説明

走行クレーンの操作制御装置

【課題】手元を注視することなく、片手で素早く的確に操作でき、且つ巻上下の無段速変速、微細な速度制御ができる走行クレーンの操作制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】取っ手部12を備えた操作筐体10を備え、該操作筐体10の取っ手を片手で把持し、該操作筐体10を所望の姿勢することにより、走行クレーンを走行横行させる水平移動モード、昇降させる昇降移動モードに設定し、操作筐体10に設けた操作部を把持する片手の指で操作することにより、操作筐体10の方向指示部材13の向く方向に、走行、横行、昇降させることができる走行クレーンの操作制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平面内の所定方向(例えば、東西方向)に敷設された走行レールと、該走行レールに直交する方向(例えば、南北方向)に配置され且つ走行モータにより、該走行レールに沿って移動する横行レール(ガータ)と、該横行レールに沿って横行する横行モータと荷を巻上下げするための昇降モータを具備する電動巻上機を備えた走行クレーンの操作制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、上記走行クレーンの外観概略構成例を示す図である。本走行クレーン100は、建物天井の水平面内の所定方向(例えば、東西方向)に敷設された走行レール101、101と、該走行レール101、101に直交する方向(例えば、南北方向)に配置され、ギヤードモータ(走行モータ)103により該走行レール101、101上を移動する横行レール(ガータ)102と、横行レール102に沿って横行する横行モータ104と荷巻上下するための昇降モータ105を備えた電動巻上機106を備えて構成されている。
【0003】
上記走行クレーン100において、電動巻上機106にはケーブル108等により操作筐体107が接続されている。この操作筐体107には、例えば「東」、「西」、「南」、「北」、「上」、「下」の各押釦スイッチが取り付けられている。この「東」、「西」、「南」、「北」の押釦スイッチを操作することにより、電動巻上機106は、走行レール101、101に沿って東西方向への走行、横行レール102に沿って南北方向へ横行するようになっている。また、「上」、「下」の押釦スイッチの操作により、荷吊下用フック109に吊り下げられた荷(図示せず)が昇降(巻上下げ)する。なお、図1(a)は走行クレーンの全体概略構成例を示す図であり、図1(b)は操作筐体107部分の拡大図である。
【0004】
上記構成の走行クレーンでは、荷吊下用フック109に吊下げた荷(搬送物)の移動する方向(走行、横行、巻上下げ方向)に対応する押釦スイッチを操作筐体107に取付けられた「東」、「西」、「南」、「北」、「上」、「下」の各押釦スイッチの中から探し出す必要がある。また、電動巻上機106を走行・横行両方向に運転する場合、同時に2つの押釦スイッチを押さなければならない。また、走行、横行、巻上下の微細な速度制御ができないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1に開示されている走行クレーンのように、作業者は手元を見なくともスイッチを押しつつ、フックに掛けられて移動する搬送物の移動方向を見ながら操作筐体の向きを調整して、所望の方向へ搬送物を平行移動させることができる走行クレーンがある。図2は、特許文献1に開示されている、走行クレーンの外観概略構成例を示す図である。本走行クレーン200は建物天井の水平面内の所定方向に敷設された走行レール201、201と、該走行レール201、201を車輪を介して走行する1対のサドル202、202間に横行レール(ガータ)203を配置し、該横行レール203を車輪を介して横行する電動巻上機204を備えた構成である。電動巻上機204により巻き上げる支持ワイヤーロープ205の先端には荷吊下用フック206を固定している。電動巻上機204からは、撓みはするが捩れない通信ケーブル207が床面近傍まで垂下している。該通信ケーブル207の下端には回転自在な回転接続部209を介して操作筐体210が接続されている。
【0006】
操作筐体210の正面には、2段押釦の操作スイッチ211が設けられ、上下に上昇(巻上げ)スイッチと下降(巻下)スイッチが設けられ、操作スイッチ211を押すとX軸モータ・Y軸モータが作動して、電動巻上機204が操作筐体210の向いている方向、即ち操作筐体210の正面と正反対の方向へ水平移動する。従って、作業者は手元を見なくともスイッチを押しつつ、荷吊下用フック206に掛けられて移動する搬送物の移動方向を見ながら操作筐体210の向きを調整して、所望の方向へ搬送物を平行移動させることができるというものである。
【特許文献1】特開2007−39232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示す従来の走行クレーンでは、電動巻上機204の水平方向の移動(走行・横行)と昇降(巻上・巻下)がそれぞれ違う押釦スイッチで行う場合、それぞれの押釦スイッチによる操作のため、両手操作が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、手元を注視することなく、片手で素早く的確に操作でき、且つ巻上下の無段速変速、微細な速度制御ができる走行クレーンの操作制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、水平面内の所定方向に敷設された走行レールと、該走行レールに直交する方向に配置され且つ走行モータにより、該走行レールに沿って移動する横行レールと、該横行レールに沿って移動するための横行モータ及び荷を巻上下する昇降モータとを具備する電動巻上機を備えた走行クレーンの操作制御装置であって、取っ手部を備えた操作筐体と、操作筐体の傾き角度を検出して該操作筐体の姿勢を検出する操作筐体傾き検出手段と、操作筐体が水平面内で向く方向を検出する操作筐体方向検出手段と、走行モータへの走行指令信号及び走行速度指令信号と横行モータへの横行指令信号及び横行速度指令信号と昇降モータへの昇降指令信号と昇降速度指令信号とを生成する指令信号生成手段とを備え、操作部は少なくとも指令信号生成手段に動作決定信号を出力する動作決定手段と、速度を指示する速度指示信号を出力する速度設定手段とを備え、指令信号生成手段は、走行指令信号及び横行指令信号を出力する水平移動モードと、昇降指令信号を出力する昇降移動モードを有し