説明

走行制御装置、及びその装置における走行制御方法

【課題】材料の後端部分を効率良く切断等することが可能な走行制御装置、及びその装置における走行制御方法を提供する。
【解決手段】トラッキング処理手段201は、後端検出センサー103からの後端検出信号により材料2の後端を検出し、後端位置及び切断予想位置のトラッキングを開始する。材料抜出処理手段202は、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際の切断予想位置とキャリッジ1の位置とが重なるか否かを判断し、重なる場合は、切断見送り信号を出力する。材料停止処理手段203は、材料移動長信号Aにより材料2の停止を確認した後、材在り検出センサー104からの材在り検出信号、切断予想位置、前進限及び待機位置に基づいて材料2が停止した後の切断可否を判断し、切断否の場合に切断不可信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動を行う走行切断機や走行加工機等を制御する走行制御装置に関し、特に、材料の速度と走行切断機等の速度とを同期させ、材料の切断等を制御する走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、走行切断機や走行加工機は、例えば、鉄板、アルミニウム板、フィルム等の材料を切断または成形加工したり、文字等を刻印したりする装置である。これらの走行機に対して正転及び逆転移動の走行を制御する走行制御装置は、パルスジェネレータにより走行する材料の速度を検出し、走行機等を駆動するモータのパルスジェネレータにより走行機等の速度を検出し、材料と走行機との同期制御を行うことにより、材料の切断等を実現している。具体的には、材料を切断する場合を例にして、走行制御装置は、材料が走行している状態で切断処理を開始すると、走行切断機を材料と同じ走行向き(正転)に移動させ、両者の速度が一致した後に切断信号を出力する。そして、切断信号を入力した走行切断機により切断が終了すると、切断終了信号を入力して、走行切断機を材料の走行向きと反対の向き(逆転)に移動させてホームポジションである待機位置へ戻す。そして、再度、次の切断処理を開始する。このような繰り返しにより、走行する材料は連続的に切断される(特許文献1〜3を参照)。
【0003】
図9は、従来の走行切断制御装置の構成を示す制御ブロック図であり、図10は、図9に示す走行切断制御装置の動作を説明するためのタイムチャートである。図10を参照して、この走行切断制御装置50は、キャリッジ1に噛合したラックピニオン15を、減速器16を介してモータ17により駆動させることにより、キャリッジ1を材料2の走行向き(左から右)に正転移動させる機能、材料2の走行向きと反対の向き(右から左)に逆転移動させて待機位置に戻す機能、及び、材料2の走行速度とキャリッジ1の走行速度とが同じになったときに切断信号を出力して、キャリッジ1に材料2を定尺切断させる機能を有する。また、成形ロール23は、材料2を成形すると共に、当該材料2を、図9において左から右へ走行させる。
【0004】
次に、図9に示した走行切断制御装置50の動作について説明する。まず、設定器5には、切断のために必要な設定データ、例えば材料2の切断長を示す設定長が設定される。そして、運転指令に伴って、成形ロール23により材料2が走行を開始する。また、測長ロール3は上下2個のロールから成り、材料2の走行に従って回転し、パルスジェネレータ4が単位回転角毎にパルスを発生する。係数器6が、連続走行する材料2の移動量をこのパルス信号を用いて測定し、材料2の移動長に応じた信号(材料移動長信号)Aを生成する。そして、周波数速度変換器8が、材料移動長信号Aを材料移動速度信号Vに変換し、材料2の移動速度に応じた信号(材料移動速度信号)V=f(A)を生成する。この材料移動速度が、図10のライン速度に相当する。
【0005】
モータ17によりラックピニオン15が駆動してキャリッジ1が正転移動すると、パルスジェネレータ18が単位回転角毎にパルスを発生し、係数器14によりキャリッジ1の位置に対応するキャリッジ移動長信号Bを帰還し、レジスタ12及び関数器13を介して後退速度基準信号Vを帰還する。また、減算器7が、設定長信号L、材料移動長信号A及びキャリッジ移動長信号Bから残長信号(L−A+B)を演算し、レジスタ9は、減算器7が演算した残長信号(L−A+B)を入力し、関数器10が、この残長信号(L−A+B)を用いて関数器出力信号である残長速度信号V=f(L−A+B)を生成する。そして、減算器11が、材料移動速度信号Vから残長速度信号Vを減算し、材料2の進行方向への前進速度基準信号V−Vを生成する。
