説明

走査プローブセンサパッケージ用マウント、走査プローブセンサパッケージ、走査プローブ顕微鏡および走査プローブセンサパッケージの取り付けまたは取り外し方法

走査プローブセンサパッケージ(27)用マウントは、マウント内の平面を規定する支持構造物(1、5)と、走査プローブセンサパッケージ(27)におけるそれぞれの対応物(43)と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素(9)とを含む。スナップ接合要素(9)は、取り付けられた走査プローブセンサパッケージ(27)に力を印加することにより、支持構造物(1、5)へ向かって前記平面に対して垂線な方向に前記走査プローブセンサパッケージ(27)を押しやる第1位置へ、および、走査プローブセンサパッケージ(27)を前記平面に対して垂線な方向に沿って支持構造物(1、5)に取り付けるか、または、支持構造物(1、5)から取り外せるようにする第2位置へと移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブセンサ用マウント、走査プローブセンサパッケージ、および走査プローブ顕微鏡に関する。これに加えて、本発明は、走査プローブセンサパッケージをマウントに取り付けるまたはマウントから取り外すことに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、走査トンネル顕微鏡法、原子間力顕微鏡法および関連する技術といった走査プローブの適用例において、原子的に鋭い先端が、先端と探査される表面との間のトンネル電流または静電力、磁力などといった力を検知するために用いられる。原始的に鋭い先端は、高品質の表面画像を得るために必要とされるので、しばらくすると先端を含むセンサまたはセンサパッケージの交換が必要となる。
【0003】
そのような走査プローブセンサやセンサパッケージは、典型的に小型で損傷を受けやすいので、これら装置の取り扱いにはしばしば注意を要する。そのうえ、走査プローブセンサは、マウント内において正確に位置決めする必要があることがよくある。これらの状況に対処するさまざまなマウントが提案されてきた。
【0004】
US5,701,381は、原子力などに起因する先端の変位を干渉計測手段により検出する走査力またはトンネル顕微鏡のプローブ先端の取り付け機構を開示している。干渉計測を可能とするために、フェルールを通して光ファイバーが誘導される。走査プローブ顕微鏡の先端は、フェルール上にはめることのできる薄片を含む差し込み構造物に位置している。先端は、その自由端が光ファイバーの出口端の反対側に位置するように位置している。正確な位置決めを達成するために、フェルールホルダーまたはフェルール自体が薄片による係合のための肩止め(shoulder stop)を有する。薄片は、締め付けボルトによるフェルール上への薄片の締め付けを可能とする締め付け要素を含んでいてもよい。
【0005】
US2007/0180889A1は、自由端に先端を有する片持ち梁が真空を使用して片持ちホルダーに取り付けられている走査プローブ顕微鏡用プローブ交換方法を説明している。しかしながら、この種の片持ち梁の保持は、走査プローブ顕微鏡が真空下で用いられる予定の場合、適用できない。
【0006】
WO2005/034134A1は、2つの片持ち梁を含むチップが、チップの傾斜面と重複する4つのヨーを含む締め付け装置により保持されているラスタープローブ機器用のプローブ機構を説明している。
【0007】
US5,376,790は、カートリッジを含むプローブ用の運動学的マウントを説明しており、ここで、カートリッジは、マウントの中へ側方に移動され、かつ、取り付けヘッド内でカートリッジを正確に位置決めするためにカートリッジの構成要素と相互作用するボールの方向へカートリッジを付勢するばねクリップにより固定されることができる。
【0008】
US5,861,624は、光学顕微鏡に組み込むか、または、装着することができる原子力顕微鏡システムを説明している。原子力顕微鏡は、取り付けアダプタと後端キャップとの間に後端キャップをアダプタにねじで留めることにより締め付け可能な基板を含む。ばねは、原子力顕微鏡を後端キャップの内側表面に対して付勢している。次いで、取り付けアダプタは、顕微鏡のレンズターレット上に取り付けることができる。
【発明の概要】
【0009】
言及した従来技術に対して、本発明は、走査プローブセンサパッケージ用の有利なマウントおよび該マウントと共に用いるための走査プローブセンサパッケージを提供することを目的とする。さらに、本発明は、有利な走査プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。またさらに、本発明は、走査プローブセンサパッケージをマウントに取り付けるか、または、マウントから取り外す有利な方法を提供することを目的とする。
【0010】
言及した目的はそれぞれ、請求項1または請求項13に記載の走査プローブセンサパッケージ用マウント、請求項9に記載の走査プローブセンサパッケージ、請求項11に記載の走査プローブ顕微鏡、および、請求項12または請求項15に記載の、マウントに対して走査プローブセンサパッケージを取り付けるか、または、取り外す方法により解決される。従属請求項は、本発明のさらなる展開を含む。
【0011】
走査プローブセンサパッケージ用の本発明のマウントは、走査プローブセンサパッケージ用の支持構造物を含み、前記支持構造物はマウント内の平面を規定している。該マウントは、走査プローブセンサパッケージにおけるそれぞれの対応物と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素をさらに含む。スナップ接合要素は、取り付けられた走査プローブセンサパッケージに力を印加して、支持構造物へ向かって前記平面に対して垂線な方向に該走査プローブセンサパッケージを押しやる第1位置へ移動可能である。これに加えて、スナップ接合要素は、走査プローブセンサパッケージを前記平面に対して垂線な方向に沿って支持構造物に取り付けるか、または、支持構造物から取り外せるようにする第2位置へ移動可能である。マウントは、運動学的マウントとして実施されることが好ましい。
【0012】
走査プローブセンサパッケージ用に用いられる一種のマウントは、ある物体を別の物体に対して除去可能に取り付ける技法を、両物体の互いに対する位置決めにおける非常に高度の再現性を有して実現するいわゆる運動学的マウントである。例えば、そのような運動学的マウントにおいて、3つのボールが、ある平面を規定してもよく、該平面に対して、第1部分に第2部分が取り付けられるとボールが部分的に突出することにより、第1部分に対する第2部分の相対的向きを固定する3つのスロットにより第2の本体が調整されることとなる。US5,376,790において運動学的マウントの一例が説明されている。
【0013】
本発明は、US5,376,790で説明されているように、運動学的マウントに該マウントにより規定される平面に平行な方向に沿ってセンサパッケージを取り付ける際に、電気接点のようなセンサパッケージやマウントのいくつかの部品が、意図せず接触する部品を通じて平面に対して側方の移動により損傷を受けることがあるという知見に基づいている。そのような損傷は、平面に対して垂線な方向に沿ってセンサパッケージの取り付けを行えれば起こらないだろう。これに加えて、運動学的マウントにおけるボールの磨耗が低減可能である。そのうえ、垂線方向に沿った取り付けはまた、平面に対するセンサパッケージの側方の挿入運動とともには扱いにくいであろう電気接点として微小ピンを提供できる可能性を与える。
