説明

走行車線認識装置

【課題】対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを判定する。
【解決手段】走行車線認識装置(100)は、第1の車両(10、30)に係る速度パターンである第1速度パターンと、第2の車両(20)に係る速度パターンである第2速度パターンと、を取得する取得手段(14、15、ANT)と、取得された第1速度パターンと、取得された第2速度パターンとの類似性に基づいて、第1の車両と第2の車両とが同一車線を走行しているか否かを判定する判定手段(11)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等である車両が走行している車線を認識する走行車線認識装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、レーダにより検出された先行車が、該レーダの探知範囲から決定された自車線領域又は他車線領域のいずれの領域にも位置しない場合、検出された先行車と自車との相対速度に基づいて、検出された先行車が自車線か他車線かを判定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、自律センサにより検出された第1の他車の速度変化と、車車間通信により取得された第2の他車の速度変化とを比較して、第1の他車と第2の他車とが同一であるか否かを判定する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
車両状態と外部環境に基づいて自車の目標速度パターンを随時生成し、他車と隊列して走行する際に自車の目標速度パターン及び他車の目標速度パターンに基づいて隊列走行速度パターンを随時生成し、該生成された隊列走行速度パターンに応じて車両の走行制御を行う装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
或いは、複数車線の道路を走行する複数の車両から、位置及び速度に関する情報を含む車両情報を取得し、該取得された車両情報を、速度のレベルに応じて複数のクラス毎に分類し、位置に関する情報と車線の位置とに基づいてクラスに分類された車両情報がどの車線に対応するかを判定する装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
或いは、自車両が車線変更する際に、元の走行車線を走行する先行車両に対する車間制御のための目標加減速度と、車線変更後の走行車線を走行する先行車両に対する車間制御のための目標加減速度と、を比較して、小さい方の目標加減速度を選択して自車両を制御する装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0007】
或いは、道路に配設された複数の路上局から送信された符号系列のデータ信号に基づいて、各データ信号の到着時間差を測定し、該測定された到着時間差に基づいて走行車線を識別する装置が提案されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−191321号公報
【特許文献2】特開2008−046873号公報
【特許文献3】特開2008−110620号公報
【特許文献4】特開2010−102575号公報
【特許文献5】特開平10−338055号公報
【特許文献6】特開2000−076599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上述した背景技術では、対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを十分精度良く判定することが難しいという技術的問題点がある。
【0010】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを精度良く判定することができる走行車線判定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の走行車線認識装置は、第1の車両に係る速度パターンである第1速度パターンと、第2の車両に係る速度パターンである第2速度パターンと、を取得する取得手段と、前記取得された第1速度パターンと、前記取得された第2速度パターンとの類似性に基づいて、前記第1の車両と前記第2の車両とが同一車線を走行しているか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0012】
本発明の走行車線認識装置によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる取得手段は、第1の車両に係る速度パターンである第1速度パターンと、第2の車両に係る速度パターンである第2速度パターンと、を取得する。ここで「速度パターン」とは、所定期間(例えば60秒等)内における速度の時間変動を意味する。
【0013】
「第1の車両」は、当該走行車線認識装置が搭載される車両であってもよいし、当該走行車線認識装置が搭載される車両とは異なる車両であってもよい。第1の車両が、当該走行車線認識装置が搭載されている車両である場合、取得手段は、例えば車速センサ等から出力される信号に基づいて第1速度パターンを取得する。他方、第1の車両が、当該走行車線認識装置が搭載される車両とは異なる車両である場合、取得手段は、例えばミリ波レーダ等により検出された相対速度に基づいて、或いは、車車間通信を利用して、第1速度パターンを取得する。
