起磁性ステーターシステム及び磁性ローターの無線制御方法
本発明は、遠隔に設置した磁場発生用ステーターを使用して、循環系内での自由磁性ローターの物理的操作を行うためのシステムに関する。一態様では、本発明は、永久磁石ベースステーター供給源又は電磁場発生用ステーター供給源を使用する流体媒体内での磁性粒子の制御に関する。こうしたシステムは、ヒトの循環系等の流体媒体内での治療薬の拡散を増加するのに役立つことができ、血管閉塞等の流体障害の実質的な除去をもたらすことができ、循環系内で血流の増加をもたらすことができる。本システムによって標的にされる血管閉塞の例は、線維性被膜を含む動脈硬化性プラーク、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、他の血液凝固物、及び微小血管を含むが、それに限定されない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔に設置した磁場発生用ステーターを使用する、循環系内での自由磁性ローターの物理的操作のためのシステムに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2009年11月2日に出願された米国仮出願第61/280,321号からの優先権を主張する。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
該当せず。
【背景技術】
【0004】
脳の血管及び四肢の血管内の血管閉塞を含む循環系の流体障害の処置は、障害を溶解することができる薬物、及び、障害除去デバイス、例えば血栓除去デバイスの使用を含んできた。しかし、こうした薬物の副作用は、制御するのが難しく、また、こうした障害除去デバイスは、意図しない又は2次的な組織損傷を生じる侵襲的手法を必要とすることが多い。通常の投与量での薬物の使用及び血栓除去デバイスの使用はともに、死をもたらす可能性がある。
【0005】
磁性流体の管理は、かなりの注意と努力が払われたが、医療における成功が限られている分野である。教科書「Ferrohydro-Dynamics」(R.E.Rosensweig, Dover Publications, New York, 1985)は、流体内の磁性粒子の物理についての有用なバックグラウンドを提供するが、医療における応用を事実上全くカバーしていない。医療分野において、磁気力は、動脈内でカテーテル及びガイドワイヤを操作しナビゲートするための商業的に使用されている(例えば、Stereotaxis, Inc.(ミズーリ州セントルイス所在)及びMagnetec, Inc.(カルフォルニア州サンタモニカ所在))。しかし、こうした侵襲的技法は、上述したように意図しない又は2次的な組織損傷を生じ得る。さらに、非常に低い周波数の回転磁場が、磁気的にイネーブルされる胃腸の「pillcam」をナビゲートし、配向させるために使用されてきた。磁性ナノ粒子の使用が、循環系において磁気共鳴撮像コントラスト強調、組織修復、イムノアッセイ、生物学的流体の解毒、ハイパーサーミア、薬物送達、及び細胞分離について提案されてきたが、これらの使用は、こうしたナノ粒子の磁気モーメントが小さいため、低血流又は完全遮断のエリアにおける薬物の標的化送達の困難さを克服することができていない。他の事例では、磁性ナノ粒子は、循環系内の或る特定の細胞タイプ又は閉塞に特異的に結合する抗体等の化合物に共役されてきたが、低血流又は遮断された循環系におけるこうした標的化方法の使用は成功していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とされるものは、薬物送達の安全性を高め、侵襲的な外科的エントリの使用を低減することによって流体障害を処置する新しいデバイス及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
治療システムであって、(a)循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、(b)前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備える、治療システムが提供される。本治療システムを用いると、前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加する。種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができ、他の態様では、前記磁性ローターから分離して前記循環系に投与することができる。或る特定の場合には、前記医薬組成物は、血栓溶解薬とすることができる。
【0008】
本システムの治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体閉塞を含むことができる。種々の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0009】
種々の実施の形態では、本治療システムは、モーターに結合した永久磁石を備え、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記治療標的に対して、前記磁石を有効周波数で回転させる。種々の実施の形態では、本治療システムは、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石を備え、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0010】
本治療システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、それによって、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記治療標的を取り除くように前記磁性ローターを制御する。種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。種々の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。
【0011】
本発明の種々の態様では、前記磁性ローターは、反復的に、a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動(walking end over end)すること、及び、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れること、によって、円運動で前記流体を横断する。
【0012】
更に別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、前記流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、前記治療標的に対して前記磁場を位置決めし回転させて、前記磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、前記治療標的に接触し、前記治療標的を貫通して又は前記治療標的の周りで流体流を増加させるように前記回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーとを備える治療システムが提供される。種々の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系とすることができる。種々の態様では、前記磁性ツールは、安定化ロッドに結合させることができ、前記磁性ツールは、前記回転する磁場に応じて前記安定化ロッドの回りを回転する。更に別の態様では、前記磁性ツールは、前記治療標的に係合し前記治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含むことができる。別の態様では、前記コントローラーは、前記治療標的上の標的点に前記磁性ツールを位置決めし、前記治療標的を切り崩すのに十分な周波数で前記磁性ツールを回転させる。前記磁石は、該磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めすることができ、前記磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって前記治療標的に向かって押される。別の態様では、前記磁石は、前記磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、前記磁性ツールは、前記磁石の引力によって前記治療標的に向かって引っぱられる。
【0013】
別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるシステムであって、前記流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、前記流体内の前記磁性ローター及び前記治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、前記ユーザーからの命令に応答して、a)前記治療標的に隣接して前記磁性ローターを位置決めし、b)前記治療標的に対して前記磁性ローターの角度配向を調整し、c)前記磁性ローターを回転させ、前記流体を通って前記磁性ローターを円運動で横断させ、前記流体を混合し、前記治療標的を実質的に取り除くように前記磁場を制御するコントローラーと、を備えるシステムが提供される。
【0014】
種々の態様では、前記ディスプレイは、前記磁性ローター及び前記治療標的のリアルタイムビデオを表示することができ、前記ディスプレイは、前記磁場の回転面を示すグラフィック及び前記磁場の引力を示す別のグラフィックを前記リアルタイムビデオ上に重ね合わせることができる。別の態様では、前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、ユーザーが、前記治療標的に対する前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含むことができる。
【0015】
別の態様では、前記ディスプレイは、前記遠隔制御デバイスを通じて前記ユーザーによって与えられる命令に応答して前記グラフィックを調整することができる。種々の態様では、前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別するために画像処理を実施することができ、前記可動アームを自動的に操作して、前記治療標的を取り除くように、前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する。
【0016】
更に別の態様では、前記磁性ローターは、前記磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成することができる。別の態様では、前記流体は、血液と血栓溶解薬との混合物とすることができ、前記血液及び前記血栓溶解薬は、前記磁性ローターの円運動によって混合されて、前記治療標的を侵食し、取り除く。更に別の態様では、前記磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、前記治療標的を含む低流量の血管へ前記血栓溶解薬を向け直すことができる。
【0017】
循環系内の流体流を増加させる方法であって、(a)前記流体流の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法も提供される。
【0018】
種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができる。別の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、前記医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0019】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0020】
更に別の態様では、前記磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、前記磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、前記有効距離、前記有効平面に前記電磁石を位置決めすることができ、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0021】
本方法の前記システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する。
【0022】
種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、前記治療標的は、静脈二弁(vein bivalve)の完全な又は部分的な遮断物である。更に別の態様では、前記磁性ローターは、反復して、a)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れて前記血管に沿って転倒型回転移動することと、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場に向かって前記流体を通して戻るように流れることによって、円運動で前記流体を通して横断する。
【0023】
種々の態様では、前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞又は前記患者の脚内の血管閉塞である。
【0024】
更に別の実施の形態では、循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、(a)前記薬物の拡散の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、前記循環系内での前記治療標的における前記医薬組成物の拡散が増加する、方法が提供される。
【0025】
種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができる。他の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の前記循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、前記医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0026】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0027】
更に別の態様では、前記磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、前記磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、前記有効距離、前記有効平面に前記電磁石を位置決めすることができ、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0028】
本方法の前記システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する。
【0029】
種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である。更に別の態様では、前記磁性ローターは、反復的に、a)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場から離れて前記血管に沿って転倒型回転移動することと、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れることと、によって、円運動で前記流体を横断する。
【0030】
種々の態様では、前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞又は前記患者の脚内の血管閉塞である。
【0031】
本教示のこれらの特徴、態様及び利点並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、例、及び添付の特許請求の範囲を参照してよりよく理解される。
【0032】
以下で述べる図面は、例証だけのためのものであることを当業者は理解するであろう。図面は、本教示の範囲を多少なりとも制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】磁石のN極−S極がシステムの前面に平行な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図1B】磁石のN極−S極がシステムの前面に平行な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図2】図1の磁石システムが取付けられる可搬型ポジショナーカートを示す図である。
【図3】その磁石のN極−S極がシステムの前面に垂直な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図4A】任意の平面内で磁石が回転することを可能にする、2つのモーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図4B】任意の平面内で磁石が回転することを可能にする、2つのモーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図(図4Aの断面図)である。
【図5】アーム位置に取付けられた、電源を有する3つの永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図6A】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図6B】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図6C】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図7】磁性ローターの無線制御のために、ユーザーが空間内の磁場の回転を規定することを可能にするアルゴリズム例を示す図である。
【図8A】運動を生成するための磁性粒子の操作を示す図である。
【図8B】回転を生成するための磁性粒子に対する磁場の作用を詳述する図である。
【図8C】流れパターンを生成するための流体充填格納容器の内部の磁性粒子分布の磁気的操作を示す図である。
【図8D】血塊に対する血塊破壊薬(clot-busting drugs)の作用を増幅するための磁性粒子分布の磁気的操作を示す図である。
【図9】血管閉塞を横切るための磁石の操作を示す図である。
【図10A】脳内の血管閉塞の処置のための起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子の使用を示す図である。
【図10B】脳内の血管閉塞の処置のための起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子の使用を示す図である。
【図11A】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、血管内に薬物が存在しないことを示す図である。
【図11B】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、系に対して薬物(灰色)が付加されるが、遮断部位で混合することができないことを示す図である。
【図11C】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、系に対して磁性ナノ粒子が付加され、磁石(図示せず)によって遮断部位に引き込まれることを示す図である。
【図11D】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、遮断部位に近づき接触するように、時間依存方式で磁場及び勾配を印加し、薬物を混合することによって乱流が生成されることを示す図である。
【図11E】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、磁性ナノ粒子を使用した混合による、薬物の拡散の終了及び遮断部位における接触を示す図である。
【図12】本発明の第1の好ましい実施形態である磁性システムの図である。
【図13】本発明の第2の好ましい実施形態である磁性システムの図である。
【図14A】従来の処置の下での、流れがない遮断された管腔の代表的な標的領域を示す断面図である。
【図14B】血流はあるが、標準的な薬物送達を使用して薬物除去が効果的でない標的領域の断面図である。
【図15A】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ゼロ磁場における未編成ナノ粒子を示す図である。
【図15B】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ナノ粒子に印加された小さな磁場及び「ロッド」への編成を示す図である。
【図15C】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ナノ粒子に印加された大きな磁場を示す図である。
【図16】制限長を示す、印加磁場の関数としてのナノ粒子凝集ロッド長のプロットである。
【図17】磁性粒子の並進をもたらす転倒型回転(end over end)運動のシーケンスの図である。
【図18A】磁性粒子の蓄積をもたらす回転運動の結果としての、密度が増加した粒子の特徴的な飽和を示す図である。
【図19A】本発明のナノ粒子ロッドに対して磁気トルクをもたらす要素及び磁場の物理的性質の導出をサポートする図である。
【図19B】本発明のナノ粒子ロッドに対して磁気トルクをもたらす要素及び磁場の物理的性質の導出をサポートする図である。
【図19C】ロッドの回転周波数の関数としての運動エネルギーの分布を示す図である。
【図20A】図14Aに示す閉塞問題を処置するための、流れがない血管内での回転ロッドによる乱流の導入を示す図である。
【図20B】図14Bに示す閉塞された流れカテゴリにおける、乱流の導入のための本発明による薬物送達の運動及び効果を示す図である。
【図21A】円運動状態にある回転ロッドの群が血管内の完全閉塞に衝突している断面図である。
【図21B】ロッドの回転がボールを形成し始める断面図である。
【図21C】ロッドの回転するボール及び遮断された静脈が完全に開口されている血塊物質の断面図である。
【図21D】図10Cのボールがガイドワイヤ上の小型磁石によって除去される断面図である。
【図22】血管内の弁尖上の閉塞物質を安全に除去するために、回転する磁性キャリアが薬物を塗布する血管の断面図である。
【図23】複雑な血管における、遠方の血塊に至る経路に沿う、磁性ロッドの「移動(walk)」の転倒型回転運動の結果を示す図である。
【図24A】球として示す磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの運動の生成において、磁場も勾配も印加されない図を示す。
【図24B】球として示す磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの運動の生成において、磁場及び勾配が印加されて、球が横方向に横断させられる図を示す。
【図25A】円運動状態の回転する磁気的にイネーブルされる血栓除去球が血管内の完全閉塞に衝突している断面図である。
【図25B】磁気的にイネーブルされる血栓除去球が閉塞の表面を磨滅させる断面図である。
【図25C】磁気的にイネーブルされる血栓除去球が、遮断された静脈を完全に開口した断面図である。
【図25D】磁気的にイネーブルされる血栓除去球がガイドワイヤ上の小型磁石によって取り除かれる断面図である。
【図26A】紐付きの磁気的にイネーブルされる血栓除去球が、遮断された静脈を完全に開口した断面図である。
【図26B】磁石の回転軸に沿って延びる紐の実施形態を示す図である。
【図26C】磁石の回転軸の回りにループする紐の第2の実施形態を示す図である。
【図27】円運動状態の磁気的にイネーブルされる血栓除去球が血管壁上のプラークに衝突している断面図である。
【図28A】撮像技術によって撮像された、複雑な血管における、遠くの血塊に至る経路に沿う磁性ロッド又は磁性ボールのくるくる回転運動の「移動」の結果を示す図である。
【図28B】図28Aで行った測定に基づいて経路を再形成できることを示す図である。
【図29A】起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子を使用した、ウサギの静脈の血栓症の除去を示す図である。
【図29B】起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子を使用した、ウサギの静脈の血栓の除去を示す図である。
【図30】起磁性ステーターシステムを使用した、tPAの用量反応曲線を示す図であり、ウサギの血流を増加させるための時間の減少を示すとともに、同じ結果を生成するために必要とされるtPA量の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
省略形及び定義
別途規定しない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別途要求されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書で述べる医薬品化学及び製薬化学の実験室手順及び技法に関連して利用される専門語は、よく知られており、また、当技術分野で一般的に使用されている。標準的な技法は、医薬品の調製、製剤、及び送達、並びに患者の処置のために使用される。本明細書の他の化学用語は、McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S., Ed, McGraw-Hill, San Francisco(1985))によって例示されるように、当技術分野の慣例的な使用に従って使用される。本明細書の磁性ナノ粒子動態に関する他の用語は、教科書Ferrohydro-Dynamics(R.E. Rosensweig, Dover Publications, New York,(1985))に例示されるように、当技術分野の慣例的な使用に従って使用される。
【0035】
本開示に従って利用されるとき、以下の用語は、別途指示しない限り、以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0036】
患者:本明細書で使用されるとき、患者という用語は、ヒト及び獣医学の被験体を含む。
【0037】
血栓溶解薬:本明細書で使用されるとき、「血栓溶解薬(thrombolytic drug)」は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組み換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、及び、血塊又は動脈硬化性プラークを分解することが可能な他の薬物を含む。「血栓溶解薬」という用語は、単独で、又は、ワルファリン及び/若しくはヘパリンと同時投与される、上記薬物を含む。
【0038】
磁性ナノ粒子:本明細書で使用されるとき、「磁性ナノ粒子(magnetic nanoparticle)」という用語は、約10nm〜約200nm、約15nm〜約150nm、約20nm〜約60nm、並びに、1と1000との間の全ての整数、例えば1、2、3、4、5、...997、998、999、及び1000を含む、約1nmと約1000nmとの間の直径を有するコーティング済みの又は未コーティングの金属粒子を指す。当業者は、系の治療標的に応じて磁性ナノ粒子の適切なサイズを確定することができる。例えば、微小血管は、小さなナノ粒子を受容でき、循環系の大きな部分は、大きなナノ粒子を受容できる。こうした磁性粒子の例は、超常磁性酸化鉄ナノ粒子を含む。粒子は、磁鉄鉱で作られ、任意選択で、以下の物質のうちの任意の1つ又は組合せでコーティングすることができる。以下の物質とは、(1)粒子を親水性又は疎水性にすることによって血液内での粒子の挙動を高める被膜、(2)磁性粒子の磁気相互作用及び挙動を最適化する粒子を緩衝する被膜、(3)磁気共鳴撮像、X線、陽電子放射断層撮影(PET)、又は超音波技術による可視化を可能にする単数又は複数の造影剤、(4)循環系遮断物の破壊を加速する薬物、及び、(5)血栓溶解薬である。コーティング済み磁性ナノ粒子及び未コーティング磁性ナノ粒子の両方の例並びにこうした磁性ナノ粒子を作る方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,543,158号、第5,665,277号、第7,052,777号、第7,329,638号、第7,459,145号、及び第7,524,630号に記載されている。Gupta他のBiomaterials, Volume 26, Issue 18, June 2005, pages3995-4021も参照されたい。本発明で使用するための磁気的特性を保持しながら、本発明で有用な磁性粒子に含まれ得る特徴の多くの他の組合せを、当業者は認識するであろう。
【0039】
流体障害:本明細書で使用されるとき、「流体障害」という用語は、静脈系、動脈系、中枢神経系、及びリンパ系を含む、循環系を通して流体の正常な流れを、部分的か又は完全に妨げる遮断物を意味する。血管閉塞は、動脈硬化性プラーク、脂肪蓄積、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、他の血液凝固物、及び微小血管を含むが、それに限定されない流体障害である。時として、流体障害は、一般的に、「血塊(clots)」と呼ばれる。
【0040】
実質的に取り除く:本明細書で使用されるとき、「実質的に取り除く」という用語は、 循環系を通した流体の流れの増加をもたらす、流体障害の全て又は一部の除去を意味す る。例えば、血液が血栓を貫通して又は血栓の周りに流れることができるように、静脈 を遮断する血栓を貫通して又は血栓の周りに通路を作ることは、静脈を「実質的に取り 除く」。
【0041】
微小血管:本明細書で使用されるとき、「微小血管(very small vessel)」という用語は、約1μm〜約10μmの直径を有する循環系流体通路を意味する。
【0042】
増加した流体流:本明細書で使用されるとき、「増加した流体流」という用語は、ゼロからゼロより大きな或る値までの、遮断された循環系のスループットの増加を意味する。循環系を流れるとき、「増加した流体流」という用語は、患者内への磁性ナノ粒子の投与前のレベルから、元の流体流レベルより高いレベルへの、スループットの増加を意味する。
【0043】
凝集:本明細書で使用されるとき、「凝集」という用語は、図15に関して本明細書で述べるように、磁性ナノ粒子から「ロッド(rod)」が生じるような、個々の磁性ローターの群の回転クラスタリング又はチェーニングを意味する。こうした回転ローターの群は、それぞれの個々のローターが、全体的に、同時に回転し、群として同じ方向に進むアンサンブルを形成する。磁場及び勾配の組合せを所定期間にわたって印加することが、ロッドを組立てる方法である。こうした群は、単独で作用する個々のローターから予想することができるものと異なる特性を含み、また、流体ストリーム又は静止流体内に流体力を生成して、流体ストリーム又は静止流体内に乱流を生成するか又は組成物若しくは液体の拡散を高める。
【0044】
処置:本明細書で使用されるとき、「処置」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法である。本発明において、有益な又は所望の臨床結果は、以下のもののうちの1つ又は複数を含むが、それに限定されない。以下のものとは、限定はしないが、流体障害(例えば、脳卒中、深部静脈血栓)、冠状動脈疾患、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化、及び高血圧を含む循環系内の流体障害のあらゆる態様の改善及び軽減である。
【0045】
薬物、化合物、又は医薬組成物:本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」、「化合物」、又は「薬物」という用語は、患者に適切に投与されるときに所望の治療効果、例えば血栓又は動脈硬化性プラークの酵素的分解を誘発することが可能な化合物又は化学組成物を指す。
【0046】
有効量:薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効量」は、循環系流体遮断の改善又は低減等の臨床結果を含む有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。本発明の目的からすると、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、頭部及び四肢の血管閉塞を含む、循環系内の流体遮断を処置(改善、発生率の減少、遅延、及び/又は防止を含む)するのに十分な量である。薬物の有効量は、患者に投与されるために処方されたコーティング済みの又は未コーティングの磁性ナノ粒子を含む。有効量は、血栓溶解薬等の薬物、化合物、又は医薬組成物も含むことができる。そのため、「有効量」は、1つ又は複数の治療薬を投与することに関連して考えることができ、単一の薬剤は、1つ又は複数の他の薬剤と連携して、所望の結果とすることができるか又は所望の結果が達成される場合に、有効量で与えられると考えることができる。
【0047】
発生率の減少:本明細書で使用されるとき、循環系内の流体遮断の「発生率の減少」という用語は、深刻さの減少(例えばtPAを含む、これらの条件について一般的に使用される薬物及び/又は治療についての必要性の減少及び/又はその量(例えば、暴露)の減少)、継続期間の減少、及び/又は頻度の減少(例えば、循環系遮断の症状を示すまでの時間の遅延又は増加を含む)のうちの任意のものを意味する。当業者によって理解されるように、個人個人は、処置に対してその人の反応が変動する場合があり、したがって例えば、或る患者における「流体遮断の発生率を減少させる方法」は、有効量の投与が、その特定の個人における発生率のそうした減少をもたらす可能性があるという合理的な予想に基づいて、薬物、化合物、又は医薬組成物と組合せるか否かによらず、有効量の磁性ナノ粒子を投与することを反映する。
【0048】
改善させる:本明細書で使用されるとき、循環系遮断の1つ又は複数の症状を「改善させる」という用語は、本明細書で述べるシステムを使用して、薬物、化合物、又は医薬組成物と組合せるか否かによらず、磁性ナノ粒子を投与しないことと比較して、循環系遮断の1つ又は複数の症状の減少又は改善を意味する。「改善させる」は、症状の継続期間の短縮又は減少も含む。
【0049】