【0014】
走査プローブセンサパッケージが一旦取り付けられると、レセプタクル内にこれを保持することは、力を直接印加するか、または、平面に向かって垂線方向に沿ってセンサパッケージを間接的に押しやる第1位置へスナップ接合要素を動かすことにより達成できる。平面に向かってセンサパッケージを間接的に押しやることは、例えば、力の重ね合わせにより達成され、この結果として垂線方向に沿った力が生じる。ゆえに、本発明のマウントは、マウントまたは取り付けられるセンサパッケージに位置する微小構造物がたとえ取り付け表面を超えて突出していても、これら構造物の損傷の危険性を低減する。
【0015】
スナップ接合要素は、ばね力により支持構造物の中心へ向かって付勢されている可動要素に位置していてもよい。ばね力は、走査プローブセンサパッケージに印加される力が、手動設定の力、例えば、締め付けボルトにより使用者が設定する力と比較して非常に再現性が高くなるように適切なばね定数を有するばねまたはその他何らかの弾性要素を用いることにより、正確に必要な大きさとすることができる。実際の設計において、前記可動要素は、例えば、静止セクションを支持構造物に直接固定することにより、支持構造物に対して自身の位置に固定されている静止セクションと、スナップ接合要素が位置している自由端セクションとを有する弾性湾曲可能なレバー要素を含んでいてもよい。そして、弾性湾曲可能なレバー要素は、前記平面に対して垂線な方向に実質的に平行に延在しており、かつ、スナップ接合要素を有する自由端セクションを支持構造物の中心へ向かって付勢するように形成されている。そして、ばね力は、レバー要素の弾性によりもたらされる。可動要素とばね力をもたらす要素とは、本実施構成では同一であるので、スナップ接合要素、ゆえに、スナップ接合要素の複雑さを実現するための要素の数を少なく保つことができる。
【0016】
摩擦を低減するために、特に、走査プローブセンサパッケージ自身がばね力に反して第1位置から第2位置へとスナップ接合要素を動かすために用いられるとき、スナップ接合要素は、対称軸の回りの回転対称性を示してもよく、かつ、その対称軸が回転軸である状態、および、回転軸がマウント内で規定される平面に対して垂線な方向に対して垂直に方向付けられている状態で回転可能に取り付けられていてもよく、その結果、センサパッケージの取り付けおよび取り外し中にスナップ接合要素とセンサパッケージとの間の転がり抵抗のみを克服することとなる。
【0017】
マウントは、支持構造物の縁の周りに均等に分布している少なくとも3つの可動なスナップ接合要素を含んでもよい。この設計により、マウント内で規定される平面に向かって取り付けられたセンサパッケージに均等に分布した力を印加することができるようになる。
【0018】
代替の設計において、マウントは、支持構造物を取り囲むように支持構造物の周辺部に位置する少なくとも1つの環状コイルばねを含む。そして、支持構造物の中心へ向かって現れるコイルの該当セクションは、スナップ接合要素を形成している。本設計において、走査プローブセンサパッケージがマウントに取り付けられると、コイルは、例えば、より寸法の大きいセンサパッケージのセクション、次いで、パッケージの残部により圧縮され、これにより、コイルの内側セクション、すなわち、支持構造物の中心へ向かって現れるセクションを第2位置へ外向きに移動させる。センサパッケージのより大きいセクションが、環状コイルばねを通過し終わると、コイルは、その元の第1位置に即座に戻り、かつ、センサパッケージの延長部分が、前記平面に対して垂線な方向と平行な力の成分を介して垂線方向に沿って支持構造物から離間するのを防ぐことができる。
【0019】
原則的に、スナップ接合要素は、取り付けられるまたは取り外される走査プローブセンサパッケージの使用により第1位置から第2位置へ移動可能であるが、センサパッケージが、スナップ接合要素と接触することなく取り付けおよび/または取り外しできると有利である。これは、作動要素を作動させることによりスナップ接合要素を第1位置から第2位置へおよびその逆に移動させるように、少なくとも1つのスナップ接合要素に作用するよう配置された作動要素により達成することができる。こうしてスナップ接合要素の移動が、センサパッケージ自体以外の手段によりもたらされるので、センサパッケージがその最終位置となる前に、スナップ接合要素とまったく接触せずにセンサパッケージを取り付けたり、取り外したりできるようになる。ゆえに、センサパッケージの取り付けまたは取り外し中にセンサパッケージおよび/またはマウントを損傷する危険性をさらに低減することができる。
【0020】
スナップ接合要素が、上記のように可動要素に位置している場合、作動要素は、作動要素の作動時に可動要素および/またはスナップ接合要素に作用して、前述のばね力に反して支持構造物の中心から離間した方向にレバー要素を湾曲させるよう配置されていてもよい。スナップ接合要素が、弾性湾曲可能なレバー要素の自由端に位置している場合、作動要素は、レバー要素を支持構造物の中心へ向かって付勢する力に反してレバー要素を湾曲させるために弾性湾曲可能なレバー要素および/またはスナップ接合要素に作用するよう配置されていてもよい。
【0021】
作動要素は、とりわけ、マウントにより規定される前記平面に対して垂線な方向に平行な方向に前後に移動可能であってもよい。そのような構成において、たとえマウントの周囲の利用可能な空間が側方において制限されていても、作動要素を実現することができる。作動要素は、前記可動要素および/または前記スナップ接合要素に作用する少なくとも1つの誘導要素を含んでもよく、ここで、誘導要素は、前後移動の範囲内における作動要素の位置によって、支持構造物の中心から離間した方向へスナップ接合要素が移動される距離を規定する。
【0022】
本発明の走査プローブセンサパッケージは、センサ要素とセンサ要素が固定された基部とを含む。該走査プローブセンサパッケージは、センサパッケージの損傷を受けやすい部品と接触することなくセンサパッケージの取り扱いを可能とするために、基部から延在しているハンドルセクションをさらに含んでもよい。基部は、本発明のマウントのスナップ接合要素と相互作用するよう設計されている少なくとも1つのスナップ接合セクションを含む。このスナップ接合セクションは、スナップ接合要素が第2位置にあるときは垂線方向に沿って少なくとも1つのスナップ接合要素を通過できるが、スナップ接合要素が第1位置にあるときは垂線方向に沿って少なくとも1つのスナップ接合要素を通過できないように選択される寸法を有する。さらに、スナップ接合セクションの寸法は、スナップ接合セクションがスナップ接合要素を前記平面へ向かって通過したときに、スナップ接合要素が前記平面に対して垂線な方向においてマウント内で規定される平面へ向かって力を印加できるように選択される。とりわけ、基部は、前記少なくとも1つのスナップ接合セクションを形成する少なくとも1つの縁セクションを含む基板により形成されてもよい。次いで、板の直径および縁の厚みは、上記要件を満たすように選択可能である。そのような本発明の走査プローブセンサパッケージは、上で取り上げたようなマウントにより提供される利点を実現するための本発明のマウントとの併用に特に適合されている。