【0006】
符号判別器21は、前進速度基準信号V−Vに基づいて、キャリッジ1を駆動するモータ17への速度指令信号RFEを選択するための信号をセレクタ22に出力する。具体的には、符号判別器21は、V−V≧0の場合に、速度指令信号RFEが前進速度基準信号V−Vになるように選択信号を出力し、V−V<0の場合に、速度指令信号RFEが後退速度基準信号Vになるように選択信号を出力する。これにより、セレクタ22は、選択信号に基づいて、前進速度基準信号V−Vまたは速度指令信号RFEを出力する。そして、速度指令信号RFEは、減算器20によりパルスジェネレータ18からのパルス信号の減算が行われ、速度制御器19を介してモータ17へ出力される。
【0007】
このように、キャリッジ1を移動させるためのモータ17への速度指令信号RFEとして、V−V≧0の場合には前進速度基準信号V−Vが設定される。このとき、キャリッジ1は前進し、残長速度信号V=0になるように制御される。この結果、材料2の移動長が設定長と等しくなると同時に、キャリッジ1の速度と材料2の速度とは同じになる。そして、キャリッジ1が走行切断制御装置50から切断信号を入力し、材料2を定尺切断する。また、走行切断制御装置50がキャリッジ1から切断終了信号を入力すると、設定器5には設定長が設定され、V−V<0となる。そうすると、キャリッジ1を移動させるモータ17への速度指令信号RFEとして、後退速度基準信号Vが設定され、キャリッジ1は待機位置へ戻る。この速度指令が、図10のモータ速度に相当する。
【0008】
一方、キャリッジ1の移動動作に着目すると、キャリッジ1は、材料2の速度に追従して同期するまで急加速し、設定長の値に達すると切断信号を受けて材料2を定尺切断する。切断が終了すると、キャリッジ1は、急速に減速し、減速が終了すると同時にモータ17が逆回転し、待機位置へ戻り待機状態となる。
【0009】
【特許文献1】特開昭49−13792号公報
【特許文献2】特開2000−117684号公報
【特許文献3】特開2000−176883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述した走行制御装置50が用いられるミルラインにおいて、口径の大きなパイプの切断等を実現する機械設備は、その製品的な特徴により大型になる。例えば、製品を成形する成形ロール23の最終段からキャリッジ1までの距離が10mに達する設備もある。このような設備において、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜けて材料2が停止した後は、材料2の切断が可能な限り当該切断は行われることが望ましい。
【0011】
また、材料2の後端が成形ロール23の最終段を抜け出る際には、成形のための圧力が材料2にかかっているので、材料2は、その圧力により成形速度(通常の材料移動速度)よりも速い速度で飛び出てしまう。図10において、材料移動速度信号Vの凸状部分がその状態を示している。このため、キャリッジ1の速度及び加速度は、その制御特性範囲を超えてしまう場合がある。図10のNGの凸状部分がその状態を示している。このような状態の下で材料2を切断した場合には、走行切断制御装置50は、材料2とキャリッジ1との間の速度を同期させることができないため、精度の高い切断を実現することができないという問題があった。また、切断途中でこのような状態になると、最悪の場合はキャリッジ1が前進限に達してしまうこともあり得る。
【0012】
そこで、本発明は、材料の後端部分を効率良く切断等することが可能な走行制御装置、及びその装置における走行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明による走行制御装置は、走行する材料の速度に追従して切断または加工の処理を行う走行機に対し、該走行機の走行を制御する装置において、材料の移動長を検出する第1の検出部と、走行機の移動長を検出する第2の検出部と、材料に前記処理がなされる間隔を示す設定長が設定される設定部と、前記材料の移動長に基づいて材料の後端位置を算出し、前記材料の移動長、走行機の移動長及び材料の設定長に基づいて材料の切