、操作筐体傾き検出手段で算出した操作筐体の姿勢によって、水平移動モードと昇降移動モードの2つのモードから予め定められた移動モードを選択すると共に、操作筐体の姿勢から前記水平モードと判断したときには、動作決定手段からの動作検定信号があることを条件に、速度設定手段からの速度指令信号、操作筐体方向検出手段からの検出信号により、走行指令信号及び走行速度指令信号、横行指令信号及び横行速度指令信号を生成し、更に操作筐体の姿勢から昇降移動モードと判断したときには、動作決定手段からの動作決定信号があることを条件に、速度設定手段からの速度指示信号、操作筐体傾き検出手段からの傾き角度検出信号により、昇降指令信号及び昇降速度指令信号を生成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、指令信号生成手段は、水平移動モードと判断したときには、垂直面内における操作筐体の前後の傾き角度によって、動作決定信号があることを条件に、上向き角度の時には上昇、下向き角度の時には下降する昇降指令信号を出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作筐体傾き手段は、操作筐体の姿勢が垂直と判断したときには水平移動モードとし、操作筐体の姿勢が水平と判断したときには昇降移動モードとすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作筐体傾き手段は、操作筐体の姿勢が水平と判断したときには水平移動モードとし、操作筐体の姿勢が垂直と判断したときには昇降移動モードとすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作部の動作決定手段と速度設定手段は一体に構成され、操作量に応じて速度指示信号を出力する無段速度設定手段であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、一体に構成された動作決定手段と速度設定手段は、押圧操作により動作決定信号を出力し、押し込み量に応じて速度指示信号を出力する押釦スイッチ、又はフックのスライド動作により動作決定信号を出力し、スライド量に応じて速度指示信号を出力するスライド無段速スイッチであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作筐体は、筒状の取っ手部と、方向指示部材とを備え、該方向指示部材を前記取っ手部に前方を向くように取り付けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作筐体は、筒状の取っ手部と、方向指示部材とを備え、該方向指示部材を取っ手部の両端に後方を向くように取り付けたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、動作決定手段と速度設定手段は、操作筐体の取っ手部に取り付けられており、走行クレーンの走行横行操作は、取っ手部を片手で握り、操作筐体を垂直状態に維持し方向指示部材を前方又は後方に向け動作決定手段及び速度設定手段を操作することにより行い、走行クレーンの昇降操作は、取っ手部を片手で握り、操作筐体を水平状態に維持し、方向指示部材を上方又は下方に向け、動作決定手段及び速度設定手段を操作することにより行なうことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記走行クレーンの操作制御装置において、操作筐体にリセット信号を出力するリセットスイッチを設け、操作装置制御回路部はリセット信号を受けて操作制御装置を初期状態にリセットするリセット機能を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下記のような優れた効果が得られる。
・手元を注視する必要なく、素早く、的確な走行クレーンの巻上下、走行・横行運転操作が可能となる。
・操作筐体の取っ手を手で握り、操作筐体を垂直又は水平にするだけで、簡単に走行・横行、昇・降の操作モードに切り替えることができる。
・走行クレーンの走行、横行、昇降運転を一つの動作決定無段速設定手段(例えば動作決定用押釦スイッチ)で実施できる。
・片手で走行クレーンの運転操作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明に係る操作制御装置を用いる走行クレーンの構成は図1及び図2に示す構成と同様であるのでその説明は省略する。
【0021】
〔実施形態例1〕
図3は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図である。図3(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、図3(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す図である。図示するように、操作筐体10は片手11で握ることができる筒状の取っ手部12を備え、該取っ手部12の両端に両端部が同一方向に屈曲した略C字状に形成された方向指示部材13の両端が取り付けられている。取っ手部12には、動作決定信号と無段速で走行、横行、上昇、下降の速度指令信号を出力する無段速押釦スイッチ14が取付けられている。また、方向指示部材13の表面にはリセット押釦スイッチ15、電源スイッチ16、方向指示用LED17が取り付けられている。なお、方向指示用LED17は方向指示部材13の側部にも取り付けられる。また、18は非常停止押釦スイッチである。上記無段速押釦スイッチ14、リセット押釦スイッチ15、電源スイッチ16、及び非常停止押釦スイッチ18は取っ手部12を握る片手11の指で操作できるように取っ手部12や方向指示部材13に配置され取り付けられている。
【0022】
また、図示は省略するが操作筐体10の取っ手部12又は方向指示部材13のその内部には、操作筐体10が図3(b)に示す水平状態から垂直面内で上下に傾く方向とその角度(方向指示部材13の先端部が上下に向く方向とその角度)を検出する操作筐体傾き検出手段(第1操作筐体傾き検出手段)としての加速度センサと、操作筐体10が図3(a)に示す垂直状態で水平面内で向く方向(方向指示部材13の先端部が水平面内で向く方向)を検出する操作筐体方向検出手段としてのジャイロセンサが取り付けられている。操作筐体10を垂直状態にして矢印Aに示すように水平面内で走行クレーンを走行させたい方向に方向指示部材13の先端部を向けることにより、走行・横行運転ができ、操作筐体10を水平状態にして矢印Bに示すように垂直面内でクレーンを昇降させたい方向に方向指示部材13の先端部を向けることにより、昇・降運転ができる。