遅延させる:本明細書で使用されるとき、循環系遮断に関連する症状の進展を「遅延させる」ことは、関連症状の進行を引き延ばす、妨げる、遅くする、遅らせる、安定化させる、かつ/又は、延期させることを意味する。この遅延は、処置される疾患及び/又は個人の履歴に応じて、様々な時間長とすることができる。当業者に明らかであるように、十分な又は有意な遅延は、循環系遮断に関連する症状を個人が進展させない点で防止を包含することができる。症状の進展を「遅延させる」方法は、その方法を使用しない場合と比較したときに、所与の時間枠内に症状が進展する確率を減少させる、かつ/又は、所与の時間枠内に症状の程度を減少させる方法である。こうした比較は、通常、統計的に有意な数の被験体を使用する臨床研究に基づく。
【0050】
薬学的に許容可能なキャリア:本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能なキャリア」は、磁性ナノ粒子及び/又は有効成分と組合せた場合、被験体の免疫系と非反応性であり、有効成分が生物活性を保持することを可能にする任意の物質を含む。例として、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、オイル/水乳剤等の乳剤、及び種々のタイプの湿潤剤等の標準的な薬学的キャリアのいずれもが含まれるが、それらに限定されない。非経口投与用の例示的な希釈液は、リン酸緩衝食塩水又は通常の(0.9%)生理的食塩水である。こうしたキャリアを含む組成物は、よく知られている従来の方法で処方される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990及びRemington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing, 2000を参照)。
【0051】
薬学的に許容可能な:本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、動物での使用、またより詳細にはヒト及び/又はヒトでない哺乳類での使用について安全である他の製剤に加えて、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は、米国薬局方、他の一般的に認められた薬局方に収載されていることを意味する。
【0052】
起磁性ステーターシステム及び磁性ローターの無線制御のための方法
本発明は、遠隔に設置した磁場発生用ステーターを使用する、自由磁性ローターの物理的操作のためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、循環系の流体流の増加及び流体遮断の実質的な除去をもたらすことができる、循環系内の治療標的と医薬化合物との接触を増加させるための磁性ナノ粒子の制御に関する。種々の態様において、システムは、血栓溶解薬の拡散を高め、永久磁石ベースステーター供給源又は電磁場発生用ステーター供給源を使用する。磁場及び勾配は、患者内の血管閉塞を含む循環系遮断を低減するために、磁性ナノ粒子凝集体及び磁性血栓除去デバイスに作用するために使用される。種々の態様において、本発明のシステム及び方法は、身体の頭部(特に、脳)内の又は腕及び脚の脈管系等の四肢内の循環系の流体遮断を処置するために使用することができる。
【0053】
本発明は、使用される血栓溶解薬の機械的に増強される溶解プロセスと組合せた、流体遮断に作用する磁性粒子及び/又は磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスによって生成される、磁気的に生成されるスカーリング(scouring)プロセスからなる。磁気的作用は、外部供給源からの回転磁場から得られ、その外部供給源はまた、回転しない引張る磁場勾配を提供する。これは、一般的にその場所の機械的侵襲なしで、循環系遮断に力及び作用を提供する。本発明のシステム及び方法は、標的の循環系遮断との薬物相互作用を著しく増加させ、残留物を残す可能性があるが、この残留物は、磁気的に収集することができ、また、プロセス中に静脈壁又は弁を損傷することもない。本発明の別の特徴は、除去される残留物実質的に全てが、ガイドワイヤの先端上の小さな磁石によって容易に捕捉することができるナノ粒子を用いて小さな軟質クランプを形成するように薬物及び撹拌の条件を使用することができることである。これらの品質を達成するために、本発明は、磁性ナノ粒子又は磁気的にイネーブルされる流体遮断除去デバイスに作用するために、指向性磁場勾配と組合せて回転磁場を使用する。
【0054】
一態様では、回転磁場は、標的部位で磁場を回転させ、同時に、所望の方向に定常磁場勾配を呈する、或る配向を有する強力永久磁石を機械的に回転させることによって生成される。別の態様では、2つ以上の磁性コイルを、勾配を有する回転磁場を提供するために適切に位相調整しながら使用することができる。3つ以上のコイルが使用されるとき、少なくとも2つのコイルは、更なる磁気空間特徴及びタイミング特徴を提供するために、互いに関して或る垂直な成分を有する軸を有することができる。例えば、2つのコイルは、垂直軸を有することができ、一方のコイルは、標的位置で回転磁場を生成するために、90度だけ他方のコイルに遅れる電流を使用することができる。第3のコイルは、標的部位における適切な勾配及び変調等の独立した機能を提供するように配置し配向することができる。
【0055】
電流の電子制御によって、磁場及び勾配の幅広いアレイを、多数の時間関連イベントによって適用することができる。勾配を有する基本回転磁場がナノ粒子のスラリに印加される結果として、非常に特殊なタイプのグループ化の配置構成、すなわち、本発明のシステム及び方法において、長さが約2mm以下の整列したロッドを磁性ナノ粒子に形成させる磁性ナノ粒子の「凝集体(agglomeration)」が提供される。
【0056】
約0.4テスラ/メートルの勾配と組合せた、標的部位における約0.02テスラの磁場は、磁性ナノ粒子の所望の凝集体−長さがほぼ1〜2ミリメートルに変動する分離したナノ粒子ロッドを生成することになる。これらの凝集は、生体外(インビトロ)及びインビボ(生体内)で大部分は完全のままであるが、回転すると、「ソフトブラッシング」を提供するのに十分に可撓性がある。回転すると、これらのロッドが、血管内の表面に沿って「移動し」、血液凝固物等の流体遮断に接触すると、血栓溶解薬の助けを借りて、血塊物質の微小粒子を除去することが観察された。ロッドは、幾つかの場合には、有意なサイズの残留成分なしで、血塊物質の破片を連続して軽く「スクラブする」。他の場合には、障害のタイプ及び場所に応じて、残留物が、軟質の小さな磁性ボールになるように、血栓溶解薬の送達のタイミングをとることができる。軟質の小さな磁性ボールは、磁気的に捕捉及び除去することができる。超音波及び他の撮像技術を、こうしたスクラビングの進行を可視化するために使用することができる。例えば、経頭蓋超音波を、頭蓋塞栓又は脳卒中において血塊破壊を視覚的に確認するために使用することができる。磁性ナノ粒子の可視化を高める造影剤及び他の薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。
【0057】
同じ回転磁場及び勾配装置を使用して、標的部位において0.4テスラ/メートルの勾配を有する0.02テスラの同様な磁場が、直径が約1.5mmの小さな磁性ボールの回転に対する精密制御を可能にすることが観察された。磁場勾配の適切な整列によって、血管をナビゲートし、遮断における薬物混合を増加させるためのボールに似た構造を作製できることが分かった。同様に、血栓溶解薬及び/又は表面特徴を含む被膜を、遮断の破壊を増大させるために添加することができる。
【0058】
このプロセスの数値的詳細は、循環系遮断の特定の性質、血栓溶解薬、磁気的にイネールルされる血栓除去デバイスの設計に応じて変動し得る。回転周波数(約3Hz〜約10Hzを含む約1Hz〜約30Hz)は、全体が約1立方フィートの容積の磁石(約0.01テスラ〜約0.1テスラ)又は幾分大きな容積を有するコイルによって生成できる磁場の大きさの範囲に関して有効である。勾配強度は、約0.01テスラ/mから約5テスラ/mの範囲とすることができる。勾配方向は、永久磁石の場合、一般的に質量中心に集中し、電磁石を使用すると、コイルのうちの1つに集中させることができ、組合せると、1つ又は複数のコイルの間に集中させることができる。
【0059】
循環系の流体遮断
循環系の流体遮断が起こる身体の部分は、脚及び脳を含む。こうした遮断の2つの主要な流体力学特性、すなわち、低い血流又は完全遮断が、脈管系内で観察される。いずれの場合も、閉塞を表面において溶解するための薬物の送達、又は、例えば血栓物質の機械的除去の既存のモードは、下層との新たな薬物相互作用を可能にするために除去されるべき血塊表面上の分解されて邪魔をしている層を効果的に取り除けない。これは、多くの場合、危険な成分が下流に移動することをもたらし、この結果、より危険な遮断又は死をもたらす可能性がある。典型的な流れ状況では、流れが、効果的に、意図される部位に貫入もせず意図される部位を標的にもしない場所が存在する。他の状況では、閉塞した血管の3次元形状の小ささ(例えば、微小血管)又は複雑さのために、血栓除去デバイスを標的にナビゲートすることが可能でない。
【0060】
様々な血栓溶解薬が、血栓溶解プロセスにおいて使用されてきた。例えば、ストレプトキナーゼは、心筋梗塞及び肺塞栓症の幾つかの症例に使用される。ウロキナーゼは、重篤な又は大規模で深い静脈血栓、肺塞栓症、心筋梗塞を処置するときに、及び閉塞静脈内挿管又は透析挿管時に使用されている。組織プラスミノーゲン活性化因子(「tPA」又は「PLAT」)は、脳卒中を処置するために臨床的に使用される。レテプラーゼは、心臓発作を引起す閉塞を粉砕することによって心臓発作を処置するために使用される。血栓除去デバイスの場合、製品は、数社で製造され、機械的抽出(Arrow International,Inc.、Edward Lifesciences)、ベンチュリジェットベース機構(Boston Scientific,Possis Medical,Inc.)、低電力音響(OmniSonics Medical Technologies,Inc.)、並びに、アブレーション及び吸引(ev3)を含む、或る範囲の技術を使用する。
【0061】
脳卒中の場合、tPAの使用が、多くの症例で成功しているが、多くの症例において、薬物の影響で、更なる遮断及び時には死をもたらすのに十分な大きさのクランプで、下流の残留物が残る。さらに、患者に投与される通常の血栓溶解投与量は、脳内の出血の増加に関連している。ほとんどの症例で、血栓溶解薬と遮断物との化学的相互作用の効果は、ゆっくりでかつ非効率的であり、遮断物の除去は不完全なままになる。四肢の遮断では、薬物を撹拌し誘導する機械的手段は、制限され、しばしば難しく、危険であり得る。別の難しい問題では、手法の領域内の静脈弁が、損傷されるか、又は、現在のところ使用される手法では遮断なしの状態にされない。本発明は、血流の閉塞を処置するときのこれらの主要な障害を処理する際に著しい改善をもたらす新しいシステム及び方法を提供する。
【0062】
起磁性ステーターシステム
治療システムであって、(a)循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、(b)循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備える、治療システムが提供される。本治療システムを用いると、循環系内での治療標的と医薬組成物との接触が増加する。種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができ、他の態様では、磁性ローターから分離して循環系に投与することができる。或る特定の場合には、医薬組成物は、血栓溶解薬とすることができる。
【0063】
本システムの治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体閉塞を含むことができる。種々の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0064】
種々の実施の形態では、本治療システムは、モーターに結合した永久磁石を備え、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御し、治療標的に対して、磁石を有効周波数で回転させる。種々の実施の形態では、本治療システムは、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石を備え、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めし、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0065】
本治療システムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、それによって、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、治療標的を取り除くように磁性ローターを制御する。種々の態様では、治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。種々の態様では、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。
【0066】
本発明の種々の態様では、磁性ローターは、反復的に、a)該ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れるように血管に沿って転倒型回転移動(walking end over end)すること、及び、b)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場に向かって流体を通って戻るように流れること、によって、円運動で流体を横断する。
【0067】
種々の態様では、本システムを用いて処置される障害は、ヒトの血管内の血栓であり、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子によって形成される。本システムでは、磁性ローターは、反復的に、a)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れるように血管に沿って転倒型回転移動することと、b)ローターの回転及び磁場の引力に応答して磁場に向かって流体を通って戻るように流れることとによって、円運動で流体を横断することができる。
【0068】
別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるシステムであって、流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、流体内の磁性ローター及び治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、ユーザーからの命令に応答して、a)治療標的に隣接して磁性ローターを位置決めし、b)治療標的に対して磁性ローターの角度配向を調整し、c)磁性ローターを回転させ、流体を通って磁性ローターを円運動で横断させ、流体を混合し、治療標的を実質的に取り除くように磁場を制御するコントローラーと、を備えるシステムが提供される。
【0069】
種々の態様では、ディスプレイは、磁性ローター及び治療標的のリアルタイムビデオを表示することができ、ディスプレイは、磁場の回転面を示すグラフィック及び磁場の引力を示す別のグラフィックをリアルタイムビデオ上に重ね合わせることができる。別の態様では、磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、ユーザーが、治療標的に対する磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含むことができる。
【0070】
別の態様では、ディスプレイは、遠隔制御デバイスを通じてユーザーによって与えられる命令に応答してグラフィックを調整することができる。種々の態様では、磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別するために画像処理を実施することができ、可動アームを自動的に操作して、治療標的を取り除くように、磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する。
【0071】
更に別の態様では、磁性ローターは、磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成することができる。別の態様では、流体は、血液と血栓溶解薬との混合物とすることができ、血液及び血栓溶解薬は、磁性ローターの円運動によって混合されて、治療標的を侵食し、取り除く。更に別の態様では、磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、治療標的を含む低流量の血管へ血栓溶解薬を向け直すことができる。
【0072】
こうした起磁性ステーターシステムの一実施形態は、図1A(等角図)及び図1B(断面図)に示される。構成要素の動作は、このシステムについて示され、単一軸132の回りの回転を含む。永久磁石立方体102は、N磁極104及びS磁極106を有する。ここで示す永久磁石102の大きさは、各辺が3.5インチである。永久磁石102は、ネオジウム−ボロン−鉄磁性材料及びサマリウム−コバルト磁性材料を含む、幾つかの永久磁石材料で構成することができ、ずっと大きく又は小さく作ることができることに留意されたい。永久磁石120の形状は、立方体である必要はない。永久磁石材料の他の構成は、磁場及び勾配の態様が、強度及び方向の点で最適化されるように磁場を形作るときによりよい。他の実施形態では、永久磁石材料は、システムをよりコンパクトにするように構成することができる。永久磁石材料で構成される円柱は、1つのこうした例である。しかし、簡単な長方形及び立方体の幾何形状が、より安価である傾向がある。
【0073】
N極104及びS極106が存在する永久磁石102の面は、搭載プレート108に接着される又はその他の方法で締結される。搭載プレートは、磁性材料又は非磁性材料で構成することができる。任意選択で、磁性材料は、永久磁石材料の幾つかの構成について磁場を強くするために使用することができる。しかし、非磁性搭載プレートは、永久磁石102に固着するのがより容易である。
【0074】
この搭載プレート108は、第1の軸受け112及び第2の軸受け114を通過するフランジ110に取付けられ、軸受けはともに、軸受け搭載構造体116によって支持される。ほとんどの標準的な軸受けは、少なくとも部分的に磁性がある。これらの場合、フランジ110は、磁場がフランジ110から軸受け112及び114内に効率的に伝わらないことを保証するために、非磁性材料から構築されるべきである。このことが起こった場合、軸受け112及び114に対するフランジ110の磁気引力のために、軸受けがより大きな摩擦に遭遇することになる。
【0075】
フランジ110の端部は、ドライブモーター120に接続するカップリング118に接続される。モーターは、DCモーター又はACモーターとすることができる。サーボモーターによって、高い精度が可能であるが、これらのモーターは、よりコストがかかる傾向がある。幾つかの場合には、ほとんどのモーターが、通常、本発明で使用される磁性ローターの無線制御について所望されるより速く回転することを考えると、ステップダウンギアボックスが、所望の周波数で永久磁石102を回転させるために必要となる場合がある。
【0076】
ドライブモーター120は、ドライブモーター120をプラットフォーム124に固着するモーター支持構造体122に取付けられる。プラットフォーム124には、懸架アーム128に接続される懸架搭載ブラケット126(図1Bに示さないが位置する)が取付けられる。懸架アーム128は、アタッチメント継手130を有する。懸架アーム128は、磁石ステーターシステムの最良配置に応じて、頭上から、側面から、又は底部から懸架保持される。
【0077】
起磁性ステーターシステムの動作
起磁性ステーターシステム(図6に示す、602)は、図2に示すように可搬型支持ベース202の使用によって位置決めすることができる。所定場所になると、また、図6に示すように、コンピューターディスプレイ606及びユーザー制御ボタン608を有するコンピューター制御パネル604が、空間610内のユーザー定義点において磁気回転平面616の配向を指定するために使用される。磁場及び勾配は、物理空間610内で操作される。回転平面の法線ベクトル614が、制御ボタン608又は手持ち式コントローラー622を使用して、空間610内の点においてグローバル座標系612内でユーザーによって指定される。磁気回転平面616内には、コンピューターによって自動的に設定されることができる、磁場618の初期配向が存在する。ユーザーは、磁気回転平面616内で磁場回転の方向620を指定する。
【0078】
コンピュータープロセスが図7に示される。空間610内での点の識別は、アルゴリズムの702に対応する。同様に、回転平面の法線ベクトル614の指定は、アルゴリズムの704に対応する。右手座標系を使用して、磁場は、法線ベクトル614の回りに時計方向に回転する。コンピューターは、磁場の初期方向618を自動的に設定し、それは、コンピューターアルゴリズムにおいて706として示される。ユーザーは、磁気回転平面616内での磁場の回転周波数を設定する(708)。磁場勾配の強度が、計算され(710)磁場の強度も計算される(712)。これらのデータから、制御パラメーターが、磁石システムについて計算される(714)。永久磁石システムの場合、制御パラメーターは、ドライブモーター(複数の場合もあり)の回転速度に対応する。電磁石システムの場合、制御パラメーターは、時間的な電流の変化を記述する。計算されると、起磁性ステーターシステムがターンオンされる(716)。磁気回転平面616が変更されること(図7のステップ718に示す)が所望される場合、アルゴリズムは、回転平面の法線ベクトル614についての入力(アルゴリズムの704に対応する)にループする。
【0079】
図1Aの起磁性ステーターシステムが可搬型支持ベース202に取付けられると仮定すると、プラットフォーム124は、懸架アーム128に取付けられる懸架搭載ブラケット126を通してユーザーによって配向することができ、懸架アーム128はそれ自体、懸架アームアタッチメント継手130に取付けられる。懸架アームアタッチメント継手130は、可搬型支持ベース202に接続するアームポジショナーに接続する。懸架アームアタッチメント継手130は、アームポジショナーの端部の回りでの磁石システムの回転を可能にする。懸架アームアタッチメント継手130はまた、懸架アームアタッチメント継手130によって可能になる平面に垂直な平面内でプラットフォームベース124が回転することを可能にする。モーター支持構造体122を介してプラットフォームベース124に取付けられるモーター120は、所望の周波数で回転する。この運動は、ドライブカップリング118を介して搭載フランジ110に結合される。第1の軸受け112及び第2の軸受け114は、搭載フランジ110が平滑に回転することを可能にする。これらの軸受けは、軸受け搭載構造体116を介してプラットフォーム124に固着される。回転するフランジ110は、永久磁石102に取付けられる磁石搭載プレート108に強固に取付けられる。そのため、モーター120の回転は、永久磁石102に伝達される。永久磁石106の端部におけるN磁極104及びS磁極106の場所は、所望の磁場回転平面616をもたらす。この磁場回転平面616内で、磁場は、中心ドライブ軸132上に位置する全ての点について、磁石の前面に平行に回転する。
【0080】
身体内の磁性粒子の操作の場合、空間610内のユーザー定義点は、虚血性発作治療の場合、頭部624の内部とすることができ、そこで、磁性粒子は、血塊を迅速かつ安全に破壊するために操作される。同様に、空間610内のユーザー定義点は、深部静脈血栓治療の場合、脚626の内部とすることができ、そこで、磁性粒子は、血塊を迅速かつ安全に破壊するために操作される。
【0081】
磁性粒子操作の例において、粒子N磁極804及び粒子S磁極806を有する磁性粒子802は、粒子参照座標系808に対して、時計方向に回転する起磁的に生成される磁場812によって回転する。これは、時計方向回転角度810の方向への磁性粒子の回転をもたらす。磁場勾配814が印加され、表面816が存在すると、時計方向に回転する起磁的に生成される磁場812は、表面に対する牽引力をもたらし、右への並進818をもたらす。
【0082】
閉囲された領域822内に含まれる流体820の存在下で、磁性粒子の操作は、磁場勾配814と組合されると、循環流体運動824をもたらす。血液826を含む血管828内で血管遮断830を破壊するために使用されると、起磁的に生成される混合は、血塊破壊(血栓溶解)薬のよりよい混合をもたらす。これは、血栓溶解用量が、減少することを可能にし、それは、血栓溶解薬の高い用量に伴う出血を低減することによって、より安全な手法をもたらす。それはまた、血栓溶解プロセスを速める。
【0083】
したがって、循環系内の流体流を増加させる方法であって、(a)流体流の増加を必要としている患者の循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)患者に、循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)患者の循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、循環系内での治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法も提供される。
【0084】
種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができる。別の態様では、医薬組成物は、磁性ローターから分離して患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0085】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0086】
更に別の態様では、磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めすることができ、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0087】
本方法のシステムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、循環系内で治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように磁性ローターを制御する。
【0088】
種々の態様では、治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断である。更に別の態様では、磁性ローターは、反復して、a)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れて血管に沿って転倒型回転移動することと、b)ローターの回転及び磁場の引力に応答して磁場に向かって流体を通して戻るように流れることによって、円運動で流体を通して横断する。
【0089】
種々の態様では、ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、治療標的は、患者の頭部内の血管閉塞又は患者の脚内の血管閉塞である。
【0090】
更に別の実施の形態では、循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、(a)薬物の拡散の増加を必要としている患者の循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)患者に、循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)患者の循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、循環系内での治療標的における医薬組成物の拡散が増加する、方法が提供される。
【0091】
種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができる。他の態様では、医薬組成物は、磁性ローターから分離して患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0092】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0093】
更に別の態様では、磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めすることができ、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0094】
本方法のシステムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、循環系内で治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように磁性ローターを制御する。
【0095】
起磁性ステーターシステムの更なる実施形態
図3は、図1に示す平面に垂直である平面内で回転するように磁石が作られる実施形態を示す。ここで、N磁極304及びS磁極306を有する永久磁石302は、2つの支持フランジを有する。第1の磁石フランジ308は第1の軸受け312を通過し、第2の磁石フランジ310は第2の軸受け314を通過する。軸受けは、磁石支持構造体316によって支持される。磁石支持構造体は、中心シャフト318に接続され、中心シャフト318は、中心シャフト用の支持体320によって支持される。中心シャフト318は、ドライブモーター324が取付けられるモーター搭載プレート322に取付けられる。この実施形態では、磁石ドライブモーターシーブ326が、ドライブベルト328に接続される。ドライブベルト328は、磁石シーブ330に接続される。中心シャフト用の支持体320は、磁石組立体支持構造体332に取付けられる。
【0096】
この実施形態では、永久磁石302は、N磁極304及びS磁極306が同じ平面内で回転するように、前面に垂直な平面内で回転するように作られる。ドライブモーター324は、モーターシーブ326を回し、モーターシーブ326は、ドライブベルト328を回す。ドライブベルト328は、次に、第2の磁石フランジ310に取付けられる磁石シーブ330を回す。第1の磁石フランジ308及び第2の磁石フランジ310は、第1の軸受け312及び第2の軸受け314をそれぞれ通過する。磁石フランジ308及び310はともに、永久磁石302に取付けられ、したがって、ドライブモーター324が永久磁石302を回転させることを可能にする。
【0097】
図4では、2モーターシステムを使用して任意の平面内で回転することが可能である永久磁石436が示される。磁石は、N磁極438及びS磁極440を有する。第1のモーター402は、第1のモーターフランジ404を介して中央支持体406に取付けられる。第1のモーター402には、第1のモータープーリ408が取付けられる。第1のモータープーリ408は、第1のモーターベルト412を介して第1のアクスルプーリ410に接続される。第1のアクスルプーリ410は、第1のアクスル軸受け416を通過する第1のアクスル414に取付けられる。第1のアクスル414の端部には、第1のマイタギア418がある。前記第1のマイタギア418は、第2のマイタギア420に係合する。第2のマイタギア420は、第2のマイタギア軸受け424を通過する第2のマイタギアアクスル422に取付けられる。第2のマイタギア軸受け424は、磁石支持ヨーク426に取付けられる。第2のマイタギアプーリ428は、第2のマイタギアアクスル422に接続される。前記第2のマイタギアアクスル422は、磁石ベルト433によって磁石プーリ430に接続される。磁石プーリ430は、2つの磁石フランジ432の一方に取付けられる。磁石フランジ432は、磁石軸受け434を通過する。第2のモーターフランジ444によって中央支持体406に取付けられる第2のモーター442は、第2のモータープーリ446を有する。前記第2のモータープーリ446は、第2のモーターベルト450によって第2のアクスルプーリ448に接続される。第2のアクスルプーリ448は、第2のアクスル軸受け454を通過する第2のアクスル452に接続される。
【0098】
この例では、第1のモーター402は、第1のモータープーリ410を回し、第1のモータープーリ410は、第1のモーターベルト412を介して第1のアクスルプーリ410に回転を伝達する。第1のアクスルプーリ410は、第1のアクスル軸受け416を使用して自由に回るように作られる第1のアクスル414を回す。第1のアクスル414を回すことは、第1のアクスル414に接続される第1のマイタギア420を回すことをもたらす。第1のマイタギア418は、第2のマイタギア420に回転を伝達し、それは、第2のマイタギアアクスル422を回す。第2のマイタギアアクスル422の回転は、第2のマイタギア軸受け424を使用して可能になる。第2のマイタギアアクスル422の回転は、第2のマイタギアプーリ428の回転をもたらし、それは、磁石ベルト433を介して磁石プーリ430を回す。磁石プーリ430は、磁石フランジ432を回し、それは、第1の軸の回りの磁石436の回転をもたらす。
【0099】
第2のモーター442は、第2のモータープーリ446を回し、それが、第2のモーターベルト450を介して第2のアクスルプーリ446を回す。第2のアクスルプーリ446の回転は、第2のアクスル軸受け454を使用して自由に回るように作られる第2のアクスル452の回転をもたらし、したがって、磁石436が第2の軸の回りを回転することが可能になる。
【0100】
図5は、電磁コイル502で構成される起磁性システムの例である。電磁コイル502は、支持構造体504に取付けられる。各電磁コイル502は、電源ケーブル508及び電源リターンケーブル510を介して電源506に接続される。支持構造体は、2セグメントアームポジショナー512に接続される。この例では、各電源506は、電源ケーブル508及び電源リターンケーブル510を介して、それぞれの電磁コイル502に電力を送出する。2セグメントアームポジショナー512は、支持構造体504が空間内に位置決めされることを可能にする。
【0101】
起磁性ステーターシステム及び磁性ツールローター
更に別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、
流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、
