説明

走行式植物パネル浸漬装置

【課題】 従来の浸漬を行う植物水耕栽培装置において、高価な培養液を大量に使用する欠点を改善することを課題とする。
【解決手段】 栽培槽と別体の浸漬槽に浸漬液を入れ、
上記浸漬槽に、矩形植物パネルの左右両側端部を走行自在に支持すべき左右一対の植物パネル案内レールを、上記浸漬液面上の位置から下り傾斜で上記浸漬液中に進入し、ついで上記植物パネルを液中に埋没させる深さで上記浸漬液中を進行し、ついで上記浸漬液中から浸漬液面上に浮上するコースに配設し、
上記案内レールに沿って各植物パネルを前進駆動させて上記コースを走行させるようにした、
走行式植物パネル浸漬装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、栽培槽とは別体の浸漬槽に好ましくは安価な浸漬液を入れ、該液に、植物を植えたパネル(以下植物パネルという)を浸漬させる走行式植物パネル浸漬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培槽内の培養液面に多数枚の植物パネルを浮かべて行う水耕栽培において、植物に付着した害虫を駆除するため、上記植物パネルを培養液中に浸漬する各種の浸漬装置が提案されてきた。
【0003】
しかし、これら従来の害虫駆除用浸漬装置は、いずれも、水耕栽培を行っていた栽培槽において引き続き浸漬を行うものであるため、植物パネル浸漬に備えて栽培槽を深底に形成すると共に、これに、栽培に必要な量を超えた大量の培養液を入れておく必要があり、そのため高価な培養液を栽培以外に大量に用意しなければならない経済上の問題が残されていた。
【特許文献1】特許第3841156号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、従来における高価な培養液を大量に使用する欠点を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題解決の手段として、本願第1発明は、
栽培槽と別体の浸漬槽に浸漬液を入れ、
上記浸漬槽に、矩形植物パネルの左右両側端部を走行自在に支持すべき左右一対の植物パネル案内レールを、上記浸漬液面上の位置から下り傾斜で上記浸漬液中に進入し、ついで上記植物パネルを液中に埋没させる深さで上記浸漬液中を進行し、ついで上記浸漬液中から浸漬液面上に浮上するコースに配設し、
上記案内レールに沿って各植物パネルを前進駆動させて上記コースを走行させるようにした、
走行式植物パネル浸漬装置を提案する。
【0006】
又、本願第2発明は、
栽培槽と別体の浸漬槽に浸漬液を入れ、
上記浸漬槽の一端部及び他端部に左右一対づつそれぞれ軸支された駆動及び従動駆帯車に左右一対の無端駆帯を掛け渡し、上記無端駆帯の下側走行帯を、上記浸漬液面上の位置から下り傾斜で上記浸漬液中に進入し、ついで上記植物パネルを液中に埋没させる深さで上記浸漬液中を進行し、ついで上記浸漬液中から上記浸漬液面上に浮上するコースに配設し、
上記駆動する無端駆帯の下側走行帯に各植物パネルを随伴させて上記コースを走行させるようにした、
走行式植物パネル浸漬装置を提案する。
【発明の効果】
【0007】
本願第1及び第2発明の走行式植物パネル浸漬装置によれば、栽培槽とは別体の浸漬専用槽により浸漬を行うから、栽培槽の培養液は栽培に必要な最少の量を入れればよく、しかも浸漬槽には安価な浸漬液(例えば水)を入れればよいから、経済的に極めて有利となる。
【0008】
又、本装置の構成によれば、植物パネルを浸漬液中に進入させるとき、植物パネルを傾斜姿勢で行うから、パネル面に受ける液圧抵抗を低減させることができ、それにより植物パネルの浸漬作業を容易に行うことができるようになり、特に発泡スチロール製等の浮揚型パネルを使用した場合に、その効果が著しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明における植物を植える「パネル」は、発泡スチロール、木材等からなる浮揚型パネル又は金属、合成樹脂等からなる沈下型パネルのいずれかを選択的に使用する。
【0010】
又、本願第1発明における「案内レール」には、横断面溝形レール、L形レール等から、レールの敷設位置、使用するパネルの浮揚型、沈下型等の種類に応じて選択的に使用する。
【0011】
さらに、本願第1発明における「各植物パネルを前進駆動させる」手段には、空圧、水圧等の流体圧シリンダ、クランクによる揺動レバー、その他種々の駆動装置が選択的に使用される。
【実施例】
【0012】
以下図面を参照して本願発明の実施例について詳述する。
