赤外線撮像素子の製造方法および赤外線撮像素子
【課題】赤外線検知部のダイオード自体の小型化を実現し、小型で高感度な赤外線撮像素子の提供する。
【解決手段】赤外線検知部の製造工程が、第1導電型の半導体層25の上に、絶縁膜10を形成する工程と、絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して半導体層を露出させる工程と、少なくとも絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を半導体層に注入して、第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層24を形成する工程と、コンタクトホールを埋めて絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、サイドウォール材料膜をエッチングして、絶縁膜の側壁上にサイドウォール材料膜を残してサイドウォール26を形成する工程と、コンタクトホールを埋めてサイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、金属膜をパターニングして電極22を形成する工程とを含む。
【解決手段】赤外線検知部の製造工程が、第1導電型の半導体層25の上に、絶縁膜10を形成する工程と、絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して半導体層を露出させる工程と、少なくとも絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を半導体層に注入して、第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層24を形成する工程と、コンタクトホールを埋めて絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、サイドウォール材料膜をエッチングして、絶縁膜の側壁上にサイドウォール材料膜を残してサイドウォール26を形成する工程と、コンタクトホールを埋めてサイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、金属膜をパターニングして電極22を形成する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮像素子の製造方法および赤外線撮像素子に関し、特に、非冷却赤外線撮像素子の製造方法および非冷却赤外線撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防犯、医療、非破壊検査、車載応用など様々な分野において、赤外線撮像素子に対する需要があり、検知能力の向上が図られてきた。特に、冷却装置が不要な非冷却赤外線撮像素子は様々な手法により高感度化がなされ、性能、価格、使いやすさの点から普及している。赤外線撮像素子の温度センサとしてダイオードを用いた場合、個々のダイオードの温度変化率が小さいため、複数のダイオードを直列接続して温度センサの感度を高めていた。更に、ダイオードが配置される赤外線撮像素子の温度検知部の面積を小さくするために、および面積を大きくすることなく直列接続されたダイオードの数を増やすために、個々のダイオードが逆バイアスとなる部分にダイオードを接続するためのコンタクトホールをダイオードの活性領域内部に形成していた。これにより、ダイオード間を酸化膜で分離するよりもダイオードの間隔を小さくでき、赤外線撮像素子の小型化、高性能化を可能としていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−265094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の赤外線撮像素子の構造は、ダイオード自体を小型化するのではなく、ダイオードとダイオードとの間の分離幅をなくすことによる温度検知部の小型化を図るものであり、小型化には限界があった。一方、ダイオード自体の小型化は、写真製版の精度に依存するため、プロセス上の制限があり、小型化に限界があった。
【0005】
そこで、本発明は、赤外線撮像素子において、赤外線検知部のダイオード自体の小型化を実現し、小型で高感度な赤外線撮像素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子の製造方法であって、該赤外線検知部の製造工程が、
第1導電型の半導体層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して該半導体層を露出させる工程と、
少なくとも該絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を該半導体層に注入して、該第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層を形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、
該サイドウォール材料膜をエッチングして、該絶縁膜の側壁上に該サイドウォール材料膜を残してサイドウォールを形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該サイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、
該金属膜をパターニングして電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子であって、該赤外線検知部が、
第1導電型の半導体層と、
該第1導電型の半導体層の上に形成された絶縁膜と、
該絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、
該コンタクトホールの下方の、該第1導電型の半導体層中に形成された、第2導電型の半導体層と、
該コンタクトホール内の該絶縁膜の側壁上に形成されたサイドウォールと、
該コンタクトホールを埋めるように、該サイドウォール上に延在して形成された電極と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、赤外線撮像素子の赤外線検知部の小型化が可能となり、高感度な赤外線検出が可能となるとともに、熱時定数も短くできる。
【0009】
また、本発明では、直列接続されたダイオードの個数を増加することができ、赤外線検出感度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の断面図である。