【0023】
本発明の走査プローブ顕微鏡は、本発明のマウントを含む。そのような走査プローブ顕微鏡の利点は、本発明のマウントの使用に直接起因するものであるので、マウントに対してすでに取り上げた利点と同一である。
【0024】
本発明のさらなる態様によると、本発明のマウントへ/から本発明の走査プローブセンサパッケージを取り付けるまたは取り外す方法は、少なくとも1つのスナップ接合要素を第1位置から第2位置へと移動させる工程と、マウント内で規定される平面に対して垂線な方向に沿って走査プローブセンサパッケージを取り付けるまたは取り外す工程と、少なくとも1つのスナップ接合要素を第2位置から第1位置へと移動させる工程と含む。少なくとも1つのスナップ接合要素を第1位置から第2位置へおよびその逆に移動させることは、とりわけ、本発明のマウントに対する上で説明したような作動要素の使用により達成可能である。センサパッケージは、マウント内で規定される平面に対して垂線な方向に沿ってマウントへ/から取り付けられるまたは取り外されるので、取り付け中の側方移動による微小な電気接点ピンなどのような損傷を受けやすい要素の損傷を回避できる。ゆえに、例えば電気接点用にセンサパッケージおよび/またはマウントの支持構造物においてピンを用いることが容易に可能となる。
【0025】
さらに、本発明の別の態様にしたがって、走査プローブセンサパッケージ用マウントであって、
支持構造物と、
支持構造物に位置し、かつ、走査プローブセンサパッケージにおけるそれぞれの対応物と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素であって、取り付けられた走査プローブセンサパッケージに力を印加して、支持構造物へ向かって前記走査プローブセンサパッケージを押しやる第1位置へ、および、走査プローブセンサパッケージを支持構造物に取り付けるか、または、支持構造物から取り外せるようにする第2位置へと可動なスナップ接合要素と、
支持構造物に対して可動であり、かつ、支持構造物に対して移動させることを通じて少なくとも1つのスナップ接合要素を第1位置から第2位置へまたはその逆に動かすように少なくとも1つのスナップ接合要素に作用する作動要素と、
作動要素と支持構造物との相対移動を行うことができるように支持構造物または作動要素と接続されている作動モータと
を含む、マウントを提供する。
【0026】
そのようなマウントはまた、探索される試料に対して支持構造物を位置決めするための位置決めモータと、試料からの支持構造物の最大距離を規定する停止位置と、を含んでもよい。このマウントでは、少なくとも1つの可動なスナップ接合要素が、支持構造物に位置しており、かつ、作動モータが、位置決めモータにより与えられている。作動要素は、支持構造物が停止位置に達すると、少なくとも1つのスナップ接合要素を第2位置へ動かすために少なくとも1つのスナップ接合要素に作用するよう配置されている。
【0027】
そのうえ、マウントに対して走査プローブセンサパッケージを取り付けるまたは取り外すさらなる方法を提供し、ここで、マウントは、支持構造物と、走査プローブセンサパッケージにおけるそれぞれの対応物と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素と、支持構造物に対して可動であり、かつ、少なくとも1つのスナップ接合要素に作用する作動要素と、探索される試料に対して支持構造物を位置決めするための位置決めモータとを含む。該方法は、
・少なくとも1つのスナップ接合要素を、取り付けられた走査プローブセンサパッケージに力を印加して、支持構造物へ向かって前記走査プローブセンサパッケージを押しやる第1位置から走査プローブセンサパッケージを支持構造物に取り付けるか、または、支持構造物から取り外せるようにする第2位置へと移動させる工程と、
・走査プローブセンサパッケージを取り付けるまたは取り外す工程と、
・少なくとも1つのスナップ接合要素を第2位置から第1位置へと移動させる工程と
を含み、
少なくとも1つのスナップ接合要素を第1位置から第2位置へと移動させることが、支持構造物に対して前記作動要素を移動させることを通じて少なくとも1つのスナップ接合要素に作用することにより行われ、かつ、
支持構造物に対して前記作動要素を移動させることが、前記位置決めモータにより支持構造物を所与の停止位置へと移動させることにより行われる。
【0028】
本発明のさらなる特徴、特性および利点は、添付の図面とともに実施形態の以下の説明から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明のマウントおよび本発明の走査プローブセンサパッケージの第1の実施形態を示した分解図である。
【図2】図2は、センサパッケージをマウントに取り付ける前の図1のマウントおよびセンサパッケージを示した斜視図である。
【図3】図3は、センサパッケージをマウントに取り付けた状態の図1のマウントおよびセンサパッケージを示した斜視図である。
【図4】図4は、センサパッケージをマウントに取り付けた状態の図1のマウントおよびセンサパッケージを示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の走査プローブセンサパッケージを本発明のマウントに取り付ける前のマウントおよびセンサパッケージの第2の実施形態を示した斜視図である。
【図6】図6は、センサパッケージをマウントに取り付けた状態の第2の実施形態を示した斜視図である。
【図7】図7は、本発明の走査プローブセンサパッケージを本発明のマウントに取り付けた状態のマウントおよびセンサパッケージの第3の実施形態を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施形態に係るマウントを示した断面図である。
【図9】図9は、スナップ接合要素が第1位置にある状態の図8のマウントを示した上面図である。
【図10】図10は、スナップ接合要素が第2位置にある状態の図8のマウントを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のマウントおよび本発明の走査プローブセンサパッケージの第1の実施形態を図1から図4に関して説明する。図1は、マウントおよびセンサパッケージの構成要素を分解斜視図で示す一方、図2および図3はそれぞれ、取り外した状態および取り付けた状態のマウントおよびセンサパッケージを示す。図4は、センサパッケージを取り付けた状態のマウントおよびセンサパッケージを断面図で示す。
【0031】
本発明のマウントは、支持板1の形態の支持構造物を含み、ここに、支持板表面の垂線方向に延在する電気接点ピン2が位置している。さらに、例えばサファイアボールであってもよい3つのボール5が、概念上の二等辺三角形の頂点において支持板1に組み込まれている。3つのボール5は、マウント内のある平面を規定し、該表面に対して、走査プローブセンサパッケージがマウントに取り付けられる際にパッケージが方向付けられる。3つのボール5は、いわゆる「運動学的マウント」の第1部分を形成する。ボール5が支持板1を超えて突出している量とピン2が支持板1を超えて突出している量とは、ピン2のより直径の小さいセクション3が走査プローブセンサパッケージの取り付け時にパッケージの接点開口に挿入されるように互いに適合されている。
