説明

赤外線反射材料及びその製造方法並びにそれを含有した塗料、樹脂組成物

【課題】水溶出性を抑制し、長期間使用することができる赤外線反射材料を提供する。
【解決手段】アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆する。前記の無機化合物としては、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、リン及びスズから選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
このように表面被覆処理を施した赤外線反射材料は、十分な赤外線反射能を有し、しかも、水にも溶けにくく、溶出による赤外線反射能の低下も少ないため長期間使用することができ、建築物の屋根や外壁に塗装したり、フィルム、シート等の樹脂組成物としたり、道路や歩道に塗装したりして、ヒートアイランド現象の緩和等に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線反射材料及びその製造方法に関する。また、その赤外線反射材料を含有した塗料、樹脂組成物、更には、前記の塗料を用いた赤外線反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線反射材料は、太陽光等に含まれる赤外線を反射する材料であって、アスファルトやコンクリート等で覆われた地表面、建築物等が吸収する赤外線量を減少させることができるため、ヒートアイランド現象の緩和や夏場の建築物の冷房効率のアップなどに利用されている。
赤外線反射材料としては例えば、黒色系材料としてCr、Cu−Cr複合酸化物、Fe−Cr複合酸化物、Co−Fe−Cr複合酸化物、Cu−Cr−Mn複合酸化物などの化合物が知られている(特許文献1を参照)。また、Ca−Mn複合酸化物、Ba−Mn複合酸化物等のアルカリ土類金属元素とマンガンの複合酸化物(特許文献2を参照)、YMnO、YMn、LaMnO、PrMnO又はNdMnO等の希土類元素とマンガンの複合酸化物(特許文献3を参照)等のクロムを含有しない化合物も知られている。また、BiCuOやCuOなどの銅化合物も赤外線反射材料として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−72990号公報
【特許文献2】USP6416868
【特許文献3】特開2002−038048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
黒色系赤外線反射材料の多くは、Cu、Cr、Co等の重金属を含有しているが、それらの重金属元素は水に溶解して溶出すると水質汚染の問題が発生し易く、また、溶出に伴い赤外線反射能が低下するという問題がある。また、アルカリ土類金属元素、マンガン元素、鉄元素、希土類元素を含む赤外線反射材料においてもそれらの元素の水溶出量が多く、溶出に伴い赤外線反射能が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは赤外線反射材料の水溶出性を抑えることを目的に種々研究したところ、赤外線反射材料の粒子表面に有機化合物やケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、リン、スズ等の無機化合物を被覆すると、赤外線反射材料の水溶出性を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆していることを特徴とする赤外線反射材料である。
また、本発明は、アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料のスラリーに無機化合物及び/又は有機化合物を添加して、赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆することを特徴とする赤外線反射材料の製造方法である。
また、本発明は、無機化合物及び/又は有機化合物を被覆している前記の赤外線反射材料を含有することを特徴とする塗料、樹脂組成物であり、更に、前記の塗料が塗布されていることを特徴とする赤外線反射材などである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の赤外線反射材料は、アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含んでいても、それらの元素の水溶出性を抑制でき、水質汚染の問題が発生し難く、また、溶出に伴う赤外線反射能の低下を抑制することができる。
このため、赤外線反射材料を長期間使用することができ、建築物の屋根や外壁に塗装したり、道路や歩道に塗装したりして、ヒートアイランド現象の緩和等に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の赤外線反射材料は、アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素と含む材料であり、従来のものを用いることができる。アルカリ土類金属元素としてはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる少なくとも一種が好ましく、CaMnO4、SrMnO4、BaMnO等のアルカリ土類金属元素とマンガンの複合酸化物、CaTiO3、BaTiO等のアルカリ土類金属元素とチタンの複合酸化物、アルカリ土類金属元素とマンガンとチタンの複合酸化物等がより好ましい。クロム元素、鉄元素又は銅元素を含む化合物としてはCr、Cu−Cr複合酸化物、Fe−Cr複合酸化物、Co−Fe−Cr複合酸化物、Cu−Cr−Mn複合酸化物、BiCuO、CuO等が挙げられる。また、希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択された少なくとも1つの元素が好ましく、YMnO、YMn、LaMnO、PrMnO又はNdMnO等がより好ましい。マンガン元素を含む化合物としては、上記のアルカリ土類金属元素とマンガンの複合酸化物、希土類元素とマンガンの複合酸化物等が挙げられる。近赤外線反射能に優れていることから、少なくともアルカリ土類金属元素及びマンガン元素を含むものが好ましい。また、重金属であるCu、Cr、Co等を含む材料の使用を控える傾向が強くなっており、特にCrの安全性への懸念から、Crを使用しない材料が好ましい。このため、アルカリ土類金属元素とマンガンの複合酸化物、アルカリ土類金属元素とマンガンとチタンの複合酸化物、希土類元素とマンガンの複合酸化物等がより好ましい。