治療標的に対して磁場を位置決めし回転させて、磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、治療標的に接触し、治療標的を貫通して又は治療標的の周りで流体流を増加させるように回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーとを備える治療システムが提供される。種々の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系とすることができる。種々の態様では、磁性ツールは、安定化ロッドに結合させることができ、磁性ツールは、回転する磁場に応じて安定化ロッドの回りを回転する。更に別の態様では、磁性ツールは、治療標的に係合し治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含むことができる。別の態様では、コントローラーは、治療標的上の標的点に磁性ツールを位置決めし、治療標的を切り崩すのに十分な周波数で磁性ツールを回転させる。磁石は、該磁石の極が、回転中に磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めすることができ、磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって治療標的に向かって押される。別の態様では、磁石は、磁石の極が、回転中に磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、磁性ツールは、磁石の引力によって治療標的に向かって引っぱられる。
【0102】
図9は、機械的血栓除去デバイスを無線で操作する起磁性ステーターシステム(「磁性ツール(magnetic tool)」とも呼ばれる)の一使用を示す。この例では、血管828の内部の血管障害830は、軸908を横切る方向にN磁極904及びS磁極906を有する、回転する磁石902によって遮断解除される。磁石902は、起磁性ステーターシステムによって無線で生成される外部磁場ベクトル812に従う。外部磁場ベクトル810は、磁場回転角度810の方向に時間的に変化する。磁石902の回転は、磁石902内の穴を通して安定化ロッド908を通すことによって安定化される。磁石902は、安定化ロッド908の回りを自由に回転する。血管障害830に係合するアブレシブキャップ910が、磁石902に固着される。このアブレシブキャップ910は、健康な組織に対して最小の損傷を、かつ、血管障害830に対して最大の損傷を保証するコーティング又は表面処理を使用する。
【0103】
磁性ツールを使用することの1つの利点は、比較的大きな磁性ローターを使用すれば、磁場勾配(時間変動性がある可能性がある)及び時間変動性磁場の使用により、遠位端で回転することが可能な磁石を有するデバイスを構築することが可能になることである。その結果として、これらのデバイスは、医薬品の効果を増幅するため又は脈管系内の障害を穿孔するために使用される既存の臨床デバイスに比べてずっと小さくかつ安価に作ることができる。より重要なことには、血管又はチャンバー内で回転機構を使用する商業的技術は、近位端から遠位端への機械的又は電気的伝達システムを必要とし、デバイスを複雑にし、デバイスをより高価にし、全体サイズを増加させる可能性がある。本発明は、機械的又は電気的伝達システムを必要とすることなく先端において無線で機械的作用を生成し、それにより、デバイスを小型で、簡単にし、製造を安価にする。
【0104】
例えば、システムは、静脈内に注入されるtPAの増大のために臨床設定で使用することができる。磁性粒子は、血栓溶解の前に注入されるか、その後に注入されるか、又は血栓溶解薬に付着されるかのいずれかになる。患者の近くでかつ血塊に近接して設置される磁石システムが起動されることになる。しかし、所望の障害に粒子を集めるのに勾配が十分であるため、システムは、このとき、変化する磁場を生成する必要がないことになる。磁気混合が所望される場合、磁場は、時間的に交互になるように作られることになり、磁場は、磁場勾配(時間的に変動してもしなくてもよい)と組合されると、血栓溶解作用を増大させる。そのため、血塊は、他の手法と比較してより速くかつよりよく破壊することができる。
【0105】
磁気的に増大される薬物拡散
図11は、移動する流体システム内に注入される化学物質の拡散に対する制御を磁気的にイネーブルする方法を示す。このモデルでは、流体Aが、系(図11Aの白い領域)を移動し充満させる。その後、流体Bが注入される(影の領域)。図11Bは、問題を示す。流体Bは、「脚部」に侵入する能力が制限される。その理由は、流れの速度が遠くの脚部まで伝わらないからである。系は、その後、流体Aを流体Bで希釈する拡散に頼らなければならない。これは、非常に長い時間を要する可能性がある。
【0106】
観察されたことは、磁性ナノ粒子が流体B内に配置されると、ナノ粒子の一部を、ストリームから出て脚部に引き込むために、磁場及び勾配が課され、ナノ粒子の一部が、僅かな流体Bを一緒に持って行くことである(図11C)。時間変動性の態様は、作用を増幅するために変えることができる。例えば、磁場の回転速度、磁場勾配の強度、供給源磁場の配向、並びに磁性粒子のサイズ及び強度である。時間が経って、より多くの粒子が、脚部の底に集まり、循環パターンを生じ始め、循環パターンは、拡散だけによって可能である場合よりずっと速くまで流体A内に流体Bを分配する。プロセスが長く実行されればされるほど、より多くの粒子が集まり、また、混合作用が強くなり、ついには、流体Aが、流体Bで本質的に置換される。
【0107】
血塊破壊の場合、脚部は、遮断された静脈又は動脈を表す。図が示すように、障害が主要な流れから十分に遠い場合、血栓溶解薬を遮断部の表面に接触させるために、拡散力だけが必要とされる。したがって、血栓溶解薬及び循環系から流体遮断を実質的に取り除くときに有効な他の医薬組成物は、その有効性が制限され、体内で(インビボで)の拡散に依存することは、負の臨床転帰をもたらす可能性がある。血栓溶解薬及び循環系から流体遮断を実質的に取り除くときに有効な医薬組成物は、比較的短い半減期を有するため、プロセスを速めることが、本起磁性ステーターシステムの利点である。主要な流れの濃度の何分の1かである治療濃度の流体Bを脚部の端部に送達することが目的である場合、本発明は、ずっと少ない用量の流体Bを最初に注入することで同じ治療濃度の流体Bを得ることができる(図30を参照)。このことは、その一部が出血又は更には死をもたらし得る医薬組成物の少ない用量の使用を可能にする、増大された治療的利点を、本発明が提供することを意味する。
【0108】
本発明の別の利点は、磁性ツールの場合、動脈硬化性プラーク物質等の大きな容積の血栓又は他の遮断物質を、システムが迅速かつ非常に精密に粉砕することが可能であることである。本発明の無線起磁性ステーターシステムを使用して、2フレンチ(french)(2/3mm)穴が疑似動脈硬化血塊を通って穿たれることが観察された。本発明における磁性ナノ粒子の使用に関して、本システムは、磁性粒子の精密制御が、静脈内のリーフ弁を完全で無損傷のままにすることを可能にする比較的「軽い(gentle)」スカーリング作用を生成することを可能にする。磁性ツールに関して、この作用は、閉塞した動脈又は静脈内の血塊物質を除去するために、血栓溶解薬と組合せて使用することができる。血液凝固物において血栓溶解薬とともに使用されると、血栓溶解薬は、機械的作用が最小にされることを意図されるときに役立ち得る。磁性ナノ粒子を使用して、遮断された静脈から除去される物質は、ガイドワイヤ上の小さな磁石によって捕捉することができる。動作モードに応じて、除去される物質は、小さい(1mmサイズ未満の血塊粒子)又は血塊物質、薬物、及び磁性粒子のボール混合物であることが観察された。磁性粒子集合体及び磁性ツールオブジェクトはともに、コンピューター再構成式経路プラニングを可能にする標準的な撮像技術によって視覚化されることが可能である。
【0109】
図12は、本発明の磁場発生器の別の実施形態の図である。この図において、発生器1200は、軸1210の回り及び軸1215の回りの2つの別個の回転が可能にされるように搭載された、N極1206及びS極1207を有する永久磁石源1205で構成される。軸1210の回りの回転の場合、磁石源1205は、ギア付きシャフト1226によって駆動され、次に、駆動ギア1230によって駆動されるプーリベルト1225によって回転する。ギア1230は、スラスト軸受け1235上に搭載され、モーター1240によって駆動される。ローターシステムには、1225、1226、1230、1231が搭載され、モーター1245を使用して回転軸1210の回りの回転を可能にする。別個のドライブシステムは、構成要素1220、スラスト軸受け1235、及びモーター1240を使用して、第2の軸1215の回りの回転を可能にする。発生器は、継ぎ目のあるアーム1250とともに位置決めされる。図13に概略的に示す第2の好ましい実施形態1300に優る好ましい実施形態1200の利点は、単純さ、小さなサイズ、及び低コストである。欠点は、第2の好ましい実施形態1300の制御及び複雑さの付加的な特徴のうちの幾つかを欠くことである。
【0110】
図13は、本発明の磁場及び勾配発生デバイスのさらに別の実施形態概略図である。本発明の磁場発生器1300のブロック図が示される。3つのコイル1301、1302、及び1303は、接続1321、1322、及び1323を通してドライバー1311、1312、及び1313から、それぞれ電流を給送される。ドライバー1311、1312、及び1313は、コンピューター1335から情報を受信する分配回路1330によってそれぞれが別々に制御される電流源である。各電流源1311、1312、及び1313は、必要とされるピーク磁場を提供するのに十分な正弦波電流を発生することが可能である。多くの場合、これは、0.3テスラ未満のピーク磁場であることになる。個々の場合に所望される場合、電流は、正弦波より複雑な時間的変動を有することができる。コンピューター1335によって決定されると、医師入力1341に応答して、電流の分布及びタイプ並びにコイルのそれぞれに対する電流のシーケンスが、コンピューターによって計算されることになる。コンピューター1335内のプログラムからの特定の動作命令は、特定の動作の知識に基づいており、それにより、特定の命令は、医師によって入力される本手法に従って動作するために提供される。第1の好ましいデバイス1200の利点に優る第2の好ましいデバイス1300の利点は、より複雑な磁場供給源から生成される磁場のタイプ及びコンピューター入力の更なる柔軟性並びに新しい手法に対する更なる改良である。
【0111】
発生器1300の回路、電源及びコントロールの設計は、磁気コイル、電源、並びにコンピューター及びロジック回路要素の設計の分野の当業者によく知られている方法を使用して、これらの特性及び仕様を以って動作する個々のユニットで構成される。
【0112】
本発明の方法によって処置される医療の症例における遮断の2つの主要なクラスは、部分的及び完全である。部分的遮断は、一般的に、低い血流をもたらし、一方、完全遮断は、血流を止めることになる。いずれの場合も、従来の手段によって血塊を除去するために送達される薬物の有効性は、一般的に理解しがたくかつ役に立たない。血塊の表面に対する薬物の送達は、血塊の近くでの薬物−血液混合物を撹拌する特別な方法があっても、原理上、理解しがたくかつ役に立たない。遮断を除去する本方法の主要な制限は、閉塞に対する効果的な薬物作用の困難さ、剥離した物質の除去の不完全さ、血管に対する損傷、及び除去された物質の下流の成分についての悪影響を含む。図14A及び図14Bは、血液凝固物の従来の処置の困難さ及び非効率性についての基礎になる物理的理由を示し、その理由について、本発明が主要な改善を提供する。
【0113】
図14Aは、流れがない血管1400の一部の湾曲部内での閉塞物質の一般的な蓄積の断面図であり、物質を溶解する薬物を使用するときの一般的な困難さを示す。血管壁1405に隣接して、内部境界縁部1415を有する、堆積した閉塞物質1410、「血塊」の標的領域がある。ここで、医師は、血塊の近くに薬物1425を導入した。これは、部分的に相互作用する物質の停滞作用層1430及びより高濃度であるが効果の低い薬物の層1435の一般的な状況を示す。層1430及び1435は、その全体的な領域内の血管1400内に注入されたより高濃度の血栓溶解薬1425から血塊を分離する。薬物の運動及び分配は、血塊と注入薬物との間の接触を新たにする手段としての熱運動及びゆっくりした分散だけによって生じることができ、それは、作用を、著しくゆっくりかつ非効率的にする。一部の専門家は、効率を上げるために、金属撹拌器、ベンチュリフローベースジェット、及び音ベース撹拌技術を導入したが、これらの方法の困難さ及び制限は、文書化されている。
【0114】
図14Bは、硬化した弁膜1470を有する血管1465の壁1460に接して形成された標的閉塞1455の断面図であり、領域1480において血流が遅く、血塊表面1457にて流体(血液と薬物の混合物)の流れが非常に遅い。これは、過剰な量の薬物を使用しなければ、上流で領域1480内に注入された薬物の塊375に対する相互作用をほとんどもたらさない。従来の手法は、血管を閉鎖すること、ゆっくりとした血塊の非効率的な溶解を伴って血栓溶解薬をゆっくり注入すること、及び大量の血栓溶解薬を注入することを含み、したがって、遮断された静脈の場合とほぼ同じ困難さを示す。幾つかの従来の処置は、血塊表面1485での相互作用の効率を高めようとして、領域1480内で、人工機械的撹拌、ベンチュリフローベース撹拌、及び音ベース撹拌を提供する。ジェットを有するカテーテルは、血塊のより効率的な溶解を得ようとして、血栓溶解薬を吹き付けることができる。閉塞物質の除去は、時に機械的デバイスの挿入によって実施され、かなりの困難さと弁に対する危険を伴う。これらの方法は全て、幾つかの場合においては役立つ可能性があるが、一般的に、有効性が制限される。
【0115】
図15A〜図15Cは、磁性ナノ粒子からのロッドの生成における本発明の基礎のプロセスを示す。図は、磁場の増加に伴う、コーティング済みの磁性粒子又は未コーティングの磁性粒子の構造化のシーケンスの断面を示す。サイクルの上昇部中の磁場の増加は、益々多くの粒子を整列させてより長いロッドにする。
【0116】
磁性ナノ粒子は、図15Aのゼロ磁場の場合、空間内にほぼ均等に分配されるようにアレイ化され、位置が或る特定の統計変動を有する、粒子のランダム配置状態1505のナノ粒子として示される。図15Bでは、小さな外部磁場1510が、粒子の同じ群に印加されると、粒子は、配向した短い磁性「ロッド」の緩いアレイ1515内に形成される。或る特定のより大きな磁場1520において、図15Cに示すナノ粒子のサイズ及びオプションの被膜に応じて、磁性ロッド1525として整列した同じ粒子が長くなった。この図では、ロッドは、サイズが均一であるが、それは、厳密にはそうでなく、また、それが必要でもないことが示される。この磁気プロセスは、2つの見方で観察され得る。2つの見方とは、a)単一の(ゆっくりとした)サイクルの磁場交番における増加である図15Aから図15Bへの磁場の増加、又は、b)生成される磁場のピーク間の大きさが増加するときの複数のサイクルにわたる増加である。絶対スケール及び振動周波数に応じて、所与の振動サイクル中、作用は反転されない。一般的に、本発明で使用されるように、方法は、約0.02テスラ〜0.2テスラの磁場を印加し、ロッドは、0.1mm長〜2mm長で変動するが、他の範囲も有用であり得る。
【0117】
ある回転磁場強度及び磁場回転周波数において、ナノ粒子サイズ及びオプションの被膜に応じて、ロッドは、図16のグラフに示すように生成され、飽和磁場に達し、最大長を達成することになる。ロッドの伸びは、必ずしも正確でなく、曲線は、伸びの全体的な性質を示す。完全に生成された各ロッドは、ナノ粒子のサイズ及び回転磁場の大きさに応じて、多数の、10個程度の数の又はそれより多い数のナノ粒子を含むことができる。ロッドは、磁場と勾配、及び各粒子内の磁鉄鉱の量、並びにナノ粒子サイズに応じて硬質ではない。他の物質を、化学的理由、磁気的理由、及び撮像的理由のために各粒子に付着させることができる。その化学物質は、血栓溶解薬とすることができる。血栓溶解薬は、独立に注入することもできる。
【0118】
図17は、空間内の固定供給源から出る回転磁場の印加から生じる単一回転ロッドの転倒型回転移動の幾何学的特徴を示す。図17は、磁場の方向及び勾配の引張り力を示すために、単一回転ロッドが回転し移動するときの単一回転ロッドの8つの位置のシーケンスを示す。磁場とロッドが回転しながら、すなわち、ロッドと磁場との整列を維持しながら、ロッドとその磁気モーメントを保持するための相互作用を維持するように、個々の粒子の有効磁気モーメントが、局所磁場に連続して整列することが理解される。
【0119】
特定の理論に拘束されないが、また、以下の節の式[1]及び式[2]で論じるように、磁場Bは、トルクを確立するが、ロッドモーメントに引張り力を加えず、一方、勾配Gは、引張り力を加えるが、モーメントに回転トルクを加えない。したがって、回転磁石源は、図17の全てのステージで下方矢印として示される、自身に向かう引張り勾配を有することになる。より小さな(一般的に150nmより小さな直径の)磁性ナノ粒子は、空間内で個々に回転する必要なく、局所磁場と自動的に整列することになる透磁性物質として主に働く。いずれの場合も、磁性ナノ粒子は、上述したようにロッドを形成することになり、ロッドは、それ自体、ナノスケールでは適度の硬質性を有するが、本発明の処置のミリメートルのスケールでは非常に軟質である。図17では、三角法ラベリング(trigonometric labeling)は、回転磁場に応答して右に向かうロッドの移動に関連する、粒子に対する力及びトルクの変化する成分の幾何学的(角度)態様を示す。換言すれば、ロッドは、ほぼ固定磁性ロッドとして働く。図では、8つの位置のそれぞれの磁場方向は、磁場が時計方向に回転するにつれて、矢印1701、1711、621等で示される。ロッド磁気モーメント1702、1712、1722等は、その方向に追従する。しかし、図示する各ステージにおいて、矢印1703、1713、1723等は、以下の式[2]に従って、回転磁場源の中心に向かって下を指す。ロッド長のスケールで、約2mmの右への移動は、供給源磁石までの距離に対して小さい。
【0120】
図18A及び図18Bは、供給源磁場が、供給源磁石の固定位置の周りを回転するときの、磁性ロッドの集中に対する制限の生成を示す。磁場と違って、勾配は、供給源の磁気中心に向かって常に引張ることになる。磁場B自体は、小さな磁気双極子モーメントμに対する整列のトルクτを生成するだけである。
τ=μBsinφ [1]
式中、φは、モーメントμの方向と磁場Bの方向との間の角度である。勾配のない均一な磁場は、モーメントμに対する力を生成しないことになる。しかし、勾配Gは、以下に従って、小さなモーメントμに対する力Fを生成することになる。
F=μGcosφ [2]
式中、φは、モーメントμの方向と勾配Gの方向との間の角度である。
【0121】
図18Aは、ロッドについての開いた場所におけるシステムの空間「分解能(resolution)」の性質を示す。回転磁石源の場所が固定の場合、勾配から回転磁石源に向かう引張りは、ロッド1805、1806、及び1807が右に移動するにつれて、方向を変えることになる。ロッドは、増加した距離、したがって、磁場の強度の喪失を有することになり、また、有している。図18Aでは、回転外部磁場源は、矢印1810で示す左のままであるため、ロッドの場所は、固定回転磁石(ここでは、スクリーンの下のはずれたところにある)の右に移動した。ここで示すステージにおいて、3つのロッド1805、1806、及び1807を示す矢印は、回転供給源磁石システムの中心から右へ遠くに移動した。ロッドのサイズ及び磁石源に対するロッドの距離に対して、右へのこの距離は、磁場源及び勾配が或る角度になり、大きさが減少するように増加した。勾配は、大きな矢印1810で示す方向に、粒子及びロッドを引張り、粒子及びロッドは、自身の場所において式[2]の力に従って提供される牽引力によって押しやられる。勾配Gは、通常、距離の3乗の逆数と4乗の逆数との間の倍率だけ、供給源からの距離に伴って減少し、一方、磁場は、供給源の中心からの距離のほぼ3乗の逆数として、供給源からの距離に伴って減少する。この移動において、ロッドはまた、ロッドを下に引張って移動表面上に置くのに必要とされる誘引勾配を失う。ロッドは、最終的には牽引力を失う。図18Bに示すこの結果は、以下の図18Aで示すメカニズムの結果として、勾配の角度が左から右に変化するときに起こった粒子の分布を示す。このグラフは、磁石源の固定場所についてのものであり、移動ロッドシステムの「分解能」を述べるときに有用である。実際には、供給源は、閉塞を処置するための医療方策に応じて、長い閉塞について所望される場合、移動させることができる。
【0122】
図18Aで述べる作用の結果、回転磁石源の場所が固定である場合、ロッドの移動に伴う距離に伴う力の減少が、ほぼ図18Bに示すロッド活動の分布をもたらすことになる。図18Bでは、矢印は、単に、磁石に最も近い場所における最大密度領域を指し、ロッド移動の位置依存性を示し、ロッドが磁石源に最も近いときに最大強度である位置依存性を示す。
【0123】
単一回転ロッドの磁気力学は、以下の計算に従う、本発明のソフトブラシ量を提供する。これらの条件は、比較的低密度に付着した血塊物質を有するロッド束についてだけ直接に適用されることが理解される。以下で論じるように、血塊物質がロッドと束形成することを許容される回転磁場内でロッドを動作させる非常に有用なモードは、安定でありかつ磁気的に除去可能な軟質クランプをもたらす。こうしたモードは、この節の計算に従わない。それでも、この節の計算は、軽くロードされるときの回転するスカーリングロッドの基礎になる挙動、及び、小さな閉塞物質の場合、或いは、手法の扱いにくさ又は静脈のサイズが物質のクランプが持続されることを可能にしない可能性がある場合に使用され得るモードを示すであろう。こうした場合は、脳内の幾つかの閉塞で起こる可能性がある。
【0124】
ここで、簡単にするために、ロッドは硬質であるとして扱われる。図19Aは、次に薬物混合及び血塊の表面との相互作用を増大させるための乱流を生成する回転するロッド上での回転力及び回転エネルギーの生成の三角法詳細を示す図である。回転磁場Bの作用エレメントは、所与の瞬間に、ロッド磁気モーメントμの方向、及び、Bがx軸から角度βに向けられる瞬間の磁場Bの方向によって規定される平面内の磁気モーメントμの単一ロッド上で示される。この瞬間に、(一定)モーメントμは、x軸から角度θに向けられる。したがって、この瞬間に、外部供給源磁石によってモーメントμ上に生成されるトルクτの大きさは、
τ=μBsin(β−θ) [3]
で与えられる。
【0125】
図19Bは、対称であると仮定される、ロッドに加えられる角度力F(θ)を、対称ロッドの中心を中心とする座標系において示す。これは、ロッドサイズが、磁石源までの距離に比較して小さいときの実際的な状況である。得られる力
Fθ=2μ(B/L)sin(β−θ) [4]
は、長さLのロッドの端部の磁場Bによって生成される。
【0126】
抗力は、角度依存性θ2を有する標準的な力学から近似されてもよい。すなわち、
Fdrag=−Cθ2 [5]
であり、式中、Cは比例定数である。その(標準的な)仮定の下で、対称ロッドについての運動の最終的な式は、
mlθ/4=2μβ/l[sin(β−θ)]−Cθ2 [6]
である。
【0127】
さらに、角α=β−θと規定し、β=ωt(ωは角度回転周波数)とすると、α=β−θであり、したがって、α=−θである。式[3]は、
Mlθ/4=(2μB/l)sinα−C(ω−α)2 [7]
になる。
【0128】
一定進み角αの場合、これは、
sinα=clω2/2μB [8]
に簡略化される。
【0129】
一定進み角αを保存する最大周波数ωoは、
ωo2=2μB/cl [9]
であり、式中、α=π/2、すなわち、90度である。
【0130】
ωoより大きな或る角度周波数の場合、モーメントμは、磁場回転に追従できず、システムは不安定化する。ずっと高い周波数では、磁場がπ/2未満だけ進み、時間の他の半分について、π/2より大きな値だけ進むため、運動は本質的に停止する。そのため、2つのトルクが打ち消す。この推論から、運動エネルギーは、図19Cに示すように周波数依存性を示すことになる。具体的には、運動エネルギーTは、
T=2×(1/2)(m/2)(1/2)2θ2 [10]
である。
【0131】
図19Cは、回転周波数に対するロッドの運動エネルギーのこの依存性を示すグラフであり、最大エネルギーは、To=(ml2/8)ωo2であり、ここでω=θである。すなわち、単一ロッドについて利用可能なピーク回転運動エネルギーは、ロッドの質量、長さに依存し、ロッドが磁場回転に追従できない点まで、角速度の2乗である。
【0132】
磁性ナノ粒子のロッドの形成及び機械的挙動の上記の理解によって、医療用途に最も簡単に適用されるときの、本発明のシステム及び方法の使用が示され得る。ナノ粒子のシステムは、血管内の閉塞に作用する、可撓性がある磁性ロッドの群として振る舞う(また、視覚的に現れる)ことがわかった。最初に、上記の図14A及び図14Bを用いて論じた2つの特徴的な問題のある場合の処置が、回転ロッドの導入によって示される。
【0133】
図20Aは、本発明の回転ロッドによる乱流の導入の実際的な利益を示す。完全な空間的遮断を有する血管の一部分は、慣例的に処置された図14Aを用いて示された問題の、本発明の方法による処置を示す。図20Aは、流れがなく、血塊2005を有し、閉塞の近くに血栓溶解薬2010の新しい供給分が注入されている管腔2000の断面図である。新しい薬物2010とともに注入された3つの回転磁性ロッド2030(縮尺は一定でない)が示され、回転磁性ロッド2030は、回転磁石源(ここでは図示せず)の方向2025に引張られるときに、局所乱流を発生させる。時計方向の回転によって、ロッドは、新しい薬物と混合し、外部回転磁場源が移動するときにロッドが左にゆっくりと移動するにつれて、血塊2005の表面をブラッシングするのが示される。血塊2005の小さな粒子は、右2035において蓄積し、そこで、回転が継続されると、図21Aに示すようにボールを形成することになる。その状況は、ほとんど混合作用がなく、また、血塊の除去のために長い時間に依存しなければならない薬物の静的塗布の場合の図14Aの状況と比較される。
【0134】
図20Bは、図14Bに示すような場合の標準的な方法による非効率的な血塊除去の問題を解決する本発明の方法及びデバイスが示される、管腔2050の上側部の断面図である。この場合は、脚動脈内の部分的遮断を示すものとしてもよい。ここで、図14Bに示したように、部分的に遮断された管腔2050内にゆっくりと流れる血液2090が存在する。血塊物質2058及び2062は、弁尖2060の周りに蓄積し、弁尖2060を硬質化し、完全ではないがかなりの流れの減少を引き起こす。この場合、血管2050は、完全には閉鎖されず、減じた流れは、部分的閉塞及び硬質な弁2060の硬質性による。図14Bで述べたように、血流は、ゆっくりではあるが、閉塞物質との非効率的な接触状態で注入薬物を運び去る。本発明の方法において、回転スカーリングロッド2055の作用が示されており、血塊2058及び2062に作用して、薬物接触を大幅に増大させるとともに、小さなスケールで軽いスカッフィングを提供する。領域2080及び2085内の乱流は、回転ロッド2055によって生成され、回転ロッド2055の小さく或る程度可撓性がある構造は、こうした領域で血管壁2070又は弁尖2060を損傷することなく働くことができる。幾つかの場合においては、除去された、磁気的に注入された物質は磁気手段によって下流で収集されることになる。
【0135】
ある条件(特別な遅い流れ)下で回転が継続すると、血塊物質及び磁性ナノ粒子は、以下の図21Bに示すように磁性ボールを形成し得る。やはり、特定の理論に拘束されないが、磁性粒子は、循環するにつれて、血栓の表面に係合すると考えられている。血栓が小さな破片に分解するため、磁性粒子は、磁鉄鉱と血栓物質で構成されるボールに似た構造内にカプセル化される。この構造は、幾つかの有利な特性を有する。
1.対象物が、相互作用の表面積を増加させ、血栓溶解薬のより効率的な循環を引起すことによって血栓の破壊を加速させる。
2.構造が、小さな塞栓を捕捉し、塞栓をボール構造内に入れ、それにより、塞栓が逃げることを防止する。
3.構造が、血栓溶解薬によってその構造が溶解されるため、ゆっくりと分解し続けることになる。
4.代替的には、構造は、先端に磁石を有するデバイスによって再収集することができ、それにより、より大きな塞栓及び磁性粒子が捕捉される。
【0136】
血塊及び磁性ロッド相互作用の性質及び期間に応じた、薬物の適切な送達レートによって、磁性ロッドスカーリングプロセスが、述べたように、血塊物質とロッドを混合するように構成されて、磁性ロッドと結合した、血塊物質の小さくほぼ球状のボールを提供し得る。本質的に、それらの条件は、磁気手法中の血栓溶解薬の塗布レートと濃度によって決定される。閉塞の処置において訓練された医師は、除去を完了するための最適特性(硬質性及びサイズ)のボールを形成するために薬物の送達レートの判断を使用する。
【0137】
本技法の適用が、次の通りに述べられる。図21Aは、血流がない、血塊2130によって完全に遮断された血管2120の断面図である。ここで、磁性ロッド2122は、磁場の時計方向回転によって閉塞2130のすぐ近くの領域を撹拌し、循環パターン1035を生成する。混合領域2125は、血塊物質と血栓溶解薬と少量の磁性ロッド物質の混合物を含む。
【0138】
図21Bの断面図において、血管1020内のこの回転相互作用は、継続され、ボール2140が、血栓1030から剥離された物質、血栓溶解薬、及び少量の磁性ロッド物質から形成され始める。
【0139】
図21Cでは、回転ボール2140は、拡大し、治療を加速する。回転ボール2140は、閉塞物質の少量の残留物2150を残しながら、血管2120内の遮断されたチャネルを開口した。ボール2140は、依然として回転し、回転磁石源(図示せず)の勾配からの力によって所定場所に保持される。
【0140】
図21Dは、完成した血塊ボール2140を捕捉し除去する手段を示す。回復した血流が、血栓ボール2140を下流に押し流す前の適切な時間に、先端に磁石を有するプローブ2145が、挿入され、磁石プローブ2145を引き抜くことによって除去するために、ボール構造1040を捕捉する。
【0141】
図22は、弁尖1160を含む血管2255の断面図であり、弁尖のうちの1つ2262は、弁2262を硬質化して機能しなくさせる閉塞物質2263を有する。血液は、矢印2270の方向にゆっくりと流れる。外部磁場発生器(図12又は図13に示すようなものであるが、ここでは図示せず)は、この領域内で回転磁場を生成した。その領域で、回転ナノ粒子ロッド2275が、例えば上記の図20Bに示した方法で血塊付着物2263に作用する。図示する磁性ロッド2275は、実際には、血塊2263に隣接する空間内の多数のこうしたロッドのメンバとすることができる。ロッドは、可撓性があり、2263の狭い角で機能するために、上述したように約1ミリメートル〜2ミリメートルより短い長さまでブラッシングされ得る。実験室試験では、ロッド2275は、約2センチメートル幅で3ミリメートル深さであった2263等のモデル空間内の物質を除去するように機能し、血栓物質の約100立方ミリメートルを除去した。
【0142】
図23は、より大きな血管2305から分岐する小さな血管2300の断面図である。小さな血管は、図示するように蛇行状である場合があるが、脳又はその他の場所の血塊であり得る血塊1215に近づく、図示する磁性ロッド2310の前進移動等の前進移動を妨げない。こうした小さな血塊2315は、上記の図22の2255等の他の全体的に大きな血管について述べたようにスクラブし得る。適切な磁場及び勾配の選択によって、閉塞物質の微小破片を除去するスクラブ処理が生成され得る。これらの粒子は、サイズが数ミクロンまでとすることができ、更なる下流の損傷を引き起こさない。2315等の血塊を取り除くこの方法の利点は、閉塞が、完全であり、従来の既存の方法によって達することが難しい場合があるが、外部回転磁場は、ロッドを閉塞点まで移動させることである。血栓溶解薬は、その後、可能である場合、血塊部位に従来どおり導入することができる。その地点で、ロッド2310の撹拌活動が、静的送達よりずっと速く薬物を作用させることになる。
【0143】
磁性粒子は、脆い構造を軽く取り除くのに十分であるが、脳の所定部分が血液不足になる虚血性脳卒中の場合にそうであるように、時として物質をただちに迅速に除去することが必要である場合がある。磁性粒子に関して使用される同じ原理は、遮断への血栓溶解薬の流れを同時に増加させながら、機械的アブレーションによって閉塞を迅速に除去するように特に設計される、より大きな磁性構造に関して使用することができる。ここで血栓除去デバイスと呼ばれるこれらのより大きな磁性構造は、表面上に接合されたアブレシブ材料を有する球とすることができる。磁性構造は、サイズがミリメートル未満からミリメートル以上までとすることができ、常に、特定の手法後の除去が必要であることが考慮される。この技法は、従来の技法の場合に通常見られるより小さな残留塞栓をもたらす可能性がある。既存の手法に優るこの方法の更なる利点は、除去される物質の制御可能な磁気特性である。本発明において磁気モーメントを有する球(すなわち「磁性ボール」)として示される血栓除去デバイスは、デバイスの取出しを簡単にするために紐付きとすることができる。代替的には、デバイスは、磁性粒子について提案された方法、すなわち、先端に磁石を有する(magnetically-tipped)ガイドワイヤを使用することと同様の方法で回復させることができる。ボールの表面は、以下のものの任意の1つ又は組合せで構成することができる。
1.磁気共鳴撮像、X線、PET、又は超音波技術による可視化を可能にする1つ又は複数の造影剤
2.遮断の破壊を加速させる薬物
3.粉砕を加速させるための最適化された表面幾何形状
4.粉砕を加速させるためのアブレシブ表面
【0144】
図24は、本発明において球2430として提示される磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの基本動作の要素を示す。ボール2430は、S端2410及びN端2420を有する永久磁石モーメントを有する。反時計方向に2440に進む外部印加された磁場2450が、ボールを回転させる。この図24Aの場合にそうであるように、磁場勾配が存在しない場合、牽引力が、表面2460に対して全く生成されず、ボールは並進しない。
【0145】
図24Bは、磁性ボール2430を血管壁に押し付けるための、磁性ボール2430に作用する2480の方向への力を生成する磁場勾配2480が、本質的に固定した所与の方向2480に存在することを除いて、図13Aと同じ場合を示す。結果として、牽引力が生成され、平進運動が、磁場の反時計回転2440によって方向2470に起こる。
【0146】
この技法の適用は、以下に述べられる。図25Aは、血流がない、完全に閉塞した血管2510の断面図である。ここで、磁性ボール2530は、閉塞表面2522を機械的に粉砕しながら、閉塞2515のすぐ近くの領域を撹拌する。表面2522に対する接触は、方向2520への勾配によって生成され、方向2520への並進力をもたらす。ボール2530の時計方向運動は、循環パターン2525を生じさせ、血栓溶解薬の作用を加速させる。
【0147】