【0032】
3つのスナップ接合要素7は、支持板1の縁の周囲に均等に分布している。各スナップ接合要素7は、一対の脚部11を形成する2つの弾性湾曲可能な金属帯状片の自由端により支持されている円筒部9により形成されており、円筒部9の対称軸は、3つのボール5により規定される平面に対して垂線な方向に対して垂直に方向付けられている。円筒部9は、回転軸が円筒部9の対称軸である状態で回転可能に支持されていることが好ましい。金属帯状片の他端は、支持板1に固定されているか、または、支持板1に対して静止するように少なくとも固定されている。各対の脚部11は、弾性湾曲可能なレバー要素を形成しており、該要素の自由端にスナップ接合要素、すなわち、本実施形態における円筒部9が位置している。脚部11は、その自由端が支持板1の中心へ向かって付勢されるように湾曲しており、かつ、金属帯状片の弾性材料により与えられるばね力に反して中心から離間する方向に弾性湾曲可能である。
【0033】
本発明のマウントにおいて、支持板1とスナップ接合要素7とはともに、3つのボール5により規定される平面に対して垂線な方向に沿って走査プローブセンサパッケージを収容するためのレセプタクルを形成している。
【0034】
マウントは、挿入開口を有する環状壁要素13をさらに含み、該開口を通して、走査プローブセンサパッケージが挿入可能である。3つの突起17は、環状壁要素13の内側壁表面18から放射状内向きに延在している。3つの突起17は、支持板1の縁の周囲におけるスナップ接合要素7の分布と対応するように環状壁要素13の周囲にわたって均等に分布している。さらに、突起17には切り欠き19が存在している。これらの切り欠き19は、突起17の放射状内側部分が、放射状外向きを示す傾斜表面21を有するくぎ状物20を形成するように、突起17の挿入開口側から突起内へ延在している。くぎ状物20の傾斜表面21は、後に説明するようにスナップ接合要素の円筒部9に対する誘導要素を形成する。
【0035】
環状壁要素13は、マウントの基板1を取り囲み、かつ、ボール5により規定される平面に対して垂線な方向に相当する軸方向に沿って摺動可能に取り付けられている。基板1のスロット23は、突起17を収容するためにスナップ接合要素7の位置において基板の縁から放射状内向きに延在する。そのうえ、2本の脚部11間の各々には隙間が存在し、これにより、スナップ接合要素7の弾性湾曲可能なレバー要素を形成している。これらの隙間25は、突起17が隙間25を介してスロット23と係合可能なように、スロット23と位置合わせされている。
【0036】
摺動可能に取り付けられた環状壁要素13は、誘導表面21がスナップ接合要素7の円筒部9と係合しない第1位置へ、および、円筒部9が誘導表面21により係合される第2位置へ移動可能である。係合している場合、スナップ接合要素7は、脚部11によりもたらされるばね力に反して放射状外向きに拡大され、ここで、拡大量は、環状壁要素13の軸方向移動位置によって異なる。ゆえに、環状壁要素13は、傾斜表面21を介してスナップ接合要素7に作用することにより、該要素を、拡大していない第1位置から環状壁要素13の軸方向位置により規定される量だけ傾斜表面21により拡大される第2位置へと移動させることができる作動要素を形成する。内側壁要素13に形成されている凹部24は、スナップ接合要素7の拡大状態における円筒部9および脚部11の一部を収容することができるようにする。
【0037】
また、図1には、これまで説明してきたマウントにちょうど収まる走査プローブセンサパッケージ27が示されている。センサパッケージ27は、センサパッケージの基板31上に取り付けられ、かつ、保護カバー33に取り囲まれている(図1では見えない)センサ要素29を含む。センサ要素29は、基板31とは反対側に位置するカバーの孔35を通って保護カバー33から外へ延在する原子的に鋭い先端を含む。センサ要素29の電気回路37は、基板上に印刷され、かつ、センサパッケージ27がマウントに取り付けられている際にピン3により接触される接点要素39を含む。
【0038】
マウントに対する基板31の、よって、センサ要素29の規定された向きを達成するために、3つの長尺の孔41が設けられる。これらの孔41は、支持板1のボール5がその頂点に位置している二等辺三角形と一致する概念上の二等辺三角形の頂点に位置している。3つのボール5と長尺の孔41とはともに、3つのボールと3つの長尺の孔41の側壁との間の6つの接点によりセンサパッケージ27の向きが規定されている運動学的マウントを形成する(各孔は、孔に挿入されているそれぞれのボールとの2つの接点を提供する)。とりわけ、センサパッケージ27がマウントに取り付けられている際、その基板31は、3つのボール5により規定される平面と平行に実質的に方向付けられている。しかしながら、意図的に、または、例えば、運動学的マウントを構成している要素における許容誤差に起因する偶然により、ボール5により規定される平面と基板31が延在する平面との間に小さい角度がついている可能性がある。
【0039】
センサパッケージ27の基板31は、板の縁にわたって均等に分布した3つの直線セクション43を有する概ね円形の形状を有する。センサパッケージ27を環状壁要素13へ挿入することにより、該パッケージ27をマウントに取り付けることができるように、環状壁要素の突起17が基板31と干渉可能となるような寸法を有するスロット45が、各直線セクション43の中央から放射状内向きに延在している。
【0040】
損傷を受けやすい部品に触れることのないセンサパッケージ27の取り扱いを可能とするために、ハンドル47が基板31から延在している。環状壁要素13へのセンサパッケージ27の挿入を妨げないために、センサパッケージ27がマウントに取り付けられる際にハンドル47を収容する切り欠き壁セクション49が内部に存在する。
【0041】
図2は、走査プローブセンサパッケージ27をマウントに取り付ける前の該パッケージを示す。環状壁要素13は、スナップ接合要素7を、取り付けられたセンサパッケージの基板31と重複するであろう第1位置からセンサパッケージ27の基板31をスナップ接合要素7に接触することなくマウントに取り付け可能とするであろう第2の拡大位置へと移動させるための作動要素を形成する。図2に示されている第1位置からスナップ接合要素7が拡大している第2位置へとスナップ接合要素7を動かすことは、図2における摺動可能に取り付けられた環状壁要素13を3つのボール5により規定される平面に対して垂線な方向と一致する矢印Aの方向に上向きに移動させることにより達成できる。ゆえに、マウントに走査プローブセンサパッケージ27を取り付けるためには、環状壁要素13は、脚部11の弾性材料によりもたらされるばね力に反してスナップ接合要素7を拡大させるように方向Aに上向きに移動させるべきである。円筒部9が脚部11により回転可能に支持されているとき、傾斜表面21が円筒部9と係合する際に摩擦抵抗ではなくむしろ転がり抵抗のみを克服すればよい。
【0042】
