赤外線ランプ
【課題】放射透過性バルブの内部に主成分を炭素系物質とする発熱体を用いた赤外線ランプの長尺化を図る。
【解決手段】放射透過性を有する例えば管径φ8mm石英ガラス製のバルブ12内で、複数のモリブデンコイル14間に、炭素系発熱体で形成されたコイル状のカーボンコイル13を直列に機械的および電気的に連結して収容する。バルブ12内で直列的に連結されたカーボンコイル13とモリブデンコイル14は、不活性ガスを封入した状態を封止部161,162により封止する。これにより、長尺のバルブ12に対して配置された複数のカーボンコイル13を発光させることが可能となり、カーボンコイル13を用いる場合に不向きであった長尺の赤外線ランプを実現することができる。
【解決手段】放射透過性を有する例えば管径φ8mm石英ガラス製のバルブ12内で、複数のモリブデンコイル14間に、炭素系発熱体で形成されたコイル状のカーボンコイル13を直列に機械的および電気的に連結して収容する。バルブ12内で直列的に連結されたカーボンコイル13とモリブデンコイル14は、不活性ガスを封入した状態を封止部161,162により封止する。これにより、長尺のバルブ12に対して配置された複数のカーボンコイル13を発光させることが可能となり、カーボンコイル13を用いる場合に不向きであった長尺の赤外線ランプを実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射透過性バルブの内部に主成分を炭素系物質とする発熱体を備えた赤外線ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射透過性バルブ内部にコイル状の炭素系発熱体を収納した赤外線ランプは、遠赤外域に波長を持つことや、突入電流が無いことから、高効率ランプとして暖房器具等に用いられている。通常、炭素系発熱体は連続する一体の発熱体から形成されており、配光・熱分布は炭素系発熱体のコイルピッチの密度により調整されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−367568公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、熱分布を調整するために炭素系発熱体のコイルピッチを調整するのは容易ではないことから熱分布の調整が困難であった。また、一体の炭素系による発熱体の場合、コイル状の炭素系発熱体の強度の問題からヒータランプの長尺化が難しいという問題があった。
【0004】
この発明の目的は、コイル状の炭素系発熱体を用いた赤外線ランプ長の長尺化を実現した赤外線ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の赤外線ランプでは、放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備したことを特徴とする。
【0006】
また、放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状で封止した封止部とを具備し、前記発熱体を二重構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、コイル状の炭素系発熱体を用いた赤外線ランプ長の長尺化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図3は、それぞれこの発明の赤外線ランプの第1の実施形態について説明するためのもので、図1は全体構成を示す構成図、図2は図1の要部を拡大して示す側面図、図3は図2要部の斜視図である。
【0009】
図1において、11は赤外線ランプであり、例えば食品保温用や暖房用等のヒータとして多用される管型であり、放射透過性を有する例えば管径φ8mm石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12には、その内部に炭素系物質を含む焼結体で形成された線径φ1.0mm程度のコイル状に巻回されたカーボンコイル13を複数配置する。
【0010】
複数のカーボンコイル13の間には、導電性で非発光の金属部材であるモリブデンテンコイル14を介在させている。
【0011】
図2、図3に示すようにモリブデンコイル14は、ブルブ12内で軸方向に同心状態に保持させるためのアンカー141,142とこれらを一体形成させる連結部143と両側の支持部144,145から構成される。
【0012】
カーボンコイル13と隣り合うモリブデンコイル14の支持部142あるいは143を順次繋ぎ合わせて連結することで発光部分を構成する。カーボンコイル13とモリブデンコイル14の支持部142あるいは143の繋ぎ合わせは、支持部142あるいは143をコイル状に巻回されたカーボンコイル13の連通孔に圧入させることで取り付ける。連結されたカーボンコイル13とモリブデンコイル14の両端は、モリブデンコイル14を位置するようにし、両端に位置したモリブデンコイル14にそれぞれインナーリード線151,152を接続する。バルブ12内には、アルゴン等の不活性ガスを封入する。
【0013】
バルブ12の軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止部161,162を形成し、これら封止部161,162内にはバルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔171,172をそれぞれ埋設している。
【0014】
金属箔171,172は、内端部にはインナーリード線151,152を、外端部には給電のための一対のアウターリード線181,182をそれぞれ溶接により接続している。アウターリード線181,182は、各封止部151,152から気密に外部へ延出している。