【0014】
「第2の車両」は、典型的には、第1の車両の前方(第1の車両と第2の車両との間に、一又は複数台の他の車両が存在していてもよい)を走行している車両を意味する。取得手段は、例えば車車間通信等を利用して第2速度パターンを取得する。
【0015】
例えばメモリ、プロセッサ、コンパレータ等を備えてなる判定手段は、取得された第1速度パターンと、取得された第2速度パターンとの類似性に基づいて、第1の車両と第2の車両とが同一車線を走行しているか否かを判定する。
【0016】
「類似性」とは、第1速度パターンと第2速度パターンとが、互いにどの程度似ているかを示す指標を意味する。「類似性」は、具体的には例えば、(i)第1速度パターンと第2速度パターンとの間の相関係数、(ii)一の時点における第1速度パターン及び第2速度パターン各々の速度の差の絶対値を所定期間分積算した値、(iii)一の時点における第1速度パターン及び第2速度パターン各々の速度の差を2乗した値を所定期間分積算した値、等として求めればよい。
【0017】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、ある程度車両密度が高い場合、一の車両における速度変化は、該一の車両と同一車線を走行している、該一の車両の後方の車両に伝播する。従って、同一車線上を走行している2台の車両各々の速度パターンは、ある時間遅れを伴って相互に類似することとなる。他方で、互いに異なる車線を走行している2台の車両各々の速度パターンの類似性は低い。
【0018】
尚、例えば車載カメラ等を用いて、道路上に引かれた白線を認識することにより、自車の前方を走行している車両が、自車と同一車線を走行しているか否かを判定する技術が提案されているが、例えば曲線区間が比較的多い道路や、自車と対象とする車両との間に他の車両が存在する場合等では、判定自体が困難になる可能性があるという問題点がある。
【0019】
そこで本発明では、上述の如く、判定手段により、取得された第1速度パターンと、取得された第2速度パターンとの類似性に基づいて、第1の車両と第2の車両とが同一車線を走行しているか否かが判定される。
【0020】
このため、対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを精度良く判定することができる。特に、車車間通信を用いて第2速度パターンを取得すれば、対象車(即ち、第2の車両)が、当該走行車線認識装置が搭載された車両(即ち、自車)から比較的離れた位置(例えば、200メートル前方等)を走行していたとしても、該対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを精度良く判定することができる。
【0021】
本発明の走行車線認識装置の一態様では、前記第1の車両は、当該走行車線認識装置が搭載されている車両である。
【0022】
この態様によれば、第1の車両に係る第1速度パターンを比較的容易にして取得することができ、実用上非常に有利である。
【0023】
或いは、本発明の走行車線認識装置の他の態様では、前記第1の車両は、当該走行車線認識装置が搭載されている車両の直前を走行している車両であり、前記第2の車両は、前記第1の車両の前方を走行している車両である。
【0024】
この態様によれば、当該走行車線認識装置が搭載された車両が、例えばACC(Adaptive Cruise Control:車間距離制御)を実施している場合であっても、対象車が自車と同一車線上を走行しているか否かを精度良く判定することができる。
【0025】
本願発明者の研究によれば、ACCが実施されている場合、当該走行車線認識装置が搭載された車両(即ち、自車)の速度は比較的滑らかに変化するので、例えば、自車に係る速度パターンと、対象車(即ち、第2の車両)に係る速度パターンとの間の相関が比較的小さくなることが判明している。このため、自車の直前を走行している車両(即ち、第1の車両)に係る速度パターンを用いることにより、判定精度を維持することができる。
【0026】
本発明の走行車線認識装置の他の態様では、前記判定手段は、前記取得された第1速度パターン及び前記取得された第2速度パターンの一方の速度パターンを補正した上で、前記取得された第1速度パターン及び前記取得された第2速度パターンの他方の速度パターンとの類似性を求める。
【0027】
この態様によれば、比較的容易にして、第1速度パターンと第2速度パターンとの類似性を求めることができ、実用上非常に有利である。
【0028】
この態様では、前記判定手段は、前記一方の速度パターンを時間軸上でずらすことにより、前記一方の速度パターンを補正してよい。
【0029】
このように構成すれば、処理負担を軽減しつつ、第1速度パターンと第2速度パターンとの類似性を求めることができる。
【0030】
この態様では、前記判定手段は、前記第1の車両及び前記第2の車両間の距離に応じて、前記一方の速度パターンを補正する際のずらし量の初期値を決定してよい。
【0031】
このように構成すれば、第1速度パターン及び第2速度パターンのうち一方の速度パターンを適切に補正することができ、実用上非常に有利である。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る走行車線認識装置を搭載する車両の路上走行時の様子を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る走行車線認識装置の構成を示すブロック図である。