【図5a】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5b】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5c】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5d】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5e】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6a】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6b】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6c】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6d】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図7a】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7b】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7c】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7d】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7e】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7f】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる赤外線撮像素子の赤外線検知部の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の赤外線検知部の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、全体が1000で表される、本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像装置の斜視図である。赤外線撮像装置1000では、基板1の上に、赤外線撮像素子100がアレイ状(マトリックス状)に配置されている。赤外線撮像素子100に沿って選択線2、信号線3が設けられ、選択線2は駆動走査回路4に接続され、信号線3は信号走査回路5に接続されている。駆動走査回路4、信号走査回路5は、アレイ状の赤外線撮像素子100の周囲に設けられ、信号走査回路5には、更に出力アンプ6が接続されている。
【0012】
赤外光撮像素子100は、マイクロマシニング技術で形成された断熱構造体を有し、断熱構造体の上には熱電気変換用の赤外線検知部が形成されている。赤外線入射により断熱構造体上の赤外線検知部の温度が上昇する。その温度上昇をダイオード等の熱電気変換素子が検出して、電気信号として出力する。出力された信号は、駆動走査回路4と信号走査回路5で読み出され、出力アンプ6から出力される。駆動走査回路4と信号走査回路5とのスキャン動作により、アレイ状に配置された赤外線撮像素子100からの検出器出力が時系列で読み出され、赤外画像信号が得られる。
【0013】
図2は、図1に示した赤外線撮像装置1000に含まれる赤外線撮像素子100の上面図であり、図3は、図1をI−I方向に見た場合の断面図である。但し、図2において、赤外線吸収部(傘構造部)9は破線で表してある。
【0014】
図3に示すように、赤外線撮像素子100は、画素領域と回路領域からなり、画素領域では、基板1に設けられた空洞部13の上に、赤外線検知部8が支持脚14で支持されている。基板1には、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることが好ましい。
【0015】
赤外線検知部8には、絶縁膜10に覆われたpn接合ダイオード23が設けられている。ショットキーダイオード、トンネルダイオード等のダイオード23に代えて、トランジスタ等の、温度によって電気特性が変化する他の感温素子を設けても良い。ダイオード23の上には、薄膜配線22が設けられ、更に保護膜19が設けられている。保護膜19の上には、赤外線を吸収するための、傘構造をした赤外線吸収部9が設けられている。
【0016】
支持脚14は、絶縁膜10、層間絶縁膜17、薄膜配線22、層間絶縁膜18、および保護膜19の積層構造からなる。絶縁膜10、層間絶縁膜17、層間絶縁膜18、および保護膜19は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンから形成される。薄膜配線22は、アルミニウム等の金属や多結晶シリコンから形成される。
【0017】
一方、回路領域には、配線11と、配線11に接続された回路部15が設けられている。回路部15は、例えば駆動走査回路や信号走査回路からなる。
【0018】
赤外線撮像素子100では、入射した赤外線が赤外線吸収部9で吸収され、赤外線検知部8に伝えられる。赤外線検知部8の温度が上昇することにより、赤外線検知部8に含まれるダイオード23の電気特性が変化する。
【0019】
図3に示すように、ダイオード23のp、n側にそれぞれ接続された薄膜配線22は、支持脚14を通って、配線11に接続されている(図2参照)。ダイオード23の電気特性の変化は、薄膜配線22を通って回路部15により電気信号として取り出され、入射した赤外線の検出に用いられる。
【0020】
図4は、図3の赤外線検知部8を詳しく示した断面図である。図4中、図3と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
赤外線検知部8は、絶縁膜10と、その上に形成されたダイオード23を含む。ダイオード23は、高濃度のp型不純物領域24が、n型不純物領域25中に形成された構造を有する。即ち、p型不純物領域24とn型不純物領域25の接合面の面積が広くなるように、縦方向と横方向に接合面が形成された構造となっている。p型不純物領域24、n型不純物領域25には、それぞれ薄膜配線22が接続されている。
【0021】
絶縁膜10に形成されたコンタクトホールの側壁には、サイドウォール26が形成されている。p型不純物領域24は、後述するように、例えばコンタクトホールにp型不純物元素をイオン注入することにより形成される。このため、ダイオード23のpn接合面と、薄膜配線22との距離はサイドウォール26の厚みにより決定することができる。サイドウォール26の幅は堆積層の厚さにより制御できるので、ナノメーターのオーダーまで薄くすることも可能である。
【0022】
次に、図5a〜図5eを用いて、赤外線撮像素子100に含まれる赤外線検知部8の製造方法について説明する。図5a〜図5eは、赤外線検知部8の製造工程の断面図であり、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0023】
