起伏伏層によるチャネルフロー濾過材
【課題】表面構造を備えた少なくとも1層の起伏状ポリマーフィルム層を有する濾過材の配列体を提供する。
【解決手段】フィルム層は、その積層体の1つの面を貫通する整列した複数の入口開口部を画成し通気道に対応する起伏状フィルム層10を有する積層体として構成され、開口した多孔質容積体を形成することができる。その通気道を、構造化された起伏状フィルム層の起伏部分が形成する複数のフローチャネルにより画成することができる。
【解決手段】フィルム層は、その積層体の1つの面を貫通する整列した複数の入口開口部を画成し通気道に対応する起伏状フィルム層10を有する積層体として構成され、開口した多孔質容積体を形成することができる。その通気道を、構造化された起伏状フィルム層の起伏部分が形成する複数のフローチャネルにより画成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に秩序だった通気道を画成する構造を具備した複数の起伏状ポリマーフィルム層を含む帯電型濾過材および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
空気用濾過材の機能は一般に、粒子をフィルタ媒体に接触させて捕捉することを基本とする。この捕捉は、数多くの固着メカニズム(直接の捕獲、衝突捕集あるいは拡散など)による無作為な固着、あるいは一般に静電気引力による積極的な媒体への粒子引付けにより行うことができる。
【0003】
無作為な固着を基本とする濾過材では一般に、流体が媒体に衝突せずに通過できる開口スペースの寸法を削減しつつ、濾過材の表面積を拡大すると効率が上昇する。一般に、最もコストパーフォーマンスがよく最も広く用いられている手法では、繊維フィルタ媒体、特に不織繊維フィルタ媒体が使用されている。流体がこのフィルタ媒体を通過してその繊維媒体に衝突すると粒子が捕捉される。この手法の欠点は、捕集効率が高くなるほど、通常、フィルタ媒体の流動抵抗により大幅な圧力損失となって現れることである。この流動抵抗はフィルタの寿命までに大幅に増加していく可能性がある。
【0004】
静電気引力のみに依存する濾過の例に、特許文献1あるいは特許文献2に記載された例などの誘電性絶縁体により隔離された活性帯電型導電性電極板がある。この装置では、元々帯電されていた粒子あるいは電離器などにより帯電された粒子を、帯電した電極板の間を通過させる。この装置では一般に、圧力損失量は非常に少ないが、非帯電粒子については効果がなく、電源が必要である。
【0005】
この静電装置の利点のいくつかを利用しようと、さまざまな方法で繊維フィルタ媒体に永久的あるいは一次的帯電を誘導することが提案されてきた。繊維フィルタ媒体を帯電すると、それに対応する非帯電型繊維フィルタ媒体と比較して効率は上がるが、従来の貫流型フィルタで使用すると、流動抵抗のためにやはり大幅な圧力損失が見られる。
【0006】
この流動抵抗とそれに伴う圧力損失を低減する方法として、フローチャネルの側壁を微粒子あるいは吸収性のフィルタ媒体で形成する貫流型チャネルフィルタの作製が提案されてきた。このフィルタ媒体の側壁に粒子が接触すると、この側壁が粒子を捕捉する。粒子捕捉性能が強化されている点から見ると、一般に微粒子濾過材はエレクトレット化繊維媒体、通常、帯電繊維により形成した不織繊維媒体である。例えば特許文献3(1995年6月6日公開)には、エレクトレット化不織布フィルタ媒体からハニカム状フィルタ(ダンボールに似たプリーツ状の波型フィルタ媒体など)を形成することが周知であると指摘されている。この特許出願では、フィルタを帯電したメルトブローン繊維フィルタ媒体と帯電した解繊糸フィルタ媒体とのフィルタ媒体積層体で形成することによりこのようなフィルタ構造体の集塵効果の持続性を高めることが提案されている(米国特許第RE30,782号の開示例に類似)。特許文献4(1995年9月19日公開)には、波型ハニカム構造をなす襞折り加工層と平坦層とが、エレクトレット化不織布フィルタ媒体および吸収性のフィルタ媒体(活性炭充填シートあるいはその類似物)の交互層であり、エレクトレット化可能なライナ(不織物など)と共に活性炭層が形成されると好ましい上述のようなハニカム状フィルタが提案されている。特許文献5(1998年6月30日公開)には、ハニカム構造をなすフィルタ材料が、エレクトレット化不織布フィルタ層と抗菌性フィルタ層とから形成されている上述のような別のハニカム型フィルタが開示されている。上述したハニカム型フィルタには、例えば空調設備、室内空気清浄機などの循環型フィルタのように圧力損失の低いことが重要であり、1回の通過による濾過性能がさほど重要ではない場合での使用に有利である。一般に、このようなハニカム状フィルタは、厚紙の形成に用いる方法に類似した方法で形成され、1つのフィルタ媒体に襞折り加工を施してその頂部を平坦な層に接着する。次にこの組立体を積層あるいは巻き上げ、隣接した積層層を膠あるいはホットメルト接着剤により結合することができる。この濾過材をハニカム構造に形成する前に従来技術により帯電する。
【0007】
貫流型フィルタへの別の手法が、特許文献6に提案されている。ここでは帯電型濾過材が不織布フィルタ媒体ではなくフィルムである。この帯電フィルムは、ガラス繊維あるいは波型Kraft紙の開放気泡発泡体ウェブとして記載されている隔離スペーサストリップである。圧力損失は、そのスペーサの多孔率および帯電誘電フィルムとフィルムとのスペースに関係していると記載されている。特許文献7(1981年2月2日公開)には、波型ハニカム構造が、帯電ポリマーフィルム(フィルムあるいは不織布として規定されている)によるプリーツ層あるいは平坦層の一方あるいは双方で形成された同様の構造が開示されている。この多層構造物の前縁部を共に融解することにより接着する。このフィルムに折り畳み処理で「しわ」をよせることが開示されている。帯電フィルムから形成される同様のフィルム型ハニカム構造体は、特許文献8および特許文献9(どちらも1981年2月2日公開)にも開示されている。
【0008】
上述したハニカム構造は圧力損失が低い面では有利であるが、坪量の低い不織ウェブでは特に製造が難しい場合があり、構造的に不安定となり得る。その上、この構造では一般に濾過性能を改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,234,324号明細書
【特許文献2】米国特許第4,313,741号明細書
【特許文献3】特開平7−144108号公報
【特許文献4】特開平7−241491号公報
【特許文献5】特開平10−174823号公報
【特許文献6】米国特許第3,550,257号明細書
【特許文献7】特開昭56−10314号公報
【特許文献8】特開昭56−10312号公報
【特許文献9】特開昭56−10313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
簡単な発明の概要
第1の起伏状フィルム層と第2のフィルム層とで画成されるフローチャネル形成層の組立体の少なくとも1層で形成される濾過材の配列体。この起伏状フィルム層には第1の面と第2の面とがあり、起伏状フィルム層の少なくとも一面上の一連の先端部と少なくとも一面とが、その面の少なくとも一部に、高アスペクト比構造を有するフローチャネルを画成する。好ましくは、このフィルム層を、起伏状フィルム層と平坦な第2のフィルム層とによりフローチャネルを画成し、複数のフローチャネル成形層を上に積層して濾過材の配列体を画成してエレクトレット化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第1の構造化フィルムを示す側面図である。
【図2】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第3の構造化フィルムを示す側面図である。
【図3】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第3の構造化フィルムを示す側面図である。
【図4】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第4の構造化フィルムを示す側面図である。
【図5】起伏状フィルムと平坦なキャップフィルム層との組立体を示す斜視図である。
【図5A】起伏状フィルムと平坦なキャップフィルム層との組立体に機能層を加えた状態を示す斜視図である。
【図6】図5の組立体で形成した本発明による濾過材の配列体の第1の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明による濾過材の配列体の第2の実施例を示す斜視図である。
【図8】ストランドによる安定化層を具備する起伏状フィルムを示す斜視図である。
【図9】平坦なフィルムキャップ層を備えてフローチャネル組立体を形成している起伏状フィルムを示す斜視図である。
【図10】本発明による濾過材の配列体の第3の実施例を示す側面図である。
【図11】本発明による濾過材の配列体の形成有用な第4の構造化フィルムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適実施態様の詳細な説明
本発明は、ハニカム構造に配列されて流体流路を形成する帯電起伏状フィルムを好適に含む濾過材の配列体を提供する。本発明による濾過材の配列体には複数のフィルム層も具備されており、その少なくとも数層のフィルム層には、フィルム層の少なくとも一面の表面領域にリブ、ステム、フィブリル、あるいは他の各隆起部などの高アスペクト比構造を延在させて備えている。
【0013】
フィルム層に起伏をつけてアレイ表面を抜ける流体路への複数の入口開口部を画成させ、このフィルム層を濾過材の配列体内に組み込む。この流体路は、キャップフィルム層を有する1層の起伏状フィルム層で画成しても、複数の起伏状フィルム層を隣接させて画成してもよい。この流体路にさらに出口開口部を設けて、流体が、流動抵抗のあるフィルタ層を必ず通過せずともその流体路に進入して通過できるようにする。この流体路およびそれに伴う濾過材の配列体の開口部を、起伏状フィルム層で少なくとも一部を形成されている1本あるいは複数本のフローチャネルにより画成する。このフローチャネルは、起伏状フィルム層の先端部あるいは隆起部により形成されるものであり、その形態は、隣接するフィルム層と共に濾過材の配列体を横切る流体路を形成するように配置されるものであればいずれでもよい。例えば、このフローチャネルを、反復する隆起部により形成する別個のチャネル、あるいは先端部構造により形成される相互連結チャネルとすることができる。このフローチャネルを、別の起伏状フィルム層と併せて流体路を形成する隔離チャネル(先端部あるいは隆起部に取囲まれた閉じた谷部など)とすることも可能である(隣接する起伏状フィルム層上の谷部をオフセットにして、濾過材の配列体を貫通する連続蛇行路を形成するなど)。
【0014】
この濾過材の配列体が含む分離あるいは相互連結状態で隣接した複数のフローチャネル(共通の起伏状フィルム層に具備されて一列に整列した一連のフローチャネルなど)を、1枚の起伏状フィルム層が形成する一連の先端部あるいは隆起部により画成すると好ましい。こうして隣接するフローチャネルがフローチャネル成形層を画成する。起伏状フィルム層の先端部あるいは隆起部を、平坦なあるいは起伏状のキャップ層を設けることにより安定させる、あるいは区分することができる。キャップ層とは、起伏状フィルム層の一方の面上にある先端部あるいは隆起部と係合あるいは接触する層である。起伏状フィルム層のもう一方の面上にある先端部あるいは隆起部も、キャップ層に連結あるいは接触させることができる。キャップ層により、起伏状フィルム層の全体をカバーしても一部のみをカバーしてもよい。このキャップ層が平坦なフィルム層である場合、このキャップフィルム層とそれに付随する起伏状フィルム層とが、そのフィルムキャップ層に接触あるいは係合している起伏状フィルム層の隣接する先端部あるいは隆起部の間に流体路を画成する。
【0015】
キャップ層を、吸収剤あるいは微粒子フィルムなどの機能層、あるいは一連の安定化フィラメントあるいは強化不織布などの安定化層とすることも可能である。図8に、個々のステム状構造体46を含む起伏状フィルム層40を示す。この構造体46は、この起伏状フィルム層40の先端部44において安定化フィラメント42に結合している。濾過材の配列体としての有用性を高めるには、図8の実施例をキャップフィルム層あるいは別の起伏状フィルム層などのもう1枚のフィルム層に接合する必要がある。このフィラメント層42にもう1枚の起伏状フィルム層を接合する場合、流体路は、この隣接する2枚の起伏状フィルム層のフローチャネル成形層2層により形成される。
【0016】
起伏状フィルム層10が画成するフローチャネル成形層20内の14および16などの隣接するフローチャネルは、図5に示すようにすべて同一形状であっても、図9に示すように別形状であってもよい。図9では、フローチャネル成形層20が含む隣接したフローチャネル24および26は別個のフローチャネルであり、高さは同じであるが幅が異なっている。図5では、フローチャネル成形層20が含む隣接したフローチャネル14および16は別個のフローチャネルであり、高さも幅も等しくなっている。製造性の観点から言えば、好適には、起伏状フィルム層のフローチャネルを形成する先端部あるいは隆起部のすべて、あるいは少なくとも大半を実質的に同じ高さにしなくてはならない。さらに、濾過材の配列体30が隣接して含む各フローチャネル成形層20には、同一形状のフローチャネル(図6に示すように)あるいは異なる形状のフローチャネルのどちらを具備してもよい。濾過材の配列体が含む隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルは、位置合わせした状態としても(図6など)、オフセット状態としても(図7に示すように互いに斜めに)、あるいはこれらの組み合わせとしてもよい。濾過材の配列体の上をカバーして隣接するフローチャネル成形層を一般に、フローチャネルを相互連結、区分、あるいは区分して隔離する(すなわち、起伏状フィルム層全体を横切って延在させない)ことのできる1枚の起伏フィルム層で形成する。起伏状フィルム層全体を横切って延在するフローチャネルの場合、このチャネルを直線状あるいは曲線状に延在させることができる。積層されて上側に隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルを実質的に平行に設けて位置合わせすると好ましいが(図6)、拡散角度あるいは収束角度をつけて設けてもよい。図10に示すように濾過材の配列体を円柱状に配列したフローチャネル成形層で形成する場合、このフローチャネル成形層を、中央の軸芯64を中心として螺旋状あるいはつる巻き状に位置合わせして構成した1枚の起伏状フィルム層60と任意のキャップ層62とで形成することができる。製造時にこの起伏状フィルム層を1枚のキャップ層62に接合して安定させ、もう1枚のキャップ層62aと摩擦接触させると好ましい。