【0009】
本発明の赤外線反射材料は、その粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆している。有機化合物としては赤外線反射材料の水溶出性に対して効果を有するものであればいずれのものも使用でき、例えば、有機ケイ素化合物、有機金属化合物、ポリオール類、アルカノールアミン類又はその誘導体、高級脂肪酸類又はその金属塩、高級炭化水素類又はその誘導体等がその効果が高いため好ましく、これらから選ばれる少なくとも一種を用いることができる。有機化合物の被覆量は適宜設定することができ、例えば、赤外線反射材料に対して0.1〜50重量%が好ましく、1.0〜20重量%がより好ましい。無機化合物としても赤外線反射材料の水溶出性に対して効果を有するものであればいずれのものも使用でき、例えば、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、リン及びスズから選ばれる少なくとも一種の化合物がその効果が高いため好ましく、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、アンチモン及びスズは酸化物、水和酸化物又は水酸化物の化合物がより好ましく、リンはリン酸又はリン酸塩の化合物がより好ましい。特に、ケイ素、アルミニウムの酸化物、水和酸化物又は水酸化物が好ましい。ケイ素の酸化物、水和酸化物又は水酸化物(以下、シリカという場合がある)は、高密度シリカ又は多孔質シリカを形成するのがより好ましい。シリカ被覆処理の際のpH範囲に応じて、被覆されるシリカが多孔質となったり、非多孔質(高密度)となったりするが、高密度シリカであると緻密な被覆を形成し易いため、赤外線反射材料の水溶出性の抑制効果が高くより好ましい。そのため、赤外線反射材料の粒子表面に高密度シリカの第一被覆層を存在させ、その上に多孔質シリカの第二被覆層あるいはアルミニウムの酸化物、水和酸化物、水酸化物(以下、アルミナという場合がある)を存在させてもよい。シリカ被覆は電子顕微鏡で観察することができる。無機化合物の被覆量は適宜設定することができ、例えば、赤外線反射材料に対して0.1〜50重量%が好ましく、1.0〜20重量%がより好ましい。無機化合物、有機化合物の量は蛍光X線分析、ICP発光分析等の通常の方法で測定することができる。
【0010】
赤外線反射材料は、従来の方法を用いて製造することができる。例えば、それぞれの原料化合物を混合し、電気炉やロータリーキルン等を使用して焼成するいわゆる固相合成法で製造することができ、適度な粒子径を有する赤外線反射材料が得られるため好ましい。固相合成法において、アルカリ土類金属化合物、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素又は希土類元素の原料化合物としては種々の化合物を用いることができ、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることができる。次に、前記のそれぞれの原料化合物を秤量し、混合する。混合方法は、粉体の状態で混合する乾式混合、スラリーの状態で混合する湿式混合のいずれでもよく、撹拌混合機等の従来の混合機を用いて行うことができる。また、各種の粉砕機、噴霧乾燥機、造粒機、成形機等を用いて、粉砕、乾燥、造粒、成形のいずれかの際に混合することもできる。この混合の際に、赤外線反射材料の粒子表面に被覆する無機化合物及び/又は有機化合物を必要に応じて混合しておいてもよい。
次いで、原料化合物の混合物を必要に応じて造粒、成形した後、焼成する。焼成の温度は少なくとも原料化合物が固相反応する温度であればよく、例えば1000〜1500℃の範囲の温度であればよい。焼成時の雰囲気はいずれの雰囲気でも行えるが、十分な赤外線反射能を保持するためには空気中で焼成するのが好ましい。焼成の際に、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の融剤を添加してもよい。焼成時間は適宜設定することができるが、0.5〜24時間が好ましく、1.0〜12時間がより好ましい。0.5時間より短いと反応が十分に進まないことが多く、一方、24時間より長いと焼結により粒子の硬度が高くなったり、異常に粗大な粒子が生成する場合がある。
【0011】
また、前記の固相合成法により得られた赤外線反射材料を再度焼成すると、結晶性がより高くなり、それにより水溶出性を抑制することができるため好ましい。再度焼成の温度は200〜1500℃の範囲が好ましく、400〜1200℃がより好ましい。再度焼成時の雰囲気はいずれの雰囲気でも行えるが、十分な赤外線反射能を保持するためには空気中で焼成するのが好ましい。再度焼成の時間は適宜設定することができるが、0.5〜24時間が好ましく、1.0〜12時間がより好ましい。
【0012】
赤外線反射材料の粒子表面に、無機化合物や有機化合物を被覆するには、二酸化チタン顔料等の従来の表面処理方法を用いることができ、具体的には赤外線反射材料のスラリーに無機化合物や有機化合物を添加し被覆するのが好ましく、スラリー中で無機化合物や有機化合物を中和し析出させて被覆するのがより好ましい。また、赤外線反射材料の粉末に、無機化合物や有機化合物を添加し混合して被覆させてもよい。