赤外線検知部8の製造方法では、まず、図5aに示すように、酸化シリコン等の絶縁膜10、シリコン等の半導体からなるn型不純物領域25、絶縁膜10を積層形成した後、フォトマスク20を使用した写真製版により、上面の絶縁膜10をエッチングし、コンタクトホール27を形成する。
【0024】
次に、図5bに示すように、フォトマスク20および絶縁膜10を注入マスクに用いて、コンタクトホール27領域のn型不純物領域25に、高濃度のp型不純物を選択的に注入して、p型不純物領域24を形成する。p型不純物領域24は、コンタクトホール27領域に対してセルフアラインメントで形成される。このように、コンタクトホール27の形成工程と、高濃度p型不純物の注入工程が同一フォトマスク20を用いて行われるため、別々のフォトマスクを用いる従来技術のようにフォトマスク間での写真製版によるズレを考慮する必要が無くなる。なお、イオン注入に代えて、拡散技術を用いても構わない。
【0025】
次に、図5cに示すように、サイドウォール形成のための、絶縁膜26’を全面に堆積する。絶縁膜26’の堆積は、例えばCVD法を用いて行われる。
【0026】
次に、図5dに示すように、RIE等を用いて絶縁膜26’をエッチングして、絶縁膜10の側壁に残った絶縁膜26’からサイドウォール26を形成する。サイドウォール26の厚さ(図5dでは、横方向の厚さ)は、エッチング条件によりナノミクロンのオーダーで制御できる。
【0027】
最後に、図5eに示すように、コンタクトホール27を埋め込むように金属層を形成した後、絶縁膜10の上の金属膜をエッチングして、薄膜配線22を形成する。薄膜配線22は、p型不純物領域24、n型不純物領域25に、それぞれ電気的に接続されている。
【0028】
図5eに示すように、薄膜配線22と、ダイオード23のpn接合面(p型不純物領域24とn型不純物領域25との接合面)との距離(図5e中にaで表示)は、サイドウォール26の厚さによって決定される。このため、サイドウォール26の厚さ、即ち距離aは、ナノメーター単位で制御可能となる。
【0029】
最後に、層間絶縁膜18、保護膜19を形成し、図4に示す赤外線検知部8が完成する。
【0030】
次に、図6a〜図6dに、比較例として従来技術を用いた赤外線検知部8の作製方法を示す。図6a〜図6d中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0031】
従来の製造方法では、まず、図6aに示すように、絶縁膜10、n型不純物領域25を積層形成した後、フォトマスク20を形成する。続いて、フォトマスク20を注入マスクに用いて、n型不純物領域25中に、高濃度のp型不純物を選択的に注入して、p型不純物領域24を形成する。
【0032】
次に、図6bに示すように、フォトレジスト20を除去した後、CVD法等を用いて、絶縁膜10を形成する。
【0033】
次に、図6cに示すように、フォトマスク20を使用した写真製版により絶縁層10をエッチングし、ダイオード23のコンタクトホール27を形成する。
【0034】
最後に、図6dに示すように、コンタクトホール27を埋め込むように金属層を形成した後、絶縁膜10の上の金属膜をエッチングして、薄膜配線22を形成する。薄膜配線22は、p型不純物領域24、n型不純物領域25に、それぞれ電気的に接続されている。
【0035】
ここで、図6dに示すように、薄膜配線22とダイオード23のpn接合面との距離aは、p型不純物注入工程(図6a)とコンタクトホール形成工程(図6c)で用いる、それぞれのフォトマスク20間における写真製版(マスク合わせ)によるズレを考慮して決定する必要がある。このため、距離aは写真製版のズレを考慮したマージンを含むため、小さくするには限度があり、ダイオードの小型化の制限となる。
【0036】
これに対して、本発明の実施の形態1にかかる製造方法では、上述のように、薄膜配線22とダイオード23のpn接合面との距離aは、サイドウォール26の厚さにより決定されるためナノメーターオーダーで制御が可能であり、従来技術のような写真製版のズレを考慮する必要がなく、ダイオードの小型化が可能となる。
【0037】
次に、図7a〜図7fを用いて、本発明の実施の形態1にかかる非冷却赤外線撮像素子100の製造方法について簡単に説明する。図7a〜図7f中、図3と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0038】
まず、図7aに示すように、シリコン等の基板1を準備し、基板1に走査回路等の回路部15を形成した後、CVD法等で絶縁膜10を形成する。絶縁膜10中にはダイオードのn型不純物領域25を形成する。更に、回路部15の上方に配線16を形成する。
【0039】
次に、図7bに示すように、酸化シリコン等の層間絶縁層17を全面に形成した後、フォトマスク20を用いて、赤外線検知部8となる領域の上部のみを開口する。
【0040】
次に、図7cに示すように、赤外線検出部8となる領域の上の絶縁膜10、層間絶縁膜17を、弗化水素酸溶液を用いてウェットエッチングする。弗化水素酸溶液を用いることにより、フォトマスク20の開口領域中の絶縁膜10、層間絶縁膜17のみが選択的にエッチングされ、絶縁膜10が薄膜化される。なお、ドライエッチングにより絶縁膜10、層間絶縁膜17をエッチングしても良い。
【0041】
図7cの工程の後に、上述の赤外線検知部8の作製(図5a〜図5d)を行い、p型不純物領域24、n型不純物領域25からなるダイオード23、およびサイドウォール26(図7dには示さず)を形成する。
【0042】
次に、図7dに示すように、フォトマスク20を除去した後、赤外線検知部8と赤外線検知部8を中空に保持する支持脚14のために薄膜配線を形成し、その上に酸化シリコン等からなる層間絶縁膜18を所望の膜厚だけ堆積させる。
【0043】
次に、図7eに示すようにアルミニウム、Ti、TiN、W、WSi等からなる配線11を形成する。配線層11を形成した後、例えば酸化シリコン等からなる保護膜19を全面に形成する。
【0044】
次に、図7fに示すように、ドライエッチングを用いてエッチングホール21、赤外線吸収部9を形成した後、XeF2等を用いたドライエッチングにより空洞部13を形成し、赤外線検知部8を、支持脚14で支持された中空構造とする。以上の工程で、図3に示す赤外線撮像素子100が完成する。
【0045】
かかる赤外線撮像素子100では、赤外線検知部8に含まれる、直列接続されたダイオードの個数が同じであれば、従来構造の赤外線撮像素子に比較して赤外線検知部8が小型化でき、この結果、熱容量が小さくなり、より高感度な赤外線検出が可能となるとともに、熱時定数も短くなり、動きの速い物体の撮像が可能となる。
【0046】
また、薄膜配線22とダイオードのpn接合面との距離は、サイドウォール26の厚さによりナノメーターのオーダーで制御が可能であり、個々のダイオード特性の均一性が向上する。
【0047】
実施の形態2.