第1発明の実施例
図1(イ)、(ロ)において、上面開口した直線横長の浸漬槽(1)内に、浸漬液(2)として水を入れ、この浸漬槽(1)の相対する長い左右側壁(3)、(3)の内側面に沿って、植物パネル(P)…を一定コースに案内すべき溝形案内レール(4)、(4)を互に溝口を対向させて平行に敷設してある。
【0013】
上記案内レール(4)、(4)の敷設コースは次のようである。浸漬槽(1)の後端外側に、槽の後側壁(5)と同一高さのほぼ水平のスタート台(6)を形成し、該スタート台(6)上に若干間隔をあけて案内レール(4)、(4)の後端スタート部(7)、(7)を適宜ブラケットを介してほぼ水平に支持し、ついで上記スタート部(7)、(7)から下り傾斜で延長しつつ浸漬液(2)内に進入して槽内底面と適宜間隔をあけた位置に至る下り傾斜部(8)、(8)を形成し、ついで上記下り傾斜部(8)、(8)から植物パネル(P)が埋没する深さで浸漬液(2)中を水平に延長する水平浸漬部(9)、(9)を形成し、ついで上記浸漬部(9)、(9)から上り傾斜で浸漬液面上に浮上して槽(1)の前側壁(5)上の若干間隔をあけた位置まで上昇する上り傾斜部(10)、(10)を形成したコースである。
【0014】
上記植物を植えるパネル(P)…は、本例では、図5に示すように、発泡スチロール製の矩形板状本体(11)の四周に合成樹脂製枠(12)を嵌めつけたもので、その本体(11)に貫通した定植孔に植物の基部を保持し、根を本体(11)裏側に延出させている。このような植物パネル(P)の相対する短辺部を上記左右一対の案内レール(4)、(4)の溝内に摺動自在に保持させるのである。
【0015】
上記浸漬槽(1)のスタート台(6)の側側に植物パネル位置決め装置(13)を、さらにその後側に、正位置に位置決めされた植物パネル(P)を上記案内レール(4)、(4)に押しこみ、走行させる走行駆動装置(14)をそれぞれ配設してある。
【0016】
まず、位置決め装置(13)は次のようである。図1、2に示すように、上記スタート台(6)の後側に、上記パネル(P)の縦横寸法より適宜広い四角筒状ピット(15)を形成すると共に、その開口上面に、上記スタート台(6)と同高のテーブル板(16)を張設し、このピット(15)内中央に昇降エアシリンダ(17)を垂直に設置すると共に、該シリンダ(17)のピストンロッド(18)上端に、図4に示すように前後規制板(19)、(19)を平行に起立するコ字状規制昇降板(20)を固定し、この昇降板(20)は、シリンダ(17)の伸長駆動時に、上記前後規制板(19)、(19)を上記テーブル板(16)に開設された溝からテーブル板(16)上の前後位置に突出させ、上記シリンダ(17)の縮小駆動時に、規制板(19)、(19)をテーブル板(16)上面以下に降下する位置関係にある。
【0017】
上記テーブル板(16)の左方(図1(ロ)において下方)に、直線横長の栽培槽(27)が上記浸漬槽(1)に対し直角方向に配置され、この栽培槽(27)から植物パネル(P)…が上記テーブル板(16)上に横長の向きで順次送られてくるので、上記前後規制板(19)、(19)は、送られてくる植物パネル(P)を受け入れ且つパネルの前後位置、姿勢を決めるため、該パネル(P)の短辺よりやや広い間隔で、上記案内レール(4)、(4)の延長方向に対し直角に位置している。
【0018】
上記テーブル板(16)上において植物パネル(P)の左右位置を決める手段として、上記テーブル板(16)の右側辺(図1(ロ)において上辺)に右規制板(21)を、上記前後規制板(19)、(19)に対し直角に突設してある。左側の規制手段としては、テーブル板(16)にある植物パネル(P)と隣接する後続の植物パネル(P)が左規制板の役割を果す。
【0019】
走行駆動装置(14)には、本例では走行駆動用エアシリンダ(22)が使用され、該シリンダ(22)を、上記案内レール(4)、(4)の延長方向と平行に設置し、そのピストンロッド(23)の先端に横長の押し板(24)の中間部を固定すると共に、押し板(24)の両側部にガイドロッド(25)、(25)の各一端部を固定し、両ガイドロッド(25)、(25)を、上記シリンダ(22)の両側に平行に設置されたガイド筒(26)、(26)に摺動自在に挿通保持させてある。
【0020】
上記栽培槽(27)には培養液(28)を入れ、該培養液面に植物パネル(P)…を互に隣接状態で一列に浮かべてあり、この栽培槽(27)の先端部に、図2に示すように培養液(28)中から傾斜して上記テーブル板(16)の左側端まで延長する植物パネル案内ブリッジ(29)を架け、又栽培槽(27)の後端部に、図1(ロ)に示すように、植物パネル(P)…列を後押しするエアシリンダ(30)を設置してある。
