説明

赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形品

【課題】 赤外線透過性、耐アルコール性、光沢性及び硬度に優れる赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】 本発明の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物は、[A](ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)及び(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分と、[B]着色剤とを含有し、上記樹脂成分[A]を100質量部とした場合に、上記着色剤[B]の含有量は、0.005〜3質量部であり、本組成物からなる厚さ3mmの成形体に対する、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下であり、且つ、800〜1000nmの間のいずれかの波長の光の透過率が50%以上であり、且つ、本組成物からなる成形品中のオリゴマーの含有量が300ppm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線透過性、耐アルコール性、光沢性及び硬度に優れる赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線は、テレビ、オーディオ、エアコン等各種電化製品の遠隔制御;自動ドア、警報装置等のセンサー等に広く用いられており、なかでも、波長が800〜1000nmの近赤外線が多く適用されている。また、上記の用途には、可視光による誤動作を避けるため、可視光を吸収又は反射させることによって遮断することが不可欠となっている。
従来、上記電化製品のリモートコントロール機構による遠隔制御は、電化製品の前面枠等の所定の位置に配設された、赤外線透過用フィルター等を通してなされている。特許文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂及び特定の染料を含む樹脂組成物と、この組成物からなるフィルターとが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−3311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、テレビ等の大型化に伴い、その構造も多様化しており、リモートコントロール機構を利用した赤外線受光部の位置について、高い自由度が求められ、また、フィルターを配設することによる外観性の低下も懸念されるようになり、テレビ等の前面枠そのものあるいは筐体そのものを赤外線透過性材料により形成することが検討されている。
【0005】
一方、電化製品の枠体、筐体等の表面に付着した汚れを落とすために、洗浄剤が用いられるが、赤外線透過性材料の種類によっては、洗浄剤に含まれるアルコールにより、成形品の表面が白化する等の現象が見られる。
本発明は、赤外線透過性、耐アルコール性、光沢性及び硬度に優れる赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、赤外線透過性及び可視光遮断性に優れ、且つ、成形品におけるオリゴマー含有量が300ppm以下である場合に、エタノール等のアルコールを含む洗浄剤を用いて汚れを落とした際に、成形品の外観性が低下することが少ないことを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.[A](ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)及び(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分と、[B]着色剤とを含有する赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物であって、上記樹脂成分[A]を100質量部とした場合に、上記着色剤[B]の含有量は、0.005〜3質量部であり、本組成物からなる厚さ3mmの成形体に対する、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下であり、且つ、800〜1000nmの間のいずれかの波長の光の透過率が50%以上であり、且つ、本組成物からなる成形品中のオリゴマーの含有量が300ppm以下であることを特徴とする赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物。
2.上記1に記載の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
3.オリゴマーの含有量が300ppm以下である上記2に記載の成形品。
本発明において、「オリゴマー」とは、単量体単位(基本構造分子)の繰り返し数が2
〜20程度の重合体であるものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物によれば、赤外線透過性、可視光遮断性、耐アルコール性、光沢性及び硬度に優れた成形品を得ることができる。
本発明の成形品によれば、可視光を遮断し、赤外線を透過することから、赤外線透過フィルター、カバー等をはじめ、リモートコントロール機構により遠隔制御可能なテレビ等の前面枠等として特に好適である。テレビの前面枠とした場合、前面枠を通して、赤外線受光部品等内部の部品が透視されないので、テレビとしての外観性を損なうことがない。また、成形品におけるオリゴマー含有量が300ppm以下である場合には、成形品の表面に付着した汚れを落とすために、エタノール等のアルコールを含む洗浄剤を用いても、成形品表面の白化が抑制され、外観性が低下することが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物
本発明の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」という。)は、[A](ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)及び(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分と、[B]着色剤とを含有する組成物であり、上記樹脂成分[A]を100質量部とした場合に、上記着色剤[B]の含有量は、0.005〜3質量部であり、本組成物からなる厚さ3mmの成形体に対する、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下であり、且つ、800〜1000nmの間のいずれかの波長の光の透過率が50%以上であり、且つ、本発明の組成物からなる成形品中のオリゴマーの含有量が300ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
1−1.樹脂成分[A]