【0023】
図4は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の全体システム構成を示すブロック図である。走行クレーンの操作制御装置は、操作装置制御回路部20と、モータ駆動制御回路部30とから構成されている。操作装置制御回路部20は、指令信号生成部21と通信部22を備えている。モータ駆動制御回路部30は、通信部31、制御部32、走行インバータ33、横行インバータ34、昇降インバータ35を備えている。上記操作装置制御回路部20の指令信号生成部21や通信部22を構成する電子部品や機器は操作筐体10内(取っ手部12の内部や表面及び方向指示部材13の内部や表面)に実装され、モータ駆動制御回路部30の通信部31や制御部32を構成する電子部品や機器は電動巻上機(図1の電動巻上機106、図2の電動巻上機204参照)に搭載配置される。
【0024】
操作装置制御回路部20の指令信号生成部21には、加速度センサ23で検出された操作筐体10の方向指示部材13の先端部が上向きであるか下向きであるかを示す傾き方向検出信号S23aとその傾き角度を示す傾き角度検出信号S23b、リセット押釦スイッチ15の押圧操作によるリセット信号S15、ジャイロセンサ24で検出された操作筐体10の方向指示部材13の先端部が水平面内で向く方向を検出した操作筐体方向検出信号S24、無段速押釦スイッチ14が押圧操作された場合の動作決定信号S14、押圧圧力に応じた無段速信号SV14、電源スイッチ16の押圧操作による電源投入信号S16、非常停止押釦スイッチ18の押圧操作による非常停止信号S18がそれぞれ入力されるようになっている。なお、無段速押釦スイッチ14は、上記のように押圧操作時の押圧力に応じた大きさの無段速信号SV14が出力できるように、例えば感圧ゴム(押圧力に応じて抵抗値が変化するゴム材)を用いた押釦スイッチとする。
【0025】
操作装置制御回路部20の指令信号生成部21は、加速度センサ23からの傾き方向検出信号S23aと傾き角度検出信号S23b、無段速押釦スイッチ14からの動作決定信号S14と無段速信号SV14、ジャイロセンサ24からの操作筐体方向検出信号S24を受けて、走行モータ41への走行指令信号と走行速度指令信号、横行モータ42への横行指令信号と横行速度指令信号、昇降モータ43の昇降指令信号と昇降速度指令信号を生成し、通信部22を介して、モータ駆動制御回路部30の通信部31に伝送する。通信部31は受信した各指令信号を制御部32に送り、制御部32は各指令信号に基づいて走行モータ41の起動信号と速度信号、横行モータ42の起動信号と速度信号、及び昇降モータ43の起動信号と速度信号を生成して、走行インバータ33、横行インバータ34、及び昇降インバータ35を起動し、運転する。
【0026】
これにより走行インバータ33、横行インバータ34、及び昇降インバータ35から、それぞれ走行モータ41、横行モータ42、及び昇降モータ43に電力が供給され、走行モータ41、横行モータ42、及び昇降モータ43が起動し走行クレーンの電動巻上機を操作筐体10の方向指示部材13の先端部が水平面内で向く方向に、設定された速度で走行・横行させることができると共に、昇降モータ43を操作筐体10の方向指示部材13が上下に傾く方向に設定された速度で昇降(巻上下)させることができる。即ち、操作筐体10を図3(b)に示す水平状態で方向指示部材13の先端部を垂直面内で上げ下げする操作と、図3(a)に示す垂直状態から方向指示部材13の先端部を水平面内で変位させる操作(旋回操作)と、無段速押釦スイッチ14の押圧操作のみで、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転を手元を注視する必要なく、素早く、的確に実行できる。
【0027】
以下、運転操作手順を詳細に説明する。加速度センサ23からの傾き方向検出信号S23aが操作筐体10の方向指示部材13の傾き方向を図5に示すように、上方で傾き角度が0°〜15°の場合を第1傾き範囲B1、傾き角度が15°〜60°の場合を第2傾き範囲B2、傾き角度が60°〜90°の場合を第3傾き範囲B3とし、傾き方向が下方で、傾き角度0°〜−15°の場合を第1傾き範囲B1、傾き角度が−15°〜−60°の場合を第2傾き範囲B2、傾き角度が−60°〜−90°の場合を第3傾き範囲B3とする。そして、指令信号生成部21は無段速押釦スイッチ14からの動作決定信号S14があることを条件として、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の傾き方向が上方か下方かにより、上記傾き範囲により走行クレーンを運転する指令信号を下記のように生成する。
【0028】
〔操作筐体の方向指示部材13の先端部が上向きに傾いている場合〕
・第1傾き範囲B1:第1傾き範囲B1では、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転は行わない。
【0029】
・第2傾き範囲B2:第2傾き範囲B2では、上昇運転のみを行う。即ち、加速度センサ23で検出した操作筐体10の方向指示部材13の先端部が指す上方向に昇降モータ43を運転するために上昇指令信号及び速度指令信号を生成し、この指令信号をモータ駆動制御回路部30に伝送し、上昇運転を行う。この時、上昇指令信号に対する速度信号は、無段速押釦スイッチ14からの無段速信号SV14に応じた上昇速度指令信号を生成する。
【0030】
・第3傾き範囲B3:第3傾き範囲B3では、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転は行わない。
【0031】
〔操作筐体の方向指示部材の先端部が下向きに傾いている場合〕
・第1傾き範囲B1:第1傾き範囲B1では、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転は行わない。
【0032】
・第2傾き範囲B2:第2傾き範囲B2では、走行クレーンの下降運転のみを行う。即ち、加速度センサ23で検出した操作筐体10の方向指示部材13の先端部が指す下方向に昇降モータ43を運転するために下降指令信号及び速度指令信号を生成し、この指令信号をモータ駆動制御回路部30に伝送し、下降運転を行う。この時、下降指令信号に対する下降速度信号は、無段速押釦スイッチ14からの無段速信号SV14に応じた下降速度指令信号を生成する。
【0033】
