の補助真空ポンプがもはや必要とされないように、大気圧まで圧縮するように理論的に設計されてもよい。
【0009】
ターボ分子ポンプは、個々の構成要素を連続的に質量分析計のハウジング内に組み立てることにより、質量分析計のハウジング内に設けられてもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、質量分析計のハウジング内に配置され、ハウジングがないカートリッジとして、ターボ分子ポンプが設計されている。ターボ分子ポンプが、質量分析計のハウジング又はハウジング内の構造によってハウジングが形成されており、ハウジングがないカートリッジとして実現されるので、別個のターボ分子ポンプのハウジングが省略され得る。これにより、構造の空間及び重量が減るだけでなく、基本的にターボ分子ポンプの入口及び出口の流れ抵抗も対応して低減する。
【0010】
好ましくは、ターボ分子ポンプは、入口ロータ段の末端部に吸込開口部を含んでおり、該吸込開口部は、質量分析計高真空室と夫々接続され、分割された開口部分を少なくとも2つ有している。吸込開口部の面に、ターボ分子ポンプは少なくとも2つの分割された開口部分を含んでいる。一般的に環状であり、入口ロータ段に直接隣接するある程度広い面積の吸込開口部は、2又は場合によってはより多くの開口部分に分割されている。開口部分のサイズ及び開口部分の径方向の位置を変えることにより、夫々の高真空室に必要な圧力レベル及びポンプ容量が、それに応じて調節され得る。吸込開口部を2以上の開口部分に分割することは、技術的な労力をほとんど必要としない。全ての開口部分が吸込開口部の面に位置するので、十分なコンダクタンス値、ひいては吸込性能の損失の低減が、吸込開口面に対して開口部分の面積を減らしているという事実にもかかわらず実現され得る。吸込開口部を複数の吸込開口部分に分割することは、ポンプ軸線に沿って分配されたターボ分子ポンプの中間入口の数を対応して減らすという小型化の解決法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】質量分析計の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0013】
図は、質量分析計のハウジング86とターボ分子ポンプ12とを備えた質量分析計92の配置10を示す。ターボ分子ポンプ12は、ハウジング86に挿入され、ハウジングがないカートリッジ13として設計されている。
【0014】
質量分析計92は、例えば、四重極型質量分析計として組み立てられてもよいが、あらゆる他のタイプの質量分析計であってもよい。本質量分析計は、破線の矢印で図示されているイオン電流が流れる4つの真空室20,21,22,23 を備える。最も高圧の真空室20は、イオン電流のためのハウジング入口94を通ってイオン電流が流れ込む補助真空の真空室である。補助真空の真空室20の内部では、1乃至5mbarのイオン化圧力が広がっている。イオン電流の流れ方向に続いて配置されている高真空室21,22,23内では、10-1乃至10-7mbarの圧力がかかっている。
【0015】
ターボ分子ポンプ12は、カートリッジ13として設計されており、つまり、ターボ分子ポンプ自体のハウジングは設けられていない。ターボ分子ポンプのカートリッジ13は、ハウジングなしで質量分析計のハウジング86内に配置されている。このようにして、ターボ分子ポンプ12の高真空部分であるポンプステータ19が、ハウジング86又はハウジング86の内部構造によって直接保持されている。
【0016】
高真空部分に、ターボ分子ポンプ12は、更に高真空入口を形成する2つの開口部分81,82 に加えて中間入口83も有する。開口部分81,82 は、入口ロータ段の末端部に配置されている吸込開口部16を対応して分割することにより形成されている。吸込開口部16は、入口ロータ段19に直接隣接し、ハウジング86によって形成されている。
【0017】
表面が円形である吸込開口部16は、ハウジング86の導管の壁により2つの開口部分81,82 に分割されている。開口部分81,82 は平面視で円形であるが、扇状、同心円環状又は別の形状であってもよい。
【0018】
ターボ分子ポンプの高真空部分を外側から画定する補助真空出口89に、ターボ分子ポンプは、ターボ分子ポンプ12の高真空部分から流れてくるガス、及び補助真空の真空室20から補助真空出口30を通って流れてくるガスの両方が流れ込み、ロータ及びステータのない補助真空室98を備えている。
【0019】
ターボ分子ポンプ12は、流れ方向で見て補助真空室98の次に補助真空コンプレッサ段96を備えており、補助真空コンプレッサ段では、補助真空室98からのガスが、5乃至10mbar又はそれ以上の圧力に圧縮される。その後、ガスは、ハウジング出口88を通ってハウジング86から出て、ハウジングから導管を介して外部の補助真空ポンプ90に供給される。ターボ分子ポンプ12のロータ軸14が、高真空部分及び補助真空コンプレッサ段96のロータ段を支持している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計の配置(10)において、
該質量分析計はハウジング(86)を備えており、
該ハウジングは、
質量分析計補助真空出口(30)を有する質量分析計補助真空真空室(20)と、
少なくとも2つの質量分析計高真空真空室(21,22,23)と、
該高真空真空室(21,22,23)と接続され、補助真空出口(89)を有する一体化されたターボ分子ポンプ(12)とを含み、
前記2つの補助真空出口(30,89) は、前記ハウジング(86)内の共通の補助真空室(98)に通じており、該補助真空室はハウジング出口(88)に通じていることを特徴とする質量分析計の配置。
【請求項2】
前記ターボ分子ポンプ(12)は、前記補助真空室(98)と前記ハウジング出口(88)との間に補助真空コンプレッサ段(96)を含むことを特徴とする請求項1に記載の質量分析計の配置。
【請求項3】
前記ターボ分子ポンプ(12)は、前記ハウジング(86)内に配置され、ハウジングがないカートリッジ(13)として設計されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の質量分析計の配置。
【請求項4】
前記ターボ分子ポンプ(12)は、入口ロータ段の末端部に吸込開口部(16)を含み、該吸込開口部は、前記高真空真空室(22,23) と夫々接続され、分割された開口部分(81,82) を少なくとも2つ含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の質量分析計の配置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−529629(P2010−529629A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511580(P2010−511580)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056848
【国際公開番号】WO2008/151968
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】