説明

走行台車の除塵装置

【課題】走行台車側に走行レール上面の異物除去手段を備えることで、走行車輪、走行レールを損ねることなく、かつ発塵をも抑制するようにした走行台車の除塵装置を提供すること。
【解決手段】走行台車の走行車輪部に、走行車輪Wの先行位置で走行レールRの上面の異物を掃き出すようにしたブラシ3と、ブラシ3では除去できなかった細かな粉塵及び走行車輪Wと走行レールRとの摩擦により発生する粉塵等の異物の吸引除去手段4とを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行台車の除塵装置に関し、特に、走行レール上面にある比較的大きな異物を破砕することなく除去することで走行車輪、走行レールの損傷を防止、走行車輪部での発塵を抑制し、かつ発生粉塵も確実に除去するようにした走行台車の除塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫などのクリーンルーム内で走行台車を走行路に沿って走行させ物品を搬送する場合、所定のクリーン度を保つため、クリーンルーム内にダウンフローを形成し、走行台車の走行時に走行車輪部で発生する粉塵などを、該ダウンフローにて床面側に強制的に吸引除去し、ルーム外へ排出するようにしている。
【0003】
しかし、クリーンルーム内では、走行台車走行時に走行車輪部で発生する粉塵のほかに、各種装置の破損等によっても異物が発生することがある。また、この異物がダウンフローにて除去できないような比較的大きなもので、しかも走行レール上にある場合、走行台車の走行時に走行車輪と走行レールとの間に該異物を巻き込む虞がある。
走行車輪と走行レールとの間に異物を巻き込むと、これが破砕され新たな異物の発生源ともなり、さらには異物により走行車輪や走行レールが損傷し、走行車輪の寿命が低下するという問題があった。
【0004】
また、走行車輪と走行レールとの間へ異物の巻き込みを防止するため、走行レール上面にカバーを配設する方法が提案されているが、カバー設置により走行レール部が複雑化するとともに、走行レールとカバーとの摩擦により新たな異物の発生源ともなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、走行台車の有する問題点に鑑み、走行台車側に走行レール上面の異物除去手段を備えることで、走行車輪、走行レールを損ねることなく、かつ発塵をも抑制するようにした走行台車の除塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の走行台車の除塵装置は、走行台車の走行車輪部に、走行車輪の先行位置で走行レール上面の異物を掃き出すようにしたブラシと、ブラシでは除去できなかった細かな粉塵及び走行車輪と走行レールとの摩擦により発生する粉塵等の異物の吸引除去手段とを配設したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、走行車輪を覆うように配設した車輪カバーに、走行台車の走行前進方向に突設するようにブラシを配設することができる。
【0008】
また、粉塵吸引除去手段を車輪カバーに配設することができる。
【0009】
また、粉塵吸引除去手段を、ファンフィルタユニットにイオナイザーを組み合わせて構成することができる。
【0010】
また、走行車輪の前後両方向の位置に、ブラシと粉塵吸引除去手段を組として配設することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の走行台車の除塵装置によれば、走行台車の走行車輪部に、走行車輪の先行位置で走行レール上面の異物を掃き出すようにしたブラシと、ブラシでは除去できなかった細かな粉塵及び走行車輪と走行レールとの摩擦により発生する粉塵等の異物の吸引除去手段とを配設することにより、走行レール上面にある比較的大きな異物を走行車輪より先行するブラシにて強制的に走行レール上面から掃き出されるようにして除去されるので、走行車輪での破砕、粉塵の発生及び走行車輪や走行レールの損傷を未然に防止でき、さらに小さな粉塵は粉塵吸引除去手段にて吸引除去されるので、クリーンルーム内の環境に悪影響を与えることがない。
【0012】
また、走行車輪を覆うように配設した車輪カバーに、走行台車の走行前進方向に突設するようにブラシを配設することにより、ブラシの取付、摩耗状況等を視認により簡易に行えるとともに、ブラシの取付作業やメンテナンスも容易に行うことができる。
【0013】
また、粉塵吸引除去手段を車輪カバーに配設することにより、細かな粉塵を、クリーンルーム内の環境に影響を与えずに車輪カバー内で確実に吸引除去することができる。
【0014】
また、粉塵吸引除去手段を、ファンフィルタユニットにイオナイザーを組み合わせて構成することにより、粉塵も静電気を帯電することなくファンフィルタユニットにて確実に除去することができる。