スナップ接合要素7が拡大位置にあるとき、センサパッケージ27は、ボール5がセンサパッケージ27の基板31における長尺の孔41の縁と接触するまで、図2における矢印Bにより示す方向に沿って下方へ移動可能である。支持板1におけるボール5と基板31における長尺の孔41とにより形成される運動学的マウントにより、明確な方向付けが達成されるので、取り付けられたセンサパッケージ27は、接点ピン3が基板31の接点要素39と係合するのにふさわしい向きにある(ただし、接点要素は図1においてのみ見えている)。
【0043】
センサパッケージ27がマウントの基板1上に載ると、環状壁要素13を再度後退させ、これにより、脚部11によりもたらされるばね力によりスナップ接合要素7の円筒部9が第1位置へ戻る。第1位置にある円筒部9の支持板1からの距離は、センサパッケージ27の基板31の厚みを基準に、円筒部9が、センサパッケージの取り付け方向に対して平行な成分Fpおよび半径方向成分Frを有する力Fを基板31に印加するよう選択される(図4参照)。半径方向成分は、スナップ接合機構の対称性により合計してゼロとなる一方で、軸方向成分は、合計して、マウントにセンサパッケージ27を固定するように支持板1へ向かってセンサパッケージ27を有する基板31を押しやる合成力となる。走査プローブセンサパッケージが取り付けられたマウントは、図3において斜視図で、図4において断面図で示されている。
【0044】
マウントからセンサパッケージ27を取り外すために、スナップ接合要素7と接触することなくマウントからセンサパッケージ27を取り外すことができる第2位置へスナップ接合要素7の円筒部9を動かすように、環状壁要素13を図2における方向Aに沿って再度移動させる。
【0045】
環状壁要素13の移動は、手動で、または、環状壁要素13に作用して摺動移動をさせるアクチュエータにより、例えば、環状壁要素13の正確な位置決めを可能とする圧電モータにより行ってもよい。
【0046】
環状壁要素13は、図1から図4に関して説明した実施形態では摺動可能に取り付けられているが、固定位置に取り付けることもできる。典型的には、走査プローブの適用例は、x、yおよびz方向において探査される試料に対してセンサパッケージ27が取り付けられた支持板1を位置決めするためのアクチュエータ機構51を含む。このようなアクチュエータは、例えば、圧電モータ51a、51b、51cとして実施されてもよい。ゆえに、この目的のために特別に設けられたアクチュエータを必要とせずに、このアクチュエータ機構51により環状壁要素13と支持板1との相対移動をもたらすことができる。特に、環状壁要素13と支持板1との相対移動は、支持板1をz方向に移動させる役割を果たすアクチュエータによりもたらされるだろう。環状壁要素13は、例えば、支持板1やこれに固定された構成部品以外の走査プローブの適用例の何らかの構成部品に固定することにより、空間に固定することができる。
【0047】
その後、第1位置からセンサパッケージ27の取り付けまたは取り外しのための第2の拡大位置へのスナップ接合要素9の移動は、支持板1をz方向に移動させる役割を果たすアクチュエータを使用して、環状壁要素13に対して支持構造物1を移動させることにより行うことができる。探索される試料に対するセンサの位置決め移動中、マウントからセンサパッケージが脱落するのを防ぐために、例えば、支持板1をz方向に移動させる役割を果たすアクチュエータにより達成可能な試料からの最大距離と類似した停止位置を設けることができる。こうして、環状壁要素13は、支持構造物1が停止位置に達する寸前にのみスナップ接合要素9の拡大が引き起こされるように位置させることができる。
【0048】
図5および図6において、マウントおよび走査プローブセンサパッケージの第2の実施形態を示す。図5は、マウントから取り外されたセンサパッケージを示す一方、図6は、取り付けられた状態のセンサパッケージを示す。第2の実施形態は、第1の実施形態を修正したものである。したがって、第1の実施形態において対応する特徴を有する特徴は、第1の実施形態の参照番号に100を加えたもので表示し、第1の実施形態から大幅に異なる場合にのみ再度説明する。
【0049】
第1の実施形態と第2の実施形態との主な相違点は、走査プローブ顕微鏡センサパッケージ127自身が、スナップ接合要素107を第2の拡大位置へ移動させるための作動要素として用いられるということである。第1の実施形態においてスナップ接合要素と係合する突起17の誘導表面21のような誘導表面は必要でないので、第2の実施形態では、脚部は、単一片の弾性材料111から作成可能である。
【0050】
第1の実施形態に対する別の相違点は、円筒部ではなくボール109がマウントのスナップ接合要素として用いられるということである。ただし、ボールと円筒部とは、両実施形態において交換可能である。円筒部と同様に、ボールは、走査プローブセンサパッケージ127の取り付けまたは取り外し方向に垂直な回転軸の回りで回転可能に支持され得る。
【0051】
さらなる相違点は、マウントの帯状接点要素103によりもたらされるセンサとの接触の態様である。ただし、ピンと帯状片とは、説明されている実施形態を通じて概して交換可能である。
【0052】
またさらなる相違点は、基板131の直径が、第1の実施形態の基板直径に対して短くなっていることである。その結果、運動学的マウントのセンサ部分は、長尺の孔によってではなく基板131の縁から放射状内向きに延在するスロット141の形態で実施される。スロット141の放射状外向きセクション143もまた、基板131のスナップ接合セクションとして機能する。
【0053】
図1から図4に示した第1の実施形態に対する図5および図6に示す第2の実施形態の利点は、スナップ接合要素107が走査プローブセンサパッケージ127自身により拡大されるので、マウントは、第1の実施形態の環状壁要素13のような作動要素を有する必要がないということである。ゆえに、マウントを非常に小さく保つことができ、このことにより、マウントの位置における空間的制約を有する走査プローブ顕微鏡にとって該マウントがふさわしくなる。ただし、センサパッケージ127が損傷を受けやすい場合は、スナップ接合要素と接触することなくセンサパッケージを取り付けることができるので第2の実施形態より第1の実施形態の方が有利である。
【0054】
第1の実施形態および第2の実施形態に対する修正は、可能である。例えば、スナップ接合要素を支持板の中央へ向かって付勢するばね力をもたらすための湾曲した弾性脚部を用いる代わりに、例えば、円筒部9と環状壁要素13の内側表面との間に位置する直線コイルばねを用いて、円筒部をマウントの中央へ向かって付勢することも可能である。
【0055】
さらに、マウントのスナップ接合要素およびセンサパッケージ基板のスナップ接合セクションの数は、3つには制限されない。しかしながら、3つのスナップ接合要素を用いることにより、ほんの数個のスナップ接合要素によってセンサパッケージ基板を支持板へ向かって付勢する均等に分布した力を提供することができるという利点がもたらされる。支持板の反対側端に配置された2つのスナップ接合要素しか用いなければ、センサパッケージの傾きを完全に排除することはできない。ただし、スナップ接合要素が支持板の周囲の大部分にわたって延在している場合、2つのスナップ接合要素やさらには1つのスナップ接合要素でも十分な可能性もある。