【0017】
起伏状フィルム層の複数対について、図7に示すように各先端部で互いに係合するように対向層と互いに対向させる、あるいは図5、図6および図10に示すように1枚あるいは複数のキャップ層で隔離することができる。起伏状フィルム層31が図7に示すようにフィルム層を介在させずに接触する場合、起伏状フィルム層31の34および35などの隣接して交わっているフローチャネルの間を流体路とする。
【0018】
濾過材の配列体が隣接して含む起伏状フィルム層とフィルム層との間に層を追加して配置してもよい。追加する機能層を1層あるいは複数層のキャップ層あるいは起伏状層にすることができ、これに、例えば活性炭などの吸収剤剤などを含有して気流からの気体汚染物除去を可能にすることができる。この層に機能性処理剤を含有して、粒子除去率の改良、あるいは撥水性および撥油性の付与、臭いの除去、有機物質の除去、オゾンの除去、消毒、乾燥、芳香剤の導入などの他の利点を備えることができる。処理の例として、層を充電してエレクトレットを形成する、層に表面コーティングを施す、あるいは処理した層あるいはコーティングをさらに追加することが挙げられる。
【0019】
このフローチャネルが、濾過材の配列体を貫通する、制御され、かつ秩序だった流体流路となる。濾過に利用できる表面積は、このフローチャネルで利用可能な表面積と、濾過材の配列体が含むフローチャネルの数および長さとにより特定される。言いかえれば、フローチャネルの長さ、チャネル形状、および各層の表面積などの各濾過材層の特徴により特定される。
【0020】
起伏状フィルム層によるフローチャネルの単層で、本発明による機能的濾過材の配列体を構成することができる。しかしながら、複数のオーバーレイフローチャネル成形層により機能的濾過材の配列体を形成すると好ましい。積層した起伏状構造化フィルム層で形成した濾過材の配列体により、不織布フィルタウェブにおける孔寸法の変動や目立つ不揃いのない、規則正しいあるいは巧みに設計された機械的に安定な多孔質構造が得られる。気孔寸法の変動および不規則性については、本発明による濾過材の配列体の目的とする最終的な濾過性能に対する要望に基づいて設計および制御する。こうすることにより、流体流が濾過材の配列体のフローチャネルを貫通する際にこれを均一に処理して、その濾過効率を上昇させることができる。一般に、フローチャネルを形成する起伏状フィルム層により、構造的に安定な形態を形成している濾過材の配列体を強化して、多くの自立型構造を形成することができる。
【0021】
フローチャネルを圧搾あるいは閉塞することなく、この濾過材の配列体をさまざまな形状に追従させる、あるいは物体上に配置することができる。濾過材の配列体を立体状に予備形成した後、隣接したフローチャネルの層を接着して構造的に安定な形態を形成することも可能である。この形態を用いると、フレームがなくても気流を所望の方法で方向付ける、あるいはダクトなどの利用可能なスペースに追従させる、あるいは別の構造体に対する支持体を形成することができる。本発明による濾過材の配列体は比較的安定であり、濾過材を操作する際の襞折り加工、取扱、あるいは組立てなどによる濾過材の操作時に発生する破損に対して耐性を備えている。従来の繊維フィルタでは繊維の破断により、特にクリーンルーム向け用途において数多くの問題が発生する可能性が有る。
【0022】
本発明による起伏状フィルムを一般に帯電し、装着されているキャップ層あるいは他層のいずれに対して起伏状のままエレクトレット化すると好ましい。フィルムを起伏状にして帯電すると、特に起伏状フィルムがアスペクト比の高い構造を有する場合、その起伏状フィルムの微粒子物質捕集性を思いがけず高めることができる。この性能の改良は、起伏状にする前に帯電したフィルムで形成した同じ濾過材に比較して見られるものである。
【0023】
この層状帯電起伏状フィルムの特徴として、ニューヨーク州MedinaのTrek Inc.から入手可能であるAuto Bi−Polar ESVM型番号341などの静電表面電圧計(ESVM)を用いてフィルム表面からおよそ1cmの距離で測定すると、その表面電圧が少なくとも+/−1.5KV、好ましくは少なくとも+/−10KVであることが挙げられる。この静電荷にはエレクトレットを含んでよい。エレクトレットは、長時間にわたり持続する電荷を呈する誘電体材料片である。エレクトレット化の可能な材料の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリプロピレンなどの非極性ポリマーが挙げられる。一般に、エレクトレット上の正味帯電量は0あるいは0に近く、その電場は電荷を分離したことによるものであり、正味の電荷により発生するものではない。材料および処理の選択を適切に行うことにより、エレクトレットを、外向きの静電場を発生するように構成することができる。このようなエレクトレットを、永久磁石の静電類似体と見なすことができる。
【0024】
誘電体材料の帯電には一般に幾つかの方法が用いられており、そのいずれによって本発明で使用する起伏状フィルム組成物あるいは他層を帯電してもよい。その例として、帯電した電場のある材料に対するコロナ放電、加熱および冷却、ウェブの帯電粒子噴霧、噴水あるいは水滴流による表面の湿潤あるいは衝突が挙げられる。さらに、表面の帯電性は、配合材料あるいは帯電促進剤の使用により強化可能である。充電方法の例は、van Turnhout他に付与された米国特許第RE30,782号、van Turnhout他に付与された米国特許第RE31,285号、Angadjivand他に付与された同第5,496,507号、Jones他に付与された米国特許第5,472,481号、Kubik他に付与された米国特許第4,215,682号、Nishiura他に付与された米国特許第5,057,710号、およびNakaoに付与された米国特許第4,592,815号に開示されている。
【0025】
さらに、一方の面に高圧を印可した金属化表面あるいは層を具備するフィルムを使用するなどして1層あるいは複数層に有効荷電を設けることができる。これは、本発明では起伏状層に隣接して金属化層を追加する、あるいは金属コーティングを層上に施すことにより実現可能である。このような金属化層を含む濾過材層を電気電圧源に接触させて搭載すると、この金属化媒体層内に電流を通すことができる。有効荷電の例は、Inculetに付与された米国特許第5,405,434号に開示されている。
【0026】
利用可能な処理のもう1種類は、フィルム層の撥水性、撥油性を改良し、かつ油性エアロゾルの濾過性能を高めることのできる材料の添加あるいは材料のコーティングという形態でフルオロケミカル添加剤を使用することである。このような添加剤の例は、Jones他に付与された米国特許第5,472,481号、Crater他に付与された同5,099,026号、およびCrater他に付与された同5,025,052号に見られる。
【0027】
さらに、フィルタ層を、衝突する粒子を引き寄せて接着させるように意図された粘着物質で埋設、コーティング、あるいは他の処理を施してよい。フィルタ層を、流体流と何らかの形で反応して濾過性能を高める、あるいは他の効果を得るように意図された化学反応物あるいは他の化合物で埋設、コーティング、あるいは他の処理を施してもよい。この種の化合物およびその効果は、層の追加による処理に対する上記の例に類似している。この化合物の例として、有機分子を除去あるいは脱臭する活性炭、ゼオライトあるいはアルミノケイ酸塩などの吸収剤;悪臭を放つ物質を分解する銅−アスコルビン酸などの脱臭触媒;シリカゲル、ゼオライト、塩化カルシウムあるいは活性アルミナなどの乾燥剤;UV殺菌系などの消毒剤;グロキサル、メタクリル酸エステルあるいは香料などの芳香剤;Mg、Ag、Fe、Co、Ni、Pt、PdあるいはRnまたはアルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、珪藻土、シリカジルコニウムあるいはチタニアなどの担体上に支持されている酸化物などの金属を含むオゾン除去剤が挙げられる。
【0028】
本発明にて使用する構造化フィルム層の形成に有用なポリマーの例として、ポリエチレンおよびポリエチレンコポリマーなどのポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられるがこれらに限定するものではない。他のポリマー材料として、アセテート、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ尿素、ポリカーボネートおよびポリスチレンが挙げられる。構造化フィルム層は、アクリレートあるいはエポキシ樹脂などの硬化性樹脂材料を注型し、化学的に促進されたフリーラジカル反応路内を通過させて熱、UVあるいは電子ビーム放射線に曝露することにより硬化させることができる。この構造化フィルム層を、帯電可能なポリマー材料、すなわち誘電体ポリマーおよびポリオレフィンあるいはポリスチレンなどの配合物で形成すると好ましい。
【0029】
ポリマー配合物を含むポリマー材料を、可塑化活性剤あるいは抗菌剤の溶融配合により変性することができる。フィルタ層の表面改質は、蒸着あるいは電離放射線を用いた官能基部分の共有グラフトにより実現可能である。電離放射線などによるモノマーのポリプロピレンへのグラフト重合に関する方法および手法は、米国特許第4,950,549号および同5,078,925号に開示されている。このポリマーに添加剤を含有して、ポリマー構造層にさまざまな特性を付与することもできる。
【0030】
この起伏状フィルム層およびキャップフィルム層が含む一方の面あるいは双方の面に、構造面を画成して具備することができる。好適実施態様の起伏状フィルムおよび/またはキャップフィルム層に用いる高アスペクト比構造体は、最小直径あるいは幅に対する高さの比が0.1を上回り、好ましくは0.5を理論上無制限に上回る構造であり、高さが少なくとも約20ミクロン、好ましくは少なくとも50ミクロンである構造である。このアスペクト比の高い構造体の高さが2000ミクロンを超えると、フィルムの取扱が難しくなる可能性があるため、この構造体の高さを1000ミクロン未満にすると好ましい。この構造体の高さをいずれの場合もフローチャネルの高さに対して少なくとも50%以下、好ましくは20%以下とする。図1〜図4および図11に示すように、フィルム層1上の構造体の形態として、ピラミッド、キューブコーナー、Jフック、キノコ型ヘッドなどの直立したステムあるいは突起部;連続あるいは断続的隆起部;チャネル5を中に挟む矩形3あるいはV字型隆起部2;あるいはこれらの組み合わせが可能である。キノコ型ヘッド突起部46を図11においてフィルム支持体40上に図示する。この突起部は、規則的、無作為、あるいは断続的のいずれであってもよく、隆起部などの他の構造と組み合わせることも可能である。この隆起型構造を、規則的に配置する、無作為に配置する、断続的に配置する、互いに平行に延在させる、交差するあるいは交差しない角度をつける、あるいは隆起部と隆起部との間に入れ子式隆起部4あるいは突起部などの他の構造を組み合わせることができる。一般に、アスペクト比の高い構造体であればフィルム1の全体あるいは一部領域のみに延在させることができる。フィルム領域にこの構造を具備する場合、この構造により、対応する平坦なフィルムよりも表面積を少なくとも50%拡大し、少なくとも100%拡大すると好ましく、一般に1000%以上拡大する。好適実施態様ではこのアスペクト比の高い構造体は、起伏状フィルム層の起伏部に対して一定角度、好ましくは八角形をなす角度(90度)にて図5および図6に示すように起伏状フィルム層の大部分を横切って延在する連続的あるいは断続的隆起部である。こうすることにより、フローチャネル形成層の組立体(図5)および濾過材の配列体(図6)における起伏状フィルム層の機械的安定性を強化することができる。この隆起部には一般に、起伏部に対して約5〜175度、好ましくは45〜135度の角度をつけることができ、一般にこの隆起部は、起伏状フィルムの著しい曲線部分上のみに延在させればよい。
【0031】
この構造面は、構造化フィルムを形成する周知の方法であればいずれを用いて製造してもよく、その例として、どちらもMarantic他に付与された米国特許第5,069,404号および同第5,133,516号;Benson他に付与された米国特許第5,691,846号;Johnston他に付与された米国特許第5,514,120号;Noreen他に付与された米国特許第5,158,030号;Lu他に付与された米国特許第5,175,030号;Barberに付与された米国特許第4,668,558号;Fisherに付与された米国特許第4,775,310号;Erbに付与された米国特許3,594,863号;あるいはMelbye他に付与された米国特許5,077,870号に開示された方法などが挙げられる。これらの方法全体を本明細書内に引用したものとする。
【0032】
この起伏状フィルム層について、少なくとも一方の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%にアスペクト比の高い構造体を設けると好ましい。キャップ層あるいは他の機能的フィルム層も、この高アスペクト比の構造化フィルムで形成することができる。一般に、フローチャネル全体の表面積の10〜100%を構造面としなければならず、40〜100%であれば好ましい。
【0033】