図25Bの断面図において、血管2510内の回転相互作用が、継続され、ボール2530が、並進方向2520に閉塞2515内に深く貫入する。
【0148】
図25Cでは、磁気的にイネーブルされる回転ボール2530は、閉塞物質2515の少量の残留物を残しながら、血管2510内の遮断されたチャネル2535を開口した。
【0149】
図25Dは、血管2510から磁気的にイネーブルされるボール2530を捕捉し除去する手段を示す。外部磁場2520は、もはや回転しないか又は除去されており、もはやボールを右に並進させない。回復した血流が、血栓除去ボール2530を下流に押し流す前の適切な時間に、先端に磁石を有するプローブ2540が、挿入され、磁石プローブ2540を引き抜くことによって除去するために、ボール2530を捕捉する。
【0150】
図26Aの断面図は、血管2605内の紐2630付きの磁気的にイネーブルされるボール2610を示す。紐2630は、図26B又は図26Cに示すアタッチメントを使用して、ボール2610が磁場によって回転することを可能にする。この図では、磁石のN端2640及びS端2645は、黒矢印の端部で示される。磁場2640−2645の自由回転は、血管2605の内部の血栓又はプラーク物質2620の粉砕を可能にする。紐2630は、図25Dに示した先端に磁石付きワイヤ2540を必要とすることなく、磁石2610が手作業で取出され得ることを保証する。紐2630は、図26B及び図26Cの方法及びデバイスに従って設計されると、回転時に、ボール2610に巻付かないことになる。
【0151】
図26Bは、磁石2610の軸2650の回りの回転を可能にする紐2660の第1の実施形態を示す。この図では、紐端部2665は、回転軸2650を通して緩く挿入されて、軸2650の回りの自由回転を保証する。N端2640及びS端2645の矢印は、ボール2610の磁化方向を示す。
【0152】
図26Cは、紐の第2の実施形態を示す。紐2670は、磁石2610の軸2650(ループ2675に垂直)の回りの回転を可能にする。この図では、紐は、軸2650の回りの自由回転を保証するために、磁石の軸2650を緩く囲むループ2675である。矢印2680のN端2640及びS端2645は、ボール2610の磁化方向を示す。
【0153】
本発明で述べる技術はまた、図27に示す血管2705の壁上の脆弱なプラーク2715を除去するときに使用され得る。図27では、血管2705の断面図は、血管2705の上部及び底部に脆弱なプラーク2715がある状態で示される。回転磁性ボール2710は、図25Cに示す閉塞2515及び図26Aの紐付き図2630に関して使用される方法と同様の方法でプラーク2715を粉砕しているのが示される。これは、プラーク2715に向かって上に作用を向けるために、外部発生勾配2720を使用することによって可能になる。吐出された物質が溶解されることを保証するために、血栓溶解薬も存在し得ることが仮定される。
【0154】
磁性粒子及び磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスが、最新の撮像技術を用いて観察されることが可能になることを保証するために、粒子は、その撮像技術に対して粒子を不透明にする被膜を有しなければならない。例示的な造影被膜は、x線、PET、MR及び超音波を含む。こうした被膜の利点は、その領域内での血流の欠如のために、通常見ることができない血管を再構成する能力である。同様に、粒子を制御し再収集する能力は、伝統的な造影剤を用いたときに見られるのに比べて有害の程度が低い副作用をもたらす。例えば、X線造影剤は通常、複数回の注入を必要とする。その理由は、X線造影剤が、血流によって運び去られ、流れの遅い血管を高濃度で移動できないからである。
【0155】
図28Aは、より大きな血管2810から分岐する小さな血管2820の断面図である。小さな血管2820は、図示するように蛇行状である場合があるが、磁性ロッド集合体の前進移動及び磁気的にイネーブルされたボールの回転運動を妨げない。両方の技術は、小さな血管2825の右側で始まり、遮断2815に近づくものとして示される。後続の時点において、磁性ボール又は磁性ロッド集合体2825の場所は、2826、2827、2828、及び2829で示す点で識別される。粒子集合体又は磁性ボールの並進方向は、身体から延在する矢印2830で示される。
【0156】
図28Bは、図28Aに示すのと同じ断面図である。この図では、粒子集合体又は磁性ボールの撮像された場所は接続され、コンピューターが経路2835を再構成することを可能にする。この経路は、解剖学的構造を確認し、経路に沿うナビゲーションを必要とする手法をプラニングするために、術前画像に対して参照され得る。
【0157】
システムで使用するための組成
磁性ナノ粒子の種々の製剤を、医薬組成物と組合せて処方するか否かによらず、患者への投与のために使用することができる。本明細書の磁性ナノ粒子と同時投与するために、又は、ナノ粒子と別に投与するために、種々の医薬組成物、薬物及び化合物を処方する方法を、当業者は認識するであろう。被膜及び処置される治療標的に応じて、未コーティングのナノ粒子に加えて、コーティング済みのナノ粒子を処方する方法も、当業者は認識するであろう。幾つかの実施形態では、本明細書の磁性ナノ粒子の種々の製剤は、水なしで(neat)投与することができる。他の実施形態では、種々の製剤及び薬学的に許容可能なキャリアを投与することができ、種々の調合にすることができる。薬学的に許容可能なキャリアは、当該技術分野で知られている。例えば、caキャリアは、形態若しくは一貫性を与えるか、又は希釈剤として働くことができる。適した賦形剤は、安定化剤、湿潤剤及び乳化剤、モル浸透圧濃度を変化させる塩、カプセル化剤、緩衝剤、及び皮膚透過促進剤を含むが、それらに限定されない。賦形剤並びに非経口及び経口薬物送達用の製剤は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000)に述べられる。
【0158】
幾つかの実施形態では、磁性ナノ粒子は、(例えば、腹腔内、経静脈的、皮下、筋肉内等への)注入による投与のために処方されるが、処置される循環系遮断に応じて、他の形態の(例えば、口、粘膜等への)投与も使用することができる。従って、製剤は、食塩水、リンガー溶液、ぶどう糖溶液、及び同様なもの等の薬学的に許容可能なビヒクルと組合せることができる。特定の投与レジメン、すなわち、用量、タイミング及び繰返しは、特定の個人、その個人の医療履歴、及び処置される循環系遮断に依存することになる。一般的に、以下の用量のうちの任意の用量を使用することができる。すなわち、約1mg/kg身体重量、少なくとも約750μg/kg身体重量、少なくとも約500μg/kg身体重量、少なくとも約250μg/kg身体重量、少なくとも約100μg/kg身体重量、少なくとも約50μg/kg身体重量、少なくとも約10μg/kg身体重量、少なくとも約1μg/kg身体重量、又はそれ以下の用量が投与される。血栓溶解薬の半減期等の経験的考慮事項が、一般的に、投与量の確定に寄与することになる。
【0159】
起磁性ステーターシステムの利点
起磁性ステーターシステム並びに磁性ナノ粒子及び他の磁性ロッド(例えば、磁性ツール)を制御する方法を述べたが、現在のところ市場に出ているデバイス及び医薬組成物と比較すると、幾つかの利点を観察することができる。第1に、意図しない損傷を患者にもたらす可能性があるカテーテル及びカニューレと対照的に、磁性ローターが遠くから制御されることを可能にする有利な方法で、磁場勾配と磁場とを組合せることができること。第2に、磁場が、単純かつ正確な方法で経時的に変化されるとともに、通常投与量で体内で(インビボで)精密に制御することが難しい医薬組成物の観点から、無線ローターに対する制御が大幅に強化されるように可能な限り最適化されることを可能にするコンパクトなメカニズムを構築することができること。
【0160】
さらに、磁性ローターが、磁鉄鉱等の磁性ナノ粒子からなるとき、該ローターは、磁性粒子の近くにある化学薬剤又は医薬品のよりよい混合をもたらすように操作することができる。時間変動する磁場と組合せた磁場勾配の使用は、流れパターンが生成されることを可能にし、それが次に、化学物質又は医薬品の相互作用を増幅する。このメカニズムは、血栓溶解薬としてtPAを使用する、血管内システム内の血塊の破壊について動物モデルにおいて観察された。医薬組成物も、同じ機能を果たすために、磁性ナノ粒子に付着させることができる。結果として、これらの薬剤の少量が、患者処置のために必要とされることになる。ただし、本発明のシステムの磁場勾配及び時間変動する磁場を使用して、粒子が、所望の標的にナビゲートされ、所望の標的と相互作用できるときに限る。
【0161】
起磁性システムは、現在のところ発見されていない方法で、ユーザーが磁場の回転平面を制御することを可能にする、解り易いユーザーインターフェースを利用することができる。
【0162】
起磁性システムは、変動しない磁場によって試みられる手法より優れた方法で小さなチャネル内で粒子を移動させるために使用することができる。磁場勾配と時間変動する磁場との組合せ使用は、粒子が、治療がその地点に向けられ得る小さな血管内に移動することを可能にする。
【0163】
本発明は、特許請求の範囲に述べる本発明の範囲を制限しない、以下の実施例において更に述べられる。
【実施例】
【0164】
本教示の態様は、本教示の範囲をいかようにも制限するものとして解釈されるべきでない以下の実施例を考慮して更に理解されることができる。
【0165】
実施例1−ウサギへの磁性粒子の投与
麻酔下のウサギを、血管内障害モデルを生成するために使用した。頸静脈を使用し、トロンビンを使用してこの場所に血塊を生成することによって、自然生成物は血液凝固物を生成する。安定した血塊が確立されると、tPA(血管内障害患者の血塊を溶解するために一般的に使用される酵素)及び磁性ナノ粒子を、血塊場所に送り、血塊を溶解するのに必要とされる時間を記録した。図30を参照されたい。様々な時点後に、動物を、安楽死させ、残りの血塊を、重さを量って分析し、血管自体に対する損傷が全く存在しないことを確実にするために、組織を収集した。
【0166】
血管内障害モデルは、起磁性ステーターシステムが、tPA単独によるよりも速く静脈又は動脈を再開口できるか否か、また、tPAの投与量が、静脈に損傷をもたらさない状態で必要とされるtPAの量より低減できるか否かについての判定を可能にする。本血管内障害研究から集められたデータは、起磁性ステーターシステムが、tPAの「血塊破壊(clot-busting)」活動を大幅に速めることを明確に示す。
【0167】
詳細なプロトコル
要約:深部静脈血栓は、一般的でかつ潜在的に致命的な状態であり、現行の処置オプションは、幾つかの場合においては、役立つより損害を与える可能性がある。本発明者らの目的は、一般的に使用されるMRI造影剤を磁気的に操作することによって、本発明者らが、現行の薬理的処置の効率を実質的に上げることができるか否かを判定するために、静脈血栓の非存命麻酔下ウサギモデルを使用することである(Magnetic particles in imaging: D.Pouliquen et. al., Iron Oxide Nanoparticles for use as an MRI contrast agent: Pharmacokenetics and metabolism; Magnetic Resonance Imaging Vol.9, pp275-283, 1991)。
【0168】
磁気学:上述した鉄ナノ粒子は、現在のところ、ヒトで使用され、安全と考えられる。
【0169】
導入:深部静脈血栓(DVT)は、無症候性であるが、ほとんどの場合、患部は、有痛性で、腫大し、赤色で、細長い表在静脈であり得る。未処置のままにされると、合併症は、組織壊死及び患部四肢の機能喪失を含み得る。最も重篤な合併症は、血塊が剥離し肺まで移動し、肺塞栓症(PE)及び死をもたらし得ることである。DVTの現行の処置は、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)等の溶菌酵素の多量の用量を含み、時として、機械的摘出(Angiojet,Trellis Infusion System)で補強される。溶菌酵素の用量は、多くの患者(特に年配者)において、出血のリスクが高く、また、芳しくない結果が一般的であるようなものである(A review of antithrombotics: Leadley RJ Jr, Chi L, Rebello SS, Gagnon A.J Pharmacol Toxicol Methods. Contribution of in vivo models of thrombosis to the discovery and development of novel antithrombotic agents. 2000 Mar-Apr; 43(2):101-16; A review of potential tPA complications: Hemorrhagic complications associated with the use of intravenous tissue plasminogen activator in treatment of acute myocardial infarction, The American Journal of Medicine, Volume 85, Issue 3, Pages 353-359 R.Califf, E.Topol, B.George, J.Boswick, C.Abbottsmith, K.Sigmon, R.Candela, R.Masek, D.Kereiakes, W.O'Neill, et al)。本DVTモデルの目的は、かなり少量の用量のtPAが使用され、出血のリスクを大幅に低減するように、起磁性ステーターシステムが、血栓部位においてtPAの活性を増大するかどうかについての判定を可能にすることである。さらに、現行の機械的血栓除去が、内皮を損傷することが分かっている。各実験に続いて、血管セグメントが、内皮完全性について組織学的に評価される。
【0170】
手法:これは、非存命手法である。ニュージランドホワイトウサギ(1.5kg〜2.5kg)は、ケタミン35mg/kg、キシラジン5mg/kg IMを使用して麻酔をかけられ、腹側頸が剃毛され、手術の準備がされた。麻酔経口的気管内挿管を可能にするため麻酔面を深くするために、イソフルランガスを使用したマスク誘導を使用することができる。挿管されると、動物は、手術室に移され、手法の期間中、イソフルランガス麻酔(手術効果に対して1%〜5%)を投与された。動物が麻酔下にある間、心拍数、呼吸数、体温及び呼吸末期CO2が監視される。動物の数を減らし、調査間の変動性を低減しようとして、両側の10cm〜12cm切開が、傍正中から気管まで行われ、頸動脈を単離するために、鋭的/鈍的切開(sharp/blunt dissection)が使用される。有意の合併症が起こらない場合、動物の総数は、相応して低減される。
【0171】
超音波血流計プローブが、単離された血管の遠位部上に設置され、ベースライン血流データが、30分間収集される。静脈流の安定化に続いて、シルク(又は他の編んだ、未コーティングの)縫合糸(5又は6-0、テーパ針)が、閉塞されるエリアの遠位態様において、血管内腔の中心を通して経静脈的に通され、緩い結び目で固定される(参考文献#5参照)。この縫合糸の機能は、血塊用のアンカーとして働き、塞栓を防止することである。その後、流れを閉塞させるために、結紮糸が、血管の近位部と遠位部(血流計プローブに対して近位)に設置される。最終的に、血管の2cm又は3cmのセグメントが、結紮糸によって単離される。100U〜200Uウシトロンビンが、第1の結紮糸の近位の約1mmの空間内に経静脈的に(27g〜30g針)投与される。近位結紮糸は、トロンビン針の引き抜き直後に設置される。針のエントリ部位は、溶解手法中の出血を防止するために、Vetbond(登録商標)の小滴で閉鎖される。血塊は、30分間、成熟し安定化することを許容され、その時点で、結紮糸が除去され、tPA又は(上述した)tPAと磁性ナノ粒子との結合体が、静脈の順方向態様で注入される(27g〜30g針、エントリ穴はここでもVetbond(登録商標)でシールされる)。動的磁場が、その場所に印加され、血塊の溶解が、超音波流速計測によって最大3時間の間、連続して監視される。流れの再確立に続いて、動物は、ペントバルビタールの静脈内過剰用量(150mpk)によって依然として麻酔下にある間に安楽死させられる。実験的血管セグメント及び残留血塊は、その後、収集され、重さを量られ、更なる分析のために定着される。血管内障害モデルで使用されるtPAの投与量は、約312.5U〜約5000Uの範囲である。
【0172】
グループ:調査は、2つのフェーズ、すなわち、パイロット及び概念の証明で遂行される。両方のフェーズは、本明細書で概説した手法を含むが、パイロットフェースは、左頸静脈だけを利用し、他の頸静脈をナイーブな組織比較器(naive histological comparator)に残した。
【0173】
パイロットグループ
1.トロンビンだけ、tPAなし。このグループは、本発明者らの血栓のベースライン質量を確立し、血栓安定性の評価を可能にすることになる。n=30。
【0174】
2.tPAだけ、完全に効き目がある用量(100%再挿管(re-cannulation))を確立するための用量範囲n=6×3用量=18。
【0175】
3.tPAだけ、最適以下の用量(被験体の25〜50%において100%有効、又は、流量が25〜50%に過ぎないが、全ての被験体において再挿管(re-cannulation))を確立するための用量範囲。tPAが、著しく変動するため、最適以下の用量は、見出すのが難しい場合がある。n=3×4用量=12
【0176】
デバイスだけ、最適粒子濃度を確立するn=3×3濃度=9
【0177】
概念の証明グループ
注記:「n」数値は、初期データ品質に応じてパイロットデータと組合せることができ、さらに、動物の要件を低減する。
【0178】
1.最適tPA。n=6
【0179】
2.最適以下tPA。n=6
【0180】
3.デバイスだけ。n=6
【0181】
4.デバイス+最適tPA。n=6
【0182】
5.デバイス+最適以下tPA。n=6
【0183】
2つの問いに、本血管内障害モデルを使用して答え得る。
【0184】
小さな血管:頸静脈における血栓症手法の完了に続いて、麻酔の外科的平面が継続され、開腹術が実施される。腸の一部分が、露出され、乾燥を防止するために、食塩水内に入れられる。腸間膜内の大きな静脈のうちの1つの静脈が、切離され、PE10を用いてカニューレ挿入される。鉄粒子及び蛍光(100ul中に12.5mg/ml)の混合物が、注入され、ブラックライト下で写真撮影される。これは、腸を囲む微小静脈内に蛍光が拡散するかどうかについての判定を可能にし、起磁性ステーターシステムが小さな脈管系に磁性ナノ粒子を送ることを示す。
【0185】
安全性:起磁性ステーターシステムを使用して内皮ライニングに損傷が与えられるか?起磁性ステーターシステムが溶血を生成するか?本血管内障害モデルは、大静脈の検討によって判定を可能にする。頸静脈における血栓症手法の完了に続いて、麻酔の外科的平面が継続され、開腹術が実施される。大静脈の5cm〜6cmのセグメントが単離され、全ての分枝が切離される。血管は、切離され、PE10を用いてカニューレ挿入される。鉄ナノ粒子(100μl中に12.5mg/ml)又は食塩水(100μl)のいずれかが、血管内に注入され、3時間、磁気的に制御される。3時間の終わりに、血液が、静脈穿刺によって血管セグメントから除去され、溶血の評価のために送られ、安楽死の後に、血管セグメントが、内皮の組織学的評価のために外植される。3つの実験が粒子がある状態で実施され、3つの実験が粒子なしの状態で実施される。
【0186】
動脈アクセス
上述したDVTモデルを使用して、起磁性ステーターシステムが、このウサギモデルにおいてtPA効力を著しく増大させることが説明された。図29及び図30を参照されたい。組織学的に評価された組織が集められた。組織学的に検査されると、組織に対する損傷は全く観察されない。
【0187】
他の実施形態
上記で述べた詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。しかし、本明細書で述べられ特許請求される本発明は、本明細書で開示される特定の実施形態によって範囲が制限されない。その理由は、これらの実施形態が、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるからである。任意の均等な実施形態が、本発明の範囲内にあることを意図される。実際には、本明細書で示し述べる変更以外の本発明の種々の変更が、先の説明から当業者に明らかになり、それらは本発明の発見の趣旨及び範囲から逸脱しない。こうした変更はまた、添付の特許請求項の範囲内に入ることを意図される。
【0188】
引用した参考文献
本明細書の参考文献の引用は、参考文献が本発明に対する従来技術であるという承認として解釈されないものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔に設置した磁場発生用ステーターを使用する、循環系内での自由磁性ローターの物理的操作のためのシステムに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2009年11月2日に出願された米国仮出願第61/280,321号からの優先権を主張する。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
該当せず。
【背景技術】
【0004】
脳の血管及び四肢の血管内の血管閉塞を含む循環系の流体障害の処置は、障害を溶解することができる薬物、及び、障害除去デバイス、例えば血栓除去デバイスの使用を含んできた。しかし、こうした薬物の副作用は、制御するのが難しく、また、こうした障害除去デバイスは、意図しない又は2次的な組織損傷を生じる侵襲的手法を必要とすることが多い。通常の投与量での薬物の使用及び血栓除去デバイスの使用はともに、死をもたらす可能性がある。
【0005】
磁性流体の管理は、かなりの注意と努力が払われたが、医療における成功が限られている分野である。教科書「Ferrohydro-Dynamics」(R.E.Rosensweig, Dover Publications, New York, 1985)は、流体内の磁性粒子の物理についての有用なバックグラウンドを提供するが、医療における応用を事実上全くカバーしていない。医療分野において、磁気力は、動脈内でカテーテル及びガイドワイヤを操作しナビゲートするための商業的に使用されている(例えば、Stereotaxis, Inc.(ミズーリ州セントルイス所在)及びMagnetec, Inc.(カルフォルニア州サンタモニカ所在))。しかし、こうした侵襲的技法は、上述したように意図しない又は2次的な組織損傷を生じ得る。さらに、非常に低い周波数の回転磁場が、磁気的にイネーブルされる胃腸の「pillcam」をナビゲートし、配向させるために使用されてきた。磁性ナノ粒子の使用が、循環系において磁気共鳴撮像コントラスト強調、組織修復、イムノアッセイ、生物学的流体の解毒、ハイパーサーミア、薬物送達、及び細胞分離について提案されてきたが、これらの使用は、こうしたナノ粒子の磁気モーメントが小さいため、低血流又は完全遮断のエリアにおける薬物の標的化送達の困難さを克服することができていない。他の事例では、磁性ナノ粒子は、循環系内の或る特定の細胞タイプ又は閉塞に特異的に結合する抗体等の化合物に共役されてきたが、低血流又は遮断された循環系におけるこうした標的化方法の使用は成功していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とされるものは、薬物送達の安全性を高め、侵襲的な外科的エントリの使用を低減することによって流体障害を処置する新しいデバイス及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
治療システムであって、(a)循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、(b)前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備える、治療システムが提供される。本治療システムを用いると、前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加する。種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができ、他の態様では、前記磁性ローターから分離して前記循環系に投与することができる。或る特定の場合には、前記医薬組成物は、血栓溶解薬とすることができる。
【0008】
本システムの治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体閉塞を含むことができる。種々の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0009】
種々の実施の形態では、本治療システムは、モーターに結合した永久磁石を備え、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記治療標的に対して、前記磁石を有効周波数で回転させる。種々の実施の形態では、本治療システムは、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石を備え、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0010】
本治療システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、それによって、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記治療標的を取り除くように前記磁性ローターを制御する。種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。種々の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。
【0011】
本発明の種々の態様では、前記磁性ローターは、反復的に、a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動(walking end over end)すること、及び、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れること、によって、円運動で前記流体を横断する。
【0012】
更に別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、前記流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、前記治療標的に対して前記磁場を位置決めし回転させて、前記磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、前記治療標的に接触し、前記治療標的を貫通して又は前記治療標的の周りで流体流を増加させるように前記回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーとを備える治療システムが提供される。種々の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系とすることができる。種々の態様では、前記磁性ツールは、安定化ロッドに結合させることができ、前記磁性ツールは、前記回転する磁場に応じて前記安定化ロッドの回りを回転する。更に別の態様では、前記磁性ツールは、前記治療標的に係合し前記治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含むことができる。別の態様では、前記コントローラーは、前記治療標的上の標的点に前記磁性ツールを位置決めし、前記治療標的を切り崩すのに十分な周波数で前記磁性ツールを回転させる。前記磁石は、該磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めすることができ、前記磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって前記治療標的に向かって押される。別の態様では、前記磁石は、前記磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、前記磁性ツールは、前記磁石の引力によって前記治療標的に向かって引っぱられる。
【0013】
別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるシステムであって、前記流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、前記流体内の前記磁性ローター及び前記治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、前記ユーザーからの命令に応答して、a)前記治療標的に隣接して前記磁性ローターを位置決めし、b)前記治療標的に対して前記磁性ローターの角度配向を調整し、c)前記磁性ローターを回転させ、前記流体を通って前記磁性ローターを円運動で横断させ、前記流体を混合し、前記治療標的を実質的に取り除くように前記磁場を制御するコントローラーと、を備えるシステムが提供される。
【0014】
種々の態様では、前記ディスプレイは、前記磁性ローター及び前記治療標的のリアルタイムビデオを表示することができ、前記ディスプレイは、前記磁場の回転面を示すグラフィック及び前記磁場の引力を示す別のグラフィックを前記リアルタイムビデオ上に重ね合わせることができる。別の態様では、前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、ユーザーが、前記治療標的に対する前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含むことができる。
【0015】
別の態様では、前記ディスプレイは、前記遠隔制御デバイスを通じて前記ユーザーによって与えられる命令に応答して前記グラフィックを調整することができる。種々の態様では、前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別するために画像処理を実施することができ、前記可動アームを自動的に操作して、前記治療標的を取り除くように、前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する。
【0016】
更に別の態様では、前記磁性ローターは、前記磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成することができる。別の態様では、前記流体は、血液と血栓溶解薬との混合物とすることができ、前記血液及び前記血栓溶解薬は、前記磁性ローターの円運動によって混合されて、前記治療標的を侵食し、取り除く。更に別の態様では、前記磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、前記治療標的を含む低流量の血管へ前記血栓溶解薬を向け直すことができる。
【0017】
循環系内の流体流を増加させる方法であって、(a)前記流体流の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法も提供される。
【0018】
種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができる。別の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、前記医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0019】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0020】
更に別の態様では、前記磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、前記磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、前記有効距離、前記有効平面に前記電磁石を位置決めすることができ、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0021】
本方法の前記システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する。
【0022】
種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、前記治療標的は、静脈二弁(vein bivalve)の完全な又は部分的な遮断物である。更に別の態様では、前記磁性ローターは、反復して、a)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れて前記血管に沿って転倒型回転移動することと、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場に向かって前記流体を通して戻るように流れることによって、円運動で前記流体を通して横断する。
【0023】
種々の態様では、前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞又は前記患者の脚内の血管閉塞である。
【0024】
更に別の実施の形態では、循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、(a)前記薬物の拡散の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、前記循環系内での前記治療標的における前記医薬組成物の拡散が増加する、方法が提供される。
【0025】
種々の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着させることができる。他の態様では、前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の前記循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、前記医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0026】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、前記循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0027】