図8は、全体が200で表される、本発明の実施の形態2にかかる赤外線撮像素子の断面図であり、図2に示されたII−II方向に見た場合の断面図に相当する。
【0048】
図8に示すように、赤外線撮像素子200では、p型不純物(p+)領域24とn型不純物(n−)領域25からなる同種のダイオードが2個、直列に接続されている。個々のダイオードの間は、絶縁膜10で分離されており、薄膜配線22により直列に接続されている。
【0049】
一方、図9は、全体が210で表される、本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の平面図であり、図10は、図9をIX−IX方向に見た場合の断面図である。赤外線撮像素子210では、異種のダイオードが2個、即ち、p型不純物(p+)領域24とn型不純物(n−)領域25からなるダイオードと、n型不純物(n+)領域28とp型不純物(p−)領域29からなるダイオードが、直列接続されている。個々のダイオードは、逆バイアスとなる境界部分に薄膜配線22が設けられて、直列接続されている。
【0050】
このように、本実施の形態2にかかる赤外線撮像素子200、210においても、サイドウォール26の厚さにより、薄膜電極22とダイオードの接合面との距離を調整できるため、面積の増大を抑制しながら、複数のダイオードを直列接続して配置することができる。この結果、赤外線の検出感度の高い赤外線撮像素子を作製することができる。
【0051】
実施の形態3.
図11は、全体が300で表される、本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子の断面図である。図11中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0052】
本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子300では、赤外線検知部8および支持脚14に形成された薄膜配線が、回路領域に形成された配線11と同じ層から形成されている。また、層間絶縁層18を設けずに、保護膜19が層間絶縁膜を兼ねている。他の構成は、上述の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子100と同じである。
【0053】
このように、赤外線検知部8および支持脚14に形成された薄膜配線を、配線11から形成することにより、また、層間絶縁膜18を省略することにより、製造工程が簡略化される。
【0054】
また、層間絶縁膜18を形成しないことにより、赤外線検知部8の熱容量が小さくなり、熱時定数を短くすることができる。この結果動作の速い物体の撮影が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 基板、2 選択線、3 信号線、4 駆動走査回路、5 信号走査回路、6 出力アンプ、8 赤外線検知部、9 赤外線吸収部、10 絶縁膜、11 配線、13 空洞部、14 支持脚 、15 回路部、16 配線、17、18 層間絶縁膜、19 保護膜、21 エッチングホール、22 薄膜配線、23 ダイオード、27 コンタクトホール、100 赤外線撮像素子、1000 赤外線撮像装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線撮像素子の製造方法および赤外線撮像素子に関し、特に、非冷却赤外線撮像素子の製造方法および非冷却赤外線撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防犯、医療、非破壊検査、車載応用など様々な分野において、赤外線撮像素子に対する需要があり、検知能力の向上が図られてきた。特に、冷却装置が不要な非冷却赤外線撮像素子は様々な手法により高感度化がなされ、性能、価格、使いやすさの点から普及している。赤外線撮像素子の温度センサとしてダイオードを用いた場合、個々のダイオードの温度変化率が小さいため、複数のダイオードを直列接続して温度センサの感度を高めていた。更に、ダイオードが配置される赤外線撮像素子の温度検知部の面積を小さくするために、および面積を大きくすることなく直列接続されたダイオードの数を増やすために、個々のダイオードが逆バイアスとなる部分にダイオードを接続するためのコンタクトホールをダイオードの活性領域内部に形成していた。これにより、ダイオード間を酸化膜で分離するよりもダイオードの間隔を小さくでき、赤外線撮像素子の小型化、高性能化を可能としていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−265094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の赤外線撮像素子の構造は、ダイオード自体を小型化するのではなく、ダイオードとダイオードとの間の分離幅をなくすことによる温度検知部の小型化を図るものであり、小型化には限界があった。一方、ダイオード自体の小型化は、写真製版の精度に依存するため、プロセス上の制限があり、小型化に限界があった。
【0005】
そこで、本発明は、赤外線撮像素子において、赤外線検知部のダイオード自体の小型化を実現し、小型で高感度な赤外線撮像素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子の製造方法であって、該赤外線検知部の製造工程が、
第1導電型の半導体層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して該半導体層を露出させる工程と、