本発明による濾過材の配列体の原料は、層の形成に所望する材料とする。厚さを要件通り1種類あるいは複数種類とした適した材料のシートを、所望する高いアスペクト比の表面を具備するように形成し、このフィルム層の少なくとも1枚を起伏状とし、この起伏状フィルムを別のキャップ層、起伏状層などに結合して安定させることによりフローチャネルを形成する。濾過材の配列体を形成する起伏状フィルム層およびキャップ層などのフローチャネル成形層を、互いに接合する、機械的に含有する、あるいは他の方法により安定な濾過材の配列体として保持することができる。この起伏状フィルムおよびキャップ層を、米国特許第5,256,231号(フィルム層を波型層に押出接合する)あるいは米国特許第5,256,231号(先端部を下側に位置する層に接着剤あるいは超音波により接合する)に開示されている例などのように、あるいは入口および/または出口開口部を形成する外縁部を溶融接着することにより、互いに接合することができる。図5に示すように、起伏状構造化フィルム10を、起伏状フィルム層10の一方の面13上の先端部12で平坦な構造キャップフィルム層11に結合する。このフローチャネル成形層20の1枚あるいは複数枚を重ね合わせるあるいは他の方法で層状とし、予め定められたパターンあるいは関係に方向付ける。このとき、任意に層15(図5A)を追加して図6に示す濾過材の配列体30のフローチャネル成形層20の容積を目的通りとする。得られたフローチャネル成形層20の容積をスライスあるいは他の方法により変更して、所望の肉厚および形状を備えた濾過材の配列体に仕上げる。この濾過材の配列体30をそのまま使用しても、または搭載あるいは他の方法で組み合わせて最終的な使用形態としてもよい。上述したように、製造処理の適当な段階において所望する処理のいずれを適用してもよい。さらに、本発明による濾過材の配列体を、表面に対する不織繊維材料層などの他の濾過材料と組み合わせる、あるいは他の非濾過材料と組み合わせてその取扱、搭載、組立てあるいは使用を容易にすることができる。
【0034】
濾過材の配列体30を熱線でスライスすることにより、その最終形態に形成すると好ましい。最終的なフィルム形態の切断時に、この熱線が各層を互いに融合させる。最終フィルタの最も外側の単数あるいは複数面において、このように層が融合される。したがって、熱線による切削加工前に濾過材の配列体30が含む隣接層の少なくとも数層を結合させておく必要はない。熱線による切削速度を調節して、各層の溶融あるいは融合程度を増減させる。例えば、熱線速度に変化をつけて、溶融領域の位置に高低をつけることができることができる。直線状あるいは曲線状の熱線を用いて、矩形、曲線状、楕円などの無制限に考え得る形状のフィルタを形成することができる。また、熱線を用いると、フィルタを切削あるいは分離することなく濾過材の配列体の各層を溶融できる。例えば、熱線を用いると、熱線の両側にアレイ部品を一緒に維持しながら、層を互いに融合させつつ濾過材の配列体を切断することができる。この部品は冷却されると再度融合して安定な濾過材の配列体となる。
【0035】
本発明の好適実施態様では、厚さ9が200ミクロン未満である、好ましくは100ミクロン未満〜約5ミクロンである薄い可撓性ポリマーフィルムを使用する。これより厚いフィルムも使用可能であるが、一般に、厚くなると濾過性能あるいは機械的安定に対する利点がないにもかかわらず圧力損失が増加する。他層の厚さも同様に200ミクロン未満であると好ましく、100ミクロン未満であれば最も好ましい。濾過材の配列体を形成する層の厚さは一般に、その層材料が濾過材の配列体の断面積の入口あるいは出口開口部において累積量として50%未満を占める、好ましくは10%未満を占めるようにする。その断面積の他の部分が入口開口部あるいは出口開口部である。起伏状シートの先端部あるいは隆起部の最低高さが一般に、約1mmであり、少なくとも1.2mmであると好ましく、少なくとも1.5mmであると最も好ましい。この先端部あるいは隆起部の位置が構造体よりも約10mmを超える高さになると不安定となり、フィルタ媒体アレイが例えば100cm以上であるなど、非常に長い場合を除いて効率が大幅に低下する。そのため、この先端部あるいは隆起部を6mm以下とすると好ましい。長手方向におけるフローチャネルの平均断面積は、最小断面積を少なくとも0.2mm2、好適には少なくとも0.5mm2として、一般に少なくとも約1mm2であり、少なくとも2mm2であれば好ましい。この最大断面積は、必要となる濾過性能に照らし合わせて特定し、一般に約1cm2以下であり、約0.5cm2以下であれば好ましい。
【0036】
起伏状フィルム層の起伏とその上に位置するキャップ層あるいは隣接して装着された起伏状フィルム層とによりフローチャネル形状が特定される。一般にフローチャネルは、鐘形、三角形、矩形あるいは不規則形状など適した形状であればいずれでもよい。フローチャネル1層に具備するフローチャネルを実質的に平行とし、かつ起伏状フィルム層を横切って連続状にすると好ましい。しかしながら、隣接するフローチャネル成形層におけるこの種のフローチャネルに対して角度をつけることができる。また、特定フローチャネル成形層が含むフローチャネルを、濾過材の配列体の入口開口部面あるいは出口開口部面に対して角度をつけて延在させることも可能である。
【0037】
使用に当たり、本発明による濾過材の配列体を、空調設備フィルタ、自動車内フィルタ、室内空気清浄器、ベントフィルタ、炉内フィルタ、医用酸素補給装置フィルタ、熱および湿度交換装置、塗量噴霧フィルタ、呼吸装置フィルタなどの圧力損失が低いことが重要であるさまざまな用途に使用可能である。
【実施例】
【0038】
実施態様の説明
実施例
小型粒子試験(Small Particle Challenge Test)
エアロゾル濃度を15mg−NaCl/m3とするヘテロ分散型NaClエアロゾルを対象物(平均粒径0.1μmの粒子サイズ)として用い、ミネソタ州St.PaulのTSI Incorporated製自動濾過試験機モデル8110により、フィルタ構造物の濾過性能を評価した。面速を100、50および25cm/秒として、各フィルタ構造体を連続して試験し、その圧力損失および粒子捕集効率を記録した。各構造体における濾過性能結果を、粒子捕集効率(%)ならびに、式、
Q=−ln(xpen)/ΔP
による、性能程度である品質換算係数として示す。このときxpenは、粒子対象物のフィルタ構造体内部分通過率であり、ΔPはmmH20を単位とするフィルタ全体の圧力損失である。
【0039】
実施例1
テキサス州ダラスのFina Oil and Chemical Co.製2.8MFI型であるポリプロピレン樹脂を、ミクロ溝表面を備える注型用ロール上に押出して、標準押出加工技術により構造化フィルムに形成した。得られた成形フィルムは、第1の平滑な主面と、注型用ロールにより連続形状を長手方向に配置されて備える第2の構造面とを有するものであった。フィルム上の形状には、均一な間隔を置いて配置された第1の構造部分とそれに絡み合う第2の構造部分とが含まれていた。第1の構造部分は182μmの間隔を隔てており、基部におけるその断面は縦50μm横55μmの(縦/横の比率は約1)実質的に矩形であり、側壁の傾斜は5°であった。第2の構造部分は、基部における断面を縦25μm横26μmの(縦/横の比率は約1)実質的に矩形とし、側壁の傾斜を22°とするものであり、この第2の構造3つを、26μm間隔で第1の構造部分間に均等に配置した。この構造部分が延出する基部フィルム層の厚さは50μmであった。
【0040】
構造化フィルムの第1の層を、波型に形成して起伏上とし、その弓型先端部において第2の構造化フィルムに装着してフローチャネル積層層組立体を形成した。この方法は一般に、第1の構造化フィルムを起伏状シートに形成するステップと、間隔を置いて離れている略平行な固定部分から同一方向に突出する弓型部分を備えるようにこのフィルムを形成するステップと、この起伏状フィルムが含む間隔を置いた略平行な固定部分を第2の構造化フィルム支持体層に接合し、弓型部分をその支持体層から突出させるステップとを含む。この方法を、第1および第2の加熱した波型部材あるいはローラにより行う。この部材あるいはローラには、軸があり、ほぼその軸方向に円周方向において間隔を置いて延在されてその外面を取囲んで規定している複数の隆起部が具備されている。この隆起部はさらに、外面を有し、もう一方の波型成形部材の隆起部部分を噛み合わせながら収容できるように適合された空間を隆起部と隆起部との間に画成している。複数の波型成形部材を逆回転させながら、噛み合う隆起部と隆起部との間に第1の構造化フィルムを給送する。双方の波型成形部材が含む歯形状の隆起部は高さが3.05mmであり、その基部から8.5°の傾きで先細り状となり、平坦な頂部表面の幅は0.64mmであった。歯と歯との間の間隔は0.5mmであった。歯の平坦な頂部表面に対する波型成形部材の外径は228mmであった。この波型成形部材を、上部ロールを93℃に加熱し、下部ロールを33℃に保持して積層構造に配置した。この2つのロール間の係合力は歯の幅における1cm当たり123ニュートンであった。波型成形装置をこのように構成して、構造化フィルムを波型成形部材の噛み合う歯と歯との間を5.3RPMのロール速度で通過させてこれを圧搾し、上部波型成形部材の歯と歯との間に保持した。第1のフィルムを上部波型成形部材の歯に位置合わせした状態で、第2の構造化フィルムをそのロールの外面上に配置し、上部波型成形部材の歯に保持されている層に超音波溶接した。こうして、波型成形部材の歯の頂部表面にて、超音波ホーンを担持する台座として歯の表面を用いることにより第1のフィルムと第2のフィルムとの間を溶接した。このように形成した波型フローチャネルの高さは1.4mm、基部の幅は1.8mm、波型間の間隔は0.77mmであった。この波型の側壁は高さを0.7mmとする略直線状であり、先端部は弓型であった。
【0041】
このフローチャネル成形層組立体を、米国特許第3,998,916号(van Turnhoutに付与)に概略が記載されている方法により格子式充電器内にて高電圧場に曝露してエレクトレット化した。そ内容全体を本明細書内に引用したものとする。このチャネル組立体を、等距離の位置にある2つの第1および第2の電圧を加えたコロナワイヤ格子の間に配置した。このとき組みロール構造を第1の格子に方向付け、この格子に30秒間電圧を加えて組立体を帯電した。この格子は24mm間隔をあけた幅36.5mmのものであり、28mmの間隔で60本のコロナワイヤを具備した。第1の格子には−10kV dcを、第2の格子には+10kV dcを印加した。
【0042】
この帯電後のフローチャネル成形層組立体を、濾過材の配列体の入口開口部面が規定する面に対してフローチャネルの側壁が90°をなすように(90°の入射角)すべてのフローチャネル成形層のチャネルを平行に維持しながら互いに積層して(5cm×5cm)濾過材の配列体を形成した。熱線によりこの積層体を切削加工して深さ5mmのフィルタを製造して、濾過材の配列体積層体を安定した濾過材の配列体構造体に変形した。この切削加工は、チャネル組立体積層体を電気抵抗がある加熱した0.51mm直径の軟質ニッケルクロムワイヤ(イリノイ州PfanklinParkのConsolidated Electric Wire & Cableから入手可能)をおよそ0.5cm/秒の横断速度で横切るように横断させて行った。熱線による融解量および溶融樹脂の塗沫程度を注意深く制御し、濾過材の配列体の入口あるいは出口開口部を閉塞させないようにした。熱線によりフィルタの深さを所望通りにするだけでなく、フローチャネル成形層の正面および背面を一緒に溶融して安定化させることにより、最終的な組立体を頑丈で耐へこみ性のある構造にして安定した濾過材の配列体を形成した。このように安定化した濾過材の配列体には、層方向を維持してフィルタを一体保持するために他の構成要素(フレーム、支持体あるいは補強材など)を追加する必要がなかった。
【0043】
この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0044】
このフィルタの濾過性能を、1〜5ミクロン寸法の粒子の捕捉性能と合わせて特定した。この評価に使用した粒子は、ミネソタ州BurnsvilleのPTI Inc.から入手可能なISO Fine Test Dust12103−1、A2により製造されたものである。1200万個/1立方メートルの粒子濃度である試験ダストの中性化したエアロゾルを面速100cm/秒でフィルタに送出した。このフィルタに対する粒子凝縮物の上下流を試験手順の間監視し、瞬間捕集効率を特定した。その結果を表1に示す。試験時におけるフィルタの圧力損失は0.53mm H2Oであった。データからわかるように、本発明によるチャネルフロー濾過材の配列体は、粒子寸法範囲の最大値にて最も効率がよいことから、若干の圧力損失はあるが大型粒子の捕捉に有効である。
【0045】
表1
濾過性能
大型粒子
【0046】
実施例2
チャネル深さを10mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例3
チャネル深さを20mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。このフィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0048】
実施例4
チャネル深さを40mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。このフィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0049】
実施例5
実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造したが、この実施例では、フローチャネル成形層を積層して、このフローチャネル組立体積層体をチャネル側壁に19°のオフセット角度をつけて熱線で切断し、フィルタ面が規定する平面に対してチャネル側壁が71°の角度をなす(71°の入射角)フィルタを製造した。フィルタ面を粒子流に垂直に配置すると、このフィルタ構造体には遮断される照準線ができるため、粒子が直接衝突する面を設けた。この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0050】
比較例C1