断予想位置を算出するトラッキング処理手段、材料を走行させる装置から材料が抜ける際の切断予想位置及び走行機の位置を推定し、該切断予想位置と走行機の位置とに基づいて、材料を走行させる装置から材料が抜ける際に前記切断または加工の処理を見送るか否かを判断する材料抜出手段、及び、前記処理を見送ると判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせる処理可否指令生成手段を有する演算部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による走行制御装置は、前記演算部が、さらに、材料を走行させる装置から材料が抜けた後に該材料が停止した場合に、前記切断予想位置、走行機の前進限、及び走行機の待機位置に基づいて、前記材料停止後に切断または加工の処理が可能か否かを判断する材料停止処理手段を有し、前記処理可否指令生成手段が、前記処理を見送ると判断した場合、または処理が可能でないと判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による走行制御装置は、さらに、前記第1の検出部の検出処理を確認するために、材料の存在を検出する第3の検出部を備え、前記演算部に有する材料停止処理手段が、第3の検出部からの信号に基づいて、前記材料停止後に切断または加工の処理が可能か否かを判断することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による走行制御装置は、前記演算部に有する材料停止処理手段が、切断予想位置が走行機の前進限と待機位置との間である場合に、前記処理が可能であると判断し、切断予想位置が走行機の前進限を超える場合、切断予想位置が走行機の待機位置の手前である場合、または前記第3の検出部からの信号により材料が存在しないと判断した場合に、前記処理が可能でないと判断することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明による走行制御方法は、走行する材料の速度に追従して切断または加工の処理を行う走行機に対し、該走行機の走行を制御する装置における走行制御方法であって、材料の移動長に基づいて材料の後端位置を算出するステップと、材料の移動長、走行機の移動長、及び材料に前記処理がなされる間隔を示す設定長に基づいて材料の切断予想位置を算出するステップと、材料を走行させる装置から材料が抜ける際の切断予想位置及び走行機の位置を推定するステップと、前記切断予想位置と走行機の位置とに基づいて、材料を走行させる装置から材料が抜ける際に前記切断または加工の処理を見送るか否かを判断するステップと、前記処理を見送ると判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、材料を走行させる装置から材料が抜ける際には、切断等の処理を実行しないようにした。材料が抜ける際には、材料が通常よりも速い速度で飛び出すことに伴い速度変動が大きくなるが、切断等の処理を実行しないから、精度の低い切断等の処理を回避することができる。また、その後に材料が停止したときに、切断等の可否を判断し、切断等が可能な場合は切断等するようにした。これにより、材料の後端部分を効率良く切断等することができる。例えば、材料が製品単価の高い大口径のパイプ等の場合には、歩留まりを一層上げることができる。また、材料の速度変化に伴って、無理な速度同期を走行機に強いることがないから、走行機が前進限を超えることがなく、すなわちオーバーランを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、材料を切断する走行切断機(以下、キャリッジという。)を制御する走行切断制御装置を例にして、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る走行切断制御装置の構成を示す制御ブロック図である。図2は、図1に示す演算器の構成を示す制御ブロック図である。図3、図4及び図5は、それぞれ材料が成形ロールを抜ける前の状態、材料が成形ロールを抜ける時の状態、及び材料が成形ロールを抜けて停止した状態を説明するための図である。図6は、図1に示すリミッタの機能を説明するための図である。図7及び図8は、それぞれ図1に示す走行切断制御装置の動作を説明するためのフローチャート及びタイムチャートである。
【0020】
〔構成〕