本発明に係る樹脂成分[A]は、(ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)及び(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種である。
本発明において、「(ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)」は、ゴム質重合体の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む単量体(以下、「単量体(a1)」という。)を重合して得られたゴム強化アクリル系樹脂、及び/又は、ゴム質重合体の非存在下に、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む単量体(以下、「単量体(a1’)」という。)を重合して得られたアクリル系樹脂である。尚、「(メタ)アクリル酸」なる記載は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味するものとする。また、上記単量体(a1)及び上記単量体(a1’)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
また、「(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)」は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(a2)」という。)を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂、及び/又は、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル化合物を含む単量体(以下、「単量体(a2’)」という。)を重合して得られたスチレン系樹脂である(但し、上記(ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)を除く。)。上記単量体(a2)及び上記単量体(a2’)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
従って、上記樹脂成分[A]としては、ゴム強化アクリル系樹脂、ゴム強化されていないアクリル系樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂、及びゴム強化されていないスチレン系樹脂を、それぞれ、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
上記ゴム強化アクリル系樹脂又は上記ゴム強化スチレン系樹脂の形成に用いられるゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等のブタジエン系ゴム;スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等のイソプレン系ゴム;これら重合体の水素化物;ブチルゴム;エチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;シリコーン系ゴム;アクリル系ゴム等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記ゴム強化スチレン系樹脂の形成に用いられる各ゴム質重合体は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
【0011】
上記ゴム強化アクリル系樹脂は、ゴム質重合体の存在下に、単量体(a1)を重合して得られたものである。また、上記アクリル系樹脂は、ゴム質重合体の非存在下に、単量体(a1’)を重合して得られたものである。この単量体(a1)及び(a1’)としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物以外に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物、更に、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物が挙げられ、必要に応じて用いることができる。
【0012】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物のうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0013】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0014】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0015】
マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、α,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物単位を分子へ導入する方法としては、無水マレイン酸を共重合してからイミド化する等してもよい。
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
官能基を有するビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記アクリル系樹脂の形成に用いられる各単量体の使用量は、下記のとおりである。但し、単量体(a1)及び(a1’)の全量を100質量%とする。
(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは50〜95質量%である。この範囲にあると、着色性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
芳香族ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。この範囲にあると、成形加工性及び機械的強度の物性バランスに優れる。
シアン化ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは2〜40質量%である。この範囲にあると、耐薬品性、色調及び成形加工性の物性バランスに優れる。
マレイミド系化合物を使用する場合には、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%である。この範囲にあると、耐熱性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
官能基を有するビニル系化合物を使用する場合には、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
【0018】
一方、上記ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム質重合体の存在下に、単量体(a2)を重合して得られたものである。また、上記スチレン系樹脂は、ゴム質重合体の非存在下に、単量体(a2’)を重合して得られたものである。この単量体(a2)及び(a2’)としては、芳香族ビニル化合物以外に、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物、更に、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物が挙げられ、必要に応じて用いることができる。各化合物は、上記単量体(a1)において例示したものを用いることができる。