【0015】
このように構成された赤外線ランプのアウターリード線181,182に電力が供給されると、カーボンコイル13の部分が発光する。図4は、このときの熱分布を示している。図4は、赤外線ランプのセンターの熱量(E)を100%とした場合のその周辺の熱量の相対値を表わしている。
【0016】
この実施形態によれば、カーボンコイル13と非発光のモリブデンコイル14を交互に連結させることで長尺のバルブ12においてカーボンコイルの使用が可能となり、広い分布でカーボンコイルから赤外線を発生させることができる。また、非発光部の調整により配光や熱分布の調整も可能となる。
【0017】
なお、モリブデンコイルに替えて電流密度iWが2.0×107[A/m2]以下の非発光状態のタングステンコイルを使用した場合でも、広い分布でカーボンコイルから赤外線を発生させる等の効果を奏する。
【0018】
図5〜図7は、それぞれこの発明の第2の実施形態について説明するためのもので、図5は全体構成を示す構成図、図6は図5の要部を拡大して示す側面図、図7は図5の要部の斜視図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0019】
この実施形態は、上記実施形態のモリブデンコイル14に替えて、導電性の金属部材であるコイル状に巻回されたタングステンコイル51を仕様するとともに、線径φ0.3mm程度のタングステンコイル51の中間部にアンカー52を取り付けたものである。
【0020】
カーボンコイル13とタングステンコイル51は、これらを交互に繋ぎ合わせて連結することで発光部分を構成する。タングステンコイル51は両端に位置するようにし、両端に位置したタングステンコイル51にそれぞれ一体的にインナーリード線531,532を形成する。インナーリード線531,532は、それぞれモリブデンで形成された矩形箔状の金属箔171,172の一端に溶接している。
【0021】
カーボンコイル13とタングステンコイル51は、図6、図7に示すように互いが巻きつくように螺合させて繋ぎ合わせる。これにより接着剤や溶接等の特別な接合手段を必要としない。
【0022】
図8は、この実施形態のアウターリード線181,182に6Aの電流を流し、カーボンコイルのみ、タングステンコイルのみ、カーボンコイルとタングステンコイルを同時に点灯させた場合の任意点の発光波長を測定した結果を示すものである。なお、タングステンを主成分とする金属発熱体は、電流密度iWがiW >2.0×107[A/m2]の関係を満たすときに点灯し、炭素系発熱体は、電流密度iCがiC>3.5×106[A/m2]を満たすときに点灯する。
【0023】
図8で明らかなように、タングステンコイルとカーボンコイルが同時に点灯しているときは、それぞれから発光される波長が合成された分布を得ることができる。要は、短いカーボンコイルをタングステンコイルを繋ぎ合わせて全長を長くした状態下でもカーボンコイルから得られる赤外線の波長の光を得ることができる。
【0024】
この実施形態では、複数の炭素系発熱体間にタングステンなどの金属発熱体を設け、電気的および機械的に連結させたことにより、幅広い波長域の赤外線を放射させることが可能となる。
【0025】
図9〜図13は、この発明の第3の実施形態について説明するためのもので、図9は全体構成を示す構成図、図10は図9の要部を拡大して示す側面図、図11は図9の等価回路図、図12はカーボンコイルとタングステンコイルの寸法の関係について説明するための説明図、図13は図9実施形態の効果について説明するための説明図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0026】
この実施形態は、図10に示すようにコイルピッチPが0.85mm、内径Diが1.95mm、線径Dlが0.95mmのコイル状に巻回されたカーボンコイル91,92を螺合させて二重コイル状にして封装したものである。二重にされたカーボンコイル91,92の両端には、一端にインナーリード93,94が一体形成されたタングステンコイル95,96の他端が螺合される。インナーリード93,94は、それぞれモリブデンで形成された矩形箔状の金属箔171,172の一端に溶接している。
【0027】
図11は、カーボンコイル91,92とインナーリード93,94部分の電気的な等価回路を示すもので、カーボンコイル91,92は並列接続の状態となり2倍の抵抗値となっている。
【0028】
図12は、二重のカーボンコイル91,92と従来の単体カーボンコイルの仕様を示し、図13は図12の仕様に基づくカーボンコイル91,92と単体カーボンコイルの特許結果を示すものである。図に示すように、この発明は印加される電圧値が12Vで同じであっても電流を2倍にできることから電力を2倍にすることができる。
【0029】
この実施形態の場合、2本のカーボンコイルを螺合させて二重の筒状抵抗体とすることで、カーボンコイルに必要以上に負荷を掛けることがなく、高い信頼性の発熱体を得ることができる。また、二重構造のカーボンコイルとしたことから機械的な強度の向上を図り全長を長くすることができ、バルブの全長を長くできる。また、従来と同寸法として場合でも高出力化の実現も可能となる。
【0030】
なお、二重構造のカーボンコイルにする考えは、上記第1および第2の実施形態のカーボンコイル13に適用することも可能である。この場合、全カーボンコイル13に二重構造を適用しなくても、目的に応じて任意のカーボンコイルのみ二重構造とすることも可能である。
【0031】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、上記した実施形態によって把握される技術思想をその効果とともに以下に説明する。