更に別の態様では、前記磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、前記磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、前記コントローラーは、前記治療標的に対して、前記有効距離、前記有効平面に前記電磁石を位置決めすることができ、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる。
【0028】
本方法の前記システムは、前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する。
【0029】
種々の態様では、前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である。更に別の態様では、前記磁性ローターは、反復的に、a)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場から離れて前記血管に沿って転倒型回転移動することと、b)前記ローターの回転及び前記磁場の引力に応答して前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れることと、によって、円運動で前記流体を横断する。
【0030】
種々の態様では、前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞又は前記患者の脚内の血管閉塞である。
【0031】
本教示のこれらの特徴、態様及び利点並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、例、及び添付の特許請求の範囲を参照してよりよく理解される。
【0032】
以下で述べる図面は、例証だけのためのものであることを当業者は理解するであろう。図面は、本教示の範囲を多少なりとも制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】磁石のN極−S極がシステムの前面に平行な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図1B】磁石のN極−S極がシステムの前面に平行な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図2】図1の磁石システムが取付けられる可搬型ポジショナーカートを示す図である。
【図3】その磁石のN極−S極がシステムの前面に垂直な平面内で回転し、単一モーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図4A】任意の平面内で磁石が回転することを可能にする、2つのモーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図4B】任意の平面内で磁石が回転することを可能にする、2つのモーターによって駆動される永久磁石ステーターシステムの例を示す図(図4Aの断面図)である。
【図5】アーム位置に取付けられた、電源を有する3つの永久磁石ステーターシステムの例を示す図である。
【図6A】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図6B】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図6C】磁石ステーターシステム用のユーザー制御インターフェースの例を示す図である。
【図7】磁性ローターの無線制御のために、ユーザーが空間内の磁場の回転を規定することを可能にするアルゴリズム例を示す図である。
【図8A】運動を生成するための磁性粒子の操作を示す図である。
【図8B】回転を生成するための磁性粒子に対する磁場の作用を詳述する図である。
【図8C】流れパターンを生成するための流体充填格納容器の内部の磁性粒子分布の磁気的操作を示す図である。
【図8D】血塊に対する血塊破壊薬(clot-busting drugs)の作用を増幅するための磁性粒子分布の磁気的操作を示す図である。
【図9】血管閉塞を横切るための磁石の操作を示す図である。
【図10A】脳内の血管閉塞の処置のための起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子の使用を示す図である。
【図10B】脳内の血管閉塞の処置のための起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子の使用を示す図である。
【図11A】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、血管内に薬物が存在しないことを示す図である。
【図11B】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、系に対して薬物(灰色)が付加されるが、遮断部位で混合することができないことを示す図である。
【図11C】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、系に対して磁性ナノ粒子が付加され、磁石(図示せず)によって遮断部位に引き込まれることを示す図である。
【図11D】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、遮断部位に近づき接触するように、時間依存方式で磁場及び勾配を印加し、薬物を混合することによって乱流が生成されることを示す図である。
【図11E】流体流がない完全遮断エリアにおける医薬化合物の拡散を高めるためのモデルにおいて、磁性ナノ粒子を使用した混合による、薬物の拡散の終了及び遮断部位における接触を示す図である。
【図12】本発明の第1の好ましい実施形態である磁性システムの図である。
【図13】本発明の第2の好ましい実施形態である磁性システムの図である。
【図14A】従来の処置の下での、流れがない遮断された管腔の代表的な標的領域を示す断面図である。
【図14B】血流はあるが、標準的な薬物送達を使用して薬物除去が効果的でない標的領域の断面図である。
【図15A】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ゼロ磁場における未編成ナノ粒子を示す図である。
【図15B】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ナノ粒子に印加された小さな磁場及び「ロッド」への編成を示す図である。
【図15C】本発明を用いた手法において使用されるロッドを生成するための磁性ナノ粒子の手配された構造化において、ナノ粒子に印加された大きな磁場を示す図である。
【図16】制限長を示す、印加磁場の関数としてのナノ粒子凝集ロッド長のプロットである。
【図17】磁性粒子の並進をもたらす転倒型回転(end over end)運動のシーケンスの図である。
【図18A】磁性粒子の蓄積をもたらす回転運動の結果としての、密度が増加した粒子の特徴的な飽和を示す図である。
【図19A】本発明のナノ粒子ロッドに対して磁気トルクをもたらす要素及び磁場の物理的性質の導出をサポートする図である。
【図19B】本発明のナノ粒子ロッドに対して磁気トルクをもたらす要素及び磁場の物理的性質の導出をサポートする図である。
【図19C】ロッドの回転周波数の関数としての運動エネルギーの分布を示す図である。
【図20A】図14Aに示す閉塞問題を処置するための、流れがない血管内での回転ロッドによる乱流の導入を示す図である。
【図20B】図14Bに示す閉塞された流れカテゴリにおける、乱流の導入のための本発明による薬物送達の運動及び効果を示す図である。
【図21A】円運動状態にある回転ロッドの群が血管内の完全閉塞に衝突している断面図である。
【図21B】ロッドの回転がボールを形成し始める断面図である。
【図21C】ロッドの回転するボール及び遮断された静脈が完全に開口されている血塊物質の断面図である。
【図21D】図10Cのボールがガイドワイヤ上の小型磁石によって除去される断面図である。
【図22】血管内の弁尖上の閉塞物質を安全に除去するために、回転する磁性キャリアが薬物を塗布する血管の断面図である。
【図23】複雑な血管における、遠方の血塊に至る経路に沿う、磁性ロッドの「移動(walk)」の転倒型回転運動の結果を示す図である。
【図24A】球として示す磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの運動の生成において、磁場も勾配も印加されない図を示す。
【図24B】球として示す磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの運動の生成において、磁場及び勾配が印加されて、球が横方向に横断させられる図を示す。
【図25A】円運動状態の回転する磁気的にイネーブルされる血栓除去球が血管内の完全閉塞に衝突している断面図である。
【図25B】磁気的にイネーブルされる血栓除去球が閉塞の表面を磨滅させる断面図である。
【図25C】磁気的にイネーブルされる血栓除去球が、遮断された静脈を完全に開口した断面図である。
【図25D】磁気的にイネーブルされる血栓除去球がガイドワイヤ上の小型磁石によって取り除かれる断面図である。
【図26A】紐付きの磁気的にイネーブルされる血栓除去球が、遮断された静脈を完全に開口した断面図である。
【図26B】磁石の回転軸に沿って延びる紐の実施形態を示す図である。
【図26C】磁石の回転軸の回りにループする紐の第2の実施形態を示す図である。
【図27】円運動状態の磁気的にイネーブルされる血栓除去球が血管壁上のプラークに衝突している断面図である。
【図28A】撮像技術によって撮像された、複雑な血管における、遠くの血塊に至る経路に沿う磁性ロッド又は磁性ボールのくるくる回転運動の「移動」の結果を示す図である。
【図28B】図28Aで行った測定に基づいて経路を再形成できることを示す図である。
【図29A】起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子を使用した、ウサギの静脈の血栓症の除去を示す図である。
【図29B】起磁性ステーターシステム及び磁性ナノ粒子を使用した、ウサギの静脈の血栓の除去を示す図である。
【図30】起磁性ステーターシステムを使用した、tPAの用量反応曲線を示す図であり、ウサギの血流を増加させるための時間の減少を示すとともに、同じ結果を生成するために必要とされるtPA量の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
省略形及び定義
別途規定しない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別途要求されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書で述べる医薬品化学及び製薬化学の実験室手順及び技法に関連して利用される専門語は、よく知られており、また、当技術分野で一般的に使用されている。標準的な技法は、医薬品の調製、製剤、及び送達、並びに患者の処置のために使用される。本明細書の他の化学用語は、McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S., Ed, McGraw-Hill, San Francisco(1985))によって例示されるように、当技術分野の慣例的な使用に従って使用される。本明細書の磁性ナノ粒子動態に関する他の用語は、教科書Ferrohydro-Dynamics(R.E. Rosensweig, Dover Publications, New York,(1985))に例示されるように、当技術分野の慣例的な使用に従って使用される。
【0035】
本開示に従って利用されるとき、以下の用語は、別途指示しない限り、以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0036】
患者:本明細書で使用されるとき、患者という用語は、ヒト及び獣医学の被験体を含む。
【0037】
血栓溶解薬:本明細書で使用されるとき、「血栓溶解薬(thrombolytic drug)」は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組み換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、及び、血塊又は動脈硬化性プラークを分解することが可能な他の薬物を含む。「血栓溶解薬」という用語は、単独で、又は、ワルファリン及び/若しくはヘパリンと同時投与される、上記薬物を含む。
【0038】
磁性ナノ粒子:本明細書で使用されるとき、「磁性ナノ粒子(magnetic nanoparticle)」という用語は、約10nm〜約200nm、約15nm〜約150nm、約20nm〜約60nm、並びに、1と1000との間の全ての整数、例えば1、2、3、4、5、...997、998、999、及び1000を含む、約1nmと約1000nmとの間の直径を有するコーティング済みの又は未コーティングの金属粒子を指す。当業者は、系の治療標的に応じて磁性ナノ粒子の適切なサイズを確定することができる。例えば、微小血管は、小さなナノ粒子を受容でき、循環系の大きな部分は、大きなナノ粒子を受容できる。こうした磁性粒子の例は、超常磁性酸化鉄ナノ粒子を含む。粒子は、磁鉄鉱で作られ、任意選択で、以下の物質のうちの任意の1つ又は組合せでコーティングすることができる。以下の物質とは、(1)粒子を親水性又は疎水性にすることによって血液内での粒子の挙動を高める被膜、(2)磁性粒子の磁気相互作用及び挙動を最適化する粒子を緩衝する被膜、(3)磁気共鳴撮像、X線、陽電子放射断層撮影(PET)、又は超音波技術による可視化を可能にする単数又は複数の造影剤、(4)循環系遮断物の破壊を加速する薬物、及び、(5)血栓溶解薬である。コーティング済み磁性ナノ粒子及び未コーティング磁性ナノ粒子の両方の例並びにこうした磁性ナノ粒子を作る方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,543,158号、第5,665,277号、第7,052,777号、第7,329,638号、第7,459,145号、及び第7,524,630号に記載されている。Gupta他のBiomaterials, Volume 26, Issue 18, June 2005, pages3995-4021も参照されたい。本発明で使用するための磁気的特性を保持しながら、本発明で有用な磁性粒子に含まれ得る特徴の多くの他の組合せを、当業者は認識するであろう。
【0039】
流体障害:本明細書で使用されるとき、「流体障害」という用語は、静脈系、動脈系、中枢神経系、及びリンパ系を含む、循環系を通して流体の正常な流れを、部分的か又は完全に妨げる遮断物を意味する。血管閉塞は、動脈硬化性プラーク、脂肪蓄積、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、他の血液凝固物、及び微小血管を含むが、それに限定されない流体障害である。時として、流体障害は、一般的に、「血塊(clots)」と呼ばれる。
【0040】
実質的に取り除く:本明細書で使用されるとき、「実質的に取り除く」という用語は、 循環系を通した流体の流れの増加をもたらす、流体障害の全て又は一部の除去を意味す る。例えば、血液が血栓を貫通して又は血栓の周りに流れることができるように、静脈 を遮断する血栓を貫通して又は血栓の周りに通路を作ることは、静脈を「実質的に取り 除く」。
【0041】
微小血管:本明細書で使用されるとき、「微小血管(very small vessel)」という用語は、約1μm〜約10μmの直径を有する循環系流体通路を意味する。
【0042】
増加した流体流:本明細書で使用されるとき、「増加した流体流」という用語は、ゼロからゼロより大きな或る値までの、遮断された循環系のスループットの増加を意味する。循環系を流れるとき、「増加した流体流」という用語は、患者内への磁性ナノ粒子の投与前のレベルから、元の流体流レベルより高いレベルへの、スループットの増加を意味する。
【0043】
凝集:本明細書で使用されるとき、「凝集」という用語は、図15に関して本明細書で述べるように、磁性ナノ粒子から「ロッド(rod)」が生じるような、個々の磁性ローターの群の回転クラスタリング又はチェーニングを意味する。こうした回転ローターの群は、それぞれの個々のローターが、全体的に、同時に回転し、群として同じ方向に進むアンサンブルを形成する。磁場及び勾配の組合せを所定期間にわたって印加することが、ロッドを組立てる方法である。こうした群は、単独で作用する個々のローターから予想することができるものと異なる特性を含み、また、流体ストリーム又は静止流体内に流体力を生成して、流体ストリーム又は静止流体内に乱流を生成するか又は組成物若しくは液体の拡散を高める。
【0044】
処置:本明細書で使用されるとき、「処置」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法である。本発明において、有益な又は所望の臨床結果は、以下のもののうちの1つ又は複数を含むが、それに限定されない。以下のものとは、限定はしないが、流体障害(例えば、脳卒中、深部静脈血栓)、冠状動脈疾患、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化、及び高血圧を含む循環系内の流体障害のあらゆる態様の改善及び軽減である。
【0045】
薬物、化合物、又は医薬組成物:本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」、「化合物」、又は「薬物」という用語は、患者に適切に投与されるときに所望の治療効果、例えば血栓又は動脈硬化性プラークの酵素的分解を誘発することが可能な化合物又は化学組成物を指す。
【0046】
有効量:薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効量」は、循環系流体遮断の改善又は低減等の臨床結果を含む有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。本発明の目的からすると、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、頭部及び四肢の血管閉塞を含む、循環系内の流体遮断を処置(改善、発生率の減少、遅延、及び/又は防止を含む)するのに十分な量である。薬物の有効量は、患者に投与されるために処方されたコーティング済みの又は未コーティングの磁性ナノ粒子を含む。有効量は、血栓溶解薬等の薬物、化合物、又は医薬組成物も含むことができる。そのため、「有効量」は、1つ又は複数の治療薬を投与することに関連して考えることができ、単一の薬剤は、1つ又は複数の他の薬剤と連携して、所望の結果とすることができるか又は所望の結果が達成される場合に、有効量で与えられると考えることができる。
【0047】
発生率の減少:本明細書で使用されるとき、循環系内の流体遮断の「発生率の減少」という用語は、深刻さの減少(例えばtPAを含む、これらの条件について一般的に使用される薬物及び/又は治療についての必要性の減少及び/又はその量(例えば、暴露)の減少)、継続期間の減少、及び/又は頻度の減少(例えば、循環系遮断の症状を示すまでの時間の遅延又は増加を含む)のうちの任意のものを意味する。当業者によって理解されるように、個人個人は、処置に対してその人の反応が変動する場合があり、したがって例えば、或る患者における「流体遮断の発生率を減少させる方法」は、有効量の投与が、その特定の個人における発生率のそうした減少をもたらす可能性があるという合理的な予想に基づいて、薬物、化合物、又は医薬組成物と組合せるか否かによらず、有効量の磁性ナノ粒子を投与することを反映する。
【0048】
改善させる:本明細書で使用されるとき、循環系遮断の1つ又は複数の症状を「改善させる」という用語は、本明細書で述べるシステムを使用して、薬物、化合物、又は医薬組成物と組合せるか否かによらず、磁性ナノ粒子を投与しないことと比較して、循環系遮断の1つ又は複数の症状の減少又は改善を意味する。「改善させる」は、症状の継続期間の短縮又は減少も含む。
【0049】
遅延させる:本明細書で使用されるとき、循環系遮断に関連する症状の進展を「遅延させる」ことは、関連症状の進行を引き延ばす、妨げる、遅くする、遅らせる、安定化させる、かつ/又は、延期させることを意味する。この遅延は、処置される疾患及び/又は個人の履歴に応じて、様々な時間長とすることができる。当業者に明らかであるように、十分な又は有意な遅延は、循環系遮断に関連する症状を個人が進展させない点で防止を包含することができる。症状の進展を「遅延させる」方法は、その方法を使用しない場合と比較したときに、所与の時間枠内に症状が進展する確率を減少させる、かつ/又は、所与の時間枠内に症状の程度を減少させる方法である。こうした比較は、通常、統計的に有意な数の被験体を使用する臨床研究に基づく。
【0050】
薬学的に許容可能なキャリア:本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能なキャリア」は、磁性ナノ粒子及び/又は有効成分と組合せた場合、被験体の免疫系と非反応性であり、有効成分が生物活性を保持することを可能にする任意の物質を含む。例として、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、オイル/水乳剤等の乳剤、及び種々のタイプの湿潤剤等の標準的な薬学的キャリアのいずれもが含まれるが、それらに限定されない。非経口投与用の例示的な希釈液は、リン酸緩衝食塩水又は通常の(0.9%)生理的食塩水である。こうしたキャリアを含む組成物は、よく知られている従来の方法で処方される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990及びRemington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing, 2000を参照)。
【0051】
薬学的に許容可能な:本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、動物での使用、またより詳細にはヒト及び/又はヒトでない哺乳類での使用について安全である他の製剤に加えて、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は、米国薬局方、他の一般的に認められた薬局方に収載されていることを意味する。
【0052】
起磁性ステーターシステム及び磁性ローターの無線制御のための方法
本発明は、遠隔に設置した磁場発生用ステーターを使用する、自由磁性ローターの物理的操作のためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、循環系の流体流の増加及び流体遮断の実質的な除去をもたらすことができる、循環系内の治療標的と医薬化合物との接触を増加させるための磁性ナノ粒子の制御に関する。種々の態様において、システムは、血栓溶解薬の拡散を高め、永久磁石ベースステーター供給源又は電磁場発生用ステーター供給源を使用する。磁場及び勾配は、患者内の血管閉塞を含む循環系遮断を低減するために、磁性ナノ粒子凝集体及び磁性血栓除去デバイスに作用するために使用される。種々の態様において、本発明のシステム及び方法は、身体の頭部(特に、脳)内の又は腕及び脚の脈管系等の四肢内の循環系の流体遮断を処置するために使用することができる。
【0053】
本発明は、使用される血栓溶解薬の機械的に増強される溶解プロセスと組合せた、流体遮断に作用する磁性粒子及び/又は磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスによって生成される、磁気的に生成されるスカーリング(scouring)プロセスからなる。磁気的作用は、外部供給源からの回転磁場から得られ、その外部供給源はまた、回転しない引張る磁場勾配を提供する。これは、一般的にその場所の機械的侵襲なしで、循環系遮断に力及び作用を提供する。本発明のシステム及び方法は、標的の循環系遮断との薬物相互作用を著しく増加させ、残留物を残す可能性があるが、この残留物は、磁気的に収集することができ、また、プロセス中に静脈壁又は弁を損傷することもない。本発明の別の特徴は、除去される残留物実質的に全てが、ガイドワイヤの先端上の小さな磁石によって容易に捕捉することができるナノ粒子を用いて小さな軟質クランプを形成するように薬物及び撹拌の条件を使用することができることである。これらの品質を達成するために、本発明は、磁性ナノ粒子又は磁気的にイネーブルされる流体遮断除去デバイスに作用するために、指向性磁場勾配と組合せて回転磁場を使用する。
【0054】
一態様では、回転磁場は、標的部位で磁場を回転させ、同時に、所望の方向に定常磁場勾配を呈する、或る配向を有する強力永久磁石を機械的に回転させることによって生成される。別の態様では、2つ以上の磁性コイルを、勾配を有する回転磁場を提供するために適切に位相調整しながら使用することができる。3つ以上のコイルが使用されるとき、少なくとも2つのコイルは、更なる磁気空間特徴及びタイミング特徴を提供するために、互いに関して或る垂直な成分を有する軸を有することができる。例えば、2つのコイルは、垂直軸を有することができ、一方のコイルは、標的位置で回転磁場を生成するために、90度だけ他方のコイルに遅れる電流を使用することができる。第3のコイルは、標的部位における適切な勾配及び変調等の独立した機能を提供するように配置し配向することができる。
【0055】
電流の電子制御によって、磁場及び勾配の幅広いアレイを、多数の時間関連イベントによって適用することができる。勾配を有する基本回転磁場がナノ粒子のスラリに印加される結果として、非常に特殊なタイプのグループ化の配置構成、すなわち、本発明のシステム及び方法において、長さが約2mm以下の整列したロッドを磁性ナノ粒子に形成させる磁性ナノ粒子の「凝集体(agglomeration)」が提供される。
【0056】
約0.4テスラ/メートルの勾配と組合せた、標的部位における約0.02テスラの磁場は、磁性ナノ粒子の所望の凝集体−長さがほぼ1〜2ミリメートルに変動する分離したナノ粒子ロッドを生成することになる。これらの凝集は、生体外(インビトロ)及びインビボ(生体内)で大部分は完全のままであるが、回転すると、「ソフトブラッシング」を提供するのに十分に可撓性がある。回転すると、これらのロッドが、血管内の表面に沿って「移動し」、血液凝固物等の流体遮断に接触すると、血栓溶解薬の助けを借りて、血塊物質の微小粒子を除去することが観察された。ロッドは、幾つかの場合には、有意なサイズの残留成分なしで、血塊物質の破片を連続して軽く「スクラブする」。他の場合には、障害のタイプ及び場所に応じて、残留物が、軟質の小さな磁性ボールになるように、血栓溶解薬の送達のタイミングをとることができる。軟質の小さな磁性ボールは、磁気的に捕捉及び除去することができる。超音波及び他の撮像技術を、こうしたスクラビングの進行を可視化するために使用することができる。例えば、経頭蓋超音波を、頭蓋塞栓又は脳卒中において血塊破壊を視覚的に確認するために使用することができる。磁性ナノ粒子の可視化を高める造影剤及び他の薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。
【0057】
同じ回転磁場及び勾配装置を使用して、標的部位において0.4テスラ/メートルの勾配を有する0.02テスラの同様な磁場が、直径が約1.5mmの小さな磁性ボールの回転に対する精密制御を可能にすることが観察された。磁場勾配の適切な整列によって、血管をナビゲートし、遮断における薬物混合を増加させるためのボールに似た構造を作製できることが分かった。同様に、血栓溶解薬及び/又は表面特徴を含む被膜を、遮断の破壊を増大させるために添加することができる。
【0058】
このプロセスの数値的詳細は、循環系遮断の特定の性質、血栓溶解薬、磁気的にイネールルされる血栓除去デバイスの設計に応じて変動し得る。回転周波数(約3Hz〜約10Hzを含む約1Hz〜約30Hz)は、全体が約1立方フィートの容積の磁石(約0.01テスラ〜約0.1テスラ)又は幾分大きな容積を有するコイルによって生成できる磁場の大きさの範囲に関して有効である。勾配強度は、約0.01テスラ/mから約5テスラ/mの範囲とすることができる。勾配方向は、永久磁石の場合、一般的に質量中心に集中し、電磁石を使用すると、コイルのうちの1つに集中させることができ、組合せると、1つ又は複数のコイルの間に集中させることができる。
【0059】
循環系の流体遮断
循環系の流体遮断が起こる身体の部分は、脚及び脳を含む。こうした遮断の2つの主要な流体力学特性、すなわち、低い血流又は完全遮断が、脈管系内で観察される。いずれの場合も、閉塞を表面において溶解するための薬物の送達、又は、例えば血栓物質の機械的除去の既存のモードは、下層との新たな薬物相互作用を可能にするために除去されるべき血塊表面上の分解されて邪魔をしている層を効果的に取り除けない。これは、多くの場合、危険な成分が下流に移動することをもたらし、この結果、より危険な遮断又は死をもたらす可能性がある。典型的な流れ状況では、流れが、効果的に、意図される部位に貫入もせず意図される部位を標的にもしない場所が存在する。他の状況では、閉塞した血管の3次元形状の小ささ(例えば、微小血管)又は複雑さのために、血栓除去デバイスを標的にナビゲートすることが可能でない。
【0060】
様々な血栓溶解薬が、血栓溶解プロセスにおいて使用されてきた。例えば、ストレプトキナーゼは、心筋梗塞及び肺塞栓症の幾つかの症例に使用される。ウロキナーゼは、重篤な又は大規模で深い静脈血栓、肺塞栓症、心筋梗塞を処置するときに、及び閉塞静脈内挿管又は透析挿管時に使用されている。組織プラスミノーゲン活性化因子(「tPA」又は「PLAT」)は、脳卒中を処置するために臨床的に使用される。レテプラーゼは、心臓発作を引起す閉塞を粉砕することによって心臓発作を処置するために使用される。血栓除去デバイスの場合、製品は、数社で製造され、機械的抽出(Arrow International,Inc.、Edward Lifesciences)、ベンチュリジェットベース機構(Boston Scientific,Possis Medical,Inc.)、低電力音響(OmniSonics Medical Technologies,Inc.)、並びに、アブレーション及び吸引(ev3)を含む、或る範囲の技術を使用する。
【0061】
脳卒中の場合、tPAの使用が、多くの症例で成功しているが、多くの症例において、薬物の影響で、更なる遮断及び時には死をもたらすのに十分な大きさのクランプで、下流の残留物が残る。さらに、患者に投与される通常の血栓溶解投与量は、脳内の出血の増加に関連している。ほとんどの症例で、血栓溶解薬と遮断物との化学的相互作用の効果は、ゆっくりでかつ非効率的であり、遮断物の除去は不完全なままになる。四肢の遮断では、薬物を撹拌し誘導する機械的手段は、制限され、しばしば難しく、危険であり得る。別の難しい問題では、手法の領域内の静脈弁が、損傷されるか、又は、現在のところ使用される手法では遮断なしの状態にされない。本発明は、血流の閉塞を処置するときのこれらの主要な障害を処理する際に著しい改善をもたらす新しいシステム及び方法を提供する。
【0062】
起磁性ステーターシステム
治療システムであって、(a)循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、(b)循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備える、治療システムが提供される。本治療システムを用いると、循環系内での治療標的と医薬組成物との接触が増加する。種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができ、他の態様では、磁性ローターから分離して循環系に投与することができる。或る特定の場合には、医薬組成物は、血栓溶解薬とすることができる。
【0063】
本システムの治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体閉塞を含むことができる。種々の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0064】
種々の実施の形態では、本治療システムは、モーターに結合した永久磁石を備え、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御し、治療標的に対して、磁石を有効周波数で回転させる。種々の実施の形態では、本治療システムは、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石を備え、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めし、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0065】
本治療システムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、それによって、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、治療標的を取り除くように磁性ローターを制御する。種々の態様では、治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。種々の態様では、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。
【0066】
本発明の種々の態様では、磁性ローターは、反復的に、a)該ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れるように血管に沿って転倒型回転移動(walking end over end)すること、及び、b)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場に向かって流体を通って戻るように流れること、によって、円運動で流体を横断する。
【0067】
種々の態様では、本システムを用いて処置される障害は、ヒトの血管内の血栓であり、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子によって形成される。本システムでは、磁性ローターは、反復的に、a)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れるように血管に沿って転倒型回転移動することと、b)ローターの回転及び磁場の引力に応答して磁場に向かって流体を通って戻るように流れることとによって、円運動で流体を横断することができる。
【0068】
別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるシステムであって、流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、流体内の磁性ローター及び治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、ユーザーからの命令に応答して、a)治療標的に隣接して磁性ローターを位置決めし、b)治療標的に対して磁性ローターの角度配向を調整し、c)磁性ローターを回転させ、流体を通って磁性ローターを円運動で横断させ、流体を混合し、治療標的を実質的に取り除くように磁場を制御するコントローラーと、を備えるシステムが提供される。