名目上高さ2mm、間隔を5mm、チャネル深さ5mm、入射角が90°の起伏形状を具備する起伏状の層と平坦な層とを交互に有する、空調設備用途に用いられている市販の繊維ハニカム状フィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0051】
比較例C2
圧力損失の非常に低い平坦なエレクトレット化フィルタ媒体(ミネソタ州St.Paulの3Mから入手可能な3M Filtrete型GSB−20−NBフィルタ材料)の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0052】
表2
濾過性能
小型粒子
【0053】
実施例6
2.8メルトフローレート(MFI)ポリプロピレン樹脂の代わりに、Fina Oil and Chemical Co.から入手可能な100MFIポリプロピレン樹脂を使用し、仕上る構造化フィルムの表面形状の寸法を大きくした点を除き、構造化フィルムを実質的に実施例1に記載したように製造した。第1の形状のひれ状部を基部において縦70μm横55μmの実質的に矩形断面とし、側壁に5°の勾配をつけ、第2の形状のひれ状部を基部において縦39μm横26μmの実質的に矩形断面とし、側壁に22°の勾配をつけた。この形状が延出している基部フィルム層の厚さは30μmであった。
【0054】
このフィルムを、実施例1に記載したように波形をつけると同時に第2のフィルムに積層した。得られた波形構造は基部において高さ2mm、幅1.8mmであり波形間隔は0.77mmであった。この波形には高さ1.1mmで弓型頂部を有する略直線状の側壁を備えていた。このフローチャネル成形層組立体をエレクトレット化し、実施例1に記載したようにチャネルの深さを10mm、入射角を90°とするフィルタに形成した。
【0055】
この濾過材の配列体の濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0056】
実施例7
実施例1に記載した充電装置および方法により、フローチャネル組立体を形成する前に構造化フィルムを個々にエレクトレット化した点を除き、構造化フィルムを実質的に実施例6に記載したように製造した。このフィルタ組立体の濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0057】
実施例8
構造化フィルムもチャネル組立体もエレクトレット化しなかった点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0058】
実施例9
100MFIポリプロピレン樹脂を艶消し仕上げ注型ロール上に名目上60μm厚さのフィルムとして押出して艶消し仕上げを施した平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0059】
比較例C3
実施例9の艶消し仕上げの平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例7に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。初期効率は実施例7より劣っていた。
【0060】
比較例C4
実施例9の艶消し仕上げの平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例8に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。初期効率は実施例8より劣っていた。
【0061】
実施例10
KN−2397の機械的ファスナのエチレン/プロピレンコポリマーピン構成要素(ミネソタ州St.Paulの3Mから入手可能)を構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。この構成要素は、中心部の間隔を600μm、密度を387本/cm2とする丸いキノコ型頂部を有する円柱状ピンであった。このピンの円柱部分の直系は265μmであり、基部から246μmの高さだけ延出しており、これに高さ64μmで直径が382μmのキノコ型頂部が被されていた。この形状が延出している基部フィルム層の厚さは142μmであった。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0062】
表3
濾過性能
小型粒子
【0063】
表3の濾過性能データから、構造化フィルムあるいはKN−2397ピン構成要素を含むフィルタ構造の性能が、艶消しフィルムによる構造の場合より優れていることが明らかである。このデータは、構造化フィルムでも艶消しフィルムでも、チャネルフィルタ組立体構造体としてエレクトレット化すると性能が良好となることも示している。しかしながら、チャネルフロー組立体を積層体構造としてエレクトレット化すると、フローチャネル形成層の組立体に組立てる前にエレクトレット化した構造化フィルムの場合に比べて大幅に、かつ予想外に良好な性能を得られることがわかった。
【0064】
実施例11
実施例1に記載したように形成した帯電した波型構造化フィルムの一定長さの単層を、チャネルを円柱状のつる巻き状に方向付けたフィルタ構造体に変形した。2枚のカミソリ刃を25.4mmの間隔をあけて平行にし、チャネルに対して40°の角度偏向をつけてフィルムの長手方向に走らせることにより、この波型フィルムから材料ストリップを切断した。次に、このストリップを巻いて2つの切断縁部を平行に保ち、4cm直径の円柱形フィルタを形成した。このフィルタのチャネルを、チャネル入射角を50°にしてつる巻状に配列した。この円柱状フィルタの形状を、熱線を円柱本体の切断縁部の中間地点を軸に垂直に貫通させて、2つの切断面を再融合させることにより固定した。このフィルタに面速106cm/秒にて上述した小型粒子試験を行ったところ、その圧力損失は1.5mm H2O、捕集効率は25%であった。
【0065】
実施例12
3M型GSB−20−NBのFiltreteシートフィルタ材料をフローチャネル組立体の非波型層の代わりに使用した点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフローチャネル成形層組立体シートを形成して帯電した。フローチャネル組立体ストリップを、チャネルに対して90°の偏向角度をつけてこのシートから切断し、入射角が90°のフィルタを製造した点を除き、このフィルタを実質的に実施例11に記載したように組立てた。このフィルタに面速100cm/秒にて上述した小型粒子試験を行ったところ、その圧力損失は1.5mm H2O、捕集効率は17%であった。
【0066】
実施例13
実施例1のように製造したフィルタ媒体アレイに、エアロゾル化粒子の連続流による装填試験を行い、これを評価した。同時にフィルタの圧力損失も監視した。この装填に対する粒子試験には、日本工業規格(JIS)ダストNo.15を用い、これをフィルタに濃度0.35g/m3および面速100cm/秒で連続的に送出した。この装填試験の経過時間を記録し、フィルタの圧力損失が1.53mm H2Oに到達した時点で捕集された粒子の重量を測定して特定した。この装填試験で得られた結果を表4に示す。
【0067】
比較例C5 比較例C1に記載した市販の繊維製ハニカム状フィルタの濾過性能を実施例15に記載した試験方法で装填量について評価した。この装填試験の結果を表4に示す。
【0068】
表4
装填試験
【0069】
表4の濾過性能データから、ミクロ構造化フィルムを含む本発明によるフィルタ構造の方が、市販の繊維製ハニカム状フィルタよりもその耐用年数および装填量のいずれにおいても優れていることが明らかである。本発明によるフィルタでは、比較例C3の繊維製ハニカム状フィルタ構造と比べて寿命は50%長く、装填量は71%多くなっている。
【0070】
実施例14
フィルタ媒体アレイを実施例2に記載したように製造し、NaCl粒子を15mg/m3の濃度、80l/分の流速、および100cm/秒の面速で実施例1に記載したようなTSI試験装置でフィルタに送出することにより小型粒子による性能寿命試験を行った。このフィルタをエアロゾル化粒子の連続流に2時間の周期で曝露した後、捕集した粒子の重量を計測して特定した。この小型粒子による寿命試験の結果を表5に示す。
【0071】
実施例15
フィルタ媒体アレイを実施例7に記載したように製造し、実施例14に記載の小型粒子による性能寿命試験を行った。その結果を表5に示す。
【0072】
比較例6
実施例9に記載したように製造した平坦なフィルムによるハニカム状フィルタの濾過性能を実施例16に記載の小型粒子による性能寿命試験により評価した。その結果を表5に示す。
【0073】
表5
小型粒子による性能寿命試験
【0074】
表5の濾過性能データから、本発明によるフィルタ構造はどちらも、平坦なフィルムで形成したフィルタよりも性能が良好であることが明らかである。構造化フィルムをチャネル構造の形成前に帯電した本発明によるフィルタが捕集した粒子重量は、平坦なフィルムによる実施例の場合を266%上回った。チャネル構造をエレクトレット化した場合の本発明によるフィルタでは比較例に対して966%の改良が見られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に秩序だった通気道を画成する構造を具備した複数の起伏状ポリマーフィルム層を含む帯電型濾過材および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
空気用濾過材の機能は一般に、粒子をフィルタ媒体に接触させて捕捉することを基本とする。この捕捉は、数多くの固着メカニズム(直接の捕獲、衝突捕集あるいは拡散など)による無作為な固着、あるいは一般に静電気引力による積極的な媒体への粒子引付けにより行うことができる。
【0003】
無作為な固着を基本とする濾過材では一般に、流体が媒体に衝突せずに通過できる開口スペースの寸法を削減しつつ、濾過材の表面積を拡大すると効率が上昇する。一般に、最もコストパーフォーマンスがよく最も広く用いられている手法では、繊維フィルタ媒体、特に不織繊維フィルタ媒体が使用されている。流体がこのフィルタ媒体を通過してその繊維媒体に衝突すると粒子が捕捉される。この手法の欠点は、捕集効率が高くなるほど、通常、フィルタ媒体の流動抵抗により大幅な圧力損失となって現れることである。この流動抵抗はフィルタの寿命までに大幅に増加していく可能性がある。
【0004】
静電気引力のみに依存する濾過の例に、特許文献1あるいは特許文献2に記載された例などの誘電性絶縁体により隔離された活性帯電型導電性電極板がある。この装置では、元々帯電されていた粒子あるいは電離器などにより帯電された粒子を、帯電した電極板の間を通過させる。この装置では一般に、圧力損失量は非常に少ないが、非帯電粒子については効果がなく、電源が必要である。
【0005】
この静電装置の利点のいくつかを利用しようと、さまざまな方法で繊維フィルタ媒体に永久的あるいは一次的帯電を誘導することが提案されてきた。繊維フィルタ媒体を帯電すると、それに対応する非帯電型繊維フィルタ媒体と比較して効率は上がるが、従来の貫流型フィルタで使用すると、流動抵抗のためにやはり大幅な圧力損失が見られる。
【0006】
この流動抵抗とそれに伴う圧力損失を低減する方法として、フローチャネルの側壁を微粒子あるいは吸収性のフィルタ媒体で形成する貫流型チャネルフィルタの作製が提案されてきた。このフィルタ媒体の側壁に粒子が接触すると、この側壁が粒子を捕捉する。粒子捕捉性能が強化されている点から見ると、一般に微粒子濾過材はエレクトレット化繊維媒体、通常、帯電繊維により形成した不織繊維媒体である。例えば特許文献3(1995年6月6日公開)には、エレクトレット化不織布フィルタ媒体からハニカム状フィルタ(ダンボールに似たプリーツ状の波型フィルタ媒体など)を形成することが周知であると指摘されている。この特許出願では、フィルタを帯電したメルトブローン繊維フィルタ媒体と帯電した解繊糸フィルタ媒体とのフィルタ媒体積層体で形成することによりこのようなフィルタ構造体の集塵効果の持続性を高めることが提案されている(米国特許第RE30,782号の開示例に類似)。特許文献4(1995年9月19日公開)には、波型ハニカム構造をなす襞折り加工層と平坦層とが、エレクトレット化不織布フィルタ媒体および吸収性のフィルタ媒体(活性炭充填シートあるいはその類似物)の交互層であり、エレクトレット化可能なライナ(不織物など)と共に活性炭層が形成されると好ましい上述のようなハニカム状フィルタが提案されている。特許文献5(1998年6月30日公開)には、ハニカム構造をなすフィルタ材料が、エレクトレット化不織布フィルタ層と抗菌性フィルタ層とから形成されている上述のような別のハニカム型フィルタが開示されている。上述したハニカム型フィルタには、例えば空調設備、室内空気清浄機などの循環型フィルタのように圧力損失の低いことが重要であり、1回の通過による濾過性能がさほど重要ではない場合での使用に有利である。一般に、このようなハニカム状フィルタは、厚紙の形成に用いる方法に類似した方法で形成され、1つのフィルタ媒体に襞折り加工を施してその頂部を平坦な層に接着する。次にこの組立体を積層あるいは巻き上げ、隣接した積層層を膠あるいはホットメルト接着剤により結合することができる。この濾過材をハニカム構造に形成する前に従来技術により帯電する。
【0007】
貫流型フィルタへの別の手法が、特許文献6に提案されている。ここでは帯電型濾過材が不織布フィルタ媒体ではなくフィルムである。この帯電フィルムは、ガラス繊維あるいは波型Kraft紙の開放気泡発泡体ウェブとして記載されている隔離スペーサストリップである。圧力損失は、そのスペーサの多孔率および帯電誘電フィルムとフィルムとのスペースに関係していると記載されている。特許文献7(1981年2月2日公開)には、波型ハニカム構造が、帯電ポリマーフィルム(フィルムあるいは不織布として規定されている)によるプリーツ層あるいは平坦層の一方あるいは双方で形成された同様の構造が開示されている。この多層構造物の前縁部を共に融解することにより接着する。このフィルムに折り畳み処理で「しわ」をよせることが開示されている。帯電フィルムから形成される同様のフィルム型ハニカム構造体は、特許文献8および特許文献9(どちらも1981年2月2日公開)にも開示されている。
【0008】
