説明

走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置

【課題】 カウンタウェイトビーム、ひいては、走行式スタッカ及びトリッパの重量の低減を図ることができる走行式スタッカのトリッパ支持構造を提供すること。
【解決手段】 レール18上を走行するスタッカ本体26と、スタッカ本体26に俯仰及び旋回可能に設けられたブーム17と、このブーム17に設けられたブームコンベヤ21と、ブーム17の基端部に設けられたカウンタウェイトビーム25とを有する走行式スタッカ16が、トリッパ19を連結支持する支持構造であって、トリッパ19は、トリッパ脚部29を有し、走行式スタッカ16に伴ってレール18上を移動自在であり、地上コンベヤ20のベルトを斜め上方に持ち上げるものであり、カウンタウェイトビーム25が、ブーム17の旋回によってトリッパ19の下方を通るように配置され、スタッカ本体26が、トリッパ19のヘッド部19bを連結支持部28で連結支持する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地上コンベヤで送られてくる石炭や鉄鉱石等のバラ物搬送物をヤードに山積みするときに使用される走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より例えば埠頭の荷役設備や製鉄所等において、搬入される石炭や鉄鉱石等のバラ物搬送物をヤード3に山積みにして貯留することが行われており、この積み付けに用いる走行式荷役装置が広く知られている。この走行式荷役装置1が備えているスタッカ2は、図7に示すように、ヤード3に沿って延びるレール4上を走行する走行機体5と、その上に旋回可能に設けられた旋回体6と、この旋回体6に俯仰可能に支持されたブーム7とを備えている。
【0003】
また、レール4の間には搬入又は搬出のための地上コンベヤ8が敷設され、この地上コンベヤ8のベルトを斜め上方に引き上げて、その上端からバラ物搬送物を落下させるようにトリッパ9が設けられている。トリッパ9は前記走行機体5に連結されて、バラ物搬送物をブーム7に設けられているブームコンベヤ10に移し替えるためのものである。このようにして、ブームコンベヤ10に移し替えられたバラ物搬送物は、ブーム7の先端側まで搬送されてヤード3に投下され、円錐台形状若しくは円錐形状に山積みされる。
【0004】
そして、この図7に示すスタッカ2及びトリッパ9は、それぞれ独立した構造体であり、それぞれ単独で自立するように構成されている。つまり、スタッカ2は、走行機体5と、その上に設けられた旋回体6と、この旋回体6に俯仰可能に支持されたブーム7とを備えている。そして、このブーム7の基端部には、このブーム7と反対側に延びるカウンタウェイトビーム11が設けられている。
【0005】
また、トリッパ9は、レール4上を移動できるように配置されたトリッパ走行用ボギー12と、その上に設けられたトリッパ支持フレーム13と、その上に設けられたトリッパ本体9aとを備えている。
【0006】
この種のスタッカ及びトリッパが、それぞれ単独で自立するように構成された走行式荷役装置の他の例として、スタッカ・リクレーマが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−58725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図7に示すように、スタッカ2が備えているブーム7には、カウンタウェイトビーム11が設けられており、このカウンタウェイトビーム11は、ブーム7の旋回によってトリッパ9の下方を通るときに、トリッパ支持フレーム13やトリッパ走行用ボギー12に接触しないようにする必要がある。そのために、カウンタウェイトビーム11の長さL1を比較的短く形成する必要がある。このカウンタウェイトビーム11は、ブーム7の重量バランスをとる補助となるカウンタウェイト11aを含むものである。
【0009】
このように、カウンタウェイトビーム11の長さL1を比較的短く形成すると、モーメントを同一にするために、カウンタウェイト11aの重量を大きくする必要があり、これによって、カウンタウェイトビーム11及びそれを支持するその他の構造体の強度を大きくする必要がありコストが嵩み、スタッカ2の製造に要する期間が長くなる。
【0010】
ここで、ブーム7が旋回するときに、カウンタウェイトビーム11がトリッパ支持フレーム13等に接触しないように、これらトリッパ支持フレーム13等をスタッカ2から遠ざけた位置に配置することも考えられるが、トリッパ支持フレーム13等をスタッカ2から遠ざけた位置に配置すると、図7に示すトリッパ支持フレーム13等の左端の部分がトリッパ9の重心位置に接近することになり、トリッパ9の安定性が低下する。
【0011】