【0015】
また、走行車輪の前後両方向の位置に、ブラシと粉塵吸引除去手段とを組として配設することにより、走行台車が前進或いは後退いずれの方向に走行する場合でも、走行レール上面の異物の除去とブラシでは除去できなかった細かな粉塵及び走行車輪と走行レールとの摩擦により発生する粉塵等の異物の吸引除去とを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の走行台車の除塵装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図4に、本発明の走行台車の除塵装置の一実施例を示す。
本発明の走行台車Dは、製造工場或いは倉庫等の特に限定されるものではないが、例えば、クリーンルーム内に敷設した走行レールR上を走行車輪Wの回転により該走行レールRに沿って走行可能に構成するもので、この走行台車Dは、台車本体1の左右両側に、特に限定されるものではないが、例えば、4つの走行車輪Wを配設し、全車輪或いは任意の車輪を駆動することで走行するようにするとともに、この走行車輪部に本発明の除塵装置Aを配設する。
なお、図面はこの走行台車Dの一部で、1つの走行車輪部のみを示し、他部は省略している。
【0018】
除塵装置Aは、図1〜4に示すように、走行台車Dの走行車輪部に、走行車輪Wを上方から覆うように配設した車輪カバー2と、この車輪カバー2に走行車輪Wよりも先行する位置で、かつ走行レールRの上面の異物を掃き出すように突設したブラシ3と、車輪カバー2に配設し、ブラシ3では除去できなかった走行レールRの上面に存在する細かな粉塵及び走行車輪Wと走行レールRとの摩擦により発生する粉塵等の異物を吸引除去するようにした粉塵の吸引除去手段4とより構成している。
車輪カバー2は、走行車輪Wの上部よりその全体を余裕を持って覆い、かつ下面を開放するように箱形に形成し、走行台車Dに取り付けるが、この場合、走行レールRと接触しないようにする。また、必要に応じて車輪カバー2の左右両側板の下端を、走行レールの側面よりも少し下がるようにすることで、走行レールと走行車輪間で発生する粉塵を車輪カバー2外への漏洩を防ぐことができる。そして、この車輪カバー2の前部と後部にブラシ3、3を突設する。
これにより、走行台車Dが前進するとき、また後進するとき、いずれの方向に進行しても走行車輪Wよりも先行する位置にブラシ3が配設されるようにする。
【0019】
ブラシ3は、図1〜図2に示すように、平板形で走行レール上面の異物を、走行台車Dの走行方向外側に掃き出されるように傾斜して車輪カバー2に取り付ける。これは車輪カバー2に直接取り付けることも可能であるが、図示の実施例では車輪カバー2に進行方向前面に突設するブラシ取付ブラケット31を介して取り付ける。
このブラシ取付ブラケット31は、図2に示すように、走行台車Dの外側より内側が先行するよう傾斜させ、これにブラシ3を固定的に或いは取付角度を調整できるようにして取り付ける。これにより、走行台車Dが走行するとき、走行レール上面にある異物は、レール面のどの位置にあってもブラシ3により走行レール外側面方向に掃き出されるようになって走行台車Dの外側方向へ確実に排出され、除去されるものとなる。
【0020】
車輪カバー2に配設する粉塵の吸引除去手段4は、イオナイザー4Aとファンフィルタユニット4Bとの組み合わせにより構成する。
ファンフィルタユニット4Bは、その本体41を、特に限定されるものではなく車輪カバー2の内側或いは外側に配設し、このファンフィルタユニット4Bの本体41に車輪カバー2に配設するダクト42を接続し、ダクト先端を走行レール上面と対向するよう配設する。
図示の実施例では、2台のファンフィルタユニット4B、4Bを配置し、一方のファンフィルタユニット4Bを吸い込み専用とし、そのダクト42先端に吸込口43を走行レール上面に沿うように、かつ走行車輪近傍に配設し、また他方のファンフィルタユニット4Bを吹き出し専用とし、ダクト42先端の吹出口44を、他方のダクト先端の吸込口43よりも車輪から遠くになる位置に配設する。そして、この吹き出し専用のダクト42にイオナイザー4Aを取り付ける。
【0021】
吹き出し専用のダクト42にイオナイザー4Aを取り付けることで、ファンフィルタユニット4Bから吹き出し専用のダクト42内に吹き出される空気中にイオンを発生させ、走行車輪部で発生する粉塵に静電気が帯電するのを防止することができる。これにより、粉塵が走行車輪、走行レール、その他の機器に付着するのを防止し、発生粉塵の完全除去を確実に行えるようにする。
【0022】
なお、ファンフィルタユニット4Bを1台のみ採用する場合は、該ファンフィルタユニット4Bより吸い込み専用と吹き出し専用の2本のダクトを接続し、一方のダクト先端に吸込口43を、他方のダクト先端に吹出口44を接続し、かつ吹出口44を有するダクト42にイオナイザー4Aを組み込むようにする。