図1を参照して、走行切断制御装置100の構成について説明する。この走行切断制御装置100は、演算器102が、切断処理を実行させない信号(ゼロ指令信号)をリミッタ101に出力し、キャリッジ1の走行を停止して切断処理を行わないようにするものである。すなわち、演算器102は、材料2の終端位置及び切断予想位置をトラッキングし、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜けるときの切断予想位置とキャリッジ1の位置との重なりを判断し、両者が重なる場合は、そのときの材料2の切断を見送る。そして、材料2が停止したときに、切断予想位置に基づいて切断処理の可否を判断する。
【0021】
図1に示す走行切断制御装置100と図9に示した従来の走行切断制御装置50とを比較すると、走行切断制御装置100が、演算器102、後端検出センサー103及び材在り検出センサー104を備えているのに対し、走行切断制御装置50はこれらを備えていない点で相違し、また、走行切断制御装置100が、リミッタ101を備えているのに対し、走行切断制御装置50が、セレクタ22を備えている点で相違する。これに対し、キャリッジ1、材料2、測長ロール3、パルスジェネレータ4、設定器5、係数器6、減算器7、周波数速度変換器8、レジスタ9、関数器10、減算器11、レジスタ12、関数器13、係数器14、ラックピニオン15、減速器16、モータ17、パルスジェネレータ18、速度制御器19、減算器20及び成形ロール23を備えている点は同じである。これらの機能については既に図9を用いて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0022】
後端検出センサー103は、成形ロール23の前段に設けられており、材料2の後端を検出するためのセンサーである。材在り検出センサー104は、測長ロール3の前段の近傍に設けられており、測長ロール3による材料2の測長が正常に行われていることを確認するためのセンサーである。
【0023】
演算器102は、後端検出センサー103から後端検出信号を、材在り検出センサー104から材在り検出信号を、係数器6から材料移動長信号Aを、関数器10から残長速度信号Vをそれぞれ入力し、後述する演算を行い、MAX指令信号Mまたはゼロ指令信号Zをリミッタ101に出力する。すなわち、演算器102は、切断処理を行わないと判断すると、ゼロ指令信号Zをリミッタ101に出力する。これにより、リミッタ101は、ゼロ指令信号Zを出力の上限として用いるから、キャリッジ1に対する前進指令となる速度指令信号Sを出力することがなく、キャリッジ1の正転移動が停止され、材料2の切断処理は実行されない。
【0024】
ここで、材料移動長信号Aは、パルスジェネレータ4のパルス信号を用いて測定された信号であって、連続走行する材料2の移動長に応じた信号である。残長速度信号Vは、設定長信号L、材料移動長信号A及びキャリッジ移動長信号Bから演算された残長信号(L−A+B)の速度信号である。ゼロ指令信号Zは、材料2の切断を実行しない場合に出力される信号である。MAX指令信号Mは、材料2の切断を実行する場合の通常の運転中に出力される信号である。
【0025】
図2は、図1に示した演算器102の構成を示すブロック図である。この演算器102は、トラッキング処理手段201、材料抜出処理手段202、材料停止処理手段203及び切断可否指令生成手段204を備えている。トラッキング処理手段201は、後端検出センサー103から後端検出信号を、係数器6から材料移動長信号Aを、関数器10から残長速度信号Vをそれぞれ入力し、材料2の後端位置及び切断予想位置をトラッキングする。また、後端位置信号を材料抜出処理手段202に出力し、切断予想位置信号を材料停止処理手段203に出力する。具体的には、図3の(A)後端検出前及び材料抜け前の状態から(B)後端を検出した状態になると、トラッキング処理手段201は、後端検出信号により材料2の後端の検出を判断し、この時から、材料2が成形ロール23から抜けて停止するまでの間、材料2の後端位置及び切断予想位置を、以下のように算出する。ここで、それぞれの位置は、例えばキャリッジ1の待機位置を原点とした相対座標により表される。
【0026】