更に、図7に示すように、トリッパ9を単独で自立させるためには、トリッパ9を単独で支持することができる強度を有するトリッパ支持フレーム13やトリッパ走行用ボギー12が必要であり、トリッパ9のコストが嵩み、トリッパ9の製造に要する期間が長くなる。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、カウンタウェイトビームを比較的長く形成できるようにして、カウンタウェイトビーム、ひいては、走行式スタッカ及びトリッパの重量の低減を図ることができる走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造は、レール上を走行するスタッカ本体と、このスタッカ本体に旋回可能に設けられたブームと、このブームに設けられたブームコンベヤと、前記ブームの基端部に設けられたカウンタウェイトビームとを有する走行式スタッカが、トリッパを連結支持する支持構造であって、前記トリッパは、トリッパ脚部を有し、当該走行式スタッカに伴ってレール上を移動自在であり、地上コンベヤのベルトを斜め上方に持ち上げるものであり、前記カウンタウェイトビームが、前記ブームの旋回によって前記トリッパの下方を通るように配置され、前記スタッカ本体が、前記トリッパのヘッド部を連結支持部で連結支持する構成としたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造によると、スタッカ本体がトリッパのヘッド部を連結支持部で連結支持する構成であるので、トリッパを支持してレール上を移動させるためのトリッパ脚部を、走行式スタッカから遠ざけた位置に配置することができると共に、小型化することができる。よって、カウンタウェイトビームが、ブームの旋回によってトリッパの下方を通るときに、このトリッパ脚部に接触しないようにすることができ、その結果、カウンタウェイトビームを比較的長く形成することができる。このカウンタウェイトビームは、ブームのバランスをとる補助となるカウンタウェイトを含むものである。
【0015】
この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造において、前記スタッカ本体は、下側旋回支持部を介して旋回可能に設けられている旋回フレームを有し、この旋回フレームに前記ブームが設けられ、この旋回フレームの上部に上側旋回支持部を介して前記トリッパのヘッド部が設けられているものとすることができる。
【0016】
このようにすると、トリッパのスタッカ本体側の重量を上側旋回支持部、旋回フレーム、及び下側旋回支持部によって支持することができる。そして、旋回フレームが旋回可能に下側旋回支持部によって支持され、かつ、旋回フレームの上部に上側旋回支持部を介してトリッパのヘッド部が設けられているので、下側旋回支持部が設けられているスタッカ本体の下側部及びトリッパに拘束されずに、旋回フレームに設けられているブームを、この旋回フレームと共に自由に旋回させることができる。
【0017】
この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造において、前記連結支持部が、前記トリッパのヘッド部を、水平に配置されたトリッパ支持ピンを中心にして揺動自在に支持するピン構造部であるものとすることができる。
【0018】
このようにすると、例えばトリッパ及びトリッパ上のバラ物搬送物の重量によって、トリッパが撓んだときに、トリッパとスタッカ本体との間で生じるトリッパの相対的変位を、ピン構造部によって許容することができる。これによって、トリッパ及びスタッカ本体、並びに、上側旋回支持部及び下側旋回支持部が設けられているものでは、これらの各旋回支持部に対して働く前記相対的変位に基づく力、例えばモーメントを低減し又は解消することができる。
【0019】
この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造において、前記ブームは、その上部がブーム支持ピンを介して前記スタッカ本体に揺動自在に吊下げられているものとすることができる。
【0020】
このようにすると、ブームを、ブーム支持ピンを中心にして俯仰方向に揺動させたときに、その揺動の中心をブームの上部に位置させることができる。これによって、ブーム、ブームコンベヤ、及びブームコンベヤによって搬送されるバラ物搬送物の合計重量の重心(ブーム等の重心)がブームの上部に位置する場合においては、このブームの揺動の中心位置を、ブーム等の重心位置に近付けることができる。その結果、ブームを揺動させたときに、ブーム等の重心位置の水平方向の移動距離を小さくすることができ、ブーム等の重心位置の水平方向の移動によって、ブーム等の重量がスタッカ本体に対して働く力、例えばモーメントを低減することができる。これによって、例えばブームを俯仰方向に揺動駆動させるための揺動駆動装置の発生する力が小さくて済み、揺動駆動装置のコストの低減を図ることができる。
【0021】
この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造において、前記ブームは、前記旋回フレームの内側に挿通されて配置され、当該ブームの上部がブーム支持ピンを介して前記旋回フレームに揺動自在に吊下げられ、更に、前記ブームの側面に点検通路が設けられているものとすることができる。
【0022】