【0056】
次に、図7に関して本発明のマウントの第3の実施形態を説明する。本実施形態において、スナップ接合要素は、走査プローブセンサパッケージの基板のマウントへの取り付けまたはマウントからの取り外し時に、該基板により圧縮可能な環状コイルばねにより形成されている。
【0057】
第3の実施形態のマウントは、基板101から延在し、かつ、これを取り囲む多少の円筒壁202を含む。環状凹部204は、円筒壁の内側表面にわたって延在している。該凹部204は、環状コイルばね206のための座部として機能し、該ばね206の放射状内側部分は、凹部204を超えて突出している。環状コイルばね206のコイルの放射状内側セクションは、本実施形態のスナップ接合要素207として機能する。
【0058】
図7に示す実施形態の走査プローブセンサパッケージは、図5および図6に関して説明した第2の実施形態のセンサパッケージに相当する。したがって、第2の実施形態のセンサパッケージと同じ参照番号で表示し、かつ、反復を避けるために再度説明はしない。
【0059】
走査プローブセンサパッケージ127が、第3の実施形態のマウントに取り付けられるか、または、取り外されるとき、その支持板131は、コイルばねの最外部分208を押圧することにより、コイルを半径方向に圧縮する。基板131がコイルばね206を押圧した後、コイルは、その元の位置に即座に戻る。基板131の厚みは、ボール205およびセンサパッケージ127の基板131のスロット141の寸法を基準に、コイルばね206のコイルが、ボール205により規定される表面の垂線方向と平行な成分を有するばね力の基板131への提供を通じてボール205へ向かってセンサパッケージ127を付勢することによりセンサパッケージ127を所定位置に留めるよう選択される。
【0060】
図7に示した実施形態の修正は、可能である。例えば、基板の縁の上側および/または下側は、コイルばね206と基板131との間の力の移送を最適化するために傾斜していてもよい。なお、傾斜した縁は、力の移送を最適化するために本発明のその他すべての実施形態においてもまた有利であるかもしれない。これに加えて、その他の実施形態と同様に、基板131またはカバー133にハンドルを備え付けることもできる。
【0061】
さらに、センサパッケージ127の取り付けまたは取り外しの際に、環状コイルばねを拡大させるために作動要素が存在していることもありうる。そのような作動要素の一例を、マウントの第4の実施形態として図8から図10に示す。これらの図において、第3の実施形態のセンサパッケージとは相違しない走査プローブセンサパッケージは、図を可能な限り単純に保つために示していない。そのうえ、図8ではコイルばねを示していない。図8は、マウントを断面図で示している一方、図9および図10は、マウントを上面図で示している。
【0062】
第3の実施形態のマウントと対照的に、第4の実施形態のマウントは、支持板301に摺動可能に取り付けられた3つの独立した壁セクション302A、302Bおよび302Cから構成される円筒壁302を含む。これらの壁セクションは、図9に示す第1の内側位置から図10に示す第2の外側位置へと半径方向に摺動可能である。(図9および図10にのみ示す)コイルばね306は、壁セクション302A、302B、302Cが第1位置にある際に、取り付けられた走査プローブセンサパッケージをボール305へ向かって付勢する一方、センサパッケージは、環状コイルばね306の放射状外側部分が固定されている壁セクション302A、302B、302Cが、環状コイルばね306が拡大している第2位置にある際に、環状コイルばね306に接触することなく取り付けまたは取り外し可能である。そのうえ、コイルばね306は、壁セクション302A、302B、302Cを(図9に示す)第1位置へ向かって付勢し、かつ、壁セクションを(図10に示す)第2位置へ拡大するために打ち勝たねばならないばね力を提供する。
【0063】
壁セクション302A、302B、302Cを拡大位置へ動かすことは、円錐形外側表面321を有するリング313を作動させることにより達成できる。リング313は、支持板301から該板の取り付け側とは反対方向に延在している誘導棒315に摺動可能に取り付けられている。誘導棒315を取り囲んでいる壁セクション302A、302B、302Cの面311A、311B、311Cは、漏斗形開口を形成し、該開口を通じて誘導棒315が延在している。図8に示すように壁セクション302A、302B、302Cが第1位置にあるとき、リング313の円錐形外側表面321のセクションの大部分は、漏斗形開口より直径が大きい。
【0064】
作動リング313が図8における矢印Aに沿って移動される際、リング313の円錐形外側表面321は、壁セクション302A、302B、302Cの漏斗形表面セクション312A、312B、312Cと相互作用し、これにより、環状コイルばね306により提供されるばね力に反して誘導棒315から離間した方向に壁セクションを押圧することにより、ばねを拡大させる。
【0065】
第4の実施形態の壁セクション302A、302B、302Cは、支持板301に摺動可能に取り付けられているが、各壁セクション302が、支持板301の縁または支持板301の下方に位置し、かつ、ボール305により規定される平面に対して垂線な方向に垂直に伸びる傾き軸の回りで傾けられるように取り付けられても差し支えない。なお、この場合、壁セクションを傾けられるようにそれに応じて実際のリングを適合させる必要がある。
【0066】
なお、第1の実施形態と同様に、リング313の摺動は、アクチュエータにより、例えば圧電モータによりもたらすことができる。そのうえ、リング313を摺動可能に取り付ける代わりに、リング313を固定位置に、例えば、支持板301やこれに固定されている構成部品以外の走査プローブの適用例の何らかの構成部品に固定することにより取り付けることができる。第1の実施形態における環状壁要素13と支持板1との相対移動と同様に、リング313と支持板301との相対移動は、取り付けられたセンサを有するマウントを位置決めするためのアクチュエータ機構によりこうしてもたらすことができる。第1の実施形態についてこれに関連して言及した事項は、本実施形態にも適用可能である。
【0067】
特定の実施形態を示すことにより図に関して説明した本発明により、支持構造物により規定される平面に対して垂線な方向に沿って走査プローブセンサパッケージが取り付けおよび取り外し可能となる。平面の支持構造物の場合、該平面は、とりわけ、表面支持構造物であっても差し支えない。本発明のマウントおよび走査プローブセンサパッケージの設計により、とりわけ、側方移動によるピンの損傷の危険性なしに支持構造物とセンサパッケージとの間の電気接点を提供するためのピンを用いることができるようになる。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、かつ、構造的変更を行ってもよいことは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
1 支持板
2 ピン
3 ピンのより小さいセクション
4 走査プローブセンサパッケージ
5 ボール
7 スナップ接合要素
9 円筒部
11 脚部
13 環状壁要素
15 挿入開口