トラッキング処理手段201は、入力する材料移動長信号Aに基づいて後端検出後の後端位置を算出し、トラッキングして(その後も後端位置を算出し続けて)材料抜出処理手段202に出力する。また、トラッキング処理手段201は、後端検出センサー103と成形ロール23の最終段のロールとの間の距離a、成形ロール23の最終段のロールとキャリッジ1の待機位置との間の距離b、及びキャリッジ1の待機位置と材料2の切断位置(先端)との間の距離c(先端距離)に基づいて、材料2の先端位置(既に切断された切断位置)を算出し、当該先端位置及び設定長Lから切断予想位置を算出し、入力する材料移動長信号Aに基づいてその後の切断予想位置を算出し、トラッキングして(その後も切断予想位置を算出し続けて)、当該切断予想位置を材料停止処理手段203に出力する。この場合、距離a及び距離bは予め設定される値であり、距離cはキャリッジ1が待機位置に戻ったときの残長速度信号Vから算出される値である。
【0027】
材料抜出処理手段202は、トラッキング処理手段201から後端位置信号を、係数器6から材料移動長信号Aを、関数器10から残長速度信号Vをそれぞれ入力する。そして、入力した後端位置信号及び材料移動長信号Aに基づいて(入力した時点(現時点)におけるこれらの信号に基づいて)、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際の切断予想位置を前もって算出(推定)する。また、残長速度信号Vに基づいて、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際のキャリッジ1の位置を前もって算出(推定)する。そして、前もって算出した切断予想位置とキャリッジ1の位置とが重なるか否かを判断する(図4を参照、(A)は重ならない状態、(B)は重なる状態を示している)。両位置が重なると判断した場合は(図4(B))、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際に切断を実行させない切断見送り信号を、切断を実行する前に切断可否指令生成手段204に出力する。すなわち、材料抜出処理手段202は、トラッキング処理手段201が材料2の後端を検出したとき(材料2が後端検出センサー103を通過したとき)の残長速度信号Vによる残長と距離aとが一致する場合に、両位置が重なると判断し、切断見送り信号を出力する。また、その後(材料2が後端検出センサー103を通過した後)も、残長と、材料2が成形ロール23の最終段から抜けるまでの距離(後端から成形ロール23の最終段までの距離a’)とが一致する場合に、両位置が重なると判断し、切断見送り信号を出力する。これにより、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際の切断処理が見送られる。尚、切断予想位置とキャリッジ1の位置との間の位置の差が予め設定された範囲内であれば、両位置は重なるものと判断する。一方、材料2の切断時(切断が開始してから完了するまでの間)には、切断時間やライン速度に応じて、キャリッジ1の移動距離が変化してしまう。そこで、材料抜出処理手段202は、両位置が重なるか否かを、その移動距離も含めて判断する。例えば、材料抜出処理手段202は、材料2の切断時間及びライン速度に基づいてキャリッジ1の移動距離を算出し、材料2の後端から成形ロール23までの距離a’=残長+移動距離の場合に、両位置が重なるものと判断する。つまり、距離a’>残長+移動距離でなければ切断を行わない。
【0028】
材料停止処理手段203は、材在り検出センサー104から材在り検出信号を、係数器6から材料移動長信号Aを、トラッキング処理手段201から切断予想位置信号をそれぞれ入力する。ここで、材料2は、その後端が成形ロール23の最終段から抜けると、走行力を失い停止する。そこで、材料停止処理手段203は、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜けた後に、入力した材料移動長信号Aの変化が予め設定された範囲内である場合は、材料2が停止状態であると判断する。材料2の停止を判断すると、そのときに入力した切断予想位置信号から、停止状態している材料2の切断予想位置を特定する。
【0029】
材料停止処理手段203は、停止している材料の切断予想位置と、予め設定されたキャリッジ1の待機位置、及び予め設定されたキャリッジ1の前進限とをそれぞれ比較する。切断予想位置が待機位置と前進限との間である場合(図5(A)参照)は、切断が可能であると判断する。切断予想位置が前進限を超える場合(図5(B)参照)、及び、切断予想位置が待機位置の手前である場合(図5(C)参照)は、切断が不可能であると判断する。また、入力した材在り検出信号により、材料2無しを判断した場合には(図5(D))、測長ロール3によって正常に材料移動長信号Aの測長ができないから、切断が不可能であると判断する。