【0019】
上記ゴム強化スチレン系樹脂及び上記スチレン系樹脂の形成に用いられる各単量体の使用量は、下記のとおりである。但し、単量体(a2)及び(a2’)の全量を100質量%とする。
芳香族ビニル化合物の使用量は、好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは40〜95質量%である。この範囲にあると、成形加工性及び機械的強度の物性バランスに優れる。
シアン化ビニル化合物を使用する場合には、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。この範囲にあると、耐薬品性、色調及び成形加工性の物性バランスに優れる。
マレイミド系化合物を使用する場合には、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%である。この範囲にあると、耐熱性及び成形加工性の物性バランスに優れる。
官能基を有するビニル系化合物を使用する場合には、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。この範囲にあると、相溶性付与効果及び成形加工性の物性バランスに優れる。
【0020】
上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記ゴム強化スチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合等が挙げられる。これらのうち、乳化重合が好ましい。尚、これらの方法により得られたゴム強化アクリル系樹脂及びゴム強化スチレン系樹脂は、通常、上記単量体(a1)の重合体及び上記単量体(a2)の重合体の各未グラフト成分を含む。
【0021】
上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記ゴム強化スチレン系樹脂を乳化重合により製造する場合には、それぞれ、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤等が用いられ、これらの存在下に重合が行われる。
【0022】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この重合開始剤の使用量は、上記単量体(a1)又は(a2)の全量100質量部に対し、通常、0.1〜1.5質量部、好ましくは0.2〜0.7質量部である。尚、この重合開始剤は、反応系に対して、一括添加、分割添加及び連続添加のいずれで行ってもよい。
【0023】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン;α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この連鎖移動剤の使用量は、上記単量体(a1)又は(a2)の全量100質量部に対し、通常、0.05〜2.0質量部である。
【0024】
乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩;ロジン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型;アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この乳化剤の使用量は、上記単量体(a1)又は(a2)の全量100質量部に対し、通常、0.3〜5.0質量部である。
【0025】
尚、ゴム質重合体の存在下に、単量体(a1)又は(a2)を乳化重合させる際の、各単量体の使用方法としては、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体(a1)又は(a2)を全量一括して添加した後、重合を開始してもよいし、分割添加又は連続添加しながら重合を行ってもよい。
上記ゴム質重合体の使用量は、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂100質量部の製造に際し、好ましくは5〜70質量部、更に好ましくは5〜65質量部である。この範囲にあれば、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂を安定的に製造することができる。
【0026】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、樹脂成分を粉末状等とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製されたゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂が得られる。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記ゴム強化スチレン系樹脂を、溶液重合又は塊状重合により製造する方法については、公知の方法を適用することができる。
【0027】
上記ゴム強化アクリル系樹脂のグラフト率は、好ましくは5〜150%、更に好ましくは10〜100%である。このグラフト率が低すぎると、耐衝撃性及び透明性が低下する場合がある。一方、高すぎると、成形加工性及び耐衝撃性が低下する場合がある。
また、上記ゴム強化スチレン系樹脂のグラフト率は、好ましくは5〜150%、更に好ましくは10〜100%である。このグラフト率が低すぎると、耐衝撃性及び透明性が低下する場合がある。一方、高すぎると、成形加工性及び耐衝撃性が低下する場合がある。
【0028】
ここで、グラフト率とは、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂1g中のゴム成分をxg、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂1gをアセトン(但し、ゴム質重合体としてアクリル系ゴムを用いる場合は、アセトニトリルを使用する。)に溶解させた際の不溶分をygとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
【0029】
上記ゴム強化アクリル系樹脂のアセトン可溶分(但し、ゴム質重合体としてアクリル系ゴムを用いる場合は、アセトニトリル可溶分とする。)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
また、上記ゴム強化スチレン系樹脂のアセトン可溶分(但し、ゴム質重合体としてアクリル系ゴムを用いる場合は、アセトニトリル可溶分とする。)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
【0030】
尚、グラフト率及び極限粘度は、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変化させることにより、容易に制御することができる。