・第3傾き範囲B3:第3傾き範囲B3では、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転は行わない。
【0034】
上記のように操作筐体10の方向指示部材13の先端部の垂直面内の傾き範囲を第1乃至第3傾き範囲に区分し、第1傾き範囲B1では走行クレーンの走行・横行、及び昇降運転を不能とし、第2傾き範囲B2では昇降運転のみを可能とし、第3傾き範囲B3では走行、横行、及び昇降運転を不可能とすることにより、1個の操作筐体10の方向指示部材13の先端部の垂直面内での傾け操作(操作筐体方向指示部材13の先端部の垂直面内での向きを変える操作)と該操作筐体10の取っ手部12に取り付けた無段速押釦スイッチ14の押圧という簡単な操作、即ち手元を注視する必要のない片手11の操作で、素早く、的確に走行クレーンの上昇運転操作が可能となる。また、無段速押釦スイッチ14の押圧操作による無段速信号SV14により、無段速変速で昇降速度を制御するので、微細な速度制御が可能となる。
【0035】
また、ジャイロセンサ24により、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の水平面内で向く方向を検出して、走行、横行を制御するので、方向指示部材13の先端部を水平面内で図6に示すように、360°の任意の方向に向けることができるから、走行クレーンの電動巻上機(図1及び図2の電動巻上機106、204参照)を荷を吊上下げしたい任意の場所に速やかに移動させることが可能となる。
【0036】
また、走行モータ41、横行モータ42、及び昇降モータ43の起動、即ち走行指令信号、横行指令信号、昇降指令信号の生成を無段速押釦スイッチ14の押圧操作による動作決定信号S14があることを条件とすることにより、オペレータが走行クレーンの移動、巻上下げを意図して操作筐体10の方向指示部材13の先端部の水平面内の向きや上下方向の傾きを変えた場合にのみ、走行クレーンの走行・横行、昇降(巻上下げ)運転が行われる。即ち、オペレータが不用意に操作筐体10の方向指示部材13の先端部を水平面内で変位させたり、上下方向の傾きを変えても無段速押釦スイッチ14の押圧操作による動作決定信号S14がないと走行クレーンが走行、横行、巻上下げ動作をしないことになり、安全性が維持できる。なお、操作装置制御回路部20の指令信号生成部21及びモータ駆動制御回路部30の制御部32はそれぞれマイクロコンピュータで構成される。また、通信部22と通信部31の信号伝送手段としては、有線による信号伝送、電波や光等の無線による信号伝送を用いる。
【0037】
ここで、加速度センサ23で操作筐体10の方向指示部材13の先端部の上下傾き方向及び傾き角度を検出することについて説明する。加速度センサ23を取り付けている操作筐体10の角度をθだけ傾斜させた場合、図7に示すように、加速度センサ23の取り付け方向には重力加速度gの分解成分g・sinθがかかることになる。従って、加速度センサ23の出力としてg・sinθに相当する値が電圧として出力される。ここで、角度θが0からπ/2まで変化すると、sinθの値は0.0から1.0まで変化し、最も傾いたθ=g・sinθは1gに等しくなる。上記のように加速度センサ23の出力は電圧値として出力されるから、操作筐体10を水平にした時の出力電圧値を基準として、垂直に配置した時までの変化幅を求め基準となる出力電圧値を取得する。そして現在の加速度センサ23の出力電圧と上記基準値の差を求め、逆サインを用いてこの値を角度に変換することにより、この変換した角度が現在の操作筐体10の傾き角度(図3(b)の水平状態で方向指示部材13の上下の傾き角度)となる。
【0038】
次に、ジャイロセンサ24で操作筐体10の方向指示部材13の先端部が向く方向(操作筐体方向)を検出することについて説明する。ジャイロセンサには、振動式、機械式、光学式、流体式等がある。本走行クレーンの操作制御装置には、上記いずれのジャイロセンサも利用可能であるが、小型・量産化に有利などの理由で、圧電型振動ジャイロセンサがよく使用される。図8は圧電型振動ジャイロセンサの原理を示す図で、図8(a)は静止時を、図8(b)は回転時をそれぞれ示す。圧電型振動ジャイロセンサ24’は圧電素子からなる振動子24’aを具備し、静止時は矢印Cに示すように駆動振動している。回転時に振動子24’aに軸を回転中心とする角速度ωを与えると、矢印Dに示す方向のコリオリの力が作用し振動子24’aに電荷24’bが発生する。この電荷を検出することにより、角速度ωを検出する。このように圧電型振動ジャイロセンサ24’は角速度ωを検出するセンサであることから、角速度センサと呼ばれることもある。
【0039】
上記圧電型振動ジャイロセンサ(角速度センサ)24’をジャイロセンサ24として操作筐体10内の所定位置(例えば取っ手部12や方向指示部材13の所定位置)に設置する。そして操作筐体10の方向指示用LED17の先端を予め決められた方向に設定(例えば走行方向である東西方向の東方向に向けて設定)し、操作筐体10に設けたリセット押釦スイッチ15を押すことにより、ジャイロセンサ24の初期設定と累積誤差を消去するようになっている。このリセット時点から、ジャイロセンサ24(圧電型振動ジャイロセンサ24’)で検出した角速度ωを操作筐体方向検出信号S24として指令信号生成部21に出力する。指令信号生成部21では操作筐体方向検出信号S24と経過時間(角速度ωの積分)から操作筐体10が上記予め決められた方向(東方向)から水平方向にどれだけ回転(旋回)したかを演算して、操作筐体10の方向指示部材13の先端部(方向指示用LED17の先端部)が向いている方向を求める。
【0040】
操作筐体10の方向指示部材13の先端部を、例えば東方向(走行方向)に向け、リセット押釦スイッチ15を押圧操作した後、無段速押釦スイッチ14を押圧操作すると、指令信号生成部21は走行モータ41を東方向(正転)に走行させる走行指令信号を生成すると共に、無段速押釦スイッチ14の押圧力に応じた速度Vの速度指令信号を生成する。また、操作筐体10の方向指示部材13の先端部を東方向からずらすと、ジャイロセンサ24はそのずれの角速度ωを検出し操作筐体方向検出信号S24として指令信号生成部21に出力する。これにより指令信号生成部21はその角速度ωを積分して、基準方向(東方向)からずれた回転角度を算出し、その方向に応じて走行モータ41、横行モータ42の回転方向(走行方向、横行方向)と回転速度を演算し、その指令信号を生成する。
【0041】