【0030】
材料停止処理手段203は、材料2の切断が不可能であると判断した場合には、切断不可信号を切断可否指令生成手段204に出力する。この場合、キャリッジ1は制御特性範囲を超えており、材料2が停止した状態でキャリッジ1を切断位置まで移動させて停止させる位置決め動作を行うことができない。このように、材料2が成形ロール23の最終段から抜けて停止した後、切断処理は行われない。また、材料停止処理手段203は、材料2の切断が可能であると判断した場合には、切断不可信号を出力しない。この場合、キャリッジ1は制御特性範囲を超えていないから、走行切断制御装置100は、材料2が停止した状態でキャリッジ1を切断位置まで移動させて停止させる位置決め動作を行い、材料2の切断を完了した後、待機位置へ戻る。ここで、後述するリミッタ101は、速度指令信号Sとして前進速度基準信号V−V(V=0,Vのみの制御)を出力し、キャリッジ1を切断位置まで移動させる。このようにして、材料2が成形ロール23の最終段から抜けて停止した後、切断処理が行われる。
【0031】
切断可否指令生成手段204は、材料抜出処理手段202から切断見送り信号を、材料停止処理手段203から切断不可信号をそれぞれ入力し、これらの入力によりゼロ指令信号Zをリミッタ101に出力する。これにより、キャリッジ1の正転移動の走行は停止し、切断処理は実行されない。切断可否指令生成手段204は、通常の運転中には、走行切断制御装置100がキャリッジ1による走行切断処理を行うことができるように、MAX指令信号Mを出力する。切断見送り信号または切断不可信号を入力した場合にのみ、ゼロ指令信号Zを出力し、キャリッジ1の正転移動の走行を停止して切断処理の実行を中止する。
【0032】
図1に戻って、リミッタ101は、減算器11から前進速度基準信号V−Vを、関数器13から後退速度基準信号Vをそれぞれ入力し、前進速度基準信号V−Vの値に対し、予め設定された値(MAX指令信号Mの値またはゼロ指令信号Zの値)を上限値とし、後退速度基準信号Vの値を下限値とし、速度指令信号Sとして前進速度基準信号V−Vを出力する。
【0033】
図6を参照して、リミッタ101の機能について詳細に説明する。図6(1)は、リミッタ101の入出力信号を示す図である。リミッタ101の+(上限)端子には上限値として用いるMAX指令信号Mまたはゼロ指令信号Zが入力され、IN(入力)端子には入力信号として用いる前進速度基準信号V−Vが入力され、−(下限)端子には下限値として用いる後退速度基準信号Vが入力され、OUT(出力)端子からは速度指令信号Sが出力される。図6(2)は、リミッタ101の一般的な特性を示す図である。基本的には入力信号がそのまま出力信号として出力されるが、上限値を超える入力信号に対しては上限値の信号が出力され、下限値を下回る入力信号に対しては下限値の信号が出力される。
【0034】
すなわち、リミッタ101は、以下の(A)〜(C)の処理を行う。
(A)後退速度基準信号V≦前進速度基準信号V−V≦MAX指令信号Mまたはゼロ指令信号Zの場合は、前進速度基準信号V−Vを速度指令信号Sとして出力する。
(B)前進速度基準信号V−V<後退速度基準信号Vの場合は、下限値を下回っているから、後退速度基準信号Vを速度指令信号Sとして出力する。
(C)MAX指令信号Mまたはゼロ指令信号Z<前進速度基準信号V−Vの場合は、上限値を超えているから、MAX指令信号Mまたはゼロ指令信号Zを速度指令信号Sとして出力する。
【0035】
このようにして出力された速度指令信号Sは、減算器20及び速度制御器19を介してモータ17へ供給され、キャリッジ1が正転または逆転移動する。
【0036】