具体的に赤外線反射材料の粒子表面に高密度シリカ被覆を行うには、まず、赤外線反射材料の水性スラリーにアルカリ化合物例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどによりpHを8以上、好ましくは8〜10に調整した後、加温して70℃以上、好ましくは70〜105℃とする。次いで、赤外線反射材料の水性スラリーに対してケイ酸塩を添加する。ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどの種々のケイ酸塩を使用することができる。ケイ酸塩の添加は、通常15分間以上かけて行うのが好ましく、30分間以上がより好ましい。次いで、ケイ酸塩の添加終了後必要に応じて更に充分に撹拌し混合した後、スラリーの温度を好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上に維持しながら、酸で中和する。ここで使用する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸などが挙げられ、これらによりスラリーのpHを好ましくは7.5以下、より好ましくは7以下に調整して、赤外線反射材料の粒子表面に高密度シリカを被覆することができる。
【0013】
また、赤外線反射材料の粒子表面に多孔質シリカ被覆を行うには、まず、赤外線反射材料の水性スラリーに、例えば硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸などの酸を添加してpHを1〜4、好ましくは1.5〜3に調整する。スラリー温度は50〜70℃に調整するのが好ましい。次に、スラリーpHを前記範囲に保持しながら、ケイ酸塩と酸とを添加して多孔質シリカの被覆を形成する。ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどの種々のケイ酸塩を使用することができる。ケイ酸塩の添加は、通常15分間以上かけて行うのが好ましく、30分間以上がより好ましい。ケイ酸塩の添加終了後必要に応じて、アルカリ化合物を添加し、スラリーのpHを6〜9程度に調整して、赤外線反射材料の粒子表面に多孔質シリカを被覆することができる。
【0014】
一方、赤外線反射材料の粒子表面にアルミナ被覆を行うには、まず、赤外線反射材料のスラリーを水酸化ナトリウム等のアルカリでpHを8〜9に中和した後50℃以上の温度に加熱し、次に、アルミニウム化合物と酸性水溶液とを同時並行に添加するのが好ましい。アルミニウム化合物としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩を好適に用いることができ、酸性水溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等の水溶液を好適に用いることができる。前記の同時並行添加とは、アルミニウム化合物と酸性水溶液のそれぞれを別々に少量ずつ連続的あるいは間欠的に反応器に添加する方法をいう。具体的には反応器内のpHを8.0〜9.0に保ちながら両者を10分〜2時間程度かけて同時に添加するのが好ましい。アルミニウム化合物と酸性水溶液を添加後、酸性水溶液を更に添加しpHを5〜6程度に調整するのが好ましい。
【0015】
無機化合物や有機化合物を被覆した後、通常の方法により、ろ過し、洗浄し、乾燥してもよい。また、乾燥したものを再度焼成すると、赤外線反射材料の結晶性がより高くなり、それにより水溶出性を抑制することができるため好ましい。再度焼成の温度は200〜1500℃の範囲が好ましく、400〜1200℃がより好ましい。再度焼成時の雰囲気はいずれの雰囲気でも行えるが、十分な赤外線反射能を保持するためには空気中で焼成するのが好ましい。再度焼成の時間は適宜設定することができるが、0.5〜24時間が好ましく、1.0〜12時間がより好ましい。
【0016】
粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆した赤外線反射材料は、粉末、成形体等種々の形態で使用することができ、粉末として用いる場合には、必要に応じて適宜粉砕して粒度を整えてもよく、成形体として用いる場合は、粉末を適当な大きさ、形に成形してもよい。粉砕機は例えば、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルベライザー等の摩砕粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機を用いることができる。成形機は例えば押出し成形機等の汎用の成形機、造粒機を用いることができる。
【0017】
また、本発明の赤外線反射材料は、十分な赤外線反射能を有するが、その他の赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物を混合したり、下記の塗料やインキに配合すると、より一層赤外線反射能を高めることができ、あるいは、特定波長の反射能を補完することができる。赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物としては、従来から使用されているものを用いることができ、具体的には二酸化チタン、アンチモンドープ酸化スズ、酸化タングステン、ホウ化ランタン等の無機化合物、金属銀粉、金属銅粉等の金属粉などが挙げられ、二酸化チタン、金属粉がより好ましい。赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物の種類、混合割合は、その用途に応じて適宜選定することができる。
【0018】