【図3】自車の速度の時間変動を示すグラフと、通信車の速度の時間変動を示すグラフと、の一例である。
【図4】図3に示した通信車の速度の時間変動を示すグラフを所定時間だけずらしたグラフを、図3に示した自車の速度の時間変動を示すグラフと併せて示す図である。
【図5】自車の速度と通信車の速度との相関関係の一例を示す図である。
【図6】(a)は、自車の速度と通信車の速度との差の絶対値の一例であり、(b)は、自車の速度と通信車の速度との差を2乗した値の一例である。
【図7】第1実施形態に係る走行車線認識処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る走行車線認識処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の走行車線認識装置に係る実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の図では、本発明に直接関連する部材を示し、その他の部材については適宜省略している。
【0035】
<第1実施形態>
本発明の走行車線認識装置に係る第1実施形態について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0036】
本実施形態に係る走行車線認識装置100を搭載する車両10(以降、適宜“自車10”と称する)は、図1に示すように、複数台の車両(ここでは、車両20及び30)に続いて、道路上を走行しているものとする。ここで、車両20は、車車間通信可能な機器を搭載した車両であるとする(以降、適宜“通信車20”と称する)。
【0037】
図1は、本実施形態に係る走行車線認識装置100を搭載する車両10の路上走行時の様子を示す図である。尚、図1では図示を省略しているが、車両20と車両30との間には、一又は複数台の車両が存在している。
【0038】
次に、走行車線認識装置100の構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る走行車線認識装置100の構成を示すブロック図である。
【0039】
図2において、走行車線認識装置100は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11、記憶装置12、車内時計13、車両センサ14、ミリ波レーダ15及びアンテナANTを備えて構成されている。尚、車内時計13に代えて、ナビゲーション装置(図示せず)に組み込まれている時計を用いてもよい。
【0040】
アンテナANTは、通信車20から送信される、該通信車20に係る速度情報、車両ID(Identifier)、位置情報等を示す信号を逐次受信する。アンテナANTを介して受信された、通信車20に係る速度情報、車両ID、位置情報等は、車内時計13により示される時刻と対応付けて、記憶装置12に格納される。
【0041】
車両センサ14は、自車10の速度及び走行位置を検出する。ミリ波レーダ15は、自車10の直前を走行している車両(ここでは、車両30)と自車10との間の距離(即ち、車間距離)や、自車10に対する車両30の相対速度を検出するために用いられる。
【0042】
ECU11は、車両センサ14により検出された自車10の速度の時間変動(本発明に係る“第1速度パターン”に相当)と、アンテナANTを介して取得された通信車20の速度の時間変動(本発明に係る“第2速度パターン”に相当)との類似性に基づいて、自車10と通信車20とが同一車線を走行しているか否かを判定する。
【0043】
具体的には、ECU11は、先ず、現在時刻から所定時間前までの、自車10の速度の時間変動(図3における“vself”参照)、及び通信車20の速度の時間変動(図3における“vcom”参照)を取得する。次に、ECU11は、通信車20の速度の時間変動を、例えば自車10と通信車20との間の距離等を考慮して、自車10の速度の時間変動に対して所定時間だけずらした上で(図4参照)、自車10の速度の時間変動と通信車20の速度の時間変動との類似性を求める。
【0044】
図3は、自車10の速度の時間変動を示すグラフと、通信車20の速度の時間変動を示すグラフと、の一例である。図4は、図3に示した通信車20の速度の時間変動を示すグラフを所定時間だけずらしたグラフを、図3に示した自車10の速度の時間変動を示すグラフと併せて示す図である。
【0045】
ここで、例えば図5に示すように、自車10の速度(vself)と通信車20の速度(vcom)との相関関係を求め、該求められた相関関係の相関係数を、類似性を示す指標とすればよい。この場合、ECU11は、相関係数の値が、所定値(例えば、0.85)以上であれば、自車10と通信車20とが同一車線を走行していると判定する。図5は、自車10の速度と通信車20の速度との相関関係の一例を示す図である。
【0046】
或いは、例えば図6(a)に示すように、一の時点における自車10の速度と通信車20の速度との差の絶対値(|vcom−vself|)を所定期間分積算した値を、類似性を示す指標とすればよい。又は、例えば図6(b)に示すように、一の時点における自車10の速度と通信車20の速度との差を2乗した値((vcom−vself)を所定期間分積算した値を、類似性を示す指標とすればよい。