図4に示した(B)の状態では、切断予想位置とキャリッジ1の位置とが重なるから、材料抜出処理手段202が、切断処理に入る前に切断見送り信号を切断可否指令生成手段204に出力し、切断可否指令生成手段204が、ゼロ指令信号Zをリミッタ101に出力する。また、図5に示した(B)(C)(D)の状態では、材料2の切断が不可能であるから、材料停止処理手段203が、切断不可信号を切断可否指令生成手段204に出力し、切断可否指令生成手段204が、ゼロ指令信号Zをリミッタ101に出力する。この場合、リミッタ101の出力である速度指令信号Sは、ゼロ以下の後退速度基準信号Vまたはゼロの信号に抑えられるから、前進指令である前進速度基準信号V−Vの出力はなされない。また、リミッタ101は、キャリッジ1が正転移動している場合に、速度指令信号Sとしてゼロの信号(キャリッジ1を停止させる信号)を出力する。これにより、材料2の切断処理の実行を停止することができる。
【0037】
〔動作〕
次に、図7及び図8を参照して、図1に示した走行切断制御装置100の動作について説明する。演算器102のトラッキング処理手段201は、後端検出センサー103からの後端検出信号により材料2の後端を検出すると(ステップS1)、材料2の後端位置及び切断予想位置のトラッキングを開始する(ステップS2)。そして、材料抜出処理手段202は、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜ける際の切断予想位置とキャリッジ1の位置とが重なるか否かを判断し(ステップS3)、重なる場合は、切断見送り信号を出力する(ステップS4)。これにより、速度指令信号Sの上限をゼロ以下に抑えることができるから、キャリッジ1と材料2とは速度同期することがなく、材料2の切断を見送ることができる。
【0038】
そして、材料2の後端が成形ロール23の最終段から抜けた後、材料停止処理手段203は、材料移動長信号Aにより材料2の停止を確認する(ステップS5)。その後、材料停止処理手段203は、材料2が停止した後に材料2を切断できるか否かを判断する。具体的には、材料停止処理手段203は、まず、材在り検出センサー104からの材在り検出信号により材無しを判断した場合(ステップS6)、切断予想位置が前進限を超えると判断した場合(ステップS7)、または、切断予想位置が待機位置の手前であることを判断した場合(ステップS8)に、切断不可能と判断し、切断不可信号を出力する(ステップS10)。これにより、速度指令信号Sの上限をゼロ以下に抑えることができるから、キャリッジ1と材料2とは速度同期することがなく、材料2の切断を停止することができる。一方、材在り検出センサー104からの材在り検出信号により材在りを判断し、切断予想位置が前進限を超えないことと判断し、さらに、切断予想位置が待機位置の手前でないことを判断した場合は、切断可能と判断し、材料2停止後の切断処理が行われる(ステップS9)。この場合、速度指令信号SRは、図8に示すOKの枠内のパターンとなる。これにより、キャリッジ1は、材料2の切断位置まで正転移動(前進)して停止し、材料2を切断した後、逆転移動(後退)して待機位置まで戻る。
【0039】
以上、前記走行切断制御装置100による実施の形態では、キャリッジ1として材料を切断する走行切断機を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、材料を加工する走行加工機や、材料に文字等を刻印する走行機等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る走行切断制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
【図2】演算器の構成を示すブロック図である。
【図3】材料が成形ロールを抜ける前の状態を説明するための図である。
【図4】材料が成形ロールを抜ける時の状態を説明するための図である。
【図5】材料が成形ロールを抜けて停止した状態を説明するための図である。
【図6】リミッタの機能を説明するための図である。
【図7】図1の走行切断制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図1の走行切断制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図9】従来の走行切断制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9の走行切断制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 キャリッジ
2 材料
3 測長ロール
4 パルスジェネレータ
5 設定器
6 係数器
7 減算器
8 周波数速度変換器
9 レジスタ
10 関数器
11 減算器
12 レジスタ
13 関数器