【0031】
本発明に係るゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂としては、上記製造方法等により得られたものをそのまま用いてよいし、上記単量体(a1)からなる重合体又は上記単量体(a2)からなる重合体を別途に準備し、これを添加してなる各混合物をゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂として用いることもできる。尚、これらの重合体は、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂の形成に用いた単量体(a1)又は(a2)と全く同じ種類の化合物を用いて得られた重合体であってよいし、異なる種類の化合物を用いて得られた重合体であってもよい。また、これらのいずれの場合も、単量体の使用割合は、ゴム強化アクリル系樹脂又はゴム強化スチレン系樹脂の形成に用いた単量体(a1)又は(a2)と同一であっても、異なってもよい。
上記ゴム強化アクリル系樹脂又は上記ゴム強化スチレン系樹脂は、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記樹脂成分[A]として、ゴム強化アクリル系樹脂及び/又はゴム強化スチレン系樹脂を用いる場合には、含まれるゴム質重合体の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。この範囲にあれば、成形加工性、耐衝撃性及び硬度の物性バランスに優れる。
【0033】
上記のゴム強化されていないアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂は、それぞれ、上記の単量体(a1’)及び(a2’)の単独重合体又は共重合体である。これらの重合体は、上記のゴム強化アクリル系樹脂及びゴム強化スチレン系樹脂の形成に用いた単量体(a1)及び(a2)と全く同じ種類の化合物を用いて得られたものであってよいし、異なる種類の化合物を用いて得られたものであってもよい。
上記アクリル系樹脂及び上記スチレン系樹脂は、通常、公知の重合条件で、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等により製造される。
【0034】
上記アクリル系樹脂のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
また、上記スチレン系樹脂のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲にあると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
尚、極限粘度は、上記ゴム強化アクリル系樹脂及び上記ゴム強化スチレン系樹脂の場合と同様、各種の製造条件を変化させることにより制御することができる。
上記アクリル系樹脂又は上記スチレン系樹脂は、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記樹脂成分[A]の、ASTM D1003に準ずる全光線透過率は、好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。この全光線透過率が小さすぎると、800〜1000nmの間の波長の光の透過率が低下するので好ましくない。
【0036】
本発明に係る樹脂成分[A]の好ましい例を下記に挙げる。各成分の含有割合は、特に限定されないが、全光線透過率が70%以上となるように調整される。
(1)ブタジエン系ゴムの存在下、メタクリル酸メチル及び芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)を重合して得られたゴム強化アクリル系樹脂
(2)ブタジエン系ゴムの存在下、メタクリル酸メチル及びシアン化ビニル化合物を重合して得られたゴム強化アクリル系樹脂
(3)ブタジエン系ゴムの存在下、メタクリル酸メチル、芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)及びシアン化ビニル化合物を重合して得られたゴム強化アクリル系樹脂
(4)メタクリル酸メチルを重合して得られた単独重合体、又は、メタクリル酸メチル及び芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)を含む単量体を重合して得られた共重合体であるアクリル系樹脂
(5)ブタジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)及びシアン化ビニル化合物を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂
(6)ブタジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂
(7)芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン)及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも1種の単量体を重合して得られた単独重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂。
上記樹脂成分[A]としては、ゴム強化アクリル系樹脂を含むことが特に好ましく、これにより、本発明の目的とする効果が一段と優れる。
【0037】
1−2.着色剤[B]
本発明に係る着色剤[B]は、形成される成形品に、可視光線を吸収し、赤外線を透過する機能を付与させるために配合するものである。従って、この着色剤[B]は、波長750nm未満の光を吸収し、波長750nm以上の光を透過するものであることが好ましい。
【0038】
上記着色剤[B]の色は、好ましくは暗色系の色であり、特に好ましくは黒色あるいは黒色系の色である。従って、赤色系(茶色を含む)着色剤、黄色系(橙色を含む)着色剤、緑色系着色剤、青色系(紫色を含む)着色剤及び黒色系着色剤の1種以上を用いて、所望の色に調整することができる。その例を下記に挙げる。
(1)赤色系着色剤及び緑色系着色剤の組み合わせ
(2)赤色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ
(3)赤色系着色剤、緑色系着色剤及び青色系着色剤の組み合わせ
(4)赤色系着色剤、黄色系着色剤及び青色系着色剤の組み合わせ
(5)赤色系着色剤、黄色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ
(6)赤色系着色剤、緑色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ
(7)赤色系着色剤、青色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ
(8)緑色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ
(9)青色系着色剤及び黒色系着色剤の組み合わせ。