【0023】
次に、この走行台車の除塵装置の作用について説明する。
走行車輪部に本発明の除塵装置Aを取り付けた走行台車Dが、走行レールRに沿って走行すると、ダウンフローでは吹き飛ばされなかった比較的大きな異物が走行レール上面に滞留していても、走行車輪Wよりも先行する除塵装置Aのブラシ3にて走行レール上面より走行レール外側に掃き出されて除去される。
【0024】
これにより、走行レール上面の大きな異物は除去されるが、ダウンフローでは吹き飛ばされなかった走行レール上面に付着している異物や走行中走行車輪と走行レールとの走行車輪部で発生する粉塵は、吹き出し専用のファンフィルタユニット4Bからダクト42を経て吹出口44より走行レール上面に向かって吹き出される空気により車輪カバー2にて吹き飛ばされるが、この吹出口44に近接している吸込口43より吸い込まれる。この場合、吹出口44より吹き出される空気により吹き飛ばされる粉塵と走行車輪と走行レールとの摩擦により発生する粉塵とが同時に吸込口43より吸い込まれる。
【0025】
このように吹出口44に吸込口43が近設されているので、車輪カバー2内で発生するすべての粉塵はこの吸込口43より吸い込まれ、ダクト42内を経て吸い込み専用のファンフィルタユニット4Bへと送られる。この吸い込み専用のファンフィルタユニット4B内には、HEPAフィルタとファン(図示省略)とを備えているため、吸い込まれた粉塵は該HEPAフィルタにて除去され、除塵された排気はクリーンルーム内へ行われるが、クリーンルーム内の環境には影響を与えることはない。
【0026】
また、この吹き出し専用のファンフィルタユニット4Bにも、HEPAフィルタとファンとを備えているので、ダクト先端の吹出口44から吹き出される空気も清浄なものであり、しかも該ダクト内のイオナイザー4Aにて空気中にイオンを発生させ、イオン化されているので、吹出口44にて吹き飛ばされる粉塵は静電気が帯電するのを防止でき、粉塵が周囲に付着することがなく、確実に吸込口43より吸い込まれてクリーンルーム内の環境に影響を与えることがない。
【0027】
以上、本発明の走行台車の除塵装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の走行台車の除塵装置は、走行台車側に走行レール上面の異物除去手段を備えることで、走行車輪、走行レールを損ねることなく、かつ発塵をも抑制するという特性を有していることから、クリーンルーム内での搬送装置の用途に好適に用いることができるほか、例えば、スタッカークレーン、無人搬送車の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の走行台車の除塵装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同側面図である。
【図4】同外観斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
A 除塵装置
D 走行台車
R 走行レール
W 走行車輪
1 台車本体
2 車輪カバー
3 ブラシ
31 ブラシ取付ブラケット
4 粉塵の吸引除去手段
4A イオナイザー
4B ファンフィルタユニット
41 ファンフィルタユニットの本体
42 ダクト
43 吸込口
44 吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車の走行車輪部に、走行車輪の先行位置で走行レール上面の異物を掃き出すようにしたブラシと、ブラシでは除去できなかった細かな粉塵及び走行車輪と走行レールとの摩擦により発生する粉塵等の異物の吸引除去手段とを配設したことを特徴とする走行台車の除塵装置。
【請求項2】
走行車輪を覆うように配設した車輪カバーに、走行台車の走行前進方向に突設するようにブラシを配設したことを特徴とする請求項1記載の走行台車の除塵装置。
【請求項3】
粉塵吸引除去手段を車輪カバーに配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の走行台車の除塵装置。
【請求項4】
粉塵吸引除去手段を、ファンフィルタユニットにイオナイザーを組み合わせて構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の走行台車の除塵装置。
【請求項5】
走行車輪の前後両方向の位置に、ブラシと粉塵の吸引除去手段を組として配設したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の走行台車の除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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