14 係数器
15 ラックピニオン
16 減速器
17 モータ
18 パルスジェネレータ
19 速度制御器
20 減算器
21 符号判別器
22 セレクタ
23 成形ロール
50,100 走行切断制御装置
101 リミッタ
102 演算器
103 後端検出センサー
104 材在り検出センサー
201 トラッキング処理手段
202 材料抜出処理手段
203 材料停止処理手段
204 切断可否指令生成手段
A 材料移動長信号
B キャリッジ移動長信号
L 設定長信号
材料移動速度信号
後退速度基準信号
残長速度信号
−V 前進速度基準信号
FE,S 速度指令信号
M MAX指令信号
Z ゼロ指令信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する材料の速度に追従して切断または加工の処理を行う走行機に対し、該走行機の走行を制御する装置において、
材料の移動長を検出する第1の検出部と、
走行機の移動長を検出する第2の検出部と、
材料に前記処理がなされる間隔を示すの設定長が設定される設定部と、
前記材料の移動長に基づいて材料の後端位置を算出し、前記材料の移動長、走行機の移動長及び材料の設定長に基づいて材料の切断予想位置を算出するトラッキング処理手段、材料を走行させる装置から材料が抜ける際の切断予想位置及び走行機の位置を推定し、該切断予想位置と走行機の位置とに基づいて、材料を走行させる装置から材料が抜ける際に前記切断または加工の処理を見送るか否かを判断する材料抜出手段、及び、前記処理を見送ると判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせる処理可否指令生成手段を有する演算部と、
を備えたことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行制御装置において、
前記演算部は、さらに、材料を走行させる装置から材料が抜けた後に該材料が停止した場合に、前記切断予想位置、走行機の前進限、及び走行機の待機位置に基づいて、前記材料停止後に切断または加工の処理が可能か否かを判断する材料停止処理手段を有し、
前記処理可否指令生成手段は、前記処理を見送ると判断した場合、または処理が可能でないと判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせることを特徴とする走行制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の走行制御装置において、
さらに、前記第1の検出部の検出処理を確認するために、材料の存在を検出する第3の検出部を備え、
前記演算部に有する材料停止処理手段は、第3の検出部からの信号に基づいて、前記材料停止後に切断または加工の処理が可能か否かを判断することを特徴とする走行制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の走行制御装置において、
前記演算部に有する材料停止処理手段は、切断予想位置が走行機の前進限と待機位置との間である場合に、前記処理が可能であると判断し、切断予想位置が走行機の前進限を超える場合、切断予想位置が走行機の待機位置の手前である場合、または前記第3の検出部からの信号により材料が存在しないと判断した場合に、前記処理が可能でないと判断することを特徴とする走行制御装置。
【請求項5】
走行する材料の速度に追従して切断または加工の処理を行う走行機に対し、該走行機の走行を制御する装置における走行制御方法であって、
材料の移動長に基づいて材料の後端位置を算出するステップと、
材料の移動長、走行機の移動長、及び材料に前記処理がなされる間隔を示す設定長に基づいて材料の切断予想位置を算出するステップと、
材料を走行させる装置から材料が抜ける際の前記切断予想位置及び走行機の位置を推定するステップと、
前記切断予想位置と走行機の位置とに基づいて、材料を走行させる装置から材料が抜ける際に前記切断または加工の処理を見送るか否かを判断するステップと、
前記処理を見送ると判断した場合に、処理否指令を出力し、前記走行機を停止して処理を止めさせるステップと、
を有することを特徴とする走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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