例えば図9に示すように、操作筐体10の方向指示部材13の先端部を東方向からθ°(θ<90°)水平に北側に回転した場合、走行モータ41を東方向(正転)に走行させる走行指令信号を生成すると共に、横行モータ42を北方向(逆転)に横行させる横行指令信号を生成し、走行モータ41の回転数(速度)に対する横行モータ42の回転数(速度)の比は、Vcosθ:Vsinθとなるように制御する。また、操作筐体10の方向指示部材13の先端部を東方向からθ°水平に南側に回転した場合、走行モータ41を東方向(正転)に走行させる走行指令信号を生成すると共に、横行モータ42を南方向(正転)に横行させる横行指令信号を生成し、走行モータ41の回転数(速度)に対する横行モータ42の回転数(速度)の比は、Vcosθ:Vsinθとなるように制御する。
【0042】
また、操作筐体10の方向指示部材13の先端部を東方向から(180−θ)°水平に北側に回転した場合、走行モータ41を西方向(逆転)に走行させる走行指令信号を生成すると共に、横行モータ42を北方向(逆転)に横行させる横行指令信号を生成し、走行モータ41の回転数(速度)に対する横行モータ42の回転数(速度)の比は、Vcosθ:Vsinθとなるように制御する。また、操作筐体10の方向指示部材13の先端部を東方向から(180−θ)°水平に南側に回転した場合、走行モータ41を西方向(逆転)に走行させる走行指令信号を生成すると共に、横行モータ42を南方向(正転)に横行させる横行指令信号を生成し、走行モータ41の回転数(速度)に対する横行モータ42の回転数(速度)の比は、Vcosθ:Vsinθとなるように制御する。
【0043】
また、操作筐体10のリセット押釦スイッチ15を押圧操作することにより、リセット信号S15を指令信号生成部21に出力する。指令信号生成部21はこのリセット信号S15を受けて、操作装置制御回路部20を初期状態にセットする。このリセット押釦スイッチ15も操作筐体10の取っ手部12を把持する片手の指で操作する位置に設ける。これにより、走行クレーンの走行、横行、及び昇降運転、及び操作装置制御回路部20の初期状態へのセットが操作筐体10の取っ手部12を把持する片手11で操作できる。
【0044】
また、上記実施形態例では、無段速設定手段として感圧ゴムを用いた無段速押釦スイッチ14を用い、押圧操作時の押圧圧力に応じた、無段速信号SV14を出力するように構成したが、動作決定信号と無段速信号を出力できるものであれば、これに限定されるものではなく、押圧操作時の押圧圧力に応じて無段速信号を出力できる他の押釦スイッチ又は後述するように操作部が所定のストロークで移動しその移動ストロークに応じた無段速信号を出力できるスライド無段速スイッチでもよい。
【0045】
また、上記実施形態例では、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の上下の傾き方向と傾き角度を検出する操作筐体傾き検出手段として、加速度センサ23を用いる例を示したが、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の上下の傾き方向と傾き角度を検出できるものであれば、加速度センサに限定されない。また、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の水平面内での向く方向を検出する操作筐体方向検出手段としてジャイロセンサ24を用いる例を示したが、操作筐体10の方向指示部材13の先端部の水平面内での向く方向を検出できるものであれば、ジャイロセンサに限定されない。
【0046】
上記操作制御装置の操作処理を図10の処理フロー図に基づいて説明する。先ず、電源スイッチ16がOFFかを判断し(ステップST1)、OFFでなかったら次に非常停止押釦スイッチ18が押されているかを判断し(ステップST2)、NO、即ち非常停止押釦スイッチ18が押されていない場合は、無段速押釦スイッチ14が押されているかを判断する(ステップST3)。ここで無段速押釦スイッチ14が押されている場合、即ち動作決定信号S14がある場合、操作筐体10が垂直状態か(図3(a)参照)かを判断し(ステップST4)、YESの場合、走行モータ41及び横行モータ42を運転する走行横行処理を行う(ステップST5)。
【0047】
前記ステップST4において、NOの場合、即ち操作筐体10が垂直状態でない場合、次に操作筐体10が水平状態か(図3(b)参照)を判断し(ステップST6)、YESの場合、操作筐体10の方向指示部材13の先端部が上に向く角度が15°〜60°の範囲(図5のB2範囲)かを判断し(ステップST7)、YESの場合は昇降モータ43の巻上運転をする巻上処理を行う(ステップST8)。NOの場合は、次に操作筐体10の方向指示部材13の先端部が下に向く角度が−15°〜−60°の範囲(図5のB2範囲)かを判断し(ステップST8)、YESの場合は昇降モータ43の巻下運転をする巻下処理を行う(ステップST10)。
【0048】
また、上記ステップST1で電源スイッチ16がOFFの場合と、ステップST2で非常停止押釦スイッチ18が押されている場合、電源遮断処理を行なう(ステップST11)。また、上記ステップST3において、無段速押釦スイッチ14が押されていない場合、即ち動作決定信号S14がない場合、次にリセット押釦スイッチ15が押されているかを判断し(ステップST12)、YESの場合は操作装置制御回路部20の初期状態セット処理を行なう(ステップST13)。
【0049】
〔実施形態例2〕
図11は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図である。図11(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、図11(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す図である。図示するように、操作筐体10は片手11で握ることができる筒状の取っ手部12を備え、該取っ手部12の両端に後方に屈曲した方向指示部材13’が取り付けられている。また、一方の方向指示部材13’の端部には非常停止押釦スイッチ18が取り付けられている。また、無段速押釦スイッチ14、リセット押釦スイッチ15、電源スイッチ16、及び非常停止押釦スイッチ18は取っ手部12を握る片手11の指で操作できる位置に取り付けられている。
【0050】