【0032】
(1)放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、前記金属部材をコイル状とし、コイル状の前記発熱体とは螺合により接続してなることを特徴とする赤外線ランプ。
これにより、特別な接着手段を用いることなく、発熱体と金属部材との電気的な結合を実現することができる。
【0033】
(2)放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、前記発熱体を二重構造とし、その両端にコイル状のタングステンコイルを螺合結合したことを特徴とする赤外線ランプ。
これにより、溶接可能なタングステンコイルを炭素系発熱体の両端に螺合させて結合させたことで、炭素系発熱体の電気的、機械的な接続を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の赤外線ランプの第1の実施形態について説明するための全体構成図。
【図2】図1の要部を拡大して示す側面図。
【図3】図2要部の斜視図。
【図4】図1の効果について説明するための説明図。
【図5】この発明の赤外線ランプの第2の実施形態について説明するための全体構成図。
【図6】図5の要部を拡大して示す側面図。
【図7】図5の要部の斜視図。
【図8】図5の効果について説明するための説明図。
【図9】この発明の赤外線ランプの第3の実施形態について説明するための全体構成図。
【図10】図9の要部を拡大して示す側面図。
【図11】図9の等価回路図。
【図12】カーボンコイルとタングステンコイルの寸法の関係について説明するための説明図。
【図13】図9実施形態の効果について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0035】
11 赤外線ランプ
12 バルブ
13,91,92 カーボンコイル
14 モリブデンテンコイル
151,152,531,532,93,94 インナーリード線
161,162 封止部
171,172 金属箔
181,182 アウターリード線
51 タングステンコイル
52 アンカー
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射透過性バルブの内部に主成分を炭素系物質とする発熱体を備えた赤外線ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射透過性バルブ内部にコイル状の炭素系発熱体を収納した赤外線ランプは、遠赤外域に波長を持つことや、突入電流が無いことから、高効率ランプとして暖房器具等に用いられている。通常、炭素系発熱体は連続する一体の発熱体から形成されており、配光・熱分布は炭素系発熱体のコイルピッチの密度により調整されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−367568公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、熱分布を調整するために炭素系発熱体のコイルピッチを調整するのは容易ではないことから熱分布の調整が困難であった。また、一体の炭素系による発熱体の場合、コイル状の炭素系発熱体の強度の問題からヒータランプの長尺化が難しいという問題があった。
【0004】
この発明の目的は、コイル状の炭素系発熱体を用いた赤外線ランプ長の長尺化を実現した赤外線ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の赤外線ランプでは、放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備したことを特徴とする。
【0006】
また、放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状で封止した封止部とを具備し、前記発熱体を二重構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、コイル状の炭素系発熱体を用いた赤外線ランプ長の長尺化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図3は、それぞれこの発明の赤外線ランプの第1の実施形態について説明するためのもので、図1は全体構成を示す構成図、図2は図1の要部を拡大して示す側面図、図3は図2要部の斜視図である。
【0009】
図1において、11は赤外線ランプであり、例えば食品保温用や暖房用等のヒータとして多用される管型であり、放射透過性を有する例えば管径φ8mm石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12には、その内部に炭素系物質を含む焼結体で形成された線径φ1.0mm程度のコイル状に巻回されたカーボンコイル13を複数配置する。
【0010】
複数のカーボンコイル13の間には、導電性で非発光の金属部材であるモリブデンテンコイル14を介在させている。
【0011】
図2、図3に示すようにモリブデンコイル14は、ブルブ12内で軸方向に同心状態に保持させるためのアンカー141,142とこれらを一体形成させる連結部143と両側の支持部144,145から構成される。
【0012】
カーボンコイル13と隣り合うモリブデンコイル14の支持部142あるいは143を順次繋ぎ合わせて連結することで発光部分を構成する。カーボンコイル13とモリブデンコイル14の支持部142あるいは143の繋ぎ合わせは、支持部142あるいは143をコイル状に巻回されたカーボンコイル13の連通孔に圧入させることで取り付ける。連結されたカーボンコイル13とモリブデンコイル14の両端は、モリブデンコイル14を位置するようにし、両端に位置したモリブデンコイル14にそれぞれインナーリード線151,152を接続する。バルブ12内には、アルゴン等の不活性ガスを封入する。