少なくとも該絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を該半導体層に注入して、該第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層を形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、
該サイドウォール材料膜をエッチングして、該絶縁膜の側壁上に該サイドウォール材料膜を残してサイドウォールを形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該サイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、
該金属膜をパターニングして電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子であって、該赤外線検知部が、
第1導電型の半導体層と、
該第1導電型の半導体層の上に形成された絶縁膜と、
該絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、
該コンタクトホールの下方の、該第1導電型の半導体層中に形成された、第2導電型の半導体層と、
該コンタクトホール内の該絶縁膜の側壁上に形成されたサイドウォールと、
該コンタクトホールを埋めるように、該サイドウォール上に延在して形成された電極と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、赤外線撮像素子の赤外線検知部の小型化が可能となり、高感度な赤外線検出が可能となるとともに、熱時定数も短くできる。
【0009】
また、本発明では、直列接続されたダイオードの個数を増加することができ、赤外線検出感度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の断面図である。
【図5a】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5b】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5c】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5d】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図5e】本発明の実施の形態1にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6a】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6b】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6c】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図6d】比較例にかかる赤外線検知部の製造工程の断面図である。
【図7a】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7b】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7c】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7d】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7e】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図7f】本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子の製造工程の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる赤外線撮像素子の赤外線検知部の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の平面図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の赤外線検知部の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、全体が1000で表される、本発明の実施の形態1にかかる赤外線撮像装置の斜視図である。赤外線撮像装置1000では、基板1の上に、赤外線撮像素子100がアレイ状(マトリックス状)に配置されている。赤外線撮像素子100に沿って選択線2、信号線3が設けられ、選択線2は駆動走査回路4に接続され、信号線3は信号走査回路5に接続されている。駆動走査回路4、信号走査回路5は、アレイ状の赤外線撮像素子100の周囲に設けられ、信号走査回路5には、更に出力アンプ6が接続されている。
【0012】
赤外光撮像素子100は、マイクロマシニング技術で形成された断熱構造体を有し、断熱構造体の上には熱電気変換用の赤外線検知部が形成されている。赤外線入射により断熱構造体上の赤外線検知部の温度が上昇する。その温度上昇をダイオード等の熱電気変換素子が検出して、電気信号として出力する。出力された信号は、駆動走査回路4と信号走査回路5で読み出され、出力アンプ6から出力される。駆動走査回路4と信号走査回路5とのスキャン動作により、アレイ状に配置された赤外線撮像素子100からの検出器出力が時系列で読み出され、赤外画像信号が得られる。
【0013】
図2は、図1に示した赤外線撮像装置1000に含まれる赤外線撮像素子100の上面図であり、図3は、図1をI−I方向に見た場合の断面図である。但し、図2において、赤外線吸収部(傘構造部)9は破線で表してある。
【0014】
図3に示すように、赤外線撮像素子100は、画素領域と回路領域からなり、画素領域では、基板1に設けられた空洞部13の上に、赤外線検知部8が支持脚14で支持されている。基板1には、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることが好ましい。