【0069】
種々の態様では、ディスプレイは、磁性ローター及び治療標的のリアルタイムビデオを表示することができ、ディスプレイは、磁場の回転面を示すグラフィック及び磁場の引力を示す別のグラフィックをリアルタイムビデオ上に重ね合わせることができる。別の態様では、磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、ユーザーが、治療標的に対する磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含むことができる。
【0070】
別の態様では、ディスプレイは、遠隔制御デバイスを通じてユーザーによって与えられる命令に応答してグラフィックを調整することができる。種々の態様では、磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別するために画像処理を実施することができ、可動アームを自動的に操作して、治療標的を取り除くように、磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する。
【0071】
更に別の態様では、磁性ローターは、磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成することができる。別の態様では、流体は、血液と血栓溶解薬との混合物とすることができ、血液及び血栓溶解薬は、磁性ローターの円運動によって混合されて、治療標的を侵食し、取り除く。更に別の態様では、磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、治療標的を含む低流量の血管へ血栓溶解薬を向け直すことができる。
【0072】
こうした起磁性ステーターシステムの一実施形態は、図1A(等角図)及び図1B(断面図)に示される。構成要素の動作は、このシステムについて示され、単一軸132の回りの回転を含む。永久磁石立方体102は、N磁極104及びS磁極106を有する。ここで示す永久磁石102の大きさは、各辺が3.5インチである。永久磁石102は、ネオジウム−ボロン−鉄磁性材料及びサマリウム−コバルト磁性材料を含む、幾つかの永久磁石材料で構成することができ、ずっと大きく又は小さく作ることができることに留意されたい。永久磁石120の形状は、立方体である必要はない。永久磁石材料の他の構成は、磁場及び勾配の態様が、強度及び方向の点で最適化されるように磁場を形作るときによりよい。他の実施形態では、永久磁石材料は、システムをよりコンパクトにするように構成することができる。永久磁石材料で構成される円柱は、1つのこうした例である。しかし、簡単な長方形及び立方体の幾何形状が、より安価である傾向がある。
【0073】
N極104及びS極106が存在する永久磁石102の面は、搭載プレート108に接着される又はその他の方法で締結される。搭載プレートは、磁性材料又は非磁性材料で構成することができる。任意選択で、磁性材料は、永久磁石材料の幾つかの構成について磁場を強くするために使用することができる。しかし、非磁性搭載プレートは、永久磁石102に固着するのがより容易である。
【0074】
この搭載プレート108は、第1の軸受け112及び第2の軸受け114を通過するフランジ110に取付けられ、軸受けはともに、軸受け搭載構造体116によって支持される。ほとんどの標準的な軸受けは、少なくとも部分的に磁性がある。これらの場合、フランジ110は、磁場がフランジ110から軸受け112及び114内に効率的に伝わらないことを保証するために、非磁性材料から構築されるべきである。このことが起こった場合、軸受け112及び114に対するフランジ110の磁気引力のために、軸受けがより大きな摩擦に遭遇することになる。
【0075】
フランジ110の端部は、ドライブモーター120に接続するカップリング118に接続される。モーターは、DCモーター又はACモーターとすることができる。サーボモーターによって、高い精度が可能であるが、これらのモーターは、よりコストがかかる傾向がある。幾つかの場合には、ほとんどのモーターが、通常、本発明で使用される磁性ローターの無線制御について所望されるより速く回転することを考えると、ステップダウンギアボックスが、所望の周波数で永久磁石102を回転させるために必要となる場合がある。
【0076】
ドライブモーター120は、ドライブモーター120をプラットフォーム124に固着するモーター支持構造体122に取付けられる。プラットフォーム124には、懸架アーム128に接続される懸架搭載ブラケット126(図1Bに示さないが位置する)が取付けられる。懸架アーム128は、アタッチメント継手130を有する。懸架アーム128は、磁石ステーターシステムの最良配置に応じて、頭上から、側面から、又は底部から懸架保持される。
【0077】
起磁性ステーターシステムの動作
起磁性ステーターシステム(図6に示す、602)は、図2に示すように可搬型支持ベース202の使用によって位置決めすることができる。所定場所になると、また、図6に示すように、コンピューターディスプレイ606及びユーザー制御ボタン608を有するコンピューター制御パネル604が、空間610内のユーザー定義点において磁気回転平面616の配向を指定するために使用される。磁場及び勾配は、物理空間610内で操作される。回転平面の法線ベクトル614が、制御ボタン608又は手持ち式コントローラー622を使用して、空間610内の点においてグローバル座標系612内でユーザーによって指定される。磁気回転平面616内には、コンピューターによって自動的に設定されることができる、磁場618の初期配向が存在する。ユーザーは、磁気回転平面616内で磁場回転の方向620を指定する。
【0078】
コンピュータープロセスが図7に示される。空間610内での点の識別は、アルゴリズムの702に対応する。同様に、回転平面の法線ベクトル614の指定は、アルゴリズムの704に対応する。右手座標系を使用して、磁場は、法線ベクトル614の回りに時計方向に回転する。コンピューターは、磁場の初期方向618を自動的に設定し、それは、コンピューターアルゴリズムにおいて706として示される。ユーザーは、磁気回転平面616内での磁場の回転周波数を設定する(708)。磁場勾配の強度が、計算され(710)磁場の強度も計算される(712)。これらのデータから、制御パラメーターが、磁石システムについて計算される(714)。永久磁石システムの場合、制御パラメーターは、ドライブモーター(複数の場合もあり)の回転速度に対応する。電磁石システムの場合、制御パラメーターは、時間的な電流の変化を記述する。計算されると、起磁性ステーターシステムがターンオンされる(716)。磁気回転平面616が変更されること(図7のステップ718に示す)が所望される場合、アルゴリズムは、回転平面の法線ベクトル614についての入力(アルゴリズムの704に対応する)にループする。
【0079】
図1Aの起磁性ステーターシステムが可搬型支持ベース202に取付けられると仮定すると、プラットフォーム124は、懸架アーム128に取付けられる懸架搭載ブラケット126を通してユーザーによって配向することができ、懸架アーム128はそれ自体、懸架アームアタッチメント継手130に取付けられる。懸架アームアタッチメント継手130は、可搬型支持ベース202に接続するアームポジショナーに接続する。懸架アームアタッチメント継手130は、アームポジショナーの端部の回りでの磁石システムの回転を可能にする。懸架アームアタッチメント継手130はまた、懸架アームアタッチメント継手130によって可能になる平面に垂直な平面内でプラットフォームベース124が回転することを可能にする。モーター支持構造体122を介してプラットフォームベース124に取付けられるモーター120は、所望の周波数で回転する。この運動は、ドライブカップリング118を介して搭載フランジ110に結合される。第1の軸受け112及び第2の軸受け114は、搭載フランジ110が平滑に回転することを可能にする。これらの軸受けは、軸受け搭載構造体116を介してプラットフォーム124に固着される。回転するフランジ110は、永久磁石102に取付けられる磁石搭載プレート108に強固に取付けられる。そのため、モーター120の回転は、永久磁石102に伝達される。永久磁石106の端部におけるN磁極104及びS磁極106の場所は、所望の磁場回転平面616をもたらす。この磁場回転平面616内で、磁場は、中心ドライブ軸132上に位置する全ての点について、磁石の前面に平行に回転する。
【0080】
身体内の磁性粒子の操作の場合、空間610内のユーザー定義点は、虚血性発作治療の場合、頭部624の内部とすることができ、そこで、磁性粒子は、血塊を迅速かつ安全に破壊するために操作される。同様に、空間610内のユーザー定義点は、深部静脈血栓治療の場合、脚626の内部とすることができ、そこで、磁性粒子は、血塊を迅速かつ安全に破壊するために操作される。
【0081】
磁性粒子操作の例において、粒子N磁極804及び粒子S磁極806を有する磁性粒子802は、粒子参照座標系808に対して、時計方向に回転する起磁的に生成される磁場812によって回転する。これは、時計方向回転角度810の方向への磁性粒子の回転をもたらす。磁場勾配814が印加され、表面816が存在すると、時計方向に回転する起磁的に生成される磁場812は、表面に対する牽引力をもたらし、右への並進818をもたらす。
【0082】
閉囲された領域822内に含まれる流体820の存在下で、磁性粒子の操作は、磁場勾配814と組合されると、循環流体運動824をもたらす。血液826を含む血管828内で血管遮断830を破壊するために使用されると、起磁的に生成される混合は、血塊破壊(血栓溶解)薬のよりよい混合をもたらす。これは、血栓溶解用量が、減少することを可能にし、それは、血栓溶解薬の高い用量に伴う出血を低減することによって、より安全な手法をもたらす。それはまた、血栓溶解プロセスを速める。
【0083】
したがって、循環系内の流体流を増加させる方法であって、(a)流体流の増加を必要としている患者の循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)患者に、循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)患者の循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、循環系内での治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法も提供される。
【0084】
種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができる。別の態様では、医薬組成物は、磁性ローターから分離して患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0085】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0086】
更に別の態様では、磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めすることができ、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0087】
本方法のシステムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、循環系内で治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように磁性ローターを制御する。
【0088】
種々の態様では、治療標的は、ヒトの血管内の血栓とすることができる。別の態様では、磁性ローターは、循環系に注入される磁性ナノ粒子とすることができる。特に、治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断である。更に別の態様では、磁性ローターは、反復して、a)ローターの回転及び磁場の引力に応じて磁場から離れて血管に沿って転倒型回転移動することと、b)ローターの回転及び磁場の引力に応答して磁場に向かって流体を通して戻るように流れることによって、円運動で流体を通して横断する。
【0089】
種々の態様では、ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である。別の態様では、治療標的は、患者の頭部内の血管閉塞又は患者の脚内の血管閉塞である。
【0090】
更に別の実施の形態では、循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、(a)薬物の拡散の増加を必要としている患者の循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、(b)患者に、循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、(c)患者の循環系内の治療標的に対して磁性ローターを凝集させ横断させるように、磁場及び勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、循環系内での治療標的における医薬組成物の拡散が増加する、方法が提供される。
【0091】
種々の態様では、医薬組成物は、磁性ローターに付着させることができる。他の態様では、医薬組成物は、磁性ローターから分離して患者の循環系に投与することができる。種々の実施の形態では、医薬組成物は、血栓溶解薬である。
【0092】
種々の態様では、治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管等の流体障害とすることができる。更に別の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系である。
【0093】
更に別の態様では、磁石は、モーターに結合した永久磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に磁石を位置決めするようにモーターを制御することができ、磁石を有効周波数で回転させる。別の態様では、磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石とすることができ、コントローラーは、治療標的に対して、有効距離、有効平面に電磁石を位置決めすることができ、電流を調整することによって、電磁石の磁場を回転させる。
【0094】
本方法のシステムは、磁性ローター及び治療標的を観察するためのディスプレイと、磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備えることができ、ユーザーは、回転する磁場の周波数、治療標的に対する回転する磁場の平面、及び治療標的に対する回転する磁場の距離を調整することによって、循環系内で治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように磁性ローターを制御する。
【0095】
起磁性ステーターシステムの更なる実施形態
図3は、図1に示す平面に垂直である平面内で回転するように磁石が作られる実施形態を示す。ここで、N磁極304及びS磁極306を有する永久磁石302は、2つの支持フランジを有する。第1の磁石フランジ308は第1の軸受け312を通過し、第2の磁石フランジ310は第2の軸受け314を通過する。軸受けは、磁石支持構造体316によって支持される。磁石支持構造体は、中心シャフト318に接続され、中心シャフト318は、中心シャフト用の支持体320によって支持される。中心シャフト318は、ドライブモーター324が取付けられるモーター搭載プレート322に取付けられる。この実施形態では、磁石ドライブモーターシーブ326が、ドライブベルト328に接続される。ドライブベルト328は、磁石シーブ330に接続される。中心シャフト用の支持体320は、磁石組立体支持構造体332に取付けられる。
【0096】
この実施形態では、永久磁石302は、N磁極304及びS磁極306が同じ平面内で回転するように、前面に垂直な平面内で回転するように作られる。ドライブモーター324は、モーターシーブ326を回し、モーターシーブ326は、ドライブベルト328を回す。ドライブベルト328は、次に、第2の磁石フランジ310に取付けられる磁石シーブ330を回す。第1の磁石フランジ308及び第2の磁石フランジ310は、第1の軸受け312及び第2の軸受け314をそれぞれ通過する。磁石フランジ308及び310はともに、永久磁石302に取付けられ、したがって、ドライブモーター324が永久磁石302を回転させることを可能にする。
【0097】
図4では、2モーターシステムを使用して任意の平面内で回転することが可能である永久磁石436が示される。磁石は、N磁極438及びS磁極440を有する。第1のモーター402は、第1のモーターフランジ404を介して中央支持体406に取付けられる。第1のモーター402には、第1のモータープーリ408が取付けられる。第1のモータープーリ408は、第1のモーターベルト412を介して第1のアクスルプーリ410に接続される。第1のアクスルプーリ410は、第1のアクスル軸受け416を通過する第1のアクスル414に取付けられる。第1のアクスル414の端部には、第1のマイタギア418がある。前記第1のマイタギア418は、第2のマイタギア420に係合する。第2のマイタギア420は、第2のマイタギア軸受け424を通過する第2のマイタギアアクスル422に取付けられる。第2のマイタギア軸受け424は、磁石支持ヨーク426に取付けられる。第2のマイタギアプーリ428は、第2のマイタギアアクスル422に接続される。前記第2のマイタギアアクスル422は、磁石ベルト433によって磁石プーリ430に接続される。磁石プーリ430は、2つの磁石フランジ432の一方に取付けられる。磁石フランジ432は、磁石軸受け434を通過する。第2のモーターフランジ444によって中央支持体406に取付けられる第2のモーター442は、第2のモータープーリ446を有する。前記第2のモータープーリ446は、第2のモーターベルト450によって第2のアクスルプーリ448に接続される。第2のアクスルプーリ448は、第2のアクスル軸受け454を通過する第2のアクスル452に接続される。
【0098】
この例では、第1のモーター402は、第1のモータープーリ410を回し、第1のモータープーリ410は、第1のモーターベルト412を介して第1のアクスルプーリ410に回転を伝達する。第1のアクスルプーリ410は、第1のアクスル軸受け416を使用して自由に回るように作られる第1のアクスル414を回す。第1のアクスル414を回すことは、第1のアクスル414に接続される第1のマイタギア420を回すことをもたらす。第1のマイタギア418は、第2のマイタギア420に回転を伝達し、それは、第2のマイタギアアクスル422を回す。第2のマイタギアアクスル422の回転は、第2のマイタギア軸受け424を使用して可能になる。第2のマイタギアアクスル422の回転は、第2のマイタギアプーリ428の回転をもたらし、それは、磁石ベルト433を介して磁石プーリ430を回す。磁石プーリ430は、磁石フランジ432を回し、それは、第1の軸の回りの磁石436の回転をもたらす。
【0099】
第2のモーター442は、第2のモータープーリ446を回し、それが、第2のモーターベルト450を介して第2のアクスルプーリ446を回す。第2のアクスルプーリ446の回転は、第2のアクスル軸受け454を使用して自由に回るように作られる第2のアクスル452の回転をもたらし、したがって、磁石436が第2の軸の回りを回転することが可能になる。
【0100】
図5は、電磁コイル502で構成される起磁性システムの例である。電磁コイル502は、支持構造体504に取付けられる。各電磁コイル502は、電源ケーブル508及び電源リターンケーブル510を介して電源506に接続される。支持構造体は、2セグメントアームポジショナー512に接続される。この例では、各電源506は、電源ケーブル508及び電源リターンケーブル510を介して、それぞれの電磁コイル502に電力を送出する。2セグメントアームポジショナー512は、支持構造体504が空間内に位置決めされることを可能にする。
【0101】
起磁性ステーターシステム及び磁性ツールローター
更に別の実施の形態では、循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、
流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、
治療標的に対して磁場を位置決めし回転させて、磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、治療標的に接触し、治療標的を貫通して又は治療標的の周りで流体流を増加させるように回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーとを備える治療システムが提供される。種々の態様では、循環系は、患者、特にヒトの患者の脈管系とすることができる。種々の態様では、磁性ツールは、安定化ロッドに結合させることができ、磁性ツールは、回転する磁場に応じて安定化ロッドの回りを回転する。更に別の態様では、磁性ツールは、治療標的に係合し治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含むことができる。別の態様では、コントローラーは、治療標的上の標的点に磁性ツールを位置決めし、治療標的を切り崩すのに十分な周波数で磁性ツールを回転させる。磁石は、該磁石の極が、回転中に磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めすることができ、磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって治療標的に向かって押される。別の態様では、磁石は、磁石の極が、回転中に磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、磁性ツールは、磁石の引力によって治療標的に向かって引っぱられる。
【0102】
図9は、機械的血栓除去デバイスを無線で操作する起磁性ステーターシステム(「磁性ツール(magnetic tool)」とも呼ばれる)の一使用を示す。この例では、血管828の内部の血管障害830は、軸908を横切る方向にN磁極904及びS磁極906を有する、回転する磁石902によって遮断解除される。磁石902は、起磁性ステーターシステムによって無線で生成される外部磁場ベクトル812に従う。外部磁場ベクトル810は、磁場回転角度810の方向に時間的に変化する。磁石902の回転は、磁石902内の穴を通して安定化ロッド908を通すことによって安定化される。磁石902は、安定化ロッド908の回りを自由に回転する。血管障害830に係合するアブレシブキャップ910が、磁石902に固着される。このアブレシブキャップ910は、健康な組織に対して最小の損傷を、かつ、血管障害830に対して最大の損傷を保証するコーティング又は表面処理を使用する。
【0103】
磁性ツールを使用することの1つの利点は、比較的大きな磁性ローターを使用すれば、磁場勾配(時間変動性がある可能性がある)及び時間変動性磁場の使用により、遠位端で回転することが可能な磁石を有するデバイスを構築することが可能になることである。その結果として、これらのデバイスは、医薬品の効果を増幅するため又は脈管系内の障害を穿孔するために使用される既存の臨床デバイスに比べてずっと小さくかつ安価に作ることができる。より重要なことには、血管又はチャンバー内で回転機構を使用する商業的技術は、近位端から遠位端への機械的又は電気的伝達システムを必要とし、デバイスを複雑にし、デバイスをより高価にし、全体サイズを増加させる可能性がある。本発明は、機械的又は電気的伝達システムを必要とすることなく先端において無線で機械的作用を生成し、それにより、デバイスを小型で、簡単にし、製造を安価にする。
【0104】
例えば、システムは、静脈内に注入されるtPAの増大のために臨床設定で使用することができる。磁性粒子は、血栓溶解の前に注入されるか、その後に注入されるか、又は血栓溶解薬に付着されるかのいずれかになる。患者の近くでかつ血塊に近接して設置される磁石システムが起動されることになる。しかし、所望の障害に粒子を集めるのに勾配が十分であるため、システムは、このとき、変化する磁場を生成する必要がないことになる。磁気混合が所望される場合、磁場は、時間的に交互になるように作られることになり、磁場は、磁場勾配(時間的に変動してもしなくてもよい)と組合されると、血栓溶解作用を増大させる。そのため、血塊は、他の手法と比較してより速くかつよりよく破壊することができる。
【0105】
磁気的に増大される薬物拡散
図11は、移動する流体システム内に注入される化学物質の拡散に対する制御を磁気的にイネーブルする方法を示す。このモデルでは、流体Aが、系(図11Aの白い領域)を移動し充満させる。その後、流体Bが注入される(影の領域)。図11Bは、問題を示す。流体Bは、「脚部」に侵入する能力が制限される。その理由は、流れの速度が遠くの脚部まで伝わらないからである。系は、その後、流体Aを流体Bで希釈する拡散に頼らなければならない。これは、非常に長い時間を要する可能性がある。
【0106】
観察されたことは、磁性ナノ粒子が流体B内に配置されると、ナノ粒子の一部を、ストリームから出て脚部に引き込むために、磁場及び勾配が課され、ナノ粒子の一部が、僅かな流体Bを一緒に持って行くことである(図11C)。時間変動性の態様は、作用を増幅するために変えることができる。例えば、磁場の回転速度、磁場勾配の強度、供給源磁場の配向、並びに磁性粒子のサイズ及び強度である。時間が経って、より多くの粒子が、脚部の底に集まり、循環パターンを生じ始め、循環パターンは、拡散だけによって可能である場合よりずっと速くまで流体A内に流体Bを分配する。プロセスが長く実行されればされるほど、より多くの粒子が集まり、また、混合作用が強くなり、ついには、流体Aが、流体Bで本質的に置換される。
【0107】
血塊破壊の場合、脚部は、遮断された静脈又は動脈を表す。図が示すように、障害が主要な流れから十分に遠い場合、血栓溶解薬を遮断部の表面に接触させるために、拡散力だけが必要とされる。したがって、血栓溶解薬及び循環系から流体遮断を実質的に取り除くときに有効な他の医薬組成物は、その有効性が制限され、体内で(インビボで)の拡散に依存することは、負の臨床転帰をもたらす可能性がある。血栓溶解薬及び循環系から流体遮断を実質的に取り除くときに有効な医薬組成物は、比較的短い半減期を有するため、プロセスを速めることが、本起磁性ステーターシステムの利点である。主要な流れの濃度の何分の1かである治療濃度の流体Bを脚部の端部に送達することが目的である場合、本発明は、ずっと少ない用量の流体Bを最初に注入することで同じ治療濃度の流体Bを得ることができる(図30を参照)。このことは、その一部が出血又は更には死をもたらし得る医薬組成物の少ない用量の使用を可能にする、増大された治療的利点を、本発明が提供することを意味する。
【0108】
本発明の別の利点は、磁性ツールの場合、動脈硬化性プラーク物質等の大きな容積の血栓又は他の遮断物質を、システムが迅速かつ非常に精密に粉砕することが可能であることである。本発明の無線起磁性ステーターシステムを使用して、2フレンチ(french)(2/3mm)穴が疑似動脈硬化血塊を通って穿たれることが観察された。本発明における磁性ナノ粒子の使用に関して、本システムは、磁性粒子の精密制御が、静脈内のリーフ弁を完全で無損傷のままにすることを可能にする比較的「軽い(gentle)」スカーリング作用を生成することを可能にする。磁性ツールに関して、この作用は、閉塞した動脈又は静脈内の血塊物質を除去するために、血栓溶解薬と組合せて使用することができる。血液凝固物において血栓溶解薬とともに使用されると、血栓溶解薬は、機械的作用が最小にされることを意図されるときに役立ち得る。磁性ナノ粒子を使用して、遮断された静脈から除去される物質は、ガイドワイヤ上の小さな磁石によって捕捉することができる。動作モードに応じて、除去される物質は、小さい(1mmサイズ未満の血塊粒子)又は血塊物質、薬物、及び磁性粒子のボール混合物であることが観察された。磁性粒子集合体及び磁性ツールオブジェクトはともに、コンピューター再構成式経路プラニングを可能にする標準的な撮像技術によって視覚化されることが可能である。
【0109】
図12は、本発明の磁場発生器の別の実施形態の図である。この図において、発生器1200は、軸1210の回り及び軸1215の回りの2つの別個の回転が可能にされるように搭載された、N極1206及びS極1207を有する永久磁石源1205で構成される。軸1210の回りの回転の場合、磁石源1205は、ギア付きシャフト1226によって駆動され、次に、駆動ギア1230によって駆動されるプーリベルト1225によって回転する。ギア1230は、スラスト軸受け1235上に搭載され、モーター1240によって駆動される。ローターシステムには、1225、1226、1230、1231が搭載され、モーター1245を使用して回転軸1210の回りの回転を可能にする。別個のドライブシステムは、構成要素1220、スラスト軸受け1235、及びモーター1240を使用して、第2の軸1215の回りの回転を可能にする。発生器は、継ぎ目のあるアーム1250とともに位置決めされる。図13に概略的に示す第2の好ましい実施形態1300に優る好ましい実施形態1200の利点は、単純さ、小さなサイズ、及び低コストである。欠点は、第2の好ましい実施形態1300の制御及び複雑さの付加的な特徴のうちの幾つかを欠くことである。
【0110】
図13は、本発明の磁場及び勾配発生デバイスのさらに別の実施形態概略図である。本発明の磁場発生器1300のブロック図が示される。3つのコイル1301、1302、及び1303は、接続1321、1322、及び1323を通してドライバー1311、1312、及び1313から、それぞれ電流を給送される。ドライバー1311、1312、及び1313は、コンピューター1335から情報を受信する分配回路1330によってそれぞれが別々に制御される電流源である。各電流源1311、1312、及び1313は、必要とされるピーク磁場を提供するのに十分な正弦波電流を発生することが可能である。多くの場合、これは、0.3テスラ未満のピーク磁場であることになる。個々の場合に所望される場合、電流は、正弦波より複雑な時間的変動を有することができる。コンピューター1335によって決定されると、医師入力1341に応答して、電流の分布及びタイプ並びにコイルのそれぞれに対する電流のシーケンスが、コンピューターによって計算されることになる。コンピューター1335内のプログラムからの特定の動作命令は、特定の動作の知識に基づいており、それにより、特定の命令は、医師によって入力される本手法に従って動作するために提供される。第1の好ましいデバイス1200の利点に優る第2の好ましいデバイス1300の利点は、より複雑な磁場供給源から生成される磁場のタイプ及びコンピューター入力の更なる柔軟性並びに新しい手法に対する更なる改良である。
【0111】
発生器1300の回路、電源及びコントロールの設計は、磁気コイル、電源、並びにコンピューター及びロジック回路要素の設計の分野の当業者によく知られている方法を使用して、これらの特性及び仕様を以って動作する個々のユニットで構成される。
【0112】
本発明の方法によって処置される医療の症例における遮断の2つの主要なクラスは、部分的及び完全である。部分的遮断は、一般的に、低い血流をもたらし、一方、完全遮断は、血流を止めることになる。いずれの場合も、従来の手段によって血塊を除去するために送達される薬物の有効性は、一般的に理解しがたくかつ役に立たない。血塊の表面に対する薬物の送達は、血塊の近くでの薬物−血液混合物を撹拌する特別な方法があっても、原理上、理解しがたくかつ役に立たない。遮断を除去する本方法の主要な制限は、閉塞に対する効果的な薬物作用の困難さ、剥離した物質の除去の不完全さ、血管に対する損傷、及び除去された物質の下流の成分についての悪影響を含む。図14A及び図14Bは、血液凝固物の従来の処置の困難さ及び非効率性についての基礎になる物理的理由を示し、その理由について、本発明が主要な改善を提供する。
【0113】
図14Aは、流れがない血管1400の一部の湾曲部内での閉塞物質の一般的な蓄積の断面図であり、物質を溶解する薬物を使用するときの一般的な困難さを示す。血管壁1405に隣接して、内部境界縁部1415を有する、堆積した閉塞物質1410、「血塊」の標的領域がある。ここで、医師は、血塊の近くに薬物1425を導入した。これは、部分的に相互作用する物質の停滞作用層1430及びより高濃度であるが効果の低い薬物の層1435の一般的な状況を示す。層1430及び1435は、その全体的な領域内の血管1400内に注入されたより高濃度の血栓溶解薬1425から血塊を分離する。薬物の運動及び分配は、血塊と注入薬物との間の接触を新たにする手段としての熱運動及びゆっくりした分散だけによって生じることができ、それは、作用を、著しくゆっくりかつ非効率的にする。一部の専門家は、効率を上げるために、金属撹拌器、ベンチュリフローベースジェット、及び音ベース撹拌技術を導入したが、これらの方法の困難さ及び制限は、文書化されている。
【0114】
図14Bは、硬化した弁膜1470を有する血管1465の壁1460に接して形成された標的閉塞1455の断面図であり、領域1480において血流が遅く、血塊表面1457にて流体(血液と薬物の混合物)の流れが非常に遅い。これは、過剰な量の薬物を使用しなければ、上流で領域1480内に注入された薬物の塊375に対する相互作用をほとんどもたらさない。従来の手法は、血管を閉鎖すること、ゆっくりとした血塊の非効率的な溶解を伴って血栓溶解薬をゆっくり注入すること、及び大量の血栓溶解薬を注入することを含み、したがって、遮断された静脈の場合とほぼ同じ困難さを示す。幾つかの従来の処置は、血塊表面1485での相互作用の効率を高めようとして、領域1480内で、人工機械的撹拌、ベンチュリフローベース撹拌、及び音ベース撹拌を提供する。ジェットを有するカテーテルは、血塊のより効率的な溶解を得ようとして、血栓溶解薬を吹き付けることができる。閉塞物質の除去は、時に機械的デバイスの挿入によって実施され、かなりの困難さと弁に対する危険を伴う。これらの方法は全て、幾つかの場合においては役立つ可能性があるが、一般的に、有効性が制限される。
【0115】
図15A〜図15Cは、磁性ナノ粒子からのロッドの生成における本発明の基礎のプロセスを示す。図は、磁場の増加に伴う、コーティング済みの磁性粒子又は未コーティングの磁性粒子の構造化のシーケンスの断面を示す。サイクルの上昇部中の磁場の増加は、益々多くの粒子を整列させてより長いロッドにする。
【0116】