【0021】
浸漬槽(1)前端の前側には、一例として培養液(32)を入れた直線横長の栽培槽(31)の後端部を直角に配置すると共に、上記浸漬槽(1)の前側壁(5)と栽培槽(31)の後端部側壁とに山形の植物パネル案内ブリッジ(33)を架け渡し、又上記栽培槽(31)後端部に、植物パネル後押し用エアシリンダ(34)を設置してある。
【0022】
上記栽培槽(31)には、一例としてその先端部側壁に、新たな直線横長の栽培槽(35)の後端部を連通状態で直角に接続し、該栽培槽(35)の先端部を、図1(ロ)のように上記栽培槽(27)の後端部側壁に連通状態で直角に接続すると共に、栽培槽(35)の後端部に植物パネル後押し用エアシリンダ(図示略)を設置し、それにより植物パネル(P)…を水耕栽培と浸漬処理とに循環できるように構成してある。
【0023】
上記各栽培槽(27)、(31)、(35)は浅底とし、栽培に必要なだけの量の培養液を入れてある。
【0024】
上例の作用を作業とともに次に説明する。昇降エアシリンダ(17)の伸長駆動により昇降板(20)を上昇させ、その前後規制板(19)、(19)をテーブル板(16)上に突出させた状態で、栽培槽(27)の後押しエアシリンダ(30)の伸長駆動により一列の植物パネル縦隊(P)…を前進させ、最前のパネル(P)をブリッジ(29)を経てテーブル板(16)上の前後規制板(19)、(19)間に送りこみつつ右規制板(21)に当接させる。それにより最前の植物パネル(P)が、前後規制板(19)、(19)、及び右規制板(21)と後続の植物パネル(P)により四辺を保持されて正位置に正姿勢で位置される。
【0025】
次に、昇降エアシリンダ(17)の縮小駆動により前後規制板(19)、(19)を降下させ、その状態で走行駆動用エアシリンダ(22)の伸長駆動により押し板(24)にてテーブル板(16)上の植物パネル(P)を前方へ押し出し、その左右側端部を案内レール(4)、(4)に摺動自在に押しこむ。
【0026】
上記押し板(24)による押しこみ後、駆動用エアシリンダ(22)の縮小駆動により該押し板(24)をテーブル板(16)後方へ後退させ、ついで昇降エアシリンダ(17)の駆動により前後規制板(19)、(19)をテーブル板(16)上に突出させ、次の新たな植物パネルの送りこみに備える。
【0027】
栽培槽(27)においては、最前位の植物パネル(P)をテーブル板(16)上に押し出し、ついで案内レール(4)、(4)に押しこんだ後、直ちに後押しシリンダ(30)を縮小させ、されにより最後位の植物パネル(P)の後にほぼパネル(P)1枚分の空所が残るから、この空所に、栽培槽(35)内の最前位の植物パネル(P)を後押しにより送りこむ。同様に栽培槽(35)内の最後位の植物パネル(P)の後に空所が残るから、その空所に、栽培槽(31)内の最前位の植物パネル(P)を後押しにより送りこみ、それにより栽培槽(31)内の最後位の植物パネル(P)の後に空所が残る。
【0028】
上述の作業を繰り返すことにより、案内レール(4)、(4)に植物パネル(P)を順次送りこんで各植物パネル(P)…をレール(4)、(4)に沿って間欠的に前進させ、それにより下り傾斜部(8)、(8)から水平浸漬部(9)、(9)に進行させ、そこで植物を完全に水(2)内に没入させて害虫駆除を行い、ついで上り傾斜部(10)、(10)に進んで水中から浮上させ、ついで上り傾斜部(10)、(10)の開口前端から前方へ脱出させ、ブリッジ(33)を経て栽培槽(31)の最後位空所に送り出す。
【0029】
第2発明の実施例
図6、図7において、上面開口の直線横長浸漬槽(1a)の前側壁(5a)上位の左右両側部に左右一対の駆動スプロケット(36a)、(36a)を、後側壁(5a)上位の左右両側部に左右一対の従動スプロケット(37a)、(37a)をそれぞれブラケット(38a)(38a)、(39a)(39a)により支承し、これら左右の駆動及び従動スプロケット(36a)(37a)、(36a)(37a)にそれぞれ無端ローラチエン(40a)、(40a)を掛け渡し、この左右無端ローラチエン(40a)、(40a)における、上記従動スプロケット(37a)、(37a)から下側へ回って駆動スプロケット(36a)、(36a)に至る下側走行帯を、ほぼ水平のスタート部(7a)、(7a)から下り傾斜で浸漬液(2a)中に進入する下り傾斜部(8a)、(8a)に、ついで植物パネル(Pa)が埋没する深さで水平に液中を延長する水平浸漬部(9a)、(9a)に、ついで上り傾斜で浸漬液(2a)面上に浮上して駆動スプロケット(36a)、(36a)に至るコースに形成してある。