また、本発明の赤外線反射材料は、白色系あるいは黒色系等の種々の色調を持つが、これにその他の顔料を混合したり、下記の塗料やインキに配合すると、白色度あるいは黒色度をより強くしたり、赤色、黄色、緑色、青色、それらの中間色等の色彩を有するものとすることができる。前記の顔料としては、無機顔料、有機顔料、レーキ顔料等を使用することができ、具体的には、無機顔料としては二酸化チタン、亜鉛華、沈降性硫酸バリウム等の白色顔料、酸化鉄等の赤色顔料、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、アルミニウム粉等の顔料が挙げられる。有機顔料としては、アントラキノン、ペリレン、フタロシアニン、アゾ系、アゾメチアゾ系等の有機化合物が挙げられる。顔料の種類、混合割合は、色彩・色相に応じて適宜選定することができる。
【0019】
次に、本発明は、前記の赤外線反射材料を含有することを特徴とする塗料であって、本発明の塗料には、インキやインクといわれる組成物を含む。また、本発明は、前記の赤外線反射材料を含有することを特徴とする樹脂組成物である。また、本発明は、前記の赤外線反射材料を配合してなる塗料が基材上に塗布されていることを特徴とする赤外線反射材である。
【0020】
本発明の赤外線反射材料は、塗料、インキやフィルム等のプラスチック成形物などの樹脂に含有すると、その優れた赤外線反射能を利用した組成物とすることができる。塗料、インキ、樹脂組成物には、樹脂に対して赤外線反射材料を任意の量を含有することができ、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。また、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、更に各種の添加剤を配合してもよい。
【0021】
具体的には、塗料やインキとする場合、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料のほかに、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、骨材、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合することができる。塗膜形成材料としては例えば、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネート、セメント、石膏などの無機系成分を用いることができる。インキ膜形成材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩酢ビ系樹脂、塩素化プロピレン系樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを制限なく用いることができ、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。
【0022】
本発明の塗料は基材上に塗布して赤外線反射材を製造することができる。この赤外線反射材は赤外線の遮蔽材として、更には遮熱材としても用いることができる。基材としては、種々の材料、材質のものを用いることができる。具体的には各種建材や土木材料等を使用することができ、製造された赤外線反射材は、家屋や工場等の屋根材、壁材又は床材、あるいは、道路や歩道を構成する舗装材などとして使用することができる。赤外線反射材の厚みは、各種の用途に応じて任意に設定でき、例えば、屋根材として用いる場合には、概ね0.1〜0.6mm、好ましくは0.1〜0.3mmとし、舗装材として用いる場合には、概ね0.5〜5mm、好ましくは1〜5mmとする。基材上に塗布するには、塗布、吹き付けによる方法や、コテによる方法が可能であり、塗布後必要に応じて乾燥したり、焼付けしたり、養生したりしてもよい。
【0023】
また、樹脂組成物とする場合、樹脂のほかに、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の赤外線反射材料とともに練り込み、フィルム状、シート状、板状などの任意の形状に成形する。樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。このような樹脂組成物は、フィルム、シート、板等の任意の形状に成形して、工業用、農業用、家庭用等の赤外線反射材として用いることができる。また、赤外線を遮蔽して遮熱材としても用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
炭酸カルシウムCaCO(高純度化学研究所製、純度99.99%)2.87g、二酸化チタン(石原産業製TTO−55A、水酸化アルミニウムを粒子表面に存在させた二酸化チタン(Al/Ti=0.03))1.13g、二酸化マンガンMnO(高純度化学研究所製、純度99.99%)1.25g及び水酸化アルミニウムAl(OH)(高純度化学研究所製、純度99.99%)0.01gを分取し、メノウ乳鉢で十分に混合・撹拌した。得られた混合物を水でスラリーにした後、蒸発乾固した。次いで、得られた固体をメノウ乳鉢で粉砕した後、アルミナルツボに所定量いれ、1200℃で4時間焼成を行って、ペロブスカイト型構造のマンガン及びアルミニウム含有チタン酸カルシウム(CaTiO:Mn、Al)(試料A)を得た。
なお、マンガンとチタンの原子比(モル比)(Mn/Ti)は1.01であり、アルミニウムとチタンの原子比(モル比)(Al/Ti)は0.040であった。またBET比表面積値は、1.25m/gであった。なお、BET比表面積の測定は、モノソーブMS−18(ユアサアイオニクス社製)で行った。
【0026】
次に、試料Aを純水に懸濁させ、超音波分散を10分間実施し、スラリーを調製した。
このスラリーを加温し、75℃に保持しながら撹拌下、ケイ酸ナトリウムをSiOとして10重量%の量を60分間かけて添加した後、90℃で30分間撹拌した。その後、2%硫酸を用いてpH8となるまで80分間かけて添加した。設定温度を60℃に設定した後、熟成60分間行った。