このように、ブームを揺動自在に支持するブーム支持ピンを、ブームの上部に設けると、点検者がブームの側面に設けた点検通路を通るときに、ブーム支持ピンが障害とならないようにすることができる。これによって、ブームコンベヤ等の点検作業の労力の軽減を図ることができる。
【0023】
この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造において、前記トリッパのヘッド部には、トリッパシュートが設けられ、前記トリッパシュートは、環状に形成された前記上側旋回支持部の内側に配置され、前記トリッパシュートの下側開口部が前記ブームコンベヤに向かうように形成されているものとすることができる。
【0024】
このように、トリッパシュートを、環状に形成された上側旋回支持部の内側に配置すると、上側旋回支持部がトリッパのヘッド部を支持することができるようにして、しかも、トリッパシュートが、旋回するブームと干渉しないようにすることができ、ブームを自在に旋回させることができる。そして、トリッパを通って地上コンベヤで搬送されてきたバラ物搬送物を、トリッパシュートに通してブームコンベヤに送り出すことができる。
【0025】
本発明に係る走行式荷役装置は、この発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造が適用された前記走行式スタッカ及び前記トリッパを備えることを特徴とするものである。
【0026】
本発明に係る走行式荷役装置によると、本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造を備えており、この走行式スタッカのトリッパ支持構造は、上記と同様に作用する。そして、この走行式荷役装置によると、走行式スタッカ及びこれに連結支持されているトリッパは、レール上を走行して所望の走行位置に移動することができる。そして、その移動した位置で、地上コンベヤによって搬送されてくるバラ物搬送物を、トリッパによって斜め上方に向かって搬送して、ブームコンベヤに送り出すことができる。そして、このブームコンベヤに送り出されたバラ物搬送物を、ブームコンベヤによって搬送してその先端部から排出することができる。この排出されたバラ物搬送物は、例えばヤードに山積みされる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置によると、スタッカ本体がトリッパのヘッド部を連結支持部で連結支持する構成として、カウンタウェイトビームを比較的長く形成することができるようにしたので、必要とされる所定のモーメントを生じさせるためのカウンタウェイトを含むカウンタウェイトビームの重量の低減を図ることができる。また、トリッパ脚部を小型化することができるようにしたので、これら走行式スタッカ及びトリッパのコストの低減及びそれらの製造に要する期間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態に係る走行式荷役装置を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、平面図である。
【図2】図1(a)に示す走行式荷役装置の側面図である。
【図3】同実施形態に係る走行式荷役装置を示す概略側面図である。
【図4】図3に示す走行式荷役装置に適用されている走行式スタッカのトリッパ支持構造を側面方向から見た部分拡大側面図である。
【図5】図3に示す走行式荷役装置に適用されている走行式スタッカのトリッパ支持構造を正面方向から見た部分拡大正面図である。
【図6】図4に示す走行式スタッカのトリッパ支持構造においてブーム支持ピンとブーム等の重心位置との関係を示す図である。
【図7】従来の走行式荷役装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造、及びそれを備える走行式荷役装置の一実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。図1(a)、(b)に示す走行式荷役装置15は、図1(b)の平面図に示すように、走行式スタッカ16に設けられているブーム17が、レール18の方向に対して略直角を成す位置に旋回している状態を示している。図3の走行式荷役装置15の概略側面図は、図1に示す走行式荷役装置15のブーム17が、レール18の方向と平行する位置にある状態を示している。
【0030】
この図1〜図3に示す走行式荷役装置15によると、走行式スタッカ16及びこれに連結支持されているトリッパ19は、レール18上を走行して所望の走行位置に移動して停止することができる。そして、その移動した位置で、地上コンベヤ20によって搬送されてくるバラ物搬送物を、トリッパ19によって斜め上方に向かって搬送して、ブームコンベヤ21に送り出すことができる。そして、このブームコンベヤ21に送り出されたバラ物搬送物を、ブームコンベヤ21によって搬送してその先端部から排出することができる。この排出されたバラ物搬送物は、例えばヤード22に山積みされる。
【0031】