【0013】
バルブ12の軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止部161,162を形成し、これら封止部161,162内にはバルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔171,172をそれぞれ埋設している。
【0014】
金属箔171,172は、内端部にはインナーリード線151,152を、外端部には給電のための一対のアウターリード線181,182をそれぞれ溶接により接続している。アウターリード線181,182は、各封止部151,152から気密に外部へ延出している。
【0015】
このように構成された赤外線ランプのアウターリード線181,182に電力が供給されると、カーボンコイル13の部分が発光する。図4は、このときの熱分布を示している。図4は、赤外線ランプのセンターの熱量(E)を100%とした場合のその周辺の熱量の相対値を表わしている。
【0016】
この実施形態によれば、カーボンコイル13と非発光のモリブデンコイル14を交互に連結させることで長尺のバルブ12においてカーボンコイルの使用が可能となり、広い分布でカーボンコイルから赤外線を発生させることができる。また、非発光部の調整により配光や熱分布の調整も可能となる。
【0017】
なお、モリブデンコイルに替えて電流密度iWが2.0×107[A/m2]以下の非発光状態のタングステンコイルを使用した場合でも、広い分布でカーボンコイルから赤外線を発生させる等の効果を奏する。
【0018】
図5〜図7は、それぞれこの発明の第2の実施形態について説明するためのもので、図5は全体構成を示す構成図、図6は図5の要部を拡大して示す側面図、図7は図5の要部の斜視図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0019】
この実施形態は、上記実施形態のモリブデンコイル14に替えて、導電性の金属部材であるコイル状に巻回されたタングステンコイル51を仕様するとともに、線径φ0.3mm程度のタングステンコイル51の中間部にアンカー52を取り付けたものである。
【0020】
カーボンコイル13とタングステンコイル51は、これらを交互に繋ぎ合わせて連結することで発光部分を構成する。タングステンコイル51は両端に位置するようにし、両端に位置したタングステンコイル51にそれぞれ一体的にインナーリード線531,532を形成する。インナーリード線531,532は、それぞれモリブデンで形成された矩形箔状の金属箔171,172の一端に溶接している。
【0021】
カーボンコイル13とタングステンコイル51は、図6、図7に示すように互いが巻きつくように螺合させて繋ぎ合わせる。これにより接着剤や溶接等の特別な接合手段を必要としない。
【0022】
図8は、この実施形態のアウターリード線181,182に6Aの電流を流し、カーボンコイルのみ、タングステンコイルのみ、カーボンコイルとタングステンコイルを同時に点灯させた場合の任意点の発光波長を測定した結果を示すものである。なお、タングステンを主成分とする金属発熱体は、電流密度iWがiW >2.0×107[A/m2]の関係を満たすときに点灯し、炭素系発熱体は、電流密度iCがiC>3.5×106[A/m2]を満たすときに点灯する。
【0023】
図8で明らかなように、タングステンコイルとカーボンコイルが同時に点灯しているときは、それぞれから発光される波長が合成された分布を得ることができる。要は、短いカーボンコイルをタングステンコイルを繋ぎ合わせて全長を長くした状態下でもカーボンコイルから得られる赤外線の波長の光を得ることができる。
【0024】
この実施形態では、複数の炭素系発熱体間にタングステンなどの金属発熱体を設け、電気的および機械的に連結させたことにより、幅広い波長域の赤外線を放射させることが可能となる。
【0025】
図9〜図13は、この発明の第3の実施形態について説明するためのもので、図9は全体構成を示す構成図、図10は図9の要部を拡大して示す側面図、図11は図9の等価回路図、図12はカーボンコイルとタングステンコイルの寸法の関係について説明するための説明図、図13は図9実施形態の効果について説明するための説明図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0026】
この実施形態は、図10に示すようにコイルピッチPが0.85mm、内径Diが1.95mm、線径Dlが0.95mmのコイル状に巻回されたカーボンコイル91,92を螺合させて二重コイル状にして封装したものである。二重にされたカーボンコイル91,92の両端には、一端にインナーリード93,94が一体形成されたタングステンコイル95,96の他端が螺合される。インナーリード93,94は、それぞれモリブデンで形成された矩形箔状の金属箔171,172の一端に溶接している。
【0027】
図11は、カーボンコイル91,92とインナーリード93,94部分の電気的な等価回路を示すもので、カーボンコイル91,92は並列接続の状態となり2倍の抵抗値となっている。
【0028】
図12は、二重のカーボンコイル91,92と従来の単体カーボンコイルの仕様を示し、図13は図12の仕様に基づくカーボンコイル91,92と単体カーボンコイルの特許結果を示すものである。図に示すように、この発明は印加される電圧値が12Vで同じであっても電流を2倍にできることから電力を2倍にすることができる。