また、図示は省略するが操作筐体10の取っ手部12の内部には、取っ手部12が図11(b)に示す水平状態で垂直面内で上下に傾く方向とその角度(方向指示部材13’の先端部が垂直面内で上下に向く方向とその角度)を検出する操作筐体傾き検出手段としての加速度センサと、取っ手部12が図11(a)に示す垂直状態から水平面内で向く方向(方向指示部材13’の先端部が水平面内で向く方向)を検出する操作筐体方向検出手段としてのジャイロセンサが取り付けられている。取っ手部12を垂直状態にして矢印Aに示すように水平面内でクレーンを走行させたい方向に向けることにより、走行・横行運転ができ、取っ手部12を水平状態にして矢印Bに示すように垂直面内でクレーンを昇降させたい方向に向けることにより、昇・降運転ができる。また、操作制御装置のシステム構成、及び走行・横行、昇・降運転の処理は実施形態例1と略同じ構成であるからその説明は省略する。
【0051】
〔実施形態例3〕
図12は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図である。図12(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、図12(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す図である。図示するように、操作筐体10は片手11で握ることができる筒状の取っ手部12を備え、該取っ手部12の両端に両端部を同一方向に屈曲させ略C字状にした方向指示部材13が取り付けられている点は、図3に示す操作制御装置と同一である。本操作制御装置が図3に示す操作制御装置と異なる点は、図3の取っ手部12の非常停止押釦スイッチ18が取り付けられた部分に無段速押釦スイッチ14を取り付け、その反対側の端部に非常停止押釦スイッチ18を設けた点である。その他は実施形態例1と同一であるのでその説明は省略する。
【0052】
〔実施形態例4〕
図13は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図である。図13(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、図13(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す図である。図示するように、操作筐体10は片手11で握ることができる筒状の取っ手部12を備え、該取っ手部12の両端に略C字状に屈曲した方向指示部材13が取り付けられている点は図3に示す操作制御装置と同一である。本操作制御装置が図3に示す操作制御装置と異なる点は、図3の無段速押釦スイッチ14に替え、スライド無段速スイッチ19を設け、フック19aを矢印D方向にスライドさせることにより動作決定信号S14とスライド量に応じた無段速信号SV14を出力するようにした点である。その他は実施形態例1と同一であるのでその説明は省略する。
【0053】
〔実施形態例5〕
図14は本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図である。図14(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行・昇・降モード)にした状態、図14(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す図である。図示するように、本操作制御装置の操作筐体10及び操作部の外観構成は、図3に示すものと同一である。本操作制御装置が図3に示すものと異なる点は、図14(a)に示すように、操作筐体10を垂直状態にして、矢印Cに示すように操作筐体10を垂直面内で所定角度(例えば15°以上)上下方向に傾けることにより、昇降モータ43の昇降運転ができるようにした点である。即ち、操作筐体10が図14(a)の状態で、垂直面内で傾く角度を検出する操作筐体傾き検出手段(第2操作筐体傾き検出手段)としての加速度センサ(図示せず)を設けている。この加速度センサが検出する傾き角度により巻上の速度を設定している。
【0054】
上記操作制御装置の操作処理を図15の処理フロー図に基づいて説明する。先ず電源スイッチ16がOFFかを判断し(ステップST21)、NOであったら、次に非常停止押釦スイッチ18が押されているかを判断し(ステップST22)、NOであったら無段速押釦スイッチが押されているか(動作決定信号S14があるか)を判断する(ステップST23)。ここでYESであったら操作筐体10の取っ手部12が垂直状態か(図14(a)の状態)を判断し(ステップST24)、YESであったら操作筐体10が上に傾く角度(第2操作筐体傾き検出手段で検出)が15°以上かを判断し(ステップST25)、YESであったら、後述する走行横行巻上処理を行う(ステップST26)。ここでNOであったら、次に操作筐体10が下に傾く角度(第2操作筐体傾き検出手段で検出)が15°以上かを判断し(ステップST27)、YESであったら走行横行巻下処理を行い(ステップST28)、NOであったら後述する走行横行処理を行う(ステップST29)。
【0055】
上記ステップST24において、NOであったら操作筐体10の取っ手部12が水平状態か(図14(b)の状態か)を判断し(ステップST30)、YESであったら操作筐体10の方向指示部材13が上に傾く角度が15°以上かを判断し(ステップST31)、YESであったら巻上処理を行う(ステップST32)。ここでNOであったら次に操作筐体10の方向指示部材13が下に傾く角度が15°以上かを判断し(ステップST33)、YESであったら巻下処理を行う(ステップST34)。また、上記ステップST23において、NO、即ち無段速押釦スイッチ14が押されていない場合、次にリセット押釦スイッチ15が押されているかを判断し(ステップST35)、YESの場合、操作装置制御回路部20を初期状態セット処理する(ステップST36)。また、上記ステップST21において電源スイッチ16がOFF、ステップST22で非常停止押釦スイッチ18が押されている場合は、電源遮断処理を行なう(ステップST37)。
【0056】
図16は図15のステップST29の走行横行処理のフローを示す図である。図16に基づいて走行横行処理を説明する。先ず無段速押釦スイッチ14の押し込み量により水平面での速度Vを算出(無段速押釦スイッチ14からの無段速信号SV14に応じた水平面内での速度を算出)する(ステップST41)。続いて操作筐体10の方向指示部材13の水平面での向く方向(真北方向との角度)により、走行方向の速度V1を算出する(ステップST42)。続いて操作筐体10の方向指示部材13の水平面での向く方向(真北方向との角度)により、横行方向の速度V2を算出する(ステップST43)。続いて走行インバータ33への運転指令信号、速度指令信号を出力する(ステップST44)と共に、横行インバータ34に運転指令信号、速度指令信号を出力する(ステップST45)。これにより、走行モータ41、横行モータ42による走行・横行運転を行う。