【0047】
この場合、ECU11は、類似性を示す指標が、所定値以下であれば、自車10と通信車20とが同一車線を走行していると判定する。図6(a)は、自車10の速度と通信車20の速度との差の絶対値の一例であり、図6(b)は、自車10の速度と通信車20の速度との差を2乗した値の一例である。
【0048】
或いは、所定期間における、自車10の速度の平均値と通信車20の速度の平均値との差分を、類似性を示す指標としてもよい。このようにすれば、特に、自車10及び通信車20の少なくとも一方の速度変動が比較的小さい場合に、比較的容易にして、自車10と通信車20とが同一車線を走行しているか否かを判定することができる。尚、この場合、ECU11は、自車10の速度の平均値と通信車20の速度の平均値との差分が、所定値(例えば、時速5km)より小さければ、自車10と通信車20とが同一車線を走行していると判定する。
【0049】
尚、ECU11は、類似性を示す指標に加えて、自車10及び通信車20間の位置関係に基づいて、自車10と通信車20とが同一車線を走行しているか否かを判定してもよい。具体的には例えば、自車10の前方に位置していた通信車20が、自車10の後方に移動した場合(即ち、自車10が通信車20を追い越した場合)、ECU11は、自車10と通信車20とは、互いに異なる車線を走行していると判定する。
【0050】
本実施形態に係る「車両センサ14」及び「アンテナANT」は、本発明に係る「取得手段」の一例である。本実施形態に係る「自車10」、「ECU11」及び「通信車20」は、夫々、本発明に係る「第1の車両」、「判定手段」及び「第2の車両」の一例である。本実施形態では、自車10を構成する部材の機能の一部を、走行車線認識装置100の少なくとも一部として用いている。
【0051】
次に、以上のように構成された自車10に搭載された走行車線認識装置100が実施する走行車線認識処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
図7において、先ず、初期設定がなされる(ステップS101)。この初期設定は、典型的には、走行車線認識装置100の製造時に製造者によって実施される。ステップS101の処理において設定される項目は、例えば判定時間T(初期値は、例えば50秒)、ずらし時間のステップΔT(初期値は、例えば0.5秒)、判定閾値r(初期値は、例えば0.8)等である。
【0053】
次に、ECU11は、ずらし量の最大値Tmaxを決定する(ステップS102)。ECU11は、具体的には例えば、車両センサ14により検出される自車10の走行位置と、アンテナANTを介して取得される通信車20の走行位置と、に基づいて、自車10と通信車20との間の距離Δxを求め、該求められた距離Δxを、車両1台当たりの車頭間隔ΔS(例えば20メートル)で割った値に、加減速の伝播時間Δt(即ち、人間の反応時間:例えば1秒)を掛けた値(即ち、Δx÷ΔS×Δt)を、最大値Tmaxとする。
【0054】
ここで、ECU11は、車頭間隔ΔSを、自車10又は通信車20の現在の速度、或いは自車10及び通信車20各々の現在の速度の平均値に応じた可変値としてもよい。車頭間隔ΔSは、車両の速度に応じて変化するので、車頭間隔ΔSを可変値とすれば、ずらし量の最大値Tmaxをより適切に決定することができる。
【0055】
具体的には、S及びvを定数として、車頭間隔ΔS=S/(v−v)とすればよい。尚、“v”は、自車10又は通信車20の現在の速度、或いは自車10及び通信車20各々の現在の速度の平均値である。また、“v<v”である。
【0056】
ECU11は、更に、伝播時間Δtを、(i)自車10又は通信車20の現在の速度、或いは自車10及び通信車20各々の現在の速度の平均値、及び(ii)車頭間隔ΔSに応じた可変値としてもよい。伝播時間Δtは、車両の速度が大きいほど小さく、且つ車頭間隔ΔSが小さいほど小さいと考察されるので、伝播時間Δtを可変値とすれば、ずらし量の最大値Tmaxをより適切に決定することができる。
【0057】
次に、ECU11は、車内時計13から現在時刻Tを取得する(ステップS103)。続いて、ECU11は、現在時刻Tから判定時間Tだけ遡った時点(即ち、T−T)までの自車10の速度vself(即ち、判定時間T分の自車10の速度パターン)を取得する(ステップS104)。
【0058】
続いて、ECU11は、ずらし量の初期値Tminを設定する(ステップS105)。ここで、ずらし量の初期値Tminは、上述のずらし量の最大値Tmaxと同様の考え方により設定すればよい。但し、例えば、車頭間隔ΔSを、自車10の前方を走行している車両の速度変動が自車10の走行に影響を与える範囲で最長に設定する等の微調整は必要である。
【0059】
次に、ECU11は、設定されたずらし量の初期値Tminをずらし量Tとする。続いて、ECU11は、現在時刻Tからずらし量Tだけ遡った時点(即ち、T−T)から、更に判定時間Tだけ遡った時点(即ち、T−T−T)までの通信車20の速度vcom(即ち、判定時間T分の通信車20の速度パターン)を取得する(ステップS106)。
【0060】
次に、ECU11は、ステップS104の処理で取得された自車10の速度パターンと、ステップS106の処理で取得された通信車20の速度パターンと、の間の類似度rを求める(ステップS107)。ここでは、図5に示したような、自車10の速度と通信車20の速度との相関関係から類似度rが求められるものとする。