図3に示す走行式荷役装置15が備えている走行式スタッカ16は、ヤード22に沿って延びるレール18(図1参照)上を走行する走行機体23(例えば走行台車)と、その上に旋回可能に設けられた旋回フレーム24と、この旋回フレーム24に俯仰可能に支持されたブーム17とを備えている。
【0032】
そして、このブーム17には、ブームコンベヤ21がその上部位置に設けられている。また、ブーム17の基端部には、このブーム17と反対側に延びるカウンタウェイトビーム25が設けられ、このカウンタウェイトビーム25は、カウンタウェイト25aを備えている。これら走行機体23及び旋回フレーム24は、スタッカ本体26に含まれる。
【0033】
また、この走行式スタッカ16には、走行するための走行駆動部と、ブーム17を旋回駆動するための旋回駆動部と、ブーム17を俯仰方向に揺動駆動するための揺動駆動装置27(例えば油圧シリンダ装置)と、ブームコンベヤ21を駆動するためのコンベヤ駆動部が設けられている。
【0034】
図3に示す走行式荷役装置15が備えているトリッパ19は、トリッパ本体19aを有し、このトリッパ本体19aの先端部であるヘッド部19bが、連結支持部28を介してスタッカ本体26の上端部に連結支持されている。そして、トリッパ19は、トリッパ本体19aを支持するトリッパ脚部29を有し、このトリッパ脚部29は、その下端に車輪を備えている。このトリッパ19は、走行式スタッカ16に牽引されてレール18上を移動できるものである。そして、トリッパ19は、地上コンベヤ20のベルトが掛けられており、このベルトを斜め上方に持ち上げるように構成されている。
【0035】
そして、図3に示すように、カウンタウェイトビーム25は、ブーム17の旋回によってトリッパ本体19aの下方を通るように配置されている。
【0036】
また、図3に示すように、走行機体23とトリッパ脚部29とは、連結部材41で互いに連結されている。ただし、図2に示すように、この連結部材41は、省略することができる。
【0037】
この図3に示す走行式スタッカのトリッパ支持構造30によると、スタッカ本体26がトリッパ19のヘッド部19bを連結支持部28で連結支持する構成であるので、トリッパ19を支持してレール18上を移動させるためのトリッパ脚部29を、スタッカ本体26から遠ざけた位置に配置することができると共に、小型化することができる。よって、カウンタウェイトビーム25が、ブーム17の旋回によってトリッパ本体19aの下方を通るときに、このトリッパ脚部29に接触しないようにすることができ、その結果、カウンタウェイトビーム25の長さL2(>L1)を比較的長く形成することができる。このカウンタウェイトビーム25は、ブーム17のバランスをとる補助となるカウンタウェイト25aを備えているものである。
【0038】
このように、カウンタウェイトビーム25を比較的長く形成することができるので、必要とされる所定のモーメントを生じさせるためのカウンタウェイト25aを含むカウンタウェイトビーム25の重量の低減を図ることができる。また、トリッパ脚部29を小型化することができるようにしたので、これら走行式スタッカ16及びトリッパ19のコストの低減及びそれらの製造に要する期間の短縮を図ることができる。
【0039】
ところで、図3に示すように、トリッパ本体19aを支持するトリッパ脚部29を、スタッカ本体26から遠ざけた位置に配置しているが、トリッパ本体19aの先端部であるヘッド部19bが、連結支持部28を介してスタッカ本体26の上端部に連結支持されているので、トリッパ19の安定性は優れている。
【0040】
また、図3に示す旋回フレーム24は、例えば矩形の枠状に形成され、下側旋回支持部31を介して旋回可能に走行機体23上に設けられている。そして、この旋回フレーム24の上部には、上側旋回支持部32を介してトリッパ19のヘッド部19bが設けられている。これら下側旋回支持部31及び上側旋回支持部32は、例えば円環状に形成された旋回ベアリングで構成されている。勿論、これ以外の旋回支持構造としてもよい。
【0041】
このように構成したので、図3に示すトリッパ19のスタッカ本体26側の重量を上側旋回支持部32、旋回フレーム24、下側旋回支持部31、及び走行機体23によって支持することができる。そして、旋回フレーム24が旋回可能に下側旋回支持部31によって支持され、かつ、旋回フレーム24の上部に上側旋回支持部32を介してトリッパ19のヘッド部19bが設けられているので、下側旋回支持部31が設けられている走行機体23及びトリッパ19に拘束されずに、旋回フレーム24に設けられているブーム17を、この旋回フレーム24と共に自由に旋回させることができる。
【0042】
そして、図4及び図5に示すように、旋回フレーム24の上部には、連結支持部28が設けられ、この連結支持部28は、ピン構造部で構成されている。この連結支持部28は、トリッパ19のヘッド部19bを、水平に配置されたトリッパ支持ピン33を中心にして揺動自在に支持している。
【0043】