【0057】
図17は図15のステップST26の走行横行巻上処理のフローを示す図である。図17に基づいて走行横行巻上処理を説明する。先ず、無段速押釦スイッチ14の押し込み量により水平面での速度Vを算出(無段速押釦スイッチ14からの無段速信号SV14に応じた水平面内での速度を算出)する(ステップST51)。続いて操作筐体10の方向指示部材13の水平面内での向く方向(真北方向との角度)により、走行方向の速度V1を算出する(ステップST52)。続いて操作筐体10の方向指示部材13の水平面内での向く方向(真北方向との角度)により、走行方向の速度V2を算出する(ステップST53)。続いて、操作筐体10の傾き角度により巻上の速度V3を算出する(ステップST54)。続いて、走行インバータ33への運転指令信号、速度指令信号を出力し(ステップST55)、横行インバータ34への運転指令信号、速度指令信号を出力し(ステップST56)、昇降インバータ35に運転指令信号、速度指令信号を出力する(ステップST57)。これにより、走行モータ41、横行モータ42、昇降モータ43による走行・横行、昇降運転を行う。また、図15のステップST28の走行横行巻下処理は、巻上げが巻下になっただけであり、上記走行横行巻上処理と同じなのでその説明は省略する。
【0058】
図18は図15のステップST32の巻上処理フローを示す図である。図18に基づいて巻上処理を説明する。先ず無段速押釦スイッチ14の押し込み量により、巻上の速度V3を算出する(ステップST61)。昇降インバータ35へ運転指令信号、速度指令信号を出力する(ステップST62)。これにより昇降モータ43による昇降運転を行う。また、図15のステップST34の巻下処理は、巻上げが巻下になっただけであり、上記巻上処理と同じなのでその説明は省略する。
【0059】
なお、上記実施形態例では操作筐体10を垂直状態(図3(a)、図11(a)、図12(a)、図13(a)参照)にした場合を走行クレーンを走行及び横行させる走行・横行モードとし、水平状態(図3(b)、図11(b)、図12(b)、図13(b)参照)にした場合を走行クレーンを昇降させる昇・降モードとしたが、走行・横行モード及び昇・降モードの設定は、これに限定されものではなく、例えば上記操作筐体10の垂直状態で方向指示部材13が垂直面内で上下に向く方向により、走行クレーンを昇降させる昇・降モードとし、水平状態で方向指示部材13が水平面内で向く方向により、走行クレーンを走行及び横行させる走行・横行モードとしてもよい。
【0060】
また、図14に示す実施形態例5では、同図(a)に示すように操作筐体10の垂直状態で走行・横行・昇・降モードとし、同図(b)に示すように操作筐体10の水平状態で昇・降モードとしたが、例えば上記操作筐体10の垂直状態で方向指示部材13が垂直面内で上下に向く方向により、走行クレーンを昇降させる昇・降モードとし、水平状態で方向指示部材13が水平面内で向く方向により、走行クレーンを走行及び横行させ、更に方向指示部材13が垂直面内で上下に向く方向により、走行クレーンを昇降させる走行・横行・昇・降モードとしてもよい。
【0061】
要は、指令信号生成部21が、加速度センサ23等の操作筐体傾き検出手段からの信号と操作筐体10の姿勢を検出し、この操作筐体10の姿勢により、走行・横行モード、昇・降モード、走行・横行・昇・降モードを設定するようにすればよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、傾き方向・角度検出手段として加速度センサを用いたが操作筐体の傾き方向及び傾き角度を検出できるのであれは、加速度センサに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の走行クレーンの外観概略構成例を示す図である。
【図2】従来の走行クレーンの外観概略構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図であり、(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、図3(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す。
【図4】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の全体システム構成を示すブロック図である。
【図5】操作筐体の垂直面内の傾き範囲を説明する説明図である。
【図6】操作筐体の水平面内の変位を説明する説明図である。
【図7】加速度センサの説明図である。
【図8】圧電型振動ジャイロセンサの動作原理を示す図であり、(a)は静止時を、(b)は回転時を示す。
【図9】操作筐体の水平面内の回転状態を示す図である。
【図10】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作処理フローを示す図である。
【図11】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図であり、(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す。
【図12】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図であり、(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す。
【図13】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図であり、(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行モード)にした状態、(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す。
【図14】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作筐体及び操作部の外観構成例を示す図であり、(a)は操作筐体を垂直状態(走行・横行・昇・降モード)にした状態、(b)は操作筐体を水平状態(昇・降モード)にした状態を示す。