【0029】
この実施形態の場合、2本のカーボンコイルを螺合させて二重の筒状抵抗体とすることで、カーボンコイルに必要以上に負荷を掛けることがなく、高い信頼性の発熱体を得ることができる。また、二重構造のカーボンコイルとしたことから機械的な強度の向上を図り全長を長くすることができ、バルブの全長を長くできる。また、従来と同寸法として場合でも高出力化の実現も可能となる。
【0030】
なお、二重構造のカーボンコイルにする考えは、上記第1および第2の実施形態のカーボンコイル13に適用することも可能である。この場合、全カーボンコイル13に二重構造を適用しなくても、目的に応じて任意のカーボンコイルのみ二重構造とすることも可能である。
【0031】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、上記した実施形態によって把握される技術思想をその効果とともに以下に説明する。
【0032】
(1)放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、前記金属部材をコイル状とし、コイル状の前記発熱体とは螺合により接続してなることを特徴とする赤外線ランプ。
これにより、特別な接着手段を用いることなく、発熱体と金属部材との電気的な結合を実現することができる。
【0033】
(2)放射透過性バルブと、前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、前記発熱体を二重構造とし、その両端にコイル状のタングステンコイルを螺合結合したことを特徴とする赤外線ランプ。
これにより、溶接可能なタングステンコイルを炭素系発熱体の両端に螺合させて結合させたことで、炭素系発熱体の電気的、機械的な接続を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の赤外線ランプの第1の実施形態について説明するための全体構成図。
【図2】図1の要部を拡大して示す側面図。
【図3】図2要部の斜視図。
【図4】図1の効果について説明するための説明図。
【図5】この発明の赤外線ランプの第2の実施形態について説明するための全体構成図。
【図6】図5の要部を拡大して示す側面図。
【図7】図5の要部の斜視図。
【図8】図5の効果について説明するための説明図。
【図9】この発明の赤外線ランプの第3の実施形態について説明するための全体構成図。
【図10】図9の要部を拡大して示す側面図。
【図11】図9の等価回路図。
【図12】カーボンコイルとタングステンコイルの寸法の関係について説明するための説明図。
【図13】図9実施形態の効果について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0035】
11 赤外線ランプ
12 バルブ
13,91,92 カーボンコイル
14 モリブデンテンコイル
151,152,531,532,93,94 インナーリード線
161,162 封止部
171,172 金属箔
181,182 アウターリード線
51 タングステンコイル
52 アンカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射透過性バルブと、
前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、
不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備したことを特徴とする赤外線ランプ。
【請求項2】
前記金属部材は、モリブデンまたは非発光状態で使用するタングステンであることを特徴とする請求項記載の赤外線ランプ。
【請求項3】
放射透過性バルブと、
前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、
不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、
前記発熱体を二重構造としたことを特徴とする赤外線ランプ。
【請求項4】
複数の前記発熱体の一部もしくは全部を二重構造としたことを特徴とする請求項1または2記載の赤外線ランプ。
【請求項1】
放射透過性バルブと、
前記バルブ内に配置された導電性の複数の金属部材および該複数の金属部材の間に電気的に接続された炭素系を主成分とするコイル状の複数の発熱体と、
不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備したことを特徴とする赤外線ランプ。
【請求項2】
前記金属部材は、モリブデンまたは非発光状態で使用するタングステンであることを特徴とする請求項記載の赤外線ランプ。
【請求項3】
放射透過性バルブと、
前記バルブ内に配置された炭素系を主成分とするコイル状の発熱体と、
不活性ガスを封入するとともに、前記金属部材および前記発熱体を収容した状態で封止した封止部とを具備し、
前記発熱体を二重構造としたことを特徴とする赤外線ランプ。
【請求項4】
複数の前記発熱体の一部もしくは全部を二重構造としたことを特徴とする請求項1または2記載の赤外線ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−66594(P2007−66594A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248742(P2005−248742)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
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