つまり、図4及び図5に示す上側旋回支持部32には、上方に向かって突出する下側突起34が2つ互いに間隔を隔てて設けられている。そして、トリッパ19のヘッド部19bの下面から下方に向かって突出する上側突起35が2つ互いに間隔を隔てて設けられている。トリッパ支持ピン33は、これら各対の下側突起34と上側突起35に形成された凹部に装着されている。
【0044】
ただし、図には示さないが、これに代えて、トリッパ支持ピン33を、これら各対の下側突起と上側突起に形成された貫通孔に挿通してもよい。
【0045】
このように構成したので、図4に二点鎖線で示すように、例えばトリッパ本体19a及びトリッパ19上のバラ物搬送物の重量によって、トリッパ本体19aが撓んだときに、トリッパ19とスタッカ本体26との間で生じるトリッパ本体19aの撓み方向の相対的変位を、連結支持部28(ピン構造部)によって許容することができる。これによって、トリッパ本体19a及びスタッカ本体26に対して働く前記相対的変位に基づく力、例えばモーメントを低減し又は解消することができる。
【0046】
これによって、図4に示す上側旋回支持部32(旋回ベアリング)及び下側旋回支持部31(旋回ベアリング)に掛かる偏った荷重を低減又は解消することができ、これらの各旋回支持部31、32の小型化を図ることができると共に、寿命を長引かせることができる。
【0047】
また、図4及び図5に示すように、ブーム17は、旋回フレーム24の内側に挿通されて配置され、ブーム17の上部がブーム支持ピン36を介して旋回フレーム24の上壁部に揺動自在に吊下げられている。ブーム17は、このブーム支持ピン36を中心に俯仰方向に揺動することができる。
【0048】
つまり、図5に示すブーム17の左右の各側面から上方に向かって突出する下側突起37が2つ設けられている。そして、旋回フレーム24の上壁部の下面から下方に向かって突出する上側突起38が2つ互いに間隔を隔てて設けられている。ブーム支持ピン36は、これら各対の下側突起37と上側突起38に形成された貫通孔に挿通している。
【0049】
このように構成したので、図4に示すブーム17を、ブーム支持ピン36を中心にして俯仰方向に揺動させたときに、その揺動の中心をブーム17の上部に位置させることができる。
【0050】
これによって、ブーム17、ブームコンベヤ21、及びこれによって搬送されるバラ物搬送物の合計重量の重心(ブーム17等の重心)G1がブーム17の上部に位置する場合においては、このブーム17の揺動の中心位置を、ブーム17等の重心位置に近付けることができる。
【0051】
その結果、図6の左側の図に示すように、ブーム17を揺動させたときに、ブーム17等の重心G1の位置の水平方向の移動距離S1、S2を小さくすることができ、ブーム17等の重心位置の水平方向の移動によって、ブーム17等の重量がスタッカ本体26に対して働く力、例えばモーメントを低減することができる。
【0052】
これによって、例えばブーム17を俯仰方向に揺動駆動させるための揺動駆動装置27(図1(a)参照)、例えば油圧シリンダ装置の発生する力が小さくて済み、油圧シリンダ装置のコストの低減を図ることができる。
【0053】
この実施形態では、図6の左側の図に示すように、重心G1がブーム17の上方に位置している。このように、重心G1がブーム17の上方に位置しているのは、カウンタウェイト25aの重量のためである。
【0054】
この図6は、ブーム支持ピン36と、ブーム17等の重心G1の位置との関係を示している。図6の左側の図は、この実施形態の例を示しており、ブーム支持ピン36がブーム17の上方位置に設けられている。図6の右側の図は、ブーム支持ピン36がブーム17の略中央位置に設けられている例を示している。この図6から分かるように、ブーム支持ピン36と重心G1との距離をK2からK1に短くすると(K2−K1=K3)、ブーム17を揺動させたときの重心G1の水平方向の移動距離を、S3、S4からS1、S2に短くすることができる。
【0055】
また、図5に示すように、ブーム17は、旋回フレーム24の内側に挿通されて配置され、ブーム17の上部がブーム支持ピン36を介して旋回フレーム24に揺動自在に吊下げられ、更に、ブーム17の左右の各側面に点検通路39が設けられている。
【0056】
このように、ブーム17を揺動自在に支持するブーム支持ピン36を、ブーム17の上部に設けると、点検者がブーム17の左右の各側面に設けた点検通路39を通るときに、ブーム支持ピン36が障害とならないようにすることができる。これによって、ブームコンベヤ21等の点検作業の労力の軽減を図ることができる。
【0057】
そして、図5に示すように、ブーム支持ピン36及びブームコンベヤ21を、ブーム17の上部の互いに近い位置に設けてあるので、点検者は、点検通路39からこれらブーム支持ピン36及びブームコンベヤ21の両方を容易に点検することができる。
【0058】
更に、図4及び図5に示すように、トリッパ19のヘッド部19bには、トリッパシュート40が設けられている。このトリッパシュート40は、環状に形成された上側旋回支持部32の内側に配置され、トリッパシュート40の下側開口部がブームコンベヤ21の上面に向かうように形成されている。
【0059】