17 突起
18 内側壁表面
19 切り欠き
20 くぎ状物
21 誘導表面
23 スロット
25 隙間
27 センサパッケージ
29 センサ要素
31 基板
33 保護覆い
35 孔
37 電気回路
39 孔
41 長尺の孔
43 直線セクション
45 スロット
47 ハンドル
49 切り欠き壁セクション
51 アクチュエータ機構
101 支持板
103 接点
105 ボール
107 スナップ接合要素
109 ボール
111 脚部
127 センサパッケージ
133 保護カバー
135 孔
141 スロット
143 放射状外側セクション
201 支持板
202 円筒壁
204 環状凹部
205 ボール
206 コイルばね
207 スナップ接合要素
208 放射状内側セクション
301 支持板
302 壁セクション
304 環状凹部
305 ボール
306 コイルばね
311 面
313 作動リング
315 誘導棒
321 円錐形外側表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査プローブセンサパッケージ(27、127)用マウントであって、
マウント内の平面を規定する支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)と、
走査プローブセンサパッケージ(27、127)におけるそれぞれの対応物(43、143)と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素(9、109、208)であって、取り付けられた走査プローブセンサパッケージ(27、127)に力を印加することにより、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)へ向かって前記平面に対して垂線な方向に前記走査プローブセンサパッケージ(27、127)を押しやる第1位置へ、および、走査プローブセンサパッケージ(27、127)を前記平面に対して垂線な方向に沿って支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に取り付けるか、または、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)から取り外せるようにする第2位置へと可動なスナップ接合要素(9、109、208)と
を含む、マウント。
【請求項2】
スナップ接合要素(9、109)が、ばね力により前記支持構造物(1、5、101、105)の中心へ向かって付勢されている可動要素(11、111)に位置している、
請求項1に記載のマウント。
【請求項3】
前記可動要素が、支持構造物(1、5、101、105)に対して自身の位置に固定されている静止セクションと、スナップ接合要素(9、109)が位置している自由端セクションとを有する弾性湾曲可能なレバー要素(11、111)を含み、
前記弾性湾曲可能なレバー要素(11、111)が、前記平面に対して垂線な方向に実質的に平行に延在しており、かつ、スナップ接合要素(9、109)を有する自由端セクションを支持構造物(1、5、101、105)の中心へ向かって付勢するように形作られている、
請求項2に記載のマウント。
【請求項4】
弾性湾曲可能な要素(11、111)の静止セクションが、支持構造物(1、5、101、105)に固定されている、請求項3に記載のマウント。
【請求項5】
スナップ接合要素(9、109)が、対称軸の回りの回転対称性を示し、かつ、その対称軸が回転軸である状態、および、その対称軸がマウント内で規定される前記平面に対して垂線な方向に対して垂直に方向付けられている状態で、回転可能に取り付けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のマウント。
【請求項6】
支持構造物(1、5、101、105)の縁の周りに均等に分布している少なくとも3つの可動なスナップ接合要素(9、109)を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のマウント。
【請求項7】
支持構造物(201、205、301、305)を取り囲むように支持構造物(201、205、301、305)の周辺部に位置する少なくとも1つの環状コイルばね(206)を含み、支持構造物(201、205、301、305)の中心へ向かって現れるコイル(206)の該当セクション(208)がスナップ接合要素を形成している、請求項1に記載のマウント。
【請求項8】
作動要素(13、313)を作動させることによりスナップ接合要素(9、208)を第1位置から第2位置へおよびその逆に移動させるように、少なくとも1つのスナップ接合要素(9、208)に作用するよう配置された作動要素(13、313)をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のマウント。
【請求項9】
センサ要素(29)とセンサ要素(29)が固定された基部(31、131)とを含む走査プローブセンサパッケージ(27、127)であって、基部が、請求項1から11のいずれか1項に記載のマウントのスナップ接合要素(9、109)と相互作用するように設計されており、かつ、スナップ接合要素(9、109)が第2位置にあるときはマウント内で規定される前記平面に対して垂線な方向に沿って少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109)を通過できるが、スナップ接合要素(9、109)が第1位置にあるときは前記垂線方向に沿って少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109)を通過できないように、さらには、スナップ接合セクション(43、143)がスナップ接合要素を前記平面へ向かって通過したときに、スナップ接合要素(9、109)がマウントの垂線方向においてマウント内で規定される前記平面へ向かって力を印加できるように選択される寸法を有している少なくとも1つのスナップ接合セクション(43、143)を含む、走査プローブセンサパッケージ(27、127)。
【請求項10】
基部(31)から延在しているハンドルセクション(47)をさらに含む、請求項9に記載の走査プローブセンサパッケージ(27)。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマウントを含む、走査プローブ顕微鏡。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマウントへ/から請求項9または10に記載の走査プローブセンサパッケージ(27、127)を取り付けるまたは取り外す方法であって、
少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第1位置から第2位置へと移動させることと、
マウント内で規定される前記平面に対して垂線な方向に沿って走査プローブセンサパッケージ(27、127)を取り付けるまたは取り外すことと、
少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第2位置から第1位置へと移動させることと
を含む方法。
【請求項13】