上述したハニカム構造は圧力損失が低い面では有利であるが、坪量の低い不織ウェブでは特に製造が難しい場合があり、構造的に不安定となり得る。その上、この構造では一般に濾過性能を改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,234,324号明細書
【特許文献2】米国特許第4,313,741号明細書
【特許文献3】特開平7−144108号公報
【特許文献4】特開平7−241491号公報
【特許文献5】特開平10−174823号公報
【特許文献6】米国特許第3,550,257号明細書
【特許文献7】特開昭56−10314号公報
【特許文献8】特開昭56−10312号公報
【特許文献9】特開昭56−10313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
簡単な発明の概要
第1の起伏状フィルム層と第2のフィルム層とで画成されるフローチャネル形成層の組立体の少なくとも1層で形成される濾過材の配列体。この起伏状フィルム層には第1の面と第2の面とがあり、起伏状フィルム層の少なくとも一面上の一連の先端部と少なくとも一面とが、その面の少なくとも一部に、高アスペクト比構造を有するフローチャネルを画成する。好ましくは、このフィルム層を、起伏状フィルム層と平坦な第2のフィルム層とによりフローチャネルを画成し、複数のフローチャネル成形層を上に積層して濾過材の配列体を画成してエレクトレット化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第1の構造化フィルムを示す側面図である。
【図2】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第3の構造化フィルムを示す側面図である。
【図3】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第3の構造化フィルムを示す側面図である。
【図4】本発明による濾過材の配列体の形成に有用な第4の構造化フィルムを示す側面図である。
【図5】起伏状フィルムと平坦なキャップフィルム層との組立体を示す斜視図である。
【図5A】起伏状フィルムと平坦なキャップフィルム層との組立体に機能層を加えた状態を示す斜視図である。
【図6】図5の組立体で形成した本発明による濾過材の配列体の第1の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明による濾過材の配列体の第2の実施例を示す斜視図である。
【図8】ストランドによる安定化層を具備する起伏状フィルムを示す斜視図である。
【図9】平坦なフィルムキャップ層を備えてフローチャネル組立体を形成している起伏状フィルムを示す斜視図である。
【図10】本発明による濾過材の配列体の第3の実施例を示す側面図である。
【図11】本発明による濾過材の配列体の形成有用な第4の構造化フィルムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適実施態様の詳細な説明
本発明は、ハニカム構造に配列されて流体流路を形成する帯電起伏状フィルムを好適に含む濾過材の配列体を提供する。本発明による濾過材の配列体には複数のフィルム層も具備されており、その少なくとも数層のフィルム層には、フィルム層の少なくとも一面の表面領域にリブ、ステム、フィブリル、あるいは他の各隆起部などの高アスペクト比構造を延在させて備えている。
【0013】
フィルム層に起伏をつけてアレイ表面を抜ける流体路への複数の入口開口部を画成させ、このフィルム層を濾過材の配列体内に組み込む。この流体路は、キャップフィルム層を有する1層の起伏状フィルム層で画成しても、複数の起伏状フィルム層を隣接させて画成してもよい。この流体路にさらに出口開口部を設けて、流体が、流動抵抗のあるフィルタ層を必ず通過せずともその流体路に進入して通過できるようにする。この流体路およびそれに伴う濾過材の配列体の開口部を、起伏状フィルム層で少なくとも一部を形成されている1本あるいは複数本のフローチャネルにより画成する。このフローチャネルは、起伏状フィルム層の先端部あるいは隆起部により形成されるものであり、その形態は、隣接するフィルム層と共に濾過材の配列体を横切る流体路を形成するように配置されるものであればいずれでもよい。例えば、このフローチャネルを、反復する隆起部により形成する別個のチャネル、あるいは先端部構造により形成される相互連結チャネルとすることができる。このフローチャネルを、別の起伏状フィルム層と併せて流体路を形成する隔離チャネル(先端部あるいは隆起部に取囲まれた閉じた谷部など)とすることも可能である(隣接する起伏状フィルム層上の谷部をオフセットにして、濾過材の配列体を貫通する連続蛇行路を形成するなど)。
【0014】
この濾過材の配列体が含む分離あるいは相互連結状態で隣接した複数のフローチャネル(共通の起伏状フィルム層に具備されて一列に整列した一連のフローチャネルなど)を、1枚の起伏状フィルム層が形成する一連の先端部あるいは隆起部により画成すると好ましい。こうして隣接するフローチャネルがフローチャネル成形層を画成する。起伏状フィルム層の先端部あるいは隆起部を、平坦なあるいは起伏状のキャップ層を設けることにより安定させる、あるいは区分することができる。キャップ層とは、起伏状フィルム層の一方の面上にある先端部あるいは隆起部と係合あるいは接触する層である。起伏状フィルム層のもう一方の面上にある先端部あるいは隆起部も、キャップ層に連結あるいは接触させることができる。キャップ層により、起伏状フィルム層の全体をカバーしても一部のみをカバーしてもよい。このキャップ層が平坦なフィルム層である場合、このキャップフィルム層とそれに付随する起伏状フィルム層とが、そのフィルムキャップ層に接触あるいは係合している起伏状フィルム層の隣接する先端部あるいは隆起部の間に流体路を画成する。
【0015】
キャップ層を、吸収剤あるいは微粒子フィルムなどの機能層、あるいは一連の安定化フィラメントあるいは強化不織布などの安定化層とすることも可能である。図8に、個々のステム状構造体46を含む起伏状フィルム層40を示す。この構造体46は、この起伏状フィルム層40の先端部44において安定化フィラメント42に結合している。濾過材の配列体としての有用性を高めるには、図8の実施例をキャップフィルム層あるいは別の起伏状フィルム層などのもう1枚のフィルム層に接合する必要がある。このフィラメント層42にもう1枚の起伏状フィルム層を接合する場合、流体路は、この隣接する2枚の起伏状フィルム層のフローチャネル成形層2層により形成される。
【0016】
起伏状フィルム層10が画成するフローチャネル成形層20内の14および16などの隣接するフローチャネルは、図5に示すようにすべて同一形状であっても、図9に示すように別形状であってもよい。図9では、フローチャネル成形層20が含む隣接したフローチャネル24および26は別個のフローチャネルであり、高さは同じであるが幅が異なっている。図5では、フローチャネル成形層20が含む隣接したフローチャネル14および16は別個のフローチャネルであり、高さも幅も等しくなっている。製造性の観点から言えば、好適には、起伏状フィルム層のフローチャネルを形成する先端部あるいは隆起部のすべて、あるいは少なくとも大半を実質的に同じ高さにしなくてはならない。さらに、濾過材の配列体30が隣接して含む各フローチャネル成形層20には、同一形状のフローチャネル(図6に示すように)あるいは異なる形状のフローチャネルのどちらを具備してもよい。濾過材の配列体が含む隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルは、位置合わせした状態としても(図6など)、オフセット状態としても(図7に示すように互いに斜めに)、あるいはこれらの組み合わせとしてもよい。濾過材の配列体の上をカバーして隣接するフローチャネル成形層を一般に、フローチャネルを相互連結、区分、あるいは区分して隔離する(すなわち、起伏状フィルム層全体を横切って延在させない)ことのできる1枚の起伏フィルム層で形成する。起伏状フィルム層全体を横切って延在するフローチャネルの場合、このチャネルを直線状あるいは曲線状に延在させることができる。積層されて上側に隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルを実質的に平行に設けて位置合わせすると好ましいが(図6)、拡散角度あるいは収束角度をつけて設けてもよい。図10に示すように濾過材の配列体を円柱状に配列したフローチャネル成形層で形成する場合、このフローチャネル成形層を、中央の軸芯64を中心として螺旋状あるいはつる巻き状に位置合わせして構成した1枚の起伏状フィルム層60と任意のキャップ層62とで形成することができる。製造時にこの起伏状フィルム層を1枚のキャップ層62に接合して安定させ、もう1枚のキャップ層62aと摩擦接触させると好ましい。
【0017】
起伏状フィルム層の複数対について、図7に示すように各先端部で互いに係合するように対向層と互いに対向させる、あるいは図5、図6および図10に示すように1枚あるいは複数のキャップ層で隔離することができる。起伏状フィルム層31が図7に示すようにフィルム層を介在させずに接触する場合、起伏状フィルム層31の34および35などの隣接して交わっているフローチャネルの間を流体路とする。
【0018】
濾過材の配列体が隣接して含む起伏状フィルム層とフィルム層との間に層を追加して配置してもよい。追加する機能層を1層あるいは複数層のキャップ層あるいは起伏状層にすることができ、これに、例えば活性炭などの吸収剤剤などを含有して気流からの気体汚染物除去を可能にすることができる。この層に機能性処理剤を含有して、粒子除去率の改良、あるいは撥水性および撥油性の付与、臭いの除去、有機物質の除去、オゾンの除去、消毒、乾燥、芳香剤の導入などの他の利点を備えることができる。処理の例として、層を充電してエレクトレットを形成する、層に表面コーティングを施す、あるいは処理した層あるいはコーティングをさらに追加することが挙げられる。
【0019】
このフローチャネルが、濾過材の配列体を貫通する、制御され、かつ秩序だった流体流路となる。濾過に利用できる表面積は、このフローチャネルで利用可能な表面積と、濾過材の配列体が含むフローチャネルの数および長さとにより特定される。言いかえれば、フローチャネルの長さ、チャネル形状、および各層の表面積などの各濾過材層の特徴により特定される。
【0020】
起伏状フィルム層によるフローチャネルの単層で、本発明による機能的濾過材の配列体を構成することができる。しかしながら、複数のオーバーレイフローチャネル成形層により機能的濾過材の配列体を形成すると好ましい。積層した起伏状構造化フィルム層で形成した濾過材の配列体により、不織布フィルタウェブにおける孔寸法の変動や目立つ不揃いのない、規則正しいあるいは巧みに設計された機械的に安定な多孔質構造が得られる。気孔寸法の変動および不規則性については、本発明による濾過材の配列体の目的とする最終的な濾過性能に対する要望に基づいて設計および制御する。こうすることにより、流体流が濾過材の配列体のフローチャネルを貫通する際にこれを均一に処理して、その濾過効率を上昇させることができる。一般に、フローチャネルを形成する起伏状フィルム層により、構造的に安定な形態を形成している濾過材の配列体を強化して、多くの自立型構造を形成することができる。
【0021】
フローチャネルを圧搾あるいは閉塞することなく、この濾過材の配列体をさまざまな形状に追従させる、あるいは物体上に配置することができる。濾過材の配列体を立体状に予備形成した後、隣接したフローチャネルの層を接着して構造的に安定な形態を形成することも可能である。この形態を用いると、フレームがなくても気流を所望の方法で方向付ける、あるいはダクトなどの利用可能なスペースに追従させる、あるいは別の構造体に対する支持体を形成することができる。本発明による濾過材の配列体は比較的安定であり、濾過材を操作する際の襞折り加工、取扱、あるいは組立てなどによる濾過材の操作時に発生する破損に対して耐性を備えている。従来の繊維フィルタでは繊維の破断により、特にクリーンルーム向け用途において数多くの問題が発生する可能性が有る。
【0022】
本発明による起伏状フィルムを一般に帯電し、装着されているキャップ層あるいは他層のいずれに対して起伏状のままエレクトレット化すると好ましい。フィルムを起伏状にして帯電すると、特に起伏状フィルムがアスペクト比の高い構造を有する場合、その起伏状フィルムの微粒子物質捕集性を思いがけず高めることができる。この性能の改良は、起伏状にする前に帯電したフィルムで形成した同じ濾過材に比較して見られるものである。
【0023】
この層状帯電起伏状フィルムの特徴として、ニューヨーク州MedinaのTrek Inc.から入手可能であるAuto Bi−Polar ESVM型番号341などの静電表面電圧計(ESVM)を用いてフィルム表面からおよそ1cmの距離で測定すると、その表面電圧が少なくとも+/−1.5KV、好ましくは少なくとも+/−10KVであることが挙げられる。この静電荷にはエレクトレットを含んでよい。エレクトレットは、長時間にわたり持続する電荷を呈する誘電体材料片である。エレクトレット化の可能な材料の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリプロピレンなどの非極性ポリマーが挙げられる。一般に、エレクトレット上の正味帯電量は0あるいは0に近く、その電場は電荷を分離したことによるものであり、正味の電荷により発生するものではない。材料および処理の選択を適切に行うことにより、エレクトレットを、外向きの静電場を発生するように構成することができる。このようなエレクトレットを、永久磁石の静電類似体と見なすことができる。
【0024】
誘電体材料の帯電には一般に幾つかの方法が用いられており、そのいずれによって本発明で使用する起伏状フィルム組成物あるいは他層を帯電してもよい。その例として、帯電した電場のある材料に対するコロナ放電、加熱および冷却、ウェブの帯電粒子噴霧、噴水あるいは水滴流による表面の湿潤あるいは衝突が挙げられる。さらに、表面の帯電性は、配合材料あるいは帯電促進剤の使用により強化可能である。充電方法の例は、van Turnhout他に付与された米国特許第RE30,782号、van Turnhout他に付与された米国特許第RE31,285号、Angadjivand他に付与された同第5,496,507号、Jones他に付与された米国特許第5,472,481号、Kubik他に付与された米国特許第4,215,682号、Nishiura他に付与された米国特許第5,057,710号、およびNakaoに付与された米国特許第4,592,815号に開示されている。