【0015】
赤外線検知部8には、絶縁膜10に覆われたpn接合ダイオード23が設けられている。ショットキーダイオード、トンネルダイオード等のダイオード23に代えて、トランジスタ等の、温度によって電気特性が変化する他の感温素子を設けても良い。ダイオード23の上には、薄膜配線22が設けられ、更に保護膜19が設けられている。保護膜19の上には、赤外線を吸収するための、傘構造をした赤外線吸収部9が設けられている。
【0016】
支持脚14は、絶縁膜10、層間絶縁膜17、薄膜配線22、層間絶縁膜18、および保護膜19の積層構造からなる。絶縁膜10、層間絶縁膜17、層間絶縁膜18、および保護膜19は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンから形成される。薄膜配線22は、アルミニウム等の金属や多結晶シリコンから形成される。
【0017】
一方、回路領域には、配線11と、配線11に接続された回路部15が設けられている。回路部15は、例えば駆動走査回路や信号走査回路からなる。
【0018】
赤外線撮像素子100では、入射した赤外線が赤外線吸収部9で吸収され、赤外線検知部8に伝えられる。赤外線検知部8の温度が上昇することにより、赤外線検知部8に含まれるダイオード23の電気特性が変化する。
【0019】
図3に示すように、ダイオード23のp、n側にそれぞれ接続された薄膜配線22は、支持脚14を通って、配線11に接続されている(図2参照)。ダイオード23の電気特性の変化は、薄膜配線22を通って回路部15により電気信号として取り出され、入射した赤外線の検出に用いられる。
【0020】
図4は、図3の赤外線検知部8を詳しく示した断面図である。図4中、図3と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
赤外線検知部8は、絶縁膜10と、その上に形成されたダイオード23を含む。ダイオード23は、高濃度のp型不純物領域24が、n型不純物領域25中に形成された構造を有する。即ち、p型不純物領域24とn型不純物領域25の接合面の面積が広くなるように、縦方向と横方向に接合面が形成された構造となっている。p型不純物領域24、n型不純物領域25には、それぞれ薄膜配線22が接続されている。
【0021】
絶縁膜10に形成されたコンタクトホールの側壁には、サイドウォール26が形成されている。p型不純物領域24は、後述するように、例えばコンタクトホールにp型不純物元素をイオン注入することにより形成される。このため、ダイオード23のpn接合面と、薄膜配線22との距離はサイドウォール26の厚みにより決定することができる。サイドウォール26の幅は堆積層の厚さにより制御できるので、ナノメーターのオーダーまで薄くすることも可能である。
【0022】
次に、図5a〜図5eを用いて、赤外線撮像素子100に含まれる赤外線検知部8の製造方法について説明する。図5a〜図5eは、赤外線検知部8の製造工程の断面図であり、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0023】
赤外線検知部8の製造方法では、まず、図5aに示すように、酸化シリコン等の絶縁膜10、シリコン等の半導体からなるn型不純物領域25、絶縁膜10を積層形成した後、フォトマスク20を使用した写真製版により、上面の絶縁膜10をエッチングし、コンタクトホール27を形成する。
【0024】
次に、図5bに示すように、フォトマスク20および絶縁膜10を注入マスクに用いて、コンタクトホール27領域のn型不純物領域25に、高濃度のp型不純物を選択的に注入して、p型不純物領域24を形成する。p型不純物領域24は、コンタクトホール27領域に対してセルフアラインメントで形成される。このように、コンタクトホール27の形成工程と、高濃度p型不純物の注入工程が同一フォトマスク20を用いて行われるため、別々のフォトマスクを用いる従来技術のようにフォトマスク間での写真製版によるズレを考慮する必要が無くなる。なお、イオン注入に代えて、拡散技術を用いても構わない。
【0025】
次に、図5cに示すように、サイドウォール形成のための、絶縁膜26’を全面に堆積する。絶縁膜26’の堆積は、例えばCVD法を用いて行われる。
【0026】
次に、図5dに示すように、RIE等を用いて絶縁膜26’をエッチングして、絶縁膜10の側壁に残った絶縁膜26’からサイドウォール26を形成する。サイドウォール26の厚さ(図5dでは、横方向の厚さ)は、エッチング条件によりナノミクロンのオーダーで制御できる。
【0027】
最後に、図5eに示すように、コンタクトホール27を埋め込むように金属層を形成した後、絶縁膜10の上の金属膜をエッチングして、薄膜配線22を形成する。薄膜配線22は、p型不純物領域24、n型不純物領域25に、それぞれ電気的に接続されている。
【0028】
図5eに示すように、薄膜配線22と、ダイオード23のpn接合面(p型不純物領域24とn型不純物領域25との接合面)との距離(図5e中にaで表示)は、サイドウォール26の厚さによって決定される。このため、サイドウォール26の厚さ、即ち距離aは、ナノメーター単位で制御可能となる。
【0029】
最後に、層間絶縁膜18、保護膜19を形成し、図4に示す赤外線検知部8が完成する。
【0030】
次に、図6a〜図6dに、比較例として従来技術を用いた赤外線検知部8の作製方法を示す。図6a〜図6d中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0031】