とりわけ請求項1から8のいずれか1項に記載の走査プローブセンサパッケージ(27、127)用マウントであって、
支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)と、
支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に位置し、かつ、走査プローブセンサパッケージ(27、127)におけるそれぞれの対応物(43、143)と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素(9、109、208)であって、取り付けられた走査プローブセンサパッケージ(27、127)に力を印加することにより、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)へ向かって前記走査プローブセンサパッケージ(27、127)を押しやる第1位置へ、および、走査プローブセンサパッケージ(27、127)を支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に取り付けるか、または、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)から取り外せるようにする第2位置へと移動可能なスナップ接合要素(9、109、208)と、
支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に対して可動であり、かつ、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に対して移動させることを通じて少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第1位置から第2位置へまたはその逆に動かすように少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、、208)に作用する作動要素(13、313)と、
作動要素(13、313)と支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)との相対移動を可能にするように支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)または作動要素(13、313)と接続されている作動モータと
を含む、マウント。
【請求項14】
探索される試料に対して支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)を位置決めするための位置決めモータと、
試料からの支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)の最大距離を規定する停止位置と、
を含み、
少なくとも1つの可動なスナップ接合要素(9、109、、208)が支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に位置しており、
作動モータが位置決めモータにより与えられており、かつ、
作動要素(13、313)が、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)が停止位置に達すると、少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第2位置へ動かすために少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)に作用するよう配置されている、請求項13に記載のマウント。
【請求項15】
マウントに対して走査プローブセンサパッケージ(27、127)を取り付けるまたは取り外す方法であって、マウントが、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)と、走査プローブセンサパッケージ(27、127)におけるそれぞれの対応物(43、143)と相互作用するよう設計されている少なくとも1つの可動なスナップ接合要素(9、109、208)と、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に対して可動であり、かつ、少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)に作用する作動要素(13、313)と、探索される試料に対して支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)を位置決めするための位置決めモータとを含み、
前記方法が、
取り付けられた走査プローブセンサパッケージ(27、127)に力を印加することにより、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)へ向かって前記走査プローブセンサパッケージ(27、127)を押しやる第1位置から、走査プローブセンサパッケージ(27、127)を支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に取り付けるか、または、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)から取り外すことができるようにする第2位置へと、少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を移動させる工程と、
走査プローブセンサパッケージ(27、127)を取り付けるまたは取り外す工程と、
少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第2位置から第1位置へ移動させる工程と
を含み、
少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)を第1位置から第2位置へと移動させる工程が、支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に対して前記作動要素(13、313)を移動させることを通じて少なくとも1つのスナップ接合要素(9、109、208)に作用することにより行われ、かつ、
支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)に対して前記作動要素(13、313)を移動させることが、前記位置決めモータにより支持構造物(1、5、101、105、201、205、301、305)を所与の停止位置へと移動させることにより行われる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−507627(P2013−507627A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533570(P2012−533570)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064832
【国際公開番号】WO2011/045208
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512028770)スペックス サーフェス ナノ アナリシス ゲーエムベーハー (2)