【0025】
さらに、一方の面に高圧を印可した金属化表面あるいは層を具備するフィルムを使用するなどして1層あるいは複数層に有効荷電を設けることができる。これは、本発明では起伏状層に隣接して金属化層を追加する、あるいは金属コーティングを層上に施すことにより実現可能である。このような金属化層を含む濾過材層を電気電圧源に接触させて搭載すると、この金属化媒体層内に電流を通すことができる。有効荷電の例は、Inculetに付与された米国特許第5,405,434号に開示されている。
【0026】
利用可能な処理のもう1種類は、フィルム層の撥水性、撥油性を改良し、かつ油性エアロゾルの濾過性能を高めることのできる材料の添加あるいは材料のコーティングという形態でフルオロケミカル添加剤を使用することである。このような添加剤の例は、Jones他に付与された米国特許第5,472,481号、Crater他に付与された同5,099,026号、およびCrater他に付与された同5,025,052号に見られる。
【0027】
さらに、フィルタ層を、衝突する粒子を引き寄せて接着させるように意図された粘着物質で埋設、コーティング、あるいは他の処理を施してよい。フィルタ層を、流体流と何らかの形で反応して濾過性能を高める、あるいは他の効果を得るように意図された化学反応物あるいは他の化合物で埋設、コーティング、あるいは他の処理を施してもよい。この種の化合物およびその効果は、層の追加による処理に対する上記の例に類似している。この化合物の例として、有機分子を除去あるいは脱臭する活性炭、ゼオライトあるいはアルミノケイ酸塩などの吸収剤;悪臭を放つ物質を分解する銅−アスコルビン酸などの脱臭触媒;シリカゲル、ゼオライト、塩化カルシウムあるいは活性アルミナなどの乾燥剤;UV殺菌系などの消毒剤;グロキサル、メタクリル酸エステルあるいは香料などの芳香剤;Mg、Ag、Fe、Co、Ni、Pt、PdあるいはRnまたはアルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、珪藻土、シリカジルコニウムあるいはチタニアなどの担体上に支持されている酸化物などの金属を含むオゾン除去剤が挙げられる。
【0028】
本発明にて使用する構造化フィルム層の形成に有用なポリマーの例として、ポリエチレンおよびポリエチレンコポリマーなどのポリオレフィン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられるがこれらに限定するものではない。他のポリマー材料として、アセテート、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ尿素、ポリカーボネートおよびポリスチレンが挙げられる。構造化フィルム層は、アクリレートあるいはエポキシ樹脂などの硬化性樹脂材料を注型し、化学的に促進されたフリーラジカル反応路内を通過させて熱、UVあるいは電子ビーム放射線に曝露することにより硬化させることができる。この構造化フィルム層を、帯電可能なポリマー材料、すなわち誘電体ポリマーおよびポリオレフィンあるいはポリスチレンなどの配合物で形成すると好ましい。
【0029】
ポリマー配合物を含むポリマー材料を、可塑化活性剤あるいは抗菌剤の溶融配合により変性することができる。フィルタ層の表面改質は、蒸着あるいは電離放射線を用いた官能基部分の共有グラフトにより実現可能である。電離放射線などによるモノマーのポリプロピレンへのグラフト重合に関する方法および手法は、米国特許第4,950,549号および同5,078,925号に開示されている。このポリマーに添加剤を含有して、ポリマー構造層にさまざまな特性を付与することもできる。
【0030】
この起伏状フィルム層およびキャップフィルム層が含む一方の面あるいは双方の面に、構造面を画成して具備することができる。好適実施態様の起伏状フィルムおよび/またはキャップフィルム層に用いる高アスペクト比構造体は、最小直径あるいは幅に対する高さの比が0.1を上回り、好ましくは0.5を理論上無制限に上回る構造であり、高さが少なくとも約20ミクロン、好ましくは少なくとも50ミクロンである構造である。このアスペクト比の高い構造体の高さが2000ミクロンを超えると、フィルムの取扱が難しくなる可能性があるため、この構造体の高さを1000ミクロン未満にすると好ましい。この構造体の高さをいずれの場合もフローチャネルの高さに対して少なくとも50%以下、好ましくは20%以下とする。図1〜図4および図11に示すように、フィルム層1上の構造体の形態として、ピラミッド、キューブコーナー、Jフック、キノコ型ヘッドなどの直立したステムあるいは突起部;連続あるいは断続的隆起部;チャネル5を中に挟む矩形3あるいはV字型隆起部2;あるいはこれらの組み合わせが可能である。キノコ型ヘッド突起部46を図11においてフィルム支持体40上に図示する。この突起部は、規則的、無作為、あるいは断続的のいずれであってもよく、隆起部などの他の構造と組み合わせることも可能である。この隆起型構造を、規則的に配置する、無作為に配置する、断続的に配置する、互いに平行に延在させる、交差するあるいは交差しない角度をつける、あるいは隆起部と隆起部との間に入れ子式隆起部4あるいは突起部などの他の構造を組み合わせることができる。一般に、アスペクト比の高い構造体であればフィルム1の全体あるいは一部領域のみに延在させることができる。フィルム領域にこの構造を具備する場合、この構造により、対応する平坦なフィルムよりも表面積を少なくとも50%拡大し、少なくとも100%拡大すると好ましく、一般に1000%以上拡大する。好適実施態様ではこのアスペクト比の高い構造体は、起伏状フィルム層の起伏部に対して一定角度、好ましくは八角形をなす角度(90度)にて図5および図6に示すように起伏状フィルム層の大部分を横切って延在する連続的あるいは断続的隆起部である。こうすることにより、フローチャネル形成層の組立体(図5)および濾過材の配列体(図6)における起伏状フィルム層の機械的安定性を強化することができる。この隆起部には一般に、起伏部に対して約5〜175度、好ましくは45〜135度の角度をつけることができ、一般にこの隆起部は、起伏状フィルムの著しい曲線部分上のみに延在させればよい。
【0031】
この構造面は、構造化フィルムを形成する周知の方法であればいずれを用いて製造してもよく、その例として、どちらもMarantic他に付与された米国特許第5,069,404号および同第5,133,516号;Benson他に付与された米国特許第5,691,846号;Johnston他に付与された米国特許第5,514,120号;Noreen他に付与された米国特許第5,158,030号;Lu他に付与された米国特許第5,175,030号;Barberに付与された米国特許第4,668,558号;Fisherに付与された米国特許第4,775,310号;Erbに付与された米国特許3,594,863号;あるいはMelbye他に付与された米国特許5,077,870号に開示された方法などが挙げられる。これらの方法全体を本明細書内に引用したものとする。
【0032】
この起伏状フィルム層について、少なくとも一方の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%にアスペクト比の高い構造体を設けると好ましい。キャップ層あるいは他の機能的フィルム層も、この高アスペクト比の構造化フィルムで形成することができる。一般に、フローチャネル全体の表面積の10〜100%を構造面としなければならず、40〜100%であれば好ましい。
【0033】
本発明による濾過材の配列体の原料は、層の形成に所望する材料とする。厚さを要件通り1種類あるいは複数種類とした適した材料のシートを、所望する高いアスペクト比の表面を具備するように形成し、このフィルム層の少なくとも1枚を起伏状とし、この起伏状フィルムを別のキャップ層、起伏状層などに結合して安定させることによりフローチャネルを形成する。濾過材の配列体を形成する起伏状フィルム層およびキャップ層などのフローチャネル成形層を、互いに接合する、機械的に含有する、あるいは他の方法により安定な濾過材の配列体として保持することができる。この起伏状フィルムおよびキャップ層を、米国特許第5,256,231号(フィルム層を波型層に押出接合する)あるいは米国特許第5,256,231号(先端部を下側に位置する層に接着剤あるいは超音波により接合する)に開示されている例などのように、あるいは入口および/または出口開口部を形成する外縁部を溶融接着することにより、互いに接合することができる。図5に示すように、起伏状構造化フィルム10を、起伏状フィルム層10の一方の面13上の先端部12で平坦な構造キャップフィルム層11に結合する。このフローチャネル成形層20の1枚あるいは複数枚を重ね合わせるあるいは他の方法で層状とし、予め定められたパターンあるいは関係に方向付ける。このとき、任意に層15(図5A)を追加して図6に示す濾過材の配列体30のフローチャネル成形層20の容積を目的通りとする。得られたフローチャネル成形層20の容積をスライスあるいは他の方法により変更して、所望の肉厚および形状を備えた濾過材の配列体に仕上げる。この濾過材の配列体30をそのまま使用しても、または搭載あるいは他の方法で組み合わせて最終的な使用形態としてもよい。上述したように、製造処理の適当な段階において所望する処理のいずれを適用してもよい。さらに、本発明による濾過材の配列体を、表面に対する不織繊維材料層などの他の濾過材料と組み合わせる、あるいは他の非濾過材料と組み合わせてその取扱、搭載、組立てあるいは使用を容易にすることができる。
【0034】
濾過材の配列体30を熱線でスライスすることにより、その最終形態に形成すると好ましい。最終的なフィルム形態の切断時に、この熱線が各層を互いに融合させる。最終フィルタの最も外側の単数あるいは複数面において、このように層が融合される。したがって、熱線による切削加工前に濾過材の配列体30が含む隣接層の少なくとも数層を結合させておく必要はない。熱線による切削速度を調節して、各層の溶融あるいは融合程度を増減させる。例えば、熱線速度に変化をつけて、溶融領域の位置に高低をつけることができることができる。直線状あるいは曲線状の熱線を用いて、矩形、曲線状、楕円などの無制限に考え得る形状のフィルタを形成することができる。また、熱線を用いると、フィルタを切削あるいは分離することなく濾過材の配列体の各層を溶融できる。例えば、熱線を用いると、熱線の両側にアレイ部品を一緒に維持しながら、層を互いに融合させつつ濾過材の配列体を切断することができる。この部品は冷却されると再度融合して安定な濾過材の配列体となる。
【0035】
本発明の好適実施態様では、厚さ9が200ミクロン未満である、好ましくは100ミクロン未満〜約5ミクロンである薄い可撓性ポリマーフィルムを使用する。これより厚いフィルムも使用可能であるが、一般に、厚くなると濾過性能あるいは機械的安定に対する利点がないにもかかわらず圧力損失が増加する。他層の厚さも同様に200ミクロン未満であると好ましく、100ミクロン未満であれば最も好ましい。濾過材の配列体を形成する層の厚さは一般に、その層材料が濾過材の配列体の断面積の入口あるいは出口開口部において累積量として50%未満を占める、好ましくは10%未満を占めるようにする。その断面積の他の部分が入口開口部あるいは出口開口部である。起伏状シートの先端部あるいは隆起部の最低高さが一般に、約1mmであり、少なくとも1.2mmであると好ましく、少なくとも1.5mmであると最も好ましい。この先端部あるいは隆起部の位置が構造体よりも約10mmを超える高さになると不安定となり、フィルタ媒体アレイが例えば100cm以上であるなど、非常に長い場合を除いて効率が大幅に低下する。そのため、この先端部あるいは隆起部を6mm以下とすると好ましい。長手方向におけるフローチャネルの平均断面積は、最小断面積を少なくとも0.2mm2、好適には少なくとも0.5mm2として、一般に少なくとも約1mm2であり、少なくとも2mm2であれば好ましい。この最大断面積は、必要となる濾過性能に照らし合わせて特定し、一般に約1cm2以下であり、約0.5cm2以下であれば好ましい。
【0036】
起伏状フィルム層の起伏とその上に位置するキャップ層あるいは隣接して装着された起伏状フィルム層とによりフローチャネル形状が特定される。一般にフローチャネルは、鐘形、三角形、矩形あるいは不規則形状など適した形状であればいずれでもよい。フローチャネル1層に具備するフローチャネルを実質的に平行とし、かつ起伏状フィルム層を横切って連続状にすると好ましい。しかしながら、隣接するフローチャネル成形層におけるこの種のフローチャネルに対して角度をつけることができる。また、特定フローチャネル成形層が含むフローチャネルを、濾過材の配列体の入口開口部面あるいは出口開口部面に対して角度をつけて延在させることも可能である。
【0037】
使用に当たり、本発明による濾過材の配列体を、空調設備フィルタ、自動車内フィルタ、室内空気清浄器、ベントフィルタ、炉内フィルタ、医用酸素補給装置フィルタ、熱および湿度交換装置、塗量噴霧フィルタ、呼吸装置フィルタなどの圧力損失が低いことが重要であるさまざまな用途に使用可能である。
【実施例】
【0038】
実施態様の説明
実施例
小型粒子試験(Small Particle Challenge Test)
エアロゾル濃度を15mg−NaCl/m3とするヘテロ分散型NaClエアロゾルを対象物(平均粒径0.1μmの粒子サイズ)として用い、ミネソタ州St.PaulのTSI Incorporated製自動濾過試験機モデル8110により、フィルタ構造物の濾過性能を評価した。面速を100、50および25cm/秒として、各フィルタ構造体を連続して試験し、その圧力損失および粒子捕集効率を記録した。各構造体における濾過性能結果を、粒子捕集効率(%)ならびに、式、
Q=−ln(xpen)/ΔP