従来の製造方法では、まず、図6aに示すように、絶縁膜10、n型不純物領域25を積層形成した後、フォトマスク20を形成する。続いて、フォトマスク20を注入マスクに用いて、n型不純物領域25中に、高濃度のp型不純物を選択的に注入して、p型不純物領域24を形成する。
【0032】
次に、図6bに示すように、フォトレジスト20を除去した後、CVD法等を用いて、絶縁膜10を形成する。
【0033】
次に、図6cに示すように、フォトマスク20を使用した写真製版により絶縁層10をエッチングし、ダイオード23のコンタクトホール27を形成する。
【0034】
最後に、図6dに示すように、コンタクトホール27を埋め込むように金属層を形成した後、絶縁膜10の上の金属膜をエッチングして、薄膜配線22を形成する。薄膜配線22は、p型不純物領域24、n型不純物領域25に、それぞれ電気的に接続されている。
【0035】
ここで、図6dに示すように、薄膜配線22とダイオード23のpn接合面との距離aは、p型不純物注入工程(図6a)とコンタクトホール形成工程(図6c)で用いる、それぞれのフォトマスク20間における写真製版(マスク合わせ)によるズレを考慮して決定する必要がある。このため、距離aは写真製版のズレを考慮したマージンを含むため、小さくするには限度があり、ダイオードの小型化の制限となる。
【0036】
これに対して、本発明の実施の形態1にかかる製造方法では、上述のように、薄膜配線22とダイオード23のpn接合面との距離aは、サイドウォール26の厚さにより決定されるためナノメーターオーダーで制御が可能であり、従来技術のような写真製版のズレを考慮する必要がなく、ダイオードの小型化が可能となる。
【0037】
次に、図7a〜図7fを用いて、本発明の実施の形態1にかかる非冷却赤外線撮像素子100の製造方法について簡単に説明する。図7a〜図7f中、図3と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0038】
まず、図7aに示すように、シリコン等の基板1を準備し、基板1に走査回路等の回路部15を形成した後、CVD法等で絶縁膜10を形成する。絶縁膜10中にはダイオードのn型不純物領域25を形成する。更に、回路部15の上方に配線16を形成する。
【0039】
次に、図7bに示すように、酸化シリコン等の層間絶縁層17を全面に形成した後、フォトマスク20を用いて、赤外線検知部8となる領域の上部のみを開口する。
【0040】
次に、図7cに示すように、赤外線検出部8となる領域の上の絶縁膜10、層間絶縁膜17を、弗化水素酸溶液を用いてウェットエッチングする。弗化水素酸溶液を用いることにより、フォトマスク20の開口領域中の絶縁膜10、層間絶縁膜17のみが選択的にエッチングされ、絶縁膜10が薄膜化される。なお、ドライエッチングにより絶縁膜10、層間絶縁膜17をエッチングしても良い。
【0041】
図7cの工程の後に、上述の赤外線検知部8の作製(図5a〜図5d)を行い、p型不純物領域24、n型不純物領域25からなるダイオード23、およびサイドウォール26(図7dには示さず)を形成する。
【0042】
次に、図7dに示すように、フォトマスク20を除去した後、赤外線検知部8と赤外線検知部8を中空に保持する支持脚14のために薄膜配線を形成し、その上に酸化シリコン等からなる層間絶縁膜18を所望の膜厚だけ堆積させる。
【0043】
次に、図7eに示すようにアルミニウム、Ti、TiN、W、WSi等からなる配線11を形成する。配線層11を形成した後、例えば酸化シリコン等からなる保護膜19を全面に形成する。
【0044】
次に、図7fに示すように、ドライエッチングを用いてエッチングホール21、赤外線吸収部9を形成した後、XeF2等を用いたドライエッチングにより空洞部13を形成し、赤外線検知部8を、支持脚14で支持された中空構造とする。以上の工程で、図3に示す赤外線撮像素子100が完成する。
【0045】
かかる赤外線撮像素子100では、赤外線検知部8に含まれる、直列接続されたダイオードの個数が同じであれば、従来構造の赤外線撮像素子に比較して赤外線検知部8が小型化でき、この結果、熱容量が小さくなり、より高感度な赤外線検出が可能となるとともに、熱時定数も短くなり、動きの速い物体の撮像が可能となる。
【0046】
また、薄膜配線22とダイオードのpn接合面との距離は、サイドウォール26の厚さによりナノメーターのオーダーで制御が可能であり、個々のダイオード特性の均一性が向上する。
【0047】
実施の形態2.
図8は、全体が200で表される、本発明の実施の形態2にかかる赤外線撮像素子の断面図であり、図2に示されたII−II方向に見た場合の断面図に相当する。
【0048】
図8に示すように、赤外線撮像素子200では、p型不純物(p+)領域24とn型不純物(n−)領域25からなる同種のダイオードが2個、直列に接続されている。個々のダイオードの間は、絶縁膜10で分離されており、薄膜配線22により直列に接続されている。
【0049】
一方、図9は、全体が210で表される、本発明の実施の形態2にかかる他の赤外線撮像素子の平面図であり、図10は、図9をIX−IX方向に見た場合の断面図である。赤外線撮像素子210では、異種のダイオードが2個、即ち、p型不純物(p+)領域24とn型不純物(n−)領域25からなるダイオードと、n型不純物(n+)領域28とp型不純物(p−)領域29からなるダイオードが、直列接続されている。個々のダイオードは、逆バイアスとなる境界部分に薄膜配線22が設けられて、直列接続されている。
【0050】
このように、本実施の形態2にかかる赤外線撮像素子200、210においても、サイドウォール26の厚さにより、薄膜電極22とダイオードの接合面との距離を調整できるため、面積の増大を抑制しながら、複数のダイオードを直列接続して配置することができる。この結果、赤外線の検出感度の高い赤外線撮像素子を作製することができる。
【0051】
実施の形態3.