【0030】
左右一対の無端ローラチエン(40a)、(40a)には、左右チエンの対応するリンクに両端部を固定された長い植物パネル後押し用押し板(41a)…を、図7に示すように左右チエン(40a)、(40a)の走行面から外方へ直角に起立した状態で、走行方向に植物パネル(Pa)の前後幅より適宜広い間隔をあけて、無端チエン(40a)、(40a)全長にわたって突設してある。
【0031】
さらに、左右チエン(40a)、(40a)の各外側リンクに、図7に示すように植物パネル(Pa)…の各左右側端部を受支すべき短い受支片(42a)…、(42a)…を左右対向する方向へ突設してある。
【0032】
(43a)は上記駆動スプロケット(36a)、(36a)の軸端に接続された減速機つきモータである。他の構造は図1、2、3、4、5と実質的に同一である。
【0033】
本例では、一例として、駆動スプロケット(36a)、(36a)の一定角度づつの間欠的回転により無端チエン(40a)、(40a)を一定長づつ間欠的に走行させ、その停止ごとに押しこみエアシリンダ(22a)の駆動によりテーブル板(16a)上に位置決めされた植物パネル(Pa)をスタート台(6a)上に押し出し、ついでチエン(40a)、(40a)の一定長走行により押し板(41a)により押して一定長前進させ、この一定走行、前進を繰り返して、植物パネル(Pa)…を、連続する押し板(41a)…により押してチエンに随伴させつつ下り傾斜部(8a)、(8a)から水平浸漬部(9a)、(9a)に前進させ、そこで水中に埋没させて害虫駆除を行う。
【0034】
ついで、植物パネル(Pa)を上り傾斜部(10a)、(10a)に走行させて浸漬液(2a)面上に浮上させ、そしてブリッジ(33a)を経て栽培槽(31a)内に送り出す。
【0035】
上記駆動スプロケット(36a)、(36a)の一定角度間欠回転は所要のタイマー等を付加して行うとよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(イ)本願第1発明の実施例の縦断側面図である。 (ロ)同上例の一部省略平面図である。
【図2】図1(ロ)のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1(イ)のB−B線拡大断面図である。
【図4】規制昇降板の拡大斜面図である。
【図5】植物パネルの拡大斜面図である。
【図6】(イ)本願第2発明の実施例の縦断側面図である。 (ロ)同上例の一部省略平面図である。
【図7】図6(イ)のC−C線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1、1a 浸漬槽
2、2a 浸漬液
P、Pa 植物パネル
4 案内レール
8、8a 下り傾斜部
9、9a 水平浸漬部
10、10a 上り傾斜部
22 走行駆動用エアシリンダ
22a 押しこみ用エアシリンダ
27、27a、31、31a、35 栽培槽
36a 駆動スプロケット
37a 従動スプロケット
40a 無端ローラチエン
41a 押し板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培槽と別体の浸漬槽に浸漬液を入れ、
上記浸漬槽に、矩形植物パネルの左右両側端部を走行自在に支持すべき左右一対の植物パネル案内レールを、上記浸漬液面上の位置から下り傾斜で上記浸漬液中に進入し、ついで上記植物パネルを液中に埋没させる深さで上記浸漬液中を進行し、ついで上記浸漬液中から浸漬液面上に浮上するコースに配設し、
上記案内レールに沿って各植物パネルを前進駆動させて上記コースを走行させるようにした、
走行式植物パネル浸漬装置。
【請求項2】
栽培槽と別体の浸漬槽に浸漬液を入れ、
上記浸漬槽の一端部及び他端部に左右一対づつそれぞれ軸支された駆動及び従動駆帯車に左右一対の無端駆帯を掛け渡し、上記無端駆帯の下側走行帯を、上記浸漬液面上の位置から下り傾斜で上記浸漬液中に進入し、ついで植物パネルを液中に埋没させる深さで上記浸漬液中を進行し、ついで上記浸漬液中から上記浸漬液面上に浮上するコースに配設し、
上記駆動する無端駆帯の下側走行帯に各植物パネルを随伴させて上記コースを走行させるようにした、
走行式植物パネル浸漬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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