による、性能程度である品質換算係数として示す。このときxpenは、粒子対象物のフィルタ構造体内部分通過率であり、ΔPはmmH20を単位とするフィルタ全体の圧力損失である。
【0039】
実施例1
テキサス州ダラスのFina Oil and Chemical Co.製2.8MFI型であるポリプロピレン樹脂を、ミクロ溝表面を備える注型用ロール上に押出して、標準押出加工技術により構造化フィルムに形成した。得られた成形フィルムは、第1の平滑な主面と、注型用ロールにより連続形状を長手方向に配置されて備える第2の構造面とを有するものであった。フィルム上の形状には、均一な間隔を置いて配置された第1の構造部分とそれに絡み合う第2の構造部分とが含まれていた。第1の構造部分は182μmの間隔を隔てており、基部におけるその断面は縦50μm横55μmの(縦/横の比率は約1)実質的に矩形であり、側壁の傾斜は5°であった。第2の構造部分は、基部における断面を縦25μm横26μmの(縦/横の比率は約1)実質的に矩形とし、側壁の傾斜を22°とするものであり、この第2の構造3つを、26μm間隔で第1の構造部分間に均等に配置した。この構造部分が延出する基部フィルム層の厚さは50μmであった。
【0040】
構造化フィルムの第1の層を、波型に形成して起伏上とし、その弓型先端部において第2の構造化フィルムに装着してフローチャネル積層層組立体を形成した。この方法は一般に、第1の構造化フィルムを起伏状シートに形成するステップと、間隔を置いて離れている略平行な固定部分から同一方向に突出する弓型部分を備えるようにこのフィルムを形成するステップと、この起伏状フィルムが含む間隔を置いた略平行な固定部分を第2の構造化フィルム支持体層に接合し、弓型部分をその支持体層から突出させるステップとを含む。この方法を、第1および第2の加熱した波型部材あるいはローラにより行う。この部材あるいはローラには、軸があり、ほぼその軸方向に円周方向において間隔を置いて延在されてその外面を取囲んで規定している複数の隆起部が具備されている。この隆起部はさらに、外面を有し、もう一方の波型成形部材の隆起部部分を噛み合わせながら収容できるように適合された空間を隆起部と隆起部との間に画成している。複数の波型成形部材を逆回転させながら、噛み合う隆起部と隆起部との間に第1の構造化フィルムを給送する。双方の波型成形部材が含む歯形状の隆起部は高さが3.05mmであり、その基部から8.5°の傾きで先細り状となり、平坦な頂部表面の幅は0.64mmであった。歯と歯との間の間隔は0.5mmであった。歯の平坦な頂部表面に対する波型成形部材の外径は228mmであった。この波型成形部材を、上部ロールを93℃に加熱し、下部ロールを33℃に保持して積層構造に配置した。この2つのロール間の係合力は歯の幅における1cm当たり123ニュートンであった。波型成形装置をこのように構成して、構造化フィルムを波型成形部材の噛み合う歯と歯との間を5.3RPMのロール速度で通過させてこれを圧搾し、上部波型成形部材の歯と歯との間に保持した。第1のフィルムを上部波型成形部材の歯に位置合わせした状態で、第2の構造化フィルムをそのロールの外面上に配置し、上部波型成形部材の歯に保持されている層に超音波溶接した。こうして、波型成形部材の歯の頂部表面にて、超音波ホーンを担持する台座として歯の表面を用いることにより第1のフィルムと第2のフィルムとの間を溶接した。このように形成した波型フローチャネルの高さは1.4mm、基部の幅は1.8mm、波型間の間隔は0.77mmであった。この波型の側壁は高さを0.7mmとする略直線状であり、先端部は弓型であった。
【0041】
このフローチャネル成形層組立体を、米国特許第3,998,916号(van Turnhoutに付与)に概略が記載されている方法により格子式充電器内にて高電圧場に曝露してエレクトレット化した。そ内容全体を本明細書内に引用したものとする。このチャネル組立体を、等距離の位置にある2つの第1および第2の電圧を加えたコロナワイヤ格子の間に配置した。このとき組みロール構造を第1の格子に方向付け、この格子に30秒間電圧を加えて組立体を帯電した。この格子は24mm間隔をあけた幅36.5mmのものであり、28mmの間隔で60本のコロナワイヤを具備した。第1の格子には−10kV dcを、第2の格子には+10kV dcを印加した。
【0042】
この帯電後のフローチャネル成形層組立体を、濾過材の配列体の入口開口部面が規定する面に対してフローチャネルの側壁が90°をなすように(90°の入射角)すべてのフローチャネル成形層のチャネルを平行に維持しながら互いに積層して(5cm×5cm)濾過材の配列体を形成した。熱線によりこの積層体を切削加工して深さ5mmのフィルタを製造して、濾過材の配列体積層体を安定した濾過材の配列体構造体に変形した。この切削加工は、チャネル組立体積層体を電気抵抗がある加熱した0.51mm直径の軟質ニッケルクロムワイヤ(イリノイ州PfanklinParkのConsolidated Electric Wire & Cableから入手可能)をおよそ0.5cm/秒の横断速度で横切るように横断させて行った。熱線による融解量および溶融樹脂の塗沫程度を注意深く制御し、濾過材の配列体の入口あるいは出口開口部を閉塞させないようにした。熱線によりフィルタの深さを所望通りにするだけでなく、フローチャネル成形層の正面および背面を一緒に溶融して安定化させることにより、最終的な組立体を頑丈で耐へこみ性のある構造にして安定した濾過材の配列体を形成した。このように安定化した濾過材の配列体には、層方向を維持してフィルタを一体保持するために他の構成要素(フレーム、支持体あるいは補強材など)を追加する必要がなかった。
【0043】
この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0044】
このフィルタの濾過性能を、1〜5ミクロン寸法の粒子の捕捉性能と合わせて特定した。この評価に使用した粒子は、ミネソタ州BurnsvilleのPTI Inc.から入手可能なISO Fine Test Dust12103−1、A2により製造されたものである。1200万個/1立方メートルの粒子濃度である試験ダストの中性化したエアロゾルを面速100cm/秒でフィルタに送出した。このフィルタに対する粒子凝縮物の上下流を試験手順の間監視し、瞬間捕集効率を特定した。その結果を表1に示す。試験時におけるフィルタの圧力損失は0.53mm H2Oであった。データからわかるように、本発明によるチャネルフロー濾過材の配列体は、粒子寸法範囲の最大値にて最も効率がよいことから、若干の圧力損失はあるが大型粒子の捕捉に有効である。
【0045】
表1
濾過性能
大型粒子
【0046】
実施例2
チャネル深さを10mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例3
チャネル深さを20mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。このフィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0048】
実施例4
チャネル深さを40mmにした点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造した。このフィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0049】
実施例5
実質的に実施例1に記載したようにフィルタを製造したが、この実施例では、フローチャネル成形層を積層して、このフローチャネル組立体積層体をチャネル側壁に19°のオフセット角度をつけて熱線で切断し、フィルタ面が規定する平面に対してチャネル側壁が71°の角度をなす(71°の入射角)フィルタを製造した。フィルタ面を粒子流に垂直に配置すると、このフィルタ構造体には遮断される照準線ができるため、粒子が直接衝突する面を設けた。この濾過材の配列体の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0050】
比較例C1
名目上高さ2mm、間隔を5mm、チャネル深さ5mm、入射角が90°の起伏形状を具備する起伏状の層と平坦な層とを交互に有する、空調設備用途に用いられている市販の繊維ハニカム状フィルタの濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0051】
比較例C2
圧力損失の非常に低い平坦なエレクトレット化フィルタ媒体(ミネソタ州St.Paulの3Mから入手可能な3M Filtrete型GSB−20−NBフィルタ材料)の濾過性能を、上述した小型粒子試験により特定した。結果を表2に示す。
【0052】
表2
濾過性能
小型粒子
【0053】
実施例6
2.8メルトフローレート(MFI)ポリプロピレン樹脂の代わりに、Fina Oil and Chemical Co.から入手可能な100MFIポリプロピレン樹脂を使用し、仕上る構造化フィルムの表面形状の寸法を大きくした点を除き、構造化フィルムを実質的に実施例1に記載したように製造した。第1の形状のひれ状部を基部において縦70μm横55μmの実質的に矩形断面とし、側壁に5°の勾配をつけ、第2の形状のひれ状部を基部において縦39μm横26μmの実質的に矩形断面とし、側壁に22°の勾配をつけた。この形状が延出している基部フィルム層の厚さは30μmであった。
【0054】
このフィルムを、実施例1に記載したように波形をつけると同時に第2のフィルムに積層した。得られた波形構造は基部において高さ2mm、幅1.8mmであり波形間隔は0.77mmであった。この波形には高さ1.1mmで弓型頂部を有する略直線状の側壁を備えていた。このフローチャネル成形層組立体をエレクトレット化し、実施例1に記載したようにチャネルの深さを10mm、入射角を90°とするフィルタに形成した。
【0055】
この濾過材の配列体の濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0056】
実施例7
実施例1に記載した充電装置および方法により、フローチャネル組立体を形成する前に構造化フィルムを個々にエレクトレット化した点を除き、構造化フィルムを実質的に実施例6に記載したように製造した。このフィルタ組立体の濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0057】
実施例8
構造化フィルムもチャネル組立体もエレクトレット化しなかった点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0058】
実施例9
100MFIポリプロピレン樹脂を艶消し仕上げ注型ロール上に名目上60μm厚さのフィルムとして押出して艶消し仕上げを施した平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0059】
比較例C3
実施例9の艶消し仕上げの平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例7に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。初期効率は実施例7より劣っていた。
【0060】
比較例C4
実施例9の艶消し仕上げの平坦なフィルムを双方の構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例8に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。初期効率は実施例8より劣っていた。
【0061】
実施例10
KN−2397の機械的ファスナのエチレン/プロピレンコポリマーピン構成要素(ミネソタ州St.Paulの3Mから入手可能)を構造化フィルムの代わりに使用した点を除き、実質的に実施例6に記載したようにフィルタを製造して試験を行った。この構成要素は、中心部の間隔を600μm、密度を387本/cm2とする丸いキノコ型頂部を有する円柱状ピンであった。このピンの円柱部分の直系は265μmであり、基部から246μmの高さだけ延出しており、これに高さ64μmで直径が382μmのキノコ型頂部が被されていた。この形状が延出している基部フィルム層の厚さは142μmであった。このフィルタの濾過性能を、10cm/秒および20cm/秒の面速にて上述した小型粒子試験により特定した。結果を表3に示す。
【0062】
表3
濾過性能
小型粒子
【0063】
表3の濾過性能データから、構造化フィルムあるいはKN−2397ピン構成要素を含むフィルタ構造の性能が、艶消しフィルムによる構造の場合より優れていることが明らかである。このデータは、構造化フィルムでも艶消しフィルムでも、チャネルフィルタ組立体構造体としてエレクトレット化すると性能が良好となることも示している。しかしながら、チャネルフロー組立体を積層体構造としてエレクトレット化すると、フローチャネル形成層の組立体に組立てる前にエレクトレット化した構造化フィルムの場合に比べて大幅に、かつ予想外に良好な性能を得られることがわかった。
【0064】
実施例11
実施例1に記載したように形成した帯電した波型構造化フィルムの一定長さの単層を、チャネルを円柱状のつる巻き状に方向付けたフィルタ構造体に変形した。2枚のカミソリ刃を25.4mmの間隔をあけて平行にし、チャネルに対して40°の角度偏向をつけてフィルムの長手方向に走らせることにより、この波型フィルムから材料ストリップを切断した。次に、このストリップを巻いて2つの切断縁部を平行に保ち、4cm直径の円柱形フィルタを形成した。このフィルタのチャネルを、チャネル入射角を50°にしてつる巻状に配列した。この円柱状フィルタの形状を、熱線を円柱本体の切断縁部の中間地点を軸に垂直に貫通させて、2つの切断面を再融合させることにより固定した。このフィルタに面速106cm/秒にて上述した小型粒子試験を行ったところ、その圧力損失は1.5mm H2O、捕集効率は25%であった。
【0065】
実施例12