【図15】本発明に係る走行クレーンの操作制御装置の操作処理フローを示す図である。
【図16】図15の走行横行処理(ステップST29)フローを示す図である。
【図17】図15の走行横行巻上処理(ステップST26)フローを示す図である。
【図18】図15の巻上処理(ステップST32)フローを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 操作筐体
11 片手
12 取っ手部
13 方向指示部材
14 無段速押釦スイッチ
15 リセット押釦スイッチ
16 電源スイッチ
18 非常停止押釦スイッチ
20 操作装置制御回路部
21 指令信号生成部
22 通信部
23 加速度センサ
24 ジャイロセンサ
24’ 圧電型振動ジャイロセンサ
30 モータ駆動制御回路部
31 通信部
32 制御部
33 走行インバータ
34 横行インバータ
35 昇降インバータ
41 走行モータ
42 横行モータ
43 昇降モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内の所定方向に敷設された走行レールと、該走行レールに直交する方向に配置され且つ走行モータにより、該走行レールに沿って移動する横行レールと、該横行レールに沿って移動するための横行モータ及び荷を巻上下する昇降モータとを具備する電動巻上機を備えた走行クレーンの操作制御装置であって、
取っ手部を備えた操作筐体と、
前記操作筐体の傾き角度を検出して該操作筐体の姿勢を検出する操作筐体傾き検出手段と、
前記操作筐体が水平面内で向く方向を検出する操作筐体方向検出手段と、
前記走行モータへの走行指令信号及び走行速度指令信号と前記横行モータへの横行指令信号及び横行速度指令信号と前記昇降モータへの昇降指令信号と昇降速度指令信号とを生成する指令信号生成手段とを備え、
前記操作部は少なくとも前記指令信号生成手段に動作決定信号を出力する動作決定手段と、速度を指示する速度指示信号を出力する速度設定手段とを備え、
前記指令信号生成手段は、前記走行指令信号及び前記横行指令信号を出力する水平移動モードと、前記昇降指令信号を出力する昇降移動モードを有し、前記操作筐体傾き検出手段で算出した前記操作筐体の姿勢によって、前記水平移動モードと前記昇降移動モードの2つのモードから予め定められた移動モードを選択すると共に、前記操作筐体の姿勢から前記水平モードと判断したときには、前記動作決定手段からの前記動作検定信号があることを条件に、前記速度設定手段からの速度指令信号、前記操作筐体方向検出手段からの検出信号により、前記走行指令信号及び走行速度指令信号、前記横行指令信号及び横行速度指令信号を生成し、更に前記操作筐体の姿勢から前記昇降移動モードと判断したときには、前記動作決定手段からの動作決定信号があることを条件に、前記速度設定手段からの速度指示信号、前記操作筐体傾き検出手段からの傾き角度検出信号により、前記昇降指令信号及び昇降速度指令信号を生成することを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記指令信号生成手段は、前記水平移動モードと判断したときには、垂直面内における操作筐体の前後の傾き角度によって、動作決定信号があることを条件に、上向き角度の時には上昇、下向き角度の時には下降する昇降指令信号を出力することを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作筐体傾き手段は、前記操作筐体の姿勢が垂直と判断したときには水平移動モードとし、前記操作筐体の姿勢が水平と判断したときには昇降移動モードとすることを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作筐体傾き手段は、前記操作筐体の姿勢が水平と判断したときには水平移動モードとし、前記操作筐体の姿勢が垂直と判断したときには昇降移動モードとすることを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作部の前記動作決定手段と前記速度設定手段は一体に構成され、操作量に応じて速度指示信号を出力する無段速度設定手段であることを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記一体に構成された動作決定手段と速度設定手段は、押圧操作により動作決定信号を出力し、押し込み量に応じて速度指示信号を出力する押釦スイッチ、又はフックのスライド動作により動作決定信号を出力し、スライド量に応じて速度指示信号を出力するスライド無段速スイッチであることを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作筐体は、筒状の取っ手部と、方向指示部材とを備え、該方向指示部材を前記取っ手部に前方を向くように取り付けたことを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作筐体は、筒状の取っ手部と、方向指示部材とを備え、該方向指示部材を前記取っ手部の両端に後方を向くように取り付けたことを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記動作決定手段と前記速度設定手段は、前記操作筐体の取っ手部に取り付けられており、
走行クレーンの走行横行操作は、前記取っ手部を片手で握り、前記操作筐体を垂直状態に維持し前記方向指示部材を前方又は後方に向け前記動作決定手段及び前記速度設定手段を操作することにより行い、
走行クレーンの昇降操作は、前記取っ手部を片手で握り、前記操作筐体を水平状態に維持し、前記方向指示部材を上方又は下方に向け、前記動作決定手段及び前記速度設定手段を操作することにより行なうことを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の走行クレーンの操作制御装置において、
前記操作筐体にリセット信号を出力するリセットスイッチを設け、前記操作装置制御回路部は前記リセット信号を受けて操作制御装置を初期状態にリセットするリセット機能を備えていることを特徴とする走行クレーンの操作制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−89897(P2010−89897A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260916(P2008−260916)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)