次いで、スラリーのpHを9に調整した後、スラリー温度を60℃でアルミン酸ナトリウムをAlとして2重量%の量を硫酸と同時に添加し、60分間かけて実施した。熟成30分間行った後、ろ過洗浄し、乾燥して、第一層目に10重量%のシリカ、第二層目に2重量%のアルミナを被覆したペロブスカイト型構造のマンガン及びアルミニウム含有チタン酸カルシウム(CaTiO:Mn、Al)(試料B)を得た。
【0027】
実施例2
実施例1で得られた試料Bをアルミナルツボに所定量いれ、700℃で1時間再度焼成を行って、シリカ、アルミナを被覆したペロブスカイト型構造のマンガン及びアルミニウム含有チタン酸カルシウム(CaTiO:Mn、Al)(試料C)を得た。
【0028】
実施例で得られた試料A、B、Cをそれぞれ専用セルに入れ、紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光社製、標準反射板としてスペクトラロン<Labsphere社製>を使用)で分光反射率(波長350〜2100nmの光の反射率)を測定し、次いで、JIS R 3106に準じて日射反射率(太陽光中の波長700〜2100nmの範囲の近赤外線の反射率)を計算し、表1に示した。試料B、Cの日射反射率は試料Aに比べてそん色がないことがわかった。
また、実施例で得られた試料A、B、Cの水溶出性を下記の方法で評価した結果を表2に示す。
夫々の試料5gを、塩酸でpH3に調整した水溶液500mlに入れ、pHコントローラー(FD−02、東京硝子器械社製)を使用してpH3に維持しながら、10分後、40分後、120分後、330分後にサンプリングを行った。サンプリングしたスラリーはメンブランフィルター(A045A047A、アドバンテック社製)で濾過し、ろ液を回収した。回収したろ液に含まれるカルシウムイオン濃度を、マルチICP発光分光分析装置(バリアン テクノロジーズ ジャパン リミテッド社製、730−ES型)で測定し、10分後のカルシウムイオン濃度を初期値として、40分後、120分後、330分後の夫々のカルシウムイオン濃度から初期値を差し引いた値で評価した。
これらの結果、試料B、Cの日射反射率は試料Aに比べてそん色なく、また、試料B、Cのカルシウムの水溶出量は試料Aに比べ大幅に低く、耐水溶出性に優れていることが確認できた。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
実施例で得られた試料B、Cはいずれも粉末であるため塗料や樹脂組成物に配合できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の赤外線反射材料は、アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆していることを特徴とする赤外線反射材料であって、十分な赤外線反射能を有し、しかも、水にも溶けにくく、溶出による赤外線反射能の低下も少ないため長期間使用することができ、建築物の屋根や外壁に塗装したり、フィルム、シート等の樹脂組成物としたり、道路や歩道に塗装したりして、ヒートアイランド現象の緩和等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆していることを特徴とする赤外線反射材料。
【請求項2】
無機化合物が、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、リン及びスズから選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射材料。
【請求項3】
無機化合物が、ケイ素及び/又はアルミニウムの酸化物、水和酸化物又は水酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の赤外線反射材料。
【請求項4】
アルカリ土類金属元素がカルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射材料。
【請求項5】
少なくともアルカリ土類金属元素及びマンガン元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射材料。
【請求項6】
アルカリ土類金属元素、クロム元素、マンガン元素、鉄元素、銅元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を含む赤外線反射材料のスラリーに無機化合物及び/又は有機化合物を添加して、赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆することを特徴とする赤外線反射材料の製造方法。
【請求項7】
赤外線反射材料の粒子表面に無機化合物及び/又は有機化合物を被覆した後に焼成することを特徴とする請求項6に記載の赤外線反射材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の赤外線反射材料を含有することを特徴とする塗料。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の赤外線反射材料を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
基材上に請求項8に記載の塗料が塗布されていることを特徴とする赤外線反射材。

【公開番号】特開2010−270217(P2010−270217A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123054(P2009−123054)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】