3M型GSB−20−NBのFiltreteシートフィルタ材料をフローチャネル組立体の非波型層の代わりに使用した点を除き、実質的に実施例1に記載したようにフローチャネル成形層組立体シートを形成して帯電した。フローチャネル組立体ストリップを、チャネルに対して90°の偏向角度をつけてこのシートから切断し、入射角が90°のフィルタを製造した点を除き、このフィルタを実質的に実施例11に記載したように組立てた。このフィルタに面速100cm/秒にて上述した小型粒子試験を行ったところ、その圧力損失は1.5mm H2O、捕集効率は17%であった。
【0066】
実施例13
実施例1のように製造したフィルタ媒体アレイに、エアロゾル化粒子の連続流による装填試験を行い、これを評価した。同時にフィルタの圧力損失も監視した。この装填に対する粒子試験には、日本工業規格(JIS)ダストNo.15を用い、これをフィルタに濃度0.35g/m3および面速100cm/秒で連続的に送出した。この装填試験の経過時間を記録し、フィルタの圧力損失が1.53mm H2Oに到達した時点で捕集された粒子の重量を測定して特定した。この装填試験で得られた結果を表4に示す。
【0067】
比較例C5 比較例C1に記載した市販の繊維製ハニカム状フィルタの濾過性能を実施例15に記載した試験方法で装填量について評価した。この装填試験の結果を表4に示す。
【0068】
表4
装填試験
【0069】
表4の濾過性能データから、ミクロ構造化フィルムを含む本発明によるフィルタ構造の方が、市販の繊維製ハニカム状フィルタよりもその耐用年数および装填量のいずれにおいても優れていることが明らかである。本発明によるフィルタでは、比較例C3の繊維製ハニカム状フィルタ構造と比べて寿命は50%長く、装填量は71%多くなっている。
【0070】
実施例14
フィルタ媒体アレイを実施例2に記載したように製造し、NaCl粒子を15mg/m3の濃度、80l/分の流速、および100cm/秒の面速で実施例1に記載したようなTSI試験装置でフィルタに送出することにより小型粒子による性能寿命試験を行った。このフィルタをエアロゾル化粒子の連続流に2時間の周期で曝露した後、捕集した粒子の重量を計測して特定した。この小型粒子による寿命試験の結果を表5に示す。
【0071】
実施例15
フィルタ媒体アレイを実施例7に記載したように製造し、実施例14に記載の小型粒子による性能寿命試験を行った。その結果を表5に示す。
【0072】
比較例6
実施例9に記載したように製造した平坦なフィルムによるハニカム状フィルタの濾過性能を実施例16に記載の小型粒子による性能寿命試験により評価した。その結果を表5に示す。
【0073】
表5
小型粒子による性能寿命試験
【0074】
表5の濾過性能データから、本発明によるフィルタ構造はどちらも、平坦なフィルムで形成したフィルタよりも性能が良好であることが明らかである。構造化フィルムをチャネル構造の形成前に帯電した本発明によるフィルタが捕集した粒子重量は、平坦なフィルムによる実施例の場合を266%上回った。チャネル構造をエレクトレット化した場合の本発明によるフィルタでは比較例に対して966%の改良が見られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有し、かつ一連の先端部あるいは隆起部を含む起伏状フィルム層と第2の層とにより画成される少なくとも1層のフローチャネル成形層から形成される濾過材の配列体であって、起伏状フィルム層の少なくとも一方の面がフローチャネルを画成し、かつフローチャネルを画成する面の少なくとも一部に高アスペクト比構造を有しており、第2のフローチャネル成形層あるいは追加層を含む第2のフィルム層が、濾過材の配列体のフローチャネル内を貫通する流体路を少なくとも一部画成している濾過材の配列体。
【請求項2】
起伏状フィルム層が帯電されている請求項1に記載の濾過材の配列体。
【請求項3】
濾過材の配列体が少なくとも2層のフローチャネル成形層を含む請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項4】
第2の層がキャップ層である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項5】
第2のフィルム層が起伏状フィルム層である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項6】
起伏状フィルム層が、連続フィラメントあるいは強化不織布を含む安定化層であるキャップ層に装着されている請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項7】
フローチャネル成形層におけるフローチャネルの形状が実質的に同一である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項8】
フローチャネル成形層が、起伏状フィルム層の一方の面と起伏状フィルム層の面における先端部あるいは隆起部に接触しているキャップフィルム層とにより形成されている請求項3に記載の濾過材の配列体。
【請求項9】
少なくとも1層の機能層が濾過材の配列体内に設けられている請求項3に記載の濾過材の配列体。
【請求項10】
機能層が表面処理された、あるいは吸収性濾過材を有するキャップ層である、あるいは、機能層が、電圧源に接続されてフローチャネル成形層を横切って活性電場を形成する隣接する非導電体層に結合した複数対の導電体層である請求項17に記載の濾過材の配列体。
【請求項11】
高アスペクト比構造が、最小直径あるいは幅に対する高さの比が0.1を上回り、高さが少なくとも20ミクロンである請求項1に記載の濾過材の配列体。
【請求項12】
高アスペクト比構造が、直立突起、隆起、あるいはこれらを組み合わせた形状であり、フローチャネルが該構造化された表面を含むフィルム層から構成され、ここで、フィルム層の表面積の10〜100%が構造化された表面である、請求項11に記載の濾過材の配列体。
【請求項13】
構造化された表面を含むフィルムの表面積が、対応する平坦なフィルムの表面積より少なくとも50%広い請求項11に記載の濾過材の配列体。
【請求項14】
高アスペクト比構造が、フローチャネルの高さの50%未満である請求項13に記載の濾過材の配列体。
【請求項15】
フローチャネルを形成する層の厚さが200ミクロン未満であり、フローチャネルの長手方向における平均断面積が少なくとも1mm2である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項16】
キャップ層が、起伏状フィルム層と共にフローチャネルを形成する平坦なフィルム層であり、隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルが互いに角度をなして延在する請求項4に記載の濾過材の配列体。
【請求項17】
(a)起伏状フィルム層を形成するステップと、 (b)起伏状フィルム層を起伏状フィルム層の少なくとも一方の面において第2の層と結合して起伏状フィルム層を安定させ、フローチャネルを形成するステップと、 (c)起伏状フィルム層と第2の層とを含むフローチャネル成形層の組立体を帯電させるステップと、を含む濾過材の配列体の形成方法。
【請求項18】
更に、フローチャネル成形層の組立体を積層して、複数のフローチャネル成形層を含む濾過材の配列体を作製するステップを含む請求項17に記載の濾過材の配列体形成方法。
【請求項19】
更に、多層のフローチャネル形成層の組立体の少なくとも一方の面を部分的に溶融することにより、隣接するフローチャネル成形層を結合するステップを含む請求項18に記載の濾過材の配列体形成方法。
【請求項20】
(a)起伏状フィルム層を形成するステップと、 (b)起伏状フィルム層を起伏状フィルム層の少なくとも一方の面において第2の層と結合して起伏状フィルム層を安定させ、隣接する一連のフローチャネルを形成するステップと、 (c)フローチャネル成形層の組立体を積層して、濾過材の配列体内を貫通する流体路を形成する複数のフローチャネル成形層を有する濾過材の配列体を形成するステップと、 (d)濾過材の配列体を熱線で切断して、濾過材の配列体を形成している隣接層を融合するステップと、を含む濾過材の配列体の形成方法。
【請求項21】
更に、熱線により切断された濾過材の配列体部分を分離するステップを含む請求項20に記載の濾過材の配列体の形成方法。
【請求項1】
第1の面および第2の面を有し、かつ一連の先端部あるいは隆起部を含む起伏状フィルム層と第2の層とにより画成される少なくとも1層のフローチャネル成形層から形成される濾過材の配列体であって、起伏状フィルム層の少なくとも一方の面がフローチャネルを画成し、かつフローチャネルを画成する面の少なくとも一部に高アスペクト比構造を有しており、第2のフローチャネル成形層あるいは追加層を含む第2のフィルム層が、濾過材の配列体のフローチャネル内を貫通する流体路を少なくとも一部画成している濾過材の配列体。
【請求項2】
起伏状フィルム層が帯電されている請求項1に記載の濾過材の配列体。
【請求項3】
濾過材の配列体が少なくとも2層のフローチャネル成形層を含む請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項4】
第2の層がキャップ層である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項5】
第2のフィルム層が起伏状フィルム層である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項6】
起伏状フィルム層が、連続フィラメントあるいは強化不織布を含む安定化層であるキャップ層に装着されている請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項7】
フローチャネル成形層におけるフローチャネルの形状が実質的に同一である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項8】
フローチャネル成形層が、起伏状フィルム層の一方の面と起伏状フィルム層の面における先端部あるいは隆起部に接触しているキャップフィルム層とにより形成されている請求項3に記載の濾過材の配列体。
【請求項9】
少なくとも1層の機能層が濾過材の配列体内に設けられている請求項3に記載の濾過材の配列体。
【請求項10】
機能層が表面処理された、あるいは吸収性濾過材を有するキャップ層である、あるいは、機能層が、電圧源に接続されてフローチャネル成形層を横切って活性電場を形成する隣接する非導電体層に結合した複数対の導電体層である請求項17に記載の濾過材の配列体。
【請求項11】
高アスペクト比構造が、最小直径あるいは幅に対する高さの比が0.1を上回り、高さが少なくとも20ミクロンである請求項1に記載の濾過材の配列体。
【請求項12】
高アスペクト比構造が、直立突起、隆起、あるいはこれらを組み合わせた形状であり、フローチャネルが該構造化された表面を含むフィルム層から構成され、ここで、フィルム層の表面積の10〜100%が構造化された表面である、請求項11に記載の濾過材の配列体。
【請求項13】
構造化された表面を含むフィルムの表面積が、対応する平坦なフィルムの表面積より少なくとも50%広い請求項11に記載の濾過材の配列体。
【請求項14】
高アスペクト比構造が、フローチャネルの高さの50%未満である請求項13に記載の濾過材の配列体。
【請求項15】
フローチャネルを形成する層の厚さが200ミクロン未満であり、フローチャネルの長手方向における平均断面積が少なくとも1mm2である請求項2に記載の濾過材の配列体。
【請求項16】
キャップ層が、起伏状フィルム層と共にフローチャネルを形成する平坦なフィルム層であり、隣接するフローチャネル成形層のフローチャネルが互いに角度をなして延在する請求項4に記載の濾過材の配列体。
【請求項17】
(a)起伏状フィルム層を形成するステップと、 (b)起伏状フィルム層を起伏状フィルム層の少なくとも一方の面において第2の層と結合して起伏状フィルム層を安定させ、フローチャネルを形成するステップと、 (c)起伏状フィルム層と第2の層とを含むフローチャネル成形層の組立体を帯電させるステップと、を含む濾過材の配列体の形成方法。
【請求項18】
更に、フローチャネル成形層の組立体を積層して、複数のフローチャネル成形層を含む濾過材の配列体を作製するステップを含む請求項17に記載の濾過材の配列体形成方法。
【請求項19】
更に、多層のフローチャネル形成層の組立体の少なくとも一方の面を部分的に溶融することにより、隣接するフローチャネル成形層を結合するステップを含む請求項18に記載の濾過材の配列体形成方法。
【請求項20】
(a)起伏状フィルム層を形成するステップと、 (b)起伏状フィルム層を起伏状フィルム層の少なくとも一方の面において第2の層と結合して起伏状フィルム層を安定させ、隣接する一連のフローチャネルを形成するステップと、 (c)フローチャネル成形層の組立体を積層して、濾過材の配列体内を貫通する流体路を形成する複数のフローチャネル成形層を有する濾過材の配列体を形成するステップと、 (d)濾過材の配列体を熱線で切断して、濾過材の配列体を形成している隣接層を融合するステップと、を含む濾過材の配列体の形成方法。
【請求項21】
更に、熱線により切断された濾過材の配列体部分を分離するステップを含む請求項20に記載の濾過材の配列体の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−42406(P2010−42406A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−187956(P2009−187956)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2000−595764(P2000−595764)の分割
【原出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187956(P2009−187956)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2000−595764(P2000−595764)の分割
【原出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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