磁性ナノ粒子は、図15Aのゼロ磁場の場合、空間内にほぼ均等に分配されるようにアレイ化され、位置が或る特定の統計変動を有する、粒子のランダム配置状態1505のナノ粒子として示される。図15Bでは、小さな外部磁場1510が、粒子の同じ群に印加されると、粒子は、配向した短い磁性「ロッド」の緩いアレイ1515内に形成される。或る特定のより大きな磁場1520において、図15Cに示すナノ粒子のサイズ及びオプションの被膜に応じて、磁性ロッド1525として整列した同じ粒子が長くなった。この図では、ロッドは、サイズが均一であるが、それは、厳密にはそうでなく、また、それが必要でもないことが示される。この磁気プロセスは、2つの見方で観察され得る。2つの見方とは、a)単一の(ゆっくりとした)サイクルの磁場交番における増加である図15Aから図15Bへの磁場の増加、又は、b)生成される磁場のピーク間の大きさが増加するときの複数のサイクルにわたる増加である。絶対スケール及び振動周波数に応じて、所与の振動サイクル中、作用は反転されない。一般的に、本発明で使用されるように、方法は、約0.02テスラ〜0.2テスラの磁場を印加し、ロッドは、0.1mm長〜2mm長で変動するが、他の範囲も有用であり得る。
【0117】
ある回転磁場強度及び磁場回転周波数において、ナノ粒子サイズ及びオプションの被膜に応じて、ロッドは、図16のグラフに示すように生成され、飽和磁場に達し、最大長を達成することになる。ロッドの伸びは、必ずしも正確でなく、曲線は、伸びの全体的な性質を示す。完全に生成された各ロッドは、ナノ粒子のサイズ及び回転磁場の大きさに応じて、多数の、10個程度の数の又はそれより多い数のナノ粒子を含むことができる。ロッドは、磁場と勾配、及び各粒子内の磁鉄鉱の量、並びにナノ粒子サイズに応じて硬質ではない。他の物質を、化学的理由、磁気的理由、及び撮像的理由のために各粒子に付着させることができる。その化学物質は、血栓溶解薬とすることができる。血栓溶解薬は、独立に注入することもできる。
【0118】
図17は、空間内の固定供給源から出る回転磁場の印加から生じる単一回転ロッドの転倒型回転移動の幾何学的特徴を示す。図17は、磁場の方向及び勾配の引張り力を示すために、単一回転ロッドが回転し移動するときの単一回転ロッドの8つの位置のシーケンスを示す。磁場とロッドが回転しながら、すなわち、ロッドと磁場との整列を維持しながら、ロッドとその磁気モーメントを保持するための相互作用を維持するように、個々の粒子の有効磁気モーメントが、局所磁場に連続して整列することが理解される。
【0119】
特定の理論に拘束されないが、また、以下の節の式[1]及び式[2]で論じるように、磁場Bは、トルクを確立するが、ロッドモーメントに引張り力を加えず、一方、勾配Gは、引張り力を加えるが、モーメントに回転トルクを加えない。したがって、回転磁石源は、図17の全てのステージで下方矢印として示される、自身に向かう引張り勾配を有することになる。より小さな(一般的に150nmより小さな直径の)磁性ナノ粒子は、空間内で個々に回転する必要なく、局所磁場と自動的に整列することになる透磁性物質として主に働く。いずれの場合も、磁性ナノ粒子は、上述したようにロッドを形成することになり、ロッドは、それ自体、ナノスケールでは適度の硬質性を有するが、本発明の処置のミリメートルのスケールでは非常に軟質である。図17では、三角法ラベリング(trigonometric labeling)は、回転磁場に応答して右に向かうロッドの移動に関連する、粒子に対する力及びトルクの変化する成分の幾何学的(角度)態様を示す。換言すれば、ロッドは、ほぼ固定磁性ロッドとして働く。図では、8つの位置のそれぞれの磁場方向は、磁場が時計方向に回転するにつれて、矢印1701、1711、621等で示される。ロッド磁気モーメント1702、1712、1722等は、その方向に追従する。しかし、図示する各ステージにおいて、矢印1703、1713、1723等は、以下の式[2]に従って、回転磁場源の中心に向かって下を指す。ロッド長のスケールで、約2mmの右への移動は、供給源磁石までの距離に対して小さい。
【0120】
図18A及び図18Bは、供給源磁場が、供給源磁石の固定位置の周りを回転するときの、磁性ロッドの集中に対する制限の生成を示す。磁場と違って、勾配は、供給源の磁気中心に向かって常に引張ることになる。磁場B自体は、小さな磁気双極子モーメントμに対する整列のトルクτを生成するだけである。
τ=μBsinφ [1]
式中、φは、モーメントμの方向と磁場Bの方向との間の角度である。勾配のない均一な磁場は、モーメントμに対する力を生成しないことになる。しかし、勾配Gは、以下に従って、小さなモーメントμに対する力Fを生成することになる。
F=μGcosφ [2]
式中、φは、モーメントμの方向と勾配Gの方向との間の角度である。
【0121】
図18Aは、ロッドについての開いた場所におけるシステムの空間「分解能(resolution)」の性質を示す。回転磁石源の場所が固定の場合、勾配から回転磁石源に向かう引張りは、ロッド1805、1806、及び1807が右に移動するにつれて、方向を変えることになる。ロッドは、増加した距離、したがって、磁場の強度の喪失を有することになり、また、有している。図18Aでは、回転外部磁場源は、矢印1810で示す左のままであるため、ロッドの場所は、固定回転磁石(ここでは、スクリーンの下のはずれたところにある)の右に移動した。ここで示すステージにおいて、3つのロッド1805、1806、及び1807を示す矢印は、回転供給源磁石システムの中心から右へ遠くに移動した。ロッドのサイズ及び磁石源に対するロッドの距離に対して、右へのこの距離は、磁場源及び勾配が或る角度になり、大きさが減少するように増加した。勾配は、大きな矢印1810で示す方向に、粒子及びロッドを引張り、粒子及びロッドは、自身の場所において式[2]の力に従って提供される牽引力によって押しやられる。勾配Gは、通常、距離の3乗の逆数と4乗の逆数との間の倍率だけ、供給源からの距離に伴って減少し、一方、磁場は、供給源の中心からの距離のほぼ3乗の逆数として、供給源からの距離に伴って減少する。この移動において、ロッドはまた、ロッドを下に引張って移動表面上に置くのに必要とされる誘引勾配を失う。ロッドは、最終的には牽引力を失う。図18Bに示すこの結果は、以下の図18Aで示すメカニズムの結果として、勾配の角度が左から右に変化するときに起こった粒子の分布を示す。このグラフは、磁石源の固定場所についてのものであり、移動ロッドシステムの「分解能」を述べるときに有用である。実際には、供給源は、閉塞を処置するための医療方策に応じて、長い閉塞について所望される場合、移動させることができる。
【0122】
図18Aで述べる作用の結果、回転磁石源の場所が固定である場合、ロッドの移動に伴う距離に伴う力の減少が、ほぼ図18Bに示すロッド活動の分布をもたらすことになる。図18Bでは、矢印は、単に、磁石に最も近い場所における最大密度領域を指し、ロッド移動の位置依存性を示し、ロッドが磁石源に最も近いときに最大強度である位置依存性を示す。
【0123】
単一回転ロッドの磁気力学は、以下の計算に従う、本発明のソフトブラシ量を提供する。これらの条件は、比較的低密度に付着した血塊物質を有するロッド束についてだけ直接に適用されることが理解される。以下で論じるように、血塊物質がロッドと束形成することを許容される回転磁場内でロッドを動作させる非常に有用なモードは、安定でありかつ磁気的に除去可能な軟質クランプをもたらす。こうしたモードは、この節の計算に従わない。それでも、この節の計算は、軽くロードされるときの回転するスカーリングロッドの基礎になる挙動、及び、小さな閉塞物質の場合、或いは、手法の扱いにくさ又は静脈のサイズが物質のクランプが持続されることを可能にしない可能性がある場合に使用され得るモードを示すであろう。こうした場合は、脳内の幾つかの閉塞で起こる可能性がある。
【0124】
ここで、簡単にするために、ロッドは硬質であるとして扱われる。図19Aは、次に薬物混合及び血塊の表面との相互作用を増大させるための乱流を生成する回転するロッド上での回転力及び回転エネルギーの生成の三角法詳細を示す図である。回転磁場Bの作用エレメントは、所与の瞬間に、ロッド磁気モーメントμの方向、及び、Bがx軸から角度βに向けられる瞬間の磁場Bの方向によって規定される平面内の磁気モーメントμの単一ロッド上で示される。この瞬間に、(一定)モーメントμは、x軸から角度θに向けられる。したがって、この瞬間に、外部供給源磁石によってモーメントμ上に生成されるトルクτの大きさは、
τ=μBsin(β−θ) [3]
で与えられる。
【0125】
図19Bは、対称であると仮定される、ロッドに加えられる角度力F(θ)を、対称ロッドの中心を中心とする座標系において示す。これは、ロッドサイズが、磁石源までの距離に比較して小さいときの実際的な状況である。得られる力
Fθ=2μ(B/L)sin(β−θ) [4]
は、長さLのロッドの端部の磁場Bによって生成される。
【0126】
抗力は、角度依存性θ2を有する標準的な力学から近似されてもよい。すなわち、
Fdrag=−Cθ2 [5]
であり、式中、Cは比例定数である。その(標準的な)仮定の下で、対称ロッドについての運動の最終的な式は、
mlθ/4=2μβ/l[sin(β−θ)]−Cθ2 [6]
である。
【0127】
さらに、角α=β−θと規定し、β=ωt(ωは角度回転周波数)とすると、α=β−θであり、したがって、α=−θである。式[3]は、
Mlθ/4=(2μB/l)sinα−C(ω−α)2 [7]
になる。
【0128】
一定進み角αの場合、これは、
sinα=clω2/2μB [8]
に簡略化される。
【0129】
一定進み角αを保存する最大周波数ωoは、
ωo2=2μB/cl [9]
であり、式中、α=π/2、すなわち、90度である。
【0130】
ωoより大きな或る角度周波数の場合、モーメントμは、磁場回転に追従できず、システムは不安定化する。ずっと高い周波数では、磁場がπ/2未満だけ進み、時間の他の半分について、π/2より大きな値だけ進むため、運動は本質的に停止する。そのため、2つのトルクが打ち消す。この推論から、運動エネルギーは、図19Cに示すように周波数依存性を示すことになる。具体的には、運動エネルギーTは、
T=2×(1/2)(m/2)(1/2)2θ2 [10]
である。
【0131】
図19Cは、回転周波数に対するロッドの運動エネルギーのこの依存性を示すグラフであり、最大エネルギーは、To=(ml2/8)ωo2であり、ここでω=θである。すなわち、単一ロッドについて利用可能なピーク回転運動エネルギーは、ロッドの質量、長さに依存し、ロッドが磁場回転に追従できない点まで、角速度の2乗である。
【0132】
磁性ナノ粒子のロッドの形成及び機械的挙動の上記の理解によって、医療用途に最も簡単に適用されるときの、本発明のシステム及び方法の使用が示され得る。ナノ粒子のシステムは、血管内の閉塞に作用する、可撓性がある磁性ロッドの群として振る舞う(また、視覚的に現れる)ことがわかった。最初に、上記の図14A及び図14Bを用いて論じた2つの特徴的な問題のある場合の処置が、回転ロッドの導入によって示される。
【0133】
図20Aは、本発明の回転ロッドによる乱流の導入の実際的な利益を示す。完全な空間的遮断を有する血管の一部分は、慣例的に処置された図14Aを用いて示された問題の、本発明の方法による処置を示す。図20Aは、流れがなく、血塊2005を有し、閉塞の近くに血栓溶解薬2010の新しい供給分が注入されている管腔2000の断面図である。新しい薬物2010とともに注入された3つの回転磁性ロッド2030(縮尺は一定でない)が示され、回転磁性ロッド2030は、回転磁石源(ここでは図示せず)の方向2025に引張られるときに、局所乱流を発生させる。時計方向の回転によって、ロッドは、新しい薬物と混合し、外部回転磁場源が移動するときにロッドが左にゆっくりと移動するにつれて、血塊2005の表面をブラッシングするのが示される。血塊2005の小さな粒子は、右2035において蓄積し、そこで、回転が継続されると、図21Aに示すようにボールを形成することになる。その状況は、ほとんど混合作用がなく、また、血塊の除去のために長い時間に依存しなければならない薬物の静的塗布の場合の図14Aの状況と比較される。
【0134】
図20Bは、図14Bに示すような場合の標準的な方法による非効率的な血塊除去の問題を解決する本発明の方法及びデバイスが示される、管腔2050の上側部の断面図である。この場合は、脚動脈内の部分的遮断を示すものとしてもよい。ここで、図14Bに示したように、部分的に遮断された管腔2050内にゆっくりと流れる血液2090が存在する。血塊物質2058及び2062は、弁尖2060の周りに蓄積し、弁尖2060を硬質化し、完全ではないがかなりの流れの減少を引き起こす。この場合、血管2050は、完全には閉鎖されず、減じた流れは、部分的閉塞及び硬質な弁2060の硬質性による。図14Bで述べたように、血流は、ゆっくりではあるが、閉塞物質との非効率的な接触状態で注入薬物を運び去る。本発明の方法において、回転スカーリングロッド2055の作用が示されており、血塊2058及び2062に作用して、薬物接触を大幅に増大させるとともに、小さなスケールで軽いスカッフィングを提供する。領域2080及び2085内の乱流は、回転ロッド2055によって生成され、回転ロッド2055の小さく或る程度可撓性がある構造は、こうした領域で血管壁2070又は弁尖2060を損傷することなく働くことができる。幾つかの場合においては、除去された、磁気的に注入された物質は磁気手段によって下流で収集されることになる。
【0135】
ある条件(特別な遅い流れ)下で回転が継続すると、血塊物質及び磁性ナノ粒子は、以下の図21Bに示すように磁性ボールを形成し得る。やはり、特定の理論に拘束されないが、磁性粒子は、循環するにつれて、血栓の表面に係合すると考えられている。血栓が小さな破片に分解するため、磁性粒子は、磁鉄鉱と血栓物質で構成されるボールに似た構造内にカプセル化される。この構造は、幾つかの有利な特性を有する。
1.対象物が、相互作用の表面積を増加させ、血栓溶解薬のより効率的な循環を引起すことによって血栓の破壊を加速させる。
2.構造が、小さな塞栓を捕捉し、塞栓をボール構造内に入れ、それにより、塞栓が逃げることを防止する。
3.構造が、血栓溶解薬によってその構造が溶解されるため、ゆっくりと分解し続けることになる。
4.代替的には、構造は、先端に磁石を有するデバイスによって再収集することができ、それにより、より大きな塞栓及び磁性粒子が捕捉される。
【0136】
血塊及び磁性ロッド相互作用の性質及び期間に応じた、薬物の適切な送達レートによって、磁性ロッドスカーリングプロセスが、述べたように、血塊物質とロッドを混合するように構成されて、磁性ロッドと結合した、血塊物質の小さくほぼ球状のボールを提供し得る。本質的に、それらの条件は、磁気手法中の血栓溶解薬の塗布レートと濃度によって決定される。閉塞の処置において訓練された医師は、除去を完了するための最適特性(硬質性及びサイズ)のボールを形成するために薬物の送達レートの判断を使用する。
【0137】
本技法の適用が、次の通りに述べられる。図21Aは、血流がない、血塊2130によって完全に遮断された血管2120の断面図である。ここで、磁性ロッド2122は、磁場の時計方向回転によって閉塞2130のすぐ近くの領域を撹拌し、循環パターン1035を生成する。混合領域2125は、血塊物質と血栓溶解薬と少量の磁性ロッド物質の混合物を含む。
【0138】
図21Bの断面図において、血管1020内のこの回転相互作用は、継続され、ボール2140が、血栓1030から剥離された物質、血栓溶解薬、及び少量の磁性ロッド物質から形成され始める。
【0139】
図21Cでは、回転ボール2140は、拡大し、治療を加速する。回転ボール2140は、閉塞物質の少量の残留物2150を残しながら、血管2120内の遮断されたチャネルを開口した。ボール2140は、依然として回転し、回転磁石源(図示せず)の勾配からの力によって所定場所に保持される。
【0140】
図21Dは、完成した血塊ボール2140を捕捉し除去する手段を示す。回復した血流が、血栓ボール2140を下流に押し流す前の適切な時間に、先端に磁石を有するプローブ2145が、挿入され、磁石プローブ2145を引き抜くことによって除去するために、ボール構造1040を捕捉する。
【0141】
図22は、弁尖1160を含む血管2255の断面図であり、弁尖のうちの1つ2262は、弁2262を硬質化して機能しなくさせる閉塞物質2263を有する。血液は、矢印2270の方向にゆっくりと流れる。外部磁場発生器(図12又は図13に示すようなものであるが、ここでは図示せず)は、この領域内で回転磁場を生成した。その領域で、回転ナノ粒子ロッド2275が、例えば上記の図20Bに示した方法で血塊付着物2263に作用する。図示する磁性ロッド2275は、実際には、血塊2263に隣接する空間内の多数のこうしたロッドのメンバとすることができる。ロッドは、可撓性があり、2263の狭い角で機能するために、上述したように約1ミリメートル〜2ミリメートルより短い長さまでブラッシングされ得る。実験室試験では、ロッド2275は、約2センチメートル幅で3ミリメートル深さであった2263等のモデル空間内の物質を除去するように機能し、血栓物質の約100立方ミリメートルを除去した。
【0142】
図23は、より大きな血管2305から分岐する小さな血管2300の断面図である。小さな血管は、図示するように蛇行状である場合があるが、脳又はその他の場所の血塊であり得る血塊1215に近づく、図示する磁性ロッド2310の前進移動等の前進移動を妨げない。こうした小さな血塊2315は、上記の図22の2255等の他の全体的に大きな血管について述べたようにスクラブし得る。適切な磁場及び勾配の選択によって、閉塞物質の微小破片を除去するスクラブ処理が生成され得る。これらの粒子は、サイズが数ミクロンまでとすることができ、更なる下流の損傷を引き起こさない。2315等の血塊を取り除くこの方法の利点は、閉塞が、完全であり、従来の既存の方法によって達することが難しい場合があるが、外部回転磁場は、ロッドを閉塞点まで移動させることである。血栓溶解薬は、その後、可能である場合、血塊部位に従来どおり導入することができる。その地点で、ロッド2310の撹拌活動が、静的送達よりずっと速く薬物を作用させることになる。
【0143】
磁性粒子は、脆い構造を軽く取り除くのに十分であるが、脳の所定部分が血液不足になる虚血性脳卒中の場合にそうであるように、時として物質をただちに迅速に除去することが必要である場合がある。磁性粒子に関して使用される同じ原理は、遮断への血栓溶解薬の流れを同時に増加させながら、機械的アブレーションによって閉塞を迅速に除去するように特に設計される、より大きな磁性構造に関して使用することができる。ここで血栓除去デバイスと呼ばれるこれらのより大きな磁性構造は、表面上に接合されたアブレシブ材料を有する球とすることができる。磁性構造は、サイズがミリメートル未満からミリメートル以上までとすることができ、常に、特定の手法後の除去が必要であることが考慮される。この技法は、従来の技法の場合に通常見られるより小さな残留塞栓をもたらす可能性がある。既存の手法に優るこの方法の更なる利点は、除去される物質の制御可能な磁気特性である。本発明において磁気モーメントを有する球(すなわち「磁性ボール」)として示される血栓除去デバイスは、デバイスの取出しを簡単にするために紐付きとすることができる。代替的には、デバイスは、磁性粒子について提案された方法、すなわち、先端に磁石を有する(magnetically-tipped)ガイドワイヤを使用することと同様の方法で回復させることができる。ボールの表面は、以下のものの任意の1つ又は組合せで構成することができる。
1.磁気共鳴撮像、X線、PET、又は超音波技術による可視化を可能にする1つ又は複数の造影剤
2.遮断の破壊を加速させる薬物
3.粉砕を加速させるための最適化された表面幾何形状
4.粉砕を加速させるためのアブレシブ表面
【0144】
図24は、本発明において球2430として提示される磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスの基本動作の要素を示す。ボール2430は、S端2410及びN端2420を有する永久磁石モーメントを有する。反時計方向に2440に進む外部印加された磁場2450が、ボールを回転させる。この図24Aの場合にそうであるように、磁場勾配が存在しない場合、牽引力が、表面2460に対して全く生成されず、ボールは並進しない。
【0145】
図24Bは、磁性ボール2430を血管壁に押し付けるための、磁性ボール2430に作用する2480の方向への力を生成する磁場勾配2480が、本質的に固定した所与の方向2480に存在することを除いて、図13Aと同じ場合を示す。結果として、牽引力が生成され、平進運動が、磁場の反時計回転2440によって方向2470に起こる。
【0146】
この技法の適用は、以下に述べられる。図25Aは、血流がない、完全に閉塞した血管2510の断面図である。ここで、磁性ボール2530は、閉塞表面2522を機械的に粉砕しながら、閉塞2515のすぐ近くの領域を撹拌する。表面2522に対する接触は、方向2520への勾配によって生成され、方向2520への並進力をもたらす。ボール2530の時計方向運動は、循環パターン2525を生じさせ、血栓溶解薬の作用を加速させる。
【0147】
図25Bの断面図において、血管2510内の回転相互作用が、継続され、ボール2530が、並進方向2520に閉塞2515内に深く貫入する。
【0148】
図25Cでは、磁気的にイネーブルされる回転ボール2530は、閉塞物質2515の少量の残留物を残しながら、血管2510内の遮断されたチャネル2535を開口した。
【0149】
図25Dは、血管2510から磁気的にイネーブルされるボール2530を捕捉し除去する手段を示す。外部磁場2520は、もはや回転しないか又は除去されており、もはやボールを右に並進させない。回復した血流が、血栓除去ボール2530を下流に押し流す前の適切な時間に、先端に磁石を有するプローブ2540が、挿入され、磁石プローブ2540を引き抜くことによって除去するために、ボール2530を捕捉する。
【0150】
図26Aの断面図は、血管2605内の紐2630付きの磁気的にイネーブルされるボール2610を示す。紐2630は、図26B又は図26Cに示すアタッチメントを使用して、ボール2610が磁場によって回転することを可能にする。この図では、磁石のN端2640及びS端2645は、黒矢印の端部で示される。磁場2640−2645の自由回転は、血管2605の内部の血栓又はプラーク物質2620の粉砕を可能にする。紐2630は、図25Dに示した先端に磁石付きワイヤ2540を必要とすることなく、磁石2610が手作業で取出され得ることを保証する。紐2630は、図26B及び図26Cの方法及びデバイスに従って設計されると、回転時に、ボール2610に巻付かないことになる。
【0151】
図26Bは、磁石2610の軸2650の回りの回転を可能にする紐2660の第1の実施形態を示す。この図では、紐端部2665は、回転軸2650を通して緩く挿入されて、軸2650の回りの自由回転を保証する。N端2640及びS端2645の矢印は、ボール2610の磁化方向を示す。
【0152】
図26Cは、紐の第2の実施形態を示す。紐2670は、磁石2610の軸2650(ループ2675に垂直)の回りの回転を可能にする。この図では、紐は、軸2650の回りの自由回転を保証するために、磁石の軸2650を緩く囲むループ2675である。矢印2680のN端2640及びS端2645は、ボール2610の磁化方向を示す。
【0153】
本発明で述べる技術はまた、図27に示す血管2705の壁上の脆弱なプラーク2715を除去するときに使用され得る。図27では、血管2705の断面図は、血管2705の上部及び底部に脆弱なプラーク2715がある状態で示される。回転磁性ボール2710は、図25Cに示す閉塞2515及び図26Aの紐付き図2630に関して使用される方法と同様の方法でプラーク2715を粉砕しているのが示される。これは、プラーク2715に向かって上に作用を向けるために、外部発生勾配2720を使用することによって可能になる。吐出された物質が溶解されることを保証するために、血栓溶解薬も存在し得ることが仮定される。
【0154】
磁性粒子及び磁気的にイネーブルされる血栓除去デバイスが、最新の撮像技術を用いて観察されることが可能になることを保証するために、粒子は、その撮像技術に対して粒子を不透明にする被膜を有しなければならない。例示的な造影被膜は、x線、PET、MR及び超音波を含む。こうした被膜の利点は、その領域内での血流の欠如のために、通常見ることができない血管を再構成する能力である。同様に、粒子を制御し再収集する能力は、伝統的な造影剤を用いたときに見られるのに比べて有害の程度が低い副作用をもたらす。例えば、X線造影剤は通常、複数回の注入を必要とする。その理由は、X線造影剤が、血流によって運び去られ、流れの遅い血管を高濃度で移動できないからである。
【0155】
図28Aは、より大きな血管2810から分岐する小さな血管2820の断面図である。小さな血管2820は、図示するように蛇行状である場合があるが、磁性ロッド集合体の前進移動及び磁気的にイネーブルされたボールの回転運動を妨げない。両方の技術は、小さな血管2825の右側で始まり、遮断2815に近づくものとして示される。後続の時点において、磁性ボール又は磁性ロッド集合体2825の場所は、2826、2827、2828、及び2829で示す点で識別される。粒子集合体又は磁性ボールの並進方向は、身体から延在する矢印2830で示される。
【0156】
図28Bは、図28Aに示すのと同じ断面図である。この図では、粒子集合体又は磁性ボールの撮像された場所は接続され、コンピューターが経路2835を再構成することを可能にする。この経路は、解剖学的構造を確認し、経路に沿うナビゲーションを必要とする手法をプラニングするために、術前画像に対して参照され得る。
【0157】
システムで使用するための組成
磁性ナノ粒子の種々の製剤を、医薬組成物と組合せて処方するか否かによらず、患者への投与のために使用することができる。本明細書の磁性ナノ粒子と同時投与するために、又は、ナノ粒子と別に投与するために、種々の医薬組成物、薬物及び化合物を処方する方法を、当業者は認識するであろう。被膜及び処置される治療標的に応じて、未コーティングのナノ粒子に加えて、コーティング済みのナノ粒子を処方する方法も、当業者は認識するであろう。幾つかの実施形態では、本明細書の磁性ナノ粒子の種々の製剤は、水なしで(neat)投与することができる。他の実施形態では、種々の製剤及び薬学的に許容可能なキャリアを投与することができ、種々の調合にすることができる。薬学的に許容可能なキャリアは、当該技術分野で知られている。例えば、caキャリアは、形態若しくは一貫性を与えるか、又は希釈剤として働くことができる。適した賦形剤は、安定化剤、湿潤剤及び乳化剤、モル浸透圧濃度を変化させる塩、カプセル化剤、緩衝剤、及び皮膚透過促進剤を含むが、それらに限定されない。賦形剤並びに非経口及び経口薬物送達用の製剤は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000)に述べられる。
【0158】
幾つかの実施形態では、磁性ナノ粒子は、(例えば、腹腔内、経静脈的、皮下、筋肉内等への)注入による投与のために処方されるが、処置される循環系遮断に応じて、他の形態の(例えば、口、粘膜等への)投与も使用することができる。従って、製剤は、食塩水、リンガー溶液、ぶどう糖溶液、及び同様なもの等の薬学的に許容可能なビヒクルと組合せることができる。特定の投与レジメン、すなわち、用量、タイミング及び繰返しは、特定の個人、その個人の医療履歴、及び処置される循環系遮断に依存することになる。一般的に、以下の用量のうちの任意の用量を使用することができる。すなわち、約1mg/kg身体重量、少なくとも約750μg/kg身体重量、少なくとも約500μg/kg身体重量、少なくとも約250μg/kg身体重量、少なくとも約100μg/kg身体重量、少なくとも約50μg/kg身体重量、少なくとも約10μg/kg身体重量、少なくとも約1μg/kg身体重量、又はそれ以下の用量が投与される。血栓溶解薬の半減期等の経験的考慮事項が、一般的に、投与量の確定に寄与することになる。
【0159】
起磁性ステーターシステムの利点
起磁性ステーターシステム並びに磁性ナノ粒子及び他の磁性ロッド(例えば、磁性ツール)を制御する方法を述べたが、現在のところ市場に出ているデバイス及び医薬組成物と比較すると、幾つかの利点を観察することができる。第1に、意図しない損傷を患者にもたらす可能性があるカテーテル及びカニューレと対照的に、磁性ローターが遠くから制御されることを可能にする有利な方法で、磁場勾配と磁場とを組合せることができること。第2に、磁場が、単純かつ正確な方法で経時的に変化されるとともに、通常投与量で体内で(インビボで)精密に制御することが難しい医薬組成物の観点から、無線ローターに対する制御が大幅に強化されるように可能な限り最適化されることを可能にするコンパクトなメカニズムを構築することができること。
【0160】
さらに、磁性ローターが、磁鉄鉱等の磁性ナノ粒子からなるとき、該ローターは、磁性粒子の近くにある化学薬剤又は医薬品のよりよい混合をもたらすように操作することができる。時間変動する磁場と組合せた磁場勾配の使用は、流れパターンが生成されることを可能にし、それが次に、化学物質又は医薬品の相互作用を増幅する。このメカニズムは、血栓溶解薬としてtPAを使用する、血管内システム内の血塊の破壊について動物モデルにおいて観察された。医薬組成物も、同じ機能を果たすために、磁性ナノ粒子に付着させることができる。結果として、これらの薬剤の少量が、患者処置のために必要とされることになる。ただし、本発明のシステムの磁場勾配及び時間変動する磁場を使用して、粒子が、所望の標的にナビゲートされ、所望の標的と相互作用できるときに限る。
【0161】
起磁性システムは、現在のところ発見されていない方法で、ユーザーが磁場の回転平面を制御することを可能にする、解り易いユーザーインターフェースを利用することができる。
【0162】
起磁性システムは、変動しない磁場によって試みられる手法より優れた方法で小さなチャネル内で粒子を移動させるために使用することができる。磁場勾配と時間変動する磁場との組合せ使用は、粒子が、治療がその地点に向けられ得る小さな血管内に移動することを可能にする。
【0163】
本発明は、特許請求の範囲に述べる本発明の範囲を制限しない、以下の実施例において更に述べられる。
【実施例】
【0164】
本教示の態様は、本教示の範囲をいかようにも制限するものとして解釈されるべきでない以下の実施例を考慮して更に理解されることができる。
【0165】
実施例1−ウサギへの磁性粒子の投与
麻酔下のウサギを、血管内障害モデルを生成するために使用した。頸静脈を使用し、トロンビンを使用してこの場所に血塊を生成することによって、自然生成物は血液凝固物を生成する。安定した血塊が確立されると、tPA(血管内障害患者の血塊を溶解するために一般的に使用される酵素)及び磁性ナノ粒子を、血塊場所に送り、血塊を溶解するのに必要とされる時間を記録した。図30を参照されたい。様々な時点後に、動物を、安楽死させ、残りの血塊を、重さを量って分析し、血管自体に対する損傷が全く存在しないことを確実にするために、組織を収集した。
【0166】
血管内障害モデルは、起磁性ステーターシステムが、tPA単独によるよりも速く静脈又は動脈を再開口できるか否か、また、tPAの投与量が、静脈に損傷をもたらさない状態で必要とされるtPAの量より低減できるか否かについての判定を可能にする。本血管内障害研究から集められたデータは、起磁性ステーターシステムが、tPAの「血塊破壊(clot-busting)」活動を大幅に速めることを明確に示す。
【0167】
詳細なプロトコル
要約:深部静脈血栓は、一般的でかつ潜在的に致命的な状態であり、現行の処置オプションは、幾つかの場合においては、役立つより損害を与える可能性がある。本発明者らの目的は、一般的に使用されるMRI造影剤を磁気的に操作することによって、本発明者らが、現行の薬理的処置の効率を実質的に上げることができるか否かを判定するために、静脈血栓の非存命麻酔下ウサギモデルを使用することである(Magnetic particles in imaging: D.Pouliquen et. al., Iron Oxide Nanoparticles for use as an MRI contrast agent: Pharmacokenetics and metabolism; Magnetic Resonance Imaging Vol.9, pp275-283, 1991)。
【0168】
磁気学:上述した鉄ナノ粒子は、現在のところ、ヒトで使用され、安全と考えられる。
【0169】
導入:深部静脈血栓(DVT)は、無症候性であるが、ほとんどの場合、患部は、有痛性で、腫大し、赤色で、細長い表在静脈であり得る。未処置のままにされると、合併症は、組織壊死及び患部四肢の機能喪失を含み得る。最も重篤な合併症は、血塊が剥離し肺まで移動し、肺塞栓症(PE)及び死をもたらし得ることである。DVTの現行の処置は、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)等の溶菌酵素の多量の用量を含み、時として、機械的摘出(Angiojet,Trellis Infusion System)で補強される。溶菌酵素の用量は、多くの患者(特に年配者)において、出血のリスクが高く、また、芳しくない結果が一般的であるようなものである(A review of antithrombotics: Leadley RJ Jr, Chi L, Rebello SS, Gagnon A.J Pharmacol Toxicol Methods. Contribution of in vivo models of thrombosis to the discovery and development of novel antithrombotic agents. 2000 Mar-Apr; 43(2):101-16; A review of potential tPA complications: Hemorrhagic complications associated with the use of intravenous tissue plasminogen activator in treatment of acute myocardial infarction, The American Journal of Medicine, Volume 85, Issue 3, Pages 353-359 R.Califf, E.Topol, B.George, J.Boswick, C.Abbottsmith, K.Sigmon, R.Candela, R.Masek, D.Kereiakes, W.O'Neill, et al)。本DVTモデルの目的は、かなり少量の用量のtPAが使用され、出血のリスクを大幅に低減するように、起磁性ステーターシステムが、血栓部位においてtPAの活性を増大するかどうかについての判定を可能にすることである。さらに、現行の機械的血栓除去が、内皮を損傷することが分かっている。各実験に続いて、血管セグメントが、内皮完全性について組織学的に評価される。
【0170】