【0039】
上記着色剤[B]としては、有機系物質又は無機系物質からなる染料、顔料等を用いることができ、例えば、ベンズイミダゾロン系着色剤、アゾ系着色剤、アントラキノン系着色剤、イソインドリノン系着色剤、イソインドリン系着色剤、キナクリドン系着色剤、ペリレン系着色剤、ペリノン系着色剤、キノリン系着色剤、ジオキサジン系着色剤、ジケトピロロピロール系着色剤、フタロシアニン系着色剤、金属錯体系着色剤等が挙げられる。
【0040】
上記着色剤[B]の含有量は、上記樹脂成分[A]を100質量部とした場合に、0.005〜3質量部であり、好ましくは0.01〜1質量部、更に好ましくは0.05〜0.5質量部である。この着色剤[B]の含有量が少なすぎると、400〜700nmの波長の光を透過する傾向にある。尚、この着色剤[B]の含有量が多すぎても、赤外線透過性の向上効果が得られない。
【0041】
1−3.添加剤
本発明の組成物は、目的や用途に応じて、更に、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、耐候剤、充填剤、可塑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0042】
1−4.組成物
本発明の組成物は、上記の樹脂成分[A]、着色剤[B]、添加剤等、あるいは、これらを予め混合してなる混合物を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等に投入し、加熱下で溶融混練することにより、ペレット等として得ることができる。各成分は、一括投入してから混練してよいし、分割して投入してもよい。混練後、そのまま成形品とする場合には、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、共押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等公知の成形方法を適用することができる。
【0043】
本発明の組成物において、本組成物からなる厚さ3mmの成形体に対する、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下であり、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。また、800〜1000nmの間のいずれかの波長の光の透過率が50%以上であり、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。上記の各範囲にあれば、赤外線透過性及び可視光遮断性により優れる。
上記透過率は、射出成形等により、板状の成形品を作製し、紫外・可視分光光度計等を用いて、波長400〜1000nmの光を走査することにより得ることができる。
【0044】
更に、本組成物からなる成形品中のオリゴマーの含有量が300ppm以下であり、好ましくは280ppm以下、更に好ましくは260ppm以下である。この範囲にあれば、成形品の表面に付着した汚れを落とすために、洗浄剤等を用いた際に、洗浄剤に含まれるアルコール等による白化現象を抑制することができる。
上記オリゴマー量は、下記の方法で測定することができる。
測定試料は、好ましくは、予め、細かく切断したものを用いる。先ず、この試料を、メチルエチルケトンに溶解し、標準物質(p−エチルニトロベンゼン)を添加して混合する。その後、n−ペンタンで重合体を再沈殿させ、上澄みを回収し、濃縮する。次いで、下記条件でガスクロマトグラフィー(GC)によりオリゴマー量を定量する。
<GC測定条件>
検出器 : 水素炎イオン化検出器
検出器温度 : 290℃
インジェクション温度 : 290℃
カラム : TC−5(内径0.53mm×長さ30m)
カラム温度 : 130℃→290℃(昇温速度7.5℃/分)
キャリヤーガス : He(流速20ml/分)
【0045】
尚、オリゴマーの含有量を上記範囲とする方法は、下記に例示される。
(1)上記樹脂成分[A]の重合工程において、重合条件を最適化し、オリゴマーの生成を少なくする方法。
(2)上記樹脂成分[A]を超臨界流体に接触させて精製する方法。
(3)本発明の組成物をペレット等とする際に、オリゴマーの除去がし易い機能を備えた押出機を用い、押出条件を最適化して押出を行う方法。
【0046】
2.成形品
本発明の成形品は、上記の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
成形品の形状は、目的、用途等に応じたものとすることができ、平板状(シート、フィルム等)、曲板状、筒状、棒状等の単純形状をはじめ、各種機器の筐体、枠体、ケース、カバー等の複雑形状にも好適である。従って、リモートコントロール機構により遠隔制御可能なテレビの前面枠をはじめ、エアコン、オーディオ、パソコン等電化製品本体に配設される赤外線透過フィルター;自動ドア、警報装置等に用いられるセンサー(カメラ等)、各種リモートコントロール機器等のカバー、筐体等として好適である。
これらの成形品の製造方法としては、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、共押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等が挙げられる。また、これらを組み合わせることもできる。
【0047】
本発明の成形品においては、オリゴマーの含有量が、好ましくは300ppm以下、より好ましくは290ppm以下、更に好ましくは260ppm以下である。この範囲にあれば、成形品の表面に付着した汚れを落とすために、洗浄剤等を用いた際に、洗浄剤に含まれるアルコール等による白化現象を抑制することができる。
また、本発明の成形品は、高硬度であるため、傷が付きにくく、外観性の低下が抑制される。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、以下の記載において、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0049】
1.評価項目
組成物又は成形品の評価項目は、下記のとおりであり、これらの測定方法及び評価方法を併記した。
(1)全光線透過率
80mm×55mm×3mmの平板状射出成形品を測定試料とし、ASTM D1004に準じて測定した。単位は%である。
(2)オリゴマー量
分析装置として、島津製作所社製「GC−14APF型」を、データ処理装置として、島津製作所社製「C−R6A型」を用い、上記本文中に記載の方法で測定した。
【0050】
(3)流動性
ISO 1133に準じ、温度220℃及び荷重98Nの条件で、メルトマスフローレートを測定した。単位はg/10分である。
(4)耐エタノール性
80mm×55mm×3mmの平板状射出成形品の表面で、エタノールを染み込ませたガーゼを20往復摺動させ、その後の表面状態を目視観察した。耐エタノール性の判定基準は下記の通りである。
○ : 白化部分が見られない。
△ : 白化部分がやや見られる。
× : 白化部分が多い。
【0051】
(5)光沢度