このように、トリッパシュート40を、環状に形成された上側旋回支持部32の内側に配置すると、上側旋回支持部32がトリッパ19のヘッド部19bを支持することができるようにして、しかも、トリッパシュート40が、旋回するブーム17と干渉しないようにすることができ、ブーム17を自在に旋回させることができる。そして、トリッパ19を通って地上コンベヤ20で搬送されてきたバラ物搬送物を、トリッパシュート40に通してブームコンベヤ21に送り出すことができる。
【0060】
ただし、上記実施形態では、図3に示すように、自走する走行機体23を走行式スタッカ16に設け、トリッパ19に設けていない例を示したが、これに代えて、自走する走行機体を走行式スタッカ16及びトリッパ19の両方に設けてもよい。
【0061】
そして、上記実施形態では、ブーム17を俯仰可能な構成としたが、これに代えて、俯仰しない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置は、カウンタウェイトビームを比較的長く形成できるようにして、カウンタウェイトビーム、ひいては、走行式スタッカ及びトリッパの重量の低減を図ることができる優れた効果を有し、このような走行式スタッカのトリッパ支持構造及び走行式荷役装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0063】
15 走行式荷役装置
16 走行式スタッカ
17 ブーム
18 レール
19 トリッパ
19a トリッパ本体
19b ヘッド部
20 地上コンベヤ
21 ブームコンベヤ
22 ヤード
23 走行機体
24 旋回フレーム
25 カウンタウェイトビーム
25a カウンタウェイト
26 スタッカ本体
27 揺動駆動装置
28 連結支持部
29 トリッパ脚部
30 走行式スタッカのトリッパ支持構造
31 下側旋回支持部
32 上側旋回支持部
33 トリッパ支持ピン
34、37 下側突起
35、38 上側突起
36 ブーム支持ピン
39 点検通路
40 トリッパシュート
41 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行するスタッカ本体と、
このスタッカ本体に旋回可能に設けられたブームと、
このブームに設けられたブームコンベヤと、
前記ブームの基端部に設けられたカウンタウェイトビームとを有する走行式スタッカが、トリッパを連結支持する支持構造であって、
前記トリッパは、トリッパ脚部を有し、当該走行式スタッカに伴ってレール上を移動自在であり、地上コンベヤのベルトを斜め上方に持ち上げるものであり、
前記カウンタウェイトビームが、前記ブームの旋回によって前記トリッパの下方を通るように配置され、
前記スタッカ本体が、前記トリッパのヘッド部を連結支持部で連結支持する構成としたことを特徴とする走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項2】
前記スタッカ本体は、下側旋回支持部を介して旋回可能に設けられている旋回フレームを有し、この旋回フレームに前記ブームが設けられ、
この旋回フレームの上部に上側旋回支持部を介して前記トリッパのヘッド部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項3】
前記連結支持部が、前記トリッパのヘッド部を、水平に配置されたトリッパ支持ピンを中心にして揺動自在に支持するピン構造部であることを特徴とする請求項1又は2記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項4】
前記ブームは、その上部がブーム支持ピンを介して前記スタッカ本体に揺動自在に吊下げられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項5】
前記ブームは、前記旋回フレームの内側に挿通されて配置され、当該ブームの上部がブーム支持ピンを介して前記旋回フレームに揺動自在に吊下げられ、更に、前記ブームの側面に点検通路が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項6】
前記トリッパのヘッド部には、トリッパシュートが設けられ、
前記トリッパシュートは、環状に形成された前記上側旋回支持部の内側に配置され、前記トリッパシュートの下側開口部が前記ブームコンベヤに向かうように形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の走行式スタッカのトリッパ支持構造が適用された前記走行式スタッカ及び前記トリッパを備えることを特徴とする走行式荷役装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218848(P2012−218848A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84537(P2011−84537)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】