手法:これは、非存命手法である。ニュージランドホワイトウサギ(1.5kg〜2.5kg)は、ケタミン35mg/kg、キシラジン5mg/kg IMを使用して麻酔をかけられ、腹側頸が剃毛され、手術の準備がされた。麻酔経口的気管内挿管を可能にするため麻酔面を深くするために、イソフルランガスを使用したマスク誘導を使用することができる。挿管されると、動物は、手術室に移され、手法の期間中、イソフルランガス麻酔(手術効果に対して1%〜5%)を投与された。動物が麻酔下にある間、心拍数、呼吸数、体温及び呼吸末期CO2が監視される。動物の数を減らし、調査間の変動性を低減しようとして、両側の10cm〜12cm切開が、傍正中から気管まで行われ、頸動脈を単離するために、鋭的/鈍的切開(sharp/blunt dissection)が使用される。有意の合併症が起こらない場合、動物の総数は、相応して低減される。
【0171】
超音波血流計プローブが、単離された血管の遠位部上に設置され、ベースライン血流データが、30分間収集される。静脈流の安定化に続いて、シルク(又は他の編んだ、未コーティングの)縫合糸(5又は6-0、テーパ針)が、閉塞されるエリアの遠位態様において、血管内腔の中心を通して経静脈的に通され、緩い結び目で固定される(参考文献#5参照)。この縫合糸の機能は、血塊用のアンカーとして働き、塞栓を防止することである。その後、流れを閉塞させるために、結紮糸が、血管の近位部と遠位部(血流計プローブに対して近位)に設置される。最終的に、血管の2cm又は3cmのセグメントが、結紮糸によって単離される。100U〜200Uウシトロンビンが、第1の結紮糸の近位の約1mmの空間内に経静脈的に(27g〜30g針)投与される。近位結紮糸は、トロンビン針の引き抜き直後に設置される。針のエントリ部位は、溶解手法中の出血を防止するために、Vetbond(登録商標)の小滴で閉鎖される。血塊は、30分間、成熟し安定化することを許容され、その時点で、結紮糸が除去され、tPA又は(上述した)tPAと磁性ナノ粒子との結合体が、静脈の順方向態様で注入される(27g〜30g針、エントリ穴はここでもVetbond(登録商標)でシールされる)。動的磁場が、その場所に印加され、血塊の溶解が、超音波流速計測によって最大3時間の間、連続して監視される。流れの再確立に続いて、動物は、ペントバルビタールの静脈内過剰用量(150mpk)によって依然として麻酔下にある間に安楽死させられる。実験的血管セグメント及び残留血塊は、その後、収集され、重さを量られ、更なる分析のために定着される。血管内障害モデルで使用されるtPAの投与量は、約312.5U〜約5000Uの範囲である。
【0172】
グループ:調査は、2つのフェーズ、すなわち、パイロット及び概念の証明で遂行される。両方のフェーズは、本明細書で概説した手法を含むが、パイロットフェースは、左頸静脈だけを利用し、他の頸静脈をナイーブな組織比較器(naive histological comparator)に残した。
【0173】
パイロットグループ
1.トロンビンだけ、tPAなし。このグループは、本発明者らの血栓のベースライン質量を確立し、血栓安定性の評価を可能にすることになる。n=30。
【0174】
2.tPAだけ、完全に効き目がある用量(100%再挿管(re-cannulation))を確立するための用量範囲n=6×3用量=18。
【0175】
3.tPAだけ、最適以下の用量(被験体の25〜50%において100%有効、又は、流量が25〜50%に過ぎないが、全ての被験体において再挿管(re-cannulation))を確立するための用量範囲。tPAが、著しく変動するため、最適以下の用量は、見出すのが難しい場合がある。n=3×4用量=12
【0176】
デバイスだけ、最適粒子濃度を確立するn=3×3濃度=9
【0177】
概念の証明グループ
注記:「n」数値は、初期データ品質に応じてパイロットデータと組合せることができ、さらに、動物の要件を低減する。
【0178】
1.最適tPA。n=6
【0179】
2.最適以下tPA。n=6
【0180】
3.デバイスだけ。n=6
【0181】
4.デバイス+最適tPA。n=6
【0182】
5.デバイス+最適以下tPA。n=6
【0183】
2つの問いに、本血管内障害モデルを使用して答え得る。
【0184】
小さな血管:頸静脈における血栓症手法の完了に続いて、麻酔の外科的平面が継続され、開腹術が実施される。腸の一部分が、露出され、乾燥を防止するために、食塩水内に入れられる。腸間膜内の大きな静脈のうちの1つの静脈が、切離され、PE10を用いてカニューレ挿入される。鉄粒子及び蛍光(100ul中に12.5mg/ml)の混合物が、注入され、ブラックライト下で写真撮影される。これは、腸を囲む微小静脈内に蛍光が拡散するかどうかについての判定を可能にし、起磁性ステーターシステムが小さな脈管系に磁性ナノ粒子を送ることを示す。
【0185】
安全性:起磁性ステーターシステムを使用して内皮ライニングに損傷が与えられるか?起磁性ステーターシステムが溶血を生成するか?本血管内障害モデルは、大静脈の検討によって判定を可能にする。頸静脈における血栓症手法の完了に続いて、麻酔の外科的平面が継続され、開腹術が実施される。大静脈の5cm〜6cmのセグメントが単離され、全ての分枝が切離される。血管は、切離され、PE10を用いてカニューレ挿入される。鉄ナノ粒子(100μl中に12.5mg/ml)又は食塩水(100μl)のいずれかが、血管内に注入され、3時間、磁気的に制御される。3時間の終わりに、血液が、静脈穿刺によって血管セグメントから除去され、溶血の評価のために送られ、安楽死の後に、血管セグメントが、内皮の組織学的評価のために外植される。3つの実験が粒子がある状態で実施され、3つの実験が粒子なしの状態で実施される。
【0186】
動脈アクセス
上述したDVTモデルを使用して、起磁性ステーターシステムが、このウサギモデルにおいてtPA効力を著しく増大させることが説明された。図29及び図30を参照されたい。組織学的に評価された組織が集められた。組織学的に検査されると、組織に対する損傷は全く観察されない。
【0187】
他の実施形態
上記で述べた詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。しかし、本明細書で述べられ特許請求される本発明は、本明細書で開示される特定の実施形態によって範囲が制限されない。その理由は、これらの実施形態が、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるからである。任意の均等な実施形態が、本発明の範囲内にあることを意図される。実際には、本明細書で示し述べる変更以外の本発明の種々の変更が、先の説明から当業者に明らかになり、それらは本発明の発見の趣旨及び範囲から逸脱しない。こうした変更はまた、添付の特許請求項の範囲内に入ることを意図される。
【0188】
引用した参考文献
本明細書の参考文献の引用は、参考文献が本発明に対する従来技術であるという承認として解釈されないものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、
前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備え、
前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加する、治療システム。
【請求項2】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記循環系に投与される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項1〜3に記載のシステム。
【請求項5】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項1〜4に記載のシステム。
【請求項6】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項1〜5に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者はヒトである、請求項1〜6に記載の治療システム。
【請求項8】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項1〜7に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項1〜8に記載のシステム。
【請求項10】
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記治療標的を取り除くように前記磁性ローターを制御する、請求項1〜9に記載のシステム。
【請求項11】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項1〜10に記載のシステム。
【請求項12】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で流体を横断する、請求項1〜11に記載のシステム。
【請求項13】
循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、
前記流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、
前記治療標的に対して前記磁場を位置決めし回転させて、前記磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、前記治療標的に接触し、前記治療標的を貫通して又は前記治療標的の周りで流体流を増加させるように前記回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーと、
を備える、治療システム。
【請求項14】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記患者はヒトである、請求項13及び14に記載のシステム。
【請求項16】
前記磁性ツールは、安定化ロッドに結合され、
前記磁性ツールは、前記回転する磁場に応じて前記安定化ロッドの回りを回転する、請求項13〜15に記載のシステム。
【請求項17】
前記磁性ツールは、前記治療標的に係合し前記治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含む、請求項13〜16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラーは、前記治療標的上の標的点に前記磁性ツールを位置決めし、前記治療標的を切り崩すのに十分な周波数で前記磁性ツールを回転させる、請求項13〜17に記載のシステム。
【請求項19】
前記磁石は、該磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めされ、
前記磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって前記治療標的に向かって押される、請求項13〜18に記載のシステム。
【請求項20】
前記磁石は、前記磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、
前記磁性ツールは、前記磁石の引力によって前記治療標的に向かって引っぱられる、請求項13〜19に記載のシステム。
【請求項21】
循環系内で流体流を増加させるシステムであって、
前記流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、
前記流体内の前記磁性ローター及び前記治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、
前記ユーザーからの命令に応答して、
a)前記治療標的に隣接するように前記磁性ローターを位置決めし、
b)前記治療標的に対して前記磁性ローターの角度配向を調整し、
c)前記磁性ローターを回転させ、円運動で前記流体を通って横断させて、前記流体を混合し、前記治療標的を実質的に取り除く
ように前記磁場を制御するコントローラーと、
を備える、システム。
【請求項22】
前記ディスプレイは、前記磁性ローター及び前記治療標的のリアルタイムビデオを表示し、
前記ディスプレイは、前記磁場の回転面を示すグラフィック及び前記磁場の引力を示す別のグラフィックを前記リアルタイムビデオ上に重ね合わせる、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、ユーザーが、前記治療標的に対する前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含む、請求項21又は22に記載のシステム。
【請求項24】
前記ディスプレイは、前記遠隔制御デバイスを通じて前記ユーザーによって与えられる命令に応答して前記グラフィックを調整する、請求項21〜23に記載のシステム。
【請求項25】
前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別する画像処理を実施し、前記可動アームを自動的に操作して、前記治療標的を取り除くように前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する、請求項21〜24に記載のシステム。
【請求項26】
前記磁性ローターは、前記磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成される、請求項21〜25に記載のシステム。
【請求項27】
前記流体は、血液と血栓溶解薬との混合物であり、
前記血液及び前記血栓溶解薬は、前記磁性ローターの円運動によって混合されて、前記治療標的を侵食し、取り除く、請求項21〜26に記載のシステム。
【請求項28】
前記磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、前記治療標的を含む低流量の血管へ前記血栓溶解薬を向け直す、請求項21〜27に記載のシステム。
【請求項29】
循環系内の流体流を増加させる方法であって、
前記流体流の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、
前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、
前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、
前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法。
【請求項30】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の循環系に投与される、請求項29〜30に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項29〜31に記載の方法。
【請求項33】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項29〜32に記載の方法。
【請求項34】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項29〜33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者はヒトである、請求項29〜34に記載の方法。
【請求項36】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項29〜35に記載の方法。
【請求項37】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項29〜36に記載の方法。
【請求項38】
前記システムは、
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する、請求項29〜37に記載の方法。
【請求項39】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項29〜38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である、請求項29〜39に記載の方法。
【請求項41】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転して移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で前記流体を横断する、請求項29〜40に記載の方法。
【請求項42】
前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である、請求項29〜41に記載の方法。
【請求項43】
前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞である、請求項29〜42に記載の方法。
【請求項44】
前記治療標的は、前記患者の脚内の血管閉塞である、請求項29〜43に記載の方法。
【請求項45】
循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、
前記薬物の拡散の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、
前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、
前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、
前記循環系内での前記治療標的における医薬組成物の拡散が増加する、方法。
【請求項46】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の前記循環系に投与される、請求項45〜46に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項45〜47に記載のシステム。
【請求項49】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項45〜48に記載の方法。
【請求項50】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項45〜49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者はヒトである、請求項45〜50に記載の方法。
【請求項52】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項45〜51に記載の方法。
【請求項53】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項45〜52に記載の方法。
【請求項54】
前記システムは、
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する、請求項45〜53に記載の方法。
【請求項55】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項45〜54に記載の方法。
【請求項56】
前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である、請求項45〜55に記載の方法。
【請求項57】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で流体を横断する、請求項45〜56に記載の方法。
【請求項58】
前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である、請求項45〜57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞である、請求項45〜58に記載の方法。
【請求項60】
前記治療標的は、前記患者の脚内の血管閉塞である、請求項45〜59に記載の方法。
【請求項1】
循環系内で磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石と、
前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコントローラーとを備え、
前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加する、治療システム。
【請求項2】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記循環系に投与される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項1〜3に記載のシステム。
【請求項5】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項1〜4に記載のシステム。
【請求項6】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項1〜5に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者はヒトである、請求項1〜6に記載の治療システム。
【請求項8】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項1〜7に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項1〜8に記載のシステム。
【請求項10】
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記治療標的を取り除くように前記磁性ローターを制御する、請求項1〜9に記載のシステム。
【請求項11】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項1〜10に記載のシステム。
【請求項12】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で流体を横断する、請求項1〜11に記載のシステム。
【請求項13】
循環系内で流体流を増加させるための治療システムであって、
前記流体内で磁性ツールを制御するための磁場を有する磁石と、
前記治療標的に対して前記磁場を位置決めし回転させて、前記磁性ツールのアブレシブ表面を回転させ、前記治療標的に接触し、前記治療標的を貫通して又は前記治療標的の周りで流体流を増加させるように前記回転アブレシブ表面を操縦するコントローラーと、
を備える、治療システム。
【請求項14】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記患者はヒトである、請求項13及び14に記載のシステム。
【請求項16】
前記磁性ツールは、安定化ロッドに結合され、
前記磁性ツールは、前記回転する磁場に応じて前記安定化ロッドの回りを回転する、請求項13〜15に記載のシステム。
【請求項17】
前記磁性ツールは、前記治療標的に係合し前記治療標的を切り崩す、磁石に固着されたアブレシブキャップを含む、請求項13〜16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラーは、前記治療標的上の標的点に前記磁性ツールを位置決めし、前記治療標的を切り崩すのに十分な周波数で前記磁性ツールを回転させる、請求項13〜17に記載のシステム。
【請求項19】
前記磁石は、該磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を周期的に引き付けるように位置決めされ、
前記磁性ツールは、該磁性ツールが回転する安定化ロッドによって前記治療標的に向かって押される、請求項13〜18に記載のシステム。
【請求項20】
前記磁石は、前記磁石の極が、回転中に前記磁性ツールの反対の極を連続的に引き付けるように位置決めされ、
前記磁性ツールは、前記磁石の引力によって前記治療標的に向かって引っぱられる、請求項13〜19に記載のシステム。
【請求項21】
循環系内で流体流を増加させるシステムであって、
前記流体内で磁性ローターを制御するための磁場を有する磁石と、
前記流体内の前記磁性ローター及び前記治療標的をユーザーに表示するためのディスプレイと、
前記ユーザーからの命令に応答して、
a)前記治療標的に隣接するように前記磁性ローターを位置決めし、
b)前記治療標的に対して前記磁性ローターの角度配向を調整し、
c)前記磁性ローターを回転させ、円運動で前記流体を通って横断させて、前記流体を混合し、前記治療標的を実質的に取り除く
ように前記磁場を制御するコントローラーと、
を備える、システム。
【請求項22】
前記ディスプレイは、前記磁性ローター及び前記治療標的のリアルタイムビデオを表示し、
前記ディスプレイは、前記磁場の回転面を示すグラフィック及び前記磁場の引力を示す別のグラフィックを前記リアルタイムビデオ上に重ね合わせる、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、ユーザーが、前記治療標的に対する前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を操作するための遠隔制御デバイスを含む、請求項21又は22に記載のシステム。
【請求項24】
前記ディスプレイは、前記遠隔制御デバイスを通じて前記ユーザーによって与えられる命令に応答して前記グラフィックを調整する、請求項21〜23に記載のシステム。
【請求項25】
前記磁石は、モーター及び可動アームに結合した電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的の場所、形状、厚さ、及び密度を識別する画像処理を実施し、前記可動アームを自動的に操作して、前記治療標的を取り除くように前記磁場の位置、回転面、及び回転周波数を制御する、請求項21〜24に記載のシステム。
【請求項26】
前記磁性ローターは、前記磁場の存在下で結合する磁性ナノ粒子によって形成される、請求項21〜25に記載のシステム。
【請求項27】
前記流体は、血液と血栓溶解薬との混合物であり、
前記血液及び前記血栓溶解薬は、前記磁性ローターの円運動によって混合されて、前記治療標的を侵食し、取り除く、請求項21〜26に記載のシステム。
【請求項28】
前記磁性ローターの円運動は、高流量の血管から、前記治療標的を含む低流量の血管へ前記血栓溶解薬を向け直す、請求項21〜27に記載のシステム。
【請求項29】
循環系内の流体流を増加させる方法であって、
前記流体流の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、
前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、
前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、
前記循環系内での前記治療標的と医薬組成物との接触が増加し、流体流が増加する、方法。
【請求項30】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の循環系に投与される、請求項29〜30に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項29〜31に記載の方法。
【請求項33】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項29〜32に記載の方法。
【請求項34】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項29〜33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者はヒトである、請求項29〜34に記載の方法。
【請求項36】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項29〜35に記載の方法。
【請求項37】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項29〜36に記載の方法。
【請求項38】
前記システムは、
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する、請求項29〜37に記載の方法。
【請求項39】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項29〜38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である、請求項29〜39に記載の方法。
【請求項41】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転して移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって前記流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で前記流体を横断する、請求項29〜40に記載の方法。
【請求項42】
前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である、請求項29〜41に記載の方法。
【請求項43】
前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞である、請求項29〜42に記載の方法。
【請求項44】
前記治療標的は、前記患者の脚内の血管閉塞である、請求項29〜43に記載の方法。
【請求項45】
循環系内で薬物の拡散を増加させる方法であって、
前記薬物の拡散の増加を必要としている患者の前記循環系に治療的に有効な量の磁性ローターを投与することと、
前記患者に、循環系内で前記磁性ローターを制御するための磁場及び勾配を有する磁石を当てることと、
前記患者の前記循環系内の治療標的に対して前記磁性ローターを凝集させ横断させるように、前記磁場及び前記勾配を位置決めし回転させるためのコンローラを使用することとを含み、
前記循環系内での前記治療標的における医薬組成物の拡散が増加する、方法。
【請求項46】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターに付着される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記医薬組成物は、前記磁性ローターから分離して前記患者の前記循環系に投与される、請求項45〜46に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物は、血栓溶解薬である、請求項45〜47に記載のシステム。
【請求項49】
治療標的は、動脈硬化性プラーク、線維性被膜、脂肪蓄積、冠状脈閉塞、動脈狭窄、動脈再狭窄、静脈血栓、動脈血栓、脳血栓、塞栓、出血、及び微小血管からなる群から選択される、請求項45〜48に記載の方法。
【請求項50】
前記循環系は、患者の脈管系である、請求項45〜49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者はヒトである、請求項45〜50に記載の方法。
【請求項52】
前記磁石は、モーターに結合した永久磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記磁石を位置決めするようにモーターを制御し、前記磁石を有効周波数で回転させる、請求項45〜51に記載の方法。
【請求項53】
前記磁石は、電流によって駆動される磁場強度及び磁場分極を有する電磁石であり、
前記コントローラーは、前記治療標的に対して、有効距離、有効平面に前記電磁石を位置決めし、前記電流を調整することによって、前記電磁石の磁場を回転させる、請求項45〜52に記載の方法。
【請求項54】
前記システムは、
前記磁性ローター及び前記治療標的を観察するためのディスプレイと、
前記磁性ローターを制御するためのユーザーインターフェースとを更に備え、
ユーザーは、前記回転する磁場の周波数、前記治療標的に対する前記回転する磁場の平面、及び前記治療標的に対する前記回転する磁場の距離を調整することによって、前記循環系内で前記治療標的と医薬組成物との接触を増加させるように前記磁性ローターを制御する、請求項45〜53に記載の方法。
【請求項55】
前記治療標的は、ヒトの血管内の血栓であり、
前記磁性ローターは、前記循環系に注入される磁性ナノ粒子である、請求項45〜54に記載の方法。
【請求項56】
前記治療標的は、静脈二弁の完全な又は部分的な遮断物である、請求項45〜55に記載の方法。
【請求項57】
前記磁性ローターは、反復的に、
a)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場から離れるように前記血管に沿って転倒型回転移動することと、
b)該ローターの回転及び前記磁場の引力に応じて前記磁場に向かって流体を通って戻るように流れることと、
によって、円運動で流体を横断する、請求項45〜56に記載の方法。
【請求項58】
前記ローターは、約20nm〜約60nmの直径の磁性ナノ粒子である、請求項45〜57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療標的は、前記患者の頭部内の血管閉塞である、請求項45〜58に記載の方法。
【請求項60】
前記治療標的は、前記患者の脚内の血管閉塞である、請求項45〜59に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図17】
【図18A】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図4B】
【図7】
【図16】
【図19C】
【図30】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図17】
【図18A】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図4B】
【図7】
【図16】
【図19C】
【図30】
【公表番号】特表2013−509449(P2013−509449A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537195(P2012−537195)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055133
【国際公開番号】WO2011/053984
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512112666)パルス セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055133
【国際公開番号】WO2011/053984
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512112666)パルス セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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