80mm×55mm×3mmの平板状射出成形品の光沢度を、村上色彩技術研究所社製卓上型光沢計「GM−26D」を用いて、測定角60度で測定した。
(6)鉛筆硬度
80mm×55mm×3mmの平板状射出成形品の表面の鉛筆硬度を、JIS K5400に準じ、安田精機製作所社製鉛筆硬度試験機「No.553−M FILM HARDNESS TESTER」を用いて測定した。
(7)耐衝撃性
シャルピー衝撃強さをもって評価し、ISO179に準じて測定した。単位は、kJ/mである。
【0052】
(8)光線透過率
80mm×55mm×3mmの平板状射出成形品を測定試料とし、大塚電子社製紫外・可視分光光度計「超高感度瞬間マルチ測光システムMCPD−7000」を用いて、波長400〜1000nmの光を走査し、透過率を測定した。尚、表1に、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下である場合、「○」印を、そうでない場合、「×」印で示した。また、650nm、900nm及び1000nmにおける透過率も併記した。
【0053】
2.赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物の原料成分
実施例及び比較例に用いた原料成分を下記に示す。
2−1.成分[A]
(1)A1−1(ゴム強化アクリル系樹脂)
ポリブタジエンゴムの存在下、メタクリル酸メチル、スチレン及びアクリロニトリルを重合して得られた、グラフト率が50%、アセトニトリル可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が0.4dl/gのゴム強化アクリル系樹脂である。ポリブタジエンゴムの含有量は30%、メタクリル酸メチル単位量は49%、スチレン単位量は16%及びアクリロニトリル単位量は5%である。
【0054】
(2)A1−2(アクリル系樹脂)
三菱レイヨン社製ポリメタクリル酸メチル「ACRYPET VH」を用いた。
(3)A1−3(アクリル系樹脂)
各単位量が、それぞれ、67%、20%及び13%のメタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体である。
(4)A2−1(ゴム強化スチレン系樹脂)
ポリブタジエンゴムの存在下、スチレン及びアクリロニトリルを重合して得られた、グラフト率が55%、アセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が0.52dl/gのゴム強化スチレン系樹脂である。ポリブタジエンゴムの含有量は5%、スチレン単位量は75%、アクリロニトリル単位量は20%である。
(5)A2−2(ゴム強化スチレン系樹脂)
ポリブタジエンゴムの存在下、スチレン及びアクリロニトリルを重合して得られた、グラフト率が70%、アセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が0.51dl/gのゴム強化スチレン系樹脂である。ポリブタジエンゴムの含有量は15%、スチレン単位量は59%、アクリロニトリル単位量は26%である。
【0055】
2−2.成分[B]
(1)B−1
アンスラキノン系染料の混合物である黒色染料(日本化薬社製「KAYASET BLACK A−N」)を用いた。
(2)B−2
アンスラキノン系の赤色染料(Disperse Red 22)を用いた。
(3)B−3
アンスラキノン系の緑色染料(Solvent Green 28)を用いた。
【0056】
3.赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物の調製及び評価
実施例1〜5及び比較例1〜4
上記の成分[A]及び[B]を、表1に記載の配合割合で、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機を用いて溶融混練(シリンダー設定温度220℃)し、ペレット化された熱可塑性樹脂組成物を得た。この組成物を用い、上記記載の評価項目について評価した。その結果を表1に併記した。尚、実施例1及び実施例2で作製した成形品の光線透過率を示すグラフを、それぞれ、図1及び図2に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
4.実施例の効果
表1より、以下のことが明らかである。
比較例1〜4は、成形品中のオリゴマー含有量がいずれも300ppmを超える例であり、耐エタノール性に劣る。また、比較例4は、全光線透過率の低いゴム強化スチレン系樹脂を用いたために、波長900nm及び1000nmの光線に対する透過率が、それぞれ、30%及び35%と低く、赤外線透過性に劣る。
一方、実施例1〜5は、成形品中のオリゴマー含有量がいずれも300ppm以下であり、耐エタノール性及び赤外線透過性に優れ、光沢度及び鉛筆硬度にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性に優れるため、リモートコントロール機構により遠隔制御可能なテレビの前面枠をはじめ、エアコン、オーディオ、パソコン等電化製品本体に配設される赤外線透過フィルター;自動ドア、警報装置等に用いられるセンサー(カメラ等)、各種リモートコントロール機器等のカバー、筐体等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1における組成物を用いて得られた成形品の光線透過率を示すグラフである。
【図2】実施例2における組成物を用いて得られた成形品の光線透過率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A](ゴム強化)アクリル系樹脂(A1)及び(ゴム強化)スチレン系樹脂(A2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分と、[B]着色剤とを含有する赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物であって、
上記樹脂成分[A]を100質量部とした場合に、上記着色剤[B]の含有量は、0.005〜3質量部であり、本組成物からなる厚さ3mmの成形体に対する、400〜700nmの間の各波長の光の透過率がいずれも20%以下であり、且つ、800〜1000nmの間のいずれかの波長の光の透過率が50%以上であり、且つ、本組成物からなる成形品中のオリゴマーの含有量が300ppm以下であることを特徴とする赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線透過性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【請求項3】
オリゴマーの含有量が300ppm以下である請求項2に記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−233014(P2006−233014A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49761(P2005−49761)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】