【0061】
尚、ECU11は、類似度rを求める際に、例えば、自車10の速度パターンについては、時点T−Tを“0”、時点Tを“T”と、通信車20の速度パターンについては、時点T−T−Tを“0”、時点T−Tを“T”と夫々変更している。
【0062】
次に、ECU11は、求められた類似度rが、閾値r以上であるか否かを判定する(ステップS108)。求められた類似度rが、閾値r以上であると判定された場合(ステップS108:Yes)、ECU11は、通信車20は、自車10が走行している車線と同一車線上を走行していると判定する(ステップS109)。
【0063】
他方、求められた類似度rが、閾値r未満であると判定された場合(ステップS108:No)、ECU11は、ずらし量Tをずらし時間のステップΔTだけ増加する(即ち、ずらし量Tを更新する)(ステップS110)。続いて、ECU11は、更新されたずらし量Tが、ステップS102の処理で決定されたずらし量の最大値Tmaxより大きいか否かを判定する(ステップS111)。
【0064】
更新されたずらし量Tがずらし量の最大値Tmaxより大きいと判定された場合(ステップS111:Yes)、ECU11は、通信車20は、自車10が走行している車線とは異なる車線上を走行していると判定する(ステップS112)。他方、更新されたずらし量Tがずらし量の最大値Tmax以下であると判定された場合(ステップS111:No)、ECU11は、ステップS106の処理を実施する。
【0065】
<第2実施形態>
本発明の走行車線認識装置に係る第2実施形態を、図8を参照して説明する。第2実施形態では、走行車線認識処理が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0066】
図8において、上述したステップS103の処理の後、ECU11は、現在時刻Tから判定時間Tだけ遡った時点(即ち、T−T)までの自車10の直前を走行する車両30の速度(即ち、判定時間T分の車両30の速度パターン)を取得する(ステップS201)。次に、ECU11は、上述したステップS105の処理を実施する。
【0067】
ここで、車両30の速度は、ミリ波レーダ15(図2参照)により検出された、自車10に対する車両30の相対速度に基づいて求めればよい。
【0068】
本実施形態に係る「ミリ波レーダ15」、「車両30」及び「車両30の速度パターン」は、夫々、本発明に係る「取得手段」、「第1の車両」及び「第1速度パターン」の他の例である。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う走行車線認識装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10…自車、11…ECU、12…記憶装置、13…車内時計、14…車両センサ、15…ミリ波レーダ、20…通信車、30…車両、100…走行車線認識装置、ANT…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両に係る速度パターンである第1速度パターンと、第2の車両に係る速度パターンである第2速度パターンと、を取得する取得手段と、
前記取得された第1速度パターンと、前記取得された第2速度パターンとの類似性に基づいて、前記第1の車両と前記第2の車両とが同一車線を走行しているか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする走行車線認識装置。
【請求項2】
前記第1の車両は、当該走行車線認識装置が搭載されている車両であることを特徴とする請求項1に記載の走行車線認識装置。
【請求項3】
前記第1の車両は、当該走行車線認識装置が搭載されている車両の直前を走行している車両であり、
前記第2の車両は、前記第1の車両の前方を走行している車両である
ことを特徴とする請求項1に記載の走行車線認識装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記取得された第1速度パターン及び前記取得された第2速度パターンの一方の速度パターンを補正した上で、前記取得された第1速度パターン及び前記取得された第2速度パターンの他方の速度パターンとの類似性を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の走行車線認識装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記一方の速度パターンを時間軸上でずらすことにより、前記一方の速度パターンを補正することを特徴とする請求項4に記載の走行車線認識装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記第1の車両及び前記第2の車両間の距離に応じて、前記一方の速度パターンを補正する際のずらし量の初期値を決定することを特徴とする請求項5に記載の走行車線認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84126(P2013−84126A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223705(P2011−223705)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】