図11は、全体が300で表される、本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子の断面図である。図11中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0052】
本発明の実施の形態3にかかる赤外線撮像素子300では、赤外線検知部8および支持脚14に形成された薄膜配線が、回路領域に形成された配線11と同じ層から形成されている。また、層間絶縁層18を設けずに、保護膜19が層間絶縁膜を兼ねている。他の構成は、上述の実施の形態1にかかる赤外線撮像素子100と同じである。
【0053】
このように、赤外線検知部8および支持脚14に形成された薄膜配線を、配線11から形成することにより、また、層間絶縁膜18を省略することにより、製造工程が簡略化される。
【0054】
また、層間絶縁膜18を形成しないことにより、赤外線検知部8の熱容量が小さくなり、熱時定数を短くすることができる。この結果動作の速い物体の撮影が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 基板、2 選択線、3 信号線、4 駆動走査回路、5 信号走査回路、6 出力アンプ、8 赤外線検知部、9 赤外線吸収部、10 絶縁膜、11 配線、13 空洞部、14 支持脚 、15 回路部、16 配線、17、18 層間絶縁膜、19 保護膜、21 エッチングホール、22 薄膜配線、23 ダイオード、27 コンタクトホール、100 赤外線撮像素子、1000 赤外線撮像装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子の製造方法であって、該赤外線検知部の製造工程が、
第1導電型の半導体層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して該半導体層を露出させる工程と、
少なくとも該絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を該半導体層に注入して、該第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層を形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、
該サイドウォール材料膜をエッチングして、該絶縁膜の側壁上に該サイドウォール材料膜を残してサイドウォールを形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該サイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、
該金属膜をパターニングして電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子の製造方法。
【請求項2】
上記第2導電型の半導体層を形成する工程が、少なくとも上記絶縁膜を注入マスクに用いた、上記第2導電型の元素のイオン注入工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記第1導電型の半導体層と上記第2導電型の半導体層とが、ダイオードを形成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子であって、該赤外線検知部が、
第1導電型の半導体層と、
該第1導電型の半導体層の上に形成された絶縁膜と、
該絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、
該コンタクトホールの下方の、該第1導電型の半導体層中に形成された、第2導電型の半導体層と、
該コンタクトホール内の該絶縁膜の側壁上に形成されたサイドウォールと、
該コンタクトホールを埋めるように、該サイドウォール上に延在して形成された電極と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子。
【請求項5】
上記第1導電型の半導体層と上記第2導電型の半導体層とが、ダイオードを形成することを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像素子。
【請求項6】
上記赤外線検知部は、第2導電型の半導体層中に第1導電型の半導体層が形成された第2のダイオードを含み、
上記ダイオードと該第2ダイオードは、接合面を介して直列に接続され、該接合面を跨ぐように第2の電極が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の赤外線撮像素子。
【請求項7】
上記電極は、上記赤外線検知部からの信号の読み出しに用いる信号線および選択線と同じ材料から形成されたことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の赤外線撮像素子。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の赤外線撮像素子が、アレイ状に配置された赤外線撮像装置。
【請求項1】
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子の製造方法であって、該赤外線検知部の製造工程が、
第1導電型の半導体層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜をパターニングしてコンタクトホールを形成して該半導体層を露出させる工程と、
少なくとも該絶縁膜をマスクに用いて第2導電型の元素を該半導体層に注入して、該第1導電型の半導体層中に第2導電型の半導体層を形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該絶縁膜を覆うように、サイドウォール材料膜を形成する工程と、
該サイドウォール材料膜をエッチングして、該絶縁膜の側壁上に該サイドウォール材料膜を残してサイドウォールを形成する工程と、
該コンタクトホールを埋めて該サイドウォール上に延在するように、金属膜を形成する工程と、
該金属膜をパターニングして電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子の製造方法。
【請求項2】
上記第2導電型の半導体層を形成する工程が、少なくとも上記絶縁膜を注入マスクに用いた、上記第2導電型の元素のイオン注入工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記第1導電型の半導体層と上記第2導電型の半導体層とが、ダイオードを形成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に支持脚で赤外線検知部が支持された赤外線撮像素子であって、該赤外線検知部が、
第1導電型の半導体層と、
該第1導電型の半導体層の上に形成された絶縁膜と、
該絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、
該コンタクトホールの下方の、該第1導電型の半導体層中に形成された、第2導電型の半導体層と、
該コンタクトホール内の該絶縁膜の側壁上に形成されたサイドウォールと、
該コンタクトホールを埋めるように、該サイドウォール上に延在して形成された電極と、を含むことを特徴とする赤外線撮像素子。
【請求項5】
上記第1導電型の半導体層と上記第2導電型の半導体層とが、ダイオードを形成することを特徴とする請求項4に記載の赤外線撮像素子。
【請求項6】
上記赤外線検知部は、第2導電型の半導体層中に第1導電型の半導体層が形成された第2のダイオードを含み、
上記ダイオードと該第2ダイオードは、接合面を介して直列に接続され、該接合面を跨ぐように第2の電極が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の赤外線撮像素子。
【請求項7】
上記電極は、上記赤外線検知部からの信号の読み出しに用いる信号線および選択線と同じ材料から形成されたことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の赤外線撮像素子。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の赤外線撮像素子が、アレイ状に配置された赤外線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−220222(P2012−220222A